(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106681
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】ドロマイトの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01F 11/18 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
C01F11/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011073
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】391011700
【氏名又は名称】宮崎県
(74)【代理人】
【識別番号】100105821
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】赤木 剛
【テーマコード(参考)】
4G076
【Fターム(参考)】
4G076AA16
4G076AA18
4G076AB09
4G076AB12
4G076BA13
4G076BC04
4G076BD02
4G076BE09
4G076BE11
4G076CA02
4G076DA30
(57)【要約】
【課題】Mg/Caのモル比が理想組成比である1を含む特定の範囲の組成を有するドロマイトをより確実に製造する方法を提供する。
【解決手段】カルシウム原料及びマグネシウム原料からドロマイトを製造する方法であって、カルシウム成分及びマグネシウム成分を含有する有機相と炭酸イオンを含有する水相とを混合する工程を含むことを特徴とするドロマイトの製造方法に係る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム原料及びマグネシウム原料からドロマイトを製造する方法であって、
カルシウム成分及びマグネシウム成分を含有する有機相と炭酸イオンを含有する水相とを混合する工程
を含むことを特徴とするドロマイトの製造方法。
【請求項2】
前記有機相が
(a1)液状のカルシウム脂肪酸塩、(a2)カルシウム脂肪酸塩が有機溶媒に溶解してなる溶液及び(a3)カルシウム塩の水溶液の少なくとも1種、及び
(b1)液状のマグネシウム脂肪酸塩、(b2)マグネシウム脂肪酸塩が有機溶媒に溶解してなる溶液及び(b3)マグネシウム塩の水溶液の少なくとも1種
を含む(ただし、上記(a3)及び(b3)のみからなる組み合わせを除く。)、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記有機相中のMg/Caのモル比が0.5~3である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記有機相と水相とを混合した後、得られた混合液を25~100℃で一定時間静置する熟成工程をさらに有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
ドロマイトのMg/Caのモル比が0.4~2.2である、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドロマイトの新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドロマイトは、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムからなる炭酸塩であり、例えばセメント原料、土壌改良材、肥料、建築用塗装剤、ガラス原料、レンガ原料、セラミックス、化粧品、食料品(健康補助食材、食品添加物等を含む。)等の分野で幅広く用いられている。
ドロマイトの化学式は、一般的には理論式(理想組成比)としてCaMg(CO3)2で示され、この場合はMg/Caのモル比が1であるが、実際はCaとMgの割合は変動する。
【0003】
鉱山資源として採掘される天然ドロマイトにおいても、その産出場所等によってCaとMgの割合がさまざまである。なお、わが国において採掘される天然ドロマイトのMg/Caのモル比は1未満である場合が多い。
【0004】
ドロマイト材料のMg/Ca組成は用途によって求められる割合が異なるため、ドロマイトの人工合成にあっては、Mg/Caのモル比が理想組成比の1を含む幅広い範囲で調整できることが望ましい。
【0005】
天然ドロマイトには、ケイ素、アルミニウム、鉄等のほか、例えば食料品の用途として好ましくないヒ素、重金属等の土壌由来の不純物成分を含むものがある。また、ファインセラミックス素材等のように精密に調整された化学組成が求められる用途においても、土壌由来の不純物成分を有しないドロマイトは有用である。従って、上記のような不純物をなるべく含まない又は微量化された合成ドロマイトの提供が望まれる。
【0006】
合成ドロマイトの製造方法として多くの方法がこれまでに提案されている。例えば、Ca-Mg塩化物の水溶液にカルサイト(炭酸カルシウム)を懸濁して250℃程度の高温高圧下で水熱合成する方法(非特許文献1)、貝殻を焼成、粉砕して得た炭酸カルシウム粉末を塩化マグネシウム水溶液に懸濁させ、この懸濁液を水熱処理することによって、平均粒径10μm以下の微細な結晶性ドロマイト粒子を製造する方法(特許文献1)等がある。しかし、これらの方法では、高温高圧下で合成する方法であるため、そのための設備等が必要となる欠点がある。
【0007】
他方、高温、高圧条件を要しない合成方法としては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン及び炭酸イオンを含有する水溶液に対して超音波を印加して、水溶液中にキャビテーションを生じさせ、キャビテーションによる反応場を利用してドロマイトを得る方法(特許文献2)が知られている。しかし、上記方法では、超音波発生装置が必要となるため、工業的規模での製造には適しているとはいえない。
【0008】
さらに、Ca-Mg塩化物及び炭酸水素塩をエタノールと水の混合溶液中で攪拌してドロマイトを合成することが報告されている(非特許文献2)。しかし、カルサイト等の副成物を伴わない合成ドロマイトが得られる条件では、仕込み原料におけるMg/Caのモル比が10であり、合成されるドロマイトのMg/Ca比に対してMg過多であることから工業的に不利である。
【0009】
また、Ca-Mg塩化物の混合水溶液に溶解した尿素の加水分解を利用したドロマイト合成(非特許論文3)が知られている。この方法では、仕込み原料におけるMg/Caのモル比が2.3~4.0であるが、ドロマイトの合成条件の範囲が狭く、副成物を伴わずに単相として得られるドロマイトのMg/Ca比が、仕込み原料のMg/Ca比によって幅広く調整されるとの報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008-230923号公報
【特許文献2】特開2016-216269号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】A. Katz, A. Matthews, Geochimica et Cosmochimica Acta, 41, 2, 297-308 (1977)
【非特許文献2】Y. Fang et al., ACS Omega, 7, 1, 281-292 (2022)
【非特許文献3】K. Matsuda, Journal of the Society of Inorganic Materials, Japan, 13, 323, 253-260 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の主な目的は、Mg/Caのモル比が理想組成比である1を含む特定の範囲の組成を有するドロマイトをより確実に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定のプロセスを採用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記のドロマイトの製造方法に係る。
1. カルシウム原料及びマグネシウム原料からドロマイトを製造する方法であって、
カルシウム成分及びマグネシウム成分を含有する有機相と炭酸イオンを含有する水相とを混合する工程
を含むことを特徴とするドロマイトの製造方法。
2. 前記有機相が
(a1)液状のカルシウム脂肪酸塩、(a2)カルシウム脂肪酸塩が有機溶媒に溶解してなる溶液及び(a3)カルシウム塩の水溶液の少なくとも1種、及び
(b1)液状のマグネシウム脂肪酸塩、(b2)マグネシウム脂肪酸塩が有機溶媒に溶解してなる溶液及び(b3)マグネシウム塩の水溶液の少なくとも1種
を含む(ただし、上記(a3)及び(b3)のみからなる組み合わせを除く。)、前記項1に記載の製造方法。
3. 前記有機相中のMg/Caのモル比が0.5~3である、前記項1に記載の製造方法。
4. 前記有機相と水相とを混合した後、得られた混合液を25~100℃で一定時間静置する熟成工程をさらに有する、前記項1に記載の製造方法。
5. ドロマイトのMg/Caのモル比が0.4~2.2である、前記項1に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、Mg/Caのモル比が理想組成比である1を含む特定の範囲の組成を有するドロマイトをより確実に製造する方法を提供することができる。
【0015】
このため、本発明の製造方法では、従来技術と異なり、比較的マイルドな条件下でドロマイトを合成することができる。例えば、有機相と水相との混合からドロマイトの生成にわたり70℃以下(特に50℃以下)の温度範囲内で本発明の製造方法を実施することができる。従って、例えば高温高圧下で実施する工程、超音波撹拌を実施する工程等を含まなくても、確実にドロマイトを製造することができる。
【0016】
このように、本発明の製造方法は、高温高圧で処理するための装置、超音波分散等の装置等のような特殊な設備を必要としてなくても良いので、特に工業的規模でのドロマイトの製造に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1~5で得られたドロマイトのX線回折パターンである。
【
図2】実施例1で得られたドロマイトの電子顕微鏡写真である。
【
図3】実施例2で得られたドロマイトの電子顕微鏡写真である。
【
図4】実施例3で得られたドロマイトの電子顕微鏡写真である。
【
図5】実施例4で得られたドロマイトの電子顕微鏡写真である。
【
図6】実施例5で得られたドロマイトの電子顕微鏡写真である。
【
図7】実施例6~9で得られたドロマイトのX線回折パターンである。
【
図8】実施例6で得られたドロマイトの電子顕微鏡写真である。
【
図9】実施例7で得られたドロマイトの電子顕微鏡写真である。
【
図10】実施例8で得られたドロマイトの電子顕微鏡写真である。
【
図11】実施例9で得られたドロマイトの電子顕微鏡写真である。
【
図12】実施例10及び11で得られたドロマイトのX線回折パターンである。
【
図13】実施例10で得られたドロマイトの電子顕微鏡写真である。
【
図14】実施例11で得られたドロマイトの電子顕微鏡写真である。
【
図15】実施例12~15で得られたドロマイトのX線回折パターンである。
【
図16】実施例12で得られたドロマイトの電子顕微鏡写真である。
【
図17】実施例13で得られたドロマイトの電子顕微鏡写真である。
【
図18】実施例14で得られたドロマイトの電子顕微鏡写真である。
【
図19】実施例15で得られたドロマイトの電子顕微鏡写真である。
【
図20】実施例16及び17で得られたドロマイトのX線回折パターンである。
【
図21】実施例16で得られたドロマイトの電子顕微鏡写真である。
【
図22】実施例17で得られたドロマイトの電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のドロマイトの製造方法は、カルシウム原料及びマグネシウム原料からドロマイトを製造する方法であって、
カルシウム成分及びマグネシウム成分を含有する有機相と炭酸イオンを含有する水相とを混合する工程(混合工程)を含むことを特徴とする。
【0019】
カルシウム原料としては、有機相にカルシウム成分(例えばカルシウムイオン)を供給できるものであれば限定されず、各種のカルシウム化合物を用いることができる。カルシウム化合物としては、例えばカルシウムの無機酸塩(鉱酸塩)、有機酸塩等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。無機酸塩としては、例えば塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩等が挙げられる。有機酸塩としては、各種の脂肪酸塩が挙げられる。
【0020】
特に、本発明では、カルシウム原料として、カルシウムの有機酸塩が好ましく、その中でもカルシウムの脂肪酸塩(カルシウム金属石鹸等)を好適に用いることができる。前記脂肪酸塩の脂肪酸としては、炭素数2~18程度の脂肪酸を好適に用いることができる。より具体的には、酢酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、2-エチルヘキサン酸、イソステアリン酸、ナフテン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸、リシノール酸等の不飽和脂肪酸が挙げられる。従って、例えば酢酸カルシウム、ナフテン酸カルシウム、2-エチルヘキサン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム等の少なくとも1種をカルシウム脂肪酸塩として使用することができる。これらカルシウム脂肪酸塩は、市販品を使用できるほか、公知の製造方法で製造されたものを使用することもできる。なお、本発明の効果を損なわない範囲内において、カルシウム脂肪酸塩の脂肪酸が有機相中に一部遊離した状態で含まれていても良い。
【0021】
マグネシウム原料としては、有機相にマグネシウム成分(例えばマグネシウムイオン)を供給できるものであれば限定されず、各種のマグネシウム化合物を用いることができる。マグネシウム化合物としては、例えばマグネシウムの無機酸塩(鉱酸塩)、有機酸塩等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。無機酸塩としては、例えば塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩等が挙げられる。有機酸塩としては、各種の脂肪酸塩が挙げられる。
【0022】
特に、本発明では、マグネシウム原料として、マグネシウムの有機酸塩が好ましく、その中でもマグネシウムの脂肪酸塩(マグネシウム金属石鹸等)を好適に用いることができる。前記脂肪酸塩の脂肪酸としては、炭素数2~18程度の脂肪酸を好適に用いることができる。より具体的には、酢酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、2-エチルヘキサン酸、イソステアリン酸、ナフテン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸、リシノール酸等の不飽和脂肪酸が挙げられる。従って、例えば酢酸マグネシウム、ナフテン酸マグネシウム、2-エチルヘキサン酸マグネシウム、リシノール酸マグネシウム等の少なくとも1種をマグネシウム脂肪酸塩として使用することができる。これらマグネシウム脂肪酸塩は、市販品を使用できるほか、公知の製造方法で製造されたものを使用することもできる。なお、本発明の効果を損なわない範囲内において、マグネシウム脂肪酸塩の脂肪酸が有機相中に一部遊離した状態で含まれていても良い。
【0023】
これらのカルシウム原料及びマグネシウム原料を用いて有機相の調製を行う。その方法としては、例えばカルシウム原料及びマグネシウム原料の種類、性状等に応じて適宜設定することができる。
【0024】
特に、本発明では、有機相として、(a1)液状のカルシウム脂肪酸塩、(a2)カルシウム脂肪酸塩が有機溶媒に溶解してなる溶液及び(a3)カルシウム塩の水溶液の少なくとも1種と、(b1)液状のマグネシウム脂肪酸塩、(b2)マグネシウム脂肪酸塩が有機溶媒に溶解してなる溶液及び(b3)マグネシウム塩の水溶液の少なくとも1種とを含む(ただし、上記(a3)及び(b3)のみからなる組み合わせを除く。)ものを好適に用いることができる。従って、有機相の調製に際し、上記(a1)~(a3)と上記(b1)~(b3)との組み合わせを適宜採用することができる。この中でも、特に、上記(a1)及び(a2)の少なくとも1種と、上記(b1)及び(b2)の少なくとも1種との組み合わせがより好ましい。以下にその実施形態の一例を示す。
【0025】
例えば、カルシウム原料又はマグネシウム原料が液状(特に当該混合工程の温度及び圧力範囲内で液状)であれば、そのままの形態で用いることもできる。例えば、液状のカルシウム原料と液状のマグネシウム原料とを混合することによって有機相を調製することができる。
【0026】
カルシウム原料又はマグネシウム原料が固体(特に当該混合工程の温度及び圧力範囲内で固体)である場合は、これらの原料を有機溶媒に溶解して得られた溶液を有機相として用いることができる。例えば、固体のカルシウム原料と固体のマグネシウム原料とを有機溶媒に溶解させることによって有機相を調製することができる。
【0027】
また例えば、液状のカルシウム原料と、固体のマグネシウム原料を有機溶媒に溶解させてなる溶液とを混合することによって有機相を調製することもできる。これとは反対に、液状のマグネシウム原料と、固体のカルシウム原料を有機溶媒に溶解させてなる溶液とを混合することによって有機相を調製することもできる。
【0028】
さらに、液状のカルシウム原料又は液状のマグネシウム原料であっても、有機溶媒に溶解させて得られる溶液を有機相として用いることもできる。
【0029】
上記の有機溶媒は、用いるカルシウム原料又はマグネシウム原料の種類等に応じて適宜設定することができる。例えば、酢酸ブチル、酢酸イソオクチル、ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチルベンゼン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、ペンタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ミネラルスピリット、ケロシン、大豆油等のほか、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール等のアルコール類が挙げられる。これら有機溶媒は、1種又は2種以上で用いることができる。
【0030】
なお、ドロマイトの合成に支障がなければ、カルシウム成分及びマグネシウム成分を含む有機相の性状は、特に限定されない。従って、例えばゲル状等でも良く、また例えば有機溶剤等と水からなる乳濁液を用いることもできる。
【0031】
有機相は、本発明の効果を妨げない範囲内で水を含んでいても良い。本発明では、特に、有機相中における水又は水溶液の割合は、通常は50重量%以下とすることが好ましく、特に40重量%以下であることがより好ましい。これによって、所望のドロマイトをより確実に調製することができる。
【0032】
このように、有機相は、一定量の水を含んでいても良いので、例えば液状のカルシウム原料とマグネシウム脂肪酸塩の水溶液とを混合・攪拌することによって有機相を調製することができる。また例えば、固体のカルシウム原料を有機溶媒に溶解させてなる溶液に、マグネシウム脂肪酸塩の水溶液を混合・攪拌することによって有機相を調製することもできる。
【0033】
なお、ドロマイト合成に支障がなければ、上記マグネシウム脂肪酸塩の水溶液に、マグネシウムの無機酸塩(例えば、塩化マグネシウム等)の水溶液を併用することもできる。また、マグネシウム塩を酸で溶解させてなる溶液を、マグネシウム塩の水溶液として用いることもできる。
【0034】
これとは反対に、例えば液状のマグネシウム原料とカルシウム脂肪酸塩の水溶液とを混合攪拌することによって有機相を調製することができる。また例えば、固体のマグネシウム原料を有機溶媒に溶解させてなる溶液に、カルシウム脂肪酸塩の水溶液を混合攪拌することによって有機相を調製することもできる。
【0035】
なお、ドロマイト合成に支障がなければ、上記カルシウム脂肪酸塩の水溶液に、カルシウムの無機酸塩(例えば、塩化カルシウム等)の水溶液を併用することもできる。また、カルシウム塩を酸で溶解させてなる溶液を、カルシウム塩の水溶液として用いることもできる。
【0036】
カルシウム脂肪酸塩又はマグネシウム脂肪酸塩を有機溶媒に溶解させる場合の濃度は、溶媒に脂肪酸塩が溶存し得る量であれば特に限定されるものではないが、通常は有機溶媒/溶質重量比で0.4~10程度となるようにすることが好ましい。
【0037】
上記有機相中のMg/Caのモル比は、特に限定されず、所望のドロマイト組成等に応じて適宜設定できるが、通常は0.5~3であることが好ましく、特に0.5~2であることがより好ましい。
【0038】
水相は、炭酸イオンを含有するものであれば良く、特に限定されない。このような水相は、水系溶媒中に炭酸イオン供給源が溶解してなる水溶液を好適に用いることができる。従って、前記の炭酸イオン供給源としては、水系溶媒に溶解して炭酸イオンを発生し得るものであれば特に限定されず、各種の炭酸塩、炭酸ガス(二酸化炭素)等の少なくとも1種を用いることができる。炭酸塩としては、例えば炭酸アンモニウム((NH4)2CO3)、炭酸水素アンモニウム(NH4HCO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸水素カリウム(KHCO3)、炭酸リチウム(Li2CO3)等の少なくとも1種が挙げられる。
【0039】
水系溶媒としては、1)水又は2)水と水溶性有機溶剤との混合液を好適に用いることができる。水溶性有機溶剤としては、特に限定されないが、アルコール類を好適に用いることができる。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、t-ブチルアルコール等の一価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコールを用いることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0040】
水相中における炭酸イオン濃度は、有機相中のカルシウム成分及びマグネシウム成分と反応するのに十分な量とすれば良く、例えば炭酸塩が10~20重量%程度に溶解した水溶液を採用することができるが、これに限定されない。
【0041】
有機相と水相との混合方法については、特に制限されないが、例えば有機相に水相を滴下することにより混合することが好ましい。これによって、滴下した水滴が速やかに有機相中で分散して、終始均質な条件で混合液をより確実に調製できる。滴下する場合の速度は、例えば1~6mL/分程度とすることができるが、これに限定されない。
【0042】
また、有機相と水相との混合は、撹拌下で実施することが望ましい。撹拌方法は、限定的でなく、公知又は市販のミキサー、攪拌機等のほか、混合の規模によっては通常のマグネチックスターラーと回転子等を用いて行うこともできる。なお、撹拌に際し、超音波撹拌は、使用することを妨げないが、本発明では超音波撹拌を使用しなくてもドロマイトを合成することができる。攪拌時間は、特に限定されないが、通常は1~120分程度とすることが好ましく、特に30~60分とすることがより好ましい。これにより混合液(有機相/水相混合液)を得ることができる。
【0043】
混合温度(液温)は、特に限定されるものではないが、通常は20~100℃程度とし、特に20~50℃とすることが好ましい。攪拌時の混合液の加熱は、通常の加熱器等を用いて行うことができる。
【0044】
また、上記の混合において、カルシウム成分及びマグネシウム成分を含む有機相と炭酸イオンを含む水相の混合重量比は、特に限定されないが、通常は[CO3/(Ca+Mg)]モル比として0.5~2程度(特に0.9~1.1)となるように設定すれば良い。有機相/水相の重量比としては、通常1~10程度とすることが好ましく、特に1~4とすることがより好ましい。
【0045】
本発明では、上記の混合(滴下)が完了した後、必要に応じて、一定時間の熟成工程を行うことが好ましい。これにより、組成が均一なドロマイトをより確実に生成させることができる。
【0046】
熟成方法としては、特に限定されず、例えば上記混合で得られた混合液を撹拌することなく静置する方法等を好適に採用することができる。この場合の熟成温度は、ドロマイトの合成反応を促進するため、通常は25~100℃程度とし、好ましくは25~50℃とすれば良い。また、熟成時間は、例えば混合液中でドロマイトが析出、沈積した時点で終了すれば良いので特に限定されないが、通常は36~120時間程度の範囲内において熟成温度等に応じて適宜設定することができる。例えば、50℃の混合液における熟成時間は3~120時間程度とすることが好ましい。また例えば、熟成温度が25℃の混合液においては36~120時間程度とすることが好ましい。
【0047】
上記熟成工程のように、混合操作後の混合液を一定時間静置すると、混合液中のほか、場合によっては有機相/水相境界付近、水相を中心にドロマイトが析出する。
【0048】
このようにして、カルシウム成分及びマグネシウム成分と炭酸イオンとの反応が進行し、所定のドロマイトを生成させることができる。得られたドロマイトの組成は、Mg/Caのモル比が0.4~2.2であることが好ましい。
【0049】
生成したドロマイトは、公知の分離回収方法によって回収することができる。上記静置後に、混合液中で析出したドロマイトをろ過、遠心分離等の固液分離処理により回収した後、必要に応じて水、あるいはアルコール類、ヘキサン等の有機溶剤で洗浄することによって、ドロマイトを得ることができる。
【0050】
なお、合成条件によっては、有機相に含まれる有機酸と水相に溶解した炭酸塩由来のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオンから副生成されるアルカリ石鹸等がドロマイトとともに回収される場合があるが、水等による洗浄で除去することができる。
【0051】
このようにして得られたドロマイトは、X線回折分析(XRD)、電子顕微鏡(SEM-EDS)等の一般的な分析手法を用いることにより、結晶構造の同定、組織観察、組成分析等を行うことができ、その具体的な組成・構造を特定することができる。
【0052】
本発明の製造方法によって得られるドロマイトにおけるMg/Caのモル比は、理想組成比の1を含む0.4~2.2の組成を有するものとすることができる。
【0053】
なお、本発明において、ドロマイトは、例えばMgの割合が少なく鉱物の分類上はマグネシウム方解石に区分されるなど、ドロマイトの理想式CaMg(CO3)2と組成が異なるもの、Ca、Mg、CO3以外の元素を微量に含有するものも、本発明の効果を妨げない範囲内で許容される。
【0054】
本発明の製造方法によって生成されるドロマイトの性状は、特に限定されないが、通常は粉末の形態で得ることができる。粉末である場合の平均粒径は、例えば1~10μm程度の範囲内にあるが、これに限定されない。
【0055】
また、必要に応じて、本発明では、ドロマイトが生成した上記混合液の形態のままでも提供することができる。この場合は、例えば、溶媒で希釈又は置換された混合液、固形分が濃縮された混合液等のいずれの形態であっても良い。
【実施例0056】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0057】
<実施例1>
含有するCaモル量が2.5mM相当のナフテン酸カルシウム(粘性液体)とMgモル量が2.5mM相当のナフテン酸マグネシウム(粘性液体)を混合して、Mg/Caのモル比が1相当の有機相を調製した。この有機相に、室温で5.0mMの炭酸アンモニウムを溶解した16.0%の炭酸アンモニウム水溶液を滴下させ、攪拌しないまま50℃の恒温槽に静置した。有機相/水相の混合重量比は2.1であった。9時間の静置後、有機相/水相境界付近や水相に確認された析出物をろ過により回収してヘキサンで洗浄した後、XRD及びSEM-EDSによる分析及び観察を行った。
図1に示すとおり、実施例1のXRD分析で得られたX線回折スペクトルから、ドロマイトであることが確認された。また、SEM観察の結果、
図2に示すとおり粒径2~5μm程度の粒子が観察された。SEM-EDS測定の結果、得られたドロマイトにおけるMg/Caのモル比は0.78であった。
【0058】
<実施例2~5>
実施例2~5では、実施例1と同様にナフテン酸カルシウムとナフテン酸マグネシウムを混合して、含有するCa及びMgのモル量の合計が5.0mMであり、かつ、その配合量がMg/Caのモル比でそれぞれ0.5(実施例2)、1(実施例3)、2(実施例4)、3(実施例5)となる有機相を調製した。この有機相に、5.0mMの炭酸水素アンモニウムを溶解した14.2%の炭酸水素アンモニウム水溶液を滴下しながら、室温で1時間スターラー攪拌した後に、50℃の恒温槽に静置した。有機相/水相の混合重量比は2.2~2.3であった。120時間の静置後、有機相/水相境界付近や水相に確認された析出物をろ過により回収してエタノールで洗浄した後、XRD及びSEM-EDSによる分析及び観察を行った。
図1に示すとおり、実施例2~5のXRD分析で得られたX線回折スペクトルから、いずれもドロマイトであることが確認された。また、SEM観察の結果、
図3~6に示すとおり、粒径2μm程度の粒子が観察された。SEM-EDS測定の結果、実施例2~5において得られたドロマイトにおけるMg/Caのモル比は、それぞれ0.59、0.86、1.52、2.16であった。ドロマイトのMg/Caのモル比は、上述のXRD分析で得られた回折ピークの(104)面の面間隔と相関した(図示省略)。
【0059】
<実施例6>
2-エチルヘキサン酸カルシウム(粘性液体)と2-エチルヘキサン酸マグネシウムのトルエン溶液(粘性液体)を混合して、含有するCa及びMgのモル量の合計が5.4mMであり、かつ、Mg/Caのモル比が1.1相当の有機相を調製した。なお、トルエン/金属石鹸の混合重量比は0.4相当であった。この有機相に、5.0mMの炭酸ナトリウムを溶解した14.0%の炭酸ナトリウム水溶液を滴下しながら室温で30分間スターラー攪拌した後に、50℃の恒温槽に静置した。有機相/水相の混合重量比は1.2であった。70時間の静置後、前記混合液中に確認された析出物を遠心分離により回収してヘキサンで洗浄後、XRD及びSEM-EDSによる分析及び観察を行った。
図7に示すとおり、実施例6のXRD分析で得られたX線回折スペクトルから、ドロマイトであることが確認された。また、SEM観察の結果、
図8に示すとおり粒径2~5μm程度の粒子が観察された。SEM-EDS測定の結果、得られたドロマイトにおけるMg/Caのモル比は1.18であった。
【0060】
<実施例7>
2-エチルヘキサン酸カルシウムとナフテン酸マグネシウムを混合して、含有するCa及びMgのモル量の合計が5.0mMであり、かつ、Mg/Caのモル比が0.5相当の有機相を調製した。この有機相をホットスターラーで攪拌しながら40℃に加温調整した後に、2.5mMの炭酸カリウムを溶解した10.5%の炭酸カリウム水溶液を滴下しながら、引き続き加温とスターラー攪拌を5分間続けて40℃まで加温した後、さらに15分間41±2℃を保持した。なお、有機相/水相の混合重量比は1.6であった。その後、得られた混合液を50℃の恒温槽に静置した。3時間の静置後、前記混合液中に確認された析出物を遠心分離により回収してヘキサンで洗浄後、XRD及びSEM-EDSによる分析及び観察を行った。
図7に示すとおり、実施例7のXRD分析で得られたX線回折スペクトルから、ドロマイトであることが確認された。また、SEM観察の結果、
図9に示すとおり粒径5μm程度の粒子が観察された。SEM-EDS測定の結果、得られたドロマイトにおけるMg/Caのモル比は0.41であった。
【0061】
<実施例8>
実施例8では、実施例2と同様にナフテン酸カルシウムとナフテン酸マグネシウムを混合して、含有するCa及びMgのモル量の合計が5.0mMであり、かつ、Mg/Caのモル比が0.5の有機相を調製した。この有機相に、5.0mMの炭酸カリウムを溶解した21.0%の炭酸カリウム水溶液を滴下しながら室温で1時間スターラー攪拌した後に、50℃の恒温槽に静置した。有機相/水相の混合重量比は2.0であった。120時間の静置後、有機相/水相境界付近や水相に確認された析出物を遠心分離により回収してヘキサンで洗浄後、XRD及びSEM-EDSによる分析及び観察を行った。
図7に示すとおり、実施例8のXRD分析で得られたX線回折スペクトルから、ドロマイトであることが確認された。また、SEM観察の結果、
図10に示すとおり粒径2~5μm程度の平行六面体様の粒子が観察された。SEM-EDS測定の結果、得られたドロマイトにおけるMg/Caのモル比は0.54であった。
【0062】
<実施例9>
実施例9では、実施例8と同様に調製した有機相に、室温でスターラー攪拌しながら蒸留水を2分間滴下して、混合液を調製した。なお、蒸留水の滴下量は、有機相/水相の混合重量比で3.2であった。その後、室温でスターラー攪拌を続けながら、常圧下で前記混合液8.5gに対して炭酸ガスを90分かけて10L吹き込んだ後に、50℃の恒温槽に静置した。20時間の静置後、得られた混合液中に確認された析出物を遠心分離により回収してヘキサンで洗浄後、XRD及びSEM-EDSによる分析及び観察を行った。
図7に示すとおり、実施例9のXRD分析で得られたX線回折スペクトルから、ドロマイトであることが確認された。また、SEM観察の結果、
図11に示すとおり粒径数μmの微粒子が部分的に表面を覆う粒径10μm程度の塊状粒子が観察された。SEM-EDS測定の結果、得られたドロマイトにおけるMg/Caのモル比は0.58であった。
【0063】
<実施例10>
リシノール酸カルシウム(固体粉末)とリシノール酸マグネシウム(固体粉末)を室温でテトラヒドロフランに混合攪拌して、含有するCa及びMgのモル量の合計が2.5mMであり、かつ、Mg/Caのモル比が1.25相当の有機相を調製した。なお、テトラヒドロフラン/金属石鹸の混合重量比は3.8であった。この有機相に、2.5mMの炭酸ナトリウムを溶解した14.0%の炭酸ナトリウム水溶液を滴下しながら室温で1時間スターラー攪拌した後に、25℃の恒温槽に静置した。有機相/水相の混合重量比は4.0であった。70時間の静置後、前記混合液中に確認された析出物を遠心分離により回収してヘキサン、水及びエタノールで順次洗浄後、XRD及びSEM-EDSによる分析及び観察を行った。
図12に示すとおり、実施例10のXRD分析で得られたX線回折スペクトルから、ドロマイトであることが確認された。また、SEM観察の結果、
図13に示すとおり粒径2~5μm程度の粒子が観察された。SEM-EDS測定の結果、得られたドロマイトにおけるMg/Caのモル比は1.29であった。
【0064】
<実施例11>
ナフテン酸カルシウム(粘性液体)とラウリン酸マグネシウム(固体粉末)を室温でオクタノールに混合攪拌して、含有するCa及びMgのモル量の合計が1.1mMであり、かつ、Mg/Caのモル比が1.6相当の有機相を調製した。なお、オクタノール/金属石鹸の混合重量比は9.9であった。この有機相に、1.1mMの炭酸ナトリウムを溶解した14.1%の炭酸ナトリウム水溶液を滴下しながら室温で1時間スターラー攪拌した後に、40℃の恒温槽に静置した。有機相/水相の混合重量比は11.1であった。65時間の静置後、前記混合液中に確認された析出物を遠心分離により回収してヘキサンで洗浄後、XRD及びSEM-EDSによる分析及び観察を行った。
図12に示すとおり、実施例11のXRD分析で得られたX線回折スペクトルから、ドロマイトであることが確認された。また、SEM観察の結果、
図14に示すとおり粒径2~5μm程度の粒子が観察された。SEM-EDS測定の結果、得られたドロマイトにおけるMg/Caのモル比は1.41であった。
【0065】
<実施例12>
実施例12では、実施例3と同様にナフテン酸カルシウムとナフテン酸マグネシウムを混合して、含有するCa及びMgのモル量の合計が5.0mMであり、かつ、Mg/Caのモル比が1の有機相を調製した。この有機相をホットスターラーで攪拌しながら95℃に加温調整した後に、5.0mMの炭酸ナトリウムを溶解した14.0%の炭酸ナトリウム水溶液を滴下しながら、引き続き加温とスターラー攪拌を10分間続けて100℃まで加温した後、さらに10分間100±2℃を保持した。なお、有機相/水相の混合重量比は1.7であった。その後、得られた混合液を100℃の恒温槽に静置した。20時間の静置後、前記混合液中に確認された析出物を遠心分離により回収してヘキサンで洗浄後、XRD及びSEM-EDSによる分析及び観察を行った。
図15に示すとおり、実施例12のXRD分析で得られたX線回折スペクトルから、ドロマイトであることが確認された。また、SEM観察の結果、
図16に示すとおり粒径1~5μm程度の細く伸びた粒子のなかに、同粒子が放射状に伸びる球状組織が観察された。なお、SEM-EDS測定の結果、得られたドロマイトにおけるMg/Caのモル比は0.89であった。
【0066】
<実施例13>
実施例13では、実施例2と同様にナフテン酸カルシウムとナフテン酸マグネシウムを混合して、含有するCa及びMgのモル量の合計が5.0mMであり、かつ、Mg/Caのモル比が0.5の有機相を調製した。この有機相に、5.0mMの炭酸アンモニウムを蒸留水とグリセリンの混合溶液(重量比1:1)に溶解した8.0%の炭酸アンモニウム溶液を滴下しながら室温で1時間スターラー攪拌した後に、50℃の恒温槽に静置した。有機相/水相の混合重量比は1.1であった。70時間の静置後、有機相/水相境界付近や水相に確認された析出物を遠心分離により回収してヘキサンで洗浄後、XRD及びSEM-EDSによる分析及び観察を行った。
図15に示すとおり、実施例13のXRD分析で得られたX線回折スペクトルから、ドロマイトであることが確認された。また、SEM観察の結果、
図17に示すとおり粒径2μm程度の粒子が観察された。SEM-EDS測定の結果、得られたドロマイトにおけるMg/Caのモル比は0.70であった。
【0067】
<実施例14>
酢酸マグネシウム4水和物の12.5%エタノール溶液に、2-エチルヘキサン酸カルシウム(粘性液体)を室温で混合攪拌し、含有するCa及びMgのモル量の合計が5.0mMであり、かつ、Mg/Caのモル比が0.67相当のゲル状の有機相を調製した。なお、エタノール溶液/2-エチルヘキサン酸カルシウムの混合重量比は1.1であった。この有機相をホットスターラーで攪拌しながら45℃に加温調整して得た粘性溶液に、5.0mMの炭酸アンモニウムを溶解した16.0%の炭酸アンモニウム水溶液を滴下しながら、引き続き加温とスターラー攪拌を25分間続けて45℃まで加温した後、さらに30分間45±2℃を保持した。なお、有機相/水相の混合重量比は2.1であった。その後、得られた混合液を50℃の恒温槽に静置した。14時間の静置後、前記混合液中に確認された析出物を遠心分離により回収してヘキサンで洗浄後、XRD及びSEM-EDSによる分析及び観察を行った。
図15に示すとおり、実施例14のXRD分析で得られたX線回折スペクトルから、ドロマイトであることが確認された。また、SEM観察の結果、
図18に示すとおり粒径0.5~2μm程度の粒子が観察された。SEM-EDS測定の結果、得られたドロマイトにおけるMg/Caのモル比は0.57であった。
【0068】
<実施例15>
酢酸マグネシウム4水和物の9.7%エタノール溶液に、酢酸カルシウム1水和物の20%水溶液を室温で混合攪拌して、含有するCa及びMgのモル量の合計が5.0mMであり、かつ、Mg/Caのモル比が1相当のゲル状の有機相を調製した。なお、エタノール溶液/酢酸カルシウム水溶液の混合重量比は2.5であった。この有機相に、5.0mMの炭酸アンモニウムを溶解した16.0%の炭酸アンモニウム水溶液を滴下しながら、室温で1時間スターラー攪拌して得た白色溶液を、40℃の恒温槽に静置した。有機相/水相の混合重量比は2.6であった。18時間の静置後、得られた混合液中に確認された析出物を遠心分離により回収してエタノールで洗浄後、XRD及びSEM-EDSによる分析及び観察を行った。
図15に示すとおり、実施例15のXRD分析で得られたX線回折スペクトルから、ドロマイトであることが確認された。また、SEM観察の結果、
図19に示すとおり粒径5~7μm程度の粒子が観察された。SEM-EDS測定の結果、得られたドロマイトにおけるMg/Caのモル比は0.76であった。
【0069】
<実施例16>
ナフテン酸マグネシウム(粘性液体)に、酢酸カルシウム1水和物の20%水溶液を室温で混合攪拌して、含有するCa及びMgのモル量の合計が2.5mMであり、かつ、Mg/Caのモル比が1相当の有機相(乳濁液)を調製した。なお、ナフテン酸マグネシウム/酢酸カルシウム水溶液の混合重量比は1.4であった。この有機相をホットスターラーで攪拌しながら50℃に加温調整した後に、2.5mMの炭酸アンモニウムを溶解した16.0%の炭酸アンモニウム水溶液を滴下しながら、引き続き加温とスターラー攪拌を5分間続けて50℃まで加温した後、さらに30分間50±2℃を保持した。なお、有機相/水相の混合重量比は1.7であった。その後、得られた混合液を70℃の恒温槽に静置した。2時間の静置後、前記混合液中に確認された析出物を遠心分離により回収してヘキサンで洗浄後、XRD及びSEM-EDSによる分析及び観察を行った。
図20に示すとおり、実施例16のXRD分析で得られたX線回折スペクトルから、ドロマイトであることが確認された。また、SEM観察の結果、
図21に示すとおり粒径2μm程度の粒子が観察された。SEM-EDS測定の結果、得られたドロマイトにおけるMg/Caのモル比は0.88であった。
【0070】
<実施例17>
リシノール酸カルシウム(固体粉末)の20%テトラヒドロフラン溶液に、2-エチルヘキサン酸カルシウム(粘性液体)、2-エチルヘキサン酸マグネシウムのトルエン溶液(粘性液体)及びリシノール酸マグネシウム(固体粉末)の10%エタノール溶液を室温で順次、混合攪拌して金属石鹸の混合溶液を調製した。さらに、前記混合溶液に、酢酸カルシウム1水和物(固体粉末)及び酢酸マグネシウム4水和物(固体粉末)の10%水溶液を室温で混合攪拌して、含有するCa及びMgのモル量の合計が3.0mMであり、かつ、Mg/Caのモル比が1相当の有機相を調製した。なお、金属石鹸の混合溶液/酢酸塩水溶液の混合重量比は2.9であった。また、有機相におけるカルシウム原料の配分量は、リシノール酸カルシウム、2-エチルヘキサン酸カルシウム及び酢酸カルシウム1水和物が含有するCaのモル量をそれぞれ0.5mM相当とした。また、マグネシウム原料の配分量も、リシノール酸マグネシウム、2-エチルヘキサン酸マグネシウム及び酢酸マグネシウム4水和物が含有するMgのモル量をそれぞれ0.5mM相当とした。この有機相に、3.0mMの炭酸アンモニウムを溶解した16.0%の炭酸アンモニウム水溶液を滴下しながら室温で1時間スターラー攪拌した後に、70℃の恒温槽に静置した。有機相/水相の混合重量比は4.2であった。1時間の静置後、得られた混合液中に確認された析出物を遠心分離により回収した後、未洗浄のままXRD及びSEM-EDSによる分析及び観察を行った。
図20に示すとおり、実施例17のXRD分析で得られたX線回折スペクトルから、ドロマイトであることが確認された。また、SEM観察の結果、
図22に示すとおり粒径5μm程度の粒子が観察された。SEM-EDS測定の結果、得られたドロマイトにおけるMg/Caのモル比は0.81であった。