(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106698
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】位相シフトマスクブランクス、位相シフトマスク、製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/26 20120101AFI20240801BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20240801BHJP
C23C 14/34 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
G03F1/26
C23C14/06 E
C23C14/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011100
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000101710
【氏名又は名称】アルバック成膜株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】諸沢 成浩
(72)【発明者】
【氏名】古山 祐一
(72)【発明者】
【氏名】関根 正弘
【テーマコード(参考)】
2H195
4K029
【Fターム(参考)】
2H195BA07
2H195BA12
2H195BB03
2H195BB15
2H195BB25
2H195BC05
2H195BC19
2H195BC28
4K029AA09
4K029BA07
4K029BA52
4K029CA05
4K029DC05
4K029EA01
4K029EA04
4K029EA05
(57)【要約】
【課題】耐薬性とエッチング時間短縮と断面形状の垂直性を維持して庇の形成を抑制する。
【解決手段】位相シフトマスクとなるマスク層を有する位相シフトマスクブランクスであって、透明基板に積層される位相シフト層と、位相シフト層に積層されたクロムを含有する遮光層と、を有し、位相シフト層は、炭素、酸素、窒素、モリブデン、シリコンを含み、モリブデンに対するシリコンの濃度比Si/Moの膜厚方向の平均値が、2.5より小さいとともに、膜厚方向において透明基板から離間する表面側にあり45atm%以上の窒素濃度の表面層と、膜厚方向において表面層よりも透明基板に近接して表面層よりも窒素濃度が低い中間層と、膜厚方向において中間層よりも前記透明基板に近接して記表面層よりも窒素濃度が低いエッチング時間短縮層と、を有して、エッチングによって前記遮光層との界面における庇が形成されない。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相シフトマスクとなるマスク層を有する位相シフトマスクブランクスであって、
透明基板に積層されて金属シリサイドからなる位相シフト層と、
前記位相シフト層に積層されたクロムを含有する遮光層と、
を有し、
前記位相シフト層は、炭素、酸素、窒素、モリブデン、シリコンを含み、モリブデンに対するシリコンの濃度比Si/Moの膜厚方向の平均値が、2.5より小さいとともに、
膜厚方向において前記透明基板から離間する表面側にあるとともに、45atm%以上の窒素濃度の表面層と、
膜厚方向において前記表面層よりも前記透明基板に近接するとともに、前記表面層よりも窒素濃度が低い中間層と、
膜厚方向において前記中間層よりも前記透明基板に近接するとともに、前記表面層よりも窒素濃度が低いエッチング時間短縮層と、
を有して、
エッチングによって前記遮光層との界面における庇が形成されない、
ことを特徴とする位相シフトマスクブランクス。
【請求項2】
前記中間層は、前記表面層よりもエッチングレートが大きい、
前記エッチング時間短縮層は、前記中間層よりもエッチングレートが大きい、
ことを特徴とする請求項1記載の位相シフトマスクブランクス。
【請求項3】
前記中間層のエッチングレートは、前記表面層のエッチングレートの1.4倍よりも大きい、
ことを特徴とする請求項2記載の位相シフトマスクブランクス。
【請求項4】
前記エッチング時間短縮層のエッチングレートは、前記表面層のエッチングレートの2.5倍よりも大きい、
ことを特徴とする請求項2記載の位相シフトマスクブランクス。
【請求項5】
前記表面層は、膜厚20nm以下である、
ことを特徴とする請求項1記載の位相シフトマスクブランクス。
【請求項6】
前記中間層は、7atm%以下の酸素濃度で4atm%以下の炭素濃度で膜厚30nm以上である、
ことを特徴とする請求項1記載の位相シフトマスクブランクス。
【請求項7】
前記エッチング時間短縮層は、7atm%以上の酸素濃度で4atm%以上の炭素濃度で膜厚30nm以上である、
ことを特徴とする請求項1記載の位相シフトマスクブランクス。
【請求項8】
前記位相シフト層の膜厚は、135nm~145nmである、
ことを特徴とする請求項1記載の位相シフトマスクブランクス。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか記載の位相シフトマスクブランクスの製造方法であって、
前記位相シフト層を形成する際に、モリブデンとシリコンとの比が、
2.2 ≦ Si/Mo < 2.5
に設定された組成を有するターゲットを用いてスパッタリングをおこなう、
ことを特徴とする位相シフトマスクブランクスの製造方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか記載の位相シフトマスクブランクスから製造される、
ことを特徴とする位相シフトマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位相シフトマスクブランクス、位相シフトマスク、製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどのFPD(flat panel display,フラットパネルディスプレイ)の製造、あるいは、半導体装置の製造では、フォトレジスト工程において、フォトマスクを用いている(特許文献1)。
この場合、フォトマスクとしては、石英基板にクロム化合物でマスク層を形成したマスクブランクスが用いられることがある。
【0003】
近年、高精細化が大きく進行しており、それに伴いフォトマスクの微細化も進展している。そのため、従来から用いられている遮光膜を用いたマスクだけでなく、エッヂ強調型の位相シフトマスクの必要性が高まっている。
従来、位相シフトマスクとしては、石英基板にマスク層として、シリサイド膜で位相シフト層を形成し、その上部にクロム膜のような金属膜で遮光層(バイナリ層)を形成することがある(特許文献2)。
【0004】
位相シフトマスクとして、クロムを用いた遮光層と金属シリサイドを用いた位相シフト層とを形成する場合には、所望のパターンを形成するために、所定のエッチング液(エッチャント)によるウエットエッチングが用いられる。また、洗浄のためにアルカリ等の洗浄液が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-090911号公報
【特許文献2】特開2021-148826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、フォトマスクにおける各層においては光学特性の許容範囲が極めて狭い。このため、各層の光学密度および膜厚の自由度が少なくなる。さらに、挟幅化に対応するために、断面垂直性がより厳しく求められる。
また、マスク層の各層においては僅かな膜厚変化も嫌うため、エッチング液あるいは洗浄液に対して、より高い耐薬性も求められる。しかし、高い耐薬性を有する層においては、エッチング時間が長くなり、処理対象以外で露出する領域における悪影響を及ぼす。例えば、ガラス基板表面における面荒れ、予期しない膜厚変化、エッチング不良による断面形状の悪化、等が生じる可能性がある。
このため、エッチング時間の短縮も求められている。
【0007】
FPD向けの位相シフトマスクブランクスにおいては、モリブデンとシリコンとを含有するシリサイド膜を位相シフト膜として用いた場合に、位相シフト膜のWETエッチング時間が長いという課題を有している。通常、シリサイド膜には、WETエッチング液としてフッ酸を含む溶液が用いられる。このため、シリサイド膜のWETエッチングの際に、石英基板がエッチングされ、シリサイド膜の位相シフト特性を変化させてしまうという問題を有する。そのため、WETエッチング時間はできるだけ短くすることが望ましい。
【0008】
さらに、WETエッチング時間短縮と耐薬特性は互いにトレードオフの関係にあり、WETエッチング時間が短い位相シフト膜を用いると、アルカリ溶液に対する耐薬特性が悪化するという関係を有する。アルカリ溶液はマスク作製の際の洗浄工程で用いられるために、耐薬特性が悪い場合には洗浄工程の際に位相シフトマスク特性が変化するという課題を有する。
【0009】
特に、耐薬性とエッチング時間短縮とを両立するために、位相シフト層における表面で耐薬性を向上し、ガラス基板に近接する部分ではエッチング時間を短縮するためにエッチングレートを高くすると、ガラス基板から離間する位置、つまり、クロムを含有する遮光層との境界付近でシリサイド層が残り、庇を形成してしまう。これにより断面形状の垂直性が阻害される。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、耐薬性とエッチング時間短縮とを両立可能とすること、かつ、断面形状の垂直性を維持して庇の形成を抑制すること、を可能な位相シフト層を有する位相シフトマスクブランクス、位相シフトマスクを提供可能とするという目的を達成しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 本発明の一態様にかかる位相シフトマスクブランクスは、
位相シフトマスクとなるマスク層を有する位相シフトマスクブランクスであって、
透明基板に積層されて金属シリサイドからなる位相シフト層と、
前記位相シフト層に積層されたクロムを含有する遮光層と、
を有し、
前記位相シフト層は、炭素、酸素、窒素、モリブデン、シリコンを含み、モリブデンに対するシリコンの濃度比Si/Moの膜厚方向の平均値が、2.5より小さいとともに、
膜厚方向において前記透明基板から離間する表面側にあるとともに、45atm%以上の窒素濃度の表面層と、
膜厚方向において前記表面層よりも前記透明基板に近接するとともに、前記表面層よりも窒素濃度が低い中間層と、
膜厚方向において前記中間層よりも前記透明基板に近接するとともに、前記表面層よりも窒素濃度が低いエッチング時間短縮層と、
を有して、
エッチングによって前記遮光層との界面における庇が形成されない、
ことにより上記課題を解決した。
(2) 本発明の位相シフトマスクブランクスは、上記(1)において
前記中間層は、前記表面層よりもエッチングレートが大きい、
前記エッチング時間短縮層は、前記中間層よりもエッチングレートが大きい、
ことができる。
(3) 本発明の位相シフトマスクブランクスは、上記(2)において
前記中間層のエッチングレートは、前記表面層のエッチングレートの1.4倍よりも大きい、
ことができる。
(4) 本発明の位相シフトマスクブランクスは、上記(2)において
前記エッチング時間短縮層のエッチングレートは、前記表面層のエッチングレートの2.5倍よりも大きい、
ことができる。
(5) 本発明の位相シフトマスクブランクスは、上記(1)において
前記表面層は、膜厚20nm以下である、
ことができる。
(6) 本発明の位相シフトマスクブランクスは、上記(1)において
前記中間層は、7atm%以下の酸素濃度で4atm%以下の炭素濃度で膜厚30nm以上である、
ことができる。
(7) 本発明の位相シフトマスクブランクスは、上記(1)において
前記エッチング時間短縮層は、7atm%以上の酸素濃度で4atm%以上の炭素濃度で膜厚30nm以上である、
ことができる。
(8) 本発明の位相シフトマスクブランクスは、上記(1)において
前記位相シフト層の膜厚は、135nm~145nmである、
ことができる。
(9) 本発明の位相シフトマスクブランクスの製造方法は、上記(1)から(8)8のいずれか記載の位相シフトマスクブランクスの製造方法であって、
前記位相シフト層を形成する際に、モリブデンとシリコンとの比が、
2.2 ≦ Si/Mo < 2.5
に設定された組成を有するターゲットを用いてスパッタリングをおこなう、
ことができる。
(10) 本発明の位相シフトマスクは、上記(1)から(8)8のいずれか記載の位相シフトマスクブランクスから製造される、
ことができる。
【0012】
(1) 本発明の一態様にかかる位相シフトマスクブランクスは、
位相シフトマスクとなるマスク層を有する位相シフトマスクブランクスであって、
透明基板に積層されて金属シリサイドからなる位相シフト層と、
前記位相シフト層に積層されたクロムを含有する遮光層と、
を有し、
前記位相シフト層は、炭素、酸素、窒素、モリブデン、シリコンを含み、モリブデンに対するシリコンの濃度比Si/Moの膜厚方向の平均値が、2.5より小さいとともに、
膜厚方向において前記透明基板から離間する表面側にあるとともに、45atm%以上の窒素濃度の表面層と、
膜厚方向において前記表面層よりも前記透明基板に近接するとともに、前記表面層よりも窒素濃度が低い中間層と、
膜厚方向において前記中間層よりも前記透明基板に近接するとともに、前記表面層よりも窒素濃度が低いエッチング時間短縮層と、
を有して、
エッチングによって前記遮光層との界面における庇が形成されない。
【0013】
これにより、モリブデンシリサイド膜表面における耐薬性を維持することができる。位相シフト層に対するエッチング時間を短縮することができる。庇の形成を防止して、マスク層の断面形状の適正化を図ることができる。フッ酸による位相シフト層の膜厚変動を抑制することができる。位相シフト層における位相シフト特性を変化させることがない。これらを同時に実現することができる。
また、モリブデンシリサイド膜である位相シフト層におけるエッチングレートを増加することができる。位相シフトパターンを速いエッチングによって形成することが可能になる。これにより、マスクブランクスから位相シフトマスクを製造する際、つまり、位相シフト層から位相シフトパターンを形成する際に、フッ酸を含有するエッチング液によって位相シフト層をエッチングした場合でも、必要なエッチング時間を短縮することができる。フッ酸を含有するエッチング液によって位相シフト層をエッチングした場合でも、オーバーエッチングを抑制することができる。ガラス基板(石英基板)である透明基板に対するフッ酸でのエッチングによる影響を低減することができる。ガラス基板のエッチングによる位相シフト特性を変化させることがない。
さらに、位相シフト層の表面で高い耐薬性を維持する。洗浄工程において、アルカリ等の洗浄液による膜厚変動を防止することができる。位相シフト層における位相シフト特性を変化させることがない。
これらを同時に実現することができる。
【0014】
(2) 本発明の位相シフトマスクブランクスは、上記(1)において
前記中間層は、前記表面層よりもエッチングレートが大きい、
前記エッチング時間短縮層は、前記中間層よりもエッチングレートが大きい、
ことができる。
【0015】
これにより、位相シフト層に対するエッチング時間を短縮することができる。モリブデンシリサイド膜表面における耐薬性を維持することができる。庇の形成を防止して、マスク層の断面形状の適正化を図ることができる。フッ酸による位相シフト層の膜厚変動を抑制することができる。位相シフト層における位相シフト特性を変化させることがない。これらを同時に実現することができる。
また、モリブデンシリサイド膜である位相シフト層におけるエッチングレートを増加することができる。位相シフトパターンを速いエッチングによって形成することが可能になる。これにより、マスクブランクスから位相シフトマスクを製造する際、つまり、位相シフト層から位相シフトパターンを形成する際に、フッ酸を含有するエッチング液によって位相シフト層をエッチングした場合でも、必要なエッチング時間を短縮することができる。フッ酸を含有するエッチング液によって位相シフト層をエッチングした場合でも、オーバーエッチングを抑制することができる。ガラス基板である透明基板に対するフッ酸でのエッチングによる影響を低減することができる。ガラス基板のエッチングによる位相シフト特性を変化させることがない。
さらに、位相シフト層の表面で高い耐薬性を維持する。洗浄工程において、アルカリ等の洗浄液による膜厚変動を防止することができる。位相シフト層における位相シフト特性を変化させることがない。
これらを同時に実現することができる。
【0016】
(3) 本発明の位相シフトマスクブランクスは、上記(2)において
前記中間層のエッチングレートは、前記表面層のエッチングレートの1.4倍よりも大きい、
ことができる。
【0017】
これにより、モリブデンシリサイド膜表面における耐薬性を維持することができる。位相シフト層に対するエッチング時間を短縮することができる。庇の形成を防止して、マスク層の断面形状の適正化を図ることができる。フッ酸による位相シフト層の膜厚変動を抑制することができる。位相シフト層における位相シフト特性を変化させることがない。これらを同時に実現することができる。
また、モリブデンシリサイド膜である位相シフト層におけるエッチングレートを増加することができる。位相シフトパターンを速いエッチングによって形成することが可能になる。これにより、マスクブランクスから位相シフトマスクを製造する際、つまり、位相シフト層から位相シフトパターンを形成する際に、フッ酸を含有するエッチング液によって位相シフト層をエッチングした場合でも、必要なエッチング時間を短縮することができる。フッ酸を含有するエッチング液によって位相シフト層をエッチングした場合でも、オーバーエッチングを抑制することができる。ガラス基板である透明基板に対するフッ酸でのエッチングによる影響を低減することができる。ガラス基板のエッチングによる位相シフト特性を変化させることがない。
さらに、位相シフト層の表面で高い耐薬性を維持する。洗浄工程において、アルカリ等の洗浄液による膜厚変動を防止することができる。位相シフト層における位相シフト特性を変化させることがない。
これらを同時に実現することができる。
【0018】
(4) 本発明の位相シフトマスクブランクスは、上記(2)において
前記エッチング時間短縮層のエッチングレートは、前記表面層のエッチングレートの2.5倍よりも大きい、
ことができる。
【0019】
これにより、モリブデンシリサイド膜表面における耐薬性を維持することができる。位相シフト層に対するエッチング時間を短縮することができる。庇の形成を防止して、マスク層の断面形状の適正化を図ることができる。フッ酸による位相シフト層の膜厚変動を抑制することができる。位相シフト層における位相シフト特性を変化させることがない。これらを同時に実現することができる。
また、モリブデンシリサイド膜である位相シフト層におけるエッチングレートを増加することができる。位相シフトパターンを速いエッチングによって形成することが可能になる。これにより、マスクブランクスから位相シフトマスクを製造する際、つまり、位相シフト層から位相シフトパターンを形成する際に、フッ酸を含有するエッチング液によって位相シフト層をエッチングした場合でも、必要なエッチング時間を短縮することができる。フッ酸を含有するエッチング液によって位相シフト層をエッチングした場合でも、オーバーエッチングを抑制することができる。ガラス基板である透明基板に対するフッ酸でのエッチングによる影響を低減することができる。ガラス基板のエッチングによる位相シフト特性を変化させることがない。
さらに、位相シフト層の表面で高い耐薬性を維持する。洗浄工程において、アルカリ等の洗浄液による膜厚変動を防止することができる。位相シフト層における位相シフト特性を変化させることがない。
これらを同時に実現することができる。
【0020】
(5) 本発明の位相シフトマスクブランクスは、上記(1)において
前記表面層は、膜厚20nm以下である、
ことができる。
【0021】
これにより、モリブデンシリサイド膜表面における耐薬性を維持することができる。位相シフト層に対するエッチング時間を短縮することができる。庇の形成を防止して、マスク層の断面形状の適正化を図ることができる。フッ酸による位相シフト層の膜厚変動を抑制することができる。位相シフト層における位相シフト特性を変化させることがない。これらを同時に実現することができる。
また、モリブデンシリサイド膜である位相シフト層におけるエッチングレートを増加することができる。位相シフトパターンを速いエッチングによって形成することが可能になる。これにより、マスクブランクスから位相シフトマスクを製造する際、つまり、位相シフト層から位相シフトパターンを形成する際に、フッ酸を含有するエッチング液によって位相シフト層をエッチングした場合でも、必要なエッチング時間を短縮することができる。フッ酸を含有するエッチング液によって位相シフト層をエッチングした場合でも、オーバーエッチングを抑制することができる。ガラス基板である透明基板に対するフッ酸でのエッチングによる影響を低減することができる。ガラス基板のエッチングによる位相シフト特性を変化させることがない。
さらに、位相シフト層の表面で高い耐薬性を維持する。洗浄工程において、アルカリ等の洗浄液による膜厚変動を防止することができる。位相シフト層における位相シフト特性を変化させることがない。
これらを同時に実現することができる。
【0022】
(6) 本発明の位相シフトマスクブランクスは、上記(1)において
前記中間層は、7atm%以下の酸素濃度で4atm%以下の炭素濃度で膜厚30nm以上である、
ことができる。
【0023】
これにより、モリブデンシリサイド膜表面における耐薬性を維持することができる。位相シフト層に対するエッチング時間を短縮することができる。庇の形成を防止して、マスク層の断面形状の適正化を図ることができる。フッ酸による位相シフト層の膜厚変動を抑制することができる。位相シフト層における位相シフト特性を変化させることがない。これらを同時に実現することができる。
また、モリブデンシリサイド膜である位相シフト層におけるエッチングレートを増加することができる。位相シフトパターンを速いエッチングによって形成することが可能になる。これにより、マスクブランクスから位相シフトマスクを製造する際、つまり、位相シフト層から位相シフトパターンを形成する際に、フッ酸を含有するエッチング液によって位相シフト層をエッチングした場合でも、必要なエッチング時間を短縮することができる。フッ酸を含有するエッチング液によって位相シフト層をエッチングした場合でも、オーバーエッチングを抑制することができる。ガラス基板である透明基板に対するフッ酸でのエッチングによる影響を低減することができる。ガラス基板のエッチングによる位相シフト特性を変化させることがない。
さらに、位相シフト層の表面で高い耐薬性を維持する。洗浄工程において、アルカリ等の洗浄液による膜厚変動を防止することができる。位相シフト層における位相シフト特性を変化させることがない。
これらを同時に実現することができる。
【0024】
(7) 本発明の位相シフトマスクブランクスは、上記(1)において
前記エッチング時間短縮層は、7atm%以上の酸素濃度で4atm%以上の炭素濃度で膜厚30nm以上である、
ことができる。
【0025】
これにより、モリブデンシリサイド膜表面における耐薬性を維持することができる。位相シフト層に対するエッチング時間を短縮することができる。庇の形成を防止して、マスク層の断面形状の適正化を図ることができる。フッ酸による位相シフト層の膜厚変動を抑制することができる。位相シフト層における位相シフト特性を変化させることがない。これらを同時に実現することができる。
また、モリブデンシリサイド膜である位相シフト層におけるエッチングレートを増加することができる。位相シフトパターンを速いエッチングによって形成することが可能になる。これにより、マスクブランクスから位相シフトマスクを製造する際、つまり、位相シフト層から位相シフトパターンを形成する際に、フッ酸を含有するエッチング液によって位相シフト層をエッチングした場合でも、必要なエッチング時間を短縮することができる。フッ酸を含有するエッチング液によって位相シフト層をエッチングした場合でも、オーバーエッチングを抑制することができる。ガラス基板である透明基板に対するフッ酸でのエッチングによる影響を低減することができる。ガラス基板のエッチングによる位相シフト特性を変化させることがない。
さらに、位相シフト層の表面で高い耐薬性を維持する。洗浄工程において、アルカリ等の洗浄液による膜厚変動を防止することができる。位相シフト層における位相シフト特性を変化させることがない。
これらを同時に実現することができる。
【0026】
(8) 本発明の位相シフトマスクブランクスは、上記(1)において
前記位相シフト層の膜厚は、135nm~145nmである、
ことができる。
【0027】
これにより、モリブデンシリサイド膜表面における耐薬性を維持することができる。位相シフト層に対するエッチング時間を短縮することができる。庇の形成を防止して、マスク層の断面形状の適正化を図ることができる。フッ酸による位相シフト層の膜厚変動を抑制することができる。位相シフト層における位相シフト特性を変化させることがない。これらを同時に実現することができる。
また、モリブデンシリサイド膜である位相シフト層におけるエッチングレートを増加することができる。位相シフトパターンを速いエッチングによって形成することが可能になる。これにより、マスクブランクスから位相シフトマスクを製造する際、つまり、位相シフト層から位相シフトパターンを形成する際に、フッ酸を含有するエッチング液によって位相シフト層をエッチングした場合でも、必要なエッチング時間を短縮することができる。フッ酸を含有するエッチング液によって位相シフト層をエッチングした場合でも、オーバーエッチングを抑制することができる。ガラス基板である透明基板に対するフッ酸でのエッチングによる影響を低減することができる。ガラス基板のエッチングによる位相シフト特性を変化させることがない。
さらに、位相シフト層の表面で高い耐薬性を維持する。洗浄工程において、アルカリ等の洗浄液による膜厚変動を防止することができる。位相シフト層における位相シフト特性を変化させることがない。
これらを同時に実現することができる。
【0028】
(9) 本発明の位相シフトマスクブランクスの製造方法は、上記(1)から(8)8のいずれか記載の位相シフトマスクブランクスの製造方法であって、
前記位相シフト層を形成する際に、モリブデンとシリコンとの比が、
2.2 ≦ Si/Mo < 2.5
に設定された組成を有するターゲットを用いてスパッタリングをおこなう、
ことができる。
【0029】
これにより、上記の位相シフトマスクブランクスを製造することが可能となる。特に、シリコンがモリブデンに対して少ないターゲットを用いることで、ウエットエッチング時間を短くすることが可能になるので、エッチング工程でのガラス基板におけるエッチングの影響を小さくして、位相シフト層の位相を高精度に制御できるので、微細パターンにおいても線幅変化の小さい位相シフトマスクを製造することが可能となる。
【0030】
(10) 本発明の位相シフトマスクは、上記(1)から(8)8のいずれか記載の位相シフトマスクブランクスから製造される、
ことができる。
【0031】
これにより、庇が形成されることがない位相シフトマスクを提供することが可能となる。
さらに、ウエットエッチング時間が短いために高価なエッチング液の消費量を抑制することが可能となる。
【0032】
本発明の位相シフトマスクブランクスによれば、位相シフト層の最表面に高い窒素濃度層を有する薄膜部分(表面層)を有するために、エッチング時間を短くしたままで、シリサイド膜で形成した位相シフト膜の耐薬特性を高くすることができる。
位相シフト層の最下層(エッチング時間短縮層)の酸素濃度と炭素濃度が中間層と比較して高いために、最下層のエッチングタイムが中間層よりも短く、中間層の耐薬特性を最下層と比較して改善することができる。
中間層と最下層の間にエッチングレート差を形成し、最下層のエッチングレートを中間層のエッチングレートと比較して大きくすることが可能になるので、フォトマスク形成後における位相シフトマスクの断面形状が垂直形状に近づき、庇を形成しない。
位相シフト層のエッチング時間を短くするためには、シリサイド膜におけるシリコンとモリブデンとの比率であるSi/Moの値を小さくすることが好ましい。位相シフト層におけるシリコンとモリブデンとの濃度の比率であるSi/Moを2.5以下にすることが好ましい。このシリサイド膜を形成するにはSi/Moを2.5より小さいスパッタリングターゲットを用いることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、位相シフト層のエッチング時間を短くすることができる。本発明によれば、フッ酸による透明基板のエッチングによって位相シフト特性を変化させることがない。本発明によれば、アルカリ液に対する耐薬性を維持ことができる。本発明によれば、位相シフト層の膜厚変動を抑制ことができる。本発明によれば、位相シフト特性の変動を防止することができる。本発明によれば、このような位相シフトマスクブランクス、位相シフトマスク、製造方法を提供することができるという効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明に係る位相シフトマスクブランクスの第1実施形態を示す断面図である。
【
図2】本発明に係る位相シフトマスクブランクスの第1実施形態を示す断面図であって、
図1における符号12pで示された箇所を示す拡大断面図である。
【
図3】本発明に係る位相シフトマスクブランクスの製造方法の第1実施形態における成膜装置を示す模式図である。
【
図4】本発明に係る位相シフトマスクの第1実施形態における製造方法を示す工程断面図である。
【
図5】本発明に係る位相シフトマスクの第1実施形態における製造方法を示す工程断面図である。
【
図6】本発明に係る位相シフトマスクの第1実施形態における製造方法を示す工程断面図である。
【
図7】本発明に係る位相シフトマスクの第1実施形態における製造方法を示す工程断面図である。
【
図8】本発明に係る位相シフトマスクの第1実施形態における製造方法を示す工程断面図である。
【
図9】本発明に係る位相シフトマスクの第1実施形態における製造方法を示す工程断面図である。
【
図10】本発明に係る位相シフトマスクの第1実施形態における製造方法を示す工程断面図である。
【
図11】本発明に係る位相シフトマスクの第1実施形態を示す断面図である。
【
図12】本発明に係る位相シフトマスクブランクスの実施形態において、モリブデンとシリコンとの比率、および、窒素濃度とエッチングレートとの関係を示すグラフである。
【
図13】本発明に係る位相シフトマスクブランクスの実施形態において、モリブデンシリサイド膜の膜厚と透過率との関係を示すグラフである。
【
図14】本発明に係る位相シフトマスクブランクスの実施形態において、酸素濃度/窒素濃度とエッチングレート比との関係を示すグラフである。
【
図15】本発明に係る位相シフトマスクブランクスの実施形態において、炭素濃度/窒素濃度とエッチングレート比との関係を示すグラフである。
【
図16】本発明に係る位相シフトマスクブランクスの実施形態において、位相シフト層の成膜条件、膜厚、酸素濃度、炭素濃度、窒素濃度、エッチングレート、エッチングレート比を示すものである。
【
図17】本発明に係る実験例における位相シフト層におけるオージェ分析結果を示すグラフである。
【
図18】実施例におけるSEMによりマスク層の断面を観察した画像である。
【
図19】実施例におけるSEMによりマスク層の断面を観察した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る位相シフトマスクブランクス、位相シフトマスク、製造方法の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における位相シフトマスクブランクスを示す断面図である。
図2は、
図1における符号12pで示された箇所を示す拡大断面図である。図において、符号10Bは、位相シフトマスクブランクスである。
【0036】
本実施形態に係る位相シフトマスクブランクス10Bは、露光光の波長が365nm~436nm程度の範囲、あるいは、露光光の波長が290~380nm程度の範囲で使用される位相シフトマスク(フォトマスク)に供されるものとされる。
本実施形態に係る位相シフトマスクブランクス10Bは、
図1に示すように、ガラス基板(透明基板)11と、このガラス基板11上に形成された位相シフト層12と、位相シフト層12上に形成された遮光層13と、で構成される。
【0037】
位相シフト層12は、ガラス基板11の表面に直に形成される。遮光層13は、位相シフト層12よりもガラス基板11から離間する位置に設けられる。遮光層13は、位相シフト層12の表面上に直に形成される。位相シフト層12は、ガラス基板11と遮光層13とに挟まれる。
位相シフト層12と遮光層13とは、フォトマスクとして必要な光学特性を有している。位相シフト層12と遮光層13とは、露光光の位相をほぼ180°変化可能な位相シフト膜であるマスク層を構成している。
【0038】
本実施形態に係る位相シフトマスクブランクス10Bは、フォトレジスト層15が、あらかじめマスク層に対して成膜された構成としてもよい(後述の
図4参照)。
【0039】
なお、本実施形態に係る位相シフトマスクブランクス10Bは、位相シフト層12と遮光層13とに加えて、マスク層が、反射防止層、密着層、耐薬層、保護層、エッチングストッパー層、等を積層した構成とされてもよい。さらに、本実施形態に係る位相シフトマスクブランクス10Bは、これらの積層膜の上に、フォトレジスト層15が形成されていてもよい(後述の
図4参照)。
【0040】
ガラス基板(透明基板)11は、透明性及び光学的等方性に優れた材料が用いられる。ガラス基板11は、例えば、石英ガラス基板が用いられる。ガラス基板11は、その大きさが特に制限されない。ガラス基板11は、当該位相シフトマスクを用いて露光する基板に応じたサイズが適宜選定される。当該位相シフトマスクを用いて露光する基板は、例えばLCD(液晶ディスプレイ)、プラズマディスプレイ、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイなどのFPD用基板等である。
【0041】
ガラス基板11は、一辺100mm程度の矩形基板を適用可能である。ガラス基板11は、一辺が100mmより大きくてもよい。ガラス基板11は、一辺2000mm以上の矩形基板を適用可能である。ガラス基板11は、厚み1mm以下の基板としてもよい。ガラス基板11は、厚みが1mmより大きくてもよい。ガラス基板11は、厚み数mmの基板としてもよい。ガラス基板11は、厚み10mm以上の基板も用いることができる。
【0042】
また、ガラス基板11は、表面のフラットネスを低減するようにしてもよい。ガラス基板11は、その表面を研磨することで、フラットネスを低減する。ガラス基板11は、例えば、フラットネスを20μm以下とすることができる。ガラス基板11の表面のフラットネスを低減することにより、マスクの焦点深度が深くなる。ガラス基板11の表面のフラットネスを低減することにより、微細かつ高精度なパターン形成に大きく貢献することが可能となる。さらに、ガラス基板11は、その表面のフラットネスを10μm以下とすることができる。ガラス基板11は、その表面のフラットネスを小さくする方が好ましい。
【0043】
位相シフト層12は、金属シリサイド膜である。位相シフト層12は、シリコンと、Ta、Ti、W、Mo、Zrなどの金属や、これらの金属どうしの合金と、を含む膜である。
位相シフト層12は、モリブデンシリサイド膜である。位相シフト層12は、O(酸素)を含有する。位相シフト層12は、N(窒素)を含有する。位相シフト層12は、C(炭素)を含有する。位相シフト層12は、MoSiX(X≧2)膜である。位相シフト層12は、MoSi2膜である。位相シフト層12は、MoSi3膜である。位相シフト層12は、MoSi4膜である。
【0044】
位相シフト層12は、含有するモリブデンとシリコンとの比率が、1 ≦ Si/Mo ≦ 2.5の範囲に設定される。位相シフト層12は、モリブデンに対するシリコンの濃度比Si/Moの膜厚方向の平均値が、2.5より小さい。
ここで、モリブデンに対するシリコンの濃度比Si/Moの膜厚方向の平均値とは、膜厚方向の組成を測定し、SiとMoの組成比の平均値として算出される。
濃度比Si/Moの膜厚方向の平均値が2.5より小さいとは、後述する表面層12cを除く位相シフト層12で、1 ≦ Si/Mo ≦ 2.5の範囲に設定されることを意味する。
【0045】
位相シフト層12は、膜厚方向において、モリブデンに対するシリコンの濃度比Si/Moが異なる領域を有する。位相シフト層12は、膜厚方向において、O(酸素)の濃度が異なる領域を有する。位相シフト層12は、膜厚方向において、N(窒素)の濃度が異なる領域を有する。位相シフト層12は、膜厚方向において、C(炭素)の濃度が異なる領域を有する。
【0046】
位相シフト層12は、位相シフトマスクとして用いる際の光学特性が所定範囲に設定される。位相シフト層12は、その光学特性として、波長365nm~436nm程度の範囲において、屈折率が2.4~3.1程度、消衰係数0.3~2.1、位相シフトの変化180°等に設定される。位相シフト層12は、光学特性を所定範囲に設定するため、組成および膜厚が所定の範囲に設定される。
位相シフト層12における組成比・膜厚は、製造する位相シフトマスク10に要求される光学特性に対応して設定される。
【0047】
位相シフト層12は、膜厚が100nm~200nmの範囲に設定される。位相シフト層12は、膜厚が120nm~150nmの範囲に設定される。位相シフト層12は、膜厚が135nm~145nmの範囲に設定される。
位相シフト層12は、膜厚方向に異なる組成を有する部分からなる。位相シフト層12は、膜厚方向に三層からなる。
【0048】
位相シフト層12は、
図2に示すように、膜厚方向にエッチング時間短縮層12aと、中間層12bと、表面層12cと、を有する。
エッチング時間短縮層12aと、中間層12bと、表面層12cとは、互いに積層される。エッチング時間短縮層12aと、中間層12bと、表面層12cとは、位相シフト層12の膜厚方向で互いに異なる位置にある。
エッチング時間短縮層12aは、ガラス基板11に接する。エッチング時間短縮層12aは、ガラス基板11に積層される。中間層12bは、エッチング時間短縮層12aに積層される。表面層12cは、中間層12bに積層される。遮光層13は、表面層12cに積層される。
【0049】
表面層12cは、位相シフト層12の厚さ方向のうち、ガラス基板11から最も離間する位相シフト層12の表面側にある。表面層12cは、位相シフト層12のなかで窒素濃度(窒素含有率)が最も高い。表面層12cは、窒素濃度が45atm%以上である。
【0050】
表面層12cは、炭素濃度(炭素含有率)が0.1atm%~1.5atm%の範囲を有する。表面層12cは、窒素濃度が40atm%~60atm%の範囲を有する。表面層12cは、酸素濃度(酸素含有率)が0.1atm%~4.0atm%の範囲を有する。表面層12cは、シリコン濃度(シリコン含有率)が30.0atm%~40.0atm%の範囲を有する。表面層12cは、モリブデン濃度(モリブデン含有率)が10.0atm%~20.0atm%の範囲を有する。
表面層12cは、モリブデンに対するシリコンの濃度比Si/Moが2.5 ≦ Si/Mo ≦ 2.6の範囲を有する。
【0051】
表面層12cは、膜厚方向で組成の比率が変化しないように形成される。表面層12cは、膜厚方向で組成の比率が一定に形成される。
ここで、膜厚方向で組成の比率を一定に形成するとは、成膜中の成膜条件を変動せずに、所定の膜厚まで成膜することを意味する。膜厚方向で組成の比率を一定に形成するとは、成膜中の成膜条件を一定に維持したまま、所定の膜厚まで成膜することを意味する。
【0052】
表面層12cは、膜厚が20nm以下である。表面層12cは、膜厚が位相シフト層12の膜厚に対して、1/6以下の範囲に設定される。表面層12cは、膜厚が、10.0nm%~20.0nm%の範囲を有する。
表面層12cは、位相シフト層12のなかでエッチングレートが最も低い。表面層12cは、エッチングレートが、1.0nm/min~6.0nm/minの範囲を有する。
【0053】
中間層12bは、位相シフト層12の厚さ方向において、表面層12cよりもガラス基板11に近接する。中間層12bは、表面層12cに接する。中間層12bは、表面層12cよりも窒素濃度が低い。
中間層12bは、表面層12cよりもシリコン濃度が高い。中間層12bは、表面層12cよりもモリブデン濃度が高い。中間層12bは、表面層12cよりも炭素濃度が高い。中間層12bは、表面層12cよりも酸素濃度が高い。
中間層12bは、酸素濃度が7atm%以下である。中間層12bは、炭素濃度が4atm%以下である。中間層12bは、膜厚が30nm以上である。
【0054】
中間層12bは、炭素濃度が1.5atm%~5.0atm%の範囲を有する。中間層12bは、窒素濃度が30.0atm%~40.0atm%の範囲を有する。中間層12bは、酸素濃度が4.0atm%~8.0atm%の範囲を有する。中間層12bは、シリコン濃度が30.0atm%~40.0atm%の範囲を有する。中間層12bは、モリブデン濃度が15.0atm%~21.0atm%の範囲を有する。
中間層12bは、モリブデンに対するシリコンの濃度比Si/Moが1 ≦ Si/Mo ≦ 2.5の範囲に設定される。
【0055】
中間層12bは、膜厚方向で組成の比率が変化しないように形成される。中間層12bは、膜厚方向で組成の比率が一定に形成される。
ここで、膜厚方向で組成の比率を一定に形成するとは、成膜中の成膜条件を変動せずに、所定の膜厚まで成膜することを意味する。膜厚方向で組成の比率を一定に形成するとは、成膜中の成膜条件を一定に維持したまま、所定の膜厚まで成膜することを意味する。
【0056】
中間層12bは、膜厚が表面層12cよりも大きい。中間層12bは、膜厚が、30.0nm%~60.0nm%の範囲を有する。
中間層12bは、表面層12cよりもエッチングレートが大きい。中間層12bのエッチングレートは、表面層12cのエッチングレートの1.4倍よりも大きい。中間層12bのエッチングレートは、表面層12cのエッチングレートの2.0倍よりも小さい。中間層12bは、エッチングレートが、6.0nm/min~9.0nm/minの範囲を有する。
【0057】
エッチング時間短縮層12aは、位相シフト層12の厚さ方向において、中間層12bよりもガラス基板11に近接する。エッチング時間短縮層12aは、中間層12bに接する。エッチング時間短縮層12aは、表面層12cよりも窒素濃度が低い。
【0058】
エッチング時間短縮層12aは、表面層12cよりもシリコン濃度が低い。エッチング時間短縮層12aは、表面層12cよりもモリブデン濃度が高い。エッチング時間短縮層12aは、表面層12cよりも炭素濃度が高い。エッチング時間短縮層12aは、表面層12cよりも酸素濃度が高い。
【0059】
エッチング時間短縮層12aは、中間層12bよりもシリコン濃度が低い。エッチング時間短縮層12aは、中間層12bよりもモリブデン濃度が高い。エッチング時間短縮層12aは、中間層12bよりも炭素濃度が高い。エッチング時間短縮層12aは、中間層12bよりも酸素濃度が高い。
エッチング時間短縮層12aは、酸素濃度が7atm%以上である。エッチング時間短縮層12aは、炭素濃度が4atm%以上である。エッチング時間短縮層12aは、膜厚が30nm以上である。
【0060】
エッチング時間短縮層12aは、炭素濃度が5.0atm%~20.0atm%の範囲を有する。エッチング時間短縮層12aは、窒素濃度が30.0atm%~40.0atm%の範囲を有する。エッチング時間短縮層12aは、酸素濃度が8.0atm%~20.0atm%の範囲を有する。エッチング時間短縮層12aは、シリコン濃度が15.0atm%~25.5atm%の範囲を有する。エッチング時間短縮層12aは、モリブデン濃度が21.0atm%~25.0atm%の範囲を有する。
エッチング時間短縮層12aは、モリブデンに対するシリコンの濃度比Si/Moが1 ≦ Si/Mo ≦ 2.5の範囲に設定される。
【0061】
エッチング時間短縮層12aは、膜厚方向で組成の比率が変化しないように形成される。エッチング時間短縮層12aは、膜厚方向で組成の比率が一定に形成される。
ここで、膜厚方向で組成の比率を一定に形成するとは、成膜中の成膜条件を変動せずに、所定の膜厚まで成膜することを意味する。膜厚方向で組成の比率を一定に形成するとは、成膜中の成膜条件を一定に維持したまま、所定の膜厚まで成膜することを意味する。
【0062】
エッチング時間短縮層12aは、膜厚が、表面層12cよりも大きい。エッチング時間短縮層12aは、膜厚が、中間層12bよりも大きい。エッチング時間短縮層12aは、膜厚が、30.0nm%~100.0nm%の範囲を有する。
【0063】
エッチング時間短縮層12aは、中間層12bよりも窒素濃度が低い。エッチング時間短縮層12aは、中間層12bよりもエッチングレートが大きい。エッチング時間短縮層12aのエッチングレートは、中間層12bのエッチングレートの1.5倍よりも大きい。エッチング時間短縮層12aのエッチングレートは、中間層12bのエッチングレートの2.0倍よりも小さい。
エッチング時間短縮層12aは、表面層12cよりもエッチングレートが大きい。エッチング時間短縮層12aのエッチングレートは、表面層12cのエッチングレートの2.5倍よりも大きい。エッチング時間短縮層12aのエッチングレートは、表面層12cのエッチングレートの5.0倍よりも小さい。エッチング時間短縮層12aは、エッチングレートが、10.0nm/min~20.0nm/minの範囲を有する。
【0064】
遮光層13は、表面層12cに積層される。遮光層13は、位相シフト層12よりもガラス基板11から離間する。遮光層13は、表面層12cに接している。
遮光層13は、Cr(クロム)を主成分とする。遮光層13は、O(酸素)を主成分とする。遮光層13は、C(炭素)を含む。遮光層13は、N(窒素)を含む。
遮光層13は、クロムの酸化物、クロムの窒化物、クロムの炭化物、クロムの酸化窒化物、クロムの炭化窒化物およびクロムの酸化炭化窒化物から選択される1つ、または、2種以上を積層して形成することもできる。
【0065】
さらに、遮光層13が厚み方向に異なる組成を有することもできる。例えば、遮光層13は、窒素濃度が、膜厚方向に傾斜した構成としてもよい。遮光層13は、酸素濃度、膜厚方向に傾斜した構成としてもよい。遮光層13は、炭素濃度が、膜厚方向に傾斜した構成としてもよい。
【0066】
遮光層13は、後述するように、所定の光学特性が得られるように、クロム、窒素、炭素、酸素等の濃度(組成比;atm%)が設定される。遮光層13は、所定の光学特性が得られるように、膜厚が設定される。遮光層13における膜特性は、クロム、窒素、炭素、酸素等の組成比によって変化する。遮光層13の膜厚は、特に、位相シフトマスク10として必要な光学特性によって設定することができる。
【0067】
遮光層13が上記の条件のように設定されていない場合、マスクパターン形成のエッチングによって位相シフト層12と遮光層13との界面における庇が形成されるため好ましくない。遮光層13が上記の条件のように設定されていない場合、断面形状が垂直ではないマスクパターンとなるため好ましくない。また、遮光層13が上記の条件のように設定されていない場合には、フォトマスクとしての光学特性を所望の条件に設定することが難しくなるため、好ましくない。
【0068】
遮光層13は、クロム化合物中の酸素濃度を高くすることで屈折率の値を低くすることが可能である。遮光層13は、クロム化合物中の酸素濃度を高くすることで消衰係数の値を低くすることが可能である。遮光層13は、クロム化合物中の窒素濃度を高くすることで屈折率の値を低くすることが可能である。遮光層13は、クロム化合物中の窒素濃度を高くすることで消衰係数の値を低くすることが可能である。
遮光層13は、クロム化合物中の酸素濃度を低くすることで屈折率の値を高くすることが可能である。遮光層13は、クロム化合物中の酸素濃度を低くすることで消衰係数の値を高くすることが可能である。遮光層13は、クロム化合物中の窒素濃度を低くすることで屈折率の値を高くすることが可能である。遮光層13は、クロム化合物中の窒素濃度を低くすることで消衰係数の値を高くすることが可能である。
【0069】
本実施形態における位相シフトマスクブランクス10Bは、パターニングにおけるエッチングによって、位相シフト層12と遮光層13との界面における庇が形成されない。位相シフトマスクブランクス10Bは、パターニングにおけるエッチングによって、位相シフト層12の膜厚変動がおきない。位相シフトマスクブランクス10Bは、パターニングにおけるエッチングによって、設定した位相シフト層12における位相の変動がおきない。位相シフトマスクブランクス10Bは、パターニングにおけるエッチングによって、ガラス基板11の表面状態変化がおきない。
【0070】
以下、本実施形態における位相シフトマスクブランクスの製造方法について、図面に基づいて説明する。
【0071】
図3は、本実施形態における位相シフトマスクブランクスの製造装置を示す模式図である。
本実施形態における位相シフトマスクブランクス10Bは、
図3に示す製造装置により製造される。
【0072】
製造装置S10は、
図3に示すように、インターバック式のスパッタリング装置とされる。製造装置S10は、ロード室S11と、アンロード室S16と、成膜室(真空処理室)S12と、を有する。
【0073】
ロード室S11は、搬送機構S11aと、排気機構S11fとを有する。搬送機構S11aは、外部から搬入されたガラス基板11を成膜室S12へと搬送する。排気機構S11fは、ロード室S11の内部を粗真空引きする。排気機構S11fは、ロータリーポンプ等である。ロード室S11は、密閉機構S17を介して成膜室S12に接続される。
【0074】
アンロード室S16は、搬送機構S16aと、排気機構S16fと、を有する。搬送機構S16aは、成膜室S12から搬送された成膜の完了したガラス基板11を外部へと搬出する。排気機構S16fは、アンロード室S16の内部を粗真空引きする。排気機構S16fは、ロータリーポンプ等である。アンロード室S16は、密閉機構S18を介して成膜室S12に接続される。
【0075】
成膜室S12は、基板保持機構S12aと、成膜機構S13と、成膜機構S14と、ガス防壁S12gと、を有する。成膜室S12は、2つの成膜機構S13と成膜機構S14とにより、二段の成膜処理に対応した機構である。
【0076】
基板保持機構S12aは、搬送機構S11aによって搬送されてきたガラス基板11を受け取る。基板保持機構S12aは、成膜室S12の内部でガラス基板11を保持する。基板保持機構S12aは、成膜中にターゲットS13bおよびターゲットS14bと対向するようにガラス基板11を保持する。基板保持機構S12aは、成膜室S12の内部でガラス基板11を搬送する。基板保持機構S12aは、ガラス基板11を搬送機構S16aに受け渡す。
基板保持機構S12aは、成膜中に、ガラス基板11にバイアス電力を印加可能である。
【0077】
成膜機構S13は、成膜室S12の内部で、ロード室S11に近接した位置に配置される。成膜機構S13は、二段の成膜処理のうち、一段目の成膜処理をおこなう。成膜機構S13は、一段目の成膜処理の成膜材料を供給する。
成膜機構S13は、ターゲットS13bと、カソード電極(バッキングプレート)S13cと、電源S13dと、ガス導入機構S13eと、高真空排気機構S13fと、を有する。
【0078】
ターゲットS13bは、一段目の成膜材料を供給する。ターゲットS13bは、カソード電極S13cに取り付けられる。電源S13dは、バッキングプレートS13cに負電位のスパッタ電圧を印加する。
ガス導入機構S13eは、一段目の成膜ガスを成膜室S12の内部に導入する。ガス導入機構S13eは、一段目の成膜ガスを成膜機構S13に導入する。ガス導入機構S13eは、カソード電極S13c付近に重点的に成膜ガスを導入する。高真空排気機構S13fは、成膜室S12の内部を排気する。高真空排気機構S13fは、カソード電極S13c付近を重点的に高真空引きする。高真空排気機構S13fは、ターボ分子ポンプ等である。
成膜機構S13は、マグネトロン磁気回路を有してもよい。マグネトロン磁気回路は、ターゲットS13b上に所定の磁場を形成する。
【0079】
成膜機構S14は、成膜室S12の内部で、アンロード室S16に近接した位置に配置される。成膜機構S14は、二段の成膜処理のうち、二段目の成膜処理をおこなう。成膜機構S14は、二段目の成膜処理の成膜材料を供給する。
成膜機構S14は、ターゲットS14bと、カソード電極(バッキングプレート)S14cと、電源S14dと、ガス導入機構S14eと、高真空排気機構S14fと、を有する。
【0080】
ターゲットS14bは、二段目の成膜材料を供給する。ターゲットS14bは、カソード電極S14cに取り付けられる。電源S14dは、バッキングプレートS14cに負電位のスパッタ電圧を印加する。
ガス導入機構S14eは、二段目の成膜ガスを成膜室S12の内部に導入する。ガス導入機構S14eは、二段目の成膜ガスを成膜機構S14に導入する。ガス導入機構S14eは、カソード電極S14c付近に重点的に成膜ガスを導入する。高真空排気機構S14fは、成膜室S12の内部を排気する。高真空排気機構S14fは、カソード電極S14c付近を重点的に高真空引きする。高真空排気機構S14fは、ターボ分子ポンプ等である。
成膜機構S14は、マグネトロン磁気回路を有してもよい。マグネトロン磁気回路は、ターゲットS14b上に所定の磁場を形成する。
【0081】
成膜機構S13と成膜機構S14とは、成膜室S12の内部で隣接する。
ガス防壁S12gは、成膜室S12の内部に配置される。ガス防壁S12gは、成膜機構S13と成膜機構S14との間に配置される。ガス防壁S12gは、成膜機構S13と成膜機構S14とにおいて成膜ガスを分離する。ガス防壁S12gは、成膜機構S13と成膜機構S14とにおいて、成膜ガスが混在しないように配置される。ガス防壁S12gは、成膜機構S13と成膜機構S14との間で成膜ガスの流れを抑制する。ガス防壁S12gは、基板保持機構S12aが成膜機構S13と成膜機構S14との間を移動可能なように構成されている。
【0082】
成膜機構S13と成膜機構S14とは、二段の成膜処理をそれぞれおこなうために必要な構成を有する。成膜機構S13と成膜機構S14とは、二段の成膜処理をそれぞれおこなうために必要な条件を実施可能である。成膜機構S13は、位相シフト層12の成膜に対応している。成膜機構S14は、遮光層13の成膜に対応している。
【0083】
成膜機構S13は、ターゲットS13bが、位相シフト層12を成膜するために必要な組成を有する。ターゲットS13bは、材料がモリブデンシリサイドである。
成膜機構S13は、ガス導入機構S13eが、位相シフト層12を成膜するために必要なガスを供給する。ガス導入機構S13eは、炭素、窒素、酸素などを含有するプロセスガスを供給可能である。ガス導入機構S13eは、アルゴン、窒素ガス等のスパッタガスを供給可能である。
【0084】
ガス導入機構S13eおよび高真空排気機構S13fは、位相シフト層12を成膜するために必要なガス分圧を設定する。ガス導入機構S13eおよび高真空排気機構S13fは、位相シフト層12の膜厚方向で供給ガス条件を変更可能である。ガス導入機構S13eおよび高真空排気機構S13fは、エッチング時間短縮層12aと、中間層12bと、表面層12cと、をそれぞれ成膜するために必要な条件を設定する。
【0085】
成膜機構S13は、電源S13dが、位相シフト層12の成膜に対応してスパッタ電圧を設定する。電源S13dが、エッチング時間短縮層12aと、中間層12bと、表面層12cと、をそれぞれ成膜するために必要な条件を設定する。
【0086】
成膜機構S14は、ターゲットS14bが、遮光層13を成膜するために必要な組成を有する。ターゲットS14bは、材料がクロムを含有する。
成膜機構S14は、ガス導入機構S14eが、遮光層13を成膜するために必要なガスを供給する。ガス導入機構S14eは、炭素、窒素、酸素などを含有するプロセスガスを供給可能である。ガス導入機構S14eは、アルゴン、窒素ガス等のスパッタガスを供給可能である。
【0087】
ガス導入機構S14eおよび高真空排気機構S14fは、遮光層13を成膜するために必要なガス分圧を設定する。ガス導入機構S14eおよび高真空排気機構S14fは、遮光層13の膜厚方向で供給ガス条件を変更可能である。
成膜機構S14は、電源S14dが、遮光層13の成膜に対応してスパッタ電圧を設定する。
【0088】
製造装置S10において位相シフトマスクブランクス10Bを製造する際、準備工程として、ガラス基板11をロード室S11に搬入する。
ガラス基板11は、搬送機構S11aによってロード室S11から成膜室S12に搬送される。ガラス基板11は、成膜室S12の内部を基板保持機構S12aによって搬送される。ガラス基板11は、成膜室S12の内部で、成膜工程として二段のスパッタリング成膜がおこなわれる。成膜の終了したガラス基板11は、基板保持機構S12aによって成膜室S12からアンロード室S16に搬送される。ガラス基板11は、搬送機構S16aによって外部に搬出される。
【0089】
本実施形態における位相シフトマスクブランクスの製造方法は、ガラス基板11にマスク層を形成する成膜工程を有する。成膜工程は、ガラス基板11に位相シフト層12を成膜した後に、遮光層13を成膜する。
【0090】
成膜工程は、位相シフト層形成工程と、遮光層形成工程と、を有する。
【0091】
位相シフト層形成工程は、ガラス基板11に位相シフト層12を形成する。位相シフト層形成工程は、成膜機構S13においておこなわれる。
位相シフト層形成工程は、成膜機構S13が、ガス導入機構S13eからプロセスガスとスパッタガスとを供給する。位相シフト層形成工程は、成膜機構S13が、電源S13dからスパッタ電圧を印加する。位相シフト層形成工程は、マグネトロン磁気回路が、ターゲットS13b上に所定の磁場を形成してもよい。
【0092】
位相シフト層形成工程は、成膜機構S13が、ターゲットS13b付近にプラズマを生成する。プラズマは、スパッタガスのイオンを励起する。スパッタガスのイオンは、ターゲットS13bに衝突して成膜材料の粒子を飛び出させる。ターゲットS13bから飛び出した成膜材料の粒子は、反応ガスと結合した後、ガラス基板11に付着する。これにより、ガラス基板11の表面に位相シフト層12が形成される。
【0093】
位相シフト層形成工程は、ガス導入機構S13eからガスを供給する。供給ガスは、スパッタガス、炭素含有ガス、窒素含有ガス、酸素含有ガス等である。ガス導入機構S13eは、膜厚の増加に従って、それぞれのガスを所定の分圧で供給する。また、ガス導入機構S13eは、膜厚の増加に従って、それぞれのガス分圧を制御するように切り替える。これにより、位相シフト層形成工程は、ガス分圧の制御によって、位相シフト層12の組成を、膜厚方向に設定した濃度範囲にする。
【0094】
位相シフト層形成工程は、膜厚方向に位相シフト層12の組成を変化させる。位相シフト層形成工程は、成膜された膜厚に応じて雰囲気ガスにおける個々のガス分圧を変動させる。位相シフト層形成工程は、エッチング時間短縮層12aと、中間層12bと、表面層12cとを形成する。位相シフト層形成工程は、エッチング時間短縮層形成工程と、中間層形成工程と、表面層形成工程とを有する。
【0095】
位相シフト層形成工程は、モリブデンとシリコンとの比率が所定範囲のターゲットS13bを用いる。位相シフト層形成工程は、モリブデンとシリコンとの比率が所定範囲のターゲットS13bを用いる。位相シフト層形成工程は、モリブデンおよびシリコン以外の含有物の組成を所定の状態に設定したターゲットS13bを用いてもよい。また、異なる組成を有するターゲットS13bを適切に選択することが好ましい。
【0096】
位相シフト層形成工程は、モリブデンとシリコンとの比が、
2.2 ≦ Si/Mo < 2.5
に設定された組成を有するターゲットを用いてスパッタリングをおこなう。
【0097】
位相シフト層形成工程は、電源S13dが、カソード電極S13cに印加するプラズマ形成電力を所定の範囲とする。位相シフト層形成工程は、電源S13dが、カソード電極S13cに印加するプラズマ形成電力を所定の範囲とする。
位相シフト層形成工程は、基板保持機構S12aが、ガラス基板11にバイアス電力を印加してもよい。
位相シフト層形成工程は、電源S13dから印加するスパッタ電力、および、基板保持機構S12aから印加するバイアス電力を、エッチング時間短縮層形成工程と、中間層形成工程と、表面層形成工程とで切り替える。
【0098】
エッチング時間短縮層形成工程は、その間、ガス分圧を一定の状態で維持する。エッチング時間短縮層形成工程は、エッチング時間短縮層12aが所定の膜厚になったら、エッチング時間短縮層形成工程を終了する。エッチング時間短縮層形成工程を終了したら、中間層形成工程を開始する。中間層形成工程は、中間層12bの成膜に対応するガス分圧の状態に切り替える。
【0099】
中間層形成工程は、その間、ガス分圧を一定の状態で維持する。中間層形成工程は、中間層12bが所定の膜厚になったら終了する。中間層形成工程を終了したら、表面層形成工程を開始する。表面層形成工程は、表面層12cの成膜に対応するガス分圧の状態に切り替える。
【0100】
表面層形成工程は、その間、ガス分圧が一定の状態で維持する。表面層形成工程の間は、表面層12cが所定の膜厚になったら終了する。表面層形成工程が終了したら、位相シフト層形成工程を終了する。
エッチング時間短縮層形成工程と、中間層形成工程と、表面層形成工程とは、同じターゲットS13bを用いる。エッチング時間短縮層形成工程と、中間層形成工程と、表面層形成工程とは、ターゲットS13bを取り替えて、異なるターゲットを用いてもよい。位相シフト層12の成膜で、必要であればターゲットS13bを適宜交換することもできる。
【0101】
酸素含有ガスとしては、CO2(二酸化炭素)、O2(酸素)、N2O(一酸化二窒素)、NO(一酸化窒素)、CO(一酸化炭素)等を挙げることができる。炭素含有ガスとしては、CO2(二酸化炭素)、CH4(メタン)、C2H6(エタン)、CO(一酸化炭素)等を挙げることができる。窒素含有ガスとしては、N2(窒素ガス)、N2O(一酸化二窒素)、NO(一酸化窒素)、N2O(一酸化二窒素)、NH3(アンモニア)等を挙げることができる。
【0102】
遮光層形成工程は、ガラス基板11に遮光層13を形成する。遮光層形成工程は、位相シフト層12に遮光層13を積層する。遮光層形成工程は、成膜機構S14においておこなわれる。
遮光層形成工程は、成膜機構S14が、ガス導入機構S14eからプロセスガスとスパッタガスとを供給する。遮光層形成工程は、成膜機構S14が、電源14dからスパッタ電圧を印加する。遮光層形成工程は、マグネトロン磁気回路が、ターゲットS14b上に所定の磁場を形成してもよい。
【0103】
遮光層形成工程は、成膜機構S14が、ターゲットS14b付近にプラズマを生成する。プラズマは、スパッタガスのイオンを励起する。スパッタガスのイオンは、ターゲットS14bに衝突して成膜材料の粒子を飛び出させる。ターゲットS14bから飛び出した成膜材料の粒子は、反応ガスと結合した後、位相シフト層12の表面に付着する。これにより、遮光層13が位相シフト層12の表面に積層される。
【0104】
遮光層形成工程は、クロムを含有するターゲットS14bを用いる。遮光層形成工程は、クロムから構成されるターゲットS14bを用いる。遮光層13の成膜で、必要であればターゲットS14bを適宜交換することもできる。
遮光層形成工程は、電源S14dが、カソード電極S14cに印加するプラズマ形成電力を所定の範囲とする。遮光層形成工程は、電源S14dが、カソード電極S14cに印加するプラズマ形成電力を所定の範囲とする。
遮光層形成工程は、基板保持機構S12aが、ガラス基板11にバイアス電力を印加してもよい。
遮光層形成工程は、電源S14dから印加するスパッタ電力、および、基板保持機構S12aから印加するバイアス電力を、遮光層13の膜厚にしたがって変化させてもよい。
【0105】
遮光層形成工程は、ガス導入機構S14eからガスを供給する。供給ガスは、スパッタガス、炭素含有ガス、窒素含有ガス、酸素含有ガス等である。ガス導入機構S14eは、膜厚の増加に従って、それぞれのガスを所定の分圧で供給する。また、ガス導入機構S14eは、膜厚の増加に従って、それぞれのガス分圧を制御するように切り替える。これにより、遮光層形成工程は、ガス分圧の制御によって、遮光層13の組成を、膜厚方向に設定した濃度範囲にする。
【0106】
遮光層形成工程は、膜厚方向に遮光層13の組成を変化させてもよい。この場合、遮光層形成工程は、成膜された膜厚に応じて雰囲気ガスにおける個々のガス分圧を変動させる。遮光層形成工程は、膜厚方向に遮光層13の組成を一定にしてもよい。この場合、遮光層形成工程は、成膜された膜厚に応じて雰囲気ガスにおける個々のガス分圧を一定に維持する。
【0107】
位相シフトマスクブランクスの製造方法は、位相シフトマスクブランクス10Bが、位相シフト層形成工程と、遮光層形成工程と以外に、エッチングストップ層、保護層、密着層、耐薬層、反射防止層、等を積層する場合、これらの積層工程を有してもよい。
この場合、対応するターゲット、ガス等のスパッタ条件としてスパッタリングにより成膜するか、他の成膜方法によって該当膜を積層して、本実施形態の位相シフトマスクブランクス10Bとすることもできる。
【0108】
以下、本実施形態の位相シフトマスクブランクス10Bから位相シフトマスク10を製造する製造方法について説明する。
【0109】
図4は、本実施形態における位相シフトマスクの製造方法を示す工程断面図である。
図5は、本実施形態における位相シフトマスクの製造方法を示す工程断面図である。
図6は、本実施形態における位相シフトマスクの製造方法を示す工程断面図である。
図7は、本実施形態における位相シフトマスクの製造方法を示す工程断面図である。
図8は、本実施形態における位相シフトマスクの製造方法を示す工程断面図である。
図9は、本実施形態における位相シフトマスクの製造方法を示す工程断面図である。
図10は、本実施形態における位相シフトマスクの製造方法を示す工程断面図である。
図11は、本実施形態における位相シフトマスクを示す断面図である。
本実施形態における位相シフトマスク(フォトマスク)10は、位相シフトマスクブランクス10Bから製造される。位相シフトマスク10は、
図11に示すように、位相シフト層12と遮光層13とに、パターンを形成したものである。
【0110】
位相シフトマスク10の製造方法は、第1レジストパターン形成工程と、第1遮光パターン形成工程と、第1洗浄工程と、位相シフトパターン形成工程と、第2洗浄工程と、第2レジストパターン形成工程と、第2遮光パターン形成工程と、第3洗浄工程と、を有する。
【0111】
第1レジストパターン形成工程は、
図4に示すように、まず、位相シフトマスクブランクス10Bの最外面上に第1フォトレジスト層15を形成する。第1レジストパターン形成工程は、あらかじめ第1フォトレジスト層15が最外面上に形成された位相シフトマスクブランクス10Bを準備してもよい。
第1フォトレジスト層15は、ポジ型でもよいしネガ型でもよい。第1フォトレジスト層15は、いわゆるクロム系材料へのエッチングおよびモリブデンシリサイド系材料へのエッチングに対応可能なものである。第1フォトレジスト層15は、液状レジストである。第1フォトレジスト層15は、塗布工程により塗布される。
【0112】
第1レジストパターン形成工程は、第1フォトレジスト層15を露光及び現像する。これにより、第1レジストパターン形成工程は、
図5に示すように、位相シフト層12よりもガラス基板11から離間する遮光層13の表面に第1レジストパターン15P1を形成する。第1レジストパターン15P1は、遮光層13と位相シフト層12とのエッチングマスクとして機能する。
【0113】
第1レジストパターン形成工程は、遮光層13と位相シフト層12とのエッチングパターンに応じて、第1レジストパターン15P1の形状を適宜定める。第1レジストパターン形成工程は、透光領域10Lの開口幅寸法に対応した開口幅を有する形状に設定される(
図7~
図11参照)。
【0114】
第1レジストパターン形成工程が終了したら、次いで、第1遮光パターン形成工程をおこなう。第1遮光パターン形成工程は、第1レジストパターン15P1越しに遮光層13をエッチングする。第1遮光パターン形成工程は、エッチング液を用いて遮光層13をウエットエッチングする。第1遮光パターン形成工程は、
図6に示すように、第1遮光パターン13P1を形成する。
【0115】
第1遮光パターン形成工程は、エッチング液としてクロム系材料のエッチング液を用いる。クロム系材料のエッチング液は、硝酸セリウム第2アンモニウムを含むエッチング液を用いることができる。クロム系材料のエッチング液は、例えば、硝酸や過塩素酸等の酸を含有する硝酸セリウム第2アンモニウムを用いることが好ましい。
遮光パターン形成工程は、位相シフト層12がモリブデンシリサイドからなるため、位相シフト層12はクロム系のエッチング液にほとんどエッチングされない。
【0116】
第1遮光パターン形成工程が終了したら、必要に応じて、第1洗浄工程をおこなう。
第1洗浄工程は、洗浄液として、アルカリ液を用いる。アルカリ液としては、水酸化ナトリウム溶液、あるいはアンモニアと過酸化水素水の混合液などを用いる。位相シフト層12が表面層12cを有するため、第1洗浄工程は、アルカリ液による洗浄によって、位相シフト層12の膜厚は変化しない。また、ガラス基板11の表面は、露出していないため、アルカリ液による洗浄によって、ガラス基板11の表面が荒れることもない。
【0117】
次いで、位相シフトパターン形成工程をおこなう。位相シフトパターン形成工程は、位相シフト層12をエッチングする。位相シフトパターン形成工程は、第1遮光パターン13P1と第1レジストパターン15P1越しに位相シフト層12をエッチングする。位相シフトパターン形成工程は、エッチング液を用いてウエットエッチングする。位相シフトパターン形成工程は、
図7に示すように、位相シフトパターン12P1を形成する。位相シフトパターン12P1は、第1遮光パターン13P1よりも抉れた形状を有する。
【0118】
位相シフトパターン形成工程は、エッチング液としてモリブデンシリサイドからなる位相シフト層12をエッチング可能なものを用いる。位相シフトパターン形成工程は、フッ素化合物と酸化剤とを含むものをエッチング液として用いる。位相シフトパターン形成工程は、フッ化水素酸、珪フッ化水素酸、フッ化水素アンモニウムから選ばれる少なくとも一つのフッ素化合物を含むエッチング液が用いられる。位相シフトパターン形成工程は、過酸化水素、硝酸、硫酸から選ばれる少なくとも一つの酸化剤を含むエッチング液が用いられる。
【0119】
位相シフト層12は、モリブデンシリサイド化合物から構成される。モリブデンシリサイド化合物は、例えばフッ化水素アンモニウムと過酸化水素の混合液によりエッチングすることが可能である。これに対し、遮光層13を形成するクロム化合物は、例えば硝酸第2セリウムアンモニウムと過塩素酸の混合液によりエッチングすることが可能である。
【0120】
それぞれのウエットエッチングの際において、遮光層13と位相シフト層12との選択比が非常に大きくなる。このため、エッチングによる第1遮光パターン13P1と、位相シフトパターン12P1との形成後においては、位相シフトマスク10の断面形状として、垂直に近い良好な断面形状を得ることが可能である。
【0121】
ここで、位相シフト層12は表面層12cを有する。表面層12cは窒素濃度が高い。このため、表面層12cはモリブデンシリサイド系エッチング液に対するエッチングレート(E.R.)が低い。表面層12cはアルカリ液に対する耐薬性が高い。
【0122】
位相シフト層12は中間層12bとエッチング時間短縮層12aとを有する。
中間層12bとエッチング時間短縮層12aとは、表面層12cよりも窒素濃度が低い。中間層12bとエッチング時間短縮層12aとは、表面層12cとは異なり、酸素濃度および炭素濃度が上述した範囲に設定される。このため、中間層12bとエッチング時間短縮層12aとは、表面層12cよりもモリブデンシリサイド系エッチング液に対するエッチングレート(E.R.)が高い。
【0123】
中間層12bとエッチング時間短縮層12aとは、表面層12cとは異なり、窒素濃度、酸素濃度および炭素濃度が上述した範囲に設定される。このため、中間層12bは、表面層12cよりもモリブデンシリサイド系エッチング液に対するエッチングレート(E.R.)が高い。エッチング時間短縮層12aは、中間層12bよりもモリブデンシリサイド系エッチング液に対するエッチングレート(E.R.)が高い。
【0124】
従って、位相シフト層12全体のエッチング時間は、全膜厚が表面層12cである場合よりも短い。
これにより、エッチング時間を短くして、上記のエッチング液により影響を受けるガラス基板11に対する影響を抑制することが可能となる。
【0125】
表面層12cと中間層12bとエッチング時間短縮層12aとは、上述した組成で、かつ、それぞれの膜厚が上述したように設定されている。
【0126】
遮光層13に近い表面層12cの窒素濃度、炭素濃度および酸素濃度が、上述した範囲設定される。これにより、位相シフトパターン形成工程においては、遮光層13に近い位相シフト層12において、表面層12cでのエッチングレートが低くなる。したがって、位相シフト層12においては、中間層12bとエッチング時間短縮層12aとのエッチングに比べて、表面層12cのエッチングの進行を遅延させる。
【0127】
ガラス基板11に近い位相シフト層12の窒素濃度、炭素濃度および酸素濃度が、表面層12cとは異なり、上述した範囲設定される。位相シフトパターン形成工程においては、ガラス基板11に近い位相シフト層12において、表面層12cに比べてエッチングレートが大きくなる。
【0128】
しかも、中間層12bとエッチング時間短縮層12aとにおいては、エッチングが進行するにつれて、エッチングレートが次第に大きくなるように形成されている。
これにより、位相シフトパターン12P1は、第1遮光パターン13P1よりも抉れた形状となる。
【0129】
表面層12cは、エッチング液に曝される時間が長い。しかし、表面層12cは、エッチングレートが小さい。これに対して、中間層12bとエッチング時間短縮層12aとは、表面層12cよりもエッチング液に曝される時間が短い。中間層12bとエッチング時間短縮層12aとは、表面層12cよりもエッチングレートが大きい。位相シフト層12は、中間層12bとエッチング時間短縮層12aとのエッチングに比べて、表面層12cのエッチングの進行が遅延する。
【0130】
しかも、中間層12bは、表面層12cよりもエッチング液に曝される時間が短い。中間層12bは、表面層12cよりもエッチングレートが大きい。
さらに、エッチング時間短縮層12aは、中間層12bよりもエッチング液に曝される時間が短い。エッチング時間短縮層12aは、中間層12bよりもエッチングレートが大きい。位相シフト層12は、エッチング時間短縮層12aのエッチングに比べて、中間層12bのエッチングの進行が遅延する。
【0131】
これらにより、表面層12cと中間層12bとエッチング時間短縮層12aとのエッチングが、それぞれ好適におこなわれる。位相シフトパターン12P1は、第1遮光パターン13P1との界面に庇を作ることがない。また、位相シフト層12の断面形状が、ガラス基板11の表面に垂直となる。
【0132】
位相シフトパターン12P1は、第1遮光パターン13P1を用いてエッチングで形成された壁面が、直角に近いガラス基板11表面と為す角(テーパ角)θを有する。位相シフトパターン12P1は、壁面とガラス基板11表面との為す角が、90°程度にすることができる。位相シフトパターン12P1は、壁面とガラス基板11表面との為す角が、厚さ方向で一定にすることができる。
【0133】
位相シフトパターン12P1は、第1遮光パターン13P1に接した表面層12cを有する。表面層12cは窒素濃度が高い。しかし、中間層12bとエッチング時間短縮層12aとのエッチングにおいて、表面層12cを同時におこなう。これにより、位相シフトパターン形成工程においては、位相シフトパターン12P1は、第1遮光パターン13P1との界面におけるエッチングを確実におこなうことができる。第1遮光パターン13P1は、位相シフトパターン12P1との界面でエッチングされずに残る部分がない。したがって、確実なパターン形成をおこなうことができる。
【0134】
位相シフト層12は、位相シフト層形成工程において、モリブデンとシリコンとの比が、
2.2 ≦ Si/Mo < 2.5
に設定された組成を有するターゲットを用いたスパッタリングによって形成されている。これにより、膜特性として、ウエットエッチングの際のエッチングレートを大きくしてエッチングを早くすることが可能となる。これにより、位相シフトマスク作製の際のパターンニングプロセスにおいて、ガラスエッチングの影響を低減することが可能となる。したがって、位相シフト層における位相を高精度に制御した位相シフトマスクを作製することが可能となる。さらに、高価なウエットエッチング液の消費量を削減することが可能となるので、コスト削減が可能となるという作用効果を奏することができる。
【0135】
位相シフトパターン形成工程が終了したら、必要に応じて、第2洗浄工程をおこなう。第2洗浄工程は、レジスト除去工程である。第2洗浄工程は、
図8に示すように、第1レジストパターン15P1を除去する。
第2洗浄工程は、洗浄液として、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)溶液を用いる。位相シフトパターン12P1が表面層12cを有するため、第2洗浄工程は、アルカリ液による洗浄によって、位相シフトパターン12P1の膜厚は変化しない。
【0136】
第2洗浄工程が終了したら、必要に応じて、第2レジストパターン形成工程をおこなう。
第2レジストパターン形成工程は、まず、第1遮光パターン13P1の表面上に第2フォトレジスト層を形成する。第2レジストパターン形成工程は、第1フォトレジスト層15と同様の第2フォトレジスト層を形成する。
第2フォトレジスト層は、ポジ型でもよいしネガ型でもよい。第2フォトレジスト層は、いわゆるクロム系材料へのエッチングおよびモリブデンシリサイド系材料へのエッチングに対応可能なものである。第2フォトレジスト層は、液状レジストである。第2フォトレジスト層は、塗布工程により塗布される。
【0137】
第2レジストパターン形成工程は、第2フォトレジスト層を露光及び現像する。これにより、第2レジストパターン形成工程は、
図9に示すように、位相シフトパターン12P1よりもガラス基板11から離間する第1遮光パターン13P1の表面に第2レジストパターン15P2を形成する。第2レジストパターン15P2は、第1遮光パターン13P1のエッチングマスクとして機能する。
【0138】
第2レジストパターン形成工程は、第1遮光パターン13P1のエッチングパターンに応じて、第2レジストパターン15P2の形状を適宜定める。第2レジストパターン形成工程は、位相シフト領域10Pの開口幅寸法に対応した開口幅を有する形状に設定される(
図11参照)。
【0139】
第2レジストパターン形成工程が終了したら、次いで、第2遮光パターン形成工程をおこなう。第2遮光パターン形成工程は、第2レジストパターン15P2越しに第1遮光パターン13P1をエッチングする。第2遮光パターン形成工程は、エッチング液を用いて第1遮光パターン13P1をウエットエッチングする。第2遮光パターン形成工程は、
図10に示すように、第2遮光パターン13P2を形成する。
第2遮光パターン形成工程は、位相シフト領域10Pを形成する。位相シフト領域10Pは、位相シフトパターン12P1の表面が露出する。第2遮光パターン形成工程は、第2遮光パターン13P2を位相シフト領域10Pに対応して形成する。
【0140】
第2遮光パターン形成工程は、エッチング液として、第1遮光パターン形成工程と同様に、クロム系材料のエッチング液を用いる。第2遮光パターン形成工程は、エッチング液として、硝酸セリウム第2アンモニウムを含むエッチング液を用いる。第2遮光パターン形成工程は、エッチング液として、硝酸や過塩素酸等の酸を含有する硝酸セリウム第2アンモニウムを用いる。
【0141】
位相シフトパターン12P1は、表面層12cを有する。このため、位相シフトパターン12P1は、クロム系エッチング液に対する耐エッチング性が向上する。同時に、位相シフト層12が表面層12cを有するため、位相シフトパターン12P1の膜厚が変動することを防止できる。位相シフト層12が表面層12cを有するため、遮光層13との密着性を高め、エッチングされた形状が崩れてしまうことを防止できる。位相シフトパターン12P1は、膜厚変動防止されることで、位相シフト特性が変動してしまうことを防止できる。
【0142】
第2遮光パターン形成工程が終了したら、必要に応じて、第3洗浄工程をおこなう。
第3洗浄工程は、レジスト除去工程である。第3洗浄工程は、第2レジストパターン15P2を除去する。
第3洗浄工程は、洗浄液として、アルカリ液を用いる。アルカリ液としては、第1洗浄工程または第2洗浄工程と同じものを用いる。位相シフト層12が表面層12cを有するため、第3洗浄工程は、アルカリ液による洗浄によって、位相シフト層12の膜厚は変化しない。位相シフト領域10Pにおいて、位相シフトパターン12P1の膜厚が変化しないため、位相シフト特性が変動してしまうことを防止できる。
また、処理時間が短いため、ガラス基板11は、透光領域10Lにおいて、アルカリ液による洗浄によって表面が荒れることもない。透光領域10Lにおいて、ガラス基板11表面が荒れないため、位相シフト特性が変動してしまうことを防止できる。
【0143】
第3洗浄工程は、処理時間を短くする。第3洗浄工程は、上記の洗浄液に対して露出する透光領域10Lおよび位相シフト領域10Pにおいて、洗浄液によって位相シフトパターン12P1およびガラス基板11が受ける影響を抑制することが可能となる。
【0144】
ガラス基板11の表面が露出した透光領域10Lと、位相シフトパターン12P1が残存して露出している位相シフト領域10Pと、を形成する。これにより、
図11に示すように、位相シフトマスク10を製造する。
【0145】
以下、本実施形態における位相シフト層12、遮光層13の膜特性、特に、位相シフト層12の膜特性について説明する。
【0146】
位相シフトマスクブランクス10Bは、マスク層をガラス基板11上に形成する。マスク層は、スパッタリング法等を用いて形成する。マスク層は、まず、位相シフト層12を形成する。位相シフト層12は、モリブデンシリサイド化合物により形成する。ここで形成するモリブデンシリサイド化合物は、モリブデン、シリコン、酸素、窒素、炭素等を含有する膜である。この際、膜中に含有するモリブデン、シリコン、酸素、窒素、炭素の組成と、組成に対応する膜厚を制御する。これにより、位相シフト層12は、所望の透過率と位相とを有することが可能である。
【0147】
マスク層は、次に、遮光層13を形成する。遮光層13は、クロム化合物膜を形成する。遮光層13は、スパッタリング法等を用いて形成する。ここで形成するクロム化合物はクロム、酸素、窒素、炭素等を含有する膜である。
位相シフト層12にモリブデンシリサイドを用いる場合は、位相シフト層12の上部にクロム化合物で形成された遮光層13を積層する。
【0148】
位相シフト層12の形成後に、遮光層13となるクロムニウム化合物を形成することで、位相シフトマスク10を形成するための位相シフトマスクブランクス10Bを構成することが可能になる。
この位相シフトマスクブランクス10Bにより、位相シフトマスク10を形成する。
形成した位相シフトマスクブランクス10Bにレジストパターンの形成と位相シフトマスクブランクス10Bのエッチングとを行うことで、位相シフトマスク10を形成することができる。
【0149】
本発明者らが鋭意検討した結果、位相シフト層12において、耐薬性とエッチングレートとを高くして、庇の形成を防止するためには、位相シフト層12をモリブデンシリサイド膜で形成するとともに、モリブデンシリサイド膜の組成(濃度)および膜厚方向の組成分布を適切に制御することが重要であることがわかった。
【0150】
モリブデンシリサイド膜によって位相シフト層12を形成した場合には、位相シフトマスク10を形成する場合に、フッ酸を含有するエッチング液でエッチングすることが必要である。このため、ガラス基板11のエッチングの影響を低減するためにできる限りエッチングレートの速いモリブデンシリサイド膜を用いることが望ましい。
【0151】
図12に、ターゲット組成の異なるモリブデンシリサイドターゲットを用いて、モリブデンシリサイド膜を形成した場合の膜中の窒素濃度とエッチングレートの関係を示す。
図12に示した結果から、ターゲット組成として、シリコンの少ないモリブデンシリサイドを用いることで、エッチングレートの速いモリブデンシリサイド膜を形成することができることがわかる。
【0152】
さらに、モリブデンシリサイドのターゲットについてはモリブデンシリコンの結晶であるMoSi2とSiとの材料を混合することで、所望の組成比のターゲットを形成することが可能となる。そのためには、一定以上のシリコンがMoSi2よりも過剰に存在しないと組成の安定したターゲットが形成することは困難である。このため、モリブデンとシリコンとの組成比がMo:Si=1:2.3までシリコン組成を増加すると、相対密度が高いターゲットを安定して形成できることがわかった。
【0153】
このため、モリブデンシリサイドの組成比として、モリブデンとシリコンとの組成比が1:2.3から1:2.5までの高密度のターゲットを用いることで、モリブデンシリサイド膜中のシリコン濃度を低くする。これにより、モリブデンシリサイド膜は、エッチングレート(E.R.)が早くなることがわかった。ガラス基板11のエッチングを抑制した状態を維持するエッチングレートを有するモリブデンシリサイド膜を成膜することが可能である。これにより、欠陥の影響を低減した生産に適した位相シフトマスクブランクス10Bを製造することが可能になった。
【0154】
位相シフト層12としてモリブデンシリサイド膜を形成する際に、モリブデンとシリコンの組成比が1:2.3のターゲットを用いる。同時に、位相シフト層12としてモリブデンシリサイド膜を形成する際に、成膜時のアルゴン、窒素流量を変化させた。
位相シフトマスク10の製造プロセスとして、パターン形成においては、通常、酸やアルカリ等の薬液が用いられる。これらのプロセス中において位相シフト角変化、膜厚変化および透過率変化を抑制することが必要である。
【0155】
モリブデンシリサイド膜の窒素濃度を上げることで、酸やアルカリに対する薬液耐性が向上することがわかった。このことから、薬液耐性を高めるために、モリブデンシリサイド膜の窒素濃度を高めることが重要であることがわかる。
【0156】
モリブデンとシリコンとの組成比が1:2.3のターゲットを用いて、モリブデンシリサイド膜を成膜する際に窒素を添加した。モリブデンシリサイド膜の膜厚を変化させて波長365nmでの透過率との関係を調べた。モリブデンシリサイド膜の窒素濃度は、48.1%(45atm%以上)である。その結果を
図13に示す。
ここで、透過率(%)は、膜厚が10nmのときを1として規格化した。
【0157】
これらの結果から、高窒素濃度のモリブデンシリサイド膜において、膜厚を10nmよりも大きくすることで、膜厚が変化しても透過率が変化しないことがわかる。したがって、エッチング工程、洗浄工程等において、高窒素濃度のモリブデンシリサイド膜の膜厚は、10nmよりも大きくすることが好ましい。充分な耐薬性を有するためには、表面層12cの膜厚は、10nmよりも大きくすることが好ましい。
【0158】
さらに、モリブデンシリサイド膜を成膜する際のガス条件を変化させて、モリブデンシリサイド膜中の窒素濃度、酸素濃度を変化させた。このモリブデンシリサイド膜において、エッチングレート比(Etch Rate Ratio)に対する窒素濃度(N濃度)と酸素濃度(O濃度)との比の関係を調べた。その結果を
図14に示す。
【0159】
この結果から、窒素濃度に対する酸素濃度の比を変化させることで、モリブデンシリサイド膜におけるエッチングレートが変化することがわかる。モリブデンシリサイド膜の窒素濃度を低めることで、エッチングレートが高くなることがわかる。モリブデンシリサイド膜の酸素濃度を高めることで、エッチングレートが高くなることがわかる。
【0160】
さらに、モリブデンシリサイド膜を成膜する際のガス条件を変化させて、モリブデンシリサイド膜中の窒素濃度、炭素濃度を変化させた。このモリブデンシリサイド膜において、エッチングレートに対する窒素濃度と炭素濃度(C濃度)との比の関係を調べた。その結果を
図15に示す。
【0161】
この結果から、窒素濃度に対する炭素濃度の比を変化させることで、モリブデンシリサイド膜におけるエッチングレートが変化することがわかる。モリブデンシリサイド膜の窒素濃度を低めることで、エッチングレートが高くなることがわかる。モリブデンシリサイド膜の炭素濃度を高めることで、エッチングレートが高くなることがわかる。
【0162】
これらの結果を踏まえて、位相シフト層12における膜厚方向の濃度分布を設定する。つまり、表面層12cと中間層12bとエッチング時間短縮層12aとのそれぞれの組成、および、それぞれの膜厚、それぞれのエッチングレート(Etch Rate)を設定する。
【0163】
ディスプレイ用に用いられる位相シフトマスクとしては、波長365nmにおいて、位相が180°で5%以上の透過率を有する位相シフトマスク10が用いられる。
この位相シフトマスク10は、位相シフト層12を100~150nm程度の比較的厚い膜厚にする必要がある。また、フラットディスプレイ向けである大面積のフォトマスクは、パターン形成時に、ウエットエッチングを用いて加工する。このため、位相シフトマスク10に形成したパターンが、テーパ形状にならないようにすることが必要である。
【0164】
このために、モリブデンシリサイド膜の成膜条件を膜厚方向で制御することにより、膜厚方向でのウエットエッチングレートを変化させる。これにより、位相シフトマスクの断面形状を垂直に近づけるとともに、庇の形成を防止できることがわかった。
具体的には、位相シフト層12を成膜する際に、
図16に示すように、ガス分圧を設定した。
図16において、Aが表面層12c、Bが中間層12b、Cがエッチング時間短縮層12aである。
【0165】
位相シフト層12を3層以上の積層構造を有するシリサイド膜を、モリブデンとシリコンとの組成比がMo:Si=1:2.3までのターゲットを用いて成膜する。
表面層12cを45%以上の窒素濃度で膜厚20nm以下として成膜する。
中間層12bに酸素濃度が7atm%以下、炭素濃度4%以下、で膜厚30nm以上として成膜する。
エッチング時間短縮層12aに酸素濃度が7atm%以上、炭素濃度が4atm%以上、膜厚30nm以上として成膜する。
中間層12bとエッチング時間短縮層12aとして、シリコンとモリブデンの濃度比Si/Moが2以下として成膜する。
【0166】
位相シフト層12は、その最表面に高い窒素濃度層を有する薄膜を有する。このために、エッチング時間を短くしたままで、シリサイド膜で形成した位相シフト層12の耐薬特性を高くすることができる。
【0167】
エッチング時間短縮層12aの酸素濃度と炭素濃度とが中間層12bの酸素濃度と炭素濃度と比較して高い。このために、エッチング時間短縮層12aのエッチングタイムが中間層12bよりも短い。かつ、中間層12bにおける耐薬特性をエッチング時間短縮層12aと比較して改善することができる。
【0168】
中間層12bとエッチング時間短縮層12aとを、中間層12bのエッチングレートと、エッチング時間短縮層12aのエッチングレートとで差が出るように形成する。これにより、エッチング時間短縮層12aのエッチングレートが中間層12bのエッチングレートと比較して小さくすることが可能になる。したがって、位相シフトマスク10を形成した後に、位相シフト層12の断面形状を垂直形状に近づけることができる。
【0169】
シリサイド膜である位相シフト層12のエッチング時間をトータルで短くするためには、Si/Moを小さくすることが望まし。Si/Moを2.5以下にする。位相シフト層12におけるシリコンとモリブデンとの比率は、Si/Moが2.5以下のスパッタリングターゲットを用いることで可能である。
【0170】
以下、本発明にかかる実施例を説明する。
【0171】
<実験例1>
実験例1として、ガラス基板上に、位相シフト層12として、スパッタリング法等を用いて3層のモリブデンシリサイド化合物の膜を形成した。ここで形成するモリブデンシリサイド化合物膜は、モリブデン、シリコン、酸素、窒素、炭素等を含有する膜である。3層のモリブデンシリサイド化合物の膜は、表面層12cと中間層12bとエッチング時間短縮層12aとである。3層のモリブデンシリサイド化合物の膜は、膜厚方向に窒素濃度分布を有する。
【0172】
ここで、モリブデンシリサイド化合物の膜を形成するスパッタリングにおいて、モリブデンとシリコンとの比率が1:2.3であるターゲットを用いた。
スパッタリングにおける雰囲気ガスとしては、窒素ガスに加えて、二酸化炭素、アルゴン、とした。また、二酸化炭素ガス分圧を0~100%、窒素ガス分圧を0~100%で変化させて成膜した。
【0173】
位相シフト層となる表面層12cと中間層12bとエッチング時間短縮層12aとにおける成膜条件を
図16に示す。
図16において、Aが表面層12c、Bが中間層12b、Cがエッチング時間短縮層12aである。これらの結果は、あらかじめ設定した一定の成膜条件によってそれぞれの単層膜をガラス基板上に成膜して、別々のガラス基板上のサンプルとして、オージェ電子分光法を用いて組成評価をおこなった。
さらに、実際のマスクブランクスのマスク層については、対応する層ごとにサンプル成膜と同等の条件で連続した成膜をおこなって積層膜を形成するとともに、この積層膜においてオージェ電子分光法を用いて組成評価を行った。その結果を
図17に示す。
【0174】
図17において、表面層12cに対応する部分は、表面酸化の影響で酸素濃度が上昇している。
図16に示したAの数値は、表面酸化の影響を排除するために、表面層12cと同じ条件で、かつ、より大きな膜厚として成膜したモリブデンシリサイド化合物膜を分析したものである。
【0175】
さらに、位相シフト層12にクロムからなる遮光層13を成膜した。このマスク層に、遮光層13に第1レジスト層15を成膜した。第1フォトレジスト層15から第1フォトレジストパターン15P1を形成した。ウエットエッチングにより、第1遮光パターン13P1を形成した。ウエットエッチングにより、位相シフトパターン12P1を形成した。この位相シフトパターン12P1を形成した。パターン形成したマスク層の断面をSEMにより観察した。その結果を
図18に示す。
【0176】
<実験例2>
実験例2として、実験例1と同様に、ガラス基板上に窒素濃度分布を持たないモリブデンシリサイド化合物の膜を形成した。同様に、クロムを含有する遮光層を成膜し、マスク層を形成した。このマスク層に、同様にウエットエッチングをおこなって、同様のパターンを形成した。パターン形成したマスク層の断面をSEMにより観察した。その結果を
図19に示す。
【0177】
図18と
図19とを比べると、実験例2では、モリブデンシリサイド膜のテーパが、実験例1に比べて傾いていることがわかる。
図18と
図19とを比べると、実験例2では、モリブデンシリサイド膜とクロム膜との境界付近に矢印NHで示すように庇が形成されていない。これに対して、実験例1では、矢印Hで示すように庇が形成されていることがわかる。
【0178】
さらに、本マスクブランクスを用いてマスク作製を行った場合にはマスク線幅のばらつきを小さくすることが可能になるという効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0179】
10…位相シフトマスク
10B…位相シフトマスクブランクス
10L…透光領域
10P…位相シフト領域
11…ガラス基板(透明基板)
12…位相シフト層
12P1…位相シフトパターン
12a…エッチング時間短縮層
12b…中間層
12c…表面層
13…遮光層
13P1…第1遮光パターン
13P2…第2遮光パターン
15…フォトレジスト層
15P1…第1レジストパターン
15P2…第2レジストパターン