(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106668
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 644C
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011056
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】矢野 航
(72)【発明者】
【氏名】西田 崇之
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA15
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB90
5F157AC01
5F157BA07
5F157BA13
5F157BA31
5F157CE27
5F157DB02
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】ブラシの変形に起因する基板の汚染を防止できる。
【解決手段】制御部は、第1の動作により基板Wの外周縁における外周縁当接位置にブラシ27を当接させる。そのため、軸芯P1より速い周速度である基板W上の位置にブラシ27が当接する。このとき、ブラシ本体27bが変形してゴミが放出されるが、速い周速度によって基板Wの外周方向へゴミが排出され、基板Wがゴミで汚染されることが抑制できる。制御部は、第2の動作によりブラシ27を外周縁当接位置から軸芯P1側に移動させる。制御部は、第3の動作によりブラシ27を基板Wの軸芯P1から外周縁に移動させる。したがって、ゴミを放出した清浄なブラシ27で基板Wを洗浄できる。その結果、ブラシ27の変形に起因する基板Wの汚染を防止できる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対してブラシを当接させて洗浄処理する基板処理方法において、
基板を保持した回転保持部を鉛直方向の軸芯周りに回転させる回転工程と、
前記基板が水平面内で回転されている状態で、前記軸芯よりも前記基板の外周縁側における外周縁当接位置にブラシを当接させる外周縁当接工程と、
前記基板に前記ブラシを当接させた状態で、前記ブラシを前記当接位置から前記軸芯側に移動させる第1の移動工程と、
前記第1の移動工程の後、前記ブラシを前記軸芯側から外周縁側に移動させる第2の移動工程と、
を実施することを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法において、
前記第1の移動工程と前記第2の移動工程とを複数回実施することを特徴とする基板処理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板処理方法において、
前記外周縁当接位置は、前記基板の外周縁であることを特徴とする基板処理方法。
【請求項4】
基板にブラシを当接させて洗浄処理を行う基板処理装置において、
鉛直方向の軸芯周りに基板を回転可能に保持する回転保持部と、
前記回転保持部で回転されている前記基板に当接して洗浄するブラシと、
前記ブラシを保持するブラシ保持部と、
前記ブラシ保持部を水平方向に移動させる水平駆動部と、
前記ブラシ保持部を鉛直方向に移動させる昇降駆動部と、
前記回転保持部により回転されている基板に対して、前記軸芯よりも前記基板の外周縁側における外周縁当接位置にブラシを当接させる第1の動作と、前記基板に前記ブラシを当接させた状態で、前記ブラシを前記外周縁当接位置から前記軸芯側に移動させる第2の動作と、前記基板の前記ブラシを当接させた状態で前記ブラシを前記基板の前記軸芯側から外周縁側に移動させる第3の動作とをその順に行わせるように、前記水平駆動部及び前記昇降駆動部を操作する制御部と、
を備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理装置において、
前記制御部は、前記第2の動作と前記第3の動作を複数回行わせることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の基板処理装置において、
前記外周縁当接位置は、前記基板の外周縁であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
基板にブラシを当接させて洗浄処理を行う基板処理方法において、
基板を保持した回転保持部を鉛直方向の軸芯周りに回転させる回転工程と、
前記ブラシを前記基板の洗浄開始位置に当接させる前に、前記ブラシの洗浄面を被押付部材に押し付けることにより前記ブラシを変形させる変形工程と、
前記基板が水平面内で回転されている状態で、前記ブラシの形状が元に戻るまでの間に前記ブラシを前記基板の洗浄開始位置に当接させる変形ブラシ当接工程と、
前記ブラシを前記基板上で移動させて前記基板を洗浄する洗浄工程と、
をその順に実施することを特徴とする基板処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の基板処理方法において、
前記変形工程は、前記洗浄工程で前記ブラシを前記基板に押し付ける処理時押し圧以上の押し圧で前記ブラシを前記被押付部材に押し付けることを特徴とする基板処理方法。
【請求項9】
基板にブラシを当接させて洗浄処理を行う基板処理装置において、
鉛直方向の軸芯周りに基板を回転可能に保持する回転保持部と、
前記回転保持部で回転されている前記基板に当接して洗浄するブラシと、
前記回転保持部に保持された前記基板の外周縁より外側に設けられ、前記ブラシを待機させるための待機ポットと、
前記ブラシの洗浄面が押し付けられる被押付部材と、
前記ブラシを保持するブラシ保持部と、
前記ブラシ保持部を水平方向に移動させる水平駆動部と、
前記ブラシ保持部を鉛直方向に移動させる昇降駆動部と、
前記ブラシを前記基板の洗浄開始位置に当接させる前に、前記ブラシの洗浄面を前記被押付部材に押し付けることにより前記ブラシを変形させた後、前記ブラシの形状が元に戻るまでの間に、前記ブラシを前記基板の洗浄開始位置まで移動させて前記基板を前記ブラシで洗浄するように前記水平駆動部と前記昇降駆動部とを操作する制御部と、
を備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の基板処理装置において、
前記被押付部材は、前記待機ポットに設けられていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の基板処理装置において、
前記制御部は、前記昇降駆動部を操作して、前記ブラシを前記基板に押し付けて洗浄する際の処理時押し圧以上の押し圧で前記ブラシを前記被押付部材に押し付けて変形させることを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、半導体基板、液晶表示用や有機EL(Electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等の基板にブラシを当接させて洗浄処理を行う基板処理方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、チャックと、ブラシと、アームとを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。チャックは、基板の外周縁を当接支持する。チャックは、基板の裏面を上方に向けた姿勢で保持する。チャックは、基板を保持して鉛直軸周りに回転される。ブラシは、アームの先端部に取り付けられている。ブラシは、鉛直軸周りに自転される。
【0003】
アームは、洗浄液が表面に供給された基板の回転中心にブラシを当接させ、ブラシを外周縁に移動させる。その後、アームは、ブラシを上昇させて再び基板の回転中心に移動させた後、基板の回転中心にブラシを当接させ、ブラシを外周縁に移動させるというスキャン動作を所定回数繰り返す。これにより、基板の裏面全体をブラシで洗浄処理する。なお、基板の中心から外周縁にブラシを移動させるのは、ブラシの移動により基板上のゴミを外周方向へ掃き出す意味もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置は、基板の裏面に付着していたゴミがブラシに取り込まれたり付着したりすることにより、基板の裏面が清浄にされる。ブラシに取り込まれたり付着したりしたゴミは、待機ポットにおいてブラシが洗浄されることである程度は除去されるものの、完全には除去できない。そのため、待機ポットで洗浄されたブラシであっても、次に他の基板を洗浄した際に清浄にできないことがある。
【0006】
つまり、ブラシは基板に当接される際に押し込まれて変形を生じる。そのため基板の回転中心にブラシが当接した際に変形し、その際にブラシに残っていたゴミが放出される。基板の回転中心は、外周縁に比較して周速度が極端に遅い。そのため、ブラシから放出されたゴミが外周縁から処理液とともに周囲に排出されにくい。その結果、ブラシによって基板の裏面が汚染される恐れがある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ブラシの変形に起因する基板の汚染を防止できる汚染基板処理方法及び基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、基板に対してブラシを当接させて洗浄処理する基板処理方法において、基板を保持した回転保持部を鉛直方向の軸芯周りに回転させる回転工程と、前記基板が水平面内で回転されている状態で、前記軸芯よりも前記基板の外周縁側における外周縁当接位置にブラシを当接させる外周縁当接工程と、前記基板に前記ブラシを当接させた状態で、前記ブラシを前記外周縁当接位置から前記軸芯側に移動させる第1の移動工程と、前記第1の移動工程の後、前記ブラシを前記軸芯側から外周縁側に移動させる第2の移動工程と、を実施することを特徴とするものである。
【0009】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、回転工程にて基板を鉛直方向の軸芯周りに回転させ、外周縁当接工程にて回転している基板の外周縁当接位置にブラシを当接させる。その際に、ブラシを軸芯より外周縁側で当接させる。そのため、軸芯より速い周速度である基板上の位置にブラシが当接する。このとき、ブラシが変形してゴミが放出されるが、速い周速度によって基板の外周方向へゴミが排出され、基板がゴミで汚染されることが抑制できる。その後、第1の移動工程によりブラシを外周縁当接位置から軸芯側に移動させ、第2の移動工程により、ブラシを軸芯側から外周縁側に移動させる。したがって、ゴミを放出した清浄なブラシで基板を洗浄できる。その結果、ブラシの変形に起因する基板の汚染を防止できる。
【0010】
また、本発明において、前記第1の移動工程と前記第2の移動工程とを複数回実施することが好ましい(請求項2)。
【0011】
基板上におけるブラシの移動を複数回とすることで、高い清浄度で基板を洗浄できる。
【0012】
また、本発明において、前記外周縁当接位置は、前記基板の外周縁であることが好ましい(請求項3)。
【0013】
基板の外周縁は、基板上で最も周速度が速い。したがって、ブラシから放出されたゴミを効率的に周囲に排出できる。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、基板にブラシを当接させて洗浄処理を行う基板処理装置において、鉛直方向の軸芯周りに基板を回転可能に保持する回転保持部と、前記回転保持部で回転されている前記基板に当接して洗浄するブラシと、前記ブラシを保持するブラシ保持部と、前記ブラシ保持部を水平方向に移動させる水平駆動部と、前記ブラシ保持部を鉛直方向に移動させる昇降駆動部と、前記回転保持部により回転されている基板に対して、前記軸芯よりも前記基板の外周縁側における外周縁当接位置にブラシを当接させる第1の動作と、前記基板に前記ブラシを当接させた状態で、前記ブラシを前記外周縁当接位置から前記軸芯側に移動させる第2の動作と、前記基板の前記ブラシを当接させた状態で前記ブラシを前記基板の前記軸芯側から外周縁側に移動させる第3の動作とをその順に行わせるように、前記水平駆動部及び前記昇降駆動部を操作する制御部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0015】
[作用・効果]請求項4に記載の発明によれば、制御部は、第1の動作により基板の外周縁側における外周縁当接位置にブラシを当接させる。そのため、軸芯より速い周速度である基板上の位置にブラシが当接する。このとき、ブラシが変形してゴミが放出されるが、周速度によって基板の外周方向へゴミが排出され、基板がゴミで汚染されることが抑制できる。制御部は、第2の動作によりブラシを外周縁当接位置から軸芯側に移動させる。制御部は、第3の動作によりブラシを基板の軸芯側から外周縁側に移動させる。したがって、ゴミを放出した清浄なブラシで基板を洗浄できる。その結果、ブラシの変形に起因する基板の汚染を防止できる。
【0016】
また、請求項7に記載の発明は、基板にブラシを当接させて洗浄処理を行う基板処理方法において、基板を保持した回転保持部を鉛直方向の軸芯周りに回転させる回転工程と、前記ブラシを前記基板の洗浄開始位置に当接させる前に、前記ブラシの洗浄面を被押付部材に押し付けることにより前記ブラシを変形させる変形工程と、前記基板が水平面内で回転されている状態で、前記ブラシの形状が元に戻るまでの間に前記ブラシを前記基板の洗浄開始位置に当接させる変形ブラシ当接工程と、前記ブラシを前記基板上で移動させて前記基板を洗浄する洗浄工程と、をその順に実施することを特徴とするものである。
【0017】
[作用・効果]請求項7に記載の発明によれば、回転工程にて基板を鉛直方向の軸芯周りに回転させ、変形工程にてブラシを変形させる。そのため、ブラシが変形してゴミが放出される。その後、変形ブラシ当接工程にて、ブラシの変形が元の戻るまでの間に、回転している基板の洗浄開始位置にブラシを当接させる。そのため、ブラシが洗浄開始位置で当接する際にはブラシの変形量が僅かとなる。したがって、たとえ変形工程でブラシから放出されなかったゴミがあっても、変形ブラシ当接工程ではブラシからのゴミの放出が抑制される。その後、洗浄工程にてブラシを基板上で移動させて基板を洗浄する。その結果、ブラシの変形に起因する基板の汚染を防止できる。
【0018】
また、本発明において、前記変形工程は、前記洗浄工程で前記ブラシを前記基板に押し付ける処理時押し圧以上の押し圧で前記ブラシを前記被押付部材に押し付けることが好ましい(請求項8)
【0019】
洗浄工程における処理時押し圧以上の押し圧でブラシを被押付部材に押し付けるので、ブラシの変形量を基板の処理時と同じブラシの変形量とすることができる。そのため、変形ブラシ当接工程にて放出されるゴミを、基板へブラシを当接させ押し圧を与える前に放出することができる。また、洗浄工程における処理時押し圧以上の押し圧でブラシを被押付部材に押し付けることで、ブラシを大きく変形させることができる。そのため、ブラシの形状が元に戻るまでの時間を長くできる。したがって、変形ブラシ当接工程にてブラシが基板に当接する時点にて、確実にブラシの変形が元に戻らないようできる。その結果、変形ブラシ当接工程にてブラシからゴミが放出されることを確実に抑制できる。
【0020】
また、請求項9に記載の発明は、基板にブラシを当接させて洗浄処理を行う基板処理装置において、鉛直方向の軸芯周りに基板を回転可能に保持する回転保持部と、前記回転保持部で回転されている前記基板に当接して洗浄するブラシと、前記回転保持部に保持された前記基板の外周縁より外側に設けられ、前記ブラシを待機させるための待機ポットと、前記ブラシの洗浄面が押し付けられる被押付部材と、前記ブラシを保持するブラシ保持部と、前記ブラシ保持部を水平方向に移動させる水平駆動部と、前記ブラシ保持部を鉛直方向に移動させる昇降駆動部と、前記ブラシを前記基板の洗浄開始位置に当接させる前に、前記ブラシの洗浄面を前記被押付部材に押し付けることにより前記ブラシを変形させた後、前記ブラシの形状が元に戻るまでの間に、前記ブラシを前記基板の洗浄開始位置まで移動させて前記基板を前記ブラシで洗浄するように前記水平駆動部と前記昇降駆動部とを操作する制御部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0021】
[作用・効果]請求項9に記載の発明によれば、制御部は、ブラシを基板の洗浄開始位置に当接させる前に、ブラシの洗浄面を被押付部材に押し付けることによりブラシを変形させる。その後、制御部は、ブラシの形状が元に戻るまでの間に、ブラシを基板の洗浄開始位置まで移動させて基板をブラシで洗浄するように水平駆動部と昇降駆動部とを操作する。したがって、ブラシの当接時の変形量が小さくなるので、たとえ被押付部材にブラシを押し付けることでブラシから放出されなかったゴミがあっても、洗浄開始位置におけるブラシからのゴミの放出が抑制される。その後、ブラシを基板上で移動させて基板を洗浄する。その結果、ブラシの変形に起因する基板の汚染を防止できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る基板処理方法によれば、回転工程にて基板を鉛直方向の軸芯周りに回転させ、外周縁当接工程にて回転している基板の当接位置にブラシを当接させる。その際に、ブラシを軸芯より外周縁側で当接させる。そのため、軸芯より速い周速度である基板上の位置にブラシが当接する。このとき、ブラシが変形してゴミが放出されるが、周速度によって基板の外周方向へゴミが排出され、基板がゴミで汚染されることが抑制できる。その後、第1の移動工程によりブラシを当接位置から軸芯側に移動させ、第2の移動工程により、ブラシを軸芯側から外周縁側に移動させる。したがって、ゴミを放出した清浄なブラシで基板を洗浄できる。その結果、ブラシの変形に起因する基板の汚染を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施例1に係る基板処理装置の全体構成を示す図である。
【
図2】従来例における洗浄処理後の清浄度合いを比較するグラフである。
【
図3】従来例におけるブラシの変形について説明する図である。(a)は初期状態を示し、(b)は1スキャン目の状態を示し、(c)は2スキャン目直前の状態を示し、(d)は2スキャン目の状態を示す。
【
図4】実施例1におけるブラシの変形について説明する図である。(a)は初期状態を示し、(b)は1スキャン目の状態を示す。
【
図5】(a)~(d)は実施例1における洗浄処理を説明する図である。
【
図6】実施例1と従来例との清浄度合いの比較するグラフである。
【
図7】実施例2に係る基板処理装置の全体構成を示す図である。
【
図8】実施例2におけるブラシの変形について説明する図である。(a)は初期状態を示し、(b)は1スキャン目直前の状態を示し、(c)は1スキャン目(2スキャン目)の状態を示し、(d)は2スキャン目直前の状態を示す。
【
図9】(a)~(d)は実施例2における洗浄処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施例について以下に説明する。
【実施例0025】
以下、図面を参照して本発明の実施例1について説明する。
図1は、実施例1に係る基板処理装置の全体構成を示す図である。
【0026】
基板処理装置1は、基板Wを処理する装置である。基板処理装置1は、一枚ずつ処理する、いわゆる枚葉式の装置である。基板Wは、例えば、平面視で円形状を呈する。基板処理装置1は、例えば、上方に向けた基板Wの裏面に対して処理を行う。処理としては、例えば、基板Wに付着したパーティクルなどの汚れを除去するための洗浄処理が挙げられる。
【0027】
<1.全体構成>
【0028】
基板処理装置1は、ベースユニット3と、チャックユニット5と、ガード7と、ブラシ洗浄ユニット9と、ノズル11と、制御部13とを備えている。
【0029】
<2.ベースユニット>
【0030】
ベースユニット3は、チャックユニット5を備えている。ベースユニット3は、チャックユニット5を回転させる。チャックユニット5は、基板Wを水平姿勢で保持した状態で、基板Wを水平面内で回転させる。
【0031】
ベースユニット3は、電動モータ15を備えている。電動モータ15は、回転軸17を備えている。回転軸17は、鉛直方向に延出されている。回転軸17は、電動モータ15によって鉛直方向の軸芯P1周りに回転される。回転軸17の上端には、チャックユニット5が取り付けられている。
【0032】
<3.チャックユニット>
【0033】
チャックユニット5は、平面視で円形状を呈する。チャックユニット5は、プレート5aと、複数個の支持ピン5bとを備えている。プレート5aは、基板Wの直径よりやや大きな直径を有する。複数個の支持ピン5bは、プレート5aの外周側の上面に立設されている。複数個の支持ピン5bは、基板Wの下面をプレート5aの上面から離間した状態で基板Wの外周縁を当接支持する。
【0034】
なお、上述したチャックユニット5が本発明における「回転保持部」に相当する。
【0035】
<4.ガード>
【0036】
ガード7は、電動モータ15の側方に配置されている。ガード7は、電動モータ15の側方を囲っている。ガード7は、ブラシ洗浄ユニット9による洗浄処理時に、ノズル11から基板Wに供給された処理液が周囲に飛散するのを防止する。ガード7は、
図1中に実線で示す処理高さと、
図1中に二点鎖線で示す受け渡し高さ(
図1中の二点鎖線)とにわたって昇降される。受け渡し高さは、処理高さより下方に位置する。ガード7は、処理高さにおいて、基板Wの外周縁から周囲に飛散した処理液を下方へ案内する。
【0037】
<5.ブラシ洗浄ユニット>
【0038】
ブラシ洗浄ユニット9は、回転昇降機構19と、アーム21と、ブラシヘッド23とを備えている。回転昇降機構19は、アーム21を鉛直方向に昇降駆動する。回転昇降機構19は、鉛直方向の軸芯P2周りにアーム21を回転駆動する。回転昇降機構19は、例えば、鉛直方向の回転軸を備えた電動モータからなる回転機構と、その電動モータを鉛直方向に昇降移動する昇降機構とを備えている。アーム21は、基端部が回転昇降機構19に連結されている。アーム21は、先端部にブラシヘッド23が取り付けられている。ブラシヘッド23は、回転昇降機構19によって水平面内で揺動駆動される。
【0039】
なお、回転昇降機構19に代えて、水平方向に配置されたボールネジ等により、アーム21の基端部と先端部とを同時に水平方向に直線的に移動する直線移動昇降機構を採用してもよい。
【0040】
ブラシヘッド23は、ヘッドボディ25と、ブラシ27とを備えている。ヘッドボディ25は、アーム21の先端部に取り付けられている。ヘッドボディ25は、電動モータ29を内蔵している。電動モータ29は、回転軸29aを備えている。回転軸29aは、鉛直方向に延出されている。電動モータ29は、鉛直方向の軸芯P3周りに回転軸29aを回転駆動する。電動モータ29は、ブラシ27を軸芯P3周りに自転させる。ヘッドボディ25の下部には、ブラシ27が配置されている。ブラシ27は、回転軸29の下端部に取り付けられている。ブラシ27は、電動モータ29によって軸芯P3周りに回転される。ブラシ27は、回転軸29aに対して着脱自在である。
【0041】
ブラシ27は、ブラケット27aと、ブラシ本体27bとを備えている。ブラシ27は、ブラケット27aにより回転軸29aに対して着脱自在に取り付けられている。ブラシ本体27bは、例えば、合成樹脂製である。具体的には、ブラシ本体27bは、PVA(ポリビニルアルコール)で構成されている。PVAは、親水性が高く、縦横にめぐる微細気孔を有する。そのため、ブラシ本体27bは、毛細管現象が生じるので、高い吸水性及び保水性を発揮する。また、ブラシ本体27bは、水分をゴミとともに内部に取り込んで、しっかりと保持する。さらに、PVAは、柔軟性及び弾力性を有する。そのため、ブラシ本体27bは、洗浄処理の対象である基板Wを傷つけない。
【0042】
回転昇降機構19は、ブラシ27を当接位置と離間位置とにわたって移動する。当接位置は、ブラシ27が基板Wの上面に作用する位置である。当接位置は、ブラシ本体27bの下面が基板Wの上面に直接的に当接する高さ位置や、ブラシ本体27bの下面が基板Wの上面に処理液を介在した状態で間接的に作用する高さ位置を含む。離間位置は、ブラシ27が基板Wの外周縁から離れた位置である。離間位置は、ブラシ27が基板Wに作用しない位置である。
【0043】
なお、上述したブラシヘッド23が本発明における「ブラシ保持部」に相当し、上述した回転昇降機構19が本発明における「水平駆動部」及び「昇降駆動部」に相当する。
【0044】
ブラシヘッド23は、ブラシ本体27bの下面が基板Wの上面に当接した状態から下方に向けてブラシ本体27bを移動させる。このとき、ブラシヘッド23で検出された押し圧や、押し込み量により、基板Wに押し付けられるブラシ本体27bの押圧力が決まる。この押圧力は、基板Wを洗浄処理する際の処理時押し圧である。
【0045】
ベースユニット3の側方には、待機ポット31が配置されている。待機ポット31は、ガード7の側方に配置されている。待機ポット31は、回転昇降機構19の側方に配置されている。待機ポット31は、ブラシ27を待機させる。待機ポット31は、ブラシ27を内部に収容可能である。待機ポット31は、ブラシ27に付着しているパーティクルなどの汚れを除去する。待機ポット31は、ブラシ27に洗浄液を噴射してブラシ27を洗浄し、ブラシ27を清浄にする機能を備えている。待機ポット31の位置は、上述した離間位置である。
【0046】
ノズル11は、軸芯P1周りに基板Wが回転されている際に、その上面に処理液を供給する。ノズル11は、ガード7の上縁を越えて処理液を基板Wに供給する。本実施例におけるノズル11は、可動しない。つまり、本実施例におけるノズル11は、位置が固定されている。但し、処理時にのみノズル11が
図1に示す位置に移動する可動式を作用してもよい。ノズル11から供給される処理液は、例えば、例えば、純水や薬液などが挙げられる。薬液としては、例えば、硫酸、硝酸、酢酸、塩酸、フッ化水素酸、アンモニア水、過酸化水素水のうち少なくとも1つを含む薬液である。より具体的な薬液としては、例えば、アンモニア水と過酸化水素水との混合液であるSC-1などを用いることができる。
【0047】
<6.制御部>
【0048】
制御部13は、上述した各部を統括して制御する。制御部13は、CPUやメモリを備えている。
【0049】
制御部13は、ガード7の昇降動作、ノズル11からの処理液の供給動作、電動モータ15の回転動作、回転昇降機構19の回転動作及び昇降動作、電動モータ29の回転動作、ブラシヘッド23によるブラシ27の押し込み動作を制御する。
【0050】
制御部13は、主として回転昇降機構19を操作して、次のような第1の動作と、第2の動作と、第3の動作とを行わせる。制御部13は、第1の動作と、第2の動作と、第3の動作とをその順に行わせる。
【0051】
<第1の動作>
制御部13は、電動モータ15を操作して、基板Wを処理速度で回転させる。制御部13は、ノズル11を操作して、基板Wの上面における軸芯P1付近に処理液を供給させる。制御部13は、ブラシ27を自転させつつ、軸芯P1よりも基板Wの外周縁側における外周縁当接位置にブラシ27を当接させる。外周縁当接位置は、具体的には、基板Wの最外周である外周縁であることが好ましい。なお、外周縁は、基板Wにブラシ27のブラシ本体27bを当接させた際に、ブラシ本体27bの洗浄面の全てが基板Wに当接する基板Wの半径方向で最も外側の位置である。
【0052】
<第2の動作>
制御部13は、回転昇降機構19を操作して、基板Wの上面にブラシ27を当接させた状態で、ブラシ27を外周縁当接位置から軸芯P1側に移動させる。具体的には、軸芯P1と軸芯P3とが平面視でほぼ一致する位置までブラシ27を水平移動させる。
【0053】
<第3の動作>
制御部13は、基板Wの上面にブラシ27を当接させた状態で、ブラシ27を軸芯P1側から、上述した当接位置に移動させる。
【0054】
<7.清浄度が低下するメカニズム>
【0055】
ここで、
図2及び
図3を参照する。
図2は、従来例における洗浄処理後の清浄度合いを比較するグラフである。
図3は、従来例におけるブラシの変形について説明する図である。
図3において、(a)は初期状態を示し、(b)は1スキャン目の状態を示し、(c)は2スキャン目直前の状態を示し、(d)は2スキャン目の状態を示す。なお、
図2においては、スキャン後ごとに3個のサンプルによるデータを示す。
【0056】
従来例では、次のように、回転昇降機構19を操作してブラシ27を移動させる。つまり、制御部13は、ブラシ27を軸芯P1において基板Wの上面に当接させ、処理時押し圧でブラシ27を基板Wに押圧したまま基板Wの外周縁へ水平に移動させる。ここでは、軸芯P1から外周縁までの動作を1スキャンと称する。制御部13は、ブラシ27を基板Wの上面から上昇させ、次のスキャンを行う。このとき、1スキャン後と、2スキャン後と、4スキャン後において基板Wの清浄度合いを計測した。すると、1スキャン後が最も清浄度が低く、2スキャン後、4スキャン後と清浄度合いが高くなった。
【0057】
このような結果となったのは次のように考えられる。つまり、
図3(a)のように、ブラシ27が基板Wに当接する前の初期状態においては、鉛直方向におけるブラシ本体27bの長さはL0である。ブラシ27が軸芯P1において基板Wに処理時押し圧で当接した状態(1スキャン目)においては、
図3(b)のように鉛直方向におけるブラシ本体27bの長さがL1となる。長さL1は、長さL0よりも短い。次に、ブラシ27が基板の外周縁に移動した後、上昇されて再びブラシ27が軸芯P1において基板Wに処理時押し圧で当接される直前の状態(2スキャン目直前)においては、
図3(c)のように鉛直方向におけるブラシ本体27bの長さがL2となる。長さL2は、長さL0より短く、長さL1より長い。ブラシ27が軸芯P1において処理時押し圧にされた状態(2スキャン目)においては、
図3(d)のように鉛直方向におけるブラシ本体27bの長さがL1となる。
【0058】
このようにブラシ本体27bは、鉛直方向における長さがL0、L1、L2、L1と伸縮する。ブラシ本体27bの鉛直方向の長さが最も大きく収縮するのは、長さがL0からL1となるときである。ブラシ本体27bは、これ以前に処理された基板Wの洗浄処理時にゴミが内部に取り込まれたり、表面に付着したりしている。そのため、ブラシ本体27bが大きく収縮すると、ブラシ本体27bから一定量のゴミが外部に放出される。放出されたゴミは、基板Wの遠心力により処理液とともに基板Wの外方に排出されるが、軸芯P1は回転中心であるので周速度が遅い。そのため、ゴミが基板Wの外周縁から周囲に排出されにくい。このような現象によって、1スキャン後の清浄度が低くなっている。
【0059】
ここで、
図4を参照する。
図4は、実施例1におけるブラシの変形について説明する図である。(a)は初期状態を示し、(b)は1スキャン目の状態を示す。
【0060】
上述した現象に対処するために、制御部13は、上述した第1の動作と、第2の動作と、第3の動作とをその順に行わせる。つまり、
図4(a)に示すように、ブラシ27を基板Wの外周縁側に配置させる。好ましくは、基板Wの外周縁に配置させる。
図4(b)に示すように、ブラシ27を当接させると、ブラシ本体27bが最も大きく収縮して一定量のゴミが放出されるが、外周縁側は軸芯P1側よりも周速度が非常に速い。そのため、ブラシ本体27bから放出されたゴミが処理液とともに基板Wの外周縁から周囲に排出される。その後、ブラシ27を軸芯P1側へ移動させ、さらにブラシ27を軸芯P1側から基板Wの外周縁に移動させる。このようにブラシ27の移動を制御することにより、ブラシ27の変形に起因する基板Wの汚染を防止する。
【0061】
<8.洗浄処理>
【0062】
ここで、
図5を参照して洗浄処理について説明する。
図5(a)~(d)は、実施例1における洗浄処理を説明する図である。なお、洗浄処理においては、ノズル11から処理液が供給されているが、その図示は省略している。
【0063】
制御部13は、基板Wを処理回転数で回転させる。なお、この工程が本発明における「回転工程」に相当する。基板Wの回転数が処理回転数に達したら、制御部13は、回転昇降機構19を操作して、ブラシ27を基板Wの外周縁に移動する(
図5(a))。
【0064】
制御部13は、回転昇降機構19を操作して、ブラシ27を基板Wの外周縁に当接させる。なお、この工程が本発明における「外周縁当接工程」に相当する。また、外周縁が本発明における「外周縁当接位置」に相当する。さらに、制御部13は、ブラシヘッド23を操作してブラシ27に処理時押し圧を付与する(
図5(b))。このとき、ブラシ本体27bは、鉛直方向において大きく収縮する。当然、このときにブラシ本体27bからは一定量のゴミが放出されるものの、外周縁における速い周速度によって基板Wの外周縁から周囲にゴミが排出される。したがって、ブラシ27から放出されたゴミで基板Wが汚染されにくい。
【0065】
制御部13は、基板Wの外周縁から基板Wの回転中心である軸芯P1側へブラシ27を移動させる(
図5(c))。これが1スキャンとなる。なお、この工程が本発明における「第1の移動工程」に相当する。
【0066】
制御部13は、軸芯P1側から基板Wの外周縁に向かってブラシ27を移動させる(
図5(d))。これが2スキャンとなる。なお、この工程が本発明における「第2の移動工程」に相当する。
【0067】
制御部13は、必要に応じてスキャンを複数回繰り返して洗浄処理を行う。ブラシ27の水平方向への移動を複数回とすることで、高い清浄度で基板Wを洗浄できる。
【0068】
本実施例によると、制御部13は、第1の動作により基板Wの外周縁における外周縁当接位置にブラシ27を当接させる。そのため、軸芯P1より速い周速度の位置にブラシ27が基板Wに当接する。このとき、ブラシ本体27bが変形してゴミが放出されるが、速い周速度によって基板Wの外周方向へゴミが排出され、基板Wがゴミで汚染されることが抑制できる。制御部13は、第2の動作によりブラシ27を外周縁当接位置から軸芯P1側に移動させる。制御部13は、第3の動作によりブラシ27を基板Wの軸芯P1から外周縁に移動させる。したがって、ゴミを放出した清浄なブラシ27で基板Wを洗浄できる。その結果、ブラシ27の変形に起因する基板Wの汚染を防止できる。
【0069】
ここで、上述したように洗浄処理による実施例1と従来例との清浄度合いの比較を行う。
図6は、実施例1と従来例との清浄度合いの比較するグラフである。なお、
図6に記載のC-Eは、ブラシ27を基板Wの軸芯P1から外周縁に移動させる動作のことであり、E-Cは、ブラシ27を基板Wの外周縁から軸芯P1へ移動させる動作のことである。
【0070】
従来例は、軸芯P1から外周縁までのスキャンを二回実施した洗浄処理後の清浄度合いを示す。実施例1は、外周縁から軸芯P1までのスキャンと、軸芯P1から外周縁までのスキャンとからなる2スキャンを実施した洗浄処理後の清浄度合いを示す。
【0071】
このグラフから明らかなように、実施例1は、従来例に比較して清浄度合いを高くできることがわかる。そのため、基板Wによって製造されるデバイスの歩留まりを向上できる。その結果、廃棄されるデバイスを少なくできるので、環境負荷を小さくできる。
待機ポット31Aは、被押付部材41を備えている。被押付部材41は、ブラシ本体27bの洗浄面が押し付けられる。被押付部材41は、ブラシ本体27bの下面が押し付けられる。被押付部材41は、その上面がブラシ本体27bの下面より大きいことが好ましい。被押付部材41は、ブラシ本体27bより堅い材料で構成されている。被押付部材41は、例えば、フッ素樹脂から構成されている。
制御部13は、図示しないノズルを介して待機ポット31Aに収容されたブラシ27に洗浄液を噴射する。制御部13は、基板Wに対する洗浄処理を開始するに先立って、ブラシ27を被押付部材41に対して押し付ける。このとき、前の基板Wを洗浄処理した際にブラシ27に取り込まれたり付着したりしたゴミがある程度は排出されて、洗浄液で洗い流される。但し、完全にブラシ27を清浄にすることはできない。なお、制御部13は、処理時押し圧以上の押し圧でブラシ27を被押付部材41に押し付けることが好ましい。
洗浄処理における処理時押し圧と同等の押し圧で、ブラシ本体27bを被押付部材41に押し付けるので、ブラシ本体27bを基板Wの処理時と同じ変形量とすることができる。そのため、基板Wにブラシ本体27bを当接させ押し圧を与える際に放出されるゴミを、事前に放出することができる。また、洗浄処理における処理時押し圧より大きな押し圧でブラシ本体27bを被押付部材41に押し付けることで、ブラシ本体27bが大きく変形する。そのため、ブラシ本体27bの形状が元に戻るまでの時間を長くできる。したがって、ブラシ本体27bが基板Wに当接する時点にて、確実にブラシ本体27bの変形が元に戻らないようできる。その結果、ブラシ本体27bが基板Wに当接した時点に、ブラシ本体27bからゴミが放出されることを確実に抑制できる。
なお、ブラシ本体27bが被押付部材41に押し付けられて変形した状態から、元の形状に戻るまでの時間は、例えば、5秒程度である。また、ブラシ27が待機ポット31Aから基板W上の洗浄開始位置にまで移動するのに要する時間は、例えば、3秒程度である。したがって、ブラシ本体27bの変形が元に戻らないうちにブラシ本体27bを基板Wに当接させることができる。なお、これらの時間は、ブラシ本体27bの材質や、被押付部材41に押し付ける力によって異なる。
制御部13は、例えば、ブラシ27の移動を従来例と同様に行う。すなわち、制御部13は、基板W上の軸芯P1の位置に相当する洗浄開始位置にブラシ27を当接させ、処理時押し圧を付与した状態で基板Wの外周縁にまで水平移動させる。その後、制御部13は、ブラシ27を上昇させて軸芯P1の上方に移動させた後、再び基板W上の軸芯P1の位置に相当する位置にブラシ27を当接させた後、処理時押し圧を付与した状態で外周縁にまで水平移動させる。
制御部13は、変形されたブラシ本体27bの長さが、自身の弾性力により変形前の初期状態の長さL0に戻る前に、ブラシ本体27bを基板Wの洗浄開始位置に移動させる。ここでいう洗浄開始位置は、例えば、軸芯P1に相当する基板W上の位置である。このとき、ブラシ本体27bが基板Wに当接する1スキャン目直前の状態では、ブラシ本体27bの鉛直方向の長さがL11となる。この長さL11は、長さL0より短く、かつ、長さL10より長い。
1スキャン目を行う際には、制御部13は、ブラシヘッド23により処理時押し圧をブラシ27に付与する。したがって、1スキャン目におけるブラシ本体27bの鉛直方向における長さは、長さL11より短い長さL12となる。制御部13は、処理時押し圧を付与したままブラシ27を基板Wの外周縁に移動させる。
1スキャン目が終了すると、制御部13は、ブラシ27を上昇させ、基板Wの軸芯P1の上方に移動させる。そして、制御部13は、2スキャン目を実施する。その2スキャン目の直前の状態では、例えば、ブラシ本体27bの鉛直方向の長さがL11となる。この長さL11は、ブラシ本体27bを基板Wの外周縁から上昇させて、再び洗浄開始位置に当接させるまでの再当接時間によって異なる。この再当接時間が長くなるほど、ブラシ本体27bの鉛直方向の長さが長くなる。そのため、制御部13は、ブラシ27の移動を、ブラシ本体27bの鉛直方向の長さが元の長さL0に達しない時間内に行う。2スキャン目の状態では、例えば、ブラシ本体27bの鉛直方向の長さが、例えば、長さL12となる。
上述したように、制御部13は、ブラシ本体27bの長さが初期状態に戻る前にブラシ本体27bを基板Wの洗浄開始位置に当接させる。したがって、ブラシ本体27bの変形に起因するゴミの放出が抑制される。その結果、ブラシ27の変形に起因する基板Wの汚染を防止できる。
制御部13は、ブラシ27を上昇させ、ブラシ27を基板Wの軸芯P1に移動させる。そして、制御部13は、軸芯P1から基板Wの外周縁に向かって再びブラシ27を移動させて基板Wの上面を洗浄させる。
本実施例2によると、制御部13は、ブラシ本体27bを基板Wに当接させる前に、ブラシ本体27bを被押付部材41に押し付けることによりブラシ本体27bを変形させる。その後、制御部13は、ブラシ本体27bの形状が元に戻るまでの間に、ブラシ本体27bを基板Wの洗浄開始位置まで移動させて基板Wをブラシ本体27bで洗浄するように回転昇降機構19を操作する。したがって、ブラシ本体27bの当接時の変形量が小さくなるので、たとえ被押付部材41にブラシ本体27bを押し付けることでブラシ本体27bから放出されなかったゴミがあっても、基板W上の洗浄開始位置におけるブラシ本体27bからのゴミの放出が抑制される。その後、ブラシ本体27bを基板W上で移動させて基板Wを洗浄する。その結果、ブラシ本体27bの変形に起因する基板Wの汚染を防止できる。
(1)上述した実施例1では、最初にブラシ27を当接させる位置として、基板Wの最外周である外周縁を例にとって説明している。しかしながら、本発明は、このような位置に限定されない。つまり、軸芯P1よりも周速度が速い位置であれば、最外周の外周縁である必要はない。例えば、最外周の外周縁よりやや軸芯P1側の位置や、最外周と軸芯P1との中間位置にブラシ27を当接させるようにしてもよい。この場合には、その位置から基板Wの軸芯P1へ水平移動させた後、軸芯P1から最外周の外周縁まで水平移動させればよい。
(2)上述した各実施例1,2では、平面視で円形状の基板Wを処理する場合を例にとって説明した。しかしながら、本発明はこのような形状の基板Wに限定されない。例えば、矩形状の基板Wを処理する場合にも適用できる。
(3)上述した各実施例1,2では、チャックユニット5が基板Wの外周縁を当接支持するチャック(メカ式チャックとも呼ばれる)を例にとって説明している。しかしながら、本発明はこのような構成に限定されない。例えば、基板Wの下面を吸引して基板Wを保持するチャック(吸引式チャックとも呼ばれる)であっても本発明を適用できる。
(4)上述した実施例2では、ブラシ27を被押付部材41に押し付ける際に、処理時押し圧より大きな押し圧で押し付けている。しかしながら、本発明は、このような形態に限定されない。つまり、ブラシ27を被押付部材41に押し付ける圧力は、ブラシ27に変形が生じれば処理時押し圧より大きな押し圧である必要はない。
(5)上述した実施例2では、被押付部材41が待機ポット31Aに設けられている構成を例にとって説明した。しかしながら、本発明は、このような構成に限定されない。例えば、待機ポット31Aとガード7との間に被押付部材41を配置してもよい。また、被押付部材41を基板Wとしてもよい。つまり、基板Wの外周縁側を被押付部材41として用いる。基板Wの外周縁側にブラシ本体27bを押し付けて変形させ、上方に持ち上げたブラシ本体27bの形状が元に戻る前に、ブラシ本体27bを洗浄開始位置である基板Wの軸芯P1に移動させて当接させ、基板Wの外周縁に向かって移動させる。この場合には、被押付部材41を別体として設ける必要がなく、コストを抑制できる。また、ブラシ27の移動を制御するプログラムの変更だけで従来装置に実施例2を容易に適用できる。