(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106639
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/10 20180101AFI20240801BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C09J7/10
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011010
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堤 清貴
(72)【発明者】
【氏名】道下 そら
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AA14
4J004AA16
4J004AB01
4J004BA03
4J004DA02
4J004DA03
4J004DB02
4J004EA05
4J004FA05
4J004FA08
4J040DF041
4J040DF051
4J040EF001
4J040EG001
4J040GA05
4J040GA07
4J040JA09
4J040JB09
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB13
4J040NA17
4J040NA19
4J040PA23
(57)【要約】
【課題】粘着剤層を有する積層フィルムを効率よく製造するのに適した積層フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】積層フィルムの製造方法は、ハーフカット工程とフルカット工程とを含む。ハーフカット工程では、キャリアフィルムCとフィルム層10と粘着剤層20とフィルム層30とを厚さ方向Hにこの順で備えるワークフィルムWに対するフィルム層30側からのレーザー光L1の照射および走査により、フィルム層10および粘着剤層20を溶断してハーフカット溝G1を形成する。フルカット工程では、ワークフィルムWに対するフィルム層30側からのレーザー光L2の照射および走査により、フィルム層30、粘着剤層20およびフィルム層10を溶断してフルカット溝G2を形成する。ハーフカット溝G1とフルカット溝G2とは、互いに隣接して並行に延び、且つ、当該延び方向において連続的に、隣接方向に繋がっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層を有する積層フィルムのロールトゥロール方式の製造方法であって、
キャリアフィルムと、第1フィルム層と、粘着剤層と、第2フィルム層とを厚さ方向にこの順で備える長尺のワークフィルムを用意する用意工程と、
前記ワークフィルムに対し、前記第2フィルム層側から第1レーザー光を照射および走査することにより、前記第2フィルム層および前記粘着剤層を溶断してハーフカット溝を形成する、ハーフカット工程と、
前記ワークフィルムに対し、前記第2フィルム層側から第2レーザー光を照射および走査することにより、前記第2フィルム層、前記粘着剤層および前記第1フィルム層を溶断してフルカット溝を形成する、フルカット工程とを含み、
前記ハーフカット溝と前記フルカット溝とが、互いに隣接して並行に延び、且つ、当該延び方向において連続的に、前記隣接方向に繋がっている、粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記ハーフカット工程では、前記第1レーザー光の照射および走査による前記第2フィルム層および前記粘着剤層の溶断を、前記走査の方向と交差する方向に溶断箇所をずらして複数回繰り返すことにより、前記ハーフカット溝を形成する、請求項1に記載の粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記ハーフカット工程の前および後に、前記ワークフィルムを弛ませることを含まない、請求項1に記載の粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記フルカット工程の前および後に、前記ワークフィルムを弛ませることを含まない、請求項1に記載の粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法。
【請求項5】
隣り合う前記ハーフカット溝および前記フルカット溝に露出する第1フィルム層および粘着剤層において、前記第1フィルム層の面方向における外方端と、前記粘着剤層の前記面方向における内方端との間の距離が、1mm以下である、請求項1から4のいずれか一つに記載の粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記ワークフィルムの長さ方向において、第1の前記ハーフカット溝と、前記フルカット溝と、第2の前記ハーフカット溝とがこの順で隣り合って繋がるように形成され、前記第1のハーフカット溝、前記フルカット溝および前記第2のハーフカット溝を介して前記長さ方向に隣り合う粘着剤層の間の離隔距離が2mm以下である、請求項1から4のいずれか一つに記載の粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記第1レーザー光が、ガウシアン型レーザー光またはトップハット型レーザー光である、請求項1から4のいずれか一つに記載の粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイパネルは、例えば、画素パネル、偏光フィルム、タッチパネルおよびカバーフィルムなどの要素を含む積層構造を有する。そのようなディスプレイパネルの製造過程では、積層構造に含まれる要素どうしの接合のために、例えば、光学的に透明な粘着シート(光学粘着シート)が用いられる。光学粘着シートは、例えば、同シートの両面がはく離ライナーで被覆された形態(粘着剤層を有する積層フィルムの形態)で製造される。
【0003】
一方、例えばスマートフォン用およびタブレット端末用に、繰り返し折り曲げ可能(フォルダブル)なディスプレイパネルの開発が進んでいる。フォルダブルディスプレイパネルは、具体的には、屈曲形状とフラットな非屈曲形状との間で、繰り返し変形可能である。このようなフォルダブルディスプレイパネルでは、積層構造中の各要素が、繰り返し折り曲げ可能に作製されており、そのような要素間の接合に薄い光学粘着シートが用いられている。フォルダブルディスプレイパネルなどフレキシブルデバイス用の光学粘着シートについては、例えば下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ディスプレイパネル用の光学粘着シートは、従来、例えば次のようにして製造される。
【0006】
まず、
図18Aに示すように、ワークフィルムW’を用意する。ワークフィルムW’は、長尺の原反シートとしての積層シート90と、積層シート90を支持する長尺のキャリアフィルムC’とからなる。積層シート90は、はく離ライナー91と、粘着剤層92と、はく離ライナー93とを、厚さ方向Hにこの順で有する。はく離ライナー91は、粘着剤層92の一方面に剥離可能に接している。はく離ライナー93は、粘着剤層92の他方面に剥離可能に接している。キャリアフィルムC’は、積層シート90をはく離ライナー91側から支持する。
【0007】
次に、
図18Bに示すように、積層シート90の粘着剤層92に対するプレス加工により、複数の枚葉状の粘着シート92Aを形成する(プレス加工工程)。プレス加工では、
図19に示すように、積層シート90に対して、刃型100の刃101を、はく離ライナー93側からはく離ライナー91に至るまで押し入れる。これにより、粘着剤層92において、所定の平面視形状の粘着シート92Aを形成する。本工程では、粘着剤層92における粘着シート92Aまわりに、周囲部92aが形成される。はく離ライナー93もプレス加工されて、粘着剤層92と同一の平面視形状のはく離ライナー93Aが形成され、はく離ライナー93Aまわりに周囲部93aが形成される。また、積層シート90において、はく離ライナー93側からはく離ライナー91に至る切断溝95(
図18B)が形成される。
【0008】
図20は、従来のプレス加工工程の一例を表す。
図20に示すプレス加工工程では、製造ラインを流れるワークフィルムW’が、一対のニップローラ201,201間と、プレス加工機202と、一対のニップローラ203,203間とを、この順で通過する。プレス加工機202は、間欠送り装置と、加工ステージと、同ステージの上方に配置された刃型とを備える(いずれも図示略)。一対のニップローラ201,201とプレス加工機202との間では、ワークフィルムW’は弛ませられる。プレス加工機202と一対のニップローラ203,203との間では、ワークフィルムW’は弛ませられる。ニップローラ201,201とニップローラ203,203との間では、ワークフィルムW’は、プレス加工機202の間欠送り装置によって間欠的に送られる。これにより、ワークフィルムW’における未加工領域が、プレス加工機202の加工ステージ上に間欠的に供給される。加工ステージ上では、間欠的に供給されるワークフィルムW’の未加工領域ごとに、刃型によるプレス加工が実施される。
【0009】
このようなプレス加工工程の後、
図18Cに示すように、はく離ライナー91上から周囲部92a,93a(
図18B)を除去する(除去工程)。この後、
図18Dに示すように、別のプレス加工機でのプレス加工により、長尺のはく離ライナー91が枚葉状のはく離ライナー91Aに切断される。これにより、粘着剤層を有する枚葉状の積層フィルム90A(はく離ライナー91A/粘着シート92A/はく離ライナー93A)が得られる。
【0010】
はく離ライナー91Aは、厚さ方向Hと直交する面方向Dにおいて、粘着シート92Aの端縁よりも外方に延出する延出端部91aを有する。このような延出端部91aを有するはく離ライナー91Aを備える積層フィルム90Aは、粘着シート92Aがフィルム端部からはみ出るのを抑制するのに役立つ。粘着シート92A(粘着剤層)の当該はみ出しは、積層フィルム90Aを積み重ねた場合に、隣り合う積層フィルム90Aの粘着シート92Aの端部どうしが付着すること(ブロッキング)の原因となり、好ましくない。
【0011】
上述の従来の製造方法では、プレス加工機202の加工ステージ上に間欠的に送られてくる、ワークフィルムW’の未加工領域ごとに、プレス加工工程(
図18B)が実施される。すなわち、粘着シートの外形加工のために、ワークフィルムW’の搬送と搬送停止とが交互に繰り返される。このような間欠送りを実現するためには、間欠送り装置が必要であり、且つ、同装置を制御する必要がある。このような従来の製造方法は、粘着剤層を有する積層フィルムの製造効率の観点から好ましくない。
【0012】
また、上述の従来の製造方法では、プレス加工工程(
図18B)の後、除去工程(
図18C)が必要である。除去工程により、はく離ライナー91上で隣り合う粘着シート92A間において、はく離ライナー91が露出する。そして、はく離ライナー91における当該露出箇所が切断工程(
図18D)で切断されることにより、延出端部91aを有するはく離ライナー91Aが形成される。しかしながら、上述の除去工程は、粘着剤層を有する積層フィルムの製造効率を低下させる。
【0013】
本発明は、粘着剤層を有する積層フィルムを効率よく製造するのに適した積層フィルムの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明[1]は、粘着剤層を有する積層フィルムのロールトゥロール方式の製造方法であって、キャリアフィルムと、第1フィルム層と、粘着剤層と、第2フィルム層とを厚さ方向にこの順で備える長尺のワークフィルムを用意する用意工程と、前記ワークフィルムに対し、前記第2フィルム層側から第1レーザー光を照射および走査することにより、前記第2フィルム層および前記粘着剤層を溶断してハーフカット溝を形成する、ハーフカット工程と、前記ワークフィルムに対し、前記第2フィルム層側から第2レーザー光を照射および走査することにより、前記第2フィルム層、前記粘着剤層および前記第1フィルム層を溶断してフルカット溝を形成する、フルカット工程とを含み、前記ハーフカット溝と前記フルカット溝とが、互いに隣接して並行に延び、且つ、当該延び方向において連続的に、前記隣接方向に繋がっている、粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法を含む。
【0015】
粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法は、上記のように、ハーフカット工程およびフルカット工程を含む。ハーフカット工程では、第1レーザー光の照射および走査により、ハーフカット溝(ワークフィルムにおいて第2フィルム層側から第1フィルム層に至る)が形成される。これにより、粘着剤層および第2フィルム層が外形加工される。すなわち、粘着剤層において、個片化された粘着剤層が形成され、第2フィルム層において、個片化された第2フィルムが形成される。フルカット工程では、第2レーザー光の照射および走査により、フルカット溝(ワークフィルムにおいて第2フィルム層側からキャリアフィルムに至る)が形成される。これにより、第1フィルム層は外形加工される。すなわち、第1フィルム層において、個片化された第1フィルムが形成される。ハーフカット工程およびフルカット工程がこの順で実施されるか、または、フルカット工程およびハーフカット工程がこの順で実施されて、ハーフカット溝とフルカット溝とが隣接して形成される。ハーフカット溝とフルカット溝とは、具体的には、互いに隣接して並行に延び、且つ、当該延び方向において連続的に、隣接方向に繋がっている。個片化された第1フィルムにおいて、ハーフカット溝およびフルカット溝に臨む部分は、厚さ方向と直交する面方向において、当該第1フィルム上の、個片化された粘着剤層の端縁よりも、外方に延出している。したがって、本製造方法によると、粘着剤層を有する積層フィルム(第1フィルムと、粘着剤層と、第3フィルムとを厚さ方向にこの順で備える)であって、第1フィルムが延出端部を有する積層フィルムを、製造できる。
【0016】
本製造方法では、粘着剤層を有する積層フィルムがレーザー加工によって外形加工される。レーザー加工は、ワークフィルムを連続的に流しながら連続的に外形加工するのに適する(外形加工のためにワークフィルムを間欠的に送る必要がない)。したがって、本製造方法は、粘着剤層を有する積層フィルムを効率よく製造するのに適する。
【0017】
本製造方法のハーフカット工程において、ワークフィルムに対してレーザー光が照射された部分では、ワークフィルムの材料が蒸発して除去される。これにより、ハーフカット溝が形成される。フルカット工程においも、ワークフィルムに対してレーザー光が照射された部分では、ワークフィルムの材料が蒸発して除去される。これにより、フルカット溝が形成される。そして、ハーフカット溝とフルカット溝とは、上記のように、互いに隣接して並行に延び、且つ、当該延び方向において連続的に、隣接方向に繋がっている。このように繋がっているハーフカット溝およびフルカット溝により、キャリアフィルム上の積層フィルム(第1フィルム,粘着剤,第2フィルム)の外形が規定さている。そのため、本製造方法においては、従来の製造方法に関して上述した除去工程(外形加工された粘着剤層等の周りの周囲部を除去する工程)が必要ない。したがって、本製造方法は、粘着剤層を有する積層フィルムを効率よく製造するのに適する。
【0018】
以上のように、本製造方法は、粘着剤層を有する積層フィルム(第1フィルムと、粘着剤層と、第3フィルムとを厚さ方向にこの順で備える)を効率よく製造するのに適する。
【0019】
本発明[2]は、前記ハーフカット工程では、前記第1レーザー光の照射および走査による前記第2フィルム層および前記粘着剤層の溶断を、前記走査の方向と交差する方向に溶断箇所をずらして複数回繰り返すことにより、前記ハーフカット溝を形成する、上記[1]に記載の粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法を含む。
【0020】
このようなハーフカット工程は、幅広のハーフカット溝を形成するのに好ましい。ハーフカット溝の溝幅が大きいほど、より長い延出端部を有する第1フィルムを備える積層フィルムを製造できる。延出端部が長いほど、上述のブロッキングを抑制できる。
【0021】
本発明[3]は、前記ハーフカット工程の前および後に、前記ワークフィルムを弛ませることを含まない、上記[1]または[2]に記載の粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法を含む。
【0022】
このような製造方法は、製造ラインにおけるハーフカット工程の前および後にワークフィルムを弛ませるための調整・制御が不要であり、粘着剤層を有する積層フィルムを効率よく製造するのに好ましい。
【0023】
本発明[4]は、前記フルカット工程の前および後に、前記ワークフィルムを弛ませることを含まない、上記[1]から[3]に記載の粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法を含む。
【0024】
このような製造方法は、製造ラインにおけるフルカット工程の前および後にワークフィルムを弛ませるための調整・制御が不要であり、粘着剤層を有する積層フィルムを効率よく製造するのに好ましい。
【0025】
本発明[5]は、隣り合う前記ハーフカット溝および前記フルカット溝に露出する第1フィルム層および粘着剤層において、前記第1フィルム層の面方向における外方端と、前記粘着剤層の前記面方向における内方端との間の距離が、1mm以下である、上記[1]から[4]のいずれか一つに記載の粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法を含む。
【0026】
ハーフカット溝およびフルカット溝に露出する第1フィルム層の面方向における外方端と、粘着剤層の面方向における内方端との間の領域は、製造される積層フィルムの端部検知用のアライメントマーク(エッジアライメントマーク)として利用できるエッジ領域の一部である。したがって、第1フィルム層の面方向外方端と、粘着剤層の面方向内方端との間の距離が1mm以下である構成は、エッジアライメントマークの、検出用カメラによる誤検知を抑制するのに好ましい(エッジアライメントマークが大きすぎると、誤検知を生じる)。
【0027】
本発明[6]は、前記ワークフィルムの長さ方向において、第1の前記ハーフカット溝と、前記フルカット溝と、第2の前記ハーフカット溝とがこの順で隣り合って繋がるように形成され、前記第1のハーフカット溝、前記フルカット溝および前記第2のハーフカット溝を介して前記長さ方向に隣り合う粘着剤層の間の離隔距離が2mm以下である、上記[1]から[5]のいずれか一つに記載の粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法を含む。
【0028】
このような構成は、積層フィルムの高い生産性を実現するのに好ましい。
【0029】
本発明[7]は、前記第1レーザー光が、ガウシアン型レーザー光またはトップハット型レーザー光である、上記[1]から[6]のいずれか一つに記載の粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法を含む。
【0030】
このような構成は、ハーフカット工程においてハーフカット溝を適切に形成するのに好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の積層フィルム製造方法の第1の実施形態の工程図である。
図1Aは用意工程を表し、
図1Bはハーフカット工程を表し、
図1Cはフルカット工程を表す。
【
図2】ワークフィルムにおけるハーフカット工程(
図1B)後の領域の一例の模式的な平面図である。
【
図3】ワークフィルムにおけるフルカット工程(
図1C)後の領域の一例の模式的な平面図である。
【
図4】フルカット工程(
図1C)後のワークフィルムの部分拡大断面図である。
【
図5】ハーフカット工程およびフルカット工程を実施するレーザー加工装置の斜視図である。
【
図6】
図5に示すレーザー加工装置の断面図である。
【
図7】レーザー加工ユニットの内部構成の模式図である。
【
図9】ハーフカット工程の変形例を表す。本変形例では、第1レーザー光の照射および走査による第2フィルム層および粘着剤層の溶断が、走査方向と交差する方向に溶断箇所をずらして複数回繰り返され、ハーフカット溝が形成される。
【
図10】ワークフィルムにおける
図9に示すハーフカット工程後の領域の一例の模式的な平面図である。
【
図11】
図9に示すハーフカット工程後のフルカット工程を表す。
【
図12】ワークフィルムにおける
図11に示すフルカット工程後の領域の一例の模式的な平面図である。
【
図13】
図10に示すフルカット工程後のワークフィルムの部分拡大断面図である。
【
図14】本発明の積層フィルム製造方法の変形例の工程図である。
図14Aはフルカット工程を表し、
図14Bはハーフカット工程を表す。
【
図15】本発明の積層フィルム製造方法の第2の実施形態の工程図である。
図15Aは用意工程を表し、
図15Bはハーフカット工程を表し、
図15Cはフルカット工程を表す。
【
図16】ワークフィルムにおけるハーフカット工程(
図15B)後の領域の一例の模式的な平面図である。
【
図17】ワークフィルムにおけるフルカット工程(
図15C)後の領域の一例の模式的な平面図である。
【
図18】従来の粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法の一例を表す。
図18Aはワークフィルムを用意する工程を表し、
図18Bはプレス加工工程を表し、
図18Cは除去工程を表し、
図18Dは切断工程を表す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の第1の実施形態としての積層フィルム製造方法は、粘着剤層を有する枚葉状の積層フィルムのロールトゥロール方式での製造方法である。本製造方法は、
図1Aから
図1Cに示すように、用意工程(
図1A)と、ハーフカット工程(
図1B)と、フルカット工程(
図1C)とを含む。
【0033】
用意工程では、
図1Aに示すように、長尺のワークフィルムWを用意する。ワークフィルムWは、積層フィルムXと、キャリアフィルムCとを含む。積層フィルムXは、長尺の原反フィルムである。キャリアフィルムCは、積層フィルムXを支持する。
【0034】
積層フィルムXは、フィルム層10(第1フィルム層)と、粘着剤層20と、フィルム層30(第2フィルム層)とを、厚さ方向Hにこの順で備える。粘着剤層20は、第1面20aと、当該第1面20aとは反対の第2面20bとを有する。フィルム層10は第1面20aに接している。フィルム層30は第2面20bに接している。積層フィルムXは、厚さ方向Hと直交する面方向に広がる。
【0035】
キャリアフィルムCは、厚さ方向Hの一方側に粘着面を有する片面粘着フィルムである。ワークフィルムWにおいて、キャリアフィルムCの粘着面が積層フィルムXのフィルム層10側に貼り合わせられている。すなわち、ワークフィルムWは、具体的には、キャリアフィルムCと、フィルム層10と、粘着剤層20と、フィルム層30とを厚さ方向Hにこの順で備える。
【0036】
また、キャリアフィルムCは、本実施形態では、ワークフィルムWの流れ方向D1と直交する幅方向D2(
図2,
図3)において、積層フィルムXよりも幅広である。積層フィルムXは、キャリアフィルムC上において、幅方向D2の中央位置に配置される。積層フィルムXの幅(幅方向D2の長さ)は、例えば200mm以上、好ましくは280mm以上、より好ましくは400mm以上であり、また、例えば2000mm以下、好ましくは1800mm以下、より好ましくは1600mm以下である。このようなワークフィルムWが、製造ラインを流される。
【0037】
フィルム層10は、本実施形態では、はく離ライナーである。はく離ライナーの材料としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、およびポリカーボネートが挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリブチレンテレフタレートが挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびシクロオレフィンポリマー(COP)が挙げられる。はく離ライナーとしてのフィルム層10は、粘着剤層20の第1面20aに剥離可能に接している。そのようなフィルム層10の表面(粘着剤層20側の表面)は、好ましくは剥離処理されている。剥離処理としては、例えば、シリコーン剥離処理およびフッ素剥離処理が挙げられる。フィルム層10の厚さは、粘着剤層20に対する保護機能を確保する観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、更に好ましくは20μm以上である。フィルム層10の厚さは、積層フィルムXの薄型化の観点から、好ましくは150μm以下、より好ましくは120μm以下、更に好ましくは100μm以下である。
【0038】
粘着剤層20は、粘着剤組成物から形成されている。粘着剤組成物は、ベースポリマーを含む。ベースポリマーは、粘着性を発現させる粘着成分である。ベースポリマーとしては、例えば、アクリルポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリアミドポリマー、およびポリビニルエーテルポリマーが挙げられる。ベースポリマーは、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。粘着剤層20における良好な透明性および粘着性を確保する観点から、ベースポリマーとしては、好ましくはアクリルポリマーが用いられる。
【0039】
アクリルポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルを50質量%以上の割合で含むモノマー成分の重合体である。「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。(メタ)アクリル酸エステルとしては、好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられ、より好ましくは、アルキル基の炭素数が1~20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられる。モノマー成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な共重合性モノマーを含んでもよい。共重合性モノマーとしては、例えば、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、および窒素原子含有環を有するモノマーが挙げられる。
【0040】
粘着剤層20のヘイズは、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下である。粘着剤層20のヘイズは、JIS K7136(2000年)に準拠して、ヘイズメーターを使用して測定できる。ヘイズメーターとしては、例えば、日本電色工業社製の「NDH2000」、および、村上色彩技術研究所社製の「HM-150型」が挙げられる。
【0041】
粘着剤層20の25℃でのせん断貯蔵弾性率は、粘着剤層20の凝集力を確保する観点から、好ましくは10kPa以上、より好ましくは15kPa以上、更に好ましくは20kPa以上、特に好ましくは25kPa以上である。粘着剤層20の25℃でのせん断貯蔵弾性率は、フレキシブルデバイス用途の光学粘着シートに求められる柔らかさを粘着剤層20において実現する観点から、100kPa以下であり、好ましくは80kPa以下、より好ましくは70kPa以下、更に好ましくは60kPa以下、特に好ましくは50kPa以下である。せん断貯蔵弾性率の調整方法としては、例えば、粘着剤層20におけるベースポリマーの種類の選択、分子量の調整、配合量の調整、ガラス転移温度の調整、および架橋度の調整が挙げられる。せん断貯蔵弾性率の調整方法としては、粘着剤層20におけるベースポリマー以外の成分の選択および配合量の調整も挙げられる。粘着剤層のせん断貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定によって求められる。同測定は、Rheometric Scientific社製の動的粘弾性測定装置「Advanced Rheometric Expansion System (ARES)」によって実施できる。同測定では、測定モードをせん断モードとし、測定温度範囲を-40℃~100℃とし、昇温速度を5℃/分とし、周波数を1Hzとする。
【0042】
フィルム層30は、例えば、はく離ライナー、機能性光学フィルム、または基材フィルム(支持フィルム)である。
【0043】
はく離ライナーの材料としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、およびポリカーボネートが挙げられる。具体的には、フィルム層10に関して上記したはく離ライナーの材料が挙げられる。はく離ライナーとしてのフィルム層30は、粘着剤層20の第2面20bに剥離可能に接している。そのようなフィルム層30の表面(粘着剤層20側の表面)は、好ましくは剥離処理されている。剥離処理としては、例えば、シリコーン剥離処理およびフッ素剥離処理が挙げられる。はく離ライナーとしてのフィルム層30の厚さは、粘着剤層20に対する保護機能を確保する観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、更に好ましくは20μm以上である。はく離ライナーとしてのフィルム層30の厚さは、積層フィルムXの薄型化の観点から、好ましくは150μm以下、より好ましくは120μm以下、更に好ましくは100μm以下である。
【0044】
機能性光学フィルムとしては、例えば、偏光フィルムおよび位相差フィルムが挙げられる。機能性光学フィルムは、パネル補強材などの他の光学フィルムであってもよい。フィルム層30が機能性光学フィルムである場合、そのようなフィルム層30に対し、粘着剤層20の第2面20bは接合している。機能性光学フィルムとしてのフィルム層30と、粘着剤層20とは、粘着剤層付き機能性光学フィルムを形成する。
【0045】
偏光フィルムとしては、例えば、二色性物質による染色処理とその後の延伸処理とを経た親水性高分子フィルムが挙げられる。二色性物質としては、例えば、ヨウ素および二色性染料が挙げられる。親水性高分子フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、部分ホルマール化PVAフィルム、および、エチレン・酢酸ビニル共重合体の部分ケン化フィルムが挙げられる。偏光フィルムとしては、ポリエン配向フィルムも挙げられる。ポリエン配向フィルムの材料としては、例えば、PVAの脱水処理物、および、ポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物が挙げられる。偏光フィルムは、厚さ方向の一方面および/または他方面に、接着剤を介して接合された保護フィルムを有していてもよい。偏光フィルムの厚さは、偏光フィルムの機能、強度および耐久性を確保する観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上である。偏光フィルムの厚さは、積層フィルムXの薄型化の観点から、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下である。
【0046】
位相差フィルムとしては、例えば、λ/2波長フィルムおよびλ/4波長フィルム、および視野角補償フィルムが挙げられる。位相差フィルムの材料としては、例えば、延伸処理によって複屈折化された高分子フィルムが挙げられる。高分子フィルムとしては、例えば、セルロースフィルムおよびポリエステルフィルムが挙げられる。セルロースフィルムとしては、例えばトリアセチルセルロースフィルムが挙げられる。ポリエステルフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、およびポリブチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。位相差フィルムとしては、セルロースフィルムなどの基材と、当該基材上の配向層とを備えるフィルムも挙げられる。配向層は、液晶性ポリマーなどの液晶化合物から形成される。位相差フィルムの厚さは、位相差フィルムの機能および強度を確保する観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上である。位相差フィルムの厚さは、積層フィルムXの薄型化の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下である。
【0047】
基材フィルムの材料としては、例えば、はく離ライナーの材料として上記した材料が挙げられる。フィルム層30が基材フィルムである場合、そのようなフィルム層30に対し、粘着剤層20の第2面20bは接合している。基材フィルムとしてのフィルム層30と、粘着剤層20とは、例えば、片面粘着シートを形成する。基材フィルムとしてのフィルム層30と、粘着剤層20とは、粘着剤層付き表面保護フィルムを形成してもよい。基材フィルムの厚さは、基材としての強度を確保する観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上である。基材フィルムの厚さは、積層フィルムXの薄型化の観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下である。
【0048】
積層フィルムXは、例えば次のようにして製造できる。まず、上述の粘着剤組成物をフィルム層30上に塗布して塗膜を形成する。次に、フィルム層30上の塗膜の上にフィルム層10を貼り合わせる。次に、フィルム層10,30間の塗膜を乾燥させ、且つ、必要に応じて塗膜に対して光照射する。これにより、フィルム層10,30間に粘着剤層20を形成する。粘着剤組成物の塗布方法としては、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、およびダイコートが挙げられる。塗膜の乾燥温度は、例えば50℃~200℃である。乾燥時間は、例えば5秒~20分である。
【0049】
ハーフカット工程では、
図1Bに示すように、ワークフィルムWに対するレーザー加工によってハーフカット溝G1を形成する。具体的には、レーザー加工装置により、ワークフィルムWに対してフィルム層30側からレーザー光L1(第1レーザー光)を照射および走査することにより、積層フィルムXにおいてフィルム層30および粘着剤層20を溶断してハーフカット溝G1を形成する。ハーフカット溝G1は、ワークフィルムWにおける所定の加工予定ライン(設計上の切断ライン)をたどるように形成される。これにより、粘着剤層20において、個片化された粘着剤層21と、粘着剤層21まわりの周囲部22とが形成される。また、フィルム層30において、粘着剤層21上のフィルム31と、フィルム31まわりの周囲部32とが形成される。フィルム層10には、溝G1a(ハーフカット溝G1の一部)が形成される。溝G1aは、粘着剤層21の端面21eに沿って形成される。
図2は、ワークフィルムWにおけるハーフカット工程後の領域の一例を模式的に表す平面図である。
図2では、ハーフカット溝G1を、ハッチングを付して示す。
図1Bに示される部分断面図は、
図2に示すワークフィルムWにおけるI-I線に沿った部分断面図に相当する。
【0050】
レーザー加工用のレーザーとしては、例えば、気体レーザー、固体レーザー、および半導体レーザーが挙げられる。気体レーザーとしては、例えば、エキシマレーザーおよびCO
2レーザー(10.6μm)が挙げられる(括弧内の数値はレーザー波長を表す。レーザーに関して以下同じ)。エキシマレーザーとしては、例えば、F
2エキシマレーザー(157nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、KrFエキシマレーザー(248nm)、およびXeClエキシマレーザー(308nm)が挙げられる。固体レーザーとしては、例えば、Nd:YAGレーザー(1064nm)、Nd:YAGレーザーの第2高調波(532nm)、Nd:YAGレーザーの第3高調波(355nm)、およびNd:YAGレーザーの第4高調波(266nm)が挙げられる。半導体レーザーとしては、例えば、波長405nmの半導体レーザーが挙げられる。ハーフカット工程(
図1B)のレーザー光L1としては、材質および光学特性(吸光度など)の異なる粘着剤層20とフィルム層30とを共に適切に切断する観点から、CO
2レーザーが好ましい。
【0051】
レーザー光L1は、好ましくは、ガウシアン型レーザー光またはトップハット型レーザー光である。このような構成は、ハーフカット工程においてハーフカット溝G1を適切に形成するのに好ましい。ガウシアン型レーザー光とは、エネルギー強度分布がガウシアン分布のレーザー光である。トップハット型レーザー光とは、エネルギー強度分布がトップハット形状のレーザー光である。
【0052】
レーザー光L1の出力は、例えば2~500Wである。レーザー光L1のパルスの周波数は、例えば10~30kHzである。レーザー光L1のワークフィルムW上でのスポット径は、例えば50~500μmである。
【0053】
フルカット工程では、
図1Cに示すように、ワークフィルムWに対するレーザー加工によってフルカット溝G2を形成する。具体的には、レーザー加工装置により、ワークフィルムWに対してフィルム層30側からレーザー光L2(第2レーザー光)を照射および走査することにより、積層フィルムXにおいてフィルム層30、粘着剤層20およびフィルム層10を溶断してフルカット溝G2を形成する。フルカット溝G2は、
図3に示すように、ハーフカット溝G1に沿って形成される(
図3では、フルカット溝G2を、ハーフカット溝G1のハッチングよりも細かいハッチングを付して示す)。
図1Cに示される部分断面図は、
図3に示すワークフィルムWにおけるII-II線に沿った部分断面図に相当する。ハーフカット溝G1とフルカット溝G2とは、互いに隣接して並行に延び、且つ、当該延び方向において連続的に、隣接方向に繋がっている。本実施形態では、流れ方向D1において隣り合う積層フィルム形成領域間では、流れ方向D1に隣り合うハーフカット溝G1aとハーフカット溝G1bとの間に、一つのフルカット溝G2が形成される。
【0054】
フルカット工程(
図1C)のレーザー光L2としては、材質および光学特性(吸光度など)の異なる粘着剤層20およびフィルム層10,30を適切に切断する観点から、CO
2レーザーが好ましい。レーザー光L2は、ガウシアン型レーザー光であってもよいし、トップハット型レーザー光であってもよい。レーザー光L2の出力は、例えば2~500Wである。レーザー光L2のパルスの周波数は、例えば10~30kHzである。レーザー光L2のワークフィルムW上でのスポット径は、例えば50~500μmである。
【0055】
本工程では、隣り合うハーフカット溝G1間においては、周囲部22,32が蒸発して除去され、フィルム層10においては、個片化されたフィルム11が形成される。そして、キャリアフィルムC上には、積層フィルムY(粘着剤層を有する積層フィルム)が形成される。
【0056】
積層フィルムYは、フィルム11と、粘着剤層21と、フィルム31とを厚さ方向Hにこの順で備える。粘着剤層21は、第1面21aと、当該第1面21aとは反対側の第2面21bとを有する。フィルム11は、第1面21aに接する。フィルム31は、第2面21bに接する。フィルム11は、延出端部12を有する。延出端部12は、
図4に示すように、厚さ方向Hと直交する面方向Dにおいて、粘着剤層21の端面21eよりも外方に延出している。延出端部12は、粘着剤層21の端面21eと面一で繋がる表面12aと、当該表面12aより面方向Dにおいて外側の表面12bとを有し、且つ、フィルム11において粘着剤層21と接する主領域部11Aより薄い。本実施形態では、表面12aと表面12bとの間に頂部12cが形成されている。フィルム31は、粘着剤層21の端面21eと面一で繋がる端面31eを有する。
【0057】
積層フィルムYの端部において、端面31eと、端面21eと、表面12aにおいて端面21eに隣接する部分とは、厚さ方向HにおいてキャリアフィルムCに向かうに従って、外側に広がり且つ曲率半径が小さくなる湾曲形状(R形状)を形成する。また、延出端部12の表面12bは、厚さ方向HにおいてキャリアフィルムCに向かうに従って外側に広がるように、傾斜または湾曲している。
【0058】
積層フィルムYにおける上述のブロッキングの抑制の観点から、面方向D(平面図において、端面21eと直交する方向)における、端面21eからの延出端部12の延出長さd1は、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上である。積層フィルムYの効率的製造の観点から、延出長さd1は、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.4mm以下である。
【0059】
フィルム11の主領域部11Aの厚さh1に対する、延出端部12の最小厚さh2の比率(h2/h1)は、延出端部12の強度の確保の観点から、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上である。比率(h2/h1)は、例えば0.7以下、0.8以下または0.9以下である。
【0060】
隣り合うハーフカット溝G1およびフルカット溝G2に露出するフィルム11(フィルム層10の一部)および粘着剤層21(粘着剤層20の一部)において、面方向Dにおけるフィルム11の外方端と、粘着剤層21の内方端との間の距離d
2(
図4)は、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.7mm以下である。距離d
2は、例えば0.1mm以上または0.2mm以上である。ハーフカット溝G1およびフルカット溝G2に露出するフィルム11の面方向Dにおける外方端と、粘着剤層21の面方向Dにおける内方端との間の領域は、製造される積層フィルムYの端部検知用のアライメントマーク(エッジアライメントマーク)として利用できるエッジ領域の一部である。距離d
2が1mm以下(好ましくは0.7mm以下)である場合、エッジアライメントマークの、検出用カメラによる誤検知を抑制できる(エッジアライメントマークが大きすぎると、誤検知を生じる)。
【0061】
ワークフィルムWの流れ方向D1(長さ方向)において隣り合う積層フィルムY間では、一のハーフカット溝G1と、フルカット溝G2と、別のハーフカット溝G1とがこの順で隣り合って繋がるように形成されている。一のハーフカット溝G1、フルカット溝G2および別のハーフカット溝G1を介して流れ方向D1に隣り合う粘着剤層21(粘着剤層20の一部)の間の離隔距離d
3(
図4)は、好ましくは2mm以下、より好ましくは1.7mm以下、更に好ましくは1.5mm以下である。このような構成は、積層フィルムYの高い生産性を実現するのに好ましい。離隔距離d
3は、例えば0.5mm以上、0.7mm以上または1.0mm以上である。
【0062】
本実施形態では、上述のハーフカット工程(
図1B)およびフルカット工程(
図1C)を実施するレーザー加工装置として、
図5および
図6に示すレーザー加工装置100が用いられる。
【0063】
レーザー加工装置100は、本実施形態では、加工ステージ110と、レーザー加工ユニット120と、制御部(図示略)とを備える。
図5および
図6は、レーザー加工装置100が2台のレーザー加工ユニット120(120A,120B)を備える場合を例示的に図示する。上述のハーフカット工程は、レーザー加工ユニット120Aにて実施される。上述のフルカット工程は、レーザー加工ユニット120Bにて実施される。
【0064】
加工ステージ110は、製造ラインを流れるワークフィルムWを支持するステージである。加工ステージ110は、
図6に示すように、支持テーブル111と、吸引路112とを有する。支持テーブル111は、加工ステージ110において、ワークフィルムWに対する支持面を形成する。支持テーブル111は、当該支持テーブル111を厚さ方向Hに貫通する複数の吸引孔111aを有する。吸引路112は、加工ステージ110内に形成された空間である。吸引路112は、支持テーブル111の下方に位置する。支持テーブル111の各吸引孔111aは、吸引路112と連通する。吸引路112は、減圧ポンプ(図示略)の吸引路と連結されている。減圧ポンプの稼働により、吸引路112は減圧される。減圧ポンプは、制御部による制御に従って、稼働状態と非稼働状態とを選択可能である。支持テーブル111上にワークフィルムWがある場合、吸引路112が減圧されることにより、ワークフィルムWは加工ステージ110の支持テーブル111に対して吸引される。
【0065】
加工ステージ110の製造ライン上流側には、
図5に示すように、一対のニップローラN1,N1が配置されている。一対のニップローラN1,N1によってワークフィルムWを挟んだ状態で各ニップローラN1を一定速度で回転させることにより、ワークフィルムWを引っ張って加工ステージ110に向けて送る。一方、加工ステージ110の製造ライン下流側には、一対のニップローラN2,N2が配置されている。一対のニップローラN2,N2によってワークフィルムWを挟んだ状態で各ニップローラN2を一定速度で回転させることにより、ワークフィルムWを引っ張ってニップローラN2,N2より下流側に向けて送る。ニップローラN1,N1とニップローラN2,N2とにより、ワークフィルムWは、加工ステージ110の支持ステージ111上を同フィルムの長さ方向(流れ方向D1)に流される。この状態において加工ステージ110の吸引路112(
図6)が減圧されることにより、ワークフィルムWは、加工ステージ110に吸引されつつ、加工ステージ110上をスライド走行する。このことは、レーザー加工(ハーフカット工程,フルカット工程)において、ワークフィルムWの粘着剤層20に対してレーザー光L(ハーフカット工程ではレーザー光L1,フルカット工程ではL2)の焦点を高精度に合わせるのに好ましく、従って、ワークフィルムWを効率的かつ高精度に切断するのに好ましい。
【0066】
レーザー加工ユニット120は、
図7に模式的に示すように、筐体121と、レーザー光源122と、ビームエキスパンダ123と、可動レンズ124と、集光レンズ125と、ガルバノスキャナSとを備える。レーザー光源122、ビームエキスパンダ123、可動レンズ124、集光レンズ125、およびガルバノスキャナSは、筐体121内に収容されている。筐体121はレーザー光出射口(図示略)を有する。
【0067】
レーザー光源122は、レーザー光L(ハーフカット工程ではレーザー光L1,フルカット工程ではレーザー光L2)を発振する。レーザー光源としては、材質および光学特性(吸光度など)の異なる複数の層を適切に切断する観点から、CO2レーザー光源が好ましい。
【0068】
ビームエキスパンダ123は、レーザー光Lのビームサイズを調整する光学部品である。ビームエキスパンダ123と可動レンズ124との間には、他の光学部品が配置されてもよい。他の光学部品としては、例えば、コリメータレンズおよびホモジナイザが挙げられる。
【0069】
可動レンズ124は、レーザー光Lの光軸方向に変位可能なレンズである。可動レンズ124が光軸方向に変位することにより、集光レンズ125で集光されるレーザー光Lの焦点の位置(ワークフィルムWでの焦点の位置)が変化する。可動レンズ124は、制御部による制御に従って、光軸方向の位置を調節可能である(可動レンズ124の位置制御)。
【0070】
集光レンズ125を通過したレーザー光Lは、ガルバノスキャナSで反射される。ガルバノスキャナSは、
図7および
図8に示すように、ガルバノミラー126(第1ガルバノミラー)と、ガルバノモータ127(第1ガルバノモータ)と、ガルバノミラー128(第2ガルバノミラー)と、ガルバノモータ129(第2ガルバノモータ)とを備える。
【0071】
ガルバノミラー126は、レーザー光Lを反射可能なミラー面126aを有する。ガルバノモータ127は、ガルバノミラー126に連結されたモータ軸芯127aを有する。モータ軸芯127aは、第1方向に延びる。第1方向は、好ましくは、ワークフィルムWの流れ方向D1および幅方向D2のそれぞれと直交する方向である。ガルバノモータ127は、ガルバノミラー126のミラー面126aが向く方向(第1ミラー面方向)を、モータ軸芯127aに沿って延びる回転軸まわりに揺動させることができる。ガルバノモータ127は、制御部による制御に従って、ガルバノミラー126における第1ミラー面方向を制御可能である。
【0072】
ガルバノミラー128は、レーザー光Lを反射可能なミラー面128aを有する。ガルバノモータ129は、ガルバノミラー128に連結されたモータ軸芯129aを有する。モータ軸芯129aは、第2方向に延びる。第2方向は、第1方向と交差する。第2方向は、好ましくは、第1方向と直交する。第2方向は、好ましくは、幅方向D2である。ガルバノモータ129は、ガルバノミラー128のミラー面128aが向く方向(第2ミラー面方向)を、モータ軸芯129aに沿って延びる回転軸まわりに揺動させることができる。ガルバノモータ129は、制御部による制御に従って、ガルバノミラー128における第2ミラー面方向を制御可能である。
【0073】
ガルバノスキャナSにおいて、レーザー光Lは、ガルバノミラー126のミラー面126aと、ガルバノミラー128のミラー面128aとで順次に反射される。このレーザー光Lは、筐体121のレーザー光出射口を通過した後、加工ステージ110上のワークフィルムWに照射される。
【0074】
レーザー加工ユニット120において、レーザー光Lは、ガルバノモータ127,129の第1・第2ミラー面方向の制御により、ワークフィルムWに対して走査される。具体的には、レーザー加工ユニット120からのレーザー光LのワークフィルムW上の照射スポットが、ワークフィルムWにおける加工予定ラインをたどるように、ガルバノモータ127,129の第1・第2ミラー面方向の制御により、流れ方向D1および面方向D2に走査される。レーザー加工ユニット120において、レーザー光Lは、ガルバノスキャナSの実質的に直下を中心とする所定の範囲(走査エリア)内を走査される。
図5では、レーザー加工ユニット120Aの走査エリアAR1と、レーザー加工ユニット120Bの走査エリアAR2とが、流れ方向D1においてこの順に並ぶ。また、走査されるレーザー光Lにおいて、ワークフィルムWに対する入射角(同フィルムの表面の法線方向と、レーザー光Lの光軸方向とが形成する角度)の変化に関わらず照射スポットのサイズ(スポット径)が同じになるように、第1・第2ミラー面方向に応じて可動レンズ124は位置制御される。加えて、レーザー光Lの走査においては、ワークフィルムWの搬送速度(ベクトル)とレーザー光Lの走査速度(ベクトル)との合成速度(ベクトル)によって定まる照射スポットの位置が、ワークフィルムWにおける加工予定ラインをたどるように、制御部によってガルバノスキャナS(ガルバノモータ127,129)が制御される。
【0075】
レーザー加工ユニット120は、レーザー光LがガルバノスキャナSの後に通過する位置に、テレセントリックタイプのfθレンズを備えてもよい。当該fθレンズは、レーザー光LのワークフィルムWに対する入射角の変化に関わらずレーザー光Lの照射スポットのスポット径が同じになるようにするのに役立つ。レーザー加工ユニット120は、そのようなfθレンズを備える場合、必ずしも可動レンズ124を備えなくてもよい。レーザー加工ユニット120に割り当てられる走査エリアの幅(幅方向D2の長さ)よりも直径が大きなテレセントリックタイプfθレンズを用いることができる場合、そのようなfθレンズを用いることが好ましい。また、レーザー加工ユニット120においては、テレセントリックタイプfθレンズと上述の可動レンズ124とを併用してもよい。
【0076】
積層フィルムの製造方法には、以上のようなレーザー加工装置100の代わりに、ワークフィルムWの幅方向D2の一端側において、流れ方向D1のレーザー切断(レーザースリット)を担う第1レーザー加工装置と、ワークフィルムWの幅方向D2の他端側において、流れ方向D1のレーザー切断を担う第2レーザー加工装置と、ワークフィルムWの幅方向D2のレーザー切断を担う第3レーザー加工装置とを、併用してもよい。第1~第3レーザー加工装置は、製造ラインにおいて、例えば、第1レーザー加工装置、第2レーザー加工装置、および第3レーザー加工装置の順に、配置される。
【0077】
第1レーザー加工装置において、ワークフィルムWに対するレーザー照射箇所は、例えば固定される。このような第1レーザー加工装置により、ワークフィルムWの幅方向D2における積層フィルムYの一端部の外形を加工できる。第2レーザー加工装置において、ワークフィルムWに対するレーザー照射箇所は、例えば固定される。このような第2レーザー加工装置により、ワークフィルムWの幅方向D2における積層フィルムYの他端部の外形を加工できる。第3レーザー加工装置は、ワークフィルムWに対するレーザー照射箇所を幅方向D2に走査可能な構成を有する。第3レーザー加工装置は、ガルバノスキャナ方式でレーザー照射箇所を走査可能であってもよいし、ガントリー方式でレーザー照射箇所を走査可能であってもよい。このような第3レーザー加工装置により、第1・第2レーザー加工装置によるレーザー加工箇所の間を、レーザー加工できる。すなわち、第3レーザー加工装置により、ワークフィルムWの流れ方向D1における積層フィルムYの両端の外形を加工できる。
【0078】
本製造方法では、ハーフカット工程(
図1B)およびフルカット工程(
図1C)の後、キャリアフィルムCから積層フィルムYが外される。これにより、積層フィルムYが得られる。以上のようにして、積層フィルムYを製造できる。
【0079】
本製造方法では、積層フィルムY(粘着剤層を有する積層フィルム)が、上述のようにレーザー加工によって外形加工される。レーザー加工は、ワークフィルムを連続的に流しながら連続的に外形加工するのに適する(外形加工のためにワークフィルムを間欠的に送る必要がない)。したがって、本製造方法は、積層フィルムYを効率よく製造するのに適する。
【0080】
ハーフカット工程(
図1B)において、ワークフィルムWに対してレーザー光L1が照射された部分では、ワークフィルムWの材料が蒸発して除去される。これにより、ハーフカット溝G1が形成される。フルカット工程においも、ワークフィルムWに対してレーザー光が照射された部分では、ワークフィルムWの材料が蒸発して除去される。これにより、フルカット溝G2が形成される。そして、ハーフカット溝G1とフルカット溝G2とは、上述のように、互いに隣接して並行に延び、且つ、当該延び方向において連続的に、隣接方向に繋がっている。このように繋がっているハーフカット溝G1およびフルカット溝G2により、キャリアフィルムC上の積層フィルムY(フィルム11/粘着剤層21/フィルム31)の外形が規定さている。そのため、本製造方法においては、積層フィルムY(延出端部12を有するフィルム11を備える)の製造において、従来の製造方法に関して上述した除去工程が必要ない。本製造方法では、延出端部12を露出させるうえで、従来の製造方法に関して上述した除去工程が必要ない。したがって、本製造方法は、積層フィルムXを効率よく製造するのに適する。
【0081】
以上のように、本製造方法は、積層フィルムY(粘着剤層を有する積層フィルム)を効率よく製造するのに適する。
【0082】
本製造方法のハーフカット工程では、
図9に示すように、レーザー光L1の照射および走査によるフィルム層30および粘着剤層20の溶断を、走査の方向と交差する方向に溶断箇所をずらして複数回繰り返すことにより、ハーフカット溝G1を形成してもよい。ハーフカット溝G1により、粘着剤層20において粘着剤層21が個片化される。
図10は、ワークフィルムWにおけるそのようなハーフカット工程後の領域の一例を模式的に表す平面図である(
図10では、ハーフカット溝G1を、ハッチングを付して示す)。
図9に示される部分断面図は、
図10に示すワークフィルムWのIII-III線に沿った部分断面図に相当する。このようなハーフカット工程は、幅広のハーフカット溝G1を形成するのに好ましい。
【0083】
その後のフルカット工程では、
図11に示すように、ワークフィルムWに対してフィルム層30側からレーザー光L2を照射および走査することにより、積層フィルムXにおいてフィルム層30、粘着剤層20およびフィルム層10を溶断して、フルカット溝G2を形成する。フルカット溝G2は、
図12に示すように、ハーフカット溝G1に沿って形成される(
図12では、フルカット溝G2を、ハーフカット溝G1のハッチングよりも細かいハッチングを付して示す)。
図11に示される部分断面図は、
図12に示すワークフィルムWのIV-IV線に沿った部分断面図に相当する。フルカット溝G2は、具体的には、ハーフカット溝G1によって個片化された粘着剤層21に対して当該ハーフカット溝G1の外側において、当該ハーフカット溝G1に沿って形成される。ハーフカット溝G1とフルカット溝G2とは、互いに隣接して並行に延び、且つ、当該延び方向において連続的に、隣接方向に繋がっている。
【0084】
以上のようなハーフカット工程(
図9)およびフルカット工程(
図11)の後にも、
図13に示すように、キャリアフィルムC上には、延出端部12を有するフィルム11を備えた積層フィルムY(フィルム11/粘着剤層21/フィルム31)が形成される。幅広のハーフカット溝G1を形成するのに好ましいハーフカット工程(
図9)を含むことは、より長い延出端部12を有するフィルム11を備える積層フィルムYを製造するのに好ましい。延出端部12が長いほど、上述のブロッキングを抑制できる。
【0085】
本変形例のハーフカット工程(
図9)は、一つのレーザー加工ユニット120によって実施してもよいし、ワークフィルムWの流れ方向D1に並ぶ複数のレーザー加工ユニット120によって実施してもよい。複数のレーザー加工ユニット120によってハーフカット工程を実施する場合、ハーフカット工程用の複数のレーザー加工ユニット120と、フルカット工程用のレーザー加工ユニット120とを備えるレーザー加工装置100を用いる。
【0086】
積層フィルムYの製造方法においては、フルカット工程とハーフカット工程とをこの順で実施してもよい。フルカット工程とハーフカット工程とがこの順で実施される場合の工程図を
図14Aおよび
図14Bに示す。
【0087】
フルカット工程では、
図14Aに示すように、ワークフィルムWに対するレーザー加工によってフルカット溝G2を形成する。具体的には、ワークフィルムWに対してフィルム層30側からレーザー光L2(第2レーザー光)を照射および走査することにより、積層フィルムXにおいてフィルム層30、粘着剤層20およびフィルム層10を溶断してフルカット溝G2を形成する。フルカット溝G2は、ワークフィルムWにおける所定の加工予定ラインをたどるように形成される。このようなフルカット工程は、レーザー加工装置100のレーザー加工ユニット120Aにて実施される。
【0088】
ハーフカット工程では、
図14Bに示すように、ワークフィルムWに対するレーザー加工によってハーフカット溝G1を形成する。具体的には、ワークフィルムWに対してフィルム層30側からレーザー光L1(第1レーザー光)を照射および走査することにより、積層フィルムXにおいてフィルム層30および粘着剤層20を溶断してハーフカット溝G1を形成する。ハーフカット溝G1は、先行して形成されているフルカット溝G2に沿って形成される。ハーフカット溝G1は、具体的には、フルカット溝G2によって囲まれた領域内で粘着剤層21を外形加工するように、当該フルカット溝G2の内側において当該フルカット溝G2に沿って形成される。ハーフカット溝G1とフルカット溝G2とは、互いに隣接して並行に延び、且つ、当該延び方向において連続的に、隣接方向に繋がっている。このようなハーフカット工程は、レーザー加工装置100のレーザー加工ユニット120Bにて実施される。
【0089】
積層フィルムYの製造方法は、好ましくは、ハーフカット工程の前および後に、ワークフィルムWを弛ませることを含まない。このような製造方法は、積層フィルムYの製造ラインにおけるハーフカット工程の前および後にワークフィルムWを弛ませるための調整・制御が不要であり、粘着剤層21を有する積層フィルムYを効率よく製造するのに好ましい。
【0090】
積層フィルムYの製造方法は、好ましくは、フルカット工程の前および後に、ワークフィルムWを弛ませることを含まない。このような製造方法は、積層フィルムYの製造ラインにおけるフルカット工程の前および後にワークフィルムWを弛ませるための調整・制御が不要であり、粘着剤層21を有する積層フィルムYを効率よく製造するのに好ましい。
【0091】
図15から
図17は、本発明の第2の実施形態としての積層フィルム製造方法を表す。本製造方法は、
図15Aから
図15Cに示すように、用意工程(
図15A)と、ハーフカット工程(
図15B)と、フルカット工程(
図15C)とを含む。本製造方法は、フルカット工程により、流れ方向D1において隣り合う積層フィルム形成領域間に、流れ方向D1に離れた二つのフルカット溝G2a,G2bが形成される方法であり、以下のとおりである。
【0092】
用意工程では、
図15Aに示すように、長尺のワークフィルムWを用意する。この用意工程は、具体的には、
図1Aを参照して上述した用意工程と同様である。
【0093】
ハーフカット工程では、
図15Bに示すように、ワークフィルムWに対するレーザー加工によってハーフカット溝G1を形成する。
図16は、ワークフィルムWにおけるハーフカット工程(
図15B)後の領域の一例を模式的に表す平面図である。
図16では、ハーフカット溝G1を、ハッチングを付して示す。
図15Bに示される部分断面図は、
図16に示すワークフィルムWにおけるV-V線に沿った部分断面図に相当する。流れ方向D1において隣り合う二つの積層フィルム形成領域の一方のためのハーフカット溝G1aと、他方のためのハーフカット溝G1bとは、本製造方法(第2の実施形態)では、上述の第1の実施形態よりも、流れ方向D1に離れて形成される。このこと以外について、第2の実施形態におけるハーフカット工程は、第1の実施形態におけるハーフカット工程と同じである。
【0094】
フルカット工程では、
図15Cに示すように、ワークフィルムWに対するレーザー加工によってフルカット溝G2を形成する。フルカット溝G2は、
図17に示すように、ハーフカット溝G1に沿って形成される(
図17では、フルカット溝G2を、ハーフカット溝G1のハッチングよりも細かいハッチングを付して示す)。
図15Cに示される部分断面図は、
図17に示すワークフィルムWにおけるVI-VI線に沿った部分断面図に相当する。本実施形態では、流れ方向D1において隣り合う積層フィルム形成領域間において、流れ方向D1に隣り合うハーフカット溝G1aとハーフカット溝G1bとの間に二つのフルカット溝G2a,G2bが形成される。このこと以外について、第2の実施形態におけるフルカット工程は、第1の実施形態におけるフルカット工程と同じである。
【0095】
ハーフカット工程(
図15B)およびフルカット工程(
図15C)の後、キャリアフィルムCから積層フィルムYが外される。これにより、積層フィルムYが得られる。以上のようにして、積層フィルムYを製造できる。
【0096】
本製造方法では、積層フィルムY(粘着剤層を有する積層フィルム)が、上述のようにレーザー加工によって外形加工される。レーザー加工は、ワークフィルムを連続的に流しながら連続的に外形加工するのに適する(外形加工のためにワークフィルムを間欠的に送る必要がない)。したがって、本製造方法は、積層フィルムYを効率よく製造するのに適する。
【0097】
本製造方法では、上述の第1の実施形態の製造方法と同様に、ハーフカット溝G1とフルカット溝G2とは、互いに隣接して並行に延び、且つ、当該延び方向において連続的に、隣接方向に繋がっている。このように繋がっているハーフカット溝G1およびフルカット溝G2により、キャリアフィルムC上の積層フィルムY(フィルム11/粘着剤層21/フィルム31)の外形が規定さている。そのため、本製造方法においては、積層フィルムY(延出端部12を有するフィルム11を備える)の製造において、延出端部12を露出させるうえで、従来の製造方法に関して上述した除去工程が必要ない。したがって、本製造方法は、積層フィルムYを効率よく製造するのに適する。
【0098】
以上のように、本製造方法(第2の実施形態)は、第1の実施形態に関して上述したのと同様に、積層フィルムY(粘着剤層を有する積層フィルム)を効率よく製造するのに適する。
【0099】
本製造方法のハーフカット工程では、第1の実施形態に関して
図9を参照して上述したのと同様に、レーザー光L1の照射および走査によるフィルム層30および粘着剤層20の溶断を、走査の方向と交差する方向に溶断箇所をずらして複数回繰り返すことにより、幅広のハーフカット溝G1を形成してもよい。本製造方法では、第1の実施形態に関して上述したのと同様に、フルカット工程とハーフカット工程とをこの順で実施してもよい。本製造方法は、第1の実施形態に関して上述したのと同様に、好ましくは、ハーフカット工程の前および後に、ワークフィルムWを弛ませることを含まない。本製造方法は、第1の実施形態に関して上述したのと同様に、好ましくは、フルカット工程の前および後に、ワークフィルムWを弛ませることを含まない。
【符号の説明】
【0100】
W ワークフィルム
X 積層フィルム(粘着剤層を有する積層フィルム)
C キャリアフィルム
H 厚さ方向
D 面方向
D1 流れ方向
D2 幅方向
10 フィルム層(第1フィルム層)
12 延出端部
20 粘着剤層
30 フィルム層(第2フィルム層)
G1 ハーフカット溝
G2 フルカット溝
L1 レーザー光(第1レーザー光)
L2 レーザー光(第2レーザー光)