(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106645
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】ガラス板梱包体の製造方法及びガラス板梱包体の製造装置
(51)【国際特許分類】
B65D 85/48 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
B65D85/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011016
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】南 貴博
【テーマコード(参考)】
3E096
【Fターム(参考)】
3E096AA15
3E096BA24
3E096BB05
3E096CA19
3E096CA21
3E096EA01X
3E096EA02X
3E096FA25
3E096GA11
(57)【要約】
【課題】梱包工程及び/又は開梱工程において、帯状保護シート及び/又は保護シートの保持不良が生じるのを抑制する。
【解決手段】ガラス板梱包体の製造方法は、ロール状保護シートSRから帯状保護シートSを引き出す引き出し工程と、帯状保護シートSの反りを矯正する矯正工程と、帯状保護シートSを切断して保護シートS1を形成する切断工程と、ガラス板G1及び保護シートS1をパレットP上に積載する積載工程と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のガラス板と複数枚の保護シートとを含むガラス板積層体と、前記ガラス板積層体が積載されるパレットと、を備えるガラス板梱包体を製造するための方法であって、
ロール状保護シートから帯状保護シートを引き出す引き出し工程と、前記帯状保護シートの反りを矯正する矯正工程と、前記帯状保護シートを切断して前記保護シートを形成する切断工程と、前記ガラス板及び前記保護シートを前記パレット上に積載する積載工程と、を含むことを特徴とするガラス板梱包体の製造方法。
【請求項2】
前記矯正工程では、前記帯状保護シートを矯正治具で挟持し、前記帯状保護シートの反りを矯正する請求項1に記載のガラス板梱包体の製造方法。
【請求項3】
前記矯正工程では、前記帯状保護シートの幅方向両端部のみを前記矯正治具で挟持し、前記帯状保護シートの幅方向両端部の反りを矯正する請求項2に記載のガラス板梱包体の製造方法。
【請求項4】
前記矯正治具は、平板状である請求項2又は3に記載のガラス板梱包体の製造方法。
【請求項5】
前記矯正治具は、金属製又はセラミックス製である請求項2又は3に記載のガラス板梱包体の製造方法。
【請求項6】
前記矯正工程では、前記帯状保護シートを加熱する請求項1~3のいずれか1項に記載のガラス板梱包体の製造方法。
【請求項7】
前記矯正工程では、前記帯状保護シートの加熱時間をt(s)、前記帯状保護シートの加熱温度をT(℃)とした場合に、-0.45T+51.5≦t≦-0.33T+71を満たす請求項6に記載のガラス板梱包体の製造方法。
【請求項8】
前記保護シートは、発泡樹脂シートである請求項1~3のいずれか1項に記載のガラス板梱包体の製造方法。
【請求項9】
複数枚のガラス板と複数枚の保護シートとを含むガラス板積層体と、前記ガラス板積層体が積載されるパレットと、を備えるガラス板梱包体を製造するための装置であって、
ロール状保護シートから帯状保護シートを引き出す引き出し装置と、前記帯状保護シートの反りを矯正する矯正装置と、前記帯状保護シートを切断して前記保護シートを形成する切断装置と、を備えることを特徴とするガラス板梱包体の製造装置。
【請求項10】
複数枚のガラス板と複数枚の保護シートとを含むガラス板積層体と、前記ガラス板積層体が積載されるパレットと、を備えるガラス板梱包体を製造するための方法であって、
前記保護シートの反りを加熱して矯正する矯正工程と、前記ガラス板及び前記保護シートを前記パレット上に積載する積載工程と、を含むことを特徴とするガラス板梱包体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板梱包体の製造方法及びガラス板梱包体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ用や太陽電池用のガラス基板又はカバーガラス等の各種ガラス板を保管又は輸送するための形態として、ガラス板梱包体が使用される。ガラス板梱包体は、複数枚のガラス板と複数枚の保護シートとを含むガラス板積層体と、ガラス板積層体が積載されるパレットとを備える。
【0003】
ガラス板梱包体の製造工程には、梱包工程が含まれる。梱包工程は、ロール状保護シートから帯状保護シートを引き出す引き出し工程と、帯状保護シートを切断して保護シートを形成する切断工程と、複数のガラス板をこの保護シートを介してパレット上に積載する積載工程と、を含む。
【0004】
引き出し工程では、引き出し方向の前方側に位置する帯状保護シートの先端部を保持部(例えばチャック機構)によって保持した状態で、ロール状保護シートから帯状保護シートが引き出される。
【0005】
切断工程では、帯状保護シートの先端部を保持部で保持したまま、帯状保護シートの先端部が保護シートとして切り出される。
【0006】
積載工程では、帯状保護シートの先端部を保持していた保持部によって、保護シートがパレット上に積載される(例えば特許文献1を参照)。
【0007】
また、上記のようにして製造されたガラス板梱包体の保管又は輸送が完了すると、パレットからガラス板及び保護シートを取り出す開梱工程が行われる。この開梱工程でも、パレット上の保護シートが、保持部によって保持されると共に、パレット上から取り出される(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-70534号公報
【特許文献2】特開2022-078689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ロール状保護シートから引き出された帯状保護シートには、帯状保護シートの製造時や保管時などに形成された反り(皺を含む)が生じる場合がある。
【0010】
このように帯状保護シートに反りが生じていると、梱包工程において、帯状保護シートを保持部で保持する際に、帯状保護シートが部分的に所定の保持位置から離れ、保持部で帯状保護シートを保持できない場合がある。
【0011】
また、反りを有する帯状保護シートを保持部で保持できたとしても、パレット上に積載された保護シートに帯状保護シートに起因する反りが残る。その結果、開梱工程において、保護シートが部分的に所定の保持位置から離れ、保持部で保護シートを保持できない場合がある。
【0012】
このように梱包工程や開梱工程において、帯状保護シートや保護シートの保持不良が生じると工程が停止し、タクトタイムが大幅に悪化するという問題が生じる。
【0013】
本発明は、梱包工程及び/又は開梱工程において、帯状保護シート及び/又は保護シートの保持不良が生じるのを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1) 上記課題を解決するために創案された本発明は、複数枚のガラス板と複数枚の保護シートとを含むガラス板積層体と、ガラス板積層体が積載されるパレットと、を備えるガラス板梱包体を製造するための方法であって、ロール状保護シートから帯状保護シートを引き出す引き出し工程と、帯状保護シートの反りを矯正する矯正工程と、帯状保護シートを切断して保護シートを形成する切断工程と、ガラス板及び保護シートをパレット上に積載する積載工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
このようにすれば、矯正工程で帯状保護シートの反りが矯正されるため、梱包工程に含まれる以後の工程で帯状保護シートの保持不良が生じにくくなる。また、帯状保護シートの反りが矯正されると、切断工程で帯状保護シートから切り出される保護シートの反りも抑制される。そのため、積載工程では、反りが抑制された保護シートがパレット上に積載される。その結果、製造されたガラス板梱包体からガラス板及び保護シートを取り出す開梱工程でも、保護シートの保持不良が生じにくくなる。
【0016】
(2) 上記(1)の構成において、矯正工程では、帯状保護シートを矯正治具で挟持し、帯状保護シートの反りを矯正することが好ましい。
【0017】
このようにすれば、帯状保護シートを機械的に押圧することができるため、帯状保護シートの反りを確実に矯正できる。
【0018】
(3) 上記(2)の構成において、矯正工程では、帯状保護シートの幅方向両端部のみを矯正治具で挟持し、帯状保護シートの幅方向両端部の反りを矯正することが好ましい。
【0019】
このようにすれば、帯状保護シートの幅方向中央部が、矯正治具と接触しない。そのため、矯正治具との接触により、帯状保護シートの幅方向中央部が変質(例えば、帯電防止性能の低下など)したり、幅方向中央部に異物が付着したりするのを防止できる。帯状保護シートの幅方向中央部は、ガラス板と接触する保護シートの幅方向中央部に対応し、帯状保護シートの幅方向両端部は、ガラス板から食み出す保護シートの幅方向両端部に対応する。したがって、ガラス板に保護シートの変質の影響が生じたり、ガラス板に保護シートの異物が付着したりするのを防止できる。
【0020】
(4) 上記(2)又は(3)の構成において、矯正治具は、平板状であることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、帯状保護シートの広い範囲の反りを一度に効率よく矯正できる。また、矯正治具の大きさによって、帯状保護シートと矯正治具との接触時間や接触面積を調整しやすくなる。
【0022】
(5) 上記(2)~(4)のいずれかの構成において、矯正治具は、金属製又はセラミックス製であることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、矯正治具の剛性を確保しやすく、帯状保護シートの反りを矯正しやすくなる。
【0024】
(6) 上記(1)~(5)のいずれかの構成において、矯正工程では、帯状保護シートを加熱することが好ましい。
【0025】
このようにすれば、帯状保護シートの反りを短時間で矯正できる。
【0026】
(7) 上記(6)の構成において、矯正工程では、帯状保護シートの加熱時間をt(s)、帯状保護シートの加熱温度をT(℃)とした場合に、-0.45T+51.5≦t≦-0.33T+71を満たすことが好ましい。
【0027】
このようにすれば、加熱時間と加熱温度を適正に保つことができるため、帯状保護シートの反りを確実に矯正しつつ、加熱に伴って帯状保護シートが溶けるのを防止できる。
【0028】
(8) 上記(1)~(7)のいずれかの構成において、保護シートは、発泡樹脂シートであることが好ましい。
【0029】
発泡樹脂シートは反りが生じやすく、本発明の矯正工程の効果がより有用となる。
【0030】
(9) 上記課題を解決するために創案された本発明は、複数枚のガラス板と複数枚の保護シートとを含むガラス板積層体と、ガラス板積層体が積載されるパレットと、を備えるガラス板梱包体を製造するための装置であって、ロール状保護シートから帯状保護シートを引き出す引き出し装置と、帯状保護シートの反りを矯正する矯正装置と、帯状保護シートを切断して保護シートを形成する切断装置と、を備えることを特徴とする。
【0031】
このようにすれば、上記の対応する構成と同様の作用効果を享受できる。
【0032】
(10) 上記課題を解決するために創案された本発明は、複数枚のガラス板と複数枚の保護シートとを含むガラス板積層体と、前記ガラス板積層体が積載されるパレットと、を備えるガラス板梱包体を製造するための方法であって、保護シートの反りを加熱して矯正する矯正工程と、ガラス板及び保護シートをパレット上に積載する積載工程と、を含むことを特徴とする。
【0033】
このようにすれば、保護シートの反りを短時間で矯正できる。また、パレット上には、反りが抑制された保護シートが積載される。その結果、製造されたガラス板梱包体からガラス板及び保護シートを取り出す開梱工程で保護シートの保持不良が生じにくくなる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、梱包時及び/又は開梱時において、帯状保護シート及び/又は保護シートの保持不良が生じるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るガラス梱包体の製造装置を示す概略側面図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係るガラス梱包体の製造装置の要部を拡大して示す斜視図である。
【
図4】本発明の第一実施形態に係るガラス梱包体の製造装置によって得られるガラス板梱包体を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第二実施形態に係るガラス梱包体の製造装置を示す概略側面図である。
【
図6】本発明の第三実施形態に係るガラス梱包体の製造装置の要部を拡大して示す斜視図である。
【
図7】保護シートの反りを矯正する試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について、添付図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0037】
<第一実施形態>
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るガラス板梱包体の製造装置1は、ガラス板G1をパレットP上に積載するガラス板積載装置2と、保護シートS1をパレットP上に積載する保護シート積載装置3と、を備える。
【0038】
本実施形態では、本製造装置1によって製造されるガラス板梱包体GPは、複数枚の縦姿勢のガラス板G1と複数枚の縦姿勢の保護シートS1とを含むガラス板積層体GLと、ガラス板積層体GLが積載されるパレットPと、を備える(
図4を参照)。パレットPは、縦姿勢のガラス板G1の一方の主表面を支持する第一支持面Paと、縦姿勢のガラス板G1の下端部を支持する第二支持面Pbと、を備える。
【0039】
ガラス板G1は、矩形状である。ガラス板G1は、成形装置(図示省略)によって連続成形された帯状ガラスを、長手方向の所定長さ毎に切断すると共に、幅方向の両端部の不要部を切断除去することで得られたものである。ガラス板G1は、例えば、厚みが0.01~2mm(好ましくは0.2~1mm)であって、その端面は面取りや丸め加工が施されていない切断面である。
【0040】
このようなガラス板G1は、原板とも呼ばれる。この原板には、例えば原板から所望の寸法のガラス板を切り出す切断処理や、切り出されたガラス板の端面を砥石で加工する端面加工処理、端面加工処理が施されたガラス板の表面を洗浄する洗浄処理、検査処理、梱包処理が施される。このようにして得られたガラス板は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの各種ディスプレイ用や、太陽電池用のガラス基板やカバーガラスに利用される。なお、成形装置は、オーバーフローダウンドロー法やスロットダウンドロー法などのダウンドロー法を実行するものであってもよく、ダウンドロー法以外の方法、例えばフロート法を実行するものあってもよい。
【0041】
保護シートS1は、ガラス板G1よりも大きい矩形状である。保護シートS1は、ポリエチレン系等の発泡樹脂シート又は発泡構造を有しない樹脂シートからなる。なお、保護シートS1は、合紙であってもよい。
【0042】
ガラス板積載装置2は、ガラス板G1を移動させる複数の保持部4を備える搬送装置として構成される。各保持部4は、各種移動機構により矢印X方向(水平方向)及び上下方向に移動可能とされている。各保持部4は、ガラス板G1を把持可能なチャック機構4aを有する。ガラス板積載装置2は、保持部4のチャック機構4aによってガラス板G1の上部を把持した状態で、ガラス板G1を矢印X方向に搬送する。各保持部4は、チャック機構4aに代えてガラス板G1を吸着保持可能な吸着機構を有してもよい。
【0043】
保護シート積載装置3は、定位置に設置されたロール状保護シートSRから帯状保護シートSを引き出す引き出し装置5と、引き出された帯状保護シートSの反りを矯正する矯正装置6と、反りが矯正された帯状保護シートSを切断して保護シートS1を形成する切断装置7と、を備える。
【0044】
ロール状保護シートSRは、帯状保護シートSが巻軸Rの周囲に巻回されたものである。帯状保護シートSの巻回方向の長さは、350~500m、好ましくは400~450mである。帯状保護シートSの幅方向の長さは、1~4m、好ましくは2~3mである。なお、帯状保護シートSは、保護シートS1と同じ材質である。
【0045】
引き出し装置5は、帯状保護シートSの引き出し方向を横方向から縦方向に変換する方向変換ローラ8と、方向変換ローラ8の下方で帯状保護シートSを挟持する一対の挟持ローラ9と、を備える。
【0046】
さらに、引き出し装置5は、縦方向に移動可能な一対の上側保持部10及び一対の下側保持部11を備える。一対の上側保持部10は、帯状保護シートSの幅方向両端部Sa、Sbの相対的に上側の部位を保持するものである。一対の下側保持部11は、帯状保護シートSの幅方向両端部Sa、Sbの相対的に下側の部位を保持するものである。これらの保持部10、11は、帯状保護シートSの幅方向両端部Sa、Sbを保持するチャック機構10a、11aを有する。
【0047】
矯正装置6は、帯状保護シートSがロール状保護シートSRから引き出し装置5に至るまでの経路上に配置されている。本実施形態では、矯正装置6は、方向変換ローラ8の上流側で、帯状保護シートSが横方向に搬送される領域に配置されている。横方向に搬送される領域では、帯状保護シートSの水平面に対する傾斜角度は、-45~45°であることが好ましく、-30~30°であることがより好ましく、-10~10°であることがさらに好ましい。
【0048】
図2及び
図3に示すように、矯正装置6は、帯状保護シートSの一方側の幅方向端部Saを挟持する一対の第一矯正治具12と、帯状保護シートSの他方側の幅方向端部Sbを挟持する一対の第二矯正治具13と、を備える。
【0049】
矯正治具12、13は、帯状保護シートSの引き出し方向に沿って延びる平板状部材で構成される。矯正治具12、13は、例えば金属又はセラミックスにより形成される。
【0050】
一対の第一矯正治具12は、帯状保護シートSの一方側の幅方向端部Saに対して接近及び離反可能となっている。一対の第二矯正治具13は、帯状保護シートSの他方側の幅方向端部Sbに対して接近及び離反可能となっている。矯正治具12、13は、接近状態で帯状保護シートSの幅方向両端部Sa、Sbと接触し、離反状態で帯状保護シートSの幅方向両端部Sa、Sbと非接触となる。なお、矯正治具12、13を帯状保護シートSの幅方向両端部Sa、Sbと接触させている間は、引き出し装置5による帯状保護シートSの引き出し動作は一時停止される。
【0051】
矯正治具12、13には、ヒータ(図示省略)が設けられている。矯正治具12、13を接近させて帯状保護シートSの幅方向両端部Sa、Sbを挟持すると、帯状保護シートSの幅方向両端部Sa、Sbは、表裏両側から機械的に押圧されながら加熱される。このように機械的な押圧と加熱とを併用することにより、小さな荷重かつ短い時間で、帯状保護シートSの幅方向両端部Sa、Sbの反りを矯正できる。ヒータは、一対の矯正治具12、13のそれぞれに設けられることが好ましい。これにより、帯状保護シートSの両面から均一に加熱することができ、帯状保護シートSの反りを効率的に矯正できる。
【0052】
図2に示すように、切断装置7は、帯状保護シートSを裏面側から支持する裏面支持部材14と、裏面支持部材14の表側に帯状保護シートSを挟んで配置された切断刃15と、を備える。
【0053】
パレットP上には、ガラス板積載装置2及び保護シート積載装置3によって、ガラス板G1及び保護シートS1が積載される。
【0054】
次に、本実施形態に係るガラス板梱包体の製造方法を説明する。
【0055】
本実施形態に係るガラス板梱包体の製造方法は、梱包工程を含む。梱包工程では、上記のガラス板梱包体の製造装置1が用いられる。
【0056】
梱包工程は、ロール状保護シートSRから帯状保護シートSを引き出す引き出し工程と、帯状保護シートSの反りを矯正する矯正工程と、帯状保護シートSを切断して保護シートS1を形成する切断工程と、ガラス板G1及び保護シートS1をパレットP上に積載する積載工程と、を含む。引き出し工程、矯正工程及び切断工程は、保護シート積載装置3によって実行される工程であり、積載工程は、ガラス板積載装置2及び保護シート積載装置3によって実行される工程である。
【0057】
引き出し工程では、まず、
図2に示すように切断装置7の近傍で待機していた一対の下側保持部11が、帯状保護シートSの幅方向両端部Sa、Sbを把持する。この状態で、一対の下側保持部11が同図に鎖線で示すように下方に移動し、所定距離だけ移動した後に停止する。これにより、一回あたりの引き出し工程が終了する。
【0058】
この後、一対の上側保持部10が帯状保護シートSの幅方向両端部Sa、Sbを把持する。これにより、帯状保護シートSは、切断装置7から下方に所定長さだけ引き出された状態で両保持部10、11によって保持される。
【0059】
矯正工程では、引き出し工程が終了し、帯状保護シートSが停止している間に、矯正装置6の矯正治具12、13で帯状保護シートSの幅方向両端部Sa、Sbを挟持しながら加熱する。これにより、帯状保護シートSの幅方向両端部Sa、Sbの反りが矯正される。したがって、新たな保護シートS1を得るために引き出し工程を再開すると、保持部10、11の待機位置には、幅方向両端部Sa、Sbの反りが矯正された帯状保護シートSが供給される。したがって、保持部10、11によって、帯状保護シートSの幅方向両端部Sa、Sbを確実に保持できる。
【0060】
本実施形態では、矯正治具12、13は、帯状保護シートSの幅方向両端部Sa、Sbのみと接触し、帯状保護シートSの幅方向中央部Scとは接触しない。そのため、帯状保護シートSの幅方向中央部Scが変質(例えば、界面活性剤が蒸発又は矯正治具12、13に付着することによる帯電防止性能の低下など)したり、幅方向中央部Scに異物(例えば矯正治具12、13上の塵埃など)が付着したりするのを防止できる。
【0061】
矯正工程では、帯状保護シートSの加熱時間をt(s)、帯状保護シートSの加熱温度をT(℃)とした場合に、-0.45T+51.5≦t≦-0.33T+71を満たすことが好ましい。具体的には、加熱時間tは、例えば、1~30sであることが好ましく、2~20sであることがより好ましく、3~10sであることがさらに好ましい。加熱温度Tは、例えば、40~70℃であることが好ましく、50~70℃であることがより好ましい。
【0062】
矯正工程で反りが矯正された帯状保護シートSの反り量は、10mm以下であることが好ましい。反り量は、帯状保護シートSから矯正治具12、13を接触させた部分を含む所定サイズの測定試料を切り出し、その測定試料を定盤の上に載置して測定する。具体的には、測定試料を定盤の上に載置した状態で、測定試料が定盤から最も浮き上がっている位置の浮き上がり高さを反り量として測定する。
【0063】
切断工程では、切断装置7の切断刃15を、帯状保護シートSに接触させ、上側保持部10の上方位置で帯状保護シートSの幅方向全長に亘って切断する。これにより、帯状保護シートSから保護シートS1が切り出される。この時点で、保護シートS1は、幅方向両端部S1a、S1bの上部及び下部が、両保持部10、11によって保持された状態となる。
【0064】
積載工程では、保護シートS1を保持した両保持部10、11が下方に移動し、保護シートS1がパレットP上に縦姿勢で積載される。
【0065】
この後は、ガラス板積載装置2によって搬送されたガラス板G1が、パレットP上に縦姿勢で積載される。そして、保護シート積載装置3による保護シートS1のパレットPへの積載と、ガラス板積載装置2によるガラス板G1のパレットPへの積載とが、交互に複数回にわたって行われる。これにより、
図4に示すようなガラス板梱包体GPが得られる。
【0066】
このガラス板梱包体GPでは、保護シートS1の上端部S1d及び幅方向両端部S1a、S1bが、ガラス板G1の外側に食み出した状態となる。つまり、保護シートS1の幅方向両端部S1a、S1bに矯正治具12、13との接触により変質や異物の付着が生じていたとしても、矯正治具12、13と接触していない清浄な保護シートS1の幅方向中央部S1cのみがガラス板G1と接触する。したがって、ガラス板G1に異物が付着するのを抑制できる。なお、ガラス板G1の外側に食み出す保護シートS1の幅方向両端部S1a、S1bのそれぞれの食み出し寸法は、例えば、50~65mmである。
【0067】
また、ガラス板梱包体GPに含まれる保護シートS1の反りは矯正されているため、ガラス板梱包体GPの開梱工程において、パレットPから保護シートS1を取り出す際に、保護シートS1の保持不良が生じにくくなる。
【0068】
<第二実施形態>
図5に示すように、本発明の第二実施形態では、矯正装置6及び矯正工程の変形例を例示する。第二実施形態では、矯正装置6の矯正治具12、13が、ロール状保護シートSRの直下流で、帯状保護シートSが横方向に搬送される領域に配置されている。つまり、矯正工程では、ロール状保護シートSRの直下流で、矯正治具12、13によって、帯状保護シートSの幅方向両端部Sa、Sbの反りが矯正される。
【0069】
矯正治具12、13の配置位置は、特に限定されるものであるものではなく、帯状保護シートSの幅方向両端部Sa、Sbの反りを矯正できれば、いずれの位置でもよい。
【0070】
帯状保護シートSに搬送途中に新たな反りが生じる可能性がある場合は、上記の第一実施形態で説明したように、帯状保護シートSの切断位置の直上流で、帯状保護シートSの反りを矯正することが好ましい。
【0071】
<第三実施形態>
図6に示すように、本発明の第三施形態では、矯正装置6及び矯正工程の変形例を例示する。第三実施形態では、矯正装置6の矯正治具12、13が、保持部10、11で保持された保護シートS1の反りを矯正するように構成されている。つまり、矯正工程では、帯状保護シートSではなく、保護シートS1の反りを矯正する。
【0072】
詳細には、矯正工程では、切断工程後に、保護シートS1の幅方向両端部S1a、S1bの上部及び下部が、両保持部10、11によって保持された状態で、保護シートS1の幅方向両端部S1a、S1bを矯正治具12、13で挟持しながら加熱する。この場合、保護シートS1が縦姿勢の状態で、保護シートS1の幅方向両端部S1a、S1bの反りが矯正される。これにより、ガラス板梱包体GPの開梱工程において、パレットPから保護シートS1を取り出す際に、反りが矯正された保護シートS1の幅方向両端部S1a、S1bを保持するようにすれば、保護シートS1の保持不良が生じにくくなる。
【0073】
なお、保護シートS1の幅方向両端部S1a、S1bの反りを矯正する領域を拡大する観点からは、保護シートS1の幅方向両端部S1a、S1bを保持している保持部10、11も、矯正治具12、13と同様に、保護シートS1を加熱する構成とすることが好ましい。また、ガラス板梱包体GPの開梱工程で、保護シートS1の上端部S1dを保持する場合は、矯正工程において、保護シートS1が保持部10、11によって保持された状態で、保護シートS1の上端部S1dを矯正治具で挟持しながら加熱してもよい。
【0074】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の形態において実施することができる。
【0075】
上記の実施形態において、帯状保護シートの幅方向両端部のみを矯正治具で挟持する場合を説明したが、帯状保護シートの幅方向両端部及び幅方向中央部(例えば、帯状保護シートの全幅に相当する領域)を矯正治具で挟持するようにしてもよい。この場合、矯正治具は、帯状保護シートの幅方向両端部を加熱し、帯状保護シートの幅方向中央部を加熱しないように構成されていてもよい。あるいは、矯正治具は、帯状保護シートの幅方向両端部を相対的に高い温度で加熱し、帯状保護シートの幅方向中央部を相対的に低い温度で加熱するように構成されていてもよい。
【0076】
上記の実施形態において、矯正治具は、帯状保護シート又は保護シートをローラによって表裏両側から挟持する構成であってもよい。この場合も、ローラからなる矯正治具は、帯状保護シート又は保護シートを加熱することが好ましい。
【0077】
上記の実施形態において、矯正治具は、帯状保護シート又は保護シートを加熱することなく表裏両側から挟持する構成であってもよい。この場合でも、矯正治具で挟持する押圧時間を相対的に長くすれば、帯状保護シート又は保護シートの反りを矯正できる。
【0078】
上記の実施形態において、矯正装置は、帯状保護シート又は保護シートを挟持することなく加熱する構成であってもよい。加熱方法としては、接触式の加熱に限らず、例えば、熱風を帯状保護シート又は保護シートに噴射したり、赤外線によって加熱したりする非接触式の加熱であってもよい。
【0079】
上記の実施形態において、保護シート積載装置は、搬送装置によって横姿勢で搬送される矩形状の保護シートを保持部で保持し、パレット上に積載するように構成されていてもよい。この場合、例えば、横姿勢で搬送される保護シートの搬送経路上で、矯正装置によって、保護シートの反りが矯正される。
【0080】
上記の実施形態において、ガラス板梱包体として、複数枚の横姿勢のガラス板と複数枚の横姿勢の保護シートとを含むガラス板積層体をパレット上に積載したものを製造するようにしてもよい。この場合、パレットは、横姿勢のガラス板の下面を支持する支持面を有する。
【実施例0081】
以下、本発明の実施例に基づいて説明する。なお、以下の実施例は単なる例示であって、本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
【0082】
帯状保護シート又は保護シートを模擬するために、縦50mm×横50mm×厚み0.15mmの発泡ポリエチレン樹脂シートを準備した。この発泡樹脂シートの反り量は10mm超である。また、発泡樹脂シートを挟持しながら加熱する矯正治具として、縦70mm×横50mm×厚み10mmの鉄鋼製の平板状部材を準備した。
【0083】
上記の発泡樹脂シートを、上記の矯正治具によって表裏両側から挟持しながら加熱し、反りを矯正する矯正工程を実施した。矯正工程では、発泡樹脂シートの加熱温度と加熱時間(接触時間)を調整し、発泡樹脂シートの反りの状態がどのように変化するかを評価した。その結果を表1及び
図7に示す。なお、評価結果は、発泡樹脂シートのうち矯正治具との接触部分に反り(皺を含む)が残るが、わずかに改善が見られる場合を「△」、当該接触部分の反りが消失しているが、溶け始めている場合を「▲」、当該接触部分に小さな反りが残っている場合を「○」、当該接触部分に変質が見られる場合を「●」、当該接触部分の反りが消失して平らになっている場合を「◎」として示している。
【0084】
【0085】
表1及び
図7からも、発泡樹脂シートの加熱温度が高くなるに連れて、短い加熱時間で発泡樹脂シートの反りが矯正できることが確認できる。一方、発泡樹脂シートの加熱温度が低い場合でも(例えば加熱温度が40℃の場合)、加熱時間(機械的な押圧時間)を長くすれば、発泡樹脂シートの反りが改善することが確認できる。ただし、加熱時間が長くなると、ガラス板梱包体の製造に要する時間も長くなる。したがって、発泡樹脂シートの加熱時間をt(s)、発泡樹脂シートの加熱温度をT(℃)とした場合に、-0.45T+51.5≦t≦-0.33T+71を満たすことが好ましいと言える。