(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106728
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】排水構造および排水システム
(51)【国際特許分類】
E03C 1/12 20060101AFI20240801BHJP
E03C 1/20 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
E03C1/12 A
E03C1/20 E
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011142
(22)【出願日】2023-01-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年3月8日 ダイワ化成株式会社ウェブサイトにおいて公開
(71)【出願人】
【識別番号】511255890
【氏名又は名称】ダイワ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝浩
(72)【発明者】
【氏名】松本 奈弓
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061AA02
2D061AB10
2D061CA02
2D061CB10
2D061DA01
2D061DE30
(57)【要約】
【課題】排水構造を設けるに際して自由にレイアウトできること、および大容量の排水に対応できることを実現し得る排水構造などを提供する。
【解決手段】排水構造10は、浴槽20の下に設けられる排水構造10であり、浴槽20の排水口20Hから排出される水が流入する排水溝11と、排水溝11とプラスチック材料で一体成形される排水ピット12と、排水ピット12に設けられる排水口10Hとを含み、排水溝11と排水ピット12は、平面視形状が略T字型、略L字型、略I字型またはこれらが組み合わさった形状に形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の下に設けられる排水構造であり、
前記浴槽の排水口から排出される水が流入する排水溝と、
前記排水溝とプラスチック材料で一体成形される排水ピットと、
前記排水ピットに設けられる排水口とを含み、
前記排水溝と前記排水ピットは、平面視形状が略T字型、略L字型、略I字型またはこれらが組み合わさった形状に形成されている排水構造。
【請求項2】
前記排水ピットは浴室の床に組み込まれており、底面が前記浴室の床よりも低い位置にある請求項1に記載の排水構造。
【請求項3】
前記浴槽の略真下に設けられる請求項1に記載の排水構造。
【請求項4】
浴槽パンと、洗い場パンと、請求項1~3のいずれか1項に記載の排水構造を備えたユニットバス用の排水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽が設置される浴室に設けられる排水構造およびこの排水構造を備えたユニットバス(システムバス)用の排水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
浴室に設置された浴槽の排水を処理するための排水構造として、特許文献1~3に記載の技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、浴室の排水ピットを設置作業性などに制約されることなく大容量化可能にすることを目的とした浴室床構造が記載されている。この浴室床構造は、浴室床1aの底部に架台3を設置し、架台3上に床敷設体2を敷設している。また、床敷設体2の一側部に沿って浴室1の一方向の一端部から他端部まで延びるように排水ピット4が設置されており、排水ピット4と床敷設体2とは、互いに別体とし、互いに独立して架台に支持されている(特許文献1の
図1参照)。
【0004】
一方、特許文献2には、浴室ユニットの排水トラップが記載されている。この排水トラップは、浴室ユニットの洗い場床に取り付けられる有底筒状の排水トラップであり、上端が開放され下端が閉鎖された有底筒状の溜水部を備えている。
【0005】
また、特許文献3には、ユニットバスの排水構造が記載されている。このユニットバスの排水構造の構成は、浴槽5が設置される浴槽側パン3に設けた排水エルボ8と、洗い場が形成される洗い場パン4の水栓14側に設けた排水トラップ9と、ドア下部に設けたドア下排水溝12とを備えている。また、排水エルボ8と排水トラップ9とを接続する排水管10に、一端がドア下排水溝7に接続されたドア下排水管12の他端が接続されている(特許文献3の
図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-059994号公報
【特許文献2】特開2004-183411号公報
【特許文献3】特開2002-061249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、浴室排水に関する技術には、排水構造を設けるに際して自由にレイアウトできること、および大容量の排水に対応できることなどが求められている。例えば、近年機械浴槽(介護浴槽)が普及し、病院や老人ホームなどの介護施設だけでなく、一般家庭においても排水量が多い浴槽が使われるようになってきている。
【0008】
このような課題に鑑みると、特許文献1に記載の浴室床構造は、浴室の一方向の一端部から他端部まで延びるように排水ピットが設置されているため、排水ピットを設置するスペースが必要であったり、排水ピットを設置する場所や方向が限られてしまったりと、自由にレイアウトすることはできない。また、特許文献2に記載の排水トラップは浴室ユニットの部品数増加を抑えることを目的としており、特許文献3に記載のユニットバスの排水構造はドア下排水による浴槽側パンの汚れを防止することを目的としているものであるため、大容量の排水に対応できないことは明らかである。
【0009】
よって、本発明は、排水構造を設けるに際して自由にレイアウトできること、および大容量の排水に対応できることを実現し得る排水構造および排水システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る排水構造は、浴槽の下に設けられる排水構造であり、浴槽の排水口から排出される水が流入する排水溝と、排水溝とプラスチック材料で一体成形される排水ピットと、排水ピットに設けられる排水口とを含み、排水溝と排水ピットは、平面視形状が略T字型、略L字型、略I字型またはこれらが組み合わさった形状に形成されている。
【0011】
これにより、排水構造の形状を自由に形成することができ、かつ、浴槽の排水口から排出される水は排水溝を通って排水ピットへ流れ込み、ここで貯められつつ床下へ排水される。
【0012】
また、排水ピットは浴室の床に組み込まれており、底面が浴室の床よりも低い位置にあることが好ましい。これにより、排水ピットの深さ(高さ)を十分に確保することができ、その結果、排水ピットの容量を十分に確保することができる。
【0013】
また、排水構造は、浴槽の略真下(略直下)に設けられることが好ましい。これにより、短い距離で効率的に床下へ排水することができる。
【0014】
なお、本発明の排水システムは、浴槽パンと、洗い場パンと、これらの排水構造を備えたユニットバス用の排水システムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る排水構造は、かかる構成により、排水構造の形状を自由に形成することができるため、どのような浴室に設ける場合であっても自由にレイアウトすることができる。かつ、浴槽の排水口から排出される水は排水溝を通って排水ピットへ流れ込み、ここで貯められつつ床下へ排水されるため、大容量の排水を処理することができる。
【0016】
また、排水ピットは浴室の床に組み込まれており、底面が浴室の床よりも低い位置にある構成により、排水ピットの深さ(高さ)を十分に確保することができ、その結果、排水ピットの容量を十分に確保することができるため、さらに大容量の排水を処理することができる。
【0017】
また、排水構造を浴槽の略真下に設けることにより、短い距離で効率的に床下へ排水することができるため、より排水処理性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る排水構造の概略正面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る排水構造の概略平面図である。
【
図3】本発明の別の実施の形態に係る排水構造の概略正面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る排水構造の概略平面図である。
【
図7】排水構造の排水処理を説明するための図であり、(A)は平面視形状がT字型の排水構造の排水処理を説明するための図、(B)は平面視形状がL字型の排水構造の排水処理を説明するための図である。
【
図8】排水構造の排水処理を説明するための図であり、(A)は平面視形状がI字型の排水構造の排水処理を説明するための図、(B)は従来の排水溝の排水処理を説明するための図である。
【
図9】本発明のその他の実施の形態に係る排水構造を説明するための図であり、(B)は、(A)の点線枠部分を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の内容に限定されない。
【0020】
[排水構造]
図1は、本発明の実施の形態に係る排水構造の概略正面図、
図2は、本発明の実施の形態に係る排水構造の概略平面図である。
図1,2に示すように、本発明の実施の形態に係るユニットバス用の排水システム100は、浴槽パン52および洗い場パン53を含む浴室の床(防水パン)50と、浴槽20と、排水構造10とを備える。浴槽20は、ユニットバスの浴室内に設置されるものであり、例えば機械浴槽(介護浴槽)である。
【0021】
ユニットバスは、主に一般住宅、病院や介護施設などといった建物内に設けられる。そのため本実施の形態において、排水システム100は、建物内(建物の壁71および建物の床72で区切られた空間)に設けられるものとしている。
図1に示すように、浴室の床50および浴槽の壁51が、高さ調整脚10Lにより建物内に設けられる。そして、浴槽20が設置される浴槽パン52および利用者が体を洗う洗い場パン53が設けられる。
【0022】
浴槽20は固定脚20Lを有しており、浴槽パン52上に設置される。また、浴槽20は排水口20Hを有しており、ここから浴槽20内の水(排水)が排出される。
【0023】
一方、排水構造10は浴槽20より下に設けられるものであり、浴槽20の排水口20Hから排出される排水が流入する排水溝11と、排水溝11とプラスチック材料で一体成形される排水ピット12とを含む。排水ピット12には、排水口10Hが1つ以上設けられている。プラスチック材料は、特にFRP(強化繊維プラスチック)が望ましい。
【0024】
また、排水溝11と排水ピット12は、平面視形状がT字型(
図7(A)参照)、L字型(
図7(B)参照)、I字型(
図8(A)参照)またはこれらが組み合わさった形状(図示せず)に形成されている。
図1,2に示す例において、排水溝11と排水ピット12はT字型に形成されている(
図2参照)。なお、一体成型された排水溝11と排水ピット12は、平面視形状がその形状、例えばT字型やL字型に見えるものであれば、長さや幅が均一でなかったり、T字やL字のバランスが均等でなかったりしてもよい。また、T字型、L字型、I字型が組み合わさった形状の例としては、略H型(T字型同士が組み合わさった形状)や略U型(L字型とI字型が組み合わさった形状)などが挙げられる。
【0025】
そして、本実施の形態において、排水ピット12には排水口10Hが3ヶ所(排水口10H1,10H2,10H3)設けられている(
図2参照)。なお、排水構造10を平面視形状がL字型である場合は(
図7(B)参照)、排水ピット12には排水口10Hが2ヶ所(排水口10H1,10H2)設けられる。
【0026】
一方、排水構造10の平面視形状がI字型である場合(
図8(A)参照)、排水ピット12には排水口10Hが1ヶ所設けられる。
なお、
図8(B)は、従来の排水溝の排水処理を説明するための図であるが、従来の排水溝31では、通常の水量の排水量には対応できるが、大量の排水量となると、勢いで排水が排水溝31から溢れてしまう。
【0027】
排水溝造10の代表的な構成例として、排水構造10の平面視形状がT字型である場合、排水溝11の長辺の標準的形状は長さが80cm程度、排水ピット12の長辺の標準的形状は長さが120cm程度である。このような構成は、排水構造10(排水溝11)が設けられる梁や設置物など床下の構成に応じて邪魔にならないように浅く広くしたりと、適宜設計変更可能である。
一方、この時、排水ピット部分の容積は約50L程度である。
【0028】
ここで、現在製造販売されている一般的な浴槽の排水処理能力は50L/min程度であるが、排水量が多い浴槽として製造販売されている機械浴槽に求められる排水処理能力は、100~300L/min程度である。
これに対して、本発明に係る排水構造は、前述した代表的な構成例の場合、排水処理能力が100L/min求められる場合において、必要とされる排水ピット使用容積は2L程度である。また、排水処理能力が450L/min求められる場合において、必要とされる排水ピット使用容積は36L程度である。もちろん、構成例は一例であり、求められる排水能力に応じて適宜設計変更可能である。よって、本発明に係る排水構造は、どのような排水量の多い浴槽であっても、求められる排水処理能力を十分に備えている。
【0029】
もちろん、このような排水処理能力はT型排水機構、L型排水機構、I型排水機構、またはこれらが組み合わさった形状により変わるものであるため、形状を考慮した上で、排水溝の長さや幅、および排水ピットの深さなどは設計される。また、排水ピットに設けられる排水口の位置や数に応じても排水処理能力は変わるため、本発明に係る排水構造が設けられる浴槽の種類や排水量、または浴室のレイアウトなどを総合的に考慮して、これらは適宜設計することができる。
【0030】
また、排水溝11は、浴槽20の排水口20Hから流入した排水が排水ピット12へ向かって流れるように、傾斜が設けられている(
図1参照)。
浴槽20の排水口20Hから排出された排水は、排水溝11へ流入し、傾斜方向に沿って排水ピット12へ流れ込み、排水口10Hから排水管40へと送られる。排水管40へ送られた排水は、市町村などが管理する下水(下水道管)へ送られた後、下水処理場にて処理される。
【0031】
また、
図2に示すように、浴室内には、シャワーなどの洗い場(洗い場パン53)の排水を処理する排水溝60が浴槽の手前に設けられている。さらに、ユニットバスの入り口(扉D)付近にも、排水溝60が設けられている。
【0032】
図3は、本発明の実施の形態に係る排水構造の概略正面図である。
図3に示すように、排水ピット12は、その底面が浴室の床50よりも低い位置にあるものとすることができる。これにより、排水ピット12の深さ(高さ)を十分に確保することができ、その結果、排水ピット12の容量を十分に確保することができる。また、この際、排水ピット12は浴室の床50に組み込まれる構成とすることができる。
【0033】
ここで、
図4は、従来の排水構造の概略正面図、
図5は、従来の排水構造の概略平面図である。
図4,5において、
図1,2と同様の構成を示す部分は同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。なお、
図5~9においても同様である。
【0034】
従来の排水構造は、
図4,5に示すように、浴槽20の排水口20Hから排出された排水は排水溝31へ流入し、排水口10Hから排水管40へと送られる。排水溝31は、高さ調整脚31Lにより傾斜が設けられて床面52上に設置されている。そして、排水溝31は、大量の排水を処理することができるように、浴室内を横断するように延びている(
図5参照)。
【0035】
しかし、このような従来の排水構造だと、
図5からも明らかに分かるように、浴室内に浴槽20および排水溝31を設置する場所は限定されてしまう。これに対して、排水構造10は、浴槽20の下に、洗い場の排水を処理する排水溝60とは別体として(浴槽20の排水処理用のものとして)設けられているため、浴槽20が設置される場所(設置される浴槽Bの排水口20Hの位置)に合わせて、どの場所にでも設置することができる。
【0036】
例えば、
図6に示ように、浴槽20が設置される場所や設置される浴槽20の向きが変わったとしても、浴槽20の場所に合わせて排水構造10を設けることができる。このように、浴槽20および排水構造10は、その設ける位置を浴室内で自由にレイアウトすることができる。
【0037】
同時に、浴室の水勾配の向き(例えば、浴室の中央に向かって勾配するのか、浴室の一端に向かって勾配するのか、など)も自由にレイアウトすることができる。例えば、勾配する先に、排水構造10の排水ピット12が位置するようにレイアウトすることができる。
【0038】
また、洗い場(洗い場パン53)の排水を処理する排水溝60と、浴槽20の排水を処理する排水構造10は分かれているため、異物が詰まって排水が洗い場21に溢れること、およびそれによる臭気拡散などを防ぐことができる。特に、浴槽20が機械浴槽である場合、排水に汚物が混じることが多い。そのため、機械浴槽の排水と、洗い場21の排水は、処理する構成を物理的に分けることが望ましい。
【0039】
なお、排水ピット12は、排水溝11よりも深く、長く、広くすることなどにより、その容量が大きく設計されることが望ましい。この構成と、後述する排水構造10がT字型またはL字型の形状になっている構成により、大容量の排水を処理することができる。
そして、単に浴槽20の下に排水ピットを作るだけでは勾配がなく排水し難いが、このように排水溝11と排水ピット12が一体成型されていることにより、浴槽20の排水口20Hから排出された排水を床下(排水管40)までスムーズに排水することができる。
【0040】
さらに、排水構造10は、浴槽20の真下(平面視において、排水構造10は浴槽20にほぼ隠れるように)に設けられることが望ましい。これにより、短い距離で効率的に床下へ排水することができる。
【0041】
[排水処理]
図7は、排水構造の排水処理を説明するための図であり、(A)は平面視形状がT字型の排水構造の排水処理を説明するための図、(B)は平面視形状がL字型の排水構造の排水処理を説明するための図である。矢印は、浴槽20の排水口20Hから排出された排水の流れを表している。
【0042】
浴槽20の排水口20Hから排出された排水は、
図7(A)に示すように、排水溝11を通過して、排水ピット12へ流れ込む。そして、排水口10H2から床下へ排出される。また、大容量の排水が排水口20Hから排出された場合、その全ては排水口10H2から排出されず、排水ピット12の壁面に当たって排水ピット12の一端(排水口10H1が設けられている端)と他端(排水口10H3が設けられている端)に流れ込む。そして、排水口10H1および排水口10H3から床下へ排出される。
【0043】
なお、この一端および他端に流れ込んだ排水は、一端および他端の壁面に当たってさらに戻ろうとするため、排水口10H1および排水口10H3では回流(渦)が発生し、排水が排水口10H1および排水口10H3に吸い込まれやすくなる。
【0044】
さらに、排水ピット12の壁面に当たった排水は勢いがなくなるため、排水ピット12へ一度に大量の排水が流れ込んできたとしても、排水溝11側への逆流を防ぐことができる。
【0045】
このように、排水構造10は、T字型の形状になっており、かつ排水口10Hが排水ピット12に複数設けられているため、大容量の排水を処理することができる。一方、
図7(B)に示すL字型の形状や
図8(A)に示すI字型の形状などになっている場合も同様の排水処理が行われ、結果として大容量の排水を処理することができる。具体的には、実測値として、300Lほどの浴槽排水を約3分で処理することができる。
【0046】
図9は、本発明のその他の実施の形態に係る排水構造を説明するための図であり、(B)は、(A)の点線枠部分を拡大した図である。
図9(A),(B)に示すように、排水構造10は、補強手段Fを設けることができる。また、
図9(B)に示すように、排水ピット12は、さらにピット蓋12Cを設けることができる。
【0047】
補強手段Fは、例えばステンレスフレームである。ステンレスフレームは、排水ピット12を内側を補強するために設けられる。
ここで、排水ピット12の外側は、全周にFRPで補強板が巻き込まれている。そのため剛性が高く、例えば通常の排水溝と比べると、10mm以上の厚みを有している。そして、このように剛性があるため、排水ピット12にはステンレスフレームやグレーチングなどを載せることができる。ステンレスフレームやグレーチングなどを載せることができるため、ストレッチャーが排水ピット12上を通過する場合や、重量のある浴槽が排水ピット12上を跨った場合でも、破損や変形などの問題は生じない。
【0048】
なお、ステンレスフレームを排水溝11に設けてもよい。排水溝11内にステンレスフレームを設けることで(
図9参照)、排水溝11の縁変形を防ぐことができる。
【0049】
このように、排水ピット12自体に剛性があるため、排水ピット12の下にアジャスターを設ける必要がなくなり、結果としてより多くの容積を確保することができる。排水ピット12の容積をより大きくすることで、一度に大量の排水を行った際に貯水しながら床下へ排水することが可能となるため、より大容量の排水を処理することができる。
【0050】
加えて、前述したように排水構造10は自由にレイアウト可能であるため、浴槽20の一部(例えば、機械浴槽のキャスター)がこのピット蓋12Cを跨ぐ必要はない。そして、もし機械浴槽のキャスターがこのピット蓋12Cを跨いだとしても、排水ピット12は強度が高いため、破損や変形などを防ぐことができる。
【0051】
以上のように説明した排水構造の実施の形態はあくまで一例であり、例えば、排水ピット12に設けられる排水口10Hの数や位置などは、適宜設計変更可能である。また、排水溝11の勾配や、排水溝11のサイズ、排水ピット12のサイズなども、設置される浴槽20のサイズや排水量などに合わせて、適宜設計変更可能である。
【0052】
[排水システム]
本発明の実施の形態に係る排水構造10は、設置される浴槽20が排水量の多い機械浴槽である、ユニットバス用の排水システムに用いることができる。また、前述したように自由にレイアウト可能であるため、防水パン枠、フレーム、排水溝などが定型設計ではないユニットバスがより好適である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、排水構造を設けるに際して自由にレイアウトできること、および大容量の排水に対応できることを実現し得る排水構造および排水システムであり、病院、老人ホーム、一般家庭など様々な場所における浴室で利用できるものであるため、産業上有用である。
【符号の説明】
【0054】
10 排水構造
10H,10H1,10H2,10H3 排水口
10L 高さ調整脚
11 排水溝
12 排水ピット
12C ピット蓋
20 浴槽
20H 排水口
20L 固定脚
31 従来の排水構造における排水溝
31H 従来の排水構造における排水口
40 排水管
50 浴室の床(防水パン)
51 浴室の壁
52 浴槽パン
53 洗い場パン
60 排水溝
71 建物の壁
72 建物の床
100 排水システム
F 補強手段
D 扉
【手続補正書】
【提出日】2023-06-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の排水口から排出される水が流入する排水溝と、
前記排水溝が傾斜する方向の先に、プラスチック材料で一体成形される排水ピットと、
前記排水ピットに設けられる排水口とを含み、前記排水溝と前記排水ピットとが一体成形されてから床パンに設けられる排水構造であり、
前記排水溝と前記排水ピットは、平面視形状が略T字型、略L字型、略I字型またはこれらが組み合わさった形状に形成されており、
前記床パンの平面方向において、前記排水溝の傾斜する方向が、どの方向に対しても向くことができるように配置可能な排水構造。
【請求項2】
前記浴槽の略真下に設けられる請求項1に記載の排水構造。
【請求項3】
床パンと、請求項1または2に記載の排水構造を備えたユニットバス用の排水システム。