(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106662
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】筒状構造物の内部構造測定装置、筒状構造物の内部構造測定方法、及び、核融合装置における冷却水配管の検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/06 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
G01N29/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011041
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】林 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】松永 剛
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AB01
2G047AB07
2G047BA03
2G047BC03
2G047CA01
2G047DB18
2G047GB13
2G047GB27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明の課題の一つは、装置を複雑化、大型化することなく、非浸水式で筒状構造物の内部構造に係る情報取得を可能とする筒状構造物の内部構造測定装置及び筒状構造物の内部構造測定方法の提供である。
【解決手段】上記課題を解決するために、筒状構造物内の空間に導入される超音波探触子と、超音波探触子を支持する支持体と、支持体を筒状構造物の半径方向に移動させる駆動機構と、を備え、駆動機構は筒状構造物外に設けられる筒状構造物の内部構造測定装置及び筒状構造物の内部構造測定方法を提供する。この発明によれば、超音波探触子と筒状構造物の被検査部位との接触に当たり、超音波探触子と被検査部位との密着性が向上し、非浸水式の超音波探傷に基づく測定を安定して行うことが可能となる。また、駆動機構を筒状構造物外に設けることで、筒状構造物内に導入される構成を小型化し、小径の筒状構造物についても測定が可能となる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状構造物内の空間に導入される超音波探触子と、
前記超音波探触子を支持する支持体と、
前記支持体を前記筒状構造物の半径方向に移動させる駆動機構と、を備え、
前記駆動機構は、前記筒状構造物外に設けられることを特徴とする、筒状構造物の内部構造測定装置。
【請求項2】
前記駆動機構は、前記筒状構造物の半径方向に前記支持体を平行移動させるXYステージ、及び、前記筒状構造物の半径方向に前記支持体を傾斜させる傾き機構を備えることを特徴とする、請求項1に記載の筒状構造物の内部構造測定装置。
【請求項3】
前記超音波探触子は、超音波の出射方向が二次元であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の筒状構造物の内部構造測定装置。
【請求項4】
前記筒状構造物の内壁における被検査部位と、前記超音波探触子との間に、接触媒体を供給することを特徴とする、請求項1又は2に記載の筒状構造物の内部構造測定装置。
【請求項5】
支持体に支持された超音波探触子を筒状構造物内の空間に導入する導入ステップと、
前記支持体を前記筒状構造物の半径方向に移動させる駆動ステップと、を備え、
前記駆動ステップは、前記筒状構造物外に設けた駆動機構により実行されることを特徴とする、筒状構造物の内部構造測定方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の筒状構造物の内部構造測定装置を備えることを特徴とする、核融合装置における冷却水配管の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状構造物の内部構造測定装置及び筒状構造物の内部構造測定方法に関する。
また、本発明は、筒状構造物の内部構造測定装置を備えた核融合装置における冷却水配管の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
筒状構造物、特に配管に対する保守点検、維持管理においては、筒状構造物(配管)の内部構造や外部構造に係る情報を得るための各種検査が行われている。特に、筒状構造物(配管)の内部構造については作業員の目視による確認を行うことができないため、内部構造に係る情報を得るための検査が重要となる。
【0003】
筒状構造物の内部構造に係る情報を得るための検査としては、非破壊検査の一つである超音波を用いたもの(超音波探傷)が広く行われている。
超音波探傷による検査としては、筒状構造物の外壁側から検査するものが広く活用されているが、筒状構造物の外壁側に別途構造物が存在する場合や、他の構造物との配置関係により検査装置を取り付けることが困難な場合が存在する。
【0004】
一方、超音波探傷による検査として、筒状構造物の内壁側から検査するものも知られている。ここで、超音波は気体(空気)中を伝搬しないという特性があるため、超音波探傷によって筒状構造物の内壁側から検査を行う場合、被検査部位(筒状構造物内の空間)を水浸状態とした浸水式で行うことが一般的である。
【0005】
例えば、特許文献1には、小径の被検管内に挿入される超音波探傷装置として、筒状ケーシング内に、管内液体の流れにより回転自在に支承されたタービンと、音響ミラーと、液体流速を速める液切り治具と、超音波探触子とを備えるものが記載されており、被検管中を流れる水流を利用し、タービンによって回転する音響ミラーが超音波を反射し、管内の全周にわたってヘリカル状に超音波を伝播させることで超音波探傷を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の超音波探傷装置では、浸水式であるとともに、探傷装置の移動を管内の水流(水圧)を利用して行うため、被検査部位だけではなく、被検管内全長にわたって水浸させる必要がある。このため、筒状構造物の構造(全長)によっては、水浸状態とするために大掛かりな機器(送水ポンプ、気水分離タンク等)を必要とするなど、適用に際してコスト高になることや、水浸させることが困難なものに対してはそもそも適用できないという課題がある。
【0008】
この課題解決の一例としては、非浸水式で超音波探傷を行うことが挙げられるが、従来の非浸水式超音波探傷装置では、装置の駆動機構が複雑化して大型化する傾向にあり、小径の筒状構造物に対しては適用が困難であるという課題がある。特に、核融合装置における冷却水配管のように、検査に当たって確保できる作業スペースや作業時間が少なく、かつ小径の筒状構造物については、適切な検査を行うことが困難であった。
【0009】
そこで、本発明の課題は、装置を複雑化、大型化することなく、非浸水式で筒状構造物の内部構造に係る情報取得を可能とする筒状構造物の内部構造測定装置及び筒状構造物の内部構造測定方法の提供、並びに、作業条件が厳しい中でも適切な検査を可能とする核融合装置における冷却水配管の検査装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、筒状構造物の内部構造測定において、超音波探傷に基づく測定を行うものとし、超音波探触子を筒状構造物内の空間に導入するにあたり、超音波探触子を支持する支持体を用い、この支持体の移動(駆動)に係る操作部分(駆動部分)を筒状構造物外に設けることで、装置を複雑化、大型化することなく、非浸水式で筒状構造物の内部構造に係る情報取得が可能になるという知見に至り、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の筒状構造物の内部構造測定装置、筒状構造物の内部構造測定方法、及び、核融合装置における冷却水配管の検査装置である。
【0011】
上記課題を解決するための本発明の筒状構造物の内部構造測定装置は、筒状構造物内の空間に導入される超音波探触子と、超音波探触子を支持する支持体と、支持体を筒状構造物の半径方向に移動させる駆動機構と、を備え、駆動機構は、筒状構造物外に設けられることを特徴とするものである。
この特徴によれば、超音波探触子を支持体に支持された状態で筒状構造物内の空間に導入し、この支持体を筒状構造物の半径方向に移動させる駆動機構により移動させることで、超音波探触子と筒状構造物の被検査部位とを接近・接触させた超音波探傷に基づく測定が可能となる。このとき、駆動機構を筒状構造物外に設けることで、筒状構造物内に導入されるのは小型化が容易な超音波探触子及び支持体が主となる。これにより、小径の筒状構造物に対し、筒状構造物の内壁側から超音波探傷に基づく測定が可能となる。
また、この特徴によれば、超音波探触子は支持体を介して筒状構造物の半径方向に移動するため、超音波探触子と筒状構造物の被検査部位との接近・接触に当たり、超音波探触子は支持体から筒状構造物の半径方向に沿った力を受ける(被検査部位に向かって押し付けられる力が働く)ことになる。これにより、超音波探触子と被検査部位との密着性が向上し、非浸水式の超音波探傷に基づく測定を安定して行うことが可能となる。
【0012】
また、本発明の筒状構造物の内部構造測定装置の一実施態様としては、駆動機構は、筒状構造物の半径方向に支持体を平行移動させるXYステージ、及び、筒状構造物の半径方向に支持体を傾斜させる傾き機構を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、支持体(及び超音波探触子)を筒状構造物の半径方向に移動させるに当たり、筒状構造物の半径方向に対して平行移動する機構と傾斜させる機構との両方を設けることで、筒状構造物と超音波探触子との密着性をより一層向上させることが可能となる。これにより、非浸水式の超音波探傷に基づく測定をより一層安定して行うことが可能となる。
【0013】
また、本発明の筒状構造物の内部構造測定装置の一実施態様としては、超音波探触子は、超音波の出射方向が二次元であるという特徴を有する。
この特徴によれば、超音波探触子からの超音波の出射方向が二次元(複数方向)となることで、測定時において、被検査部位に対し広域にわたって超音波を発信することができるとともに、エコーとして反射するものも広域にわたり、これを受信することになるから、一定範囲からなる被検査部位に対する測定(探傷)を迅速かつ容易に行うことが可能となる。これにより、筒状構造物の内部構造に係る情報として取得できる内容の有用性及び精度を高めることが可能となる。
【0014】
また、本発明の筒状構造物の内部構造測定装置の一実施態様としては、筒状構造物の内壁における被検査部位と、超音波探触子との間に、接触媒体を供給するという特徴を有する。
この特徴によれば、筒状構造物と超音波探触子との密着性をより一層向上させるための一手段として接触媒体を用いることが可能となる。また、被検査部位を常時水浸させるのではなく、必要時(測定時)あるいは必要箇所においてのみ接触媒体を用いることも可能となる。これにより、筒状構造物の内壁側から内部構造に係る情報取得を行うに当たり、迅速かつ高精度な測定が可能となるとともに、適用可能となる測定対象(筒状構造物)の範囲を広げることが可能となる。
【0015】
上記課題を解決するための本発明の筒状構造物の内部構造測定方法は、支持体に支持された超音波探触子を筒状構造物内の空間に導入する導入ステップと、支持体を前記筒状構造物の半径方向に移動させる駆動ステップと、を備え、駆動ステップは、筒状構造物外に設けた駆動機構により実行されるという特徴を有する。
この特徴によれば、超音波探触子を支持体に支持された状態で筒状構造物内の空間に導入し、この支持体を筒状構造物の半径方向に移動させることで、超音波探触子と筒状構造物の被検査部位とを接近・接触させた超音波探傷に基づく測定が可能となる。このとき、駆動機構を筒状構造物外に設けることで、筒状構造物内に導入されるのは小型化が容易な超音波探触子及び支持体が主となる。これにより、小径の筒状構造物に対し、筒状構造物の内壁側から超音波探傷に基づく測定が可能となる。
また、この特徴によれば、超音波探触子は支持体を介して筒状構造物の半径方向に移動するため、超音波探触子と筒状構造物の被検査部位との接近・接触に当たり、超音波探触子は支持体から筒状構造物の半径方向に沿った力を受ける(被検査部位に向かって押し付けられる力が働く)ことになる。これにより、超音波探触子と被検査部位との密着性が向上し、非浸水式の超音波探傷に基づく測定を安定して行うことが可能となる。
【0016】
上記課題を解決するための本発明の核融合装置における冷却水配管の検査装置は、上述した筒状構造物の内部構造測定装置を備えることを特徴とするものである。
一般に、核融合装置は、核融合を行うためのドーナツ形状の真空容器を備えており、さらに、この真空容器の内部には様々な機器(真空容器内機器)が設けられるとともに、この真空容器内機器は、基本的に水冷されている。しかし、水冷に用いる冷却水配管に対する検査を行うに当たっては、冷却水配管が小径であることに加え、作業スペースや作業時間の確保が困難であった。
一方、この特徴によれば、上述した筒状構造物の内部構造測定装置を用いることで、装置を複雑化、大型化することなく、小径の筒状構造物に対し、非浸水式の超音波探傷に基づく測定を安定して行うことが可能となる。すなわち、核融合装置における冷却水配管の検査に係る作業条件が厳しい中でも、冷却水配管に対する適切な検査を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、装置を複雑化、大型化することなく、非浸水式で筒状構造物の内部構造に係る情報取得を可能とする筒状構造物の内部構造測定装置及び筒状構造物の内部構造測定方法の提供、並びに、作業条件が厳しい中でも適切な検査を可能とする核融合装置における冷却水配管の検査装置の提供ができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施態様に係る筒状構造物の内部構造測定装置の構造を示す概略説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施態様に係る筒状構造物の内部構造測定装置の別態様を示す概略説明図である。
【
図3】本発明の第1の実施態様に係る筒状構造物の内部構造測定装置における超音波探触子の構造を示す概略説明図である。
【
図4】本発明の第1の実施態様に係る筒状構造物の内部構造測定装置における駆動機構(傾き機構)の構造を示す概略説明図である。
【
図5】本発明の第2の実施態様に係る筒状構造物の内部構造測定装置の構造を示す概略説明図である。
【
図6】本発明の第3の実施態様に係る筒状構造物の内部構造測定装置の構造を示す概略説明図である。
【
図7】本発明の第4の実施態様に係る筒状構造物の内部構造測定装置の構造を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の筒状構造物の内部構造測定装置、筒状構造物の内部構造測定方法、及び、核融合装置における冷却水配管の検査装置に係る実施形態を詳細に説明する。また、本発明の筒状構造物の内部構造測定方法は、本発明の筒状構造物の内部構造測定装置の作動に係る説明に置き換えるものとする。
なお、実施形態に記載する筒状構造物の内部構造測定装置、筒状構造物の内部構造測定方法、及び、核融合装置における冷却水配管の検査装置については、本発明を説明するために例示したに過ぎず、これに制限されるものではない。
【0020】
本発明の筒状構造物の内部構造測定装置は、筒状構造物の内部構造に係る情報について、筒状構造物の内壁側から取得(測定)するものであり、かつ非浸水式の超音波探傷を行う測定装置である。
ここで、本発明の筒状構造物の内部構造測定装置によって取得する筒状構造物の内部構造に係る情報とは、筒状構造物の内部損傷箇所の有無のほか、筒状構造物における溶接部の内部欠陥の有無、筒状構造物の肉厚(減肉)などが挙げられる。特に、本発明の筒状構造物の内部構造測定装置では、従来の非浸水式の超音波探傷では取得が困難であった小径の筒状構造物における溶接部の内部欠陥の有無について、精度の高い情報を取得することが可能となる。
【0021】
本発明の筒状構造物の内部構造測定装置による測定対象である筒状構造物については、断面略円状かつ内壁側に空間を有するものであればよく、有底、無底については特に限定されない。また、材質についても特に限定されない。
本発明において、特に好適な測定対象となる筒状構造物としては、小径(200mm以下、より好ましくは100mm以下)の筒状構造物(配管)が挙げられる。また、全長にわたって水浸させることが困難な構造を有する筒状構造物についても測定対象とすることが可能である。本発明における筒状構造物の具体例としては、例えば、熱交換器、核融合装置における真空容器内機器に使用される小径配管(冷却水配管)などが挙げられる。
【0022】
〔第1の実施態様〕
図1は、本発明の第1の実施態様に係る筒状構造物の内部構造測定装置の構造を示す概略説明図である。また、
図2は、本発明の第1の実施態様に係る筒状構造物の内部構造測定装置の別態様を示す概略説明図である。
なお、
図1(A)及び
図2(A)は側面図であり、
図1(B)及び
図2(B)はそれぞれ
図1(A)及び
図2(A)におけるI-I断面を上方から見た平面図である。
【0023】
図1及び
図2に示すように、本実施態様における筒状構造物の内部構造測定装置(以下、単に「測定装置1A」と呼ぶ)は、筒状構造物P内の空間に導入される超音波探触子10と、超音波探触子10を支持する支持体20と、支持体20を筒状構造物Pの半径方向に移動させるための駆動機構30と、を備えている。また、測定装置1Aは、支持体20を筒状構造物Pの中心軸方向に沿って昇降移動させる昇降駆動機構40と、支持体20を筒状構造物Pの円周方向に回転移動させる回転駆動機構50と、を備えている。
なお、
図1には、駆動機構30としてXYステージ31を備えたものを示しており、
図2には、駆動機構30として傾き機構32を備えたものを示している。
【0024】
本実施態様における筒状構造物Pの具体的構造及び被検査部位Tの箇所については特に限定されない。
なお、本実施態様における筒状構造物Pとしては、溶接部Wを有する小径の配管からなり、本実施態様の測定装置1Aによる被検査部位Tが、筒状構造物Pの溶接部W及びその近傍を含む所定範囲としたものについて、以下説明を行う。
【0025】
本実施態様の測定装置1Aは、超音波探触子10を支持体20に支持された状態で筒状構造物P内の空間に導入し、この支持体20を筒状構造物Pの半径方向に移動させる駆動機構30により移動させることで、超音波探触子10と筒状構造物Pの被検査部位Tとを接近・接触させるものである。
ここで、駆動機構30を筒状構造物P外に設けることで、筒状構造物P内に導入されるのは超音波探触子10及び支持体20が主となる。後述するように、超音波探触子10と支持体20は小型化が容易であり、本実施態様の測定装置1Aは、小径の筒状構造物Pに対し、筒状構造物Pの内壁側から超音波探傷に基づく測定が可能となる。
また、超音波探触子10は支持体20を介して筒状構造物Pの半径方向に移動するため、超音波探触子10と筒状構造物Pの被検査部位Tとの接近・接触に当たり、超音波探触子10は支持体20から筒状構造物Pの半径方向に沿った力を受ける(被検査部位Tに向かって押し付けられる力が働く)ことになる。これにより、超音波探触子10と被検査部位Tとの密着性が向上し、非浸水式の超音波探傷に基づく測定を安定して行うことが可能となる。
【0026】
以下、
図1及び
図2に基づき、測定装置1Aの各構成について説明する。なお、
図1及び
図2に示した本実施態様の測定装置1Aは、垂直方向(Z方向)に立設された筒状構造物Pに対する内部構造測定を行うものであり、図中、筒状構造物Pの半径方向とは水平方向(X方向又はY方向)を指すものとする。
【0027】
超音波探触子10は、超音波の発信・受信を行うことで、筒状構造物P(被検査部位T)の内部構造に係る情報を取得することができるものである。より具体的には、超音波探触子10から被検査部位Tに対して超音波(超音波パルス)を発信し、この発信した超音波が内部構造に応じて反射したもの(エコー)を超音波探触子10で受信し、この受信したものを演算処理することで、被検査部位Tの内部構造に係る情報を得るものである。
【0028】
本実施態様における超音波探触子10としては、超音波探傷で一般的に用いられる超音波探触子を用いることができる。本実施態様の超音波探触子10としては、超音波の発信と受信を行うことができる平板状の振動子(圧電素子)を備えるものが挙げられる。また、超音波探触子10における振動子の配置方向については特に限定されず、いわゆる垂直探触子、または斜角探触子と称されるものが利用可能である。
ここで、超音波探触子10として垂直探触子を用いた場合、筒状構造物Pの内部構造に係る情報として得られるものは、主に筒状構造物Pの肉厚に係る情報となる。一方、超音波探触子10として斜角探触子を用いた場合、筒状構造物Pの内部構造に係る情報として得られるものは、主に筒状構造物Pにおける内部欠陥に係る情報となる。
本実施態様の測定装置1Aにおいては、超音波探触子10としては斜角探触子を用いることが好ましい。これにより、従来の非浸水式超音波探傷では取得が困難であった溶接部Wにおける内部欠陥についての情報を高精度で得ることが可能となる。
【0029】
本実施態様における超音波探触子10としては、超音波の出射方向が二次元となるものを用いることが特に好ましい。より具体的には、超音波探触子10として、フェーズドアレイ式として知られる構造を有するものを用いることが好ましい。超音波探触子10から超音波の出射方向が二次元(複数方向)となることで、測定時において、被検査部位Tに対し広域にわたって超音波を発信することができるとともに、エコーとして反射するものも広域にわたり、これを受信することになるから、一定範囲からなる被検査部位Tに対する測定(探傷)を迅速かつ容易に行うことが可能となる。これにより、筒状構造物Pの内部構造に係る情報として取得できる内容の有用性及び精度を高めることが可能となる。
【0030】
図3は、本実施態様における超音波探触子10の構造及び内部構造測定について示した概略説明図である。なお、
図3は、筒状構造物Pの向きが
図1及び
図2を90度回転させた方向となっており、図中、筒状構造物Pの半径方向とは垂直方向(X方向)を指すものとする。
【0031】
本実施態様の超音波探触子10としては、
図3に示すように、トランスデューサ11とウェッジ12を備えるものが挙げられる。なお、
図3に示す超音波探触子10は、いわゆる斜角探触子の構造を有するものである。
【0032】
トランスデューサ11は、超音波を発信・受信するためのものであり、ウェッジ12との境界面に、超音波の発信・受信部となる振動子11aを備えるものである。このとき、振動子11aとしては、単一振動子を一辺0.5mm~2.5mm程度の細片(セグメント)に分割したものを複数配置してなるフェーズドアレイ式の構造とすることが好ましい。
【0033】
ウェッジ12は、超音波探触子10として筒状構造物Pと接触し、筒状構造物Pの被検査部位Tとの密着性を高めるためのものである。上述したように、超音波は空気(気体)中では伝搬しにくい。このため、トランスデューサ11から発信される超音波を効率的に被検査部位Tに入射させるためには、ウェッジ12と被検査部位Tとの密着性をより高めるための手段を備えるものとしてもよい。例えば、
図3に示すように、ウェッジ12と被検査部位Tとの間には接触媒体Mを用いることが好ましい。
ここで、本実施態様の超音波探触子10は、筒状構造物Pの円周方向に対し測定を行う際、被検査部位Tと接触した状態で回転駆動するものとなる。このため、トランスデューサ11(振動子11a)と被検査部位Tとを直接接触させると、振動子11a表面に傷が入るおそれがある。したがって、ウェッジ12は、トランスデューサ11と筒状構造物P(被検査部位T)との緩衝材としても機能する。
ウェッジ12の材質としては、超音波の透過に影響がなく、筒状構造物Pとの摺動に対する一定程度の耐性(強度)を有するものが挙げられる。より具体的には、ウェッジ12は、樹脂製からなるものが挙げられる。これにより、ウェッジ12としての成型が容易であるとともに、交換に掛かるコスト低減を図ることが可能となる。
【0034】
本実施態様の超音波探触子10のサイズは、主にトランスデューサ11の振動子11aの面積に依存するものとなるが、例えば、50mm以下、より好ましくは30mm以下とすることが挙げられる。これにより、従来の非浸水式超音波探傷では困難であった小径の筒状構造物Pに対する測定が可能となる。なお、測定効率を鑑み、超音波探触子10のサイズは10mm以上とすることが好ましい。これにより、筒状構造物Pの被検査部位Tに対し、徒に測定回数を増加させることなく、効率的な測定が可能となる。
【0035】
図3に基づき、本実施態様の超音波探触子10による内部構造測定について説明する。
なお、
図3は、後述する支持体20及び駆動機構30によって、超音波探触子10と、筒状構造物Pの被検査部位Tとが接触している状態を示している。
【0036】
まず、トランスデューサ11(振動子11a)から発信された超音波は、ウェッジ12を介して筒状構造物P(被検査部位T)表面に対し、斜角で入射する。なお、取得したい情報が、溶接部Wの内部構造(内部欠陥Dの有無)に係るものである場合、
図3に示すように、溶接部W近傍の筒状構造物P内壁面に超音波探触子10を接触させ、溶接部Wに向かって超音波を入射させることが好ましい。溶接部Wの表面よりも平滑である筒状構造物P内壁と超音波探触子10を接触させることで、密着性が確保しやすくなり、安定した測定が可能となる。
【0037】
トランスデューサ11から発信された超音波は、入射した筒状構造物Pの面(内壁側)とは反対の面(外壁側)で反射し、溶接部W側に向かう。このとき、溶接部W内に内部欠陥Dが存在する場合、超音波は内部欠陥Dによって反射し、超音波探触子10側に戻ることになる。この反射したもの(エコー)の強度や戻ってくるまでの時間を基に、内部欠陥Dの有無及び位置を求めることが可能となる。
【0038】
また、このとき、超音波探触子10と被検査部位Tを接触させたまま、回転駆動機構50により支持体20を回転駆動させることで、筒状構造物Pの円周方向において内部欠陥Dの有無及び位置に加え、内部欠陥Dの範囲(長さ)を求めることが可能となる。
【0039】
支持体20は、超音波探触子10を支持するものである。また、支持体20は、後述する駆動機構30のほか、昇降駆動機構40及び回転駆動機構50とも接続され、これら駆動機構の駆動による超音波探触子10の移動を可能とするためのものである。
【0040】
支持体20は、超音波探触子10を支持し、各方向への駆動(XYZ方向及び回転)が可能な形状、材質であればよく、特に限定されない。支持体20としては、例えば、棒状部材からなるもの(シャフト、ロッドなど)が挙げられる。また、支持体20の幅(直径)や長さについては特に限定されない。例えば、測定対象となる筒状構造物Pに合わせて設計することが可能である。
【0041】
支持体20における超音波探触子10の支持手段は特に限定されない。例えば、支持体20の側方部に超音波探触子10を取り付けるものとしてもよいが、
図1及び
図2に示すように、支持体20の下方端部で保持用部材21を介して超音波探触子10を支持するものが挙げられる。このとき、
図1(B)及び
図2(B)に示すように、超音波探触子10について、支持体20の直径外に突出する部分が少なくように配置することが好ましい。これにより、超音波探触子10を筒状構造物P内の空間に導入する際に、支持体20の直径分が通過可能であればよいものとなる。したがって、測定対象として適用可能となる筒状構造物Pの範囲を広げることが可能となり、特に従来の非浸水式超音波探傷では困難であった小径の筒状構造物を測定対象とすることが可能となる。
【0042】
また、保持用部材21は、超音波探触子10と被検査部位Tとが並行となるように角度調整ができることが好ましい。これにより、超音波探触子10と被検査部位Tとの密着性をより向上させることができ、非浸水式の超音波探傷に基づく測定を安定して行うことが可能となる。
なお、保持用部材21の角度調整に係る手段については特に限定されない。例えば、保持用部材21に対し、角度可変とするための機構(遠隔操作可能であることが好ましい)を設けることや、保持用部材21の構造あるいは材質として、後述する駆動機構30による支持体20(保持用部材21)の移動に伴い生じる力(被検査部位Tに向かって押し付けられる力)によって変形し得るものを選択すること等が挙げられる。
【0043】
駆動機構30は、支持体20を筒状構造物Pの半径方向に移動させる駆動ステップを行うためのものであり、筒状構造物P外に設けられる。これにより、筒状構造物P内に導入されるのは小型化が容易な超音波探触子10及び支持体20が主となる。したがって、小径の筒状構造物に対し、筒状構造物Pの内壁側から超音波探傷に基づく測定が可能となる。
【0044】
駆動機構30の具体例としては、例えば、
図1に示すように、支持体20上方端部と接続されたXYステージ31を設けることが挙げられる。
XYステージ31を用いることで、支持体20(及び超音波探触子10)のXY平面上の位置を高精度に制御することが容易となる。したがって、超音波探触子10を筒状構造物Pの内壁側から被検査部位Tに対して適切な位置に接触させることができ、測定精度を高めることが可能となる。
また、XYステージ31によって、超音波探触子10は支持体20を介して筒状構造物Pの半径方向に平行移動するため、超音波探触子10と被検査部位Tとの接近・接触に当たり、超音波探触子10は支持体20から筒状構造物Pの半径方向に沿った力を受ける(被検査部位Tに向かって押し付けられる力が働く)ことになる。これにより、超音波探触子10と被検査部位Tとの密着性が向上し、非浸水式の超音波探傷に基づく測定を安定して行うことが可能となる。
【0045】
また、駆動機構30の別の具体例としては、例えば、
図2に示すように、支持体20上方端部に傾き機構32を設けることが挙げられる。
本実施態様の傾き機構32とは、支持体20を筒状構造物Pの半径方向に向かって傾けることができるものであればよく、構造については特に限定されない。
【0046】
図4は、本実施態様における駆動機構である傾き機構の構造の一例を示す概略説明図である。なお、
図4(A)及び
図4(B)は、傾き機構としてそれぞれ異なる構造について例示したものである。
図4に示すように、傾き機構32としては、回転軸32aと、角度調整部32bを備えるものが挙げられる。
回転軸32aは、支持体20と接続し、軸中心を起点に回転駆動するものであればよく、支持体20の中心軸(
図4におけるZ方向)に対し、回転軸32aの軸(軸中心)が直交するように配置する。換言すれば、回転軸32aの軸方向が
図1及び
図2におけるY方向(
図4における紙面垂直方向)に向かうように配置する。これにより、回転軸32aの回転駆動により、支持体20を筒状構造物Pの半径方向(
図4におけるX方向)に向かって傾けることが可能となる。なお、
図4におけるX方向及びY方向とは、Z方向に対する相対的な向きを指し示すものであり、方向自体を固定するものではない。すなわち、
図4におけるX方向及びY方向は、相互に置換可能なものである。
角度調整部32bは、回転軸32aに作用し、回転軸32aを回転駆動させるためのものである。角度調整部32bを介して、回転軸32aを回転駆動させることで、支持体20を傾ける角度の調整を容易に行うことが可能となる。
【0047】
ここで、角度調整部32bの具体例としては、
図4(A)に示すように、回転軸32aと接続する棒状ないしは板状の部材と、この部材を上下に駆動させる駆動部(不図示)とを備えるものや、
図4(B)に示すように、回転軸32aとの接触/非接触状態を取り得る棒状ないしは板状の部材と、この部材を上下及び左右に駆動させる駆動部(不図示)とを備えるものが挙げられる。このとき、部材を駆動させる駆動部については特に限定されないが、消費電力の少ないアクチュエータであるエアシリンダが好適に用いられる。
【0048】
図4(A)に示した角度調整部32bは、回転軸32aと部材とを接続することで、部材の上下駆動に伴い、回転軸32aが回転することになる。例えば、
図4(A)の右図に示すように、角度調整部32bの部材を初期位置から下方向に駆動させたとき、部材の動きに連動して回転軸32aは右回りすることになり、その結果、回転軸32aと接続している支持体20は、筒状構造物Pの半径方向(
図4におけるX方向)に向かって傾くこととなる。
また、
図4(B)に示した角度調整部32bは、部材の駆動に伴い、回転軸32aと部材との接触/非接触状態を切換え可能とすることで、回転軸32aが回転することになる。例えば、
図4(B)の右図に示すように、角度調整部32bの部材を初期位置から下方向かつ左方向に駆動させることで、部材によって回転軸32aの下部が押圧され、回転軸32aが右回りすることになり、その結果、回転軸32aと接続している支持体20は、筒状構造物Pの半径方向(
図4におけるX方向)に向かって傾くこととなる。
【0049】
傾き機構32を用いることで、支持体20の下端部に配置された超音波探触子10を筒状構造物Pの内壁側から被検査部位Tに対して押圧するように接触させることができる。これにより、超音波探触子10と被検査部位Tとの密着性を高め、非浸水式の超音波探傷に基づく測定を安定して行うことが可能となる。
【0050】
上述したように、支持体20(及び超音波探触子10)は、駆動機構30による筒状構造物Pの半径方向への移動以外の移動も行う。
昇降駆動機構40及び回転駆動機構50は、それぞれ支持体20と接続され、支持体20(及び超音波探触子10)の昇降移動及び回転移動を行うためのものである。
また、昇降駆動機構40及び回転駆動機構50は、駆動機構30と同様に、筒状構造物P外に設けられる。これにより、駆動機構30と併せて、筒状構造物P内の空間に導入される構成を少なくし、小径の筒状構造物に対し、筒状構造物の内壁側から超音波探傷に基づく測定が可能となる。
【0051】
昇降駆動機構40は、
図1及び
図2に示すように、支持体20及び駆動機構30を筒状構造物Pの中心軸方向に沿って昇降移動(Z方向移動)させることができるものであればよく、特に限定されない。
なお、本実施態様の測定装置1Aにおいては、昇降駆動機構40を駆動させることで、超音波探触子10が筒状構造物P内の空間に導入されることとなる(導入ステップ)。
【0052】
回転駆動機構50は、支持体20を筒状構造物Pの周方向に移動させる回転ステップを行うためのものであり、
図1及び
図2に示すように、支持体20を回転移動させることができるものであればよく、特に限定されない。なお、回転駆動機構50を駆動させる際は、上述した駆動機構30により、支持体20の回転軸と筒状構造物Pの中心軸を一致させてから行うことが好ましい。これにより、支持体20の回転移動が安定し、筒状構造物Pの円周方向に対する測定においても精度の高い情報を取得することが可能となる。この場合、駆動機構30としては、XYステージ31が特に好適に用いられる。
【0053】
以上のように、本実施態様における筒状構造物の内部構造測定装置(測定装置1A)及びこの測定装置1Aを用いた筒状構造物の内部構造測定方法は、超音波探触子10を支持体20に支持された状態で筒状構造物P内の空間に導入し、この支持体20を筒状構造物Pの半径方向に移動させる駆動機構30により移動させることで、超音波探触子10と筒状構造物Pの被検査部位Tとの接近・接触に当たり、超音波探触子10は支持体20から筒状構造物Pの被検査部位Tに向かって押し付けられる力が働くことになる。これにより、超音波探触子10と被検査部位Tとの密着性が向上し、非浸水式の超音波探傷に基づく測定を安定して行うことが可能となる。
また、駆動機構30を筒状構造物P外に設けることで、筒状構造物P内に導入されるのは小型化が容易な超音波探触子10及び支持体20が主となる。これにより、従来の非浸水式超音波探傷では測定が困難であった小径の筒状構造物についても、筒状構造物の内壁側から超音波探傷に基づく測定が可能となる。
【0054】
そして、本実施態様における筒状構造物の内部構造測定装置(測定装置1A)は、本発明の一つである核融合装置における冷却水配管の検査装置として利用することが可能である。
より具体的には、測定装置1Aによる測定対象となる筒状構造物Pを、核融合装置における冷却水配管とすることで、本発明の核融合装置における冷却水配管の検査装置として機能させることが挙げられる。
【0055】
本発明の核融合装置における冷却水配管の検査装置(以下、単に「検査装置」とも呼ぶ)とは、核融合装置で使用される冷却水配管の検査を行うために使用するものであり、冷却水配管そのものの種類は特に限定されない。
一般に、核融合装置は、核融合を行うためのドーナツ形状の真空容器を備えており、さらにこの真空容器の内部には様々な機器(真空容器内機器)が設けられている。そして、これらの機器(真空容器内機器)は基本的に水冷されていることから、本発明の検査装置による検査対象としては、真空容器内機器の水冷に用いる冷却水配管とすることが挙げられる。特に、真空容器内機器における冷却水配管は小径であることが多く、冷却水配管の設置及び交換時には、配管の切断や接続、さらには接続部に対する検査を必要とすることがある。しかし、これまで真空容器内機器における冷却水配管に係る検査等の作業を行うに当たっては、作業スペースや作業時間の確保が困難であった。
【0056】
一方、本発明の検査装置として、本実施態様に示した筒状構造物の内部構造測定装置(測定装置1A)を用いることで、装置を複雑化、大型化することなく、小径の筒状構造物に対し、非浸水式の超音波探傷に基づく測定を安定して行うことが可能となる。すなわち、核融合装置における冷却水配管の検査のように作業条件が厳しい中でも、冷却水配管に対する適切な検査を行うことが可能となる。
【0057】
また、本発明の検査装置としては、測定装置1Aを構成する各部品に対し、核融合装置内におけるメンテナンス作業に適した性能を付与することが好ましい。例えば、検査装置としての測定装置1Aに係る各部品の材質を、耐熱、耐放射線性を備えるものとすることなどが挙げられる。
【0058】
〔第2の実施態様〕
図5は、本発明の第2の実施態様における筒状構造物の内部構造測定装置を示す概略説明図である。
第2の実施態様に係る測定装置1Bは、駆動機構30として、第1の実施態様における測定装置1Aに示したXYステージ31及び傾き機構32の両方を備えるものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0059】
本実施態様の測定装置1Bでは、駆動機構30としてXYステージ31及び傾き機構32の両方を備えることで、支持体20(及び超音波探触子10)の位置をより一層高精度に制御することが可能となる。
例えば、XYステージ31によって、支持体20の回転軸(回転駆動機構50における回転軸)と筒状構造物Pの中心軸との位置合わせを行いつつ、超音波探触子10と被検査部位Tとの距離を接近させるように支持体20を平行移動させる。そして、その状態で、傾き機構32を用いることで、超音波探触子10が被検査部位Tに対して押し付けられることになる。これにより、回転駆動機構50による回転移動を伴う測定においても、超音波探触子10と被検査部位Tの密着性を適切に維持することが可能となる。また、この場合、超音波探触子10と被検査部位Tとを接触させるために必要な傾斜角度については、傾き機構32単独で傾斜(移動)させるよりも、角度を小さくすることが可能となる。すなわち、傾き機構32の駆動や制御に掛かる負荷を低減させつつ、必要な密着性を維持することが可能となる。
【0060】
本実施態様の測定装置1Bは、支持体20(及び超音波探触子10)を筒状構造物Pの半径方向に移動させるに当たり、筒状構造物Pの半径方向に対して平行移動する機構(XYステージ31)と傾斜させる機構(傾き機構32)との両方を設けることで、筒状構造物P(被検査部位T)と超音波探触子10との密着性をより一層向上させることが可能となる。これにより、非浸水式の超音波探傷に基づく測定をより一層安定して行うことが可能となる。
【0061】
また、本実施態様における筒状構造物の内部構造測定装置(測定装置1B)は、上述した測定装置1Aと同様に、本発明の一つである核融合装置における冷却水配管の検査装置として利用することが可能である。
【0062】
〔第3の実施態様〕
図6は、本発明の第3の実施態様における筒状構造物の内部構造測定装置を示す概略説明図である。
第3の実施態様に係る測定装置1Cは、第1の実施態様における測定装置1Aにおいて、被検査部位Tと超音波探触子10との間に接触媒体Mを供給する接触媒体供給部60を備えるものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0063】
本実施態様の測定装置1Cは、被検査部位Tと超音波探触子10との密着性を向上させる手段として、被検査部位Tと超音波探触子10との間に接触媒体Mを供給する接触媒体供給部60を設けるものである。
【0064】
上述したように、被検査部位Tと超音波探触子10との間に気体(空気)が存在することで、超音波探傷による測定精度は低下する。したがって、本実施態様の測定装置1Cでは、駆動機構30による位置調整と併せて、被検査部位Tの表面形状や超音波探触子10(ウェッジ12)の表面形状に起因して存在し得る微細な間隙(空隙)に対し、接触媒体Mを供給することで、密着性を向上させるものとなる。
【0065】
接触媒体Mとしては、被検査部位Tと超音波探触子10と接触面における間隙をなくし、密着性を向上させることができるものであればよく、特に限定されない。例えば、水、オイルのような液体のほか、ジェル状物質などが挙げられる。
【0066】
接触媒体供給部60としては、接触媒体Mを移送する供給ライン61と、被検査部位Tと超音波探触子10との間に接触媒体Mを排出する供給ノズル62を備えるものが挙げられる。また、この接触媒体供給部60は、
図6に示すように、超音波探触子10とともに保持用部材21に支持させることが好ましい。これにより、接触媒体供給部60は超音波探触子10とともに移動することになるため、超音波探触子10と被検査部位Tとの間隙に対して的確に接触媒体Mを供給することが容易となる。
【0067】
また、本実施態様における保持用部材21についても、上述したように角度調整を可能とすることが好ましい。このとき、超音波探触子10と被検査部位Tとを密着させるために超音波探触子10と被検査部位Tとを並行にするように角度調整を行うこと以外にも、接触媒体Mを確実に行き渡らせるために超音波探触子10をやや上向きにするように角度調整ができることが好ましい。
【0068】
本実施態様の測定装置1Cは、筒状構造物P(被検査部位T)と超音波探触子10との密着性をより一層向上させるための一手段として接触媒体Mを用いるものである。また、被検査部位Tを常時水浸させるのではなく、必要時(測定時)あるいは必要箇所においてのみ接触媒体Mを用いることも可能となる。これにより、筒状構造物Pの内壁側から内部構造に係る情報取得を行うに当たり、迅速かつ高精度な測定が可能となるとともに、適用可能となる測定対象(筒状構造物)の範囲を広げることが可能となる。
【0069】
また、本実施態様における筒状構造物の内部構造測定装置(測定装置1C)は、上述した測定装置1Aと同様に、本発明の一つである核融合装置における冷却水配管の検査装置として利用することが可能である。
【0070】
〔第4の実施態様〕
図7は、本発明の第4の実施態様における筒状構造物の内部構造測定装置を示す概略説明図である。
第4の実施態様に係る測定装置1Dは、第1の実施態様における測定装置1Aに示した支持体20の一部に縮径部22を設けるものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0071】
本実施態様の測定装置1Dは、筒状構造物P内の空間において、一部管径が縮小するように狭隘部Nが設けられている場合に対して好適に使用されるものである。
例えば、
図7に示すように、筒状構造物P内の一部に狭隘部Nが設けられている場合、支持体20の直径が一様であると、駆動機構30による移動時に支持体20と狭隘部Nが接触し、超音波探触子10と被検査部位Tとの接近・接触を阻害するおそれがある。
【0072】
一方、
図7に示すように、本実施態様の支持体20は、一部に縮径部22を設けることで、駆動機構30による移動時に支持体20と狭隘部Nの接触を回避させることが可能となる。これにより、狭隘部Nが存在することで、被検査部位T側に超音波探触子10を移動させることが困難であった筒状構造物Pについても、測定対象とすることが可能となる。
【0073】
縮径部22の形状、大きさについては特に限定されない。また、縮径部22の構造として、例えば、剛性を確保しつつ軽量化するために中空の筒状構造とすることが挙げられる。
【0074】
本実施態様の測定装置1Dは、特殊な構造(狭隘部N)を有する筒状構造物Pについても、超音波探触子10と被検査部位Tとの密着性を確保することが可能である。これにより、狭隘部Nが存在する筒状構造物Pの内壁側から内部構造に係る情報取得を行うに当たっても、迅速かつ高精度な測定が可能となる。
【0075】
また、本実施態様における筒状構造物の内部構造測定装置(測定装置1D)は、上述した測定装置1Aと同様に、本発明の一つである核融合装置における冷却水配管の検査装置として利用することが可能である。
特に、核融合装置の真空容器内機器における冷却水配管は小径であることに加え、狭隘部Nのような特殊な構造を有することが多い。そのため、本発明の検査装置として、本実施態様に示した筒状構造物の内部構造測定装置(測定装置1D)を用いることで、作業条件が厳しい中、冷却水配管に対する適切な検査を行うことがより一層容易となる。
【0076】
なお、上述した実施態様は、筒状構造物の内部構造測定装置及び筒状構造物の内部構造測定方法の一例を示すものである。本発明に係る筒状構造物の内部構造測定装置及び筒状構造物の内部構造測定方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る筒状構造物の内部構造測定装置及び筒状構造物の内部構造測定方法を変形してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の筒状構造物の内部構造測定装置及び筒状構造物の内部構造測定方法は、筒状構造物の内部構造に係る情報取得に利用されるものである。特に、小径の筒状構造物(配管)における内部構造に係る情報取得及びメンテナンス作業において好適に利用される。
また、本発明の核融合装置における冷却水配管の検査装置は、核融合装置で使用される各種冷却水配管の検査に利用されるものである。
【符号の説明】
【0078】
1A,1B,1C,1D 筒状構造物の内部構造測定装置、10 超音波探触子、11 トランスデューサ、11a 振動子、12 ウェッジ、20 支持体、21 保持用部材、22 縮径部、30 駆動機構、31 XYステージ、32 傾き機構、32a 回転軸、32b 角度調整部材、40 昇降駆動機構、50 回転駆動機構、60 接触媒体供給部、61 供給ライン、62 供給ノズル、D 内部欠陥、M 接触媒体、N 狭隘部、P 筒状構造物、T 被検査部位、W 溶接部