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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106644
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】自動運転車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/09 20120101AFI20240801BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20240801BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240801BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240801BHJP
【FI】
B60W30/09
B60W40/04
G08G1/16 C
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011015
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 元太
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
3D241BA33
3D241BA50
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE01
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA52Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DC02Z
3D241DC33Z
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL09
5H181LL11
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG14
5H301GG16
5H301HH03
5H301HH16
5H301HH18
5H301LL01
5H301LL07
5H301LL14
(57)【要約】
【課題】自動運転車両の進行を継続すること。
【解決手段】制御装置は、検知エリアに障害物が存在している場合、自動運転車両の実速度が制限速度以下となるように目標速度を設定する。制御装置は、検知エリアに障害物が存在している場合であって目標速度又は実速度が制限速度以下になった場合、検知エリアの幅の縮小を行う。制御装置は、検知エリアの幅の縮小を行っても障害物が検知エリアに存在している場合、自動運転車両の停止を行う。制御装置は、検知エリアの幅の縮小を行うことで障害物が検知エリアに存在しなくなった場合、検知エリアの幅を元に戻す。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転車両であって、
前記自動運転車両の進行方向に拡がる検知エリアであって前記進行方向及び垂直方向に直交する方向の幅が前記自動運転車両の車幅よりも大きい検知エリアに障害物が存在しているか否かを検知するためのセンサと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記検知エリアに前記障害物が存在している場合、前記自動運転車両の実速度が制限速度以下となるように目標速度を設定し、
前記検知エリアに前記障害物が存在している場合であって前記目標速度又は前記実速度が制限速度以下になった場合、前記検知エリアの前記幅の縮小を行い、
前記検知エリアの前記幅の縮小を行っても前記障害物が前記検知エリアに存在している場合、前記自動運転車両の停止を行い、
前記検知エリアの前記幅の縮小を行うことで前記障害物が前記検知エリアに存在しなくなった場合、前記検知エリアの前記幅を元に戻す、自動運転車両。
【請求項2】
前記制御装置は、前記検知エリアの前記幅の縮小を行うことで前記障害物が前記検知エリアに存在しなくなり、かつ、前記検知エリアの前記幅を元に戻すことで前記検知エリアに前記障害物が存在している間は、前記幅を縮小することと前記幅を元に戻すこととを繰り返し行う、請求項1に記載の自動運転車両。
【請求項3】
前記制御装置は、前記検知エリアの前記幅の縮小を行うことで前記障害物が前記検知エリアに存在しなくなった場合、所定時間、前記目標速度を維持する、請求項1又は請求項2に記載の自動運転車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動運転車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のように、自動運転車両は、距離計と、制御装置と、を備える。特許文献1では、距離計としてレーザ距離計が用いられている。制御装置は、距離計の検知結果に基づいて自動運転車両の制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-25880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動運転車両では、進行方向に位置する障害物までの距離によって自動運転車両の速度を制御する場合がある。この場合、自動運転車両の進行方向に検知エリアを設定することによって検知エリアに存在する障害物までの距離が短いほど自動運転車両の目標速度を低くすることが考えられる。障害物までの距離が所定距離に達すると、目標速度が0になることによって自動運転車両は停止する。自動運転車両の進行方向及び垂直方向に直交する方向の寸法を幅とすると、検知エリアの幅は、自動運転車両の車幅よりも大きく設定される。この場合、自動運転車両が障害物の近傍を通過できるにも関わらず、障害物が検知エリアに存在することによって自動運転車両が停止する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する自動運転車両であって、自動運転車両であって、前記自動運転車両の進行方向に拡がる検知エリアであって前記進行方向及び垂直方向に直交する方向の幅が前記自動運転車両の車幅よりも大きい検知エリアに障害物が存在しているか否かを検知するためのセンサと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記検知エリアに前記障害物が存在している場合、前記自動運転車両の実速度が制限速度以下となるように目標速度を設定し、前記検知エリアに前記障害物が存在している場合であって前記目標速度又は前記実速度が制限速度以下になった場合、前記検知エリアの前記幅の縮小を行い、前記検知エリアの前記幅の縮小を行っても前記障害物が前記検知エリアに存在している場合、前記自動運転車両の停止を行い、前記検知エリアの前記幅の縮小を行うことで前記障害物が前記検知エリアに存在しなくなった場合、前記検知エリアの前記幅を元に戻す。
【0006】
制御装置は、検知エリアに障害物が存在している場合であって目標速度又は実速度が制限速度以下になった場合、検知エリアの幅の縮小を行う。これにより、検知エリアに障害物が存在しなくなった場合には、自動運転車両は進行を継続することができる。
【0007】
上記自動運転車両について、前記制御装置は、前記検知エリアの前記幅の縮小を行うことで前記障害物が前記検知エリアに存在しなくなり、かつ、前記検知エリアの前記幅を元に戻すことで前記検知エリアに前記障害物が存在している間は、前記幅を縮小することと前記幅を元に戻すこととを繰り返し行ってもよい。
【0008】
上記自動運転車両について、前記制御装置は、前記検知エリアの前記幅の縮小を行うことで前記障害物が前記検知エリアに存在しなくなった場合、所定時間、前記目標速度を維持してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自動運転車両の進行を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】自動運転車両の模式図である。
図2図1の自動運転車両の概略構成図である。
図3図2の第2制御装置が実行する障害物検知制御を示すフローチャートである。
図4】2つの障害物が存在する場合の例を示す図である。
図5図4の障害物が検知エリアに存在している状態を示す図である。
図6図5に示す障害物によって幅が縮小した検知エリアを示す図である。
図7】減速領域にのみ障害物が存在する場合の例を示す図である。
図8図7に示す障害物によって幅が縮小した検知エリアを示す図である。
図9】幅を元に戻した検知エリアを示す図である。
図10】検知エリアの変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、自動運転車両の一実施形態について説明する。
<自動運転車両>
図1に示すように、自動運転車両10は、車体31を備える。自動運転車両10は、乗用車であってもよいし、産業車両であってもよい。産業車両は、フォークリフト、及びトーイングトラクタを含む。以下の説明において、前後左右とは、自動運転車両10を基準とした場合の前後左右である。
【0012】
図2に示すように、自動運転車両10は、第1制御装置11を備える。第1制御装置11は、プロセッサ12と、記憶部13と、を備える。プロセッサ12としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、及びDSP(Digital Signal Processor)を挙げることができる。記憶部13は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部13は、処理をプロセッサ12に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部13、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。第1制御装置11は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である第1制御装置11は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0013】
自動運転車両10は、走行モータ14と、走行モータドライバ15と、走行量センサ16と、を備える。走行モータ14は、駆動輪を回転させるためのモータである。走行モータドライバ15は、走行モータ14を駆動させる。走行量センサ16は、走行モータ14の回転数を検知する。走行モータ14の駆動により駆動輪が回転することで、自動運転車両10は走行する。
【0014】
自動運転車両10は、操舵モータ17と、操舵モータドライバ18と、操舵量センサ19と、を備える。操舵モータ17は、操舵輪を操舵するためのモータである。操舵モータドライバ18は、操舵モータ17を駆動させる。操舵量センサ19は、操舵モータ17の回転数を検知する。操舵モータ17の駆動により操舵輪が操舵されることで、自動運転車両10は旋回する。
【0015】
自動運転車両10は、距離計20を備える。距離計20は、障害物までの距離を測定する。距離計20は、自動運転車両10の前方に存在する障害物までの距離を測定できるように車体31に設けられている。距離計20は、センサの一例である。
【0016】
距離計20は、例えば、レーザ距離計、レーダー、又はステレオカメラである。本実施形態の距離計20は、レーザ距離計である。距離計20は、水平方向への照射角度を変更しながらレーザ光を照射する。距離計20は、レーザ光が当たった点から反射された反射光を受光することで点までの距離を測定する。レーザ光が当たった点は、障害物の表面の一部を表す。点の位置は、極座標系の座標で表すことができる。極座標系における点の座標は、直交座標系の座標に変換されてもよい。距離計20は、鉛直方向への照射角度を変更できるものであってもよいし、変更できないものであってもよい。
【0017】
自動運転車両10は、第2制御装置21を備える。第2制御装置21は、例えば、第1制御装置11と同様のハードウェア構成を備える。第2制御装置21は、例えば、プロセッサ22と、記憶部23と、を備える。第1制御装置11と、第2制御装置21とで制御装置が構成されている。
【0018】
第2制御装置21は、自動運転車両10の自己位置を推定してもよい。自己位置とは、地図座標系での自動運転車両10の一点を示す座標である。自動運転車両10の一点は任意であるが、例えば、自動運転車両10の水平方向での中心位置を挙げることができる。地図座標系は、3軸直交座標系である。地図座標系は、自動運転車両10が用いられる環境の任意の一点を原点とする座標系である。自己位置の推定は、距離計20の検知結果と地図データとを照合することで行われる。地図データは、自動運転車両10が用いられる環境に存在する物体の形状、自動運転車両10が用いられる環境の広さ等、自動運転車両10が用いられる環境の物理的構造に関する情報である。即ち、地図データは、自動運転車両10が用いられる環境を地図座標系の座標で表したデータである。自己位置の推定は、距離計20を用いた自己位置の推定に、内界センサを用いたデッドレコニングを組み合わせて行われてもよい。内界センサとしては、走行量センサ16、及び操舵量センサ19を挙げることができる。自己位置の推定は、距離計20を用いた自己位置の推定に、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星から送信される衛星信号を用いた自己位置の推定を組み合わせて行われてもよい。
【0019】
<検知エリア>
第1制御装置11は、自動運転車両10の速度制御を行う。第1制御装置11は、走行モータドライバ15に目標速度を与える。走行モータドライバ15は、自動運転車両10の実速度が目標速度に追従するように走行モータ14を制御する。これにより、自動運転車両10の実速度が目標速度に追従する。
【0020】
図1に示すように、自動運転車両10には、検知エリアA1が設定されている。検知エリアA1は、自動運転車両10の進行方向に拡がる。検知エリアA1の幅Lは、自動運転車両10の車幅よりも大きい。検知エリアA1の幅Lは、自動運転車両10の進行方向及び垂直方向に直交する方向の寸法である。検知エリアA1の幅Lは、縮小できる。本実施形態において、検知エリアA1の幅方向の両端を幅方向の中央に向けて移動させることによって検知エリアA1の幅Lを縮小することができる。検知エリアA1は、1つのエリアであるが、便宜上、検知エリアA1の幅Lを縮小させた後にも残る領域を停止領域A11とする。幅Lが縮小された後に検知エリアA1に含まれなくなる領域を減速領域A12,A13とする。減速領域A12,A13は、停止領域A11を挟んで左右方向の両側に位置している。減速領域A12の幅L2と減速領域A13の幅L3とは、互いに同一である。検知エリアA1の幅Lは、停止領域A11の幅L1と、減速領域A12の幅L2と、減速領域A13の幅L3との合計である。停止領域A11は、自動運転車両10に向かい合う領域である。停止領域A11の幅L1は、自動運転車両10の車幅より若干長い。減速領域A12,A13は、自動運転車両10に向かい合わない領域である。
【0021】
第1制御装置11は、自動運転車両10から検知エリアA1に存在する障害物までの距離に応じて目標速度を設定する。本実施形態において、第1制御装置11は、自動運転車両10から検知エリアA1に存在する障害物までの距離として検知距離に応じて目標速度を設定する。検知距離は、自動運転車両10から自動運転車両10の前方に位置する障害物までの前後方向での距離である。第1制御装置11は、自動運転車両10から検知エリアA1に存在する障害物までの距離としてユークリッド距離に応じて目標速度を設定してもよい。第1制御装置11は、検知距離が短いほど目標速度を低くする。検知エリアA1に複数の障害物が存在する場合、複数の障害物のうち自動運転車両10に最も近い障害物までの検知距離によって目標速度を設定する。複数の障害物のうち自動運転車両10に最も近い障害物は、検知距離が最も短い障害物である。
【0022】
停止領域A11に障害物が存在している場合、第1制御装置11は、停止領域A11に存在している障害物までの検知距離が短いほど低い値になるように目標速度を設定する。第1制御装置11は、停止領域A11に存在している障害物までの検知距離が予め定められた距離になった際には目標速度が0になるように目標速度を設定する。即ち、停止領域A11に障害物が存在している場合、障害物から予め定められた距離手前の位置で自動運転車両10は停止する。予め定められた距離は、任意に設定することができる。
【0023】
減速領域A12,A13に障害物が存在している場合、第1制御装置11は、減速領域A12,A13に存在している障害物までの検知距離が短いほど低い値になるように目標速度を設定する。減速領域A12,A13に存在する障害物までの検知距離によって目標速度を設定する場合、目標速度の下限値は下限速度である。下限速度は、0[km/h]より大きい値である。下限速度は、任意に設定することができる。
【0024】
上記したように、停止領域A11に障害物が存在している場合、自動運転車両10は、障害物までの検知距離に応じて減速した後に停止する。減速領域A12,A13にのみ障害物が存在している場合、自動運転車両10は、障害物までの検知距離に応じて下限速度まで減速する。
【0025】
検知エリアA1に障害物が存在しない場合、第1制御装置11は、障害物までの検知距離に依存することなく目標速度を設定する。例えば、第1制御装置11は、自動運転車両10が加速するように目標速度を設定する。
【0026】
<障害物検知制御>
第2制御装置21は、障害物検知制御を行う。障害物検知制御は、検知エリアA1に存在する障害物までの検知距離を算出する制御である。また、障害物検知制御では、停止領域A11及び減速領域A12,A13のいずれに障害物が存在しているかも検知される。第2制御装置21は、第1制御装置11からの検知指令を受信すると、障害物検知制御を実行する。障害物検知制御による検知結果は、第1制御装置11に出力される。そして、第1制御装置11では検知結果に応じて目標速度が設定される。以下の説明において、自動運転車両10は、前方に進行しているとする。自動運転車両10の進行方向は、前方である。
【0027】
図3に示すように、ステップS1において、第2制御装置21は、検知距離を取得する。距離計20は、水平方向への照射角度を変更しながらレーザ光を照射するため、距離計20によって測定される距離には左右方向成分が含まれる。第2制御装置21は、距離計20によって測定される距離から左右方向成分を除去することによって前後方向成分のみを得る。これにより得られた距離が検知距離である。検知距離は、距離計20によって検知された距離と、当該距離が得られた際の照射角度と、に基づいて算出することができる。検知距離は、第2制御装置21で算出されてもよいし、距離計20で算出されてもよい。
【0028】
次に、ステップS2において、第2制御装置21は、検知エリアA1に障害物が存在するか否かを判定する。検知エリアA1に障害物が存在するか否かは、距離計20の検知結果から判定することができる。例えば、距離計20を原点とする座標系の座標として検知エリアA1を規定して、距離計20の検知結果から検知エリアA1に障害物が存在するか否かを判定してもよい。ステップS2の判定結果が否定の場合、第2制御装置21は、障害物検知制御を終了する。ステップS2の判定結果が肯定の場合、第2制御装置21は、ステップS3の処理を行う。
【0029】
次に、ステップS3において、第2制御装置21は、目標速度が制限速度以下か否かを判定する。ステップS2で検知エリアA1に障害物が存在していると判定されると、障害物までの検知距離に応じて目標速度が低下していく。これにより、目標速度が制限速度まで低下すると、ステップS3の判定結果が肯定になる。制限速度は、下限速度以上の値である。制限速度は、例えば、障害物の近傍を自動運転車両10が通過する際の目標速度である。ステップS3の判定結果が肯定の場合、第2制御装置21は、ステップS4の判定を行う。ステップS3の判定結果が否定の場合、第2制御装置21は、ステップS2の処理に戻る。
【0030】
ステップS4において、第2制御装置21は、検知エリアA1が停止領域A11となるように検知エリアA1の幅Lを縮小する。
次に、ステップS5において、第2制御装置21は、幅Lを縮小した後の検知エリアA1に障害物が存在するか否か、即ち、停止領域A11に障害物が存在するか否かを判定する。この判定は、ステップS2での判定と同様の処理を、幅Lを縮小した後の検知エリアA1について行えばよい。ステップS5の判定結果が肯定の場合、第2制御装置21は、ステップS6の処理を行う。ステップS5の判定結果が否定の場合、第2制御装置21は、ステップS11の処理を行う。
【0031】
ステップS6において、第2制御装置21は、検知エリアA1の幅Lを縮小した状態に維持する。
次に、ステップS7において、第2制御装置21は、自動運転車両10が停止したか否かを判定する。自動運転車両10が障害物に近付くことによって検知距離が短くなる。そして、検知距離が短くなることによって目標速度が0になるとステップS7の判定結果は肯定になる。ステップS7の判定結果が肯定の場合、第2制御装置21は障害物検知制御を終了する。ステップS7の判定結果が否定の場合、第2制御装置21は、ステップS5に戻る。
【0032】
ステップS11において、第1制御装置11が所定時間、目標速度を維持するように制御を行う。例えば、第1制御装置11が障害物検知制御による検知結果に基づいて、目標速度を維持するように制御を行ってもよい。第2制御装置21が目標速度を維持するように第1制御装置11に指令を送信してもよい。所定時間は、任意に設定することができる。所定時間は、例えば、検知エリアA1に障害物が入り込んでから、自動運転車両10が障害物の近傍を通過するまでに要する時間に基づいて設定される。
【0033】
ステップS12において、第2制御装置21は、検知エリアA1の幅Lを元に戻す。これにより、検知エリアA1は、停止領域A11及び減速領域A12,A13を含むことになる。
【0034】
次に、ステップS13において、第2制御装置21は、検知エリアA1に障害物が存在するか否かを判定する。ステップS13の判定は、ステップS2の判定と同様の処理である。ステップS13の判定結果が肯定の場合、第2制御装置21は、ステップS14の処理を行う。ステップS13の判定結果が否定の場合、第2制御装置21は、障害物検知制御を終了する。
【0035】
ステップS14において、第2制御装置21は、検知エリアA1が停止領域A11となるように検知エリアA1の幅Lを縮小する。
次に、ステップS15において、第2制御装置21は、検知エリアA1に障害物が存在するか否かを判定する。ステップS15の判定は、ステップS5の判定と同様の処理である。ステップS15の判定結果が肯定の場合、第2制御装置21は、ステップS6の処理を行う。ステップS15の判定結果が否定の場合、第2制御装置21は、ステップS12に戻る。障害物が減速領域A12,A13のみに存在している場合、ステップS12~ステップS15が繰り返し行われる。減速領域A12,A13に障害物が存在していることで目標速度が制限速度まで低下した後には、検知エリアA1に障害物が存在しなくなるまでは検知エリアA1の幅Lを元に戻すことと、検知エリアA1の幅Lを縮小することとが繰り返し行われることになる。
【0036】
[本実施形態の作用]
図4に示すように、2つの障害物O1,O2が存在している場合について説明する。障害物O1は、減速領域A12の前方に位置している。障害物O2は、停止領域A11の前方に位置している。
【0037】
図5に示すように、自動運転車両10が進行することによって障害物O1が減速領域A12に入る。自動運転車両10が進行することによって障害物O2が停止領域A11に入る。この場合、ステップS2の判定結果が肯定になることによって目標速度は制限速度まで低下する。そして、ステップS4で検知エリアA1の幅Lが縮小される。これにより、図6に示すように、障害物O1は検知エリアA1に存在しなくなる。幅Lが縮小された後の検知エリアA1には、障害物O2が存在しているため、ステップS6で検知エリアA1の幅Lが維持される。検知エリアA1には障害物O2が存在しているため、第1制御装置11は、自動運転車両10を減速させた後に停止させる。
【0038】
次に、図7に示すように、障害物O1が存在している場合について説明する。この場合であっても、ステップS2の判定結果が肯定になることによって目標速度は制限速度まで低下する。そして、ステップS4で検知エリアA1の幅Lが縮小される。
【0039】
図8に示すように、検知エリアA1の幅Lが縮小されることによって検知エリアA1には障害物O1が存在しなくなるため、ステップS5の判定結果が否定になる。ステップS11で目標速度は、制限速度に維持される。減速領域A12は、自動運転車両10に向かい合わない領域である。従って、減速領域A12にのみ障害物O1が存在している場合、自動運転車両10は、障害物O1の近傍を通過していく。
【0040】
図9に示すように、減速領域A12に障害物O1が存在している間は、ステップS12~ステップS15で検知エリアA1の幅Lを元に戻すことと、検知エリアA1の幅Lを縮小することとが繰り返し行われる。そして、減速領域A12に障害物O1が存在しなくなった場合には、ステップS13の判定結果が否定になる。これにより、障害物O1が検知されなくなることによって、第1制御装置11によって設定される目標速度は、障害物O1までの検知距離に依存しなくなる。
【0041】
[本実施形態の効果]
(1)第2制御装置21は、検知エリアA1に障害物が存在している場合であって目標速度が制限速度以下になった場合、検知エリアA1の幅Lの縮小を行う。これにより、検知エリアA1に障害物が存在しなくなった場合には、自動運転車両10は進行を継続することができる。
【0042】
障害物によって自動運転車両10が進行不能になることを抑制するため、検知エリアA1の幅Lを停止領域A11の幅L1にするとともに検知エリアA1の幅Lを一定に維持することも考えられる。この場合、自動運転車両10が障害物の近傍を通過する際に、減速が行われていない状態で自動運転車両10が進行することになる。本実施形態のように、検知エリアA1の幅Lの縮小によって検知エリアA1の幅Lを停止領域A11の幅L1にすることによって、自動運転車両10が障害物の近傍を通過する際には目標速度を制限速度以下にすることができる。これにより、自動運転車両10が障害物の近傍を通過する際の減速と、自動運転車両10が障害物と接触するおそれがある際の停止との両立を兼ねることができる。
【0043】
(2)第2制御装置21は、検知エリアA1の幅Lの縮小を行うことで障害物が検知エリアA1に存在しなくなり、かつ、検知エリアA1の幅Lを元に戻すことで検知エリアA1に障害物が存在している間は、幅Lを縮小することと幅Lを元に戻すこととを繰り返し行う。これにより、新たな障害物が検知エリアA1に入り込んだことを検知しやすい。
【0044】
(3)第2制御装置21は、検知エリアA1の幅Lの縮小を行うことで障害物が検知エリアA1に存在しなくなった場合、所定時間、目標速度を維持する。これにより、検知エリアA1の幅Lが縮小されることにより障害物が検知エリアA1に存在しなくなった場合に、即座に自動運転車両10が加速することを抑制できる。
【0045】
(4)第2制御装置21は、検知エリアA1の幅Lを縮小することと検知エリアA1の幅Lを元に戻すこととを行うことで、自動運転車両10を停止するか、自動運転車両10の進行を継続するかを判定できるようにしている。自動運転車両10を停止するか、自動運転車両10の進行を継続するかを判定できるようにするために、減速及び停止を行うためのエリアと、減速のみを行うためのエリアとを個別に設定することも考えられる。この場合、第1制御装置11は、2つのエリア毎に、個別に検知指令を第2制御装置21に送信する。そして、第2制御装置21は、2つのエリア毎に個別に障害物検知制御を行う。このため、実施形態に比べて第2制御装置21の処理負荷が大きくなる。本実施形態であれば、1つの検知エリアA1の幅Lを変更することによって自動運転車両10を停止するか、自動運転車両10の進行を継続するかを判定できるため、第2制御装置21の処理負荷を低減できる。第2制御装置21として、処理性能の高い装置を用いる必要がないため、第2制御装置21のコストを低減することができる。
【0046】
[変更例]
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0047】
図10に示すように、検知エリアA1の幅Lは、停止領域A11の幅L1と、1つの減速領域A12の幅L2とを合わせた幅であってもよい。減速領域A12は、停止領域A11の左右両側のうち片側に設けられる。図10に示す例では、減速領域A12は、停止領域A11の左側に設けられている。第2制御装置21は、検知エリアA1の幅Lを縮小する際に検知エリアA1の幅方向の両端のうち一方を検知エリアA1の幅方向の中央に向けて移動させる。詳細にいえば、第2制御装置21は、検知エリアA1の幅方向の両端のうち減速領域A12の端を検知エリアA1の幅方向の中央に向けて移動させる。
【0048】
自動運転車両10は、対向車40の近傍を通過する場合がある。検知エリアA1の左右両側のうち対向車40が通過する側に減速領域を設けないことで、対向車40の近傍を通過する際に自動運転車両10が減速することを抑制できる。
【0049】
○第2制御装置21は、検知エリアA1の幅Lの縮小を行うことで障害物が検知エリアA1に存在しなくなった場合、目標速度を維持しなくてもよい。
○第2制御装置21は、検知エリアA1の幅Lの縮小を行うことで障害物が検知エリアA1に存在しなくなり、かつ、検知エリアA1の幅Lを元に戻すことで検知エリアA1に障害物が存在している間は、幅Lを元に戻した後に、幅Lを縮小しなくてもよい。即ち、幅Lを縮小することと、幅Lを元に戻すこととを繰り返し行わないようにしてもよい。
【0050】
○第1制御装置11は、検知エリアA1に障害物が存在している場合に、障害物までの距離に依存することなく目標速度を設定してもよい。例えば、検知エリアA1に障害物が存在する場合に設定される目標速度と、減速度とを予め設定しておいてもよい。第1制御装置11は、検知エリアA1に障害物が存在する場合、実速度が上記した目標速度に追従するように上記した減速度で減速を行う。予め設定される目標速度は、目標となる制限速度である。予め設定される減速度は、自動運転車両10と障害物との接触を抑制できるように設定される。
【0051】
この場合、第2制御装置21は、検知エリアA1に障害物が存在している場合であって実速度が制限速度以下になった場合、検知エリアA1の幅Lの縮小を行う。実施形態であれば、ステップS3において、第2制御装置21は、実速度が制限速度以下か否かを判定すればよい。実速度は、走行量センサ16の検知結果から算出することができる。走行量センサ16の検知結果は、走行モータドライバ15及び第1制御装置11を介して取得することができる。実速度は、第1制御装置11で算出されてもよいし、第2制御装置21で算出されてもよい。
【0052】
障害物までの距離に依存することなく目標速度を設定する場合、センサは、検知エリアA1に障害物が存在するか否かを検知できるものであればよく、障害物までの距離を検知できるものでなくてもよい。例えば、センサは、カメラ、又は超音波センサであってもよい。
【0053】
○第2制御装置21は、検知エリアA1に障害物が存在している場合であって実速度が制限速度以下になった場合、検知エリアA1の幅Lの縮小を行ってもよい。
○制御装置は、1つの装置であってもよい。
【0054】
○距離計20は、自己位置の推定に用いられなくてもよい。例えば、距離計20は、障害物までの検知距離を検知するために設けられた専用のものであってもよい。
○自動運転車両10は、エンジンによって走行する車両であってもよい。
【0055】
○自動運転車両10は、後に進行する際に実施形態と同様の速度制御を行うものであってもよい。即ち、進行方向は、後であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
A1…検知エリア、O1,O2…障害物、10…自動運転車両、11…制御装置を構成する第1制御装置、20…センサの一例である距離計、21…制御装置を構成する第2制御装置。
図1
図2
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図10