IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立産機システムの特許一覧

<>
  • 特開-変圧器 図1
  • 特開-変圧器 図2
  • 特開-変圧器 図3
  • 特開-変圧器 図4
  • 特開-変圧器 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106704
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】変圧器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/02 20060101AFI20240801BHJP
   H01F 27/06 20060101ALI20240801BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20240801BHJP
   H01F 30/12 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
H01F27/02 D
H01F27/06
H01F30/10 G
H01F30/10 T
H01F30/12 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011109
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三本 浩司
(72)【発明者】
【氏名】五百川 純一
【テーマコード(参考)】
5E059
【Fターム(参考)】
5E059BB04
5E059BB17
5E059LL03
5E059LL04
(57)【要約】
【課題】 変圧器本体の振動が盤側に伝達されにくくするともに、振れ止め機構を誤って使う可能性を低減でき、地震などの振動が生じた際には、変位を抑制することができる変圧器を提供する。
【解決手段】 振れ止め座を備えた盤に収納される変圧器であって、突起部を有する振れ止め金具を有し、振れ止め金具が前記変圧器の端部に固定され、突起部は、振れ止め座に設けられた穴を貫通するとともに、突起部と振れ止め座とが非接触となるように配置される変圧器。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振れ止め座を備えた盤に収納される変圧器であって、
突起部を有する振れ止め金具を有し、
前記振れ止め金具が前記変圧器の端部に固定され、
前記突起部は、前記振れ止め座に設けられた穴を貫通するとともに、前記突起部と前記振れ止め座とが非接触となるように配置される変圧器。
【請求項2】
請求項1に記載の変圧器において、
前記振れ止め金具は、上部締め付け金具に固定される変圧器。
【請求項3】
請求項2に記載の変圧器において、
前記振れ止め金具には、前記上部締め付け金具に固定するための、奥行き方向に長い長穴が配置され、
前記上部締め付け金具には、前記振れ止め金具に固定するための横手方向に長い長穴が配置される変圧器。
【請求項4】
請求項1に記載の変圧器において、
前記振れ止め金具は、複数の前記突起部を備え、
複数の前記突起部は、前記振れ止め座に設けられた穴を貫通する変圧器。
【請求項5】
請求項1に記載の変圧器において、
前記突起部の表面の角が除かれた形状である変圧器。
【請求項6】
請求項1に記載の変圧器において、
前記振れ止め金具は、前記振れ止め座に対して上下方向に伸びる形状を備えている変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
配電盤(またはこれに類似する変圧器を囲う筐体)に収納される変圧器に地震力(またはこれに類似する外力)が加わった時の配電盤との相対的な変位を抑制する技術として特許文献1が知られている。特許文献1には、「防振装置として、変圧器本体に振れ止め金具を設け、盤側の外側板に振れ止め座を設け、前記振れ止め金具にボルトを固定し、振れ止め座には丸穴を設け、この丸穴にボルトを貫通させる構成とし、通常状態ではボルトと振れ止め座の丸穴が接触しない構成とする」ことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-103578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような構造にすると、振れ止めに必要なボルト径より小さいボルトを使用することで、地震力が加わった時にボルトが破損したり相対的な変位が大きくなったりする問題がある。また、盤側の振れ止め座と貫通させたボルトを誤って締結することで、変圧器の振動を盤側に伝達させてしまう問題がある。
【0005】
また、変圧器の振れ止め金具を変圧器本体の組立時に組み込むことで、盤との組み合わせ時に振れ止めボルトの位置調整が難しく、既設変圧器の更新の際に振れ止めの機構を採用しにくいといった問題がある。
【0006】
本発明の目的は、変圧器本体の振動が盤側に伝達されにくくするともに、振れ止め機構を誤って使う可能性を低減でき、地震などの振動が生じた際には、変位を抑制することができる変圧器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、振れ止め座を備えた盤に収納される変圧器であって、
突起部を有する振れ止め金具を有し、
前記振れ止め金具が前記変圧器の端部に固定され、
前記突起部は、前記振れ止め座に設けられた穴を貫通するとともに、前記突起部と前記振れ止め座とが非接触となるように配置される変圧器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、変圧器本体の振動が盤側に伝達されにくくするともに、振れ止め機構を誤って使う可能性を低減でき、地震などの振動が生じた際には、変位を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1のモールド変圧器の全体構成図である。
図2】実施例1における振れ止め金具と振れ止め座の図である。
図3】実施例2における振れ止め金具の図である。
図4】実施例4における振れ止め金具の図である。
図5】実施例5における振れ止め金具の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。さらに以下の実施例では便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施例に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細もしくは補足説明などの関係にある。
【実施例0011】
本発明の実施例の説明に先立って、一般的なモ-ルド変圧器を説明する。
【0012】
図1(a)は、配電盤収納型モールド変圧器の全体構成の正面図で、図1(b)は上面図を示しており、三相のモールド変圧器本体100を矩形状の盤200に収納している。図1(a)において、モールド変圧器本体100および盤200はコンクリートなどで埋込設置した共通ベースにボルトなどにより固定されている。
【0013】
図1において、モールド変圧器本体100には、2つの内側鉄心110bが配置され、2つの内側鉄心110bを囲むように外側鉄心110aが配置されて三脚の鉄心が構成される。そして、3つの鉄心脚部のそれぞれに、絶縁性のモールド樹脂で覆われた2次巻線120u,120v,120wを配置し、その外側に絶縁性のモールド樹脂で覆われた1次巻線130u,130v,130wを配置して変圧器を構成している。
【0014】
図1において、140、150は、それぞれ金属製の上部締め付け金具および下部締め付け金具である。160は2次側端子板であり、170は一次側埋込端子であり、180は一次側タップ切換器である。地震力が加わった時の配電盤と変圧器の相対的な変位を抑制するために、モールド変圧器本体100は、振れ止め機構として、突起を設けた振れ止め金具190を、モールド変圧器本体100の左右の端部である2箇所に具備している。盤200には振れ止め金具190の突起が貫通するような穴を設けた、振れ止め機構としての振れ止め座210を設けている。
【0015】
上部締め付け金具140は、モールド変圧器本体100の上部に固定される。また、下部締め付け金具150は、モールド変圧器本体100の下部に固定される。モールド変圧器本体100は、下部締め付け金具150を介して共通ベースに固定される。振れ止め金具190は、モールド変圧器本体100の幅より外側に突き出した状態で、上部締め付け金具140に固定される。
【0016】
図2は振れ止め金具190と振れ止め座210を示す図である。振れ止め金具190の突起が振れ止め座210を貫通している状態を、正面から見た正面図として図2(a)に示す。図2(b)は、振れ止め金具190と振れ止め座210とを上面から見た上面図で示している。
【0017】
変圧器の通常状態での運転時においては、鉄心の磁歪により振動している。通常状態では、振れ止め金具190の突起は、振れ止め座210の穴を貫通しており、振れ止め座210と振れ止め金具190の突起とは非接触(直接に接触することなく)の関係となっている。そのために、変圧器本体からの振動が盤側へ伝達されることを遮断する。地震時には、振れ止め金具190の突起は、振れ止め座210の穴で止まり、ストッパーとして。地震による変圧器の振れを抑える。
【0018】
本実施例では、ボルトを使わない。そのため、変圧器と盤を組み合わせるとき、作業者が、盤側の振れ止め座と貫通させたボルトを誤って締結してしまい、変圧器の振動を盤側に伝達させてしまう問題を避けることができる。
【0019】
本実施例では、振れ止め金具190の突起の外径を、振れ止め座210の穴より小さくすることで通常運転時の変圧器側の振動を遮断することができ、地震力が加わる際には振れ止め座210の穴との隙間分のみの振れで盤との相対的な変位を抑制することができるような構造となっている。また、地震力が加わった後に振れ止め座210との接触で振れ止め金具190に傷が付いたり、変形したりした時にも、振れ止め金具190を交換するだけで盤との相対的な変位抑制を再度防ぐことができるような構造となっている。
【実施例0020】
図3は実施例2における振れ止め金具190を上面から見た図である。図3では、図の右方向に、振れ止め座210が配置され、振れ止め金具190の突起192が、振れ止め座210に配置された穴に貫通される。本実施例では、振れ止め金具190における変圧器側との固定用穴191の長さを、奥行き方向(図3の上下方向)を横手方向(図3の横方向)に比べて長くした長穴とすることで盤側との組み合わせを調整しやすくしている。
【0021】
上部締め付け金具140における振れ止め金具190との固定用の穴を、奥行き方向に比べて横手方向を長くした長穴とすることで前後、左右の調整が可能となる。この長穴の関係はどちらか一方でも効果があり、振れ止め金具190と上部締め付け金具140の長穴の関係を入れ替えても効果がある。
【0022】
上記の長穴の構造に加えて、盤側の振れ止め座210の穴を、奥行き方向に比べて変圧器の高さ方向を長くした長穴とすることで、振れ止め金具190と上部締め付け金具140、および盤側の振れ止め座210との間の前後、左右、高低の調整が容易となる。
【0023】
本実施例によれば、振れ止め金具190と、上部締め付け金具140との位置調整が容易となる。さらに、振れ止め金具190と上部締め付け金具140と盤側の振れ止め座210との位置調整が容易となる。
【実施例0024】
図3を用いて実施例3を説明する。実施例1から実施例2では、振れ止め金具190の突起192の数は3個としているが、3個である必要はない。
【0025】
突起192の数は1個であっても、盤側の振れ止め座と貫通させたボルトを誤って締結することで、変圧器の振動を盤側に伝達させてしまう問題を回避できる。
【0026】
また、突起192の数を複数個としても、地震力が加わった時にボルトが破損したり相対的な変位が大きくなったりする問題や、盤側の振れ止め座と貫通させたボルトを誤って締結することで、変圧器の振動を盤側に伝達させてしまう問題を回避できる。さらに、突起192の数を複数個にすることで、地震力が加わった時に突起192のうち、いずれかの突起部が損傷したとしても、損傷の激しい突起192を交換し、損傷の少ない突起部は、交換しないで維持できるという効果がある。
【実施例0027】
図4を用いて実施例4を説明する。図4(a)は、振れ止め金具193を上面から見た上面図である。図4(b)は、振れ止め金具193に設けられた突起194の先端から振れ止め金具193の側面を見た側面図である。
【0028】
図4の振れ止め金具193では、突起194を丸棒としている。
【0029】
本実施例では、ボルトを使うことがなく、盤側との誤った締結を防ぐことができ、盤と変圧器との間の相対的な変位を抑制することが可能となる。また、本実施例では、実施例1から実施例3とは異なり、突起194の外側形状の角部が除かれている。
【0030】
本実施例では、断面形状を略円形状にしたことで、振れ止め金具193における盤側の振れ止め座210との接触部に地震力が加わった時の変形等を防ぐ効果がある。
【実施例0031】
図5を用いて実施例5を説明する。図5(a)は、振れ止め金具195を上面から見た上面図である。図5(b)は、振れ止め金具195を正面から見た正面面図である。図5(b)の右側に、図2(a)に示された盤側の振れ止め座210が配置される。
【0032】
図5の振れ止め金具195は、実施例1から実施例4における振れ止め金具が折り曲げられた形状になっている。本実施例の振れ止め金具195は、振れ止め座210に対して、上下方向に伸びる形状を備えることにより、盤側の振れ止め座210との接触を広い面で受けることができるようにした構造としている。
【0033】
本実施例によれば、振れ止め金具195が広い面で、振動で発生した衝撃を受けることができるので、振れ止め金具195への損傷を小さくする効果がある。
【符号の説明】
【0034】
100・・・モールド変圧器本体、110a・・・外側鉄心、110b・・・内側鉄心、120u、120v、120w・・・2次巻線、130u、130v、130w・・・1次巻線、140・・・上部締め付け金具、150・・・下部締め付け金具、190・・・突起を設けた振れ止め金具、191・・・振れ止め金具の上部側の金具固定用穴、192・・・振れ止め金具の突起、200・・・盤、210・・・振れ止め座
図1
図2
図3
図4
図5