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特開2024-106694油分を使用しない米菓及びその製造方法
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  • 特開-油分を使用しない米菓及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106694
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】油分を使用しない米菓及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 3/34 20060101AFI20240801BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20240801BHJP
【FI】
A23G3/34 104
A23L7/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011094
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】512259237
【氏名又は名称】株式会社オリエント
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】桶本 卓也
【テーマコード(参考)】
4B014
4B023
【Fターム(参考)】
4B014GG01
4B014GG03
4B014GK01
4B014GP01
4B014GP14
4B023LC08
4B023LE02
4B023LE07
4B023LG01
4B023LG04
4B023LL01
4B023LP03
4B023LP05
4B023LP08
(57)【要約】
【課題】油分を使用しないことで長期保存を可能にした米菓及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】うるち米を製粉し、前記製粉後の粉状のうるち米に、粉状又は粒状の味成分を添加することで味付けを行う。あるいは、うるち米を製粉し、前記製粉後の粉状のうるち米に熱湯を注ぎ込んだ後、練り上げる際に、粉状又は粒状の味成分を添加することで味付けを行う。あるいは、うるち米を製粉し、前記製粉後の粉状のうるち米に熱湯を注ぎ込んで練り上げ、前記練り上げられ、まとまったうるち米を球状に握り、前記球状にされたうるち米を蒸した後搗く際に、粉状又は粒状の味成分を添加する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
うるち米を用いる米菓の製造方法であって、うるち米を製粉し、前記製粉後の粉状のうるち米に、粉状又は粒状の味成分を添加することで味付けを行うことを特徴とする油分を使用しない米菓の製造方法。
【請求項2】
うるち米を用いる米菓の製造方法であって、うるち米を製粉し、前記製粉後の粉状のうるち米に熱湯を注ぎ込んだ後、練り上げる際に、粉状又は粒状の味成分を添加することで味付けを行うことを特徴とする油分を使用しない米菓の製造方法。
【請求項3】
うるち米を用いる米菓の製造方法であって、うるち米を製粉し、前記製粉後の粉状のうるち米に熱湯を注ぎ込んで練り上げ、前記練り上げられ、まとまったうるち米を球状に握り、前記球状にされたうるち米を蒸した後搗く際に、粉状又は粒状の味成分を添加することで味付けを行うことを特徴とする油分を使用しない米菓の製造方法。
【請求項4】
もち米を用いる米菓の製造方法であって、もち米を洗米し、前記洗米後のもち米を水に浸けて吸水させ、前記吸水したもち米を蒸し上げた後、搗く前に、粉状又は粒状の味成分を添加することで味付けを行うことを特徴とする油分を使用しない米菓の製造方法。
【請求項5】
もち米を用いる米菓の製造方法であって、もち米を洗米し、前記洗米後のもち米を水に浸けて吸水させ、前記吸水したもち米を蒸し上げた後、搗く際に、粉状又は粒状の味成分を添加することで味付けを行うことを特徴とする油分を使用しない米菓の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかの製造方法で製造された米菓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油分を使用しない米菓及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
米菓にはいくつかの製造方法があるが、需要者の嗜好に合わせて様々な味付けを施すことが一般的であるため、味ごとの生地を準備する必要のない製造方法、即ち、米菓製造の最終工程で米菓に味付けをするという製造方法が好まれている。ここで、前記最終工程における味付けにおいては、粉状又は粒状の調味料等を米菓に付着させるため、油分をバインダとして米菓に噴霧しているが、その場合、油を使用することで油が酸化する、所謂油焼け現象が起こり、早期の品質低下(賞味・消費期限の短縮)を招く。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】全国米菓工業組合のWebページ(https://www.arare-osenbei.jp/make/#Osenbei)
【非特許文献2】農林水産省Webページ(https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0109/02.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現代では、いつ天災が起こるか分からず、東京都においては、3日分の非常食を備蓄しておくことが求められており、非常食は大変重要な役割を担っている。米菓も非常食の一つとして一役を担っているが、上述したように、油分を使用していると長期の保存に向かない。そこで本発明は、油分を使用しないことで長期保存を可能にした米菓及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、うるち米を用いる米菓の製造方法であって、うるち米を製粉し、前記製粉後の粉状のうるち米に、粉状又は粒状の味成分を添加することで味付けを行うことを特徴とする油分を使用しない米菓の製造方法である。
【0006】
上記課題を解決するための請求項2に記載の発明は、うるち米を用いる米菓の製造方法であって、うるち米を製粉し、前記製粉後の粉状のうるち米に熱湯を注ぎ込んだ後、練り上げる際に、粉状又は粒状の味成分を添加することで味付けを行うことを特徴とする油分を使用しない米菓の製造方法である。
【0007】
上記課題を解決するための請求項3に記載の発明は、うるち米を用いる米菓の製造方法であって、うるち米を製粉し、前記製粉後の粉状のうるち米に熱湯を注ぎ込んで練り上げ、前記練り上げられ、まとまったうるち米を球状に握り、前記球状にされたうるち米を蒸した後搗く際に、粉状又は粒状の味成分を添加することで味付けを行うことを特徴とする油分を使用しない米菓の製造方法である。
【0008】
上記課題を解決するための請求項4に記載の発明は、もち米を用いる米菓の製造方法であって、もち米を洗米し、前記洗米後のもち米を水に浸けて吸水させ、前記吸水したもち米を蒸し上げた後、搗く前に、粉状又は粒状の味成分を添加することで味付けを行うことを特徴とする油分を使用しない米菓の製造方法である。
【0009】
上記課題を解決するための請求項5に記載の発明は、もち米を用いる米菓の製造方法であって、もち米を洗米し、前記洗米後のもち米を水に浸けて吸水させ、前記吸水したもち米を蒸し上げた後、搗く際に、粉状又は粒状の味成分を添加することで味付けを行うことを特徴とする油分を使用しない米菓の製造方法である。
【0010】
上記課題を解決するための請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかの製造方法で製造された米菓である。
【発明の効果】
【0011】
本願に係る上記発明によれば、いずれの製造方法であっても、バインダを使用することなく味付けを行うことが可能であって、油分を使用することなく米菓を製造することができるため、長期保存に向いた米菓を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る油分を使用しない米菓の製造方法の第1の実施形態における処理の流れを示す工程図である。
図2】本発明に係る油分を使用しない米菓の製造方法の第2の実施形態における処理の流れを示す工程図である。
図3】本発明に係る油分を使用しない米菓の製造方法の第3の実施形態における処理の流れを示す工程図である。
図4】本発明に係る油分を使用しない米菓の製造方法の第4の実施形態における処理の流れを示す工程図である。
図5】本発明に係る油分を使用しない米菓の製造方法の第5の実施形態における処理の流れを示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。米菓にはいくつかの製造方法があるが、需要者の嗜好に合わせて様々な味付けを施すことが一般的であるため、味ごとの生地を準備する必要のない、最終工程で味付けを行う製造方法が好まれている。この最終工程で味付けを行う際、既に米菓は出来上がっているため、その米菓に味付けをするために油分をバインダとして使用し、粉状又は粒状の味成分を付着させる味付け方法が一般的である。
【0014】
最終工程で味付けを行う従来の製造方法の一例を上げると、それはうるち米を用いる場合で、(A)製粉工程、(B)練り上げ工程、(C)蒸し上げ工程、(D)搗き工程、(E)伸ばし・型抜き工程、(F)乾燥工程、(G)焼き工程、(H)味付け工程、の8つの工程で構成される。これは、主にせんべいの製造に用いられる工程である。以下、それぞれの工程内容を説明する。
【0015】
(A)製粉工程
先ず、うるち米を洗米する。洗米後、水に浸けて吸水させ、十分に吸水した米を石うすで一定の粗さに製粉する。
(B)練り上げ工程
前工程で製粉した粉に熱湯を注ぎ込む。次いで水分を含んだ粉を練り上げ、粉がまとまってきたら、練り球を握る。
(C)蒸し上げ工程
前工程で作られた練り球をせいろに並べて蒸す。この際、練り球を棒状にちぎった上でせいろで蒸しても良い。
(D)搗き工程
前工程で蒸された練り球を、搗く。この工程で餅生地が完成する。
(E)伸ばし・型抜き工程
前工程で生成した餅生地を、人力又は機械式ローラーで薄く伸ばして、展延生地を作る。そして、出来上がった展延生地を型抜きする。
(F)乾燥工程
前工程で型抜きした型抜き生地を、網に並べて4~5時間程度、熱風で乾燥させる。
(G)焼き工程
前工程で乾燥した型抜き生地を、相応時間焼く。
(H)味付け工程
前工程で焼き上がった型抜き生地に、味付けを行う。この味付けは、粉状又は粒状の味成分を付着させることによって行い、その付着のためのバインダとして、一般的に油分が用いられる。
【0016】
一方、本発明に係る油分を使用しない米菓の製造方法の第1の実施形態は、上述従来の米菓製造工程のうちの(H)の味付け工程が、(A)の製粉工程と(B)の練り上げ工程の間にくるもので、製粉後、練り上げ前(生地完成前)の粉の状態のうちに味成分を添加する。即ち、(A)の製粉工程の次に、出来上がった粉に粉状又は粒状の味成分をよく混ぜ込むことにより味付け処理する(図1参照)。そのため、バインダを使用しての味付け工程が不要となり、味付けにバインダを使用しないために、長期保存が可能な米菓を製造することができる。
【0017】
本発明に係る油分を使用しない米菓の製造方法の第2の実施形態は、上述した従来の米菓製造工程のうちの(H)の味付け工程が、(B)の練り上げ工程と同時となる。即ち、製粉後、熱湯を注ぎ込み、粉を練り上げている最中に、粉状又は粒状の味成分を混ぜ込み、その後、更に粉を練り上げる(図2参照)。この製造方法によっても、バインダを使用しての味付け工程が不要となり、味付けにバインダを使用しないために、長期保存が可能な米菓を製造することができる。
【0018】
更に、本発明に係る油分を使用しない米菓の製造方法の第3の実施形態は、上述した従来の米菓製造工程のうちの(H)の味付け工程が、(D)の搗き工程と同時となる。即ち、搗き処理の最中に、粉状又は粒状の味成分を混ぜ込む(図3参照)。この製造方法によっても、バインダを使用しての味付け工程が不要となり、味付けにバインダを使用しないために、長期保存が可能な米菓を製造することができる。
【0019】
以上の第1~第3の実施形態による方法で製造された米菓は、いずれも製造に際して油分を使用していないため、油焼けの心配がなく、長期保存に向いた米菓となる。
【0020】
最終工程で味付けを行う従来の製造方法の別例を挙げると、それはもち米を用いる場合で、(a)洗米・蒸し工程、(b)搗き工程、(c)冷却工程、(d)カット工程、(e)削り工程、(f)乾燥工程、(g)焼き工程、(h)味付け工程、の8つの工程で構成される。これは、主におかきやあられの製造に用いられる工程である。以下、それぞれの工程内容を説明する。
【0021】
(a)洗米・蒸し工程
先ず、もち米を洗米する。洗米後、水に浸けて吸水させ、十分に吸水したもち米を蒸し上げる。一般的には、せいろで蒸す。
(b)搗き工程
前工程で蒸し上がったもち米を、丸粒のまま搗く。
(c)冷却工程
前工程で搗いた餅(米)を容器に入れ、又は、棒状に型取って冷却し、固める。
(d)カット工程
前工程で固めた餅を人力又は機械式ローラーで薄く伸ばして、展延生地を作る。そして、出来上がった展延生地をカットして、米菓の餅生地にする。
(e)削り工程
前工程で生成した餅生地を削り、型抜きする。
(f)乾燥工程
前工程で型抜きした型抜き生地を乾燥させる。
(g)焼き工程
前工程で乾燥した型抜き生地を、相応時間焼く。
(h)味付け工程
前工程で焼き上がった生地に、味付けを行う。この味付けは、粉状又は粒状の味成分を付着させることによって行い、その付着のためのバインダとして、一般的に油分が用いられる。
【0022】
一方、本発明に係る油分を使用しない米菓の製造方法の第4の実施形態は、上述した従来の米菓製造工程ののうちの(h)の味付け工程が、(a)の洗米・蒸し工程と(b)の搗き工程の間にくるもので、洗米後、蒸し上げたもち米に、粉状又は粒状の味成分を添加する。(図4参照)。そのため、バインダを使用しての味付け工程が不要、即ち、味付けにバインダを使用する必要がなく、長期保存に向いた米菓を製造することができる。
【0023】
本発明に係る油分を使用しない米菓の製造方法の第5の実施形態は、上述した従来の米菓製造工程のうちの(h)の味付け工程が、(b)の搗き工程と同時となる。即ち、搗き工程時にもち米に粉状又は粒状の味成分を加味する(図5参照)。この製造方法によっても、バインダを使用しての味付け工程が不要、即ち、味付けにバインダを使用する必要がなく、長期保存に向いた米菓を製造することができる。
【0024】
以上の第4及び第5の実施形態による方法で製造された米菓は、いずれも製造に際して油分を使用していないため、油焼けの心配がなく、長期保存に向いた米菓となる。
【0025】
上記各製造方法によって製造された米菓は、いずれの製造方法も油分を使用することなく味付けを行うこととなり、非常食や保存食といった長期保存を目的とした米菓の製造に適しており、その方法によって製造された米菓は、長期保存可能なため、非常食や保存食に適している。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は上記構成であって、いずれの製造方法であっても、バインダを使用することなく米菓の味付けを行うことが可能であり、そのため油分を使用することなく米菓を製造することができる。即ち、長期保存に向いた米菓を製造することが可能であるので、その産業上の利用可能性は大いにある。
図1
図2
図3
図4
図5