(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106675
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】ヘッドレスト用冷却装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/879 20180101AFI20240801BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20240801BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B60N2/879
A47C7/74 C
A47C7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011065
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】門野 佑基
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084JA01
3B084JG02
3B084JG06
3B087DC05
3B087DE09
(57)【要約】
【課題】温風の排出を抑制できるヘッドレスト用冷却装置を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、ヘッドレストの内部に設けられた通気路と、通気路に配置されると共に、排出運転と吸込運転とが可能なファンと、通気路において排出運転時のファンの下流側に配置された温度センサと、ファンに予め定めた冷却時間で吸込運転を実行させる冷却処理を実行した後、ファンに排出運転を実行させる運転処理を実行するように構成された制御部と、を備えるヘッドレスト用冷却装置である。制御部は、温度センサが検出する温度に基づいて、冷却時間を設定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレストの内部に設けられた通気路と、
前記通気路に配置されると共に、排出運転と吸込運転とが可能なファンと、
前記通気路において前記排出運転時の前記ファンの下流側に配置された温度センサと、
前記ファンに予め定めた冷却時間で前記吸込運転を実行させる冷却処理を実行した後、前記ファンに前記排出運転を実行させる運転処理を実行するように構成された制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記温度センサが検出する温度に基づいて、前記冷却時間を設定する、ヘッドレスト用冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドレスト用冷却装置であって、
前記制御部は、前記冷却処理の実行後、かつ前記運転処理の実行前に、前記排出運転の時間が直前の前記吸込運転の時間よりも短くなるように、前記ファンに前記吸込運転と前記排出運転とを交互に実行させる検出処理を実行する、ヘッドレスト用冷却装置。
【請求項3】
請求項2に記載のヘッドレスト用冷却装置であって、
前記制御部は、前記検出処理における前記排出運転の風速を前記運転処理の風速よりも小さくする、ヘッドレスト用冷却装置。
【請求項4】
請求項2に記載のヘッドレスト用冷却装置であって、
前記制御部は、前記検出処理における前記排出運転時に前記温度センサが検出する温度に基づいて、前記検出処理における前記吸込運転時間を短縮する、ヘッドレスト用冷却装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のヘッドレスト用冷却装置であって、
前記制御部は、直前に実行された前記運転処理からの経過時間に基づいて、前記冷却時間を設定する、ヘッドレスト用冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドレスト用冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドレストの内部から着席者に向けて空気を送る冷却装置が公知である(特許文献1参照)。この冷却装置は、ヘッドレスト内部に配置されたファンによってヘッドレスト外部から空気を吸引し、送風を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のヘッドレスト用冷却装置では、ヘッドレスト内部に熱がこもっている場合、送風の開始時に温風がヘッドレストから排出される。そのため、着席者が不快を感じるおそれがある。
【0005】
本開示の一局面は、温風の排出を抑制できるヘッドレスト用冷却装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、ヘッドレスト(100)の内部に設けられた通気路(2)と、通気路(2)に配置されると共に、排出運転と吸込運転とが可能なファン(3)と、通気路(2)において排出運転時のファン(3)の下流側に配置された温度センサ(4)と、ファン(3)に予め定めた冷却時間で吸込運転を実行させる冷却処理を実行した後、ファン(3)に排出運転を実行させる運転処理を実行するように構成された制御部(9)と、を備えるヘッドレスト用冷却装置(1)である。制御部(9)は、温度センサ(4)が検出する温度に基づいて、冷却時間を設定する。
【0007】
このような構成によれば、通気路(2)が一定の温度以下になるまで、ファン(3)の吸込運転によってヘッドレスト(100)の内部を冷却することができる。そのため、1つの温度センサ(4)によって、ヘッドレスト用冷却装置(1)の起動時における温風の排出を抑制できる。
【0008】
本開示の一態様では、制御部(9)は、冷却処理の実行後、かつ運転処理の実行前に、排出運転の時間が直前の吸込運転の時間よりも短くなるように、ファン(3)に吸込運転と排出運転とを交互に実行させる検出処理を実行してもよい。このような構成によれば、ヘッドレスト(100)の内部の温度を目標温度まで下げつつ、冷風が供給される運転処理までの時間を短縮することができる。
【0009】
本開示の一態様では、制御部(9)は、検出処理における排出運転の風速を運転処理の風速よりも小さくしてもよい。このような構成によれば、十分に冷却されていない空気が着席者に供給されることを抑制できる。
【0010】
本開示の一態様では、制御部(9)は、検出処理における排出運転時に温度センサ(4)が検出する温度に基づいて、検出処理における吸込運転時間を短縮してもよい。このような構成によれば、ヘッドレスト(100)の内部温度の低下に合わせて、冷風が供給される運転処理までの時間を短縮できる。
【0011】
本開示の一態様では、制御部(9)は、温度センサ(4)が検出する温度、又は直前に実行された運転処理からの経過時間に基づいて、冷却時間を設定してもよい。このような構成によれば、ヘッドレスト(100)の温度が下がっている場合に、冷風が供給される運転処理までの時間を短縮できる。
【0012】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1Aは、実施形態におけるヘッドレストの模式的な斜視図であり、
図1Bは、
図1Aのヘッドレストの模式的な透視図である。
【
図3】
図3は、温度センサの温度と冷却時間との対応テーブルの一例である。
【
図4】
図4は、制御部の制御による温度センサの温度の時間変化の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1A及び
図1Bに示すヘッドレスト用冷却装置1(以下、単に「冷却装置1」ともいう。)は、乗物用シートのヘッドレスト100に取り付けられる。
【0015】
ヘッドレスト用冷却装置1は、着席者の首元に冷風を供給するように構成されている。ヘッドレスト用冷却装置1は、通気路2と、ファン3と、温度センサ4と、冷却機構5と、制御部9とを備える。
【0016】
<通気路>
通気路2は、ヘッドレスト100の内部に設けられている。通気路2は、排出口21と、第1給気口22と、第2給気口23とを有する。
【0017】
排出口21は、ヘッドレスト100の前方かつ下部に設けられている。第1給気口22は、ヘッドレスト100の左側面に設けられている。第2給気口23は、ヘッドレスト100の右側面に設けられている。
【0018】
<ファン>
ファン3は、通気路2に配置されると共に、排出運転と吸込運転とが可能である。ファン3は、例えばモータによって回転する。
【0019】
ファン3は、通気路2のうち、第1給気口22に連通する部位と、第2給気口23に連通する部位との合流部分に配置されている。本実施形態では、ファン3は、2つのプロペラを有する。
【0020】
排出運転では、ファン3は、第1給気口22及び第2給気口23から空気を吸い込んで排出口21から排出する方向に回転する。また、吸込運転では、ファン3は、排出口21から空気を吸い込んで第1給気口22及び第2給気口23から排出する方向(つまり排出運転とは逆の方向)に回転する。
【0021】
<温度センサ>
図2Aに示すように、温度センサ4は、通気路2において、排出運転時のファン3及び冷却機構5の下流側に配置されている。
【0022】
具体的には、温度センサ4は、通気路2において、冷却機構5と排出口21との間に配置されている。温度センサ4は、通気路2内部の空気の温度を検出し、制御部9に出力する。
【0023】
<冷却機構>
冷却機構5は、通気路2内の空気を冷却する。冷却機構5は、通気路2において、排出運転時のファン3の下流側に配置されている。冷却機構5としては、例えばペルチェ素子が使用できる。冷却機構5の稼働及び停止は、制御部9によって制御される。
【0024】
<制御部>
図1Bに示す制御部9は、ファン3及び冷却機構5を制御する装置である。制御部9は、例えば、プロセッサと、RAM、ROM等の記憶媒体と、入出力部とを備えるコンピュータにより構成される。制御部9は、乗物用シートに内蔵されてもよいし、乗物に搭載されるエレクトロニックコントロールユニット(ECU)に組み込まれてもよい。
【0025】
制御部9は、冷却処理と、検出処理と、運転処理とを実行するように構成されている。冷風供給開始の入力を受けると、制御部9は、まず冷却処理を開始する。また、制御部9は、冷却処理の開始に合わせて、冷却機構5を稼働させる。
【0026】
冷却処理では、制御部9は、温度センサ4が検出する温度が予め定めた閾値以上の場合にファン3に予め定めた冷却時間で吸込運転を実行させる。具体的には、制御部9は、温度センサ4が検出する温度、又は直前に実行された運転処理からの経過時間に基づいて、冷却時間を設定する。
【0027】
図3は、閾値A,B,C,Dと冷却時間α,β,Γ,Σとの対応テーブルの一例である。制御部9は、温度センサ4が検出した温度が高いほど、冷却時間を長く設定する。つまり、
図3において、A>B>C>Dかつα>β>Γ>Σである。
【0028】
また、直前に実行された運転処理(つまり冷風の供給)からの経過時間が予め定めた閾値以下(例えば10分)の場合、制御部9は、冷却時間を短く設定する。例えば、制御部9は、温度センサ4が検出した温度が
図3のCの範囲であっても、直前に実行された運転処理からの経過時間が10分以下であった場合は、冷却時間をΓよりも短いΣとする。
【0029】
図4に示すように、冷却処理Xによって、温度センサ4の出力温度(
図4の縦軸)が低下する。なお、
図4の実線は、乗物用シートが配置された室内温度が高い場合、破線は、室内温度が低い場合の温度変化の一例をそれぞれ示している。上述した検出温度と冷却時間との対応テーブルに基づいて、破線の条件での冷却処理X1の時間は、実線の条件での冷却処理Xの時間よりも短い。
【0030】
図4に示すように、検出処理Yは、冷却処理Xの後、連続して行われる。つまり、検出処理Yは、冷却処理Xの実行後、かつ運転処理Zの実行前に実行される。検出処理Yでは、制御部9は、ファン3に吸込運転Y1と排出運転Y2とを交互に実行させる。なお、
図4に示す検出処理Yのタイミングは、実線の温度変化に合わせたものであり、破線の温度変化に合わせた検出処理のタイミングは図示を省略している。
【0031】
制御部9は、検出処理Yにおける排出運転Y2の時間を直前の吸込運転Y1の時間よりも短く設定する。また、制御部9は、検出処理Yにおける排出運転時に温度センサ4が検出する温度に基づいて、検出処理Yにおける吸込運転時間を短縮する。
【0032】
具体的には、制御部9は、検出処理Yにおいて、排出運転Y2中に温度センサ4が検出した温度が切替温度Sを下回っているか判定する。切替温度Sを下回った場合、次の吸込運転Y1及び排出運転Y2の時間をそれぞれ短縮する。
【0033】
例えば
図4に示すように、1回目の排出運転Y2において切替温度Sを下回った場合、制御部9は、2回目の吸込運転Y1及び排出運転Y2それぞれの時間を、1回目の吸込運転Y1及び排出運転Y2それぞれの時間よりも短くする。なお、1回目の吸込運転Y1の時間は、例えば30秒、排出運転Y2の時間は、例えば10秒である。
【0034】
検出処理Yにおける排出運転Y2の風速(つまり風量)は、運転処理Zの風速よりも小さく設定される。検出処理Yは、吸込運転Y1及び排出運転Y2がそれぞれ一定回数繰り返されることで終了する。
【0035】
運転処理Zは、検出処理Yの後、連続して行われる。つまり、運転処理Zは、冷却処理X及び検出処理Yの実行後に実行される。運転処理Zでは、制御部9は、ファン3に排出運転を実行させる。これにより、冷却機構5によって冷却された空気が排出口21から連続的に排出される。運転処理Zは、制御部9が冷風供給停止の入力を受けるまで継続される。
【0036】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)通気路2が一定の温度以下になるまで、ファン3の吸込運転によってヘッドレスト100の内部を冷却することができる。そのため、1つの温度センサ4によって、ヘッドレスト用冷却装置1の起動時における温風の排出を抑制できる。
【0037】
(1b)冷却処理の後に検出処理が実行されることで、ヘッドレスト100の内部の温度を目標温度まで下げつつ、冷風が供給される運転処理までの時間を短縮することができる。
【0038】
(1c)検出処理における排出運転の風速が運転処理の風速よりも小さくされることで、十分に冷却されていない空気が着席者に供給されることを抑制できる。
【0039】
(1d)検出処理における排出運転時に温度センサ4が検出する温度に基づいて検出処理における吸込運転時間が短縮されることで、ヘッドレスト100の内部温度の低下に合わせて、冷風が供給される運転処理までの時間を短縮できる。
【0040】
(1e)温度センサ4が検出する温度、又は直前に実行された運転処理からの経過時間に基づいて冷却時間が設定されることで、ヘッドレスト100の温度が下がっている場合に、冷風が供給される運転処理までの時間を短縮できる。
【0041】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0042】
(2a)上記実施形態のヘッドレスト用冷却装置において、制御部は、必ずしも検出処理を実行しなくてもよい。
(2b)上記実施形態のヘッドレスト用冷却装置は、必ずしも冷却機構を備えなくてもよい。
【0043】
(2c)上記実施形態のヘッドレスト用冷却装置は、乗用車以外の自動車に用いられるシートや、自動車以外の例えば鉄道車両、船舶、航空機等の乗物に用いられるシートにも適用することができる。また、上記実施形態のヘッドレスト用冷却装置は、乗物以外の施設(例えば、映画館、劇場など)に設置されるシートに用いることもできる。
【0044】
(2d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0045】
1…ヘッドレスト用冷却装置、2…通気路、3…ファン、4…温度センサ、
5…冷却機構、9…制御部、21…排出口、22…第1給気口、23…第2給気口、
100…ヘッドレスト。