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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106666
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】人力駆動車用のリアスプロケット
(51)【国際特許分類】
   B62M 9/10 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
B62M9/10 G
B62M9/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011054
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】キアン シュン タン
(72)【発明者】
【氏名】ホ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】福森 毅
(72)【発明者】
【氏名】蒲田 建二
(57)【要約】
【課題】変速を促進する領域への泥等の汚れの付着を抑制できる人力駆動車用のリアスプロケットを提供する。
【解決手段】人力駆動車用のリアスプロケットは、スプロケット本体と、径方向において、スプロケット本体の外周から径方向外側に延びる複数のスプロケット歯と、を備え、複数のスプロケット歯は、複数のアップシフト促進歯を含み、複数のアップシフト促進歯は、アップシフト開始歯と、アップシフト凹部歯と、を含み、アップシフト開始歯は、第1アップシフト凹部を有し、アップシフト凹部歯は、第2アップシフト凹部を有し、第1アップシフト歯底が、周方向において、アップシフト開始歯と、アップシフト凹部歯との間に定義され、第1アップシフト面取り部が、少なくとも第1アップシフト歯底に設けられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車用のリアスプロケットであって、軸方向、径方向、および、周方向を定義する回転中心軸心と、軸方向外側面と、前記軸方向において、前記軸方向外側面の反対側に設けられ、前記リアスプロケットが前記人力駆動車に搭載される搭載状態において、前記人力駆動車の中心軸心面に対向するように構成される軸方向内側面と、を有し、
スプロケット本体と、
前記径方向において、前記スプロケット本体の外周から径方向外側に延びる複数のスプロケット歯と、を備え、
前記複数のスプロケット歯は、前記リアスプロケットから、前記リアスプロケットと隣接小スプロケットとの間に他のスプロケットが無いように、前記リアスプロケットと隣接する前記隣接小スプロケットに向かって、駆動チェーンが移動するアップシフトオペレーションを促進するように構成される複数のアップシフト促進歯を含み、
前記複数のアップシフト促進歯は、前記アップシフトオペレーションにおいて、前記駆動チェーンから最初に外れるように構成されるアップシフト開始歯と、アップシフト凹部歯と、を含み、
前記アップシフト開始歯は、前記軸方向において、前記軸方向外側面から前記軸方向内側面に向かって凹むように前記アップシフト開始歯の前記軸方向外側面に設けられる第1アップシフト凹部を有し、
前記アップシフト凹部歯は、
前記軸方向において、前記軸方向外側面から前記軸方向内側面に向かって凹むように前記アップシフト凹部歯の前記軸方向外側面に設けられる第2アップシフト凹部を有し、
前記周方向において、前記アップシフト開始歯と前記アップシフト凹部歯との間に他の歯が無いように、前記リアスプロケットの駆動回転方向に関する前記アップシフト開始歯の上流側において、前記アップシフト開始歯に隣接し、
第1アップシフト歯底が、前記周方向において、前記アップシフト開始歯と、前記アップシフト凹部歯との間に定義され、
第1アップシフト面取り部が、少なくとも前記第1アップシフト歯底に設けられる、リアスプロケット。
【請求項2】
前記第1アップシフト面取り部は、6mm以上の第1最大周方向長さを有する、請求項1に記載のリアスプロケット。
【請求項3】
前記第1最大周方向長さは、9mm以下である、請求項2に記載のリアスプロケット。
【請求項4】
前記第1アップシフト面取り部は、0.2mm以上の第1最大軸方向長さを有する、請求項1に記載のリアスプロケット。
【請求項5】
前記第1最大軸方向長さは、0.4mm以下である、請求項4に記載のリアスプロケット。
【請求項6】
前記複数のスプロケット歯は、前記周方向において、前記アップシフト凹部歯と隣接歯との間に他の歯が無いように、前記駆動回転方向に関する前記アップシフト凹部歯の上流側に、前記アップシフト凹部歯に隣接する前記隣接歯をさらに含み、
第2アップシフト歯底が、前記周方向において、前記アップシフト凹部歯と、前記隣接歯との間に定義され、
第2アップシフト面取り部が、少なくとも前記第2アップシフト歯底に設けられる、請求項1に記載のリアスプロケット。
【請求項7】
前記第2アップシフト面取り部は、6mm以上の第2最大周方向長さを有する、請求項6に記載のリアスプロケット。
【請求項8】
前記第2最大周方向長さは、9mm以下である、請求項7に記載のリアスプロケット。
【請求項9】
前記第2アップシフト面取り部は、0.2mm以上の第2最大軸方向長さを有する、請求項6に記載のリアスプロケット。
【請求項10】
前記第2最大軸方向長さは、0.4mm以下である、請求項9に記載のリアスプロケット。
【請求項11】
前記スプロケット本体は、前記アップシフト開始歯と対応する部分において、0.7mm以上の第1最小軸方向厚さを有する、請求項1に記載のリアスプロケット。
【請求項12】
前記第1最小軸方向厚さは、1.3mm以下である、請求項11に記載のリアスプロケット。
【請求項13】
前記スプロケット本体は、前記アップシフト凹部歯と対応する部分において、0.8mm以上の第2最小軸方向厚さを有する、請求項6に記載のリアスプロケット。
【請求項14】
前記第2最小軸方向厚さは、1.6mm以下である、請求項13に記載のリアスプロケット。
【請求項15】
前記第1アップシフト面取り部は、前記第1アップシフト歯底から前記軸方向外側面に向かって延びる、請求項1に記載のリアスプロケット。
【請求項16】
前記第2アップシフト面取り部は、前記第2アップシフト歯底から前記軸方向外側面に向かって延びる、請求項6に記載のリアスプロケット。
【請求項17】
前記第1アップシフト面取り部は、前記回転中心軸心と、前記第1アップシフト歯底の第1周方向歯底中心点とを通る第1基準径方向線に対して非対称である、請求項1に記載のリアスプロケット。
【請求項18】
前記第2アップシフト面取り部は、前記回転中心軸心と、前記第2アップシフト歯底の第2周方向歯底中心点とを通る第2基準径方向線に対して非対称である、請求項6に記載のリアスプロケット。
【請求項19】
人力駆動車用のリアスプロケットであって、軸方向、径方向、および、周方向を定義する回転中心軸心と、軸方向外側面と、前記軸方向において、前記軸方向外側面の反対側に設けられ、前記リアスプロケットが前記人力駆動車に搭載される搭載状態において、前記人力駆動車の中心軸心面に対向するように構成される軸方向内側面と、を有し、
スプロケット本体と、
前記径方向において、前記スプロケット本体の外周から径方向外側に延びる複数のスプロケット歯と、を備え、
前記複数のスプロケット歯は、隣接小スプロケットから、前記リアスプロケットに向かって、駆動チェーンが移動するダウンシフトオペレーションを促進するように構成される複数のダウンシフト促進歯を含み、
前記隣接小スプロケットは、前記リアスプロケットと前記隣接小スプロケットとの間に他のスプロケットが無いように、前記リアスプロケットと隣接し、
前記複数のダウンシフト促進歯は、前記ダウンシフトオペレーションにおいて、前記駆動チェーンに最初に係合するように構成されるダウンシフト開始歯と、前記周方向において、前記ダウンシフト開始歯とダウンシフト凹部歯との間に他の歯が無いように、前記リアスプロケットの駆動回転方向に対して前記ダウンシフト開始歯の下流側において、前記ダウンシフト開始歯に隣接する前記ダウンシフト凹部歯と、を含み、
前記ダウンシフト凹部歯は、前記軸方向において、前記軸方向外側面から前記軸方向内側面に凹むように、前記ダウンシフト凹部歯の前記軸方向外側面に設けられるダウンシフト凹部を有し、
ダウンシフト歯底が、前記周方向において、前記ダウンシフト開始歯と前記ダウンシフト凹部歯との間に定義され、
ダウンシフト面取り部が、少なくとも前記ダウンシフト歯底に設けられる、リアスプロケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人力駆動車用のリアスプロケットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるリアスプロケットは、ディレイラによる変速を促進するための変速促進領域を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6340338号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的の1つは、変速を促進する領域への泥等の汚れの付着を抑制できる人力駆動車用のリアスプロケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1側面に従うリアスプロケットは、人力駆動車用のリアスプロケットであって、軸方向、径方向、および、周方向を定義する回転中心軸心と、軸方向外側面と、前記軸方向において、前記軸方向外側面の反対側に設けられ、前記リアスプロケットが前記人力駆動車に搭載される搭載状態において、前記人力駆動車の中心軸心面に対向するように構成される軸方向内側面と、を有し、スプロケット本体と、前記径方向において、前記スプロケット本体の外周から径方向外側に延びる複数のスプロケット歯と、を備え、前記複数のスプロケット歯は、前記リアスプロケットから、前記リアスプロケットと隣接小スプロケットとの間に他のスプロケットが無いように、前記リアスプロケットと隣接する前記隣接小スプロケットに向かって、駆動チェーンが移動するアップシフトオペレーションを促進するように構成される複数のアップシフト促進歯を含み、前記複数のアップシフト促進歯は、前記アップシフトオペレーションにおいて、前記駆動チェーンから最初に外れるように構成されるアップシフト開始歯と、アップシフト凹部歯と、を含み、前記アップシフト開始歯は、前記軸方向において、前記軸方向外側面から前記軸方向内側面に向かって凹むように前記アップシフト開始歯の前記軸方向外側面に設けられる第1アップシフト凹部を有し、前記アップシフト凹部歯は、前記軸方向において、前記軸方向外側面から前記軸方向内側面に向かって凹むように前記アップシフト凹部歯の前記軸方向外側面に設けられる第2アップシフト凹部を有し、前記周方向において、前記アップシフト開始歯と前記アップシフト凹部歯との間に他の歯が無いように、前記リアスプロケットの駆動回転方向に関する前記アップシフト開始歯の上流側において、前記アップシフト開始歯に隣接し、第1アップシフト歯底が、前記周方向において、前記アップシフト開始歯と、前記アップシフト凹部歯との間に定義され、第1アップシフト面取り部が、少なくとも前記第1アップシフト歯底に設けられる。
第1側面のリアスプロケットによれば、第1アップシフト面取り部によって第1アップシフト歯底から泥等を落とせるため、アップシフトオペレーションを促進する変速促進領域への泥等の汚れの付着を抑制できる。
【0006】
本開示の第1側面に従う第2側面のリアスプロケットにおいて、前記第1アップシフト面取り部は、6mm以上の第1最大周方向長さを有する。
第2側面のリアスプロケットによれば、第1アップシフト面取り部は、6mm以上の第1最大周方向長さを有するため、リアスプロケットにおけるアップシフトオペレーションを促進する領域への泥等の付着を抑制できる。
【0007】
本開示の第2側面に従う第3側面のリアスプロケットにおいて、前記第1最大周方向長さは、9mm以下である。
第3側面のリアスプロケットによれば、第1最大周方向長さは、6mm以上、かつ、9mm以下のため、リアスプロケットにおけるアップシフトオペレーションを促進する領域の強度を確保できる。
【0008】
本開示の第1から第3側面のいずれか1つに従う第4側面のリアスプロケットにおいて、前記第1アップシフト面取り部は0.2mm以上の第1最大軸方向長さを有する。
第4側面のリアスプロケットによれば、第1アップシフト面取り部は0.2mm以上の第1最大軸方向長さを有するため、リアスプロケットにおけるアップシフトオペレーションを促進する領域への泥等の付着を抑制できる。
【0009】
本開示の第4側面に従う第5側面のリアスプロケットにおいて、前記第1最大軸方向長さは、0.4mm以下である。
第5側面のリアスプロケットによれば、第1最大軸方向長さは、0.2mm以上、かつ、0.4mm以下であるため、リアスプロケットにおけるアップシフトオペレーションを促進する領域の強度を確保できる。
【0010】
本開示の第1から第5側面のいずれか1つに従う第6側面のリアスプロケットにおいて、前記複数のスプロケット歯は、前記周方向において、前記アップシフト凹部歯と隣接歯との間に他の歯が無いように、前記駆動回転方向に関する前記アップシフト凹部歯の上流側に、前記アップシフト凹部歯に隣接する前記隣接歯をさらに含み、第2アップシフト歯底が、前記周方向において、前記アップシフト凹部歯と、前記隣接歯との間に定義され、第2アップシフト面取り部が、少なくとも前記第2アップシフト歯底に設けられる。
第6側面のリアスプロケットによれば、第2アップシフト面取り部によって第2アップシフト歯底から泥等を落とせるため、リアスプロケットにおけるアップシフトオペレーションを促進する領域への泥等の汚れの付着を抑制できる。
【0011】
本開示の第6側面に従う第7側面のリアスプロケットにおいて、前記第2アップシフト面取り部は、6mm以上の第2最大周方向長さを有する。
第7側面のリアスプロケットによれば、第2アップシフト面取り部は、6mm以上の第2最大周方向長さを有するため、リアスプロケットにおけるアップシフトオペレーションを促進する領域への泥等の汚れの付着を抑制できる。
【0012】
本開示の第7側面に従う第8側面のリアスプロケットにおいて、前記第2最大周方向長さは、9mm以下である。
第8側面のリアスプロケットによれば、第2最大周方向長さは、6mm以上、かつ、9mm以下であるため、リアスプロケットにおけるアップシフトオペレーションを促進する領域の強度を確保できる。
【0013】
本開示の第6から第8側面のいずれか1つに従う第9側面のリアスプロケットにおいて、前記第2アップシフト面取り部は、0.2mm以上の第2最大軸方向長さを有する。
第9側面のリアスプロケットによれば、第2アップシフト面取り部は、0.2mm以上の第2最大軸方向長さを有するため、リアスプロケットにおけるアップシフトオペレーションを促進する領域への泥等の汚れの付着を抑制できる。
【0014】
本開示の第9側面に従う第10側面のリアスプロケットにおいて、前記第2最大軸方向長さは、0.4mm以下である。
第10側面のリアスプロケットによれば、第2最大軸方向長さは、0.2mm以上、かつ、0.4mm以下であるため、リアスプロケットにおけるアップシフトオペレーションを促進する領域の強度を確保できる。
【0015】
本開示の第1から第10側面のいずれか1つに従う第11側面のリアスプロケットにおいて、スプロケット本体は、前記アップシフト開始歯と対応する部分において、0.7mm以上の第1最小軸方向厚さを有する。
第11側面のリアスプロケットによれば、スプロケット本体における前記アップシフト開始歯と対応する部分は、0.7mm以上の第1最小軸方向厚さを有するため、リアスプロケットにおけるアップシフトオペレーションを促進する領域の強度を確保できる。
【0016】
本開示の第11側面に従う第12側面のリアスプロケットにおいて、前記第1最小軸方向厚さは、1.3mm以下である。
第12側面のリアスプロケットによれば、第1最小軸方向厚さは、0.7mm以上、かつ、1.3mm以下のため、リアスプロケットを軽量化できる。
【0017】
本開示の第6から第12側面のいずれか1つに従う第13側面のリアスプロケットにおいて、前記スプロケット本体は、前記アップシフト凹部歯と対応する部分において、0.8mm以上の第2最小軸方向厚さを有する。
第13側面のリアスプロケットによれば、スプロケット本体におけるアップシフト凹部歯と対応する部分は、0.8mm以上の第2最小軸方向厚さを有するため、リアスプロケットにおけるアップシフトオペレーションを促進する領域の強度を確保できる。
【0018】
本開示の第13側面に従う第14側面のリアスプロケットにおいて、前記第2最小軸方向厚さは、1.6mm以下である。
第14側面のリアスプロケットによれば、第2最小軸方向厚さは、0.8mm以上、かつ、1.6mm以下のため、リアスプロケットを軽量化できる。
【0019】
本開示の第1から第14側面のいずれか1つに従う第15側面のリアスプロケットにおいて、前記第1アップシフト面取り部は、前記第1アップシフト歯底から前記軸方向外側面に向かって延びる。
第15側面のリアスプロケットによれば、第1アップシフト面取り部は、第1アップシフト歯底から軸方向外側面に向かって延びるため、リアスプロケットにおけるアップシフトオペレーションを促進する領域への泥等の汚れの付着を抑制でき、かつ、アップシフトオペレーションにおけるショックを低減できる。
【0020】
本開示の第6から第10、第13、および、第14側面のいずれか1つに従う第16側面のリアスプロケットにおいて、前記第2アップシフト面取り部は、前記第2アップシフト歯底から前記軸方向外側面に向かって延びる。
第16側面のリアスプロケットによれば、第2アップシフト面取り部は、第2アップシフト歯底から軸方向外側面に向かって延びるため、リアスプロケットにおけるアップシフトオペレーションを促進する領域への泥等の汚れの付着を抑制でき、かつ、アップシフトオペレーションにおけるショックを低減できる。
【0021】
本開示の第1から第16側面のいずれか1つに従う第17側面のリアスプロケットにおいて、前記第1アップシフト面取り部は、前記回転中心軸心と、前記第1アップシフト歯底の第1周方向歯底中心点とを通る第1基準径方向線に対して非対称である。
第17側面のリアスプロケットによれば、第1アップシフト面取り部は、第1基準径方向線に対して非対称であるため、リアスプロケットにおけるアップシフトオペレーションを促進する領域への泥等の汚れの付着を抑制でき、かつ、アップシフトオペレーションを促進する領域の強度を確保できる。
【0022】
本開示の第6から第10、第13、第14、および、第16側面のいずれか1つに従う第18側面のリアスプロケットにおいて、前記第2アップシフト面取り部は、前記回転中心軸心と、前記第2アップシフト歯底の第2周方向歯底中心点とを通る第2基準径方向線に対して非対称である。
第18側面のリアスプロケットによれば、第2アップシフト面取り部は、第2基準径方向線に対して非対称であるため、リアスプロケットにおけるアップシフトオペレーションを促進する領域への泥等の汚れの付着を抑制でき、かつ、アップシフトオペレーションを促進する領域の強度を確保できる。
【0023】
本開示の第19側面に従うリアスプロケットは、人力駆動車用のリアスプロケットであって、軸方向、径方向、および、周方向を定義する回転中心軸心と、軸方向外側面と、前記軸方向において、前記軸方向外側面の反対側に設けられ、前記リアスプロケットが前記人力駆動車に搭載される搭載状態において、前記人力駆動車の中心軸心面に対向するように構成される軸方向内側面と、を有し、スプロケット本体と、前記径方向において、前記スプロケット本体の外周から径方向外側に延びる複数のスプロケット歯と、を備え、前記複数のスプロケット歯は、隣接小スプロケットから、前記リアスプロケットに向かって、駆動チェーンが移動するダウンシフトオペレーションを促進するように構成される複数のダウンシフト促進歯を含み、前記隣接小スプロケットは、前記リアスプロケットと前記隣接小スプロケットとの間に他のスプロケットが無いように、前記リアスプロケットと隣接し、前記複数のダウンシフト促進歯は、前記ダウンシフトオペレーションにおいて、前記駆動チェーンに最初に係合するように構成されるダウンシフト開始歯と、前記周方向において、前記ダウンシフト開始歯とダウンシフト凹部歯との間に他の歯が無いように、前記リアスプロケットの駆動回転方向に対して前記ダウンシフト開始歯の下流側において、前記ダウンシフト開始歯に隣接する前記ダウンシフト凹部歯と、を含み、前記ダウンシフト凹部歯は、前記軸方向において、前記軸方向外側面から前記軸方向内側面に凹むように、前記ダウンシフト凹部歯の前記軸方向外側面に設けられるダウンシフト凹部を有し、ダウンシフト歯底が、前記周方向において、前記ダウンシフト開始歯と前記ダウンシフト凹部歯との間に定義され、ダウンシフト面取り部が、少なくとも前記ダウンシフト歯底に設けられる。
第19側面のリアスプロケットによれば、ダウンシフト面取り部によってダウンシフト歯底から泥等を落とせるため、リアスプロケットにおけるダウンシフトオペレーションを促進する領域への泥等の汚れの付着を抑制できる。
【発明の効果】
【0024】
本開示の人力駆動車用のリアスプロケットは、変速を促進する領域への泥等の汚れの付着を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態の人力駆動車用のリアスプロケットを含むリアスプロケットアセンブリを有する人力駆動車を示す模式図である。
図2図1のリアスプロケットアセンブリの側面図である。
図3図2の人力駆動車用のリアスプロケットの側面図である。
図4図3の人力駆動車用のリアスプロケットのアップシフト促進領域を示す側面図である。
図5図3の複数のアップシフト促進歯および駆動チェーンを示す平面図である。
図6図3の複数のダウンシフト促進歯および駆動チェーンを示す平面図である。
図7図4の人力駆動車用のリアスプロケットの複数のアップシフト促進歯、第1シフト面取り部、および、第2シフト面取り部を示す斜視図である。
図8図3の人力駆動車用のリアスプロケットの第1シフト面取り部、および、第2シフト面取り部の各種寸法を示す側面図である。
図9図8の人力駆動車用のリアスプロケットのスプロケット本体におけるアップシフト開始歯と対応する部分、スプロケット本体におけるアップシフト凹部歯と対応する部分、第1シフト面取り部、および、第2シフト面取り部の、軸方向における寸法を示す平面図である。
図10】実施形態のアップシフトオペレーションにおいて、駆動チェーンのアウタリンクが、アップシフト変位歯と対応する位置にあり、駆動チェーンがアップシフト開始歯から外れる状態を示す模式図である。
図11】変更例の人力駆動車用のリアスプロケットのダウンシフト面取り部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<実施形態>
図1から図10を参照して、実施形態に係る人力駆動車用のリアスプロケット30が説明される。図1に示される人力駆動車10は、例えば、少なくとも1つの車輪を有し、少なくとも人力駆動力によって駆動できる乗り物である。人力駆動車10は、例えば、マウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、ハンドバイク、および、リカンベントなど種々の種類の自転車を含む。人力駆動車10が有する車輪の数は、限定されない。人力駆動車10は、例えば、1輪車および2輪以上の車輪を有する乗り物も含む。人力駆動車10は、人力駆動力のみによって駆動できる乗り物に限定されない。人力駆動車10は、例えば、人力駆動力だけではなく、電気モータの駆動力を推進に利用するE-bikeを含む。E-bikeは、例えば、電気モータによって推進が支持される電動アシスト自転車を含む。以下、実施形態において、人力駆動車10は、自転車として説明される。
【0027】
本明細書において、以下の方向を示す用語「前(フロント)」、「後ろ(リア)」、「前方」、「後方」、「左」、「右」、「横」、「上方」、および、「下方」、並びに任意の他の類似の方向を示す用語は、人力駆動車10の基準位置(例えば、サドル、または、シート上)においてハンドルバーを向いたライダを基準に決定されるそれらの方向を指す。
【0028】
図1に示されるように、例えば、人力駆動車10は、クランク12と、フロントスプロケット14と、ハブアセンブリ16と、駆動チェーン18と、リアスプロケットアセンブリ20と、を含む。フロントスプロケット14は、例えば、クランク12に取り付けられる。
【0029】
クランク12は、例えば、クランク軸22と、第1クランクアーム24Aと、第2クランクアーム24Bとを含む。第1クランクアーム24Aおよび第2クランクアーム24Bは、例えば、クランク軸22の両端部にそれぞれ取り付けられる。第1クランクアーム24Aには、例えば、第1ペダル26Aが回転可能に連結される。第2クランクアーム24Bには、例えば、第2ペダル26Bが回転可能に連結される。
【0030】
ハブアセンブリ16は、例えば、ハブ軸28を含む。ハブ軸28は、例えば、フレーム10Aに対して回転不能に、フレーム10Aに取り付けられる。リアスプロケットアセンブリ20は、例えば、人力駆動車10のフレーム10Aに対して回転可能に、ハブアセンブリ16に取り付けられる。ハブアセンブリ16は、例えば、スプロケット支持体16Aを含む。リアスプロケットアセンブリ20は、例えば、スプロケット支持体16Aを介して、ハブ軸28に連結される。
【0031】
リアスプロケットアセンブリ20は、例えば、複数のスプロケットを含む。複数のスプロケットの寸法は、例えば、それぞれ異なる。複数のスプロケットの数は、例えば、任意に選択できる。図2に示されるように、リアスプロケットアセンブリ20は、例えば、9枚のスプロケットを含む。リアスプロケットアセンブリ20は、2枚以上、かつ、9枚未満のスプロケットを含んでもよく、10枚以上のスプロケットを含んでもよい。
【0032】
人力駆動車10は、例えば、リアディレイラをさらに含む。リアディレイラは、変速動作を実行するように構成される。変速動作は、例えば、複数のスプロケットの1つに係合する駆動チェーン18を、複数のスプロケットの1つから、複数のスプロケットの他の1つに移動させる動作である。
【0033】
駆動チェーン18は、例えば、フロントスプロケット14と、リアスプロケットアセンブリ20に含まれる複数のスプロケットのいずれか1つと、に巻き掛けられる。フロントスプロケット14は単一、または、複数のスプロケットを含んでもよい。駆動チェーン18は、例えば、第1ペダル26Aおよび第2ペダル26Bに加えられるトルクを、フロントスプロケット14からリアスプロケットアセンブリ20に伝達する。リアスプロケットアセンブリ20は、例えば、ハブアセンブリ16を介して、トルクを人力駆動車10の後輪に伝達する。
【0034】
図1および図5に示されるように、駆動チェーン18は、例えば、複数のローラ18A、複数のアウタリンク18B、および、複数のインナリンク18Cを含む。アウタリンク18Bは、例えば、軸方向ADにおいて、一対のアウタプレートが並ぶように構成される。インナリンク18Cは、例えば、軸方向ADにおいて、一対のインナプレートが並ぶように構成される。フロントスプロケット14の歯は、アウタリンク18Bの一対のアウタプレートの間の空間、および、インナリンク18Cの一対のインナプレートの間の空間に配置可能に構成される。リアスプロケットアセンブリ20に含まれる複数のスプロケットのそれぞれの歯は、アウタリンク18Bの一対のアウタプレートの間の空間、および、インナリンク18Cの一対のインナプレートの間の空間に配置可能に構成される。
【0035】
図1および図2に示されるように、本実施形態では、リアスプロケットアセンブリ20に含まれる複数のスプロケットのうち、2番目に直径が大きいスプロケットを、リアスプロケット30として説明する。本実施形態では、リアスプロケットアセンブリ20に含まれる複数のスプロケットのうち、3番目に直径が大きいスプロケットを、隣接小スプロケット20Aとして説明する。隣接小スプロケット20Aは、例えば、リアスプロケット30に隣接する、リアスプロケット30よりも直径が小さいスプロケットである。隣接小スプロケット20Aは、リアスプロケット30と隣接小スプロケット20Aとの間に他のスプロケットが無いように、リアスプロケット30と隣接する。
【0036】
人力駆動車用のリアスプロケット30は、回転中心軸心Cと、軸方向外側面30Xと、軸方向内側面30Yと、を有する。リアスプロケット30の回転中心軸心Cは、例えば、リアスプロケットアセンブリ20の回転中心軸心に一致する。回転中心軸心Cは、軸方向AD、径方向RD、および、周方向CDを定義する。軸方向内側面30Yは、軸方向ADにおいて、軸方向外側面30Xの反対側に設けられる。軸方向内側面30Yは、リアスプロケット30が人力駆動車10に搭載される搭載状態において、人力駆動車10の中心軸心面CSに対向するように構成される。中心軸心面CSは、例えば、人力駆動車10の左右方向の中心を通る。搭載状態は、例えば、リアスプロケットアセンブリ20が人力駆動車10に取り付けられた状態である。搭載状態において、リアスプロケットアセンブリ20は、ハブ軸28に取り付けられる。
【0037】
図2および図3に示されるように、スプロケット本体32と、複数のスプロケット歯34と、を備える。スプロケット本体32は、例えば、外側環状部36、内側環状部38、および、複数の連結アーム40を含む。外側環状部36は、例えば、複数のスプロケット歯34が設けられる外周部36Aと、径方向RDにおいて外周部36Aとは反対側の内周部36Bと、を有する。内側環状部38は、ハブアセンブリ16のスプロケット支持体16Aと係合する複数のスプライン歯38Aを有する。複数の連結アーム40は、径方向RDにおいて、外側環状部36と内側環状部38との間に位置する。1つのスプロケット歯34は、例えば、周方向CDにおいて、隣り合う2つの歯底の間の部分として定義される。
【0038】
複数のスプロケット歯34は、径方向RDにおいて、スプロケット本体32の外周から径方向外側に延びる。複数のスプロケット歯34は、例えば、径方向RDにおいて、外側環状部36の外周部36Aから径方向外側に延びる。各スプロケット歯34は、例えば、周方向CDにおいて、駆動面34Aと、駆動面34Aの反対側に設けられる非駆動面34Bと、を有する。図1図3、および、図5に示されるように、各スプロケット歯34は、例えば、駆動面34Aにおいて駆動チェーン18のローラ18Aに係合する。第1ペダル26Aおよび第2ペダル26Bに加えられる人力駆動力は、駆動面34Aにローラ18Aが係合することによって、駆動チェーン18を介してリアスプロケットアセンブリ20に伝達される。
【0039】
図1図3、および、図4に示されるように、複数のスプロケット歯34は、アップシフトオペレーションを促進するように構成される複数のアップシフト促進歯42を含む。アップシフトオペレーションでは、リアスプロケット30から、隣接小スプロケット20Aに向かって、駆動チェーン18が移動する。アップシフトオペレーションにおいて、駆動チェーン18は、例えば、リアディレイラによって、リアスプロケット30から隣接小スプロケット20Aに移動させられる。複数のアップシフト促進歯42は、アップシフト開始歯44と、アップシフト凹部歯46と、を含む。複数のアップシフト促進歯42は、例えば、アップシフト変位歯48をさらに含んでもよい。
【0040】
リアスプロケット30は、例えば、少なくとも1つのアップシフト促進領域を含む。少なくとも1つのアップシフト促進領域は、例えば、リアスプロケット30におけるアップシフトオペレーションを促進する領域である。少なくとも1つのアップシフト促進領域は、例えば、複数のアップシフト促進歯42を含む。少なくとも1つのアップシフト促進領域は、例えば、アップシフト開始歯44と、アップシフト凹部歯46と、アップシフト変位歯48とを含む。本実施形態のリアスプロケット30は、4つのアップシフト促進領域を含む。アップシフト促進領域の数は、例えば、リアスプロケット30の寸法等に応じて決定される。
【0041】
図1から図5に示されるように、アップシフト変位歯48は、例えば、アップシフトオペレーションにおいて、駆動チェーン18をリアスプロケット30から隣接小スプロケット20Aに向かって変位させやすくするように構成される。アップシフト変位歯48の軸方向内側面48Yには、例えば、第1軸方向凹部50が設けられる。第1軸方向凹部50は、例えば、軸方向ADにおいて、軸方向内側面30Yから軸方向外側面30Xに向けて凹むように、アップシフト変位歯48の軸方向内側面48Yに設けられる。第1軸方向凹部50は、例えば、アップシフト変位歯48の軸方向内側面48Yがスプロケット本体32の外側環状部36の外周部36Aからアップシフト変位歯48の変位歯先48Cに向かって傾斜するように構成される。第1軸方向凹部50は、段押し加工によってアップシフト変位歯48の軸方向内側面48Yに設けられてもよい。
【0042】
第1軸方向凹部50は、例えば、少なくともアップシフト変位歯48の変位歯先48Cに配置される。第1軸方向凹部50は、例えば、径方向RDにおいて、アップシフト変位歯48の変位歯先48Cから、径方向内側に延びる。第1軸方向凹部50は、例えば、径方向RDにおいて、アップシフト変位歯48の変位歯先48Cからスプロケット本体32の外側環状部36の外周部36Aまで、径方向内側に延びる。第1軸方向凹部50は、例えば、周方向CDにおいて、アップシフト変位歯48の駆動面48Aからアップシフト変位歯48の非駆動面48Bに延びる。
【0043】
アップシフト開始歯44は、例えば、周方向CDにおいて、アップシフト開始歯44とアップシフト変位歯48との間に他の歯が無いように、駆動回転方向Dに関するアップシフト変位歯48の上流側において、アップシフト変位歯48に隣接する。アップシフト開始歯44は、アップシフトオペレーションにおいて、駆動チェーン18から最初に外れるように構成される。アップシフト開始歯44は、第1アップシフト凹部52を有する。
【0044】
第1アップシフト凹部52は、軸方向ADにおいて、軸方向外側面30Xから軸方向内側面30Yに向かって凹むようにアップシフト開始歯44の軸方向外側面44Xに設けられる。第1アップシフト凹部52は、例えば、少なくともアップシフト開始歯44の駆動面44Aに達する。第1アップシフト凹部52は、例えば、周方向CDにおいて、アップシフト開始歯44の駆動面44Aからアップシフト開始歯44の非駆動面44Bまで延びる。第1アップシフト凹部52は、軸方向ADにおいて、アップシフト開始歯44の軸方向外側面44Xから、リアスプロケット30の軸方向外側面30Xまで延びる。第1アップシフト凹部52は、例えば、スプロケット本体32まで延びる。
【0045】
図1から図5に示されるように、アップシフト凹部歯46は、周方向CDにおいて、アップシフト開始歯44とアップシフト凹部歯46との間に他の歯が無いように、リアスプロケット30の駆動回転方向Dに関するアップシフト開始歯44の上流側において、アップシフト開始歯44に隣接する。アップシフト凹部歯46は、例えば、アップシフトオペレーションにおいて、アップシフト開始歯44から外れた駆動チェーン18と係合しないように構成される。アップシフト凹部歯46は、第2アップシフト凹部54を有する。
【0046】
第2アップシフト凹部54は、軸方向ADにおいて、軸方向外側面30Xから軸方向内側面30Yに向かって凹むようにアップシフト凹部歯46の軸方向外側面46Xに設けられる。第2アップシフト凹部54は、少なくともアップシフト凹部歯46の駆動面46Aに達する。第2アップシフト凹部54は、例えば、アップシフト凹部歯46の駆動面46Aからアップシフト凹部歯46の非駆動面46Bまで延びる。第2アップシフト凹部54は、凹部底面が、周方向CDにおいて、アップシフト凹部歯46の駆動面46Aからアップシフト凹部歯46の非駆動面46Bに向かって傾斜するように構成される。凹部底面は、例えば、アップシフト凹部歯46の軸方向外側面30Xに含まれる。第2アップシフト凹部54は、例えば、軸方向ADにおいて、アップシフト凹部歯46の軸方向外側面46Xからリアスプロケット30の軸方向外側面30Xまで延びる。第2アップシフト凹部54は、例えば、スプロケット本体32まで延びる。第2アップシフト凹部54は、周方向CDにおいて、第2アップシフト凹部54と第1アップシフト凹部52との間に他の凹部が無いように、駆動回転方向Dに関する第1アップシフト凹部52の上流側において、第1アップシフト凹部52に隣接する。
【0047】
図7、および、図8に示されるように、第1アップシフト歯底56が、周方向CDにおいて、アップシフト開始歯44と、アップシフト凹部歯46との間に定義される。第1アップシフト歯底56は、例えば、アップシフト開始歯44の駆動面44Aと、アップシフト凹部歯46の非駆動面46Bとの間に定義される。第1アップシフト歯底56は、例えば、周方向CDにおいて、第1周方向歯底中心点P1を含む。第1周方向歯底中心点P1は、例えば、アップシフト開始歯44と、アップシフト凹部歯46との間の周方向CDにおける中心点である。第1周方向歯底中心点P1は、例えば、リアスプロケット30の軸方向外側面30Xに設けられる。
【0048】
図7、および、図8に示されるように、第1アップシフト面取り部58が、少なくとも第1アップシフト歯底56に設けられる。第1アップシフト面取り部58は、例えば、リアスプロケット30の軸方向外側面30Xに設けられる。第1アップシフト面取り部58は、例えば、少なくとも第1周方向歯底中心点P1を通るようにリアスプロケット30の軸方向外側面30Xに設けられる。第1アップシフト面取り部58は、例えば、第1アップシフト歯底56から軸方向外側面30Xに向かって延びる。第1アップシフト面取り部58は、軸方向内側面30Yに向かって延びてもよく、軸方向外側面30Xおよび軸方向内側面30Yの両方に向かって延びてもよい。
【0049】
第1アップシフト面取り部58は、例えば、C面取りによって形成される。第1アップシフト面取り部58は、R面取りによって形成されてもよい。第1アップシフト面取り部58は、例えば、周方向CDにおいて、アップシフト開始歯44の駆動面44A側の第1端部58Aと、第1端部58Aとは反対側の第2端部58Bとを含む。第2端部58Bは、例えば、周方向CDにおいて、第1アップシフト面取り部58のアップシフト凹部歯46の非駆動面46B側の端部である。
【0050】
第1アップシフト面取り部58は、例えば、回転中心軸心Cと、第1アップシフト歯底56の第1周方向歯底中心点P1とを通る第1基準径方向線L1に対して非対称である。第1基準径方向線L1に対して、第1アップシフト面取り部58の第1端部58A側の第1端部側部分58Cの周方向CDにおける長さは、例えば、第1基準径方向線L1に対して、第1アップシフト面取り部58の第2端部58B側の第2端部側部分58Dの周方向CDにおける長さよりも短い。本実施形態では、第1端部側部分58Cの周方向CDにおける長さが、第2端部側部分58Dの周方向CDにおける長さよりも短いことによって、第1アップシフト面取り部58が、第1基準径方向線L1に対して非対称である。
【0051】
図8に示されるように、第1アップシフト面取り部58は、例えば、6mm以上の第1最大周方向長さCL1を有する。第1最大周方向長さCL1は、例えば、周方向CDにおいて、第1アップシフト面取り部58の第1端部58Aから第1アップシフト面取り部58の第2端部58Bまでの長さである。第1最大周方向長さCL1は、例えば、9mm以下である。第1最大周方向長さCL1は、例えば、6mm以上、かつ、9mm以下である。第1最大周方向長さCL1は、例えば、7.7mmである。
【0052】
図9に示されるように、スプロケット本体32は、アップシフト開始歯44と対応する部分において、例えば、0.7mm以上の第1最小軸方向厚さAT1を有する。スプロケット本体32におけるアップシフト開始歯44と対応する部分は、例えば、第1アップシフト凹部52が設けられる部分である。第1最小軸方向厚さAT1は、例えば、1.3mm以下である。第1最小軸方向厚さAT1は、例えば、0.7mm以上、かつ、1.3mm以下である。第1最小軸方向厚さAT1は、例えば、1mmである。
【0053】
スプロケット本体32は、アップシフト凹部歯46と対応する部分において、例えば、0.8mm以上の第2最小軸方向厚さAT2を有する。スプロケット本体32におけるアップシフト凹部歯46と対応する部分は、例えば、第2アップシフト凹部54が設けられる部分である。第2最小軸方向厚さAT2は、例えば、1.6mm以下である。第2最小軸方向厚さAT2は、例えば、0.8mm以上、かつ、1.6mm以下である。第2最小軸方向厚さAT2は、例えば、1.2mmである。
【0054】
第1アップシフト面取り部58は、例えば、0.2mm以上の第1最大軸方向長さAL1を有する。第1最大軸方向長さAL1は、例えば、第1アップシフト面取り部58を径方向RDから見た場合の、第1アップシフト面取り部58の軸方向ADにおける最大の長さである。第1最大軸方向長さAL1は、例えば、0.4mm以下である。第1最大軸方向長さAL1は、例えば、0.2mm以上、かつ、0.4mm以下である。第1最大軸方向長さAL1は、例えば、0.35mmである。
【0055】
第1アップシフト面取り部58の第1最大軸方向長さAL1は、例えば、スプロケット本体32におけるアップシフト開始歯44と対応する部分の第1最小軸方向厚さAT1以下である。第1最大軸方向長さAL1は、例えば、第1最小軸方向厚さAT1よりも小さい。第1最大軸方向長さAL1は、例えば、第1最小軸方向厚さAT1の4分の1以上、かつ、3分の2以下である。第1最大軸方向長さAL1は、例えば、第1最小軸方向厚さAT1の3分の1以上、かつ、半分以下である。
【0056】
第1アップシフト面取り部58の第1最大軸方向長さAL1は、例えば、スプロケット本体32におけるアップシフト凹部歯46と対応する部分の第2最小軸方向厚さAT2以下である。第1最大軸方向長さAL1は、例えば、第2最小軸方向厚さAT2よりも小さい。第1最大軸方向長さAL1は、例えば、第2最小軸方向厚さAT2の6分の1以上、かつ、3分の2以下である。第1最大軸方向長さAL1は、例えば、第2最小軸方向厚さAT2の5分の1以上、かつ、半分以下である。第1最大軸方向長さAL1は、例えば、第2最小軸方向厚さAT2の4分の1以上、かつ、3分の1以下である。
【0057】
第1アップシフト面取り部58の第1最大軸方向長さAL1は、例えば、スプロケット本体32における第1アップシフト面取り部58と対応する部分の軸方向ADにおける厚さの半分以下である。スプロケット本体32における第1アップシフト面取り部58と対応する部分は、例えば、第1アップシフト面取り部58の回転中心軸心C側の端部を含む。
【0058】
図3および図4に示されるように、複数のスプロケット歯34は、例えば、隣接歯60をさらに含む。隣接歯60は、例えば、周方向CDにおいて、アップシフト凹部歯46と隣接歯60との間に他の歯が無いように、駆動回転方向Dに関するアップシフト凹部歯46の上流側に、アップシフト凹部歯46に隣接する。隣接歯60は、例えば、駆動面60Aと、周方向CDにおいて、駆動面60Aと反対側の非駆動面60Bとを含む。
【0059】
図4図7、および、図8に示されるように、第2アップシフト歯底62が、周方向CDにおいて、アップシフト凹部歯46と、隣接歯60との間に定義される。第2アップシフト歯底62は、例えば、アップシフト凹部歯46の駆動面46Aと、隣接歯60の非駆動面60Bとの間に定義される。第2アップシフト歯底62は、例えば、周方向CDにおいて、第2周方向歯底中心点P2を含む。第2周方向歯底中心点P2は、例えば、アップシフト凹部歯46と、隣接歯60との間の周方向CDにおける中心点である。第2周方向歯底中心点P2は、例えば、リアスプロケット30の軸方向外側面30Xに設けられる。
【0060】
図7および図8に示されるように、例えば、第2アップシフト面取り部64が、少なくとも第2アップシフト歯底62に設けられる。第2アップシフト面取り部64は、例えば、リアスプロケット30の軸方向外側面30Xに設けられる。第2アップシフト面取り部64は、例えば、少なくとも第2周方向歯底中心点P2を通るようにリアスプロケット30の軸方向外側面30Xに設けられる。第2アップシフト面取り部64は、例えば、第2アップシフト歯底62から軸方向外側面30Xに向かって延びる。第2アップシフト面取り部64は、軸方向内側面30Yに向かって延びてもよく、軸方向外側面30Xおよび軸方向内側面30Yの両方に向かって延びてもよい。
【0061】
第2アップシフト面取り部64は、例えば、C面取りによって形成される。第2アップシフト面取り部64は、R面取りによって形成されてもよい。第2アップシフト面取り部64は、例えば、周方向CDにおいて、アップシフト凹部歯46の駆動面46A側の第1端部64Aと、第1端部64Aとは反対側の第2端部64Bとを含む。第2端部64Bは、例えば、周方向CDにおいて、第2アップシフト面取り部64における、隣接歯60の非駆動面60B側の端部である。
【0062】
図8に示されるように、第2アップシフト面取り部64は、例えば、回転中心軸心Cと、第2アップシフト歯底62の第2周方向歯底中心点P2とを通る第2基準径方向線L2に対して非対称である。第2基準径方向線L2に対して、第2アップシフト面取り部64の第1端部64A側の第1端部側部分64Cの周方向CDにおける長さは、例えば、第2基準径方向線L2に対して、第2アップシフト面取り部64の第2端部64B側の第2端部側部分64Dの周方向CDにおける長さよりも短い。本実施形態では、第2基準径方向線L2に対して、第1端部側部分64Cの周方向CDにおける長さが、第2端部側部分64Dの周方向CDにおける長さよりも短いことによって、第2アップシフト面取り部64は、第2基準径方向線L2に対して非対称である。
【0063】
図8に示されるように、第2アップシフト面取り部64は、例えば、6mm以上の第2最大周方向長さCL2を有する。第2最大周方向長さCL2は、例えば、周方向CDにおいて、第2アップシフト面取り部64の第1端部64Aから第2アップシフト面取り部64の第2端部64Bまでの長さである。第2最大周方向長さCL2は、例えば、9mm以下である。第2最大周方向長さCL2は、例えば、6mm以上、かつ、9mm以下である。第1最大周方向長さCL1は、例えば、7.7mmである。
【0064】
図9に示されるように、第2アップシフト面取り部64は、例えば、0.2mm以上の第2最大軸方向長さAL2を有する。第2最大軸方向長さAL2は、例えば、第2アップシフト面取り部64を径方向RDから見た場合の、第2アップシフト面取り部64の軸方向ADにおける最大の長さである。第2最大軸方向長さAL2は、例えば、0.4mm以下である。第2最大軸方向長さAL2は、例えば、0.2mm以上、かつ、0.4mm以下である。第2最大軸方向長さAL2は、例えば、0.35mmである。第2最大軸方向長さAL2は、例えば、第1最大軸方向長さAL1と等しい。
【0065】
第2最大軸方向長さAL2は、例えば、スプロケット本体32の第2アップシフト面取り部64と対応する部分の軸方向ADにおける厚さの半分以下である。スプロケット本体32の第2アップシフト面取り部64と対応する部分は、例えば、第2アップシフト面取り部64の回転中心軸心C側の端部を含む。
【0066】
図8に示されるように、周方向CDにおいて、第1周方向歯底中心点P1を通る歯底円BRから、第1アップシフト面取り部58の第1端部58Aおよび第2アップシフト面取り部64の第1端部64Aを通る第1ピッチ円PR1までの、第1径方向高さH1は、例えば、0.9mm以上、かつ、1.4mm以下である。第1径方向高さH1は、例えば、1.15mmである。歯底円BRから、第1アップシフト面取り部58の第2端部58Bおよび第2アップシフト面取り部64の第2端部64Bを通る第2ピッチ円PR2までの、第2径方向高さH2は、例えば、1.8mm以上、かつ、2.2mm以下である。第2径方向高さH2は、例えば、2mmである。
【0067】
図3から図5に示されるように、複数のアップシフト促進歯42は、追加アップシフト変位歯66をさらに含んでもよい。追加アップシフト変位歯66は、例えば、周方向CDにおいて、追加アップシフト変位歯66とアップシフト変位歯48との間に他の歯が無いように、駆動回転方向Dに関するアップシフト変位歯48の下流側においてアップシフト変位歯48に隣接する。追加アップシフト変位歯66は、例えば、駆動面66Aと、周方向CDにおいて駆動面66Aの反対に設けられる非駆動面66Bと、を有する。例えば、軸方向ADにおいて、軸方向内側面30Yから軸方向外側面30Xに向けて凹むように追加アップシフト変位歯66の軸方向内側面66Yに第2軸方向凹部68が設けられる。
【0068】
第2軸方向凹部68は、例えば、少なくとも追加アップシフト変位歯66の追加変位歯先66Cに配置される。第2軸方向凹部68は、例えば、径方向RDにおいて、追加変位歯先66Cから径方向内側に延びる。第2軸方向凹部68は、例えば、径方向RDにおいて、追加変位歯先66Cからスプロケット本体32の外側環状部36の外周部36Aまで、径方向内側に延びる。第2軸方向凹部68は、例えば、追加アップシフト変位歯66の駆動面66Aから追加アップシフト変位歯66の非駆動面66Bに達する。第2軸方向凹部68は、例えば、周方向CDにおいて、第2軸方向凹部68と第1軸方向凹部50との間に他の凹部が無いように、駆動回転方向Dに関する第1軸方向凹部50の下流側において第1軸方向凹部50に隣接する。
【0069】
図1図3、および、図6に示されるように、複数のスプロケット歯34は、例えば、複数のダウンシフト促進歯70を含む。複数のダウンシフト促進歯70は、ダウンシフトオペレーションを促進するように構成される。ダウンシフトオペレーションでは、隣接小スプロケット20Aから、リアスプロケット30に向かって、駆動チェーン18が移動する。ダウンシフトオペレーションにおいて、駆動チェーン18は、例えば、人力駆動車10のリアディレイラによって、隣接小スプロケット20Aからリアスプロケット30に移動させられる。
【0070】
リアスプロケット30は、例えば、少なくとも1つのダウンシフト領域を含む。1つのダウンシフト領域は、複数のダウンシフト促進歯70によって構成される。本実施形態のリアスプロケット30は、3つのダウンシフト領域を含む。ダウンシフト領域の数は、リアスプロケット30の寸法等に応じて決定される。
【0071】
複数のダウンシフト促進歯70は、例えば、ダウンシフト開始歯72と、ダウンシフト凹部歯74と、を含む。ダウンシフト開始歯72は、例えば、ダウンシフトオペレーションにおいて、駆動チェーン18に最初に係合するように構成される。ダウンシフト開始歯72の開始歯先72Cは、軸方向ADにおいて、ダウンシフト開始歯72の駆動面72Aからダウンシフト開始歯72の非駆動面72Bに向かって軸方向外側面30Xに近づくように傾斜する。
【0072】
例えば、軸方向ADにおいて、軸方向内側面30Yから軸方向外側面30Xに向けて凹むように、ダウンシフト開始歯72の軸方向内側面72Yに第3軸方向凹部76が設けられる。本実施形態では、第3軸方向凹部76は、ダウンシフト開始歯72の軸方向内側面72Yが、スプロケット本体32の外側環状部36の外周部36Aからダウンシフト開始歯72の開始歯先72Cに向かって傾斜するように設けられる。第3軸方向凹部76は、段押し加工によってダウンシフト開始歯72の軸方向内側面72Yに設けられてもよい。
【0073】
第3軸方向凹部76は、例えば、少なくともダウンシフト開始歯72の開始歯先72Cに配置される。第3軸方向凹部76は、例えば、径方向RDにおいて、ダウンシフト開始歯72の開始歯先72Cから径方向内側に延びる。第3軸方向凹部76は、径方向RDにおいて、ダウンシフト開始歯72の開始歯先72Cからスプロケット本体32の外側環状部36の外周部36Aまで、径方向内側に延びる。第3軸方向凹部76は、例えば、周方向CDにおいて、ダウンシフト開始歯72の駆動面72Aからダウンシフト開始歯72の非駆動面72Bに延びる。
【0074】
ダウンシフト凹部歯74は、例えば、周方向CDにおいて、ダウンシフト開始歯72とダウンシフト凹部歯74との間に他の歯が無いように、リアスプロケット30の駆動回転方向Dに対してダウンシフト開始歯72の下流側において、ダウンシフト開始歯72に隣接する。ダウンシフト凹部歯74は、例えば、ダウンシフトオペレーションにおいて、軸方向ADにおける、駆動チェーン18の軸方向外側面30Xから軸方向内側面30Yに向かう方向への移動を促進するように構成される。ダウンシフト凹部歯74は、例えば、周方向CDにおいて、駆動面74Aと、駆動面74Aの反対側に設けられる非駆動面74Bとを有する。ダウンシフト凹部歯74は、例えば、凹部歯先74Cを有する。凹部歯先74Cは、軸方向ADにおいて、駆動面74Aから非駆動面74Bに向かって軸方向内側面30Yに近づくように傾く。
【0075】
ダウンシフト凹部歯74は、例えば、ダウンシフト凹部78を有する。ダウンシフト凹部78は、例えば、軸方向ADにおいて、軸方向外側面30Xから軸方向内側面30Yに凹むように、ダウンシフト凹部歯74の軸方向外側面74Xに設けられる。
【0076】
ダウンシフト凹部78は、例えば、ダウンシフト凹部歯74の駆動面74Aに達しない。ダウンシフト凹部78は、ダウンシフト凹部歯74の駆動面74Aに達してもよい。ダウンシフト凹部78は、例えば、ダウンシフト凹部歯74の非駆動面74Bに達する。ダウンシフト凹部78は、例えば、スプロケット本体32の外側環状部36の外周部36Aから内周部36Bに延びる。
【0077】
複数のダウンシフト促進歯70は、例えば、追加ダウンシフト凹部歯80を含む。追加ダウンシフト凹部歯80は、例えば、周方向CDにおいて、追加ダウンシフト凹部歯80とダウンシフト凹部歯74との間に他の歯が無いように、リアスプロケット30の駆動回転方向Dに関するダウンシフト凹部歯74の下流側においてダウンシフト凹部歯74に隣接する。追加ダウンシフト凹部歯80は、例えば、ダウンシフトオペレーションにおいて、軸方向ADにおける、軸方向外側面30Xから、軸方向内側面30Yに向かう駆動チェーン18の移動を促進するように構成される。
【0078】
追加ダウンシフト凹部歯80は、例えば、追加ダウンシフト凹部82を有する。追加ダウンシフト凹部82は、例えば、軸方向ADにおいて、軸方向外側面30Xから軸方向内側面30Yに向けて凹むように、追加ダウンシフト凹部歯80の軸方向外側面80Xに設けられる。追加ダウンシフト凹部82は、例えば、周方向CDにおいて、ダウンシフト凹部78と追加ダウンシフト凹部82との間に他の凹部が無いように、リアスプロケット30の駆動回転方向Dに関するダウンシフト凹部78の下流側において、ダウンシフト凹部78に隣接する。
【0079】
図3に示されるように、リアスプロケット30は、例えば、少なくとも1つの共通シフト領域を含む。共通シフト領域は、例えば、駆動回転方向Dにおいて、ダウンシフト領域と、ダウンシフト領域の上流側に隣接するアップシフト領域と、が重なる領域である。本実施形態のリアスプロケット30は、3つの共通シフト領域を含む。共通シフト領域の数は、リアスプロケット30の寸法等に応じて決定される。
【0080】
図3図5、および、図6に示されるように、共通シフト領域は、アップシフト変位歯48と、追加アップシフト変位歯66とを含む。共通シフト領域おける追加アップシフト変位歯66は、周方向CDにおいて、追加アップシフト変位歯66とダウンシフト開始歯72との間に他の歯が無いように、駆動回転方向Dに関するダウンシフト開始歯72の上流側においてダウンシフト開始歯72に隣接する。
【0081】
アップシフト変位歯48および追加アップシフト変位歯66は、例えば、ダウンシフトオペレーションを促進するダウンシフト係合促進歯を兼ねている。アップシフト変位歯48および追加アップシフト変位歯66は、例えば、ダウンシフトオペレーションにおいて、軸方向ADにおける、駆動チェーン18の軸方向外側面30Xから軸方向内側面30Yに向かう方向への移動を促進するように構成される。アップシフト変位歯48は、例えば、第1軸方向凹部50によって、ダウンシフトオペレーションを促進するように構成される。追加アップシフト変位歯66は、例えば、第2軸方向凹部68によって、ダウンシフトオペレーションを促進するように構成される。
【0082】
図1から図5、および、図10を参照して、アップシフトオペレーションにおける駆動チェーン18の動作を説明する。
リアディレイラによって、駆動チェーン18に隣接小スプロケット20Aに向かって移動する力が加えられ、かつ、アウタリンク18Bがアップシフト変位歯48に係合する位置に移動すると、第1軸方向凹部50によってアップシフト変位歯48の変位歯先48Cが軸方向外側に寄るため、駆動チェーン18が隣接小スプロケット20Aに向けて寄せられる。第1アップシフト凹部52によって、アップシフト開始歯44の開始歯先44Cが軸方向内側に寄っているため、隣接小スプロケット20Aに向けて寄せられる駆動チェーン18が、アップシフト開始歯44から外れやすい。具体的には、第1アップシフト凹部52によって、アップシフト開始歯44の開始歯先44Cが軸方向内側に寄っているため、アップシフト開始歯44に対応するインナリンク18Cがアップシフト開始歯44から外れやすい。また、第1アップシフト面取り部58が、少なくとも第1アップシフト歯底56に設けられるため、インナリンク18Cが第1アップシフト面取り部58に沿って隣接小スプロケット20Aに向かって移動しやすくなる。したがって、駆動チェーン18がリアスプロケット30から隣接小スプロケット20Aに円滑に移動できる。
【0083】
第2アップシフト凹部54によって、アップシフト凹部歯46の凹部歯先46Cが軸方向内側に寄っているため、アップシフト開始歯44から外れた駆動チェーン18が、アップシフト凹部歯46に再度係合しにくい。具体的には、第2アップシフト凹部54によって、アップシフト凹部歯46の凹部歯先46Cが軸方向内側に寄っているため、アップシフト凹部歯46に対応するアウタリンク18Bがアップシフト凹部歯46に係合することが抑制される。また、第2アップシフト面取り部64が、少なくとも第2アップシフト歯底62に設けられるため、駆動チェーン18が隣接小スプロケット20Aに十分に移動せずに、アウタリンク18Bが第2アップシフト歯底62に接触したとしても、アウタリンク18Bが第2アップシフト面取り部64に沿って隣接小スプロケット20Aに向かって移動しやすくなる。したがって、駆動チェーン18がリアスプロケット30から隣接小スプロケット20Aに円滑に移動できる。その後、リアスプロケット30が駆動回転方向Dに回転するにしたがって、駆動チェーン18が、リアスプロケット30から外れ、かつ、隣接小スプロケット20Aに係合することによって、アップシフトオペレーションが完了する。
【0084】
アップシフト促進歯42の歯厚が大きいほど、リアスプロケット30の剛性は高くなる。アップシフト促進歯42の歯厚が大きくなると、変速時に駆動チェーン18とリアスプロケット30との接触が生じやすくなるため、変速ショックが大きくなる可能性がある。本実施形態のリアスプロケット30によれば、第1アップシフト面取り部58によって、駆動チェーン18がリアスプロケット30から隣接小スプロケット20Aに円滑に移動できる。したがって、アップシフト促進歯42の歯厚を確保しつつ、人力駆動車10が変速する場合に発生する衝撃を低減できる。
【0085】
図1から図3、および、図6を参照して、ダウンシフトオペレーションにおける駆動チェーン18の動作を説明する。
ダウンシフトオペレーションにおいて、隣接小スプロケット20Aに係合する駆動チェーン18が、リアディレイラによって、リアスプロケット30のダウンシフト凹部歯74に向かって移動する。例えば、駆動チェーン18は、リアディレイラによって、リアスプロケット30に向かって移動し、かつ、ダウンシフト凹部78に沿って隣接小スプロケット20Aの径方向外側に誘導される。ダウンシフト開始歯72の開始歯先72Cが、ダウンシフト開始歯72の駆動面72Aからダウンシフト開始歯72の非駆動面72Bに向かって、軸方向外側面30Xに近づくように傾斜しているため、ダウンシフト開始歯72に駆動チェーン18が嵌り込みやすい。径方向外側に誘導された駆動チェーン18に、ダウンシフト開始歯72の歯先が嵌まり込むことによって、ダウンシフト開始歯72が駆動チェーン18に係合する。その後、リアスプロケット30が駆動回転方向Dに回転するにしたがって、駆動チェーン18が、隣接小スプロケット20Aから外れる。隣接小スプロケット20Aから外れた駆動チェーン18がリアスプロケット30に係合することによって、ダウンシフトオペレーションが終了する。
【0086】
<変更例>
実施形態に関する説明は、本開示に従う人力駆動車用のリアスプロケットが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本開示に従う人力駆動車用のリアスプロケットは、例えば以下に示される実施形態の変更例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変更例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変更例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0087】
図6および図11に示されるように、ダウンシフト歯底84が、周方向CDにおいて、ダウンシフト開始歯72とダウンシフト凹部歯74との間に定義され、ダウンシフト面取り部86が、少なくともダウンシフト歯底84に設けられてもよい。ダウンシフト面取り部86は、例えば、リアスプロケット30の軸方向外側面30Xに設けられる。ダウンシフト面取り部86は、例えば、軸方向ADにおいて、ダウンシフト歯底84から軸方向外側面30Xに向かって延びる。ダウンシフト面取り部86は、軸方向ADにおいて、軸方向内側面30Yに向かって延びてもよく、軸方向外側面30Xおよび軸方向内側面30Yの両方に向かって延びてもよい。ダウンシフト面取り部86は、例えば、周方向CDにおいて、ダウンシフト開始歯72の非駆動面72Bからダウンシフト凹部歯74の駆動面74Aまで延びる。ダウンシフト面取り部86は、例えば、C面取りによって形成される。ダウンシフト面取り部86は、R面取りによって形成されてもよい。
【0088】
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0089】
10…人力駆動車、18…駆動チェーン、20A…隣接小スプロケット、30…リアスプロケット、30X…軸方向外側面、30Y…軸方向内側面、32…スプロケット本体、34…スプロケット歯、42…アップシフト促進歯、44…アップシフト開始歯、46…アップシフト凹部歯、52…第1アップシフト凹部、54…第2アップシフト凹部、56…第1アップシフト歯底、58…第1アップシフト面取り部、60…隣接歯、62…第2アップシフト歯底、64…第2アップシフト面取り部、70…ダウンシフト促進歯、72…ダウンシフト開始歯、74…ダウンシフト凹部歯、78…ダウンシフト凹部、84…ダウンシフト歯底、86…ダウンシフト面取り部。
図1
図2
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図5
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図11