(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106640
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】建築物
(51)【国際特許分類】
E04H 1/02 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
E04H1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011011
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】石川 達也
【テーマコード(参考)】
2E025
【Fターム(参考)】
2E025AA14
2E025AA22
(57)【要約】
【課題】ダクトを室内から見えないように設置する。
【解決手段】1階10と2階20とが吹き抜け40を介して連通した建築物1において、1階10には吹き抜け40に面するキッチン60が設けられ、前記キッチン60の上方にダクト70を有し、前記ダクト70は、前記2階20の壁43の内側に位置する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下階と上階とが吹き抜けを介して連通した建築物において、
前記下階には前記吹き抜けに面するキッチンが設けられ、
前記キッチンの上方にダクトを有し、
前記ダクトは、前記上階の壁の内側に位置する、
建築物。
【請求項2】
前記壁は、前記上階の前記吹き抜けの縁部に設けられた吹き抜け壁である請求項1に記載の建築物。
【請求項3】
前記キッチンの鉛直上方には前記上階の張り出し床が位置し、前記壁は前記張り出し床に設けられた吹き抜け壁である請求項1に記載の建築物。
【請求項4】
前記キッチンの前記吹き抜けに面する側面は、前記建築物の外壁のうち前記吹き抜けが位置する部分に対して平面視で傾斜している請求項1に記載の建築物。
【請求項5】
前記キッチンは平面視コ字状をなし、前記キッチンの正面側はリビングエリア又はダイニングエリアとなっている請求項1に記載の建築物。
【請求項6】
前記ダクトは鉛直上方に延びて前記建築物の外部に至る請求項1に記載の建築物。
【請求項7】
前記張り出し床は、前記吹き抜けの縁部を構成する二本の直交する梁の間に跨る形で二本の斜め梁を一定間隔を空けて平行に設置した構成を有する請求項3に記載の建築物。
【請求項8】
前記キッチンの正面と、前記キッチンの正面上に位置する前記吹き抜けの側壁面と、前記張り出し床に設けられた前記吹き抜け壁の表面とは、同一平面上に位置する請求項3に記載の建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
下階と上階とが吹き抜けを介して連通した建築物として、下階に吹き抜けに面するキッチンが設けられた建築物が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
下階と上階とが吹き抜けを介して連通し、下階に吹き抜けに面するキッチンが設けられた建築物では、キッチンから排出される熱や煙等を建築物外に案内するダクトを必要とする。一方、このダクトが室内から見えるように設置すると建築物の室内における意匠性を損なうおそれがあるが、ダクトを室内から見えないように設置する具体的な開示はされていない。そこで、本発明は、ダクトを室内から見えないように設置することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決する建築物は、下階と上階とが吹き抜けを介して連通しており、前記下階には前記吹き抜けに面するキッチンが設けられ、前記キッチンの上方にダクトを有し、前記ダクトは、前記上階の壁の内側に位置する。この構成によれば、ダクトが壁の中に位置し、外部から見えない。
【0006】
(2)上記(1)の建築物において、前記壁は、前記上階の前記吹き抜けの縁部に設けられた吹き抜け壁である。この構成によれば、吹き抜け壁に隣接する場所においてダクトを通る熱気により暖気を得ることができる。
【0007】
(3)上記(1)又は(2)に記載の建築物において、前記キッチンの鉛直上方には前記上階の張り出し床が位置し、前記壁は前記張り出し床に設けられた吹き抜け壁である。この構成によれば、張り出し床に設けられた吹き抜け壁に隣接する場所において暖気を得ることができる。
【0008】
(4)上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の建築物において、前記キッチンの前記吹き抜けに面する側面は、前記建築物の外壁のうち前記吹き抜けが位置する部分に対して平面視で傾斜している。これにより、キッチンが中心となってキッチンにいる人と周囲にいる人とのコミュニケーションが取りやすくなる。
【0009】
(5)上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の建築物において、前記キッチンは平面視コ字状をなし、前記キッチンの正面側はリビングエリア又はダイニングエリアとなっている。この構成によれば、キッチンにいる人とリビングエリア又はダイニングエリアにいる人とのコミュニケーションが取りやすい。
【0010】
(6)上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の建築物において、前記ダクトは鉛直上方に延びて前記建築物の外部に至る。これによりキッチンから排出された熱等をダクトを介して鉛直方向に効率的に建築物の外に放出できる。
【0011】
(7)上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の建築物において、前記張り出し床は、前記吹き抜けの縁部を構成する二本の直交する梁の間に跨る形で二本の斜め梁を一定間隔を空けて平行に設置した構成を有する。これにより、簡易な構成で張り出し床を構成することができる。
【0012】
(8)上記(1)~(7)のいずれか1つに記載の建築物において、前記キッチンの正面と、前記キッチンの正面上に位置する前記吹き抜けの側壁面と、前記張り出し床に設けられた前記吹き抜け壁の表面とは、同一平面上に位置する。これにより、キッチンの正面から吹き抜け壁までの意匠的な統一感が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、ダクトが室内から見えず、意匠性を損なわない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】
図1の建築物において、室内から見た吹き抜けおよびその周辺部分の模式図。
【
図6】コンロとダクトと張り出し床をリビングエリア側から見た模式図。
【
図7】コンロとダクトと張り出し床をダイニングエリア側から見た模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1~
図7を参照して、本実施形態に係る建築物1を説明する。なお、説明の便宜上、建築物1を平面視した
図2、
図3の図中上を北、下を南、右を東、左を西という。ただし、これら方角は本実施形態における建築物1等の説明として用いるものであり、建築物1の向きがこの方角に限定されないことはいうまでもない。
【0016】
図1に示すように、建築物1は、室内に設けられる下階としての1階10と同じく室内に設けられて1階10よりも高い位置にある上階としての2階20と屋根30とを有する2階建てである。
図1に示すように建築物1の1階10の一部は天井のない吹き抜け40となっている。
【0017】
図2及び
図3に示すように、建築物1の四面には1階10及び2階20に共通して室内と室外とを仕切る外壁50が形成されて、これら外壁50により建築物1は平面視で正方形状に形成されている。外壁50は、南に面し東西に延びる第1外壁51と、東に面し南北に延びる第2外壁52を備える。また、建築物1は、北に面し東西に延びる第3外壁53と、西に面し南北に延びる第4外壁54を備える。第1外壁51と第3外壁53とは平行面であり、第2外壁52と第4外壁54とは平行面である。第1外壁51ないし第4外壁54はいずれもそれらの両端で隣接する他の外壁と直角に連結している。
【0018】
(1階10)
図2に示すように、1階10の東端寄りには玄関11が設けられている。第3外壁53には玄関ドア111が設けられており、玄関ドア111の内側には玄関ホール112が設けられている。また、1階10には玄関ホール112に接して東西に延びる1階廊下113が設けられており、1階廊下113の東端には第2外壁52が位置している。玄関11の西側には第3外壁53及び1階廊下113に挟まれる形でトイレ114が設けられている。トイレ114の西側には第3外壁53に接して洗面脱衣室115が設けられている。洗面脱衣室115の出入口は1階廊下113の西端に位置している。さらに洗面脱衣室115の西側には浴室116が設けられている。浴室116は第3外壁53と第4外壁54との角に位置している。
【0019】
1階10において、1階廊下113、洗面脱衣室115および浴室116それぞれの南側には1階10の床から天井に至る1階内壁117が設置されている。1階内壁117は第1外壁51及び第3外壁53と平行面になっている。1階10のうち1階内壁117より南側は、パブリックエリア12となっており、キッチンエリア13、リビングエリア14、多目的エリア15、ダイニングエリア16等を有する。パブリックエリア12は第1外壁51、第2外壁52、第4外壁54、および1階内壁117に囲まれている。
【0020】
(パブリックエリア12)
図2、
図4に示すように、パブリックエリア12のうち略中央はキッチンエリア13となっており、キッチンエリア13の周囲を囲む形でリビングエリア14、多目的エリア15、ダイニングエリア16が設けられている。
【0021】
(キッチンエリア13)
図2、
図4に示すように、キッチンエリア13はキッチン60を備える。キッチン60は1階10に設置されたキッチンテーブル61とその直上のレンジフード62とを有する。
【0022】
キッチンテーブル61は平面視コ字状をなす。コ字状の底となる中央にはコンロ611が設置されている。また、右側にはシンク612と図示しない水栓が設置されている。さらに、左側は調理スペース613となっており上面全体が平坦となって台上にまな板等を設置可能である。調理スペース613のある左側はシンク612のある右側より短く形成されており、調理スペース613に隣接してキッチンエリア13への出入口614が形成されている。
図4に示すように、レンジフード62はコンロ611の直上に位置して1階10の天井から吊り下げられており、内部に図示しない換気扇を有する。
【0023】
図2、
図4に示すように、キッチン60は下側カバー63を有し、キッチンテーブル61の外周は下側カバー63に覆われている。下側カバー63は平面視コ字状をなし、外側面である正面63aと左右面63bはそれぞれ平面に形成されている。下側カバー63はキッチンテーブル61より高く形成されており、下側カバー63の上端はキッチンテーブル61の高さを超えて位置する。また、キッチン60は上側カバー64を有し、レンジフード62は上側カバー64に覆われている。上側カバー64は平面視コ字状をなし、外側面である正面64aと左右面64bはそれぞれ平面に形成されている。上側カバー64は1階10の天井からレンジフード62下端までの高さよりも高く形成されて、上側カバー64は1階10の天井下面から吊り下げられている。これにより
図4に示すように、キッチン60に正対して見た場合、キッチンテーブル61とレンジフード62は下側カバー63と上側カバー64に覆われて見えにくくなる。
【0024】
なお、キッチン60の正面60aとは、キッチン60の外側面のうち吹き抜け40に面する面をいう。本実施形態では下側カバー63の正面63aと上側カバー64の正面64a、すなわち、コ字状をなす部分の中央の外側面をいう。また、キッチン60の左右面60bとは、キッチン60の外側面のうち吹き抜け40に面する面に平面視で交差する面をいう。本実施形態では下側カバー63の左右面63bと上側カバー64の左右面64b、すなわち、コ字状をなす部分の左右の外側面をいう。
【0025】
下側カバー63の正面63aと上側カバー64の正面64a、下側カバー63の左右面63bと上側カバー64の左右面64bは、それぞれ同一平面上に位置し、面一となっている。これにより、キッチン60は上下に別れた構造を有しつつも、意匠上の統一性を確保している。また、上側カバー64の正面64aはその直上に位置する吹き抜け40の側壁面41と同一平面上に位置し、面一となっている。これにより、キッチン60の正面60aとこの上に位置する吹き抜け40の側壁面41が同一平面上で連続し、意匠上の統一性を確保している。
【0026】
図6、
図7に示すように、レンジフード62は鉛直上方に延びる排気管621を有し、排気管621は調理時の排気を通すダクト70に接続されている。ダクト70はレンジフード62から鉛直上方に延び、1階10の天井から2階20を通過し建築物1の外部へと至っている。なお、
図6、
図7ではコンロ611とレンジフード62とダクト70の関係を図示するためキッチン60の他の構成を図示略している。また、ダクト70の配置については後述する。
【0027】
図2に示すように、キッチン60は、全体が第1外壁51、第2外壁52、第4外壁54に対して平面視で傾斜して設置されている。キッチン60の正面60aは、第1外壁51に平行な状態を起点として平面視で時計回りに45度回転した角度に位置している。同様に、キッチン60の左右面60bも、第2外壁52及び第4外壁54に平行な状態を起点として平面視で時計回りに45度回転した角度に位置している。なお、傾斜とは平面視で外壁50に対して平行(0度、180度)ないし直角(90度、270度)の状態を含まない。
【0028】
図2に示すように、キッチンエリア13のうちキッチン60の正面60aと反対側になる背面には平面視五角形の収納室65が形成されており、冷蔵庫や食品の収納棚等が設置されている。収納室65は1階10の天井に至る仕切り壁651で周囲と仕切られており、仕切り壁651の一部は1階内壁117が共用している。また、キッチン60との境界に位置する仕切り壁651には引き戸652が設けられており、キッチン60から収納室65に出入り可能である。
【0029】
(リビングエリア14)
図2、
図4に示すように、パブリックエリア12のうち、キッチン60の正面側となる南西は第1外壁51と第4外壁54とに囲まれたリビングエリア14となっており、ソファ等が設置されている。なお、
図2に吹き抜け40を破線で示す。後述するようにリビングエリア14は吹き抜け40になっており、キッチン60の正面60aは吹き抜け40に面している。すなわち、キッチン60の正面60aは吹き抜け40のある1階10を向いている。キッチン60にいる人は正面側を向くとリビングエリア14を視認することができる。また、リビングエリア14にいる人もキッチン60にいる人を視認することができ、キッチン60とリビングエリア14との間で相互に視認しつつのコミュニケーションが可能となっている。
【0030】
リビングエリア14には第4外壁54に接して2階20との往来に使用する階段141が設けられている。この階段141は北向き昇りとなっており、昇り方向の左手には第4外壁54があり、右手には2階20に続く手摺142が設置されている。リビングエリア14が位置する第1外壁51には大開口の掃出窓143が設置されており、第1外壁51の南側室外には図示しないテラスが設置されて、掃出窓143を介してリビングエリア14とテラスとの行き来が可能となっている。
【0031】
(多目的エリア15)
図2、
図4に示すように、パブリックエリア12のうち北西は1階内壁117から延びる長尺のカウンターデスク151が設置された多目的エリア15となっている。カウンターデスク151は2~3人が並んで使用可能な長さとなっている。また、カウンターデスク151の東側の1階内壁117には引き戸152が設置され、パブリックエリア12から1階廊下113への移動が可能となっている。キッチン60にいる人は右を向くと多目的エリア15を視認することができる。また、多目的エリア15にいる人もキッチン60にいる人を視認することができ、キッチン60と多目的エリア15との間で相互に視認しつつのコミュニケーションが可能となっている。
【0032】
(ダイニングエリア16)
図2、
図4に示すように、パブリックエリア12のうち南東は第1外壁51及び第2外壁52に囲まれたダイニングエリア16となっており、食事用のテーブル161及び複数の椅子162が設置されている。キッチン60にいる人は左を向くとダイニングエリア16を視認することができる。また、ダイニングエリア16にいる人もキッチン60にいる人を視認することができ、キッチン60とダイニングエリア16との間で相互に視認しつつのコミュニケーションが可能となっている。ダイニングエリア16に位置する第1外壁51には掃出窓163が、また第2外壁52には腰窓164がそれぞれ設置されており、これらの窓を通して室外の景色を見ながら食事等が可能となっている。
【0033】
図2に示すように、パブリックエリア12のうち北東は第2外壁52に沿ってダイニングエリア16と1階廊下113とをつなぐ通路165が形成されている。通路165の端部に位置する1階内壁117には引き戸166が設置されており、1階廊下113への移動が可能となっている。なお、リビングエリア14,多目的エリア15およびダイニングエリア16は、それぞれの間に段差や境界等は設けられておらず、各エリアが明確に区分けされているものではない。したがって、1階10のパブリックエリア12の中心にキッチン60が位置しており、キッチン60の周囲に他のパブリックエリア12が存在する。
【0034】
(2階20)
図1、
図3、
図4に示すように、2階20の南東部分、すなわち1階10のリビングエリア14の直上は天井のない吹き抜け40となっており、2階20はこの吹き抜け40を除く形でL字状に位置している。
図2、
図3に示すように吹き抜け40は平面視で矩形ではなく矩形をベース形状として北東の角には斜め45度に床が張り出した平面視三角形の張り出し床21が存在する結果、吹き抜け40は平面視五角形状となっている。
【0035】
図3に示すように、2階20には階段141から張り出し床21まで東西に延びる2階廊下22が設けられている。2階廊下22の北側となる北西の角は子供室23となっており、ベッドが設置されている。また、北東の角も子供室24となっており同様にベッドが設置されている。2つの子供室23、24の間にはハンガーや荷物置き場等が設けられている。
【0036】
2階廊下22の東側は第2外壁52に接するウォークインクローゼット25となっている。ウォークインクローゼット25は北側、西側、南側を天井に至る仕切り壁251で区切られており、このうち南側の仕切り壁251の一部が開口されて出入口252となっている。ウォークインクローゼット25の南側は主寝室26となっており、ベッドが設置されている。
【0037】
2階20の第1外壁51の外側には第1外壁51の全長に亘るベランダ27が設けられている。主寝室26が位置する第1外壁51には掃出窓261が設置されており、主寝室26から掃出窓261を通ってベランダ27へと出入り可能となっている。また、第1外壁51のうち吹き抜け40に接する箇所には固定窓262が設置されており、固定窓262から吹き抜け40を通して1階10に外光を採光可能となっている。2階廊下22とウォークインクローゼット25とに囲まれた張り出し床21を含む部分はフリーエリア28となっている。
【0038】
2階廊下22には吹き抜け40の縁部42に沿って張り出し床21まで一定高さの手摺221が設置されており、2階廊下22から吹き抜け40を介して1階10を見下ろすことができる。また、吹き抜け40の縁部42のうち手摺221に隣接する張り出し床21から第1外壁51までには天井に至る吹き抜け壁43が設けられている。
【0039】
図5に張り出し床21の模式図を示す。張り出し床21は吹き抜け40の縁部42を構成する二本の直交する梁421の間に斜め45度で跨る形で外梁422と内梁423からなる二本の斜め梁を一定間隔を空けて平行に設置した構成を有する。すなわち、吹き抜け40の縁部42は二本の直交する梁421とこの間に斜め45度で跨る形で外梁422と内梁423によって構成される。
【0040】
そして、外梁422の吹き抜け40側に外側壁431を設け、外梁422の張り出し床21側に内側壁432を設けて、これら外側壁431と内側壁432とで張り出し床21部分の吹き抜け壁43を構成している。
図5では外側壁431と内側壁432とからなる張り出し床21部分の吹き抜け壁43は1点鎖線で模式的に図示している。外側壁431の表面はその直下に位置する吹き抜け40の側壁面41と同一平面上にあり面一となっている。
【0041】
なお、張り出し床21の直下にはキッチン60、具体的にはコンロ611とレンジフード62とが位置しており、キッチン60の正面60aは、その直上の吹き抜け40の側壁面41と同一平面上にある。このため、張り出し床21の吹き抜け壁43を構成する外側壁431の表面からその直下に位置する吹き抜け40の側壁面41を経てさらにその直下に位置するキッチン60の正面60aまで同一平面上にあり面一となって意匠上の統一性を確保している。
【0042】
図5に示すように、外梁422と内梁423との間には、レンジフード62に接続されて鉛直上方に延びるダクト70が通されている。
図6、
図7に示すように、ダクト70は1階10のレンジフード62から鉛直上方に延びて張り出し床21に位置する吹き抜け壁43の外側壁431と内側壁432との内側を通って屋根30へと至り、建築物1の外に至る。このため、
図3に示すように張り出し床21に位置する吹き抜け壁43は内側にダクト70が位置する分、見かけの厚みが厚くなっている。
【0043】
主寝室26に位置する吹き抜け壁43は厚みの少ない壁であり、その表面は直下に位置する吹き抜け40の側壁面41と同一平面上、すなわち面一となっている。
(本実施形態の効果)
(1)建築物1は、1階10と2階20とが吹き抜け40を介して連通している。1階10には吹き抜け40に面するキッチン60が設けられている。キッチン60の上方にダクト70が設けられ、ダクト70は、2階20の張り出し床21の吹き抜け壁43を構成する外側壁431と内側壁432の内側に位置する。このため、2階20を通るダクト70が吹き抜け壁43の外側壁431と内側壁432とによって露出せず、ダクト70が室内から見えないため、意匠性を損なわない。
【0044】
(2)ダクト70が内側に位置する外側壁431と内側壁432は、張り出し床21に設けられている吹き抜け壁43を構成している。
図6、
図7に示すように、張り出し床21の吹き抜け壁43内にダクト70を設置することにより、ダクト70を通る熱気が内側壁432を通して張り出し床21の上空間を加熱し、張り出し床21にいる人に暖気を与えることができる。
【0045】
(3)キッチン60の正面60aは、建築物1の第1外壁51に対して平面視で45度傾斜して設置されている。これにより、キッチン60から他のパブリックエリア12であるリビングエリア14、多目的エリア15、ダイニングエリア16を視認することが容易となり、また、これらのエリアからもキッチン60を視認することができる。このため、パブリックエリア12においてキッチン60が中心となってキッチン60にいる人と他のパブリックエリア12にいる人とのコミュニケーションが取りやすくなる。
【0046】
(4)キッチン60の正面側はリビングエリア14となっている。これにより、キッチン60の正面側が、パブリックエリア12の中でも特に人のいることが多いリビングエリア14となって、キッチン60にいる人もリビングエリア14にいる人とのコミュニケーションを取りやすくなる。
【0047】
(5)キッチン60の正面60aは吹き抜け40に面して設置されており、キッチン60の鉛直上方には2階20の張り出し床21が位置する。キッチン60の正面60aは吹き抜け40に面しているため、キッチン60にいる人も吹き抜け40による開放感を感じることができる。また、キッチン60の鉛直上方には張り出し床21が位置するため、キッチン60から張り出し床21の吹き抜け壁43の内側にダクト70を直線状に設置することができる。
【0048】
(6)ダクト70はレンジフード62から鉛直上方に延びて建築物1の外部に至っている。このため、キッチン60から排出された熱等をダクト70を介して鉛直上に効率的に建築物1の外に放出することができる。
【0049】
(7)張り出し床21は吹き抜け40の縁部42を構成する二本の直交する梁421に斜め45度で跨る形で外梁422と内梁423からなる二本の斜め梁を一定間隔を空けて平行に設置した構成を有する。このため、簡易な構成で張り出し床21を構成することができる。
【0050】
(8)キッチン60の正面60aと、その上に位置する吹き抜け40の側壁面41と、張り出し床21に位置する吹き抜け壁43の外側壁431の表面とは、同一平面上に位置する。このため、キッチン60をリビングエリア14から見た場合、キッチン60から吹き抜け40に亘って面一となり、意匠的な統一感を得ることができる。
【0051】
(9)張り出し床21では外梁422と内梁423からなる二本の斜め梁の間にダクト70を通している。このため、張り出し床21におけるダクト70の配置スペースを確保することができる。
【0052】
(10)張り出し床21は吹き抜け40の角を埋めるように張り出した平面視三角形である。この張り出し床21により2階20の吹き抜け40の角が直角にならず有効利用ができる。
【0053】
(11)キッチン60は、下側カバー63と上側カバー64とによりキッチンテーブル61及びレンジフード62が覆われてリビングエリア14等から見えにくくなっている。このため、
図4に示すようにキッチン60の意匠上の統一性を確保することができる。
【0054】
<変形例>
上記実施形態は、建築物1が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。建築物1は、上記実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例を示す。
【0055】
・ダクト70はレンジフード62から鉛直上方に延びて建築物1の外部に至っているが、鉛直上方に延びていなくてもよく、例えば傾斜しつつ上方に延びていてもよい。
・キッチン60の正面60aと、その直上の吹き抜け40の側壁面41と、張り出し床21に位置する吹き抜け壁43の外側壁431の表面とは同一平面上にあるが、これらは同一平面上でなくてもよい。例えばキッチン60の正面60aが他の面より吹き抜け40側に位置したり、反対側に位置してもよい。
【0056】
・キッチン60の正面側はリビングエリア14となっているが、これに限られない。例えば多目的エリア15やダイニングエリア16、あるいはこれら複数のエリアが設けられていてもよい。
【0057】
・キッチン60の正面60aと左右面60bは、建築物1の外壁50に対して平面視で45度傾斜して設置されているが、傾斜角度を変更してもよい。傾斜角度を変更する場合には、例えば第1外壁51に対して平面視で時計回り又は反時計回りに15度、30度、45度、60度、75度等とすることができる。
【0058】
・ダクト70が内側に位置する外側壁431と内側壁432は、張り出し床21に位置する吹き抜け壁43であるが、これに限られない。例えば、主寝室26に位置する吹き抜け壁43にダクト70が内側に位置する外側壁431と内側壁432の構成を採用してもよい。また、主寝室26の北側に内部に空間のある2階内壁を形成し、この2階内壁の内側にダクト70を通してもよい。
【0059】
・張り出し床21は、
図8(a)に模式的に示すように吹き抜け40の角に斜めに張り出すような形状であるが、張り出し床21の形状はこれに限られない。例えば、
図8(b)に示すように吹き抜け40の角以外の場所から矩形状に張り出してもよく、
図8(c)に示すように三角状に張り出してもよい。また、
図8(d)に示すように吹き抜け40の角から矩形状に、あるいは
図8(e)に示すように円弧状に張り出してもよい。なお、張り出し床21の鉛直下方にキッチン60が位置することがダクト70を設置する上では好ましい。
【0060】
・張り出し床21は吹き抜け40の1箇所に限らず、
図8(f)に示すように複数箇所に設けてもよい。
・キッチン60をコ字状としているが、例えば左又は右のないL字状としてもよい。この場合、L字上の一方にコンロ611を設け、他方にシンク612と調理スペース613を設けることができる。
【0061】
・キッチンテーブル61のコンロ611、シンク612、調理スペース613の配置を変更してもよい。
・吹き抜け壁43の外側壁431の表面とその直下の吹き抜け40の側壁面41及びキッチン60の正面60aを同一平面上に位置させる場合、これらの面を連続する1枚の板材やシート等で構成してもよい。このようにすると上から下まで意匠上の統一性が増す。
【0062】
・下階として1階10、上階として2階20としたが、この関係は相対的なものにすぎない。例えば下階と上階の間に中階(中2階)があってもよく、あるいは下階が2階20で上階が3階でもよい。
【0063】
・下側カバー63と上側カバー64として、キッチン60の外方に延びる棚板を有する棚としてもよく、また下側カバー63にテレビ用モニター等を外掛けや埋め込み等で設置してもよい。これによりキッチン60の正面60aの領域を有効活用することができる。
【0064】
・上記実施形態では、キッチン60の正面60aは、第1外壁51に平行な状態を起点として平面視で時計回りに45度回転した角度で傾斜している。また、キッチン60の正面60aは第2外壁52、第3外壁53、第4外壁54、すなわち外壁50の全体に対して平面視で傾斜している。一方、上記実施形態に限られず、キッチン60の正面60aが平面視で傾斜しているのは、1階10の外壁50のうち吹き抜け40が位置する部分に対してであればよい。外壁50のうち吹き抜け40が位置する部分とは、上記実施形態でいえば、第1外壁51の一部と第4外壁54の一部からなる部分である。具体的には、
図2に示すように第1外壁51のうち吹き抜け40の側壁面41を示す破線との交点51aより西側(図中左側)と、第4外壁54のうち吹き抜け40の側壁面41を示す破線との交点54aより下側(図中下側)との平面視L字状をなす部分である。この範囲の外壁50に対してキッチン60の正面60aが平面視で傾斜していればパブリックエリア12においてキッチン60が中心となってキッチン60にいる人と他のパブリックエリア12にいる人とのコミュニケーションが取りやすくなる。
【0065】
・上記実施形態では、外壁50は矩形状であるが、矩形以外の多角形(三角形や五角形以上)でもよい。この場合でもキッチン60の正面60aが外壁50のうち吹き抜け40が位置する部分に対して平面視で傾斜していればよい。
【0066】
本明細書は、次の技術を開示する。
[付記1]
建築物は下階と上階とが吹き抜けを介して連通している。前記下階には前記吹き抜けに面するキッチンが設けられ、前記キッチンの上方にダクトを有し、前記ダクトは、前記上階の壁の内側に位置する。
【0067】
[付記2]
付記1に記載の建築物において、前記壁は、前記上階の前記吹き抜けの縁部に設けられた吹き抜け壁である。
【0068】
[付記3]
付記1に記載の建築物において、前記キッチンの鉛直上方には前記上階の張り出し床が位置し、前記壁は前記張り出し床に設けられた吹き抜け壁である。
【0069】
[付記4]
付記1に記載の建築物において、前記キッチンの前記吹き抜けに面する側面は、前記建築物の外壁のうち前記吹き抜けが位置する部分に対して平面視で傾斜している。
【0070】
[付記5]
付記1に記載の建築物において、前記キッチンは平面視コ字状をなし、前記キッチンの正面側はリビングエリア又はダイニングエリアとなっている。
【0071】
[付記6]
付記1に記載の建築物において、前記ダクトは鉛直上方に延びて前記建築物の外部に至る。
【0072】
[付記7]
付記3に記載の建築物において、前記張り出し床は、前記吹き抜けの縁部を構成する二本の直交する梁の間に跨る形で二本の斜め梁を一定間隔を空けて平行に設置した構成を有する。
【0073】
[付記8]
付記3に記載の建築物において、前記キッチンの正面と、前記キッチンの正面上に位置する前記吹き抜けの側壁面と、前記張り出し床に設けられた前記吹き抜け壁の表面とは、同一平面上に位置する。
【符号の説明】
【0074】
1…建築物、10…1階(下階)、12…パブリックエリア、13…キッチンエリア、14…リビングエリア、15…多目的エリア、16…ダイニングエリア、20…2階(上階)、21…張り出し床、22…2階廊下、30…屋根、40…吹き抜け、41…(吹き抜けの)側壁面、42…縁部、43…吹き抜け壁(壁)、50…外壁、51…第1外壁、52…第2外壁、53…第3外壁、54…第4外壁、60…キッチン、60a…(キッチンの)正面、61…キッチンテーブル、62…レンジフード、63…下側カバー、64…上側カバー、70…ダクト、421…梁、422…外梁、423…内梁、431…外側壁、432…内側壁。