(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010668
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】排気浄化フィルタ、排気浄化装置、および放射性粉塵の除去システム
(51)【国際特許分類】
G21F 9/02 20060101AFI20240117BHJP
G21F 9/28 20060101ALI20240117BHJP
B01D 46/52 20060101ALI20240117BHJP
B01D 39/12 20060101ALI20240117BHJP
B01D 39/14 20060101ALI20240117BHJP
B01D 46/682 20220101ALI20240117BHJP
【FI】
G21F9/02 551E
G21F9/28 511Z
G21F9/02 551B
G21F9/02 501Z
B01D46/52 C
B01D39/12
B01D39/14 C
B01D46/682
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112906
(22)【出願日】2023-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2022112020
(32)【優先日】2022-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1)1回目 ▲1▼頒布日 令和4年4月15日 ▲2▼刊行物 パンフレット(題名:円筒型逆洗式SUSフィルター) 2)2回目 ▲1▼頒布日 令和4年5月12日 ▲2▼刊行物 パンフレット(題名:円筒型逆洗式SUSフィルター) 3)3回目 ▲1▼頒布日 令和4年5月19日 ▲2▼刊行物 パンフレット(題名:円筒型逆洗式SUSフィルター) 4)4回目 ▲1▼頒布日 令和4年6月14日 ▲2▼刊行物 パンフレット(題名:円筒型逆洗式SUSフィルター)
(71)【出願人】
【識別番号】390018474
【氏名又は名称】新日本空調株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506356427
【氏名又は名称】日進技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤芳 正司
(72)【発明者】
【氏名】須磨 恵太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正昭
(72)【発明者】
【氏名】阿部 和博
(72)【発明者】
【氏名】尾形 達也
【テーマコード(参考)】
4D019
4D058
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BA02
4D019BB02
4D019CA02
4D019CA03
4D019CB03
4D019CB06
4D019CB09
4D058JA10
4D058JB03
4D058JB24
4D058JB39
4D058LA01
4D058MA15
4D058MA17
4D058SA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】放射性粉塵からの放射線によって劣化しづらい排気浄化フィルタを提供する。
【解決手段】作業エリア2で発生した放射性粉塵を含む排気EHから放射性粉塵を除去する排気浄化フィルタ7であって、排気浄化フィルタ7は筒形状であり、排気EHが排気浄化フィルタ7の外側から内側に通過する過程で、排気EH中の放射性粉塵が排気浄化フィルタ7に捕捉され、浄化された排気PEHが排気浄化フィルタ7の筒内を通って排気浄化フィルタ7の外に排出される構成とされ、排気浄化フィルタ7はメインフィルタを有し、メインフィルタは金属繊維のシートを含み、排気浄化フィルタ7は洗浄可能であり、排気浄化フィルタ7を洗浄する段階で、排気浄化フィルタ7の筒内に噴射される圧縮空気が排気浄化フィルタ7の内側から外側へ通過し、その過程で排気浄化フィルタ7が捕捉している放射性粉塵を排気浄化フィルタ7の外側に吹き落とす構成である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業エリアで発生した放射性粉塵を含む排気から放射性粉塵を除去する排気浄化フィルタであって、
前記排気浄化フィルタは筒形状であり、前記排気が前記排気浄化フィルタの外側から内側に通過する過程で、前記排気中の放射性粉塵が前記排気浄化フィルタに捕捉され、浄化された排気が前記排気浄化フィルタの筒内を通って前記排気浄化フィルタの外に排出される構成とされ、
前記排気浄化フィルタはメインフィルタを有し、
前記メインフィルタは金属繊維のシートを含み、
前記排気浄化フィルタは洗浄可能であり、
前記排気浄化フィルタを洗浄する段階で、前記排気浄化フィルタの筒内に噴射される圧縮空気が前記排気浄化フィルタの内側から外側へ通過し、その過程で前記排気浄化フィルタが捕捉している放射性粉塵を前記排気浄化フィルタの外側に吹き落とす構成である、
ことを特徴とする排気浄化フィルタ。
【請求項2】
前記排気浄化フィルタは前記メインフィルタの形状を保持する形状保持手段を有し、
前記形状保持手段は金属メッシュ部材を含み、
前記排気浄化フィルタは、平坦な前記メインフィルタの表側および裏側に、または平坦な前記メインフィルタの表側もしくは裏側に、平坦な前記形状保持手段を積層し、その積層体を蛇腹状に折り曲げてそれを筒状に形成したものである請求項1記載の排気浄化フィルタ。
【請求項3】
前記メインフィルタは、
前記排気浄化フィルタの外側に位置する表層と、前記排気浄化フィルタの内側に位置する裏層と、前記表層と前記裏層の間に位置する中間層を有する積層構造からなり、
前記表層および前記裏層の金属繊維の繊維径が、前記中間層の金属繊維の繊維径よりも大きい請求項1記載の排気浄化フィルタ。
【請求項4】
前記メインフィルタは複数の層からなり、
前記排気浄化フィルタの外側に位置する層の金属繊維の繊維径が、前記排気浄化フィルタの内側に位置する層の繊維径よりも大きい請求項1記載の排気浄化フィルタ。
【請求項5】
作業エリアで発生した放射性粉塵を含む排気から放射性粉塵を除去する排気浄化フィルタを備えた排気浄化装置であって、
前記排気浄化フィルタは筒形状であり、前記排気が前記排気浄化フィルタの外側から内側に通過する過程で、前記排気中の放射性粉塵が前記排気浄化フィルタに捕捉され、浄化された排気が前記排気浄化フィルタの筒内を通って前記排気浄化フィルタの外に排出される構成とされ、
前記排気浄化フィルタはメインフィルタを有し、
前記メインフィルタは金属繊維のシートを含み、
前記排気浄化フィルタは洗浄可能であり、
前記排気浄化フィルタを洗浄する段階で、前記排気浄化フィルタの筒内に噴射された圧縮空気が前記排気浄化フィルタの内側から外側へ通過する過程で、前記排気浄化フィルタが捕捉している放射性粉塵を前記排気浄化フィルタの外側に吹き落とす構成である、
ことを特徴とする排気浄化装置。
【請求項6】
前記排気浄化装置は、
前記排気浄化フィルタの筒内に圧縮空気を噴射する噴射部を有し、
前記噴射部は噴射ノズルを有し、
前記噴射ノズルの軸方向が前記排気浄化フィルタの軸方向と同じである、請求項5記載の排気浄化装置。
【請求項7】
前記排気浄化装置は、
その内部空間を複数の小空間に仕切る仕切り壁と、
前記排気浄化フィルタの筒内に圧縮空気を噴射する噴射部と、を有し、
前記排気浄化フィルタは、前記仕切り壁によって形成された複数の前記小空間にそれぞれ配置されており、
前記仕切り壁は、
一部の前記小空間の内部に配置された前記排気浄化フィルタに対して前記噴射部から噴射された前記圧縮気体が、隣接する他の前記小空間の内部に配置された前記排気浄化フィルタに直接衝突することを妨げるものである請求項5記載の排気浄化装置。
【請求項8】
前記排気浄化装置には取り付け板が設けられ、
前記排気浄化フィルタを支持する筐体を有し、
前記筐体は、前記排気浄化フィルタが固定される上板部と、前板部と、前板部に対して間隔を空けて配される後板部と、前板部と後板部との側部を連結する側板部とを有し、前板部の上端縁、後板部の上端縁及び側板部の上端縁のそれぞれが上板部と連結する下部開放の箱形をなすものであり、
前記筐体が前記取り付け板に固定される、
請求項5記載の排気浄化装置。
【請求項9】
前記筐体の内部空間は、
截頭錐体の形状をなし、前記前板部の下端縁と、前記後板部の下端縁と、前記側板部の下端縁とで構成される周長を截頭錐体の下面の周長とし、上板部の周長を截頭錐体の上面の周長としたときに、
前記前板部の下端縁と、前記後板部の下端縁と、前記側板部の下端縁とで構成される周長が、上板部の周長よりも長いものとなっている、
請求項8記載の排気浄化装置。
【請求項10】
前記排気浄化フィルタが支持された前記筐体は、カートリッジ式構造となっており、前記取り付け板に取り付け及び取り外し可能に固定され、
前記筐体は、前記排気浄化装置のケーシングから出し入れ可能とされるものである、
請求項8記載の排気浄化装置。
【請求項11】
作業エリアで発生した放射性粉塵を含む排気から放射性粉塵を除去する排気浄化フィルタを備えた排気浄化装置と、
前記排気浄化装置から排出される浄化排気に残存する放射性粉塵を除去する残塵除去装置と、を有し、
前記排気浄化フィルタは筒形状であり、前記排気が前記排気浄化フィルタの外側から内側に通過する過程で、前記排気中の放射性粉塵が前記排気浄化フィルタに捕捉され、浄化された排気が前記排気浄化フィルタの筒内を通って前記排気浄化フィルタの外に排出される構成とされ、
前記排気浄化フィルタはメインフィルタを有し、
前記メインフィルタは金属繊維のシートを含み、
前記排気浄化フィルタは洗浄可能であり、
前記排気浄化フィルタを洗浄する段階で、前記排気浄化フィルタの筒内に噴射された圧縮空気が前記排気浄化フィルタの内側から外側へ通過する過程で、前記排気浄化フィルタが捕捉している放射性粉塵を前記排気浄化フィルタの外側に吹き落とす構成であり、
前記残塵除去装置は、
前記浄化排気に残存する粒径が0.3μmの粉塵に対して99.97%以上の粒子捕集率を有する残塵除去フィルタを有する、
ことを特徴とする放射性粉塵の除去システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気中の放射性粉塵を除去して浄化された排気を得るために用いる排気浄化フィルタ、前記排気浄化フィルタを備えた排気浄化装置、および前記排気浄化装置を備えた放射性粉塵の除去システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所及び原子力施設の廃炉作業においては大量の放射性粉塵(放射能を含む粉塵、放射線を帯びた粉塵のことをいう。以下、同じ。)が発生する。大量の放射性粉塵は廃炉作業員の被曝や、廃炉作業エリア外への放射能汚染拡大のおそれに繋がる。そのため、作業エリア内の放射性粉塵の濃度を低減させることが必要になる。それとともに、作業エリア内を負圧に保持して、作業エリア内から作業エリア外に放射性物質が漏洩することを防止する必要もある。
【0003】
このような現場においては微細な放射性粉塵を除去する高性能フィルタ(例えばHEPAフィルタ)を搭載した濾過装置を用いることが好ましい。しかし、この高性能フィルタは様々な大きさの粉塵を処理するため目が詰まりやすく、頻繁に交換しなければならない。そのため、結果的に放射性廃棄物を増やしてしまうことになる。大量の放射性粉塵を捕捉した高性能フィルタに人が近づくことは被曝の観点からも問題があるため、フィルタの交換頻度を最小限度にすることが望まれる。
【0004】
排気中の放射性粉塵を除去する技術としては、下記特許文献1および2に開示されたものがある。
【0005】
特許文献1に開示された二次生成物回収処理システムは、解体環境エリアに設けられた局所排風囲いと、この局所排風囲いで回収された二次生成物をろ過して回収するフィルタと、このフィルタの出口側に接続した排気ファンと、この排気ファンからの排気を前記解体環境エリアへ戻し循環させる循環ラインとを具備したことを特徴としている。このシステムの効果として、解体部位から発生する二次生成物を効率的に回収することができること、また、排気を閉鎖系の回収システムで処理することにより、外部に排気を出すことなく、安全性が向上すること、などが示されている。
【0006】
特許文献2に開示された粉塵用カートリッジフィルタは、中空筒状のフィルタ本体部と板状のプレフィルタ部とを組み合わせ、濾過面積を大きくしてフィルタの長寿命化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-185794号公報
【特許文献2】特開2000-300926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の二次生成物回収処理システムでは、循環ラインの前段に設けるフィルタとして、どのような種類のフィルタを用いるのかが明らかにされていない。仮に、このフィルタとしてポリエステル樹脂などからなる一般的なフィルタを用いると、放射線に対する耐性が低く、劣化しやすい。
【0009】
また、解体環境エリアからの排気中に鋭利な微粉などが含まれていると、この微粉等によってフィルタが破損するおそれがあるため、この点からもフィルタの交換頻度が多くなるという問題がある。
【0010】
また、解体環境エリアからの排気中に含まれる粉塵の種類によっては(例えば排気中に溶断やグラインダ等による切断をしたときの火花が含まれている場合)、フィルタが燃えて火災が発生するおそれもあった。
【0011】
特許文献2の粉塵用カートリッジフィルタにおいては、中空筒状のフィルタ本体部のフィルタとして、ガラス繊維濾紙の両面を支持媒体(ポリエステル樹脂)で挟んだものを用いている。また、板状のプレフィルタ部として不織布が用いられている。
【0012】
しかし、特許文献2のようなポリエステル樹脂などを用いられたフィルタは、前記特許文献1と同様の問題がある。すなわち、放射線による劣化のおそれ、鋭利な微粉による破損のおそれ、火災発生のおそれという種々の問題があった。
【0013】
そこで、本発明の目的は、作業エリアで発生した放射性粉塵を含む排気から放射性粉塵を除去する排気浄化フィルタであって、前記放射性粉塵からの放射線によって劣化しづらい排気浄化フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
【0015】
(第一の態様)
作業エリアで発生した放射性粉塵を含む排気から放射性粉塵を除去する排気浄化フィルタであって、
前記排気浄化フィルタは筒形状であり、前記排気が前記排気浄化フィルタの外側から内側に通過する過程で、前記排気中の放射性粉塵が前記排気浄化フィルタに捕捉され、浄化された排気が前記排気浄化フィルタの筒内を通って前記排気浄化フィルタの外に排出される構成とされ、
前記排気浄化フィルタはメインフィルタを有し、
前記メインフィルタは金属繊維のシートを含み、
前記排気浄化フィルタは洗浄可能であり、
前記排気浄化フィルタを洗浄する段階で、前記排気浄化フィルタの筒内に噴射される圧縮空気が前記排気浄化フィルタの内側から外側へ通過し、その過程で前記排気浄化フィルタが捕捉している放射性粉塵を前記排気浄化フィルタの外側に吹き落とす構成である、
ことを特徴とする排気浄化フィルタ。
【0016】
(作用効果)
排気浄化フィルタのメインフィルタが金属繊維のシートを含むため、排気浄化フィルタが排気中の放射性粉塵から放射される放射線によって劣化しづらい。
【0017】
また、放射性粉塵が付着した排気浄化フィルタの交換作業には被曝のおそれがあることから、できる限り排気浄化フィルタを交換しないようにすることが好ましいが、第一の態様の排気浄化フィルタであれば、その交換頻度を少なくすることができる。すなわち、第一の態様の排気浄化フィルタであれば、放射性粉塵などが排気浄化フィルタに大量に付着し、排気浄化フィルタによる浄化能力が落ちた場合であっても、圧縮気体を用いた逆洗を行って排気浄化フィルタを再生することができるため、放射性粉塵などが排気浄化フィルタに大量に付着するたびに排気浄化フィルタを交換しなくても良くなり、排気浄化フィルタのフィルタ交換を長期間行う必要がなくなる。そのため、排気浄化フィルタの交換作業に伴う作業員の被曝や、放射能廃棄物(使用済の排気浄化フィルタ)が大量に発生することを防ぐことができる。また、フィルタの交換に伴う排気の浄化処理の停止や、排気浄化フィルタの交換・廃棄に係るコストの低減を図ることもできる。
【0018】
なお、排気浄化フィルタを洗浄する際、圧縮気体を排気浄化フィルタの外側に当てて洗浄するよりも、圧縮気体を排気浄化フィルタの内側に当てて洗浄する方が、排気浄化フィルタに付着した放射性廃棄物の除去効果が高いことが分かった。そのため、第一の態様のように、排気浄化フィルタをいわゆる逆洗することにより、より長い間、排気浄化フィルタを交換しなくても良いという利点がある。
【0019】
さらに、作業エリアからの排気中に鋭利な微粉などが含まれていたとしても、排気浄化フィルタのメインフィルが金属繊維のシートを含むため、当該微粉によって排気浄化フィルタが破損しづらい。また、作業エリアからの排気中に火災の原因となる火花等が含まれていたとしても、排気浄化フィルタのメインフィルが金属繊維のシートを含むため、火災が発生しづらい。
【0020】
(第二の態様)
前記排気浄化フィルタは前記メインフィルタの形状を保持する形状保持手段を有し、
前記形状保持手段は金属メッシュ部材を含み、
前記排気浄化フィルタは、平坦な前記メインフィルタの表側および裏側に、または平坦な前記メインフィルタの表側もしくは裏側に、平坦な前記形状保持手段を積層し、その積層体を蛇腹状に折り曲げてそれを筒状に形成したものである前記第一の態様の排気浄化フィルタ。
【0021】
(作用効果)
第二の態様では、排気浄化フィルタの構成について、平坦なメインフィルタの表側および裏側に、または平坦なメインフィルタの表側もしくは裏側に、金属メッシュ部材を含む形状保持手段を積層した。このような構成にしたことで、金属繊維のシートを含むメインフィルタの形状保持が容易になる。すなわち、金属繊維のシートのみでは形状保持が困難であるため、第二の態様のように、金属メッシュ部材を含む形状保持手段を積層することが好ましい。また、金属メッシュ部材を含む形状保持手段を設けることにより、排気浄化フィルタの強度を強くすることができるため、結果として、排気浄化フィルタの逆洗時に排気浄化フィルタにかかる圧力(圧縮気体による圧力)に耐えやすくなる。
【0022】
また、金属メッシュ部材を含む形状保持手段を設けない場合、金属繊維のシートを蛇腹状に成形することが難しい。また仮に金属繊維のシートを蛇腹状に成形できたとしても、形態安定性に乏しく、蛇腹形状を維持することも難しい。排気浄化フィルタに金属メッシュ部材を含む形状保持手段を用いることで、金属繊維のシートを蛇腹状に成形し、かつその蛇腹形状を維持することができる。
【0023】
なお、排気浄化フィルタを蛇腹形状にすることで濾過面積が増えるため、排気浄化フィルタを収納する容器(排気浄化装置の容器)を大型化することなく、単位時間当たりの排気浄化処理量を増やすことができるという利点がある。
【0024】
(第三の態様)
前記メインフィルタは、
前記排気浄化フィルタの外側に位置する表層と、前記排気浄化フィルタの内側に位置する裏層と、前記表層と前記裏層の間に位置する中間層を有する積層構造からなり、
前記表層および前記裏層の金属繊維の繊維径が、前記中間層の金属繊維の繊維径よりも大きい前記第一の態様の排気浄化フィルタ。
【0025】
(作用効果)
メインフィルタを表層、中間層、裏層の積層構造とし、表層および前記裏層の金属繊維の繊維径を中間層の金属繊維の繊維径よりも大きくした。この場合、繊維径が小さい中間層の金属繊維が放射性粉塵等を最もよく除去することができるが、繊維径が小さいため強度が弱いという欠点がある。そこで、この中間層の金属繊維よりも繊維径の大きい金属繊維からなる表層と裏層を設けることで、中間層の繊維の弱さを表層と裏層の繊維の強さで補うことができる。その結果、メインフィルタを単層にした場合(この単層を構成する金属繊維の繊維径は前記中間層の金属繊維と同じ繊維径を想定)と比べて、メインフィルタの強度を高めることができ、メインフィルタの形状安定性を高めることができるほか、排気浄化フィルタの逆洗時に排気浄化フィルタにかかる圧力(圧縮気体による圧力)に耐えやすくなる。特に、逆洗時においてメインフィルタの裏層に最も圧縮気体の圧力がかかるところ、当該裏層の耐圧を高めておくことにより、圧縮気体によるメインフィルタの損傷を防ぐことができる。
【0026】
また、メインフィルタの外側に位置する層の金属繊維径が大きいと、当該メインフィルタの外側に位置する層の金属繊維径が小さい場合と比べて、逆洗時に、当該メインフィルタの外側に位置する層の空隙に捕捉された放射性粉塵等をメインフィルタの外側に吹き飛ばしやすくなる。そのため、逆洗時の洗浄効果が高くなるという利点もある。
【0027】
さらに、メインフィルタを積層構造にすることで、メインフィルタを複数個製造する際のメインフィルタごとの性能のバラつきを少なくすることができ、メインフィルタの性能を安定させることができる。
【0028】
なお、第二の態様のように、前記メインフィルタの外側や内側に形状保持手段を設け、逆洗時の圧縮気体の圧力に耐えられるように、排気浄化フィルタの耐圧をさらに高めてもよい。
【0029】
(第四の態様)
前記メインフィルタは複数の層からなり、
前記排気浄化フィルタの外側に位置する層の金属繊維の繊維径が、前記排気浄化フィルタの内側に位置する層の繊維径よりも大きい前記第一の態様の排気浄化フィルタ。
【0030】
(作用効果)
メインフィルタの外側に位置する層の金属繊維径が大きいと、当該メインフィルタの外側に位置する層の金属繊維径が小さい場合と比べて、逆洗時に、当該メインフィルタの外側に位置する層の空隙に捕捉された放射性粉塵等をメインフィルタの外側に吹き飛ばしやすくなる。そのため、逆洗時の洗浄効果が高くなるという利点がある。
【0031】
(第五の態様)
作業エリアで発生した放射性粉塵を含む排気から放射性粉塵を除去する排気浄化フィルタを備えた排気浄化装置であって、
前記排気浄化フィルタは筒形状であり、前記排気が前記排気浄化フィルタの外側から内側に通過する過程で、前記排気中の放射性粉塵が前記排気浄化フィルタに捕捉され、浄化された排気が前記排気浄化フィルタの筒内を通って前記排気浄化フィルタの外に排出される構成とされ、
前記排気浄化フィルタはメインフィルタを有し、
前記メインフィルタは金属繊維のシートを含み、
前記排気浄化フィルタは洗浄可能であり、
前記排気浄化フィルタを洗浄する段階で、前記排気浄化フィルタの筒内に噴射された圧縮空気が前記排気浄化フィルタの内側から外側へ通過する過程で、前記排気浄化フィルタが捕捉している放射性粉塵を前記排気浄化フィルタの外側に吹き落とす構成である、
ことを特徴とする排気浄化装置。
【0032】
(作用効果)
前記第五の態様によれば、前記第一の態様と同様の作用効果を奏する。
【0033】
(第六の態様)
前記排気浄化装置は、
前記排気浄化フィルタの筒内に圧縮空気を噴射する噴射部を有し、
前記噴射部は噴射ノズルを有し、
前記噴射ノズルの軸方向が前記排気浄化フィルタの軸方向と同じである、前記第五の態様の排気浄化装置。
【0034】
(作用効果)
噴射ノズルの軸方向を排気浄化フィルタの軸方向(筒の高さ方向)と同じにすることで、噴射ノズルから噴射された気体がその勢いをほとんど落とすことなく排気浄化フィルタの内部へ至るため、排気浄化フィルタの洗浄効果が高いという利点がある。噴射ノズルの軸方向を排気浄化フィルタの軸方向と直角にした場合よりも、洗浄効果(排気浄化フィルタの外面に付着した放射性粉塵を払い落とす効果)が高い。
【0035】
(第七の態様)
前記排気浄化装置は、
その内部空間を複数の小空間に仕切る仕切り壁と、
前記排気浄化フィルタの筒内に圧縮空気を噴射する噴射部と、を有し、
前記排気浄化フィルタは、前記仕切り壁によって形成された複数の前記小空間にそれぞれ配置されており、
前記仕切り壁は、
一部の前記小空間の内部に配置された前記排気浄化フィルタに対して前記噴射部から噴射された前記圧縮気体が、隣接する他の前記小空間の内部に配置された前記排気浄化フィルタに直接衝突することを妨げるものである前記第五の態様の排気浄化装置。
【0036】
(作用効果)
第七の態様では、排気浄化装置内に仕切り壁を設けた。この仕切り壁によって、一部の小空間の内部に配置された排気浄化フィルタに対して噴射部から噴射された圧縮気体が、隣接する他の小空間の内部に配置された排気浄化フィルタに直接衝突することを妨げることができる。その結果、一部の小空間に配置された排気浄化フィルタを逆洗する際に用いた圧縮気体が、他の小空間に配置された排気浄化フィルタに衝突し、当該他の小空間に配置された排気浄化フィルタによる排ガスの浄化処理に悪影響を与えることを防ぐことができる。
【0037】
(第八の態様)
前記排気浄化装置には取り付け板が設けられ、
前記排気浄化フィルタを支持する筐体を有し、
前記筐体は、前記排気浄化フィルタが固定される上板部と、前板部と、前板部に対して間隔を空けて配される後板部と、前板部と後板部との側部を連結する側板部とを有し、前板部の上端縁、後板部の上端縁及び側板部の上端縁のそれぞれが上板部と連結する下部開放の箱形をなすものであり、
前記筐体が前記取り付け板に固定される前記第五の態様の排気浄化装置。
【0038】
(作用効果)
逆洗する段階では、噴射された圧縮気体の圧力で排気浄化フィルタにおける外面に付着していた放射性粉塵が排気浄化フィルタの外側に噴き飛ばされることになるが、筐体が備わっていることで、噴き飛ばされた放射性粉塵の多くが筐体の内壁内で飛散し、そのまま落下することになる。したがって、排気洗浄装置内の下部に溜まった放射性粉塵を容易に回収することができる。
【0039】
(第九の態様)
前記筐体の内部空間は、
截頭錐体の形状をなし、前記前板部の下端縁と、前記後板部の下端縁と、前記側板部の下端縁とで構成される周長を截頭錐体の下面の周長とし、上板部の周長を截頭錐体の上面の周長としたときに、
前記前板部の下端縁と、前記後板部の下端縁と、前記側板部の下端縁とで構成される周長が、上板部の周長よりも長いものとなっている前記八の態様の排気浄化装置。
【0040】
(作用効果)
筐体の内部空間が前記形状となっていると、放射性粉塵が筐体の内壁に付着しづらく、容易に落下するため、回収が容易であるし、長期的運転にも資する。
【0041】
(第十の態様)
前記排気浄化フィルタが支持された前記筐体は、カートリッジ式構造となっており、前記取り付け板に取り付け及び取り外し可能に固定され、
前記筐体は、前記排気浄化装置のケーシングから出し入れ可能とされるものである、
【0042】
(作用効果)
排気浄化フィルタがカードリッジ式構造となっているので、排気浄化装置のうち排気浄化フィルタに捕捉された粉塵が、排気浄化フィルタ内に溜まり、排気浄化フィルタの圧力損失が大きくなった時に、交換ができる。
【0043】
(第十一の態様)
作業エリアで発生した放射性粉塵を含む排気から放射性粉塵を除去する排気浄化フィルタを備えた排気浄化装置と、
前記排気浄化装置から排出される浄化排気に残存する放射性粉塵を除去する残塵除去装置と、を有し、
前記排気浄化フィルタは筒形状であり、前記排気が前記排気浄化フィルタの外側から内側に通過する過程で、前記排気中の放射性粉塵が前記排気浄化フィルタに捕捉され、浄化された排気が前記排気浄化フィルタの筒内を通って前記排気浄化フィルタの外に排出される構成とされ、
前記排気浄化フィルタはメインフィルタを有し、
前記メインフィルタは金属繊維のシートを含み、
前記排気浄化フィルタは洗浄可能であり、
前記排気浄化フィルタを洗浄する段階で、前記排気浄化フィルタの筒内に噴射された圧縮空気が前記排気浄化フィルタの内側から外側へ通過する過程で、前記排気浄化フィルタが捕捉している放射性粉塵を前記排気浄化フィルタの外側に吹き落とす構成であり、
前記残塵除去装置は、
前記浄化排気に残存する粒径が0.3μmの粉塵に対して99.97%以上の粒子捕集率を有する残塵除去フィルタを有する、
ことを特徴とする放射性粉塵の除去システム。
【0044】
(作用効果)
第十二の態様の放射性粉塵の除去システムによれば、前記第一の態様と同様の作用効果を有する。
【0045】
また、浄化排気に残存する粒径が0.3μmの粉塵に対して99.97%以上の粒子捕集率を有する残塵除去フィルタを用いることで、残塵除去フィルタを通過した後の浄化排気中に、放射性粉塵がほとんど見られなくなるという利点がある。
【0046】
さらに、残塵除去フィルタの前段に排気浄化フィルタを設け、この排気浄化フィルタにより排気中に存在する放射性粉塵の大部分を捕捉することで、残塵除去フィルタの交換頻度を低減させることができる。その結果、残塵除去フィルタの交換・廃棄に係るコストを低減することができる。
【0047】
なお、排気浄化フィルタから排出された浄化排気を作業エリアに返送しないようにすることが好ましい。作業エリアに浄化排気を返送すると、返送された浄化排気中に残存する放射性粉塵から放射される放射線により、作業エリア内の機械が故障したり、作業エリア内で作業している作業員が被曝したりするおそれがある。浄化排気を作業エリアに返送しないことで、このような不都合を防ぐことができる。ただし、残塵除去フィルタを通過した浄化排気は清浄な空気であり、この浄化排気中には放射性粉塵がほとんど含まれていないため、浄化排気を作業エリアに返送しても差し支えない。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、作業エリアで発生した放射性粉塵を含む排気から放射性粉塵を除去する排気浄化フィルタであって、前記放射性粉塵からの放射線によって劣化しづらい排気浄化フィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本発明にかかる放射性粉塵の除去システムを示した概略図である。
【
図2】放射性粉塵の除去システムの排気浄化フィルタの拡大図であり、濾過中の状態を示したものである。
【
図3】放射性粉塵の除去システムの排気浄化フィルタの拡大図であり、洗浄中の状態を示したものである。
【
図5】
図4の排気浄化フィルタのX部分の拡大図である。
【
図6】上側シール部を説明するための斜視図である。
【
図7】下側シール部を説明するための斜視図である。
【
図8】複数本の金属繊維からなり、その金属繊維の間に空隙を有するメインフィルタの一例を示したイメージ図である。
【
図9】金属繊維のシートと金属の網状のシートの積層例を示した断面図である。
【
図10】金属繊維のシートと金属の網状のシートの他の積層例を示した断面図である。
【
図11】排気浄化装置の側面図であり、仕切り壁により小空間を形成した状態を示したものである。
【
図13】他の実施例を示した
図12と同様のB-B断面図である。
【
図14】排気浄化フィルタを支持するカートリッジ式の筐体が備わる排気浄化装置の概略正面図である。
【
図15】筐体が取り付け板に固定されている状態を表す図である。
【
図20】排気浄化フィルタを支持するカートリッジ式の筐体が備わる排気浄化装置の概略側面図である。
【
図21】筐体を取り付け板に取り付ける様子を表した模式図である。
【0050】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の説明及び図面は、本発明の一実施形態を示したものにすぎず、本発明の内容をこの実施形態に限定して解釈すべきでない。
【0051】
(放射性粉塵の除去システム1)
図1に放射性粉塵の除去システム1の一例を示す。この除去システム1は、作業エリア2で発生した放射性粉塵を含む排気EHから放射性粉塵を除去する排気浄化装置3と、排気浄化装置3から排出される浄化排気PEHに残存する放射性粉塵を除去する残塵除去装置4と、を備えている。
【0052】
(作業エリア2)
作業エリア2は放射性粉塵がある場所をいい、例えば原子力発電所の廃炉作業を行う場所、放射性金属の切断・減容処理室などのことをいう。
図1のように、この作業エリア2の放射性粉塵が多い場所に排気フード6を設けることが好ましく、作業エリア2内で行われる解体作業などで発生した放射性粉塵をこの排気フード6によって積極的に吸引することが好ましい。このような吸引によって作業エリア2内を負圧にし、作業エリア2内の放射性粉塵が意図せぬ箇所から外部へ放出されないようにすることができる。なお、排気フード6からの吸引は、例えば後段に設けた吸引ファン5によって行うことができる。
【0053】
(排気浄化装置3)
作業エリア2から排出された排気EHは、排気通気管L1を通って、排気浄化装置3に供給される。排気浄化装置3の内部には排気浄化フィルタ7が収納されている。
図2~
図5に示すように、この排気浄化フィルタ7は筒状に形成したものである。
図2~
図5には排気浄化フィルタ7の断面形状が真円形であるものを例示したが、この例に限られるものではなく、断面形状が楕円形、四角形、六角形など、任意の形状のものを用いても良い。排気浄化フィルタ7の構成は特に限定されるものではないが、複数本の金属繊維を集めてシート状にした金属繊維のシート(金属繊維シートといい、後述のメインフィルタ14を構成する)と、その金属繊維シートの上面と下面をそれぞれ金属の網状の部材(金属網状部材といい、後述の形状保持手段15を構成する)で挟み込んだものを用いることが好ましい。なお、金属繊維シートの金属繊維としては、ステンレス鋼繊維、タングステン鋼繊維、アルミニウム繊維、ニッケル繊維、チタン繊維などを用いることができる。これらの金属繊維のうち、ステンレス鋼繊維(すなわちステンレス繊維)を用いることが最も好ましく、以下では金属繊維としてステンレス繊維を用いたステンレス繊維シートを例に挙げて説明する。すなわち、以下の説明においては、ステンレス繊維シートを金属繊維シートと読み替えることができる。
【0054】
ステンレス繊維シートの実施形態を次に示す。なお、金属繊維のシートは、ステンレス繊維シートに限らず、タングステン鋼繊維、アルミニウム繊維、ニッケル繊維、チタン繊維を含むシートであってももちろんよい。前記ステンレス繊維シートは1本の長いステンレス繊維を何回も曲げてシート状にしたものでもよい。ステンレス繊維シートの概念図を
図8に示した。ステンレス繊維の直径(繊維径)は公称繊維径2~4μm程度が好ましく、発生する粉塵の粒径分布および粉塵の放射線強度などにより、繊維径の選定を行うとよい。また、排気EH中の放射性粉塵の除去率を高めるため、ステンレス繊維シートの空隙率は65~80%とすることが好ましい。そして、排気浄化フィルタ7の性能は、排気EHに残存する粒径が0.3μm以上の粉塵に対して90%以上の粒子捕集率を有するようにすることが好ましい。
【0055】
以上のように、排気浄化フィルタ7の素材としてステンレス繊維を用いることで、放射性粉塵から放射される放射線によって容易に劣化しないものにすることができるため、フィルタの交換頻度を少なくすることができる。特に、原子力発電所の廃炉作業で発生する高線量の放射性粉塵の捕集に優れたものになる。また、解体環境エリアからの排気EH中に鋭利な微粉などが含まれていたとしても、この微粉等によってフィルタが破損するおそれは少なく、この点からもフィルタの交換頻度が少なくすることができる。さらに、排気浄化フィルタ7が燃えて火災が発生することも防ぐことができる。
【0056】
排気浄化フィルタ7は平坦なステンレス繊維シートを単に筒状に形成したものでも良いが、濾過面積を大きくすることを目的として、
図5に示すように、平坦なステンレス繊維シートを蛇腹状に折り曲げてそれを筒状に形成したものを用いることが好ましい。また
図5に示すように、排気浄化フィルタ7はメインフィルタ14の両面(表面および裏面)にメインフィルタ14を保護する形状保持手段15を設けた形態にすることが最も好ましいが、メインフィルタ14の片面(表面または裏面)に形状保持手段15を設ける形態にしても良い。この形状保持手段15を設けることにより、排気浄化フィルタ7を前述の蛇腹形状に維持することができる。すなわち、メインフィルタ14を構成するステンレス繊維シートは形態安定性が低いため、形状保持手段15を構成する網状シートがなければ蛇腹形状を維持しづらいが、形状保持手段15を設けることにより排気浄化フィルタ7の形態安定性が高まり蛇腹形状を維持することができるようになる。また、形状保持手段15を設けることで、排気浄化フィルタ7の強度が高まるため、メインフィルタ14を洗浄する際にメインフィルタ14にかかる圧縮気体の圧力に耐えやすくなる。
【0057】
排気EHがメインフィルタ14に到達することができるようにするため、形状保持手段15は網状のシートにすることが好ましい。また形状保持手段15の網目の空隙が小さいと単位時間当たりの排気濾過処理量が低下するとともに、形状保持手段15が目詰まりするおそれが高くなる。そのため形状保持手段15の網目の空隙の大きさはメインフィルタ14の空隙の大きさよりも大きくすることが好ましい。さらに形状保持手段15の素材には放射性粉塵から放射される放射線によっても容易に劣化しないものを用いることが好ましく、具体的にはステンレスなどを用いることが好ましい。
【0058】
図9と
図10に、排気浄化フィルタ7を構成するメインフィルタ14と形状保持手段15の積層例を示した。なお、
図9と
図10において、表側および上側とは、排気浄化フィルタ7を排気浄化装置3に取り付けたときにおける外側(排気浄化装置3の容器28がある側)を意味し、裏側および下側とは、排気浄化フィルタ7を排気浄化装置3に取り付けたときにおける内側(内筒8がある側)を意味する。メインフィルタ14は金属繊維シートを含み、形状保持手段15は金属メッシュ部材を含むため、排気浄化フィルタ7は金属繊維シートと金属メッシュ部材の積層体であるということもできる。なお、メインフィルタ14は金属繊維シート以外の物質を含んでいても良いし、形状保持手段15も金属メッシュ部材以外の物質を含んでいても良い。メインフィルタ14の主な素材として金属繊維シート(特にステンレス繊維シート)を用いることが好ましく、形状保持手段15の主な素材として金属メッシュ部材を用いることが好ましい。メインフィルタ14は金属繊維シートだけで構成してもよいし、形状保持手段15は金属メッシュ部材だけで構成してもよい。また
図9と
図10では理解を容易にするために排気浄化フィルタ7を構成する各層の厚さを強調して厚く示しているが、実際の各層の厚さはこのような厚さに限定されるものではない。
【0059】
図9では、メインフィルタ14の表側US(外側)に形状保持手段15を積層し、メインフィルタ14の裏側DS(内側)にも形状保持手段15を積層した3層構造になっている。メインフィルタ14を保護する観点や、メインフィルタ14を蛇腹状に成形し、その蛇腹形状を保持する観点からは、
図9に示すようにメインフィルタ14の両側(表側USおよび裏側DS)に形状保持手段15を設けることが最も好ましいが、メインフィルタ14のいずれか一方側(表側USまたは裏側DS)に形状保持手段15を設ける形態にしてもよい。メインフィルタ14を保護することを要せず、かつ、メインフィルタ14を蛇腹状に成形することも要さない場合は、形状保持手段15を全く設けないようにしてもよい。形状保持手段15の厚さが薄い場合は、メインフィルタ14を保護する機能が低下するおそれがあり、形状保持手段15の厚さが厚い場合は、通気抵抗が増し、単位時間当たりの排気浄化処理量が低下するおそれがある。他方、メインフィルタ14の厚さが薄い場合は、排気EH中の放射性粉塵を十分に除去できないおそれがあり、メインフィルタ14の厚さが厚い場合は、通気抵抗が増し、単位時間当たりの排気浄化処理量が低下するおそれがある。なお、表側形状保持手段15Uの厚さと裏側形状保持手段15Bの厚さの両者を同じ厚さにしても良いが、異なる厚さにしても良い。
【0060】
図10に示す排気浄化フィルタ7の基本構造は
図9と同じであるが、メインフィルタ14を上層メインフィルタ14Uと中間層メインフィルタ14Mと下層メインフィルタ14Bの3層構造にしている点が異なる。このような3層構造にする場合、上層メインフィルタ14Uのステンレス繊維の繊維径を6~10μmにすることが好ましく、中間層メインフィルタ14Mのステンレス繊維の繊維径を2~4μmにすることが好ましく、下層メインフィルタ14Bのステンレス繊維の繊維径を6~10μmにすることが好ましい。
【0061】
メインフィルタ14をこのような層構造にした場合、繊維径が小さい中間層メインフィルタ14Mの金属繊維が放射性粉塵等を最もよく除去することができるが、繊維径が小さいため強度が弱いという欠点がある。そこで、この中間層メインフィルタ14Mの金属繊維よりも繊維径の大きい金属繊維からなる上層メインフィルタ14Uと下層メインフィルタ14Bを設けることで、中間層メインフィルタ14Mの繊維の弱さを上層メインフィルタ14Uと下層メインフィルタ14Bの繊維の強さで補うことができる。その結果、メインフィルタ14を単層にした場合(この単層を構成する金属繊維の繊維径は前記中間層メインフィルタ14Mの金属繊維と同じ2~4μmの繊維径を想定)と比べて、メインフィルタ14の強度を高めることができ、メインフィルタ14の形状安定性を高めることができるほか、排気浄化フィルタ7の逆洗時に排気浄化フィルタ7にかかる圧力(圧縮気体による圧力)に耐えやすくなる。特に、逆洗時においてメインフィルタ14の裏側に最も圧縮気体の圧力がかかるところ、当該下層メインフィルタ14Bの耐圧を高めておくことにより、圧縮気体PAによるメインフィルタ14の損傷を防ぐことができる。
【0062】
また、メインフィルタ14の外側に位置する上層メインフィルタ14Uの金属繊維径が大きいと、当該メインフィルタ14の外側に位置する上層メインフィルタ14Uの金属繊維径が小さい場合と比べて、逆洗時に、当該メインフィルタ14の外側に位置する上層メインフィルタ14Uの空隙に捕捉された放射性粉塵等をメインフィルタ14の外側に吹き飛ばしやすくなる。そのため、逆洗時の洗浄効果が高くなるという利点もある。
【0063】
また、
図10ではメインフィルタ14を3層構造にした例を示したが、4層以上の構造にしてもよい。4層以上の構造にする場合は、繊維径が小さい金属繊維の層の保護という観点から、メインフィルタ14の厚み方向TDの中央部分に近づくほど、ステンレス繊維の繊維径を小さくすることが好ましい。
【0064】
なお、メインフィルタ14が単層の場合におけるその層の空隙率や、メインフィルタ14が複数層の場合における各層の空隙率は65~80%とすることが好ましい。この空隙率は、以下の式1および式2から求めることができる。
【0065】
[式1]P(%)=メインフィルタの層の目付(g/m2)/メインフィルタの層を構成する金属繊維の比重×T(メインフィルタの層の厚さ(cm))
[式2]空隙率(%)=100-P(%)
【0066】
前記式1における金属繊維の比重は、例えば金属繊維がステンレス鋼(SUS316L)である場合は798となる。また、式1における「メインフィルタの層」とは、メインフィルタが単層からなる場合は、その単層のことをいう。メインフィルタが複数の層からなる場合であって、メインフィルタの各層ごとの空隙率を求めたい場合は、メインフィルタの各層ごとの目付、金属繊維、厚さをそれぞれ用いればよい。メインフィルタが複数の層からなる場合であって、積層状態のメインフィルタ全体の空隙率を求めたい場合は、メインフィルタ全体の目付、金属繊維、厚さをそれぞれ用いればよい。
【0067】
なお、複数層からなるメインフィルタ14を製造する際は、原料となる金属繊維を均一に積層し、積層したものを焼結(圧縮固定)することが好ましい。
【0068】
そして排気浄化フィルタ7の内側には筒形状の内筒8を設けることが好ましい。この内筒8としては、所定の大きさの複数の開孔が設けられたパンチングシートを筒状に形成したものを用いることができる。この内筒8の断面形状も特に限定されるものではなく、例えば
図4に示すように真円形したり、楕円形、四角形、六角形など、任意の形状のものを用いたりしても良い。
【0069】
図5に示すように排気浄化フィルタ7を蛇腹形状にした場合は山部7Xと谷部7Yが生じる。
図4および
図5に示すように排気浄化フィルタ7の形状を蛇腹状にして円筒状にした場合、断面形状において、排気浄化フィルタ7の複数の谷部7Yを繋いだ仮想線ILが円形になる。内筒8の形状をこの仮想線ILと同じ形状(円形)にし、排気浄化フィルタ7の複数の谷部7Yの裏面と内筒8の表面が接した状態にすることが好ましく、排気浄化フィルタ7のすべての谷部7Yの裏面と内筒8の表面が接した状態にすることがより好ましい。複数の谷部7Y、7Yと内筒8を予め接触させておくことにより、排気浄化フィルタ7に排気EHを通過させる度に排気浄化フィルタ7と内筒8が衝突する自体を避けることができるため、排気浄化フィルタ7の寿命を延ばすことができる。
【0070】
図3や
図4に示すように、排気浄化フィルタ7の上端部および下端部と内筒8の上端部および下端部はそれぞれシールされており、放射性粉塵を含む排ガスが排気浄化フィルタ7を通過せずにショートカットして浄化排気通路13に入り込むことを防いでいる。排気浄化フィルタ7および内筒8をシールした部分をシール部9といい、
図3や
図4の実施形態では排気浄化フィルタ7の上端部と内筒8の上端部をシールした上側シール部9Aと、排気浄化フィルタ7の下端部と内筒8の下端部をシールした下側シール部9Bがある。
【0071】
上側シール部9Aは、
図6に示すように、貫通孔19(内筒8の内径とほぼ同じ大きさの孔)を有するフランジ部7Zの貫通孔19の縁に固定された円環状のリング20に排気浄化フィルタ7の上端部と内筒8の上端部を固定することで形成されている。具体的には、フランジ部7Zに固定された円環状リング20の断面は下方に開口を有するコの字形の溝を有しており、この溝の内部に排気浄化フィルタ7の上端部と内筒8の上端部を差し込んだ後、溝の内部に接着剤を充填することで、排気浄化フィルタ7の上端部と内筒8の上端部を円環状リングに固定している。このように、排気浄化フィルタ7は、上端部がフランジ部7Zと一体となった形態となっている。同様に、下側シール部9Bは、
図7に示すように、排気浄化フィルタ7の下端部と内筒8の下端部に円板21を固定することで形成されている。具体的には、前記円板21はその周縁部から上方に起立する起立壁22を有し、その起立壁22の断面は上方に開口を有するコの字形の溝23を有する。そして、排気浄化フィルタ7の下端部と内筒8の下端部をこの溝23の内部に差し込んだ後、溝23の内部に接着剤を充填することで、排気浄化フィルタ7の下端部と内筒8の下端部を円板21に固定している。また、視認性を高めるため、
図6および
図7では、排気浄化フィルタ7と内筒8を一体化して表しているが、実際は別々の部材からなる。
【0072】
本発明の排気浄化装置3は、排気浄化フィルタ7を内部に備えるケーシング50を有し、当該ケーシング50の内部は浄化前室と浄化後室に仕切られており、浄化前室と浄化後室は、ケーシング50に備わる取り付け板10と排気浄化フィルタ7とによって、仕切られている。当該取り付け板10にはフランジ部7Zの貫通孔19と同形の貫通孔が設けられており、フランジ部7Zの貫通孔19と取り付け板10の貫通孔が対向して、当該フランジ部7Zが当該取り付け板10に接した状態で、又はガスケットを介した状態で固定されている。当該取り付け板10には。ケーシング50における浄化前室側の壁には排気EHがケーシング50内に流入する排気供給口16が設けられ、ケーシング50における浄化後室側の壁には浄化排気PEHがケーシング50外へ流出する浄化排気排出口18が設けられている。排気EHは筒状の排気浄化フィルタ7の外側から内側へ向かって流れる構成になっている。排気EHが排気浄化フィルタ7を外側から内側へ通り抜ける過程で、排気EH中の放射性粉塵などが排気浄化フィルタ7に捕捉される。排気浄化フィルタ7を通過することにより清浄化された浄化排気PEHは、内筒8の開孔部を外側から内側へ通り抜け、浄化排気通路13に到達する。その後、
図2の実施形態では、浄化排気PEHが浄化排気通路13を下側から上側へ移動し、上側シール部9Aの円環状リング20の孔部分、フランジ部7Zの貫通孔19および取り付け板10の貫通孔を通り抜け、排気浄化装置3の上部に至る。そして、排気浄化装置3から排出され、浄化排気通気管L2を通って残塵除去装置4へと送られる。
【0073】
他方、排気EHが排気浄化フィルタ7を外側から内側へ通り抜ける過程で、排気浄化フィルタ7に捕捉された放射性粉塵などの異物は排気浄化フィルタ7の外面に堆積する。この外面に堆積した放射性粉塵などの異物の層が厚くなると、排気EHの浄化処理効率が悪くなるため、所定のタイミングで排気浄化フィルタ7を逆洗することが好ましい。
【0074】
例えば、
図3に示すように、排気浄化フィルタ7の上方に設けた噴射ノズル11から排気浄化フィルタ7内に向けて圧縮気体PA(例えば圧縮空気)を噴射する。噴射ノズル11から噴射された圧縮気体PAは下方へ移動し、排気浄化フィルタ7の内部(浄化排気通路13)に入った後、
図2とは逆方向に流れる。すなわち、内筒8の開孔部を内側から外側へ通り抜けた後、排気浄化フィルタ7を内側から外側へ通り抜ける。このようにして圧縮気体PAが排気浄化フィルタ7を通り抜けることにより、排気浄化フィルタ7の外面に堆積していた放射性粉塵などの異物の層(異物層)が剥離され、排気浄化装置3の下方へ落下して堆積する。排気浄化装置3の下方に堆積した堆積物SDは、定期的に排気浄化装置3の外部へ排出される。
【0075】
以上のように、所定のタイミングで排気浄化フィルタ7を逆洗することにより、圧力損失および捕集効率を初期値の近辺に戻すことができるため、排気浄化フィルタ7を使い捨てにすることがなくなり、地球環境資源の有効活用や排気浄化フィルタ7の交換・廃棄に係るコストの低減を図ることができる。
【0076】
なお、排気浄化フィルタ7で排気EHを浄化処理している最中に、その浄化処理を止めずに、浄化処理をしながら逆洗を行うこともできる。なぜならば、逆洗は数秒という短い時間で終わるため、わざわざ浄化処理を止める必要もないということによる。また、逆洗時に排気浄化フィルタ7から剥離する放射性粉塵などの異物の塊はある程度の重さを持っているため、排気浄化フィルタ7に向かって排気EHが流れている状況であったとしても、その排気EHの流れの影響を受けて、排気浄化フィルタ7から剥離した放射性粉塵などの異物の塊が排気浄化フィルタ7に再付着する可能性は低いからである。排気浄化フィルタ7から剥離した放射性粉塵などの異物の塊が排気浄化フィルタ7に再付着することを確実に防ぎたい場合、排気EHの浄化処理を一時的に停止させてから逆洗を行い、逆洗が終了した後で排気EHの浄化処理を再開させるようにしてもよい。ただし、このような処理を行った場合、排気EHの浄化処理と洗浄(逆洗)処理との切り替えにある程度の時間を要するため、排気EHの浄化処理量がわずかに少なくなるという不都合がある。
【0077】
また、
図11、
図12の実施形態に示すように、排気浄化装置3の内部に排気浄化フィルタ7を複数個設け、一方の排気浄化フィルタ7を逆洗している間に、他方の排気浄化フィルタ7で排気EHを濾過するようにすることが好ましい。例えば
図11、
図12の実施形態では、排気浄化装置3の内部空間26を複数の小空間に仕切る仕切り壁29を設け、それぞれの小空間に排気浄化フィルタ7を設けている。
【0078】
詳しくは、
図11に示すように、排気浄化装置3の取り付け板10の下面に仕切り壁29の上端部が固定されており、仕切り壁29はそこから下方へ向かって延出しており、仕切り壁29の下端部は排気浄化フィルタ7の下端部の近傍に位置するようになっている。なお、逆洗時の圧縮気体PAが他の小空間27に配置された排気浄化フィルタ7に直接衝突することを防止するため、仕切り壁29の下端部を排気浄化フィルタ7の下端部近傍に位置させることが好ましい。また、
図12に示すように、この仕切り壁29は隣接する排気浄化フィルタ7の間を仕切るように取り付けられている。なお、
図12に示すように、仕切り壁29は、排気浄化装置3の容器28の内壁に当接させず、当該容器28の内壁と仕切り壁29の間に所定の空隙を持たせることが好ましい。同様に、
図11に示すように、仕切り壁29は排気浄化フィルタ7の下端部よりもさらに下側まで延在させず、仕切り壁29の下側に所定の空隙を持たせることが好ましい。排気浄化処理において、排気浄化装置3の容器28ないに入った排気EHが、前記各空隙を通って、各小空間27A、27Bに入り込みやすくするためである。
【0079】
このように取り付けられた仕切り壁29により、排気浄化装置3の内部空間26はほぼ均等に2分割され、第一小空間27Aと第二小空間27Bが形成されている。そして、第一小空間27Aには第一排気浄化フィルタ7Aが設けられ、第二小空間27Bには第二排気浄化フィルタ7Bが設けられている。
【0080】
このように仕切り壁29によって、排気浄化装置3の内部空間26を仕切ることによって、一方の小空間27の内部に配置された排気浄化フィルタ7に対して噴射部(ノズル11)から噴射された圧縮気体PAが、隣接する他の小空間27に配置された排気浄化フィルタ7に直接衝突することを妨げることができる。その結果、一方の小空間27に配置された排気浄化フィルタ7を逆洗する際に使用する圧縮気体PAの影響が他の小空間27に配置された排気浄化フィルタ7に及びにくくなる。すなわち、一部の小空間27に配置された排気浄化フィルタ7を逆洗している間に、他の小空間27に配置された排気浄化フィルタ7を用いて排気EHを浄化する際、圧縮気体PAが浄化処理中の排気浄化フィルタ7に対して悪影響を及ぼしにくい。よって、一部の排気浄化フィルタ7を洗浄している間であっても、他の排気浄化フィルタ7によって通常通りの排気浄化処理を行うことができるため、排気浄化装置3全体における排気浄化処理の効率が落ちにくいという利点がある。
【0081】
図11と
図12に示した実施形態では、第二小空間27Bに配置された第二排気浄化フィルタ7Bを逆洗している間に、第一小空間27Aに配置された第一排気浄化フィルタ7Aで排気浄化処理を行っている状態を示したものである。勿論、図示した例とは逆に、第一排気浄化フィルタ7Aを逆洗している間に、第二排気浄化フィルタ7Bで排気浄化処理を行ってもよい。
【0082】
また、
図11や
図12では仕切り壁29を一つだけ設けた例を示したが、仕切り壁29を複数個設けても良い。例えば、
図13に示すように、排気浄化装置3の内部空間26に十字状に仕切り壁29を設けることで、第一小空間27A~第四小空間27Dの4つの小空間27を形成し、各小空間27A~27Dにそれぞれ第一排気浄化フィルタ7A~第四排気浄化フィルタ7Dを配置してもよい。
【0083】
(残塵除去装置4)
残塵除去装置4は浄化排気PEH中に残存している放射性粉塵を除去する残塵除去フィルタを有している。この残塵除去フィルタの性能としては、浄化排気PEH中に残存する粒径が0.3μmの粉塵に対して99.97%以上の粒子捕集率を有していることが好ましい。
【0084】
具体的には、この残塵除去フィルタとして、例えばHEPAフィルタ(定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能をもつエアフィルタ)、ULPAフィルタ(定格風量で粒径が0.15μmの粒子に対して99.9995%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能をもつエアフィルタ)などを用いることができる。
【0085】
浄化排気PEH中の粒径が0.3μmの粉塵に対して99.97%以上の粒子捕集効率を有さない残塵除去フィルタを用いた場合、残塵除去装置4から排出される浄化排気PEH中に多くの放射性粉塵が混入する可能性があるという問題がある。
【0086】
(別形態のフィルタ7)
本発明に係る排気浄化装置3として、次の実施形態も好ましい。具体的には、排気浄化装置3には取り付け板110が設けられ、排気浄化フィルタ7を支持する筐体34を有し、前記筐体34は、前記排気浄化フィルタ7が固定される上板部34uと、前板部34fと、前板部34fに対して間隔を空けて配される後板部34bと、前板部34fと後板部34bとの側部を連結する側板部34s,34s(側板部は、例えば2枚からなり、互いに間隔を空けて対向している。)とを有し、前板部34fの上端縁、後板部34bの上端縁及び側板部34s,34sの上端縁のそれぞれが上板部34uと連結する下部開放の箱形をなすものであり、前記筐体34が前記取り付け板110に固定される実施形態である。この筐体34が固定された排気浄化装置3では、排気EHが、排気浄化装置3のケーシング50に設けられた排気供給口16から排気浄化装置3内に流れ込み、筐体34の下方から筐体34の内部空間39に入り、排気浄化フィルタ7を通過した後、浄化排気PEHとなって、浄化排気排出口18から排気浄化装置3の外へ排出される。筐体34はケーシング50に設けられた取り付け板110に固定されており、この取り付け板110と排気浄化フィルタ7とでケーシング50内が浄化前室と浄化後室に仕切られている。そして、排気EHは、浄化前室から排気浄化フィルタ7を通過して浄化後室に至るが、これ以外に浄化前室から浄化後室へ至る流路はない。なお、筐体34の内部空間39とは、筐体34を構成する上板部34u、前板部34f、後板部34b及び側板部34s,34sで囲まれた箱形の内部をいう。
【0087】
筐体34を形成する前板部34f、後板部34b、側板部34s,34sそれぞれの、内部空間39に面する面の形態は、湾曲する面であっても、平面であってもよいが、下記のように内部空間39を截頭錐体とする場合は、平面であるとよい。
【0088】
また、筐体34の上板部34uへの排気浄化フィルタ7の固定については、次のような形態とすることができる。排気浄化フィルタ7の上端部にフランジ部を設け、当該フランジ部を前記上板部34uの貫通孔の周部に固定する形態である。排気浄化フィルタ7のフランジ部と筐体34の上板部34uとは、気体の行き来がないように接着剤等や溶接処理等で固定して塞ぐとよい。
【0089】
筐体34に支持される排気浄化フィルタ7の本数は、排気浄化装置3を設置する作業エリアの容積や漂う粉塵の量等に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
【0090】
図16~
図19に示すとおり、筐体34を構成する部材で形成される内部空間39の形状は、直方体の形状であってもよいが、次のような截頭錐体であってもよい。例えば、筐体34の内部空間39は、截頭錐体の形状をなし、前板部34fの下端縁と、後板部34bの下端縁と、側板部34s,34sの下端縁とで構成される周長(例えば、略四角形の周長)を截頭錐体の下面の周長とし、上板部34uの周長を截頭錐体の上面の周長としたときに、前記前板部34fの下端縁と、前記後板部34bの下端縁と、前記側板部34s,34sの下端縁とで構成される周長が、上板部の周長(例えば、略四角形の周長)よりも長いものとなっている形態(例えば、四角錐体)、すなわち筐体34の内部空間39の上板部側が截頭錐体の上面となり、当該内部空間39の下端縁側が截頭錐体の下面となるような形態が好ましい。この形態であれば、前板部34f、後板部34b、両側板部34s,34sの内部空間39に面するそれぞれの面(内部空間39側の面)が鉛直線に対して角度を有して配されているので、放射性粉塵が当該内部空間39側の面に付着しづらいし、付着したとしても続く放射性粉塵の流れの中で脱離し易い。よって前記筐体34が放射性粉塵に高濃度に汚染されるのを防止できる。
【0091】
筐体34の内部空間39の上板部側が截頭錐体の上面となり、当該内部空間39の下端縁側が截頭錐体の下面となるような形態の場合、前記内部空間39を構成する前板部34fにおける内部空間39に面する面(すなわち、前板部34fの内面34f1)から延びる法線Lf5と、その法線Lf5に交わる鉛直線L6とでなす鋭角の角度θが、例えば、好ましくは90°未満かつ80°以上、より好ましくは87°以下かつ85°以上、特に好ましくは87°である。同様に、後板部34bの内面34b1から延びる法線Lb5と、その法線Lf5に交わる鉛直線L6とでなす鋭角の角度θが、例えば、好ましくは90°未満かつ80°以上、より好ましくは87°以下かつ85°以上、特に好ましくは87°である。同様に、第一側板部34sの内面34s1から延びる法線Ls15と、その法線Ls15に交わる鉛直線L6とでなす鋭角の角度θが、例えば、好ましくは90°未満かつ80°以上、より好ましくは87°以下かつ85°以上、特に好ましくは87°である。同様に、第二側板部34sの内面34s2から延びる法線Ls25と、その法線Ls25に交わる鉛直線L6とでなす鋭角の角度θが、例えば、好ましくは90°未満かつ80°以上、より好ましくは87°以下かつ85°以上、特に好ましくは87°である。
【0092】
なお、截頭錐体は、具体的には円錐台、多角錐台、四角錐台であってよいが、筐体34の取り付け及び取り外しの作業性を考慮すると、四角錐台が特に好ましい。
【0093】
筐体34の素材は、特に限定されないが、金属がよく、例えばステンレス、タングステン、アルミニウム、ニッケル、チタンであれば好ましく、特にステンレスが好適である。当該素材が金属であれば、耐強度性、耐放射線性があり好ましい。
【0094】
前記排気浄化フィルタ7が支持された前記筐体34は、カートリッジ式構造となっており、排気浄化装置3の前記取り付け板110に取り付け及び取り外し可能に固定される態様とすることができる。排気浄化装置3を稼働させて廃炉作業等を行い続けると、定期的に排気浄化装置3を逆洗浄したとしても、排気浄化フィルタ7に放射性物質が徐々に固着したり、排気浄化フィルタ7の目詰まりを引き起こしたりすることがある。この場合、排気浄化フィルタ7を取り換えることになるが、筐体34がカートリッジ式構造であって、取り付け及び取り外し可能なものとなっていれば、当該取り換え作業において、作業員は、筐体ごと取り換えればよく、作業性が良いため、放射性物質による被曝低減が図れる。
【0095】
図15、
図21を参照しつつ説明すると、前記筐体34は、当該筐体34を取り付け板110に固定できるように、例えば上板部34uから上方に延在する筐体側受け部41が備わったものとすることができる。筐体側受け部41の形態は、特に限定されないが、例えば、筐体34の前板部34fの上端からさらに上方へ延在する部材、後板部34bの上端からさらに上方へ延在する部材、側板部34s,34sの上端からさらに上方へ延在する部材をそれぞれ連結させて形成した角筒とする形態が好ましい。
【0096】
他方、前記取り付け板110の下面には、筐体側受け部41に対向する、当該筐体側受け部41と略同形の板側受け部110a(筐体側受け部41が角筒形状であれば、板側受け部110aも各筒形状とするとよい。)が設けられている。筐体側受け部41と板側受け部110aは、対を成すものであり、筐体側受け部41の上端縁と板側受け部110aの下端縁が接した状態で取り外し可能に固定される。また、密閉性を高めるため筐体側受け部41と板側受け部110aの間にガスケット33を介在させてもよい。この場合、ガスケット33は、板側受け部110aの下端縁に設けておくとよい。
【0097】
取り付け板110における板側受け部110aで囲まれた部分には、貫通孔110bが設けられている。この貫通孔110bは、筐体34の内部空間から排気浄化フィルタ7を通過して浄化排気通路13に流入した浄化排気PEHが取り付け板110の上方の空間へ流れ込むように設けたものである。
【0098】
他方、筐体側受け部41と板側受け部110aが対向して接した状態が維持されるように、筐体34の下方には筐体34を支えておくための下支え部材36が設けられている。また、下支え部材36は、上下に可動し、下支え部材36自体の高さが調節可能なものとなっており、下支え部材36に載置された筐体34の高さを調節できる機構となっている。下支え部材36の高さは、下支え部材36に接続された高さ調節手段37で調節することができる。高さ調節手段37は、下支え部材36の高さを調節できるものであれば特に限定されないが、偏心カム機構や、フロアジャッキやパンタジャッキ等のジャッキ機構が備わったものを例示することができる。なお、高さ調節手段37はケーシング50に備わっていればよい。
【0099】
筐体34を取り付け板110に取り付ける場合は、下支え部材36に筐体34を載置させた状態で、筐体側受け部41が板側受け部110aに接するまで下支え部材36を上方へ移動させるとよく、他方、筐体34を取り付け板110から取り外す場合は、下支え部材36を下方へ移動させるとよい。
【0100】
筐体側受け部41と板側受け部110aは対を成すものであり、密閉性を保つために両形状は同じ形状であることが望ましい。しかしながら、
図18、
図19に示すように筐体34の内部空間39の形状が截頭錐体であることにより、筐体34の上板部34uの周長が、板側受け部110aの周長よりも短くなる場合がある。この場合、上板部34uの端縁全体を径方向に延長させて、上板部34uの端縁が前板部34fの上端縁、後板部34bの上端縁、側板部34s,34sの上端縁それぞれよりも外方へはみ出した面になるように上板部34uを拡張し、拡張された当該上板部34uの外面上に筐体側受け部41を設けるとよい。もちろん、上板部34uの拡張の程度は、上板部34uの外面上に筐体側受け部41を設けることができる程度でよい。
【0101】
取り付け板110から取り外された使用済みの筐体34は排気浄化装置3のケーシング50から外へ出し、新たな筐体34をケーシング50内に入れ、取り付け板110に取り付けた後、排気浄化装置3の稼働を再開するとよい。
【0102】
ケーシング50における浄化前室側の壁には、筐体34を出し入れするための開口部35と、当該開口部35を閉じる扉38が設けられている。当該扉38は排気浄化装置3が稼働している間は閉じられている。
【0103】
開口部35にはケーシング50から出された使用済み筐体34を収納するためのバッグ31が設けられている。そして、当該バッグ31の袋口部が開口部35に連続して設けられてケーシング50内とバッグ31内が一体空間となって密閉されており、ケーシング50内の雰囲気がバッグ31の外へ漏れ出ない構造となっている。使用済み排気浄化フィルタ7が固定された筐体34をケーシング50から出す作業と、新たな排気浄化フィルタ7が固定された筐体34をケーシング50内へ入れる作業は、いわゆるバッグイン・バッグアウト方式で行うと、作業員が被曝せずに済むので好ましい。
【0104】
本発明として好ましい実施形態を次に付記する。
【0105】
(付記1)
作業エリアで発生した放射性粉塵を含む排気から放射性粉塵を除去する排気浄化フィルタを備えた排気浄化装置であって、
前記排気浄化フィルタは筒形状であり、前記排気が前記排気浄化フィルタの外側から内側に通過する過程で、前記排気中の放射性粉塵が前記排気浄化フィルタに捕捉され、浄化された排気が前記排気浄化フィルタの筒内を通って前記排気浄化フィルタの外に排出される構成とされ、
前記排気浄化装置には取り付け板が設けられ、
前記排気浄化フィルタを支持する筐体を有し、
前記筐体は、前記排気浄化フィルタが固定される上板部と、前板部と、前板部に対して間隔を空けて配される後板部と、前板部と後板部との側部を連結する側板部とを有し、前板部の上端縁、後板部の上端縁及び側板部の上端縁のそれぞれが上板部と連結する下部開放の箱形をなすものであり、
前記筐体が前記取り付け板に固定される、
ことを特徴とする排気浄化装置。
【0106】
(付記2)
前記筐体の内部空間は、
截頭錐体の形状をなし、前記前板部の下端縁と、前記後板部の下端縁と、前記側板部の下端縁とで構成される周長を截頭錐体の下面の周長とし、上板部の周長を截頭錐体の上面の周長としたときに、
前記前板部の下端縁と、前記後板部の下端縁と、前記側板部の下端縁とで構成される周長が、上板部の周長よりも長いものとなっている、
付記1記載の排気浄化装置。
【0107】
(付記3)
前記排気浄化フィルタが支持された前記筐体は、カートリッジ式構造となっており、前記取り付け板に取り付け及び取り外し可能に固定され、
前記筐体は、前記排気浄化装置のケーシングから出し入れ可能とされるものである、
付記1記載の排気浄化装置。
【符号の説明】
【0108】
1:放射性粉塵の除去システム、2:作業エリア、3:排気浄化装置、4:残塵除去装置、5:吸引ファン、6:、排気フード、7:排気浄化フィルタ、7A:第一排気浄化フィルタ、7B:第二排気浄化フィルタ、7C:第三排気浄化フィルタ、7D:第四排気浄化フィルタ、7X:山部、7Y:谷部、7Z:フランジ部、8:内筒、9:シール部、9A:上側シール部、9B:下側シール部、10:取り付け板、11:噴射ノズル、12:圧縮気体供給管、13:浄化排気通路、14:メインフィルタ、14U:表層メインフィルタ(上層メインフィルタ)、14M:中間層メインフィルタ、14D:裏層メインフィルタ(下層メインフィルタ)、15:形状保持手段、15U:表側形状保持手段(上側形状保持手段)、15D:裏側形状保持手段(下側形状保持手段)、16:排気供給口、17:金属繊維、18:浄化排気排出口、19:貫通孔、20:円環状リング、21:円板、22:起立壁、23:溝、24:堆積物排出口、25:残塵除去フィルタ、26:内部空間、27:小空間、27A:第一小空間、27B:第二小空間、27C:第三小空間、27D:第四小空間、28:排気浄化装置の容器、29:仕切り壁、31:バッグ、33:ガスケット、34:筐体、34u:筐体の上板部、34f:筐体の前板部、34f1:筐体の前板部の内面、34b:筐体の後板部、34b1:筐体の側板部の内面、34s:筐体の側板部、34s1,34s2:筐体の側板部の内面、35:開口部、36:下支え部材、37:高さ調節手段、38:扉、39:筐体の内部空間、40:貫通孔、41:筐体側受け部、50:ケーシング、110:取り付け板、110a:板側受け部、110b:貫通孔、IL:仮想線、EH:排気、Lf5:前板部の内面から延びる(仮想)法線、後板部の内面、Lb5:後板部の内面から延びる(仮想)法線,Ls15,Ls25:側板部34s,34sの内面それぞれから延びる(仮想)法線、L6:鉛直線、PEH:浄化排気、PA:圧縮気体、SD:堆積物、US:表側(上側)、DS:裏側(下側)、TD:厚み方向