(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106710
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240801BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B41J2/165 401
B41J2/01 301
B41J2/165 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011116
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 里美
(72)【発明者】
【氏名】山本 なつ美
(72)【発明者】
【氏名】関 賢司
(72)【発明者】
【氏名】夏目 正尊
(72)【発明者】
【氏名】新井 章文
(72)【発明者】
【氏名】安形 和晃
(72)【発明者】
【氏名】角▲崎▼ 正太
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056FA10
2C056JB04
2C056JB10
2C056JB15
(57)【要約】
【課題】印刷物の不良の発生を抑制すること。
【解決手段】
本発明に係るインクジェットプリンタ10は、プラテン16と、インクヘッド45と、ワイピングユニット50と、第1滴下口92aを備えた洗浄液滴下ユニット90と、を備えている。ワイピングユニット50は、プラテン16の右方に配置されている。洗浄液滴下ユニット90は、第1滴下口92aから洗浄液WLをワイピングユニット50に滴下する。このとき、インクヘッド45は、第1滴下口92aよりも右方に配置される。このことにより、インクヘッド45に付着したインクが垂れても、プラテン16にインクが付着することが防止される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を支持するプラテンと、
インクを吐出する複数のノズルと前記ノズルが形成されたノズル面とを有するインクヘッドと、
前記インクヘッドが設けられ、主走査方向に移動可能なキャリッジと、
前記プラテンに対して前記主走査方向のいずれか一方に配置され、前記インクヘッドをクリーニングする第1クリーニングユニットと、
洗浄液を滴下する洗浄液滴下ユニットと、を備え、
前記洗浄液滴下ユニットは、前記第1クリーニングユニットへ前記洗浄液を滴下する第1滴下口を、前記キャリッジのうち前記インクヘッドに対して前記主走査方向の他方に備え、
前記洗浄液滴下ユニットは、前記インクヘッドが前記プラテンよりも前記主走査方向の一方に位置しているときに前記第1滴下口から前記洗浄液を滴下するように構成されている、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記主走査方向に延び、前記キャリッジの移動をガイドするガイドレールと、
前記第1クリーニングユニットに対して前記主走査方向の一方に配置された第2クリーニングユニットと、を備え、
前記洗浄液滴下ユニットは、前記洗浄液を滴下する第2滴下口を前記キャリッジのうち前記インクヘッドに対して前記主走査方向の一方に備え、
前記洗浄液滴下ユニットは、前記第1クリーニングユニットへ前記第1滴下口から前記洗浄液を滴下し、前記第2クリーニングユニットへ第2滴下口から前記洗浄液を滴下するように構成されている、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記洗浄液滴下ユニットは、
前記洗浄液を貯留する洗浄液タンクと、
前記洗浄液タンクと前記第1滴下口とを接続し、前記洗浄液が流れる第1供給路と、
前記洗浄液タンクと前記第2滴下口とを接続し、前記洗浄液が流れる第2供給路と、
前記第1供給路を開放または閉鎖する第1開閉弁と、
前記第2供給路を開放または閉鎖する第2開閉弁と、を備えている、請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記洗浄液滴下ユニットは、
前記洗浄液を貯蓄する洗浄液タンクと
前記洗浄液タンクに接続された共通供給路と、
前記共通供給路に接続された第1接続口と、第2接続口と、第3接続口と、を有し、前記第1接続口と前記第2接続口とを連通する状態と、前記第1接続口と前記第3接続口とを連通する状態と、に切換可能な三方弁と、
前記第2接続口と前記第1滴下口とに接続された第1供給路と、
前記第3接続口と前記第2滴下口とに接続された第2供給路と、を備えている、請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記第1クリーニングユニットは、前記ノズル面を拭うワイパーを備え、
前記第2クリーニングユニットは、前記ノズル面を下方から覆うように前記インクヘッドに装着されるキャップを備えている、請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記第1滴下口は、前記ワイパーに前記洗浄液を滴下するとき、前記ワイパーの真上に配置される、請求項5に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記第1滴下口と前記第2滴下口との前記主走査方向の間隔は、前記第1クリーニングユニットの前記主走査方向の一方の端の位置と、前記第2クリーニングユニットの前記主走査方向の他方の端の位置との間隔よりも広く、かつ、前記第1クリーニングユニットの前記主走査方向の他方の端の位置と、前記第2クリーニングユニットの前記主走査方向の一方の端の位置との間隔よりも狭く形成されている、請求項5に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記第1クリーニングユニットの周囲に配置され、前記洗浄液を吸収する第1吸収体を備える、請求項5に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記キャップの周囲に隣接して配置され、前記洗浄液を吸収する第2吸収体を備える、請求項5に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
前記第1滴下口および前記第2滴下口は、前記ノズル面に形成され、
前記洗浄液滴下ユニットは、前記キャップが前記ノズル面に装着される前に前記第1滴下口および前記第2滴下口から前記洗浄液を滴下するように構成されている、請求項5に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項11】
請求項1に記載されたインクジェットプリンタをクリーニングするクリーニング方法であって、
前記洗浄液滴下ユニットが前記第1滴下口から前記第1クリーニングユニットへ前記洗浄液を滴下した後、作業者が前記第1クリーニングユニットを手動によりクリーニングするマニュアルクリーニングを行う、クリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェットヘッドのノズルの目詰まりの解消やノズル面に付着した硬化したインクおよびゴミの除去のために、ノズルおよびノズル面のクリーニングを定期的に行うインクジェットプリンタが知られている。かかるインクジェットプリンタでは、ノズル面を拭うワイプブレードや、ノズル面に装着し、インクの蒸発を防止することやインクの吸引をするキャップが備えられている。ワイプブレードやキャップには、クリーニング時にインクやゴミが蓄積されるため、ワイプブレードやキャップの定期的な洗浄が実行される。かかるインクジェットプリンタでは、ワイプブレードやキャップを洗浄するために、クリーニング液が使用される。
【0003】
例えば、特許文献1には、記録媒体を支持するプラテンと、インクジェットヘッドと、インクジェットヘッドを搭載したキャリッジと、キャリッジに搭載され、クリーニング液を滴下する滴下手段と、キャップと、キャリッジに支持された清掃ローラーと、ノズルの配置された面をワイプブレードにより払拭するワイプユニットと、を備えるインクジェットプリンタが開示されている。インクジェットヘッドは、滴下手段の左方に配置されている。また、プラテンは、ワイプユニットの左方に配置されている。かかるインクジェットプリンタでは、滴下手段がクリーニング液をキャップに滴下した状態において、清掃ローラーをキャップに押圧しながら回転させることにより、キャップが洗浄される。また、滴下手段がクリーニング液をワイピングユニットに供給し、クリーニング液にワイプブレードを浸すことにより、ワイプブレードが洗浄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のインクジェットプリンタでは、インクジェットヘッドは、滴下手段の左方に配置されている。また、プラテンは、ワイプユニットの左方に配置されている。したがって、例えば、滴下手段がワイプユニットの上方からワイプユニットにクリーニング液を滴下するとき、インクジェットヘッドおよびプラテンは、いずれも滴下手段よりも左方に配置されている。このとき、インクジェットヘッドがプラテンの上方に配置される可能性がある。ワイピングを行う前のノズルにはインクが付着しているため、インクヘッドからプラテンにインクが垂れる虞がある。プラテンにインクが付着すると、記録媒体がプラテンに載置されたとき、記録媒体にインクが付着し、印刷物の不良となる。
【0006】
本発明は、係る点に鑑みてなされたものであり、その目的は、印刷物の不良の発生を抑制することができるインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態のインクジェットプリンタは、記録媒体を支持するプラテンと、インクを吐出する複数のノズルと前記ノズルが形成されたノズル面とを有するインクヘッドと、前記インクヘッドが設けられ、主走査方向に移動可能なキャリッジと、前記プラテンに対して前記主走査方向のいずれか一方に配置され、前記インクヘッドをクリーニングする第1クリーニングユニットと、前記キャリッジに設けられ、洗浄液を滴下する洗浄液滴下ユニットと、を備えている。前記洗浄液滴下ユニットは、前記第1クリーニングユニットへ前記洗浄液を滴下する第1滴下口を前記インクヘッドに対して前記主走査方向の他方に備えている。前記洗浄液滴下ユニットは、前記インクヘッドが前記プラテンよりも前記主走査方向の一方に位置しているときに前記第1滴下口から前記洗浄液を滴下するように構成されている。
【0008】
本発明のインクジェットプリンタによれば、前記プラテンに対して、前記主走査方向のいずれか一方に配置された第1クリーニングユニットへ前記第1滴下口から前記洗浄液が滴下される。このとき、前記第1滴下口は、前記インクヘッドに対して前記主走査方向の他方に配置されている。このことにより、前記第1滴下口から前記洗浄液が滴下されるとき、前記インクヘッドは、前記プラテンの上方に配置されていない。したがって、前記インクヘッドからインクが垂れても、前記プラテンにインクが付着することがない。このことにより、前記プラテンにインクが付着することによる印刷物の不良の発生が抑制される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、印刷物の不良の発生を抑制することができるインクジェットプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】一実施形態に係るインクヘッドの底面の構成を示す模式図である。
【
図3】第1滴下口から洗浄液が滴下されるときの模式図である。
【
図4】一実施形態に係るインクヘッドおよびキャップを示す模式図である。
【
図5】一実施形態に係る洗浄液滴下ユニットの構成を示す模式図である。
【
図6】第2滴下口から洗浄液が滴下されるときの模式図である。
【
図7】第1滴下口および第2滴下口から洗浄液が滴下されるときの模式図である。
【
図8】別実施形態に係る洗浄液滴下ユニットの構成を示す模式図である。
【
図9】別実施形態に係るキャリッジの底面の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」という。)について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。以下の説明では、インクジェットプリンタを正面から見たときに、インクジェットプリンタから遠ざかる方を前方、インクジェットプリンタに近づく方を後方とする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。図面中の符号Yは主走査方向を表す。本実施形態では、主走査方向Yは、左右方向である。図面中の符号Xは副走査方向を表す。副走査方向Xは主走査方向Yと交差する方向(例えば、平面視で垂直に交差する方向)である。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、インクジェットプリンタの設置態様等を限定するものではない。
【0012】
図1は、一実施形態に係るインクジェットプリンタ10(以下、プリンタ10)の正面図である。プリンタ10は、インクジェット式のプリンタである。
図2は、インクを吐出するインクヘッド45の底面の構成の模式図である。本実施形態では、プリンタ10は、ロール状の記録媒体5を順次前方に移動させると共に、左右方向に移動するキャリッジ40に搭載された複数のインクヘッド45からそれぞれインクを吐出することによって、記録媒体5上に画像を印刷する。
【0013】
記録媒体5は、例えば、記録紙である。ただし、記録媒体5は、記録紙に限定されない。例えば、記録媒体5には、PVC、ポリエステルなどの樹脂材料から形成されたシート、アルミや鉄等から形成された金属板、ガラス板、木材板等の比較的厚みを有するものが含まれる。
【0014】
図1および
図3に示すように、プリンタ10は、本体11と、脚12と、プラテン16と、ヘッド移動機構20と、キャリッジ40と、媒体搬送機構30と、インクヘッド45と、インクタンク110と、ワイピングユニット50と、廃液受け部材81と、第1吸収体82と、キャッピングユニット60と、洗浄液滴下ユニット90と、操作パネル13と、制御装置100と、を備えている。ワイピングユニット50は、本発明における第1クリーニングユニットの一例である。キャッピングユニット60は、本発明における第2クリーニングユニットの一例である。
【0015】
本体11は、左右方向に延びている。脚12は、本体11を支持している。脚12は、本体11の下面に設けられている。操作パネル13は、本体11の右側の前面に設けられている。ただし、操作パネル13の位置は特に限定されない。操作パネル13では、例えば、ユーザーが印刷に関する操作を行う。図示は省略するが、操作パネル13には、例えば、印刷に関する情報や、印刷中のプリンタ10のステータスなどが表示される表示部および、印刷に関する情報を入力するための入力部などが備えられている。
【0016】
プラテン16は、記録媒体5への印刷の際、記録媒体5を支持する部材である。プラテン16には、記録媒体5が載置される。記録媒体5への印刷は、プラテン16上で行われる。プラテン16は左右方向に延びている。プラテン16は、本体11に設けられている。
【0017】
ヘッド移動機構20は、キャリッジ40を左右方向に移動させる機構である。ヘッド移動機構20は、ガイドレール21と、プーリ22と、プーリ23と、ベルト24と、キャリッジモータ25と、を備えている。ガイドレール21は、キャリッジ40の左右方向への移動をガイドする。ガイドレール21は、プラテン16の上方に配置されている。ガイドレール21は、本体11に設けられている。ガイドレール21は左右方向に延びている。プーリ22は、ガイドレール21の左端より左方に設けられている。プーリ23は、ガイドレール21の右端より右方に設けられている。ベルト24は、プーリ22とプーリ23とに巻き掛けられている。左側のプーリ22には、キャリッジモータ25が接続されている。ただし、キャリッジモータ25は、右側のプーリ23に接続されていてもよい。キャリッジモータ25が駆動して、プーリ22が回転することにより、プーリ22とプーリ23との間においてベルト24が走行する。キャリッジモータ25は、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100により制御される。
【0018】
キャリッジ40は、ベルト24に取り付けられている。キャリッジ40は、ガイドレール21に係合しており、ガイドレール21に摺動自在に設けられている。キャリッジ40には、複数のインクヘッド45が搭載されている。キャリッジモータ25の駆動によってベルト24が走行して、キャリッジ40が左右方向に移動することに伴い、キャリッジ40に搭載された複数のインクヘッド45は左右方向に移動する。
【0019】
媒体搬送機構30は、プラテン16に載置された記録媒体5を前後方向に移動させる機構である。媒体搬送機構30は、グリットローラ31と、ピンチローラ32と、フィードモータ33とを備えている。グリットローラ31は、プラテン16に設けられている。ここでは、グリットローラ31の一部はプラテン16に埋設されている。ピンチローラ32は、グリットローラ31と上下方向で対向するように、グリットローラ31の上方に配置されている。ピンチローラ32は、記録媒体5を上から押え付ける部材である。フィードモータ33は、グリットローラ31に接続されている。グリットローラ31とピンチローラ32との間に記録媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ33が駆動してグリットローラ31が回転すると、記録媒体5は前後方向に搬送される。フィードモータ33は、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100により制御される。
【0020】
複数のインクヘッド45は、左右方向に並んでいる。
図2に示すように、インクヘッド45は、前後方向の長さが主走査方向Yの長さよりも長い形状に形成されている。インクヘッド45は、同じ形状かつ同じ大きさに形成されている。インクヘッド45は、前後方向に並ぶ複数のノズル46と、ノズル列46aが形成されたノズル面47と、を備えている。インクヘッド45のノズル46から記録媒体5にインクが吐出される。インクの吐出の方法は、特に限定されないが、例えば、圧電素子により形成されるアクチュエータ(図示せず)を用いてインクが吐出される。制御装置100に電気的に接続されたアクチュエータが制御装置100により駆動され、インクヘッド45の内部の圧力室(図示せず)が膨張/収縮されることにより、ノズル46からインクが吐出される。本実施形態では、プリンタ10は3つのインクヘッド45を備えているが、インクヘッド45の数は3つに限定されない。また、インクヘッド45は、1列のノズル列46aを備えているが、2以上のノズル列を備えていてもよい。また、
図2では、ノズル列46aを形成するノズル46の数は12個としているが、実際にはもっと多数(例えば200~300個程度)のノズル46が形成されている。
【0021】
インクタンク110には、例えばプロセスカラーインクおよび特色インク(例えばホワイトインク、クリアインクなど)のうちの1つのインクが貯留されている。ただし、インクタンク110に貯留されるインクの色は特に限定されない。また、インクの材料も何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよい。あるいは、上記インクは、水性染料インクや、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インクなどであってもよい。インクタンク110は、例えばインクカートリッジであってもよいし、パウチ状のものであってもよい。インクタンク110は、例えば、可撓性を有するインクチューブ(図示せず)により、インクヘッド45に接続されている。インクタンク110に貯留されたインクは、インクチューブを通り、インクヘッド45に供給される。
【0022】
ワイピングユニット50は、プラテン16とキャッピングユニット60との間に設けられている。ワイピングユニット50は、キャリッジ40より下方に設けられている。
図3に示すように、ワイピングユニット50は、ワイパー51と、ワイパー移動機構52と、を備えている。
【0023】
ワイパー51は、インクヘッド45をクリーニングする部材である。ワイパー51は、例えば、平板状のゴムによって構成されている。ワイピングユニット50は、プラテン16の左方に配置されていてもよい。ワイパー51は、ワイパー移動機構52に保持されている。
【0024】
ワイパー移動機構52は、ワイパー51をインクヘッド45に対して上下方向に移動可能に保持している。ワイパー移動機構52は、制御装置100(
図1参照)に電気的に接続され、制御装置100により制御される。ワイパー移動機構52は、廃液受け部材81に設置されている。なお、ワイパー移動機構は、インクヘッドとワイパーとの間の位置関係を変化させる機構であれば足り、それ以上限定されない。ワイパー移動機構は、ワイパーではなく、インクヘッドを移動させてもよく、両者を移動させてもよい。また、ワイパー移動機構52は、ワイパーを副走査方向Xに移動させるものであってもよい。本実施形態では、ワイパー移動機構52の主走査方向Yの長さがワイパー51の主走査方向Yの長さよりも長く形成されている。したがって、ワイピングユニット50の左端は、ワイパー移動機構52の左端であり、ワイピングユニット50の右端は、ワイパー移動機構52の右端である。
【0025】
廃液受け部材81は、ワイピングユニット50の周囲を囲むように配置されている。廃液受け部材81は、滴下された洗浄液WLを受ける部材である。また、廃液受け部材81は、ワイパー51がノズル面47を拭ったときに飛び散る洗浄液WLやインクも受ける。本実施形態では、廃液受け部材81は、平面視にて矩形形状であり、ワイピングユニット50の周囲を囲んでいる。廃液受け部材81の上端の位置は、ワイパー移動機構52の上端の位置よりも高く形成されている。ただし、廃液受け部材81の形状はこれに限定されない。
【0026】
第1吸収体82は、廃液受け部材81の内部に配置されている。第1吸収体82は、廃液受け部材81の内部のうち、側面および底面に隣接して配置されている。第1吸収体82の上端の位置は、廃液受け部材81の上端の位置よりも低い位置となっている。第1吸収体82は、廃液受け部材81の内部に落ちた洗浄液WLやインクを吸収する。第1吸収体82は、例えば、スポンジのように水分を吸収する素材により構成されている。ただし、第1吸収体82を形成する材料は、洗浄液WLやインクを吸収するものである限りにおいて、特に限定されない。
【0027】
図1に示すように、キャッピングユニット60は、プリンタ10の右端部に配置されている。すなわち、キャッピングユニット60は、プラテン16およびワイピングユニット50よりも右方に配置されている。
図3に示すように、キャッピングユニット60は、複数のキャップ61と、キャップ移動機構62とを備えている。複数のキャップ61には、それぞれ吸引ポンプ161が接続されている。複数のキャップ61は、インクヘッド45より下方に配置されている。キャップ61の数とインクヘッド45の数は同じである。複数のキャップ61は、キャップ移動機構62に下方から支持されている。キャップ移動機構62は、複数のキャップ61を上下方向に移動させ、複数のキャップ61をそれぞれインクヘッド45に着脱させる。キャップ移動機構62は、制御装置100(
図1参照)に電気的に接続され、制御装置100によって制御される。本実施形態では、キャップ移動機構62の左端がキャッピングユニット60の左端であり、キャップ移動機構62の右端がキャッピングユニット60の右端である。吸引ポンプ161は、キャップ61内のインクを吸引して廃液タンク300(
図1参照)に廃棄するように構成されている。吸引ポンプは、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100によって制御される。
【0028】
図4(a)に示すように、キャップ61は、リップ部61aを有している。
図4(a)は、1つのキャップ61およびインクヘッド45を表す模式図である。リップ部61aは、キャップ61の上端部を構成している。
図4(b)に示すように、リップ部61aは、キャップ61がインクヘッド45に装着されたとき、ノズル面47と接触する部分である。リップ部61aは、環状のものである。リップ部61aは、上端に向かうにしたがって幅が小さくなっている。ここで、「リップ部61aの幅」とは、リップ部61aの周方向に対して直交する方向の長さのことをいう。リップ部61aは、先細り形状を有している。
【0029】
リップ部61aは、弾性変形可能なものである。そのため、リップ部61aがインクヘッド45のノズル面47に接触したときに、弾性変形することがあり得る。なお、リップ部61aを形成する具体的な材料は、特に限定されない。本実施形態では、リップ部61aは、ゴム製である。具体的には、リップ部61aは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)またはブチルゴムによって形成されている。ここでは、リップ部61a以外のキャップ61の部分もゴム製である。
【0030】
図3に示すように、キャップ61の周囲には、第2吸収体63が配置されている。第2吸収体63は、キャップ61の周囲に隣接して配置されている。第2吸収体63は、洗浄液滴下ユニット90から洗浄液WLが滴下されたとき、洗浄液WLを吸収する部材である。第2吸収体63を形成する材料は、第1吸収体82と同様に、水分を吸収するものであれば特に限定されない。ここでは、第2吸収体63は、第1吸収体82と同様、多孔質の材料によって形成されている。また、第2吸収体63は、キャップ61の周囲にインクがこぼれたときにインクを吸収することも可能である。
【0031】
図4(a)および
図4(b)に示すように、キャップ61内には、第3吸収体64が設けられている。第3吸収体64は、キャップ61に収容されている。第3吸収体64は、インクヘッド45からキャップ61内にインクが吐出(または排出)されたとき、当該インクを受ける部材である。第3吸収体64を形成する材料は、第1吸収体82と同様に、水分を吸収するものであれば特に限定されない。ここでは、第3吸収体64は、第2吸収体63および第1吸収体82と同様、多孔質の材料によって形成されている。
【0032】
図1に示すように、プリンタ10は、洗浄液滴下ユニット90を備えている。
図5は、洗浄液滴下ユニット90の模式図である。
図5に示すように、洗浄液滴下ユニット90は、洗浄液タンク91と、第1洗浄液ヘッド92と、第2洗浄液ヘッド93と、供給路94と、第1開閉弁96と、第2開閉弁97と、を備えている。供給路94は、共通供給路94aと、第1供給路94bと、第2供給路94cと、により構成されている。共通供給路94a、第1供給路94bおよび第2供給路94cは、連通部941により連通している。第1洗浄液ヘッド92は、第1滴下口92aを有している。第2洗浄液ヘッド93は、第2滴下口93aを有している。本実施形態では、洗浄液滴下ユニット90は、第1滴下口92aからワイピングユニット50へ洗浄液WLを滴下し、第2滴下口93aからキャッピングユニット60へ洗浄液WLを滴下する。
【0033】
洗浄液タンク91は、洗浄液WLを貯留するタンクである。洗浄液タンク91に貯留された洗浄液WLが第1洗浄液ヘッド92および第2洗浄液ヘッド93より滴下される。
図1に示すように、洗浄液タンク91は、本体11の上方かつインクタンク110の右方に配置されている。ただし、洗浄液タンク91の配置される場所は、これに限定されない。
【0034】
第1洗浄液ヘッド92は、インクヘッド45の左方に配置されている。第2洗浄液ヘッド93は、インクヘッド45の右方に配置されている。
図2に示すように、第1洗浄液ヘッド92および第2洗浄液ヘッド93は、前後方向が主走査方向Yの長さよりも長い形状に形成されている。本実施形態では、第1洗浄液ヘッド92および第2洗浄液ヘッド93は、それぞれ底面に第1滴下口92aおよび第2滴下口93aを備えている。第1滴下口92aおよび第2滴下口93aから洗浄液WLが滴下される。本実施形態では、第1滴下口92aと第2滴下口93aとは、同様に形成されているが、互いに異なるように形成されていてもよい。本実施形態における第1滴下口92aおよび第2滴下口93aの前後方向の長さは、ワイパー51(
図3参照)の前後方向の長さよりも長く形成されている。
【0035】
図5に示すように、供給路94は、洗浄液タンク91と、第1滴下口92aと、第2滴下口93aとを接続し、洗浄液WLを導く流路を形成している。共通供給路94aは、洗浄液タンク91と連通部941とを連通している。第1供給路94bは、連通部941と第1滴下口92aとを連通している。第2供給路94cは、連通部941と第2滴下口93aとを連通している。第1供給路94bおよび第2供給路94cは、例えば、可撓性を有するチューブにより形成される。ただし、第1供給路94bおよび第2供給路94cを形成する材料は、これに限定されない。また、共通供給路94aおよび連通部941を備えず、第1供給路94bが直接洗浄液タンク91と第1滴下口92aとに接続され、かつ、第2供給路94cが直接洗浄液タンク91と第2滴下口93aとに接続されるものであってもよい。
【0036】
第1開閉弁96および第2開閉弁97は、それぞれ第1供給路94bおよび第2供給路94cに接続されている。第1開閉弁96は、第1供給路94bを開放または閉鎖可能に構成されている。第2開閉弁97は、第2供給路94cを開放または閉鎖可能に構成されている。ここで、例えば、「第1開閉弁96が第1供給路94bを開放または閉鎖」するとは、第1開閉弁96が第1供給路94bの流路を完全に開放または閉鎖する場合と、第1供給路94bの流路を部分的に開放または閉鎖する場合と、を含む。第1開閉弁96が開放されると、第1供給路94bの流路が開放され、第1開閉弁が閉鎖されると、第1供給路94bの流路が閉鎖される。第1開閉弁96が第1供給路94bの流路を開放することにより、洗浄液タンク91に貯留されている洗浄液WLが共通供給路94a、連通部941および第1供給路94bを経由して第1滴下口92aに導かれる。なお、第1開閉弁96を部分的に開放する量を調整することにより、第1滴下口92aから滴下される洗浄液WLの量が調節される。第2開閉弁97および第2供給路94cについても同様である。第1開閉弁96および第2開閉弁97は、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100により制御される。第1開閉弁96および第2開閉弁97は、例えば、電磁弁である。
【0037】
制御装置100は、プリンタ10の各部の動作を制御している。また、印刷に係る各種の設定を行う。制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備えている。
図1に示すように、制御装置100は、本体11の内部に設けられている。ただし、制御装置100は本体11の内部に設けられていなくてもよい。例えば、制御装置100は、本体11の外部に設置されたコンピュータなどであってもよい。
【0038】
以上、本実施形態に係るインクジェットプリンタの構成について説明した。次に洗浄液滴下ユニット90からワイピングユニット50およびキャップ61に洗浄液WLを滴下するときの動作について説明する。
【0039】
まず、ワイピングユニット50に洗浄液WLを滴下するときの動作について説明する。
図3は、洗浄液滴下ユニット90からワイピングユニット50に洗浄液WLを滴下するときを示す図である。制御装置100(
図1参照)がキャリッジモータ25(
図1参照)を制御することにより、第1滴下口92aがワイピングユニット50の上に配置されるように、キャリッジ40が主走査方向Yに移動される。本実施形態では、ワイピングユニット50に洗浄液WLを滴下するとき、洗浄液WLがワイパー51に直接滴下される。すなわち、第1滴下口92aは、ワイパー51の真上に配置される。第1滴下口92aがワイパー51の真上に配置されると、制御装置100は、第1開閉弁96(
図5参照)を開放し、所定の量だけ洗浄液WLをワイパー51に滴下する。ワイパー51に滴下された洗浄液WLにより、ワイパー51に固着していたインクが溶ける。溶けたインクは、ワイパー51を伝って、第1吸収体82に吸収される。
【0040】
次に、キャッピングユニット60に洗浄液WLを滴下するときの動作について説明する。
図6は、洗浄液滴下ユニット90からキャッピングユニット60に洗浄液WLを滴下するときを示す図である。
図6に示すように、洗浄液滴下ユニット90は、キャッピングユニット60へ第2滴下口93aから洗浄液WLを滴下する。制御装置100(
図1参照)がキャリッジモータ25(
図1参照)を制御することにより、第2滴下口93aがキャッピングユニット60の上に配置されるように、キャリッジ40が主走査方向Yに移動される。
図6では、3つのキャップ61のうち右側に配置されているキャップ61に洗浄液WLが滴下されている。また、本実施形態では、キャップ61のリップ部61aに向かって洗浄液WLが滴下される。第2滴下口93aがリップ部61aの真上に配置されると、制御装置100は、第2開閉弁97(
図5参照)を開放し、所定の量だけ洗浄液WLをキャップ61のリップ部61aに滴下する。滴下された洗浄液WLの一部は、キャップ61の外側を伝い、余剰な洗浄液WLが第2吸収体63に吸収される。滴下された洗浄液WLの一部は、キャップ61の内側を伝い、余剰な洗浄液WLは、第3吸収体64(
図4(a)参照)に吸収される。このとき、洗浄液WLにより、キャップ61に固着していたインクが溶ける。溶けたインクは、第2吸収体63および第3吸収体64に吸収される。
【0041】
また、洗浄液滴下ユニット90は、ワイピングユニット50およびキャッピングユニット60に同時に洗浄液WLを滴下してもよい。
図7は、ワイピングユニット50およびキャッピングユニット60に同時に洗浄液WLを滴下するときを示す図である。
図7に示すように、第1滴下口92aと第2滴下口93aとの間隔L1は、ワイピングユニット50の右端とキャッピングユニット60の左端との間隔L2よりも長く、かつ、ワイピングユニット50の左端とキャッピングユニット60の右端との間隔L3よりも短く形成されている。ワイピングユニット50の左端は、上述の通り、ワイパー移動機構52の左端の位置である。また、ワイピングユニット50の右端は、ワイパー移動機構52の右端の位置である。キャッピングユニット60の左端は、上述の通り、キャップ移動機構62の左端の位置である。また、キャッピングユニット60の右端は、キャップ移動機構62の右端の位置である。このとき、
図7に示すように、第1滴下口92aをワイパー51の上方に配置し、かつ、第2滴下口93aをキャップ61の上方に配置させることができる。このとき、第1開閉弁96(
図5参照)および第2開閉弁97(
図5参照)を開放することにより、ワイパー51およびキャップ61に洗浄液WLが同時に滴下される。
【0042】
ワイパー51および/またはキャップ61へ洗浄液WLが滴下されたあと、作業者は、クリーニングスティックによりワイパー51やキャップ61を拭う、所謂、マニュアルクリーニングを実行することにより、インクをさらに除去してもよい。
【0043】
以上のように、本実施形態のプリンタ10によると、プラテン16の右方に配置されたワイピングユニット50が備えるワイパー51へ、第1滴下口92aから洗浄液WLが滴下される。第1滴下口92aは、インクヘッド45よりも左方に配置されている。したがって、第1滴下口92aから洗浄液WLが滴下されるとき、インクヘッド45は、プラテン16よりも右方に配置されている。すなわち、プラテン16の上方にインクヘッド45は、配置されていない。このことにより、インクヘッド45からインクが垂れても、プラテン16にインクが付着しない。したがって、プラテン16に付着したインクが記録媒体5に付着することが防がれる。
【0044】
また、本実施形態のプリンタ10のように、ワイピングユニット50へ洗浄液WLを滴下するとき、作業者の負担を減らすことができる。洗浄液滴下ユニット90を備えていないプリンタ10の場合、例えば、クリーニングスティックに洗浄液WLを塗布したものを用いてワイピングユニット50を拭うことにより、インクやゴミの除去を行っていた。しかしながら、本実施形態のプリンタ10のように、洗浄液WLをワイピングユニット50に滴下すると、洗浄液WLがワイピングユニット50を伝うことにより、ワイピングユニット50に固着していたインクの除去を行うことができる。したがって、マニュアルクリーニングを行う頻度を減らすことができる。このことにより、作業者が手作業にて行う作業が減り、作業者の負担を減らすことができる。
【0045】
本実施形態のプリンタ10によると、ワイピングユニット50の右方に配置されたキャッピングユニット60が備えるキャップ61に対して第2滴下口93aより洗浄液WLが滴下される。このことにより、ガイドレール21の右端は、
図6に示すように、第1滴下口92aがキャップ61の上方に配置することが可能な位置まで延びていればよい。仮に、第1滴下口92aからキャップ61へ洗浄液WLを滴下する場合、第1滴下口92aと第2滴下口93aとの間隔の分、ガイドレール21を右方へ伸ばす必要がある。しかし、本実施形態のように、第2滴下口93aからキャップへ洗浄液WLを滴下する場合、その必要がない。このことにより、ガイドレール21の主走査方向Yの長さが長くなることを抑制することができる。すなわち、プリンタ10が大型化することを抑制することができる。
【0046】
本実施形態のプリンタ10によると、第1供給路94bが共通供給路94aおよび連通部941を介して、洗浄液タンク91と第1滴下口92aとに接続されている。また、第2供給路94cが共通供給路94aおよび連通部941を介して、洗浄液タンク91と第2滴下口93aとに接続されている。第1供給路94bには、第1開閉弁96が設けられ、第2供給路94cには、第2開閉弁97が設けられている。制御装置100が第1開閉弁96を開放させることにより、第1滴下口92aから洗浄液WLが滴下される。同様に、第2開閉弁97を開放させることにより、第2滴下口93aから洗浄液WLが滴下される。このことにより、洗浄液WLの滴下が必要なときにのみ、第1滴下口92aおよび第2滴下口93aからそれぞれ洗浄液WLが滴下される。例えば、ワイピングユニット50へ第1滴下口92aから洗浄液WLを滴下するとき、第2開閉弁97を閉鎖しておくことにより、第2滴下口93aから洗浄液WLが滴下されることがない。また、第1開閉弁96および第2開閉弁97を開放する量を調整することにより、滴下する洗浄液WLの量を調整することも可能である。
【0047】
また、本実施形態のプリンタ10のように、洗浄液WLの滴下を第1開閉弁96および第2開閉弁97を用いて制御することにより、洗浄液WLの使用量を削減することが期待できる。第1滴下口92aおよび第2滴下口93aから滴下される洗浄液WLは、第1開閉弁96および第2開閉弁97を開放する量によって決まる。したがって、第1滴下口92aおよび第2滴下口93aから滴下される洗浄液WLは、第1開閉弁96および第2開閉弁97を開放する量に応じた所定の量となる。洗浄液滴下ユニット90を備えていないプリンタ10の場合、例えば、クリーニングスティックに洗浄液WLを塗布したものを用いて、ワイピングユニット50および/またはキャッピングユニット60を拭う。このとき、クリーニングスティックに塗布する洗浄液WLの量は、作業者により決まるため、必要以上に洗浄液WLが塗布されることがある。本実施形態のプリンタのように、洗浄液WLの滴下量が所定の量となるように構成されていることにより、洗浄液WLが必要以上に使用されず、洗浄液WLの使用量を削減することが期待できる。
【0048】
本実施形態のプリンタ10は、ワイピングユニット50およびキャッピングユニット60を備えている。ワイピングユニット50は、ワイパー51を備えている。キャッピングユニット60は、キャップ61を備えている。本発明は、ワイパー51やキャップ61を備えるプリンタ10にも適用することができる。
【0049】
本実施形態のプリンタ10によると、ワイピングユニット50に洗浄液WLを滴下するとき、第1滴下口92aがワイパー51の真上に配置されている。すなわち、ワイパー51は、第1滴下口92aより直接洗浄液WLを滴下される。ここで、例えば、プリンタ10が洗浄液WLを貯留する洗浄液槽を備えていることがある。係るプリンタ10では、ワイパー51を移動させ、洗浄液槽に貯留された洗浄液WLにワイパー51を浸けることにより、ワイパー51を洗浄することができる。しかしながら、洗浄液槽は、ワイパー51を浸けるために比較的大きく形成されており、ワイピングユニット50の周辺に洗浄液槽を設置するスペースが確保しにくい場合がある。しかしながら、本実施形態のように、第1滴下口92aが直接ワイパー51に洗浄液WLを滴下することにより、洗浄液槽が不要になり、ワイピングユニット50の周辺を省スペース化することができる。
【0050】
本発明のプリンタ10によると、第1滴下口92aと第2滴下口93aとの間隔L1は、ワイピングユニット50の右端とキャッピングユニット60の左端との間隔L2よりも長く、かつ、ワイピングユニット50の左端とキャッピングユニット60の右端との間隔L3よりも短く形成されている。したがって、第1滴下口92aおよび第2滴下口93aは、同時に洗浄液WLを滴下することができる。このことにより、ワイピングユニット50とキャッピングユニット60との間をキャリッジ40が移動する時間の一部が省かれる。したがって、洗浄液WLをワイピングユニット50およびキャッピングユニット60に滴下するのに要する時間を効率化することができる。
【0051】
本実施形態のプリンタ10によると、ワイピングユニット50の周囲には、第1吸収体82が配置されている。第1吸収体82は、ワイパー移動機構52に隣接して配置されている。したがって、ワイパー51に洗浄液WLを滴下し、ワイパー51を洗浄液WLが伝っても、洗浄液WLは、第1吸収体82に吸収される。このことにより、プリンタ10の内部に洗浄液WLが広がることを防ぐことができる。
【0052】
本実施形態のプリンタ10によると、キャップ61の周囲には、第2吸収体63が配置されている。第2吸収体63は、キャップ61に隣接して配置されている。したがって、キャップ61のリップ部61aに洗浄液WLを滴下し、キャップ61の外部に洗浄液WLが伝っても、洗浄液WLは、第2吸収体63に吸収される。このことにより、プリンタ10の内部に洗浄液WLが広がることを防ぐことができる。
【0053】
本実施形態のプリンタ10のように、ワイピングユニット50へ洗浄液WLを滴下するとき、マニュアルクリーニングを効率的に行うことができる。洗浄液滴下ユニット90を備えていないプリンタ10の場合、例えば、クリーニングスティックに洗浄液WLを塗布したものを用いてワイピングユニット50を拭うことにより、インクの除去を行っていた。このとき、クリーニングスティックへの洗浄液WLの塗布は、作業者による手作業により行われる。しかしながら、本実施形態のプリンタ10のように、洗浄液WLをワイピングユニット50に滴下すると、洗浄液WLがワイピングユニット50を伝い、ワイピングユニット50の表面に洗浄液WLが付着する。したがって、作業者は、クリーニングスティックによりワイピングユニット50を拭うだけで、クリーニングスティックに洗浄液WLを塗布して拭うときと同様の効果を得ることができる。すなわち、ワイピングユニット50を拭う前に、クリーニングスティックに洗浄液WLを塗布しなくても、マニュアルクリーニングを実行することができる。このことにより、作業者が効率的にマニュアルクリーニングを行うことができる。
【0054】
以上、好適な一実施形態について説明した。しかし、本発明のインクジェットプリンタは、上述した実施形態に限定されない。
【0055】
上述した実施形態では、洗浄液滴下ユニット90は、第1開閉弁96および第2開閉弁97を備えていたが、これに限定されない。
図8に示すように、洗浄液滴下ユニット90は、三方弁99を備えていてもよい。三方弁99は、共通供給路94aに接続された第1接続口99aと、第1供給路94bに接続された第2接続口99bと、第2供給路94cに接続された第3接続口99cとを備えている。第1供給路94bは、第2接続口99bと、第1滴下口92aとに接続されている。第2供給路94cは、第3接続口99cと、第2滴下口93aとに接続されている。三方弁99は、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100により制御される。三方弁99は、第1接続口99aと第2接続口99bとを連通する状態と、第1接続口99aと第3接続口99cとを連通する状態と、に切換可能に構成されている。第1接続口99aと第2接続口99bとを連通した状態のとき、第1滴下口92aから洗浄液WLが滴下される。第1接続口99aと第3接続口99cとを連通した状態のとき、第2滴下口93aから洗浄液WLが滴下される。ここで、例えば、「第1接続口99aと第2接続口99bとを連通した状態」とは、共通供給路94aと第1供給路94bとを完全に連通する場合と、共通供給路94aと第1供給路94bとを部分的に連通する場合と、を含む。このことにより、上述した実施形態と同様に、第1滴下口92aおよび第2滴下口93aは、それぞれ洗浄液WLの滴下が必要なときにのみ、洗浄液WLを滴下することができる。
【0056】
上述した実施形態では、第1滴下口92aは、インクヘッド45の左方に形成され、第2滴下口93aは、インクヘッド45の右方に配置されていたが、これに限定されない。
図9に示すように、第1滴下口92aおよび第2滴下口93aは、ノズル面47に設けられていてもよい。
図9は、別実施形態に係るキャリッジ40の底面を示す図である。このとき、第1滴下口92aおよび第2滴下口93aの形状は、ノズル46と同様に形成されていてもよい。また、このとき、洗浄液WLはインクヘッド45に貯留され、インクと同様にして吐出(滴下)されてもよい。なお、このとき、第1滴下口92aおよび第2滴下口93aは、キャップ61(
図3参照)がインクヘッド45のノズル面47に装着される前に洗浄液WLを滴下する。第1滴下口92aおよび第2滴下口93aがノズル面47に設けられていることにより、キャリッジ40の底面のノズル面47以外の領域に第1滴下口92aおよび第2滴下口93aを設ける必要がない。このことにより、キャリッジ40が大型化することを抑制することができる。
【0057】
ここで開示される技術は、様々なタイプのプリンタに適用することができる。上述した
実施形態で示したRoll-to-Rollタイプのプリンタの他、例えば、記録媒体を台の上に固定し、台を搬送し印刷する、所謂、フラットベッドタイプのプリンタにも同様に適用することができる。また、記録媒体を台の上に載置し、台に対してキャリッジを主走査方向Yおよび副走査方向Xに移動させて印刷する、所謂、ガントリータイプのプリンタにも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
5 記録媒体
10 プリンタ
16 プラテン
40 キャリッジ
45 インクヘッド
46 ノズル
47 ノズル面
50 ワイピングユニット
90 洗浄液滴下ユニット
92a 第1滴下口
93a 第2滴下口
WL 洗浄液