(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106676
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】ヘッドレスト用冷却装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/879 20180101AFI20240801BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20240801BHJP
A47C 7/72 20060101ALI20240801BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B60N2/879
A47C7/74 C
A47C7/72
A47C7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011066
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】門野 佑基
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084JA01
3B084JD02
3B084JG02
3B084JG06
3B087DC05
3B087DE09
(57)【要約】
【課題】温風の排出を抑制できるヘッドレスト用冷却装置を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、ヘッドレストの内部に設けられた通気路と、通気路に配置されると共に、排出運転と吸込運転とが可能なファンと、通気路において排出運転時のファンの下流側に配置されると共に、ファンの吸込運転時に音を発生させるように構成された音発生機構と、を備えるヘッドレスト用冷却装置である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレストの内部に設けられた通気路と、
前記通気路に配置されると共に、排出運転と吸込運転とが可能なファンと、
前記通気路において前記排出運転時の前記ファンの下流側に配置されると共に、前記ファンの前記吸込運転時に音を発生させるように構成された音発生機構と、
を備える、ヘッドレスト用冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドレスト用冷却装置であって、
前記音発生機構は、空気の流れ方向に延伸する複数のフィンを有し、
前記複数のフィンは、それぞれ、
前記ファンの前記排出運転時に空気を前記複数のフィンの側方に誘導する形状の第1端部と、
前記ファンの前記吸込運転時に空気が滞留する形状の第2端部と、
を有する、ヘッドレスト用冷却装置。
【請求項3】
請求項1に記載のヘッドレスト用冷却装置であって、
前記音発生機構は、前記ファンの前記吸込運転時に空気が流入する共鳴器を有する、ヘッドレスト用冷却装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のヘッドレスト用冷却装置であって、
前記ファンに前記吸込運転を実行させた後、前記ファンに前記排出運転を実行させるように構成された制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記吸込運転時の前記ファンの回転数を、前記排出運転時の前記ファンの回転数よりも大きくする、ヘッドレスト用冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドレスト用冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドレストの内部から着席者に向けて空気を送る冷却装置が公知である(特許文献1参照)。この冷却装置は、ヘッドレスト内部に配置されたファンによってヘッドレスト外部から空気を吸引し、送風を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のヘッドレスト用冷却装置では、ヘッドレスト内部に熱がこもっている場合、送風の開始時に温風がヘッドレストから排出される。そのため、着席者が不快を感じるおそれがある。
【0005】
本開示の一局面は、温風の排出を抑制できるヘッドレスト用冷却装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、ヘッドレスト(100)の内部に設けられた通気路(2)と、通気路(2)に配置されると共に、排出運転と吸込運転とが可能なファン(3)と、通気路(2)において排出運転時のファン(3)の下流側に配置されると共に、ファン(3)の吸込運転時に音を発生させるように構成された音発生機構(6)と、を備えるヘッドレスト用冷却装置(1)である。
【0007】
このような構成によれば、ファン(3)の吸込運転によってヘッドレスト(100)の内部を冷却することができる。そのため、ヘッドレスト用冷却装置(1)の起動時における温風の排出を抑制できる。また、音発生機構(6)により吸込運転時に音が発生するため、冷風が供給されるまでの間、ヘッドレスト用冷却装置(1)が正常作動していることをユーザーが認識できる。
【0008】
本開示の一態様では、音発生機構(6)は、空気の流れ方向に延伸する複数のフィン(61)を有してもよい。複数のフィン(61)は、それぞれ、ファン(3)の排出運転時に空気を複数のフィン(61)の側方に誘導する形状の第1端部(61A)と、ファン(3)の吸込運転時に空気が滞留する形状の第2端部(61B)と、を有してもよい。このような構成によれば、比較的簡潔な構成で、ヘッドレスト(100)内に音発生機構(6)を設けることができる。
【0009】
本開示の一態様では、音発生機構(6)は、ファン(3)の吸込運転時に空気が流入する共鳴器(62)を有してもよい。このような構成によっても、比較的簡潔な構成で、ヘッドレスト(100)内に音発生機構(6)を設けることができる。
【0010】
本開示の一態様は、ファン(3)に吸込運転を実行させた後、ファン(3)に排出運転を実行させるように構成された制御部(9)をさらに備えてもよい。制御部(9)は、吸込運転時のファン(3)の回転数を、排出運転時のファン(3)の回転数よりも大きくしてもよい。このような構成によれば、音発生機構(6)の発生音とファン(3)の作動音とによってヘッドレスト用冷却装置(1)の作動をユーザーに認識させることができる。
【0011】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1Aは、実施形態におけるヘッドレストの模式的な斜視図であり、
図1Bは、
図1Aのヘッドレストの模式的な透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1A及び
図1Bに示すヘッドレスト用冷却装置1(以下、単に「冷却装置1」ともいう。)は、乗物用シートのヘッドレスト100に取り付けられる。
【0014】
ヘッドレスト用冷却装置1は、着席者の首元に冷風を供給するように構成されている。ヘッドレスト用冷却装置1は、通気路2と、ファン3と、温度センサ4と、冷却機構5と、音発生機構6と、制御部9とを備える。
【0015】
<通気路>
通気路2は、ヘッドレスト100の内部に設けられている。通気路2は、排出口21と、第1給気口22と、第2給気口23とを有する。
【0016】
排出口21は、ヘッドレスト100の前方かつ下部に設けられている。第1給気口22は、ヘッドレスト100の左側面に設けられている。第2給気口23は、ヘッドレスト100の右側面に設けられている。
【0017】
<ファン>
ファン3は、通気路2に配置されると共に、排出運転と吸込運転とが可能である。ファン3は、例えばモータによって回転する。
【0018】
ファン3は、通気路2のうち、第1給気口22に連通する部位と、第2給気口23に連通する部位との合流部分に配置されている。本実施形態では、ファン3は、2つのプロペラを有する。
【0019】
排出運転では、ファン3は、第1給気口22及び第2給気口23から空気を吸い込んで排出口21から排出する方向に回転する。また、吸込運転では、ファン3は、排出口21から空気を吸い込んで第1給気口22及び第2給気口23から排出する方向(つまり排出運転とは逆の方向)に回転する。
【0020】
<温度センサ>
図2Aに示すように、温度センサ4は、通気路2において、排出運転時のファン3及び冷却機構5の下流側、かつ音発生機構6の上流側に配置されている。
【0021】
具体的には、温度センサ4は、通気路2において、冷却機構5と音発生機構6との間に配置されている。温度センサ4は、通気路2内部の空気の温度を検出し、制御部9に出力する。
【0022】
<冷却機構>
冷却機構5は、通気路2内の空気を冷却する。冷却機構5は、通気路2において、排出運転時のファン3の下流側に配置されている。冷却機構5としては、例えばペルチェ素子が使用できる。冷却機構5の稼働及び停止は、制御部9によって制御される。
【0023】
<音発生機構>
音発生機構6は、通気路2において、排出運転時のファン3の下流側に配置されている。具体的には、音発生機構6は、排出口21と冷却機構5との間に配置されている。
【0024】
音発生機構6は、ファン3の排出運転時に発生する音よりも大きい音を、ファン3の吸込運転時に発生させるように構成されている。音発生機構6は、複数のフィン61と、第1共鳴器62と、第2共鳴器63とを有する。
【0025】
図3に示すように、複数のフィン61は、空気の流れ方向にそれぞれ延伸している。複数のフィン61は、空気の流れ方向と直交する方向に間隔を設けて並べられている。空気は、隣接する2つのフィン61の間のスリット、又はフィン61と通気路2の壁との間のスリットをフィン61の長手方向に沿って流れる。
【0026】
なお、
図3では、図中上方にファン3が配置されている。したがって、ファン3が排出運転時には、図中の下に向かって空気が流れ、ファン3が吸込運転時には、図中の上に向かって空気が流れる。また、フィン61は、通気路2内への異物の侵入を抑制する柵としても機能する。
【0027】
フィン61は、第1端部61Aと、第2端部61Bとを有する。第1端部61Aは、フィン61の長手方向の端部のうち、ファン3に近い側の端部である。第2端部61Bは、第1端部61Aとは反対側の(つまり、排出口21に近い)端部である。
【0028】
図4Aに示すように、第1端部61Aには、ファン3の排出運転時に空気が衝突する。第1端部61Aは、空気を複数のフィン61の側方に誘導する形状を有する。具体的には、第1端部61Aは、先端に向かうに連れて幅が小さくなるように湾曲している。そのため、第1端部61Aに衝突した空気は、2つのフィン61の間のスリット、又はフィン61と通気路2の壁との間のスリットに誘導される。
【0029】
図4Bに示すように、第2端部61Bには、ファン3の吸込運転時に空気が衝突する。第2端部61Bは、空気が滞留する(つまり乱流を発生させる)形状を有する。具体的には、第2端部61Bは、空気の流れ方向と直交する平面を有する。第2端部61Bにおける空気の滞留により、排出運転時よりも大きな気流音が音発生機構6で発生する。
【0030】
図5Aに示すように、第2端部61Bは、第1端部61Aに向けて凹むように湾曲していてもよい。また、
図5B及び
図5Cに示すように、第1端部61Aは、先端に向かって連続的に幅が減少してもよい。つまり、フィン61は、楔形状であってもよい。
【0031】
図3に示す第1共鳴器62及び第2共鳴器63は、ファン3の吸込運転時に空気が流入することで共鳴音を発生させるように構成されている。第1共鳴器62は、通気路2の壁のうち、フィン61と対向する部分に配置されている。第2共鳴器63は、第1共鳴器62とは反対側において、通気路2の壁のうち、フィン61と対向する部分に配置されている。
【0032】
図6に示すように、第1共鳴器62は、通路62Aと、本体62Bと、ガイド壁62Cとを有する。通路62Aは、通気路2の壁から外側に延伸している。本体62Bは、通路62Aと連通した容器である。本体62Bは、通路62Aから内部に進入した空気を共振させる。
【0033】
ガイド壁62Cは、ファン3の吸込運転時に空気が衝突する位置に設けられている。また、ガイド壁62Cは、通路62Aと連続して設けられている。そのため、ガイド壁62Cに衝突した空気は、通路62Aへと誘導される。
【0034】
通気路2は、ガイド壁62Cを境界として、ファン3に近い領域(つまり排出運転時の上流領域)が、排出口21に近い領域(つまり排出運転時の下流領域)に対して縮径している。そのため、ファン3の排出運転時では、空気はガイド壁62Cに衝突しない。なお、第2共鳴器63の構成は、第1共鳴器62と同じである。
【0035】
<制御部>
図1Bに示す制御部9は、ファン3及び冷却機構5を制御する装置である。制御部9は、例えば、プロセッサと、RAM、ROM等の記憶媒体と、入出力部とを備えるコンピュータにより構成される。制御部9は、乗物用シートに内蔵されてもよいし、乗物に搭載されるエレクトロニックコントロールユニット(ECU)に組み込まれてもよい。
【0036】
制御部9は、冷却処理と、運転処理とを実行するように構成されている。冷風供給開始の入力を受けると、制御部9は、まず冷却処理を開始する。また、制御部9は、冷却処理の開始に合わせて、冷却機構5を稼働させる。
【0037】
冷却処理では、制御部9は、温度センサ4が検出する温度が予め定めた閾値以上の場合にファン3に予め定めた冷却時間で吸込運転を実行させる。具体的には、制御部9は、温度センサ4が検出する温度に基づいて、冷却時間を設定する。
【0038】
運転処理は、冷却処理の実行後に実行される。運転処理では、制御部9は、ファン3に排出運転を実行させる。これにより、冷却機構5によって冷却された空気が排出口21から連続的に排出される。運転処理は、制御部9が冷風供給停止の入力を受けるまで継続される。
【0039】
制御部9は、吸込運転時のファン3の回転数を、排出運転時のファン3の回転数よりも大きくする。吸込運転時の回転数は、例えば、排出運転時の回転数の1.3倍とすることができる。これにより、吸込運転時のファン3の駆動音が、排出運転時のファン3の駆動音よりも大きくなる。
【0040】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)ファン3の吸込運転によってヘッドレスト100の内部を冷却することができる。そのため、ヘッドレスト用冷却装置1の起動時における温風の排出を抑制できる。また、音発生機構6により吸込運転時に音が発生するため、冷風が供給されるまでの間、ヘッドレスト用冷却装置1が正常作動していることをユーザーが認識できる。
【0041】
(1b)第1端部61Aと第2端部61Bとを有する複数のフィン61によって、比較的簡潔な構成で、ヘッドレスト100内に音発生機構6を設けることができる。
(1c)共鳴器62,63によっても、比較的簡潔な構成で、ヘッドレスト100内に音発生機構6を設けることができる。
【0042】
(1d)吸込運転時のファン3の回転数が排出運転時のファン3の回転数よりも大きくされることで、音発生機構6の発生音とファン3の作動音とによってヘッドレスト用冷却装置1の作動をユーザーに認識させることができる。
【0043】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0044】
(2a)上記実施形態のヘッドレスト用冷却装置において、制御部は、必ずしも吸込運転時のファンの回転数を排出運転時のファンの回転数よりも大きくしなくてもよい。例えば、それぞれの回転数は同じであってもよい。
【0045】
(2b)上記実施形態のヘッドレスト用冷却装置において、音発生機構は、複数のフィン及び共鳴器のうち一方を有しなくてもよい。
(2c)上記実施形態のヘッドレスト用冷却装置は、必ずしも冷却機構を備えなくてもよい。
【0046】
(2d)上記実施形態のヘッドレスト用冷却装置は、乗用車以外の自動車に用いられるシートや、自動車以外の例えば鉄道車両、船舶、航空機等の乗物に用いられるシートにも適用することができる。また、上記実施形態のヘッドレスト用冷却装置は、乗物以外の施設(例えば、映画館、劇場など)に設置されるシートに用いることもできる。
【0047】
(2e)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0048】
1…ヘッドレスト用冷却装置、2…通気路、3…ファン、4…温度センサ、
5…冷却機構、6…音発生機構、9…制御部、21…排出口、22…第1給気口、
23…第2給気口、61…フィン、61A…第1端部、61B…第2端部、
62…第1共鳴器、62A…通路、62B…本体、62C…ガイド壁、
63…第2共鳴器、100…ヘッドレスト。