(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106740
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
F16H 61/02 20060101AFI20240801BHJP
F16H 61/68 20060101ALI20240801BHJP
F16H 59/04 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H61/68
F16H59/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011158
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【弁理士】
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】大西 健太
【テーマコード(参考)】
3J552
【Fターム(参考)】
3J552MA01
3J552MA10
3J552NA07
3J552NB01
3J552PA02
3J552RA19
3J552SB02
3J552SB35
3J552VA32W
3J552VA37W
3J552VA64W
3J552VA65W
3J552VA66W
3J552VA78W
(57)【要約】
【課題】有段変速装置の切替駆動をスムーズに行うことができる作業車両を提供する。
【解決手段】
田植機1は、有段変速装置40と、有段変速操作部である変速レバー18と、変速制御部70として機能する制御装置4とを備える。有段変速装置40は、何れかの変速位置に切り替えられ、エンジン11から一対の前輪13及び一対の後輪14の走行部へ伝達される動力を変速する。変速レバー18は、有段変速装置40の切替操作を受け付け、変速制御部70は、切替操作の検出結果に基づいて有段変速装置40の切替駆動を制御する。有段変速装置40は、何れかの変速位置に切り替えられる主変速部材45と、主変速部材45を軸支する主変速軸41とを有する。変速制御部70は、有段変速装置40が変速レバー18による切替操作に対応する変速位置への切替駆動を完了していないと判定された場合、主変速軸41を所定の回転方向に回転させるように制御する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の変速位置の何れかに切り替えられて、動力源から走行部へと伝達される動力を変速する有段変速装置と、
前記有段変速装置の切替操作を受け付ける有段変速操作部と、
前記有段変速操作部による切替操作の検出結果に基づいて前記有段変速装置の切替駆動を制御する制御部と、を備え、
前記有段変速装置は、前記複数の変速位置の何れかに切り替えられる変速部材と、前記変速部材を軸支する変速軸と、を有し、
前記制御部は、前記有段変速装置が前記有段変速操作部による切替操作に対応する前記変速位置への切替駆動を完了していないと判定された場合、前記変速軸を所定の回転方向に回転させるように制御することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記制御部は、前記変速軸を前記所定の回転方向に回転させてから所定の時間経過しても、前記有段変速装置が切替駆動を完了していないと判定された場合、前記変速軸を前記所定の回転方向とは逆方向に回転させるように制御することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記制御部は、前記変速軸を前記逆方向に回転させる回転数を、前記有段変速装置の目標の前記変速位置に応じて設定することを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記制御部は、前記有段変速操作部による切替操作を検出してから前記変速軸を前記逆方向に回転させるまでの切替時間を、前記有段変速装置の目標の前記変速位置に応じて設定することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項5】
前記走行部へ伝達される動力を調節する無段変速装置を更に備え、
前記変速軸は、前記無段変速装置から前記有段変速装置へと動力を伝達するように構成され、
前記制御部は、前記無段変速装置を制御することで、前記変速軸を前記所定の回転方向とは逆方向に回転させるように制御することを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の変速位置を有する有段変速装置を備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、田植機等の作業車両は、動力源から走行部へと伝達する動力を無段階に変速する無段変速装置や、複数の変速位置を有して有段階に変速する有段変速装置を備える。有段変速装置には、例えば、複数の変速位置として、前進位置、中立位置、後進位置等を有して前後進を切り替えるものや、低速位置、中速位置、高速位置等を有して速度段を切り替えるものがある。作業車両は、有段変速装置の変速部材を何れかの変速位置に切り替える切替駆動を行うアクチュエータ(変速駆動部材)や、有段変速装置の切換操作を受け付ける変速レバー(有段変速操作部)を備える。作業車両は、変速レバーの操作位置を検出し、その検出結果に応じてアクチュエータを駆動することで、有段変速装置の切替駆動を行う。
【0003】
例えば、特許文献1に開示される作業車両は、変速部材の位置を変更することにより駆動源から走行部への出力を変速する変速装置と、変速部材の位置を変更するアクチュエータと、前後左右方向に操作可能であり、中立操作位置に戻るように付勢されているクロスレバー式の操作具と、操作具の前後方向の操作に応じてアクチュエータを作動させて変速装置の変速段を切り替えると共に、変速装置の変速段に応じて操作具の左右方向の操作による機能を異ならせるように構成された制御装置と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業車両では、アクチュエータを用いて有段変速装置の変速部材の切替駆動を行うところ、変速部材であるクラッチの位相ずれや、変速ギアの噛み込みによるトルクの閉じこもりに起因して、切替駆動をスムーズに完了できないことがある。例えば、作業車両は、通常、車両停止状態で有段変速装置の変速部材の切替駆動を行うが、スライドギア式やカラーシフト式等の変速部材を軸支する変速軸が完全に停止している状態や動力を伝達している状態では、切替駆動をスムーズに行えないことがある。
【0006】
本発明は、有段変速装置の切替駆動をスムーズに行うことができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の作業車両は、複数の変速位置の何れかに切り替えられて、動力源から走行部へと伝達される動力を変速する有段変速装置と、前記有段変速装置の切替操作を受け付ける有段変速操作部と、前記有段変速操作部による切替操作の検出結果に基づいて前記有段変速装置の切替駆動を制御する制御部と、を備え、前記有段変速装置は、前記複数の変速位置の何れかに切り替えられる変速部材と、前記変速部材を軸支する変速軸と、を有し、前記制御部は、前記有段変速装置が前記有段変速操作部による切替操作に対応する前記変速位置への切替駆動を完了していないと判定された場合、前記変速軸を所定の回転方向に回転させるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、有段変速装置の切替駆動をスムーズに行うことができる作業車両を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る田植機を示す左側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る田植機の各種操作部やトランスミッションを上方から示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る田植機の変速レバーを示す上面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る田植機のトランスミッションを上方から示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る田植機のトランスミッションを下方から示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る田植機のトランスミッションを示す上面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る田植機のトランスミッションを示す伝動機構図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る田植機のトランスミッションにおける主変速部材を側方から示す断面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る田植機を示すブロック図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る田植機の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の作業車両の実施形態である田植機1について図面を参照して説明する。
図1に示すように、田植機1は、車体部2と、植付部3とを備え、車体部2によって走行しながら植付部3によって苗の植付作業を行うように構成される。また、田植機1は、
図9に示すように、車体部2や植付部3を制御するための制御装置4を備えている。
【0011】
車体部2は、機体フレーム10と、左右方向中央付近で機体フレーム10の前部に取り付けられるエンジン11(動力源)及びトランスミッション12(変速装置)とを備える。車体部2は、走行部として、左右方向両端で機体フレーム10の前部に回転可能に取り付けられる一対の前輪13と、左右方向両端で機体フレーム10の後部に回転可能に取り付けられる一対の後輪14とを備える。
【0012】
車体部2は、機体フレーム10上の中央付近に運転席15を備えていて、運転席15の周囲に、
図1及び
図2に示すように、操向ハンドル16や変速ペダル17、変速レバー18等の運転操作具を備えている。車体部2は、機体フレーム10上に複数の予備苗台19を備えている。
【0013】
エンジン11は、各部を駆動する回転動力を発生させるもので、ボンネット20によって上方から覆われている。トランスミッション12は、エンジン11に接続されていて、エンジン11の動力を変速して一対の前輪13及び一対の後輪14からなる走行部へと伝達する。トランスミッション12は、
図4~
図7に示すように、エンジン11からの動力を無段階に変速する無段変速装置30と、複数の変速位置を有して有段階に変速する有段変速装置40とを備える。また、トランスミッション12は、車体部2の後部に設けられたパワーテイクオフ軸(PTO軸)21に接続されていて、エンジン11の動力を、PTO軸21を介して植付部3へと伝達する。トランスミッション12の詳細は後述する。
【0014】
一対の前輪13及び一対の後輪14は、エンジン11及びトランスミッション12から伝達される動力に応じて回転駆動して車体部2を前方又は後方へ走行させる。また、一対の前輪13は、操向ハンドル16の操作に応じて操舵駆動して車体部2の操向を行う。
【0015】
操向ハンドル16は、運転席15の前方でボンネット20の後方に配置され、作業者による操向ハンドル16の回転操作に応じて一対の前輪13へ伝達される操舵が調節される。変速ペダル17は、トランスミッション12の無段変速装置30の調節操作を受け付ける無段変速操作部であり、運転席15の前方下部に配置される。変速ペダル17に対して、作業者による踏み込み等の調節操作を検出する無段操作検出部17a(
図9参照)が設けられ、制御装置4が無段操作検出部17aの検出結果に基づいて無段変速装置30を制御することで、一対の前輪13及び一対の後輪14からなる走行部へ伝達される動力が無段階に調節される。無段操作検出部17aは、変速ペダル17の開度を検出可能に構成される。なお、変速ペダル17は、踏み込みがないとき、開度が0%であり、踏み込みが最大(MAX)になるとき、開度が全開(100%)であるものとする。
【0016】
変速レバー18は、トランスミッション12の有段変速装置40の切替操作を受け付ける有段変速操作部であり、操向ハンドル16の左側に配置される。変速レバー18に対して、作業者による変速操作を検出する有段操作検出部18a(
図2及び
図9参照)が設けられ、制御装置4が有段操作検出部18aの検出結果に基づいて有段変速装置40を制御することで、有段変速装置40が複数の変速位置の何れかに切り替えられる。有段操作検出部18aは、例えば、変速レバー18の支点に設けられるレバーポジションセンサで構成される。変速レバー18は、有段変速装置40の切替操作として、田植機1の前進走行、後進走行及び停止を切り換える主変速操作や、植付走行及び移動走行を切り換える副変速操作を受け付ける。なお、変速レバー18が移動走行に切り換えられた場合、トランスミッション12によって、田植機1の走行方向は植付走行と同じ方向となるが、ギア比を変えることで、植付走行よりも速い駆動力を走行部へ伝達可能となる。
【0017】
変速レバー18は、複数の操作位置を有していて、例えば、
図3に示すように、主変速操作の操作位置として、前進操作18b、中立操作18c及び後進操作18dを有し、副変速操作の操作位置として、植付操作18e及び移動操作18fを有する。なお、前進走行に対応する前進操作18bと、植付走行に対応する植付操作18eとは、同じ操作位置でよい。また、変速レバー18は、副変速操作の操作位置として、苗つぎ操作18gを有してもよい。
【0018】
植付部3は、車体部2の後方に配置され、昇降リンク機構22を介して車体部2に連結されていて、昇降リンク機構22は、車体部2に対して植付部3を昇降可能にしている。植付部3は、植付入力ケース部23と、複数(例えば、3つ)の植付ユニット24と、苗載台25と、複数のフロート26とを備える。植付部3は、苗を苗載台25から各植付ユニット24へと順次供給して、複数の植付ユニット24によって複数の条列の植付作業を行うように構成される。植付入力ケース部23は、トランスミッション12からPTO軸21を介して伝達される動力を複数の植付ユニット24へと伝達するように構成される。
【0019】
複数の植付ユニット24は、左右方向に間隔をおいて配置され、各植付ユニット24は、植付伝動ケース部27と回転ケース部28とを備えている。植付伝動ケース部27は、前部が植付入力ケース部23に連結されていて、植付入力ケース部23を介して動力が伝達される。回転ケース部28は、植付伝動ケース部27の左右両側に設けられ、植付伝動ケース部27の後部に回転可能に取り付けられる。各回転ケース部28の左右方向外側(植付伝動ケース部27側とは反対側)には、2つの植付爪29が取り付けられている。
【0020】
2つの植付爪29は、植付伝動ケース部27に対する回転ケース部28の回転軸から離間した回転ケース部28の両端側で、回転ケース部28に対して回転可能に取り付けられる。回転ケース部28が植付伝動ケース部27に対して回転することで、2つの植付爪29が回転ケース部28の回転軸の周りを回動する。このとき、各植付爪29は、苗載台25の苗マットから苗を掻き取る掻取位置と、圃場に対して苗を植え付ける植付位置とを通過しながら回動する。
【0021】
苗載台25は、複数の植付ユニット24の前上方に配置され、苗マットを載置可能に構成されている。フロート26は、植付部3の下部に揺動可能に設けられ、フロート26の下面が圃場表面に接触することにより、植付部3の植付姿勢が圃場表面に対して安定する。
【0022】
次に、トランスミッション12について
図2、
図4~
図8を参照して説明する。
【0023】
トランスミッション12において、無段変速装置30は、エンジン11からの動力を無段階に変速して有段変速装置40へと伝達するものである。例えば、無段変速装置30は、
図4~
図7に示すように、油圧式無段変速機31(HST)と、遊星歯車機構32とを備えて、油圧機械式変速機(HMT)として構成される。油圧式無段変速機31は、遊星歯車機構32に接続されていて、エンジン11からの動力を無段階に変速して遊星歯車機構32へと伝達する。遊星歯車機構32は、遊星ギア等で構成され、有段変速装置40に設けられた主変速軸41(変速軸)に接続されていて、油圧式無段変速機31からの動力を主変速軸41へと伝達し、主変速軸41を回転させる。
【0024】
無段変速装置30は、
図2及び
図9に示すように、油圧式無段変速機31の調節駆動を行うアクチュエータ等の無段変速駆動部材33と、無段変速駆動部材33を作動させる駆動モータ等の無段変速作動部34とを備える。無段変速作動部34は、制御装置4によって制御されて作動して、無段変速駆動部材33を作動させて油圧式無段変速機31の調節駆動を行って動力を変速する。
【0025】
トランスミッション12において、有段変速装置40は、
図4~
図7に示すように、主変速軸41(変速軸)と、副変速軸42と、後進変速軸43と、ブレーキ44とを備えている。主変速軸41には、主変速部材45と、第1PTOギア46とが設けられ、副変速軸42には、副変速部材47と、第1伝達ギア48と、第2伝達ギア49と、第2PTOギア50とが設けられる。後進変速軸43には、後進ギア51が設けられる。
【0026】
主変速部材45は、複数の変速位置として前進位置、中立位置、後進位置を有していて、何れかの変速位置に切り替えられて、主変速軸41から伝達される動力を変速する。主変速部材45は、例えば、ボールクラッチやスライドギア、カラーシフト等の何れの変速手段によって構成されてもよいが、本実施形態では、
図8に示すように、ボールクラッチで構成される例を示す。
【0027】
主変速部材45が、前進位置に切り替えられると、主変速軸41は主変速軸前進ギア68と接続され、動力を主変速軸前進ギア68から副変速部材47を介して副変速軸42へと伝達する。主変速部材45が、後進位置に切り替えられると、主変速軸41は主変速軸後進ギア69と接続され、動力を主変速軸後進ギア69から後進ギア51を介して後進変速軸43へと伝達する。また、後進ギア51は、副変速軸42の第1伝達ギア48に接続(噛合)され、動力を第1伝達ギア48を介して副変速軸42へと伝達する。主変速部材45は、中立位置に切り替えられると、主変速軸41は主変速軸前進ギア68と主変速軸後進ギア69との何れにも接続されず、動力を非伝達状態にする。
【0028】
主変速部材45には、
図2及び
図9に示すように、切替駆動を行うアクチュエータ等の主変速駆動部材52が取り付けられ、主変速駆動部材52には、主変速駆動部材52を作動させる駆動モータ等の有段変速作動部66が接続される。有段変速作動部66は、制御装置4によって制御されて作動して、主変速駆動部材52を作動させて主変速部材45の切替駆動を行う。例えば、ボールクラッチからなる主変速部材45は、
図8に示すように、主変速軸前進ギア68及び主変速軸後進ギア69のそれぞれに対応する2つのボール45aと、主変速駆動部材52の駆動に応じてシフトするシフタ45bと、ボール係合部材45cとを有して構成される。
【0029】
ボール係合部材45cは、主変速軸41の外周面に設けられた環状の部材である。ボール係合部材45cの外周面には、ボール45aが収容される複数の凹部を周方向に並べた凹部列45dが軸方向の2箇所に設けられている。なお、一方の凹部列45dと他方の凹部列45dとは、周方向において異なる位置に凹部を有する。
【0030】
また、主変速部材45は、主変速軸前進ギア68を有する第1スリーブ68aと、主変速軸後進ギア69を有する第2スリーブ69aとを有し、第1スリーブ68a及び第2スリーブ69aは、主変速軸41を包囲するように設けられる。主変速軸前進ギア68に対応するボール45aは、第1スリーブ68aに形成された貫通孔68bに保持され、主変速軸後進ギア69に対応するボール45aは、第2スリーブ69aに形成された貫通孔69bに保持される。
【0031】
シフタ45bは、第1スリーブ68a及び第2スリーブ69aを包囲する環状に形成され、第1スリーブ68aと第2スリーブ69aとに跨って軸方向にスライド可能に構成される。シフタ45bの内周面には、軸方向の中央に環状の空洞45eが形成されている。
【0032】
シフタ45bが中立シフト位置にシフトされると、
図8に示すように、シフタ45bの空洞45eが、第1スリーブ68aの貫通孔68bと第2スリーブ69aの貫通孔69bとに跨って配置され、各ボール45aが空洞45eに放出されるため、第1スリーブ68a及び第2スリーブ69aの何れも主変速軸41に対して固定されないので、主変速軸前進ギア68及び主変速軸後進ギア69の何れも主変速軸41に対して固定(接続)されず、主変速軸41からの動力伝達が不能となる。
【0033】
シフタ45bが中立シフト位置よりも第2スリーブ69a側の前進シフト位置にシフトされると、シフタ45bの第1スリーブ68a側の端部が第1スリーブ68aの貫通孔68bに対応して配置され、貫通孔68b内のボール45aを凹部列45dに押し込むことで、第1スリーブ68aが主変速軸41に対して固定され、主変速軸前進ギア68が主変速軸41に対して固定(接続)され、主変速軸41から副変速軸42への動力伝達が可能となる。なお、第2スリーブ69aの貫通孔69bはシフタ45bの空洞45eに対応して配置され、貫通孔69b内のボール45aは空洞45eに放出されるため、第2スリーブ69aは主変速軸41に対して固定されないので、主変速軸後進ギア69は主変速軸41に対して固定(接続)されない。
【0034】
シフタ45bが中立シフト位置よりも第1スリーブ68a側の後進シフト位置にシフトされると、シフタ45bの第2スリーブ69a側の端部が第2スリーブ69aの貫通孔69bに対応して配置され、貫通孔69b内のボール45aを凹部列45dに押し込むことで、第2スリーブ69aが主変速軸41に対して固定され、主変速軸後進ギア69が主変速軸41に対して固定(接続)され、主変速軸41から副変速軸42への動力伝達が可能となる。なお、第1スリーブ68aの貫通孔68bはシフタ45bの空洞45eに対応して配置され、貫通孔68b内のボール45aは空洞45eに放出されるため、第1スリーブ68aは主変速軸41に対して固定されないので、主変速軸前進ギア68は主変速軸41に対して固定(接続)されない。
【0035】
副変速部材47は、複数の変速位置として植付位置、移動位置を有していて、何れかの変速位置に切り替えられて、副変速軸42に伝達される動力を変速する。副変速部材47は、例えば、スライドギア等の何れの変速手段によって構成されてもよいが、本実施形態では、スライドギアで構成される例を示す。
【0036】
副変速部材47は、植付位置に対応する比較的大径の植付ギア47aと、移動位置に対応する比較的小径の移動ギア47bとを有するスライドギアで構成される。副変速部材47は、植付位置に切り替えられると、大径の植付ギア47aが主変速軸前進ギア68に接続(噛合)され、動力を比較的低速にして副変速軸42へと伝達する。副変速部材47は、移動位置に切り替えられると、小径の移動ギア47bが主変速軸前進ギア68に接続(噛合)され、動力を比較的高速にして副変速軸42へと伝達する。副変速部材47には、
図2及び
図9に示すように、切替駆動を行うアクチュエータ等の副変速駆動部材53が取り付けられ、副変速駆動部材53には、副変速駆動部材53を作動させる駆動モータ等の有段変速作動部66が接続される。有段変速作動部66は、制御装置4によって制御されて作動して、副変速駆動部材53を作動させて副変速部材47の切替駆動を行う。
【0037】
副変速軸42の第2伝達ギア49は、前輪出力軸54に設けられた前輪出力ギア55に接続(噛合)されていて、副変速軸42に伝達された動力を前輪出力ギア55を介して前輪出力軸54へと伝達する。また、副変速軸42の第1伝達ギア48は、第3伝達ギア56、第4伝達ギア57、第5伝達ギア58等を介して、後輪出力軸59に設けられた後輪出力ギア60に接続(噛合)されていて、副変速軸42に伝達された動力を後輪出力ギア60を介して後輪出力軸59へと伝達する。
【0038】
主変速軸41の第1PTOギア46は、副変速軸42の第2PTOギア50に接続(噛合)されていて、主変速軸41に伝達された動力を第2PTOギア50を介して副変速軸42へと伝達する。また、副変速軸42の第2PTOギア50は、第6伝達ギア61、第7伝達ギア62等を介して、PTO出力軸63に設けられたPTO出力ギア64に接続(噛合)されていて、副変速軸42に伝達された動力をPTO出力ギア64を介してPTO出力軸63へと伝達する。
【0039】
ブレーキ44は、副変速軸42に取り付けられ、作動することで副変速軸42の回転を制動して動力の伝達を規制する。ブレーキ44には、
図2及び
図9に示すように、作動(ON)状態と非作動(OFF)状態との切替駆動を行うアクチュエータ等のブレーキ駆動部材65が取り付けられ、ブレーキ駆動部材65には、ブレーキ駆動部材65を作動させる駆動モータ等の有段変速作動部66が接続される。有段変速作動部66は、制御装置4によって制御されて作動して、ブレーキ駆動部材65を作動させて副変速部材47の切替駆動を行う。また、ブレーキ駆動部材65は、ブレーキペダル等のブレーキ操作部材67の操作に応じて、あるいは、有段変速装置40の中立位置への切替駆動に応じて、制御装置4によって制御されてブレーキ44の作動状態と非作動状態とを切り替える。
【0040】
次に、制御装置4について説明する。
図9に示すように、制御装置4は、CPU等のコンピュータで構成され、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等の記憶部5等に接続されている。
【0041】
記憶部5は、田植機1の各種構成要素及び各種機能を制御するためのプログラムやデータを記憶し、制御装置4が、記憶部5に記憶されたプログラムやデータに基づいて演算処理を実行することにより、各種構成要素及び各種機能を制御する。
【0042】
制御装置4は、記憶部5に記憶されたプログラムを実行することにより、変速制御部70(制御部)として動作する。変速制御部70は、無段変速装置30による変速や、有段変速装置40による変速を制御するものである。なお、変速制御部70は、本発明に係る変速制御方法の変速制御工程を実現する。
【0043】
変速制御部70は、無段変速装置30の変速制御として、基本的には、変速ペダル17による無段変速装置30の調節操作の操作状態を無段操作検出部17aによって検出し、その検出結果に基づいて無段変速作動部34を作動させて無段変速駆動部材33を調節駆動して無段変速装置30を制御する。これにより、変速制御部70は、エンジン11から一対の前輪13及び一対の後輪14の走行部に向けて伝達される動力を無段階に調節する。例えば、変速制御部70は、無段操作検出部17aによって変速ペダル17の開度を検出し、変速ペダル17の開度に応じて無段変速装置30の動力を変速するように制御する。
【0044】
変速制御部70は、有段変速装置40の変速制御として、基本的には、変速レバー18による有段変速装置40の切替操作の操作状態を有段操作検出部18aによって検出し、その検出結果に基づいて有段変速作動部66を作動させて主変速駆動部材52や副変速駆動部材53を切替駆動して有段変速装置40を制御する。これにより、変速制御部70は、エンジン11から一対の前輪13及び一対の後輪14の走行部に向けて伝達される動力を複数の変速位置の何れかに変速する。
【0045】
例えば、変速制御部70は、変速レバー18が前進操作18b、中立操作18c、後進操作18dの何れかに切り替えられると、主変速駆動部材52によって主変速部材45を対応する前進位置、中立位置、後進位置の何れかに切り替えて有段変速装置40の動力を変速するように制御する。また、変速制御部70は、変速レバー18が植付操作18e、移動操作18fの何れかに切り替えられると、副変速駆動部材53によって副変速部材47を対応する植付位置、移動位置の何れかに切り替えて有段変速装置40の動力を変速するように制御する。なお、変速制御部70は、変速レバー18が苗つぎ操作18gに切り替えられると、主変速駆動部材52によって主変速部材45を中立位置に切り替える。
【0046】
本実施形態では特に、変速制御部70は、変速レバー18による有段変速装置40の切替操作が行われたことを有段操作検出部18aによって検出した場合において、主変速軸41(変速軸)を所定の回転方向に回転させるように制御した後、変速レバー18による切替操作に対応した有段変速装置40の変速位置の切替駆動が完了していない場合を条件として、所定の回転方向に回転している主変速軸41(変速軸)を、所定の回転方向とは逆方向に回転させるように無段変速装置30を制御する。なお、無段変速装置30は、有段変速装置40の変速位置に拘わらず、主変速軸41を所定の回転方向に回転させるように構成され、例えば、中立位置の場合でも、主変速軸41をクリープ回転(微少回転)させている。
【0047】
このとき、変速制御部70は、田植機1が走行停止状態であること(走行速度が0であること)を、主変速軸41を逆回転させるための条件に加えるとよい。例えば、変速制御部70は、変速レバー18による切替操作が行われたことを有段操作検出部18aによって検出した場合に、有段変速作動部66を作動させてブレーキ駆動部材65を駆動してブレーキ44を作動させることで、田植機1を走行停止状態にする。
【0048】
なお、変速制御部70は、ブレーキ44を作動させるように制御した後、有段変速装置40が変速完了すると共に、変速ペダル17の所定の操作が行われた場合に、ブレーキ駆動部材65によってブレーキ44の作動を解除して非作動状態にするように制御するとよい。例えば、変速制御部70は、変速ペダル17による操作状態を無段操作検出部17aによって検出し、変速ペダル17が規定値以下に戻される操作(変速ペダル17の開度が全開の30%以下になる操作)を所定の操作とする。
【0049】
変速制御部70は、主変速軸41を所定の時間の間、回転させた後、主変速軸41を逆回転させるように制御してよい。なお、変速制御部70は、主変速軸41を回転させる時間を、有段変速装置40の切替駆動の目標の変速位置に応じて設定してもよい。また、変速制御部70は、変速レバー18による切替操作を有段操作検出部18aによって検出した場合に、主変速軸41を逆回転させる前に、無段変速装置30を制御することで主変速軸41を所定の回転方向に回転させる回転数を上昇してもよい。あるいは、変速制御部70は、主変速軸41をクリープ回転させているばあいには、クリープ回転を増速させるように制御してもよい。
【0050】
例えば、変速制御部70は、変速レバー18による切替操作を有段操作検出部18aによって検出してから所定の切替時間が経過するまでに、有段変速装置40の変速位置の切替駆動が完了していない場合に、有段変速装置40の切替駆動が完了していないと判定して、主変速軸41を逆回転させるように無段変速装置30を制御する。
【0051】
変速制御部70は、主変速軸41の逆回転を開始する切替時間を、有段変速装置40の切替駆動の目標の変速位置に応じて設定するとよい。例えば、変速制御部70は、目標の変速位置が中立位置である場合の切替駆動の切替時間を、目標の変速位置が前進位置又は後進位置である場合の切替駆動の切替時間よりも短く設定する。
【0052】
また、変速制御部70は、主変速軸41を逆回転させる回転数を、無段変速装置30を制御することで微少回転数に設定するところ、有段変速装置40の切替駆動の目標の変速位置に応じて設定するとよい。例えば、変速制御部70は、目標の変速位置が前進位置又は後進位置である場合の主変速軸41の逆回転の回転数を、目標の変速位置が中立位置である場合の主変速軸41の逆回転の回転数よりも少なく設定する。
【0053】
なお、変速制御部70は、変速レバー18による切替操作を有段操作検出部18aによって検出した場合に、主変速軸41の所定方向の回転と、逆方向の回転とを、有段変速装置40の切替駆動が完了したと判定するまで、交互に繰り返して無段変速装置30を制御してもよい。
【0054】
また、変速レバー18による切替操作に対応して、有段変速装置40の変速位置の切替駆動が完了した場合に、変速制御部70は、変速完了をディスプレイ(図示せず)等による表示やスピーカ(図示せず)等による音声出力によって作業者に報知してもよい。
【0055】
次に、田植機1において有段変速装置40の変速を行う動作例を
図10のフローチャートを参照して説明する。
【0056】
先ず、田植機1が変速レバー18を中立操作18cにして走行停止状態である間に(ステップS1)、作業者が、変速レバー18を中立操作18cから前進操作18bへと切り替える(ステップS2)。
【0057】
このような変速レバー18の切替操作に応じて、変速制御部70は、有段変速装置40の切替駆動を開始し、有段変速作動部66を制御して主変速駆動部材52の切替駆動を開始し、現在の変速位置である中立位置から前進位置へと主変速部材45を変速するように制御する(ステップS3)。このとき、変速制御部70は、変速レバー18の切替操作に応じて、有段変速作動部66を制御してブレーキ駆動部材65を駆動してブレーキ44を作動させて、田植機1を走行停止状態にする(ステップS4)。
【0058】
その後、変速制御部70は、変速レバー18の切替操作を有段操作検出部18aによって検出してから所定の切替時間が経過するまでに有段変速装置40の切替駆動が完了したか否かを判定する(ステップS5)。そして、切替時間が経過するまでに有段変速装置40の切替駆動が完了した場合には(ステップS5:Yes)、変速制御部70は、有段変速作動部66を制御してブレーキ駆動部材65を駆動してブレーキ44の作動を解除する(ステップS6)。
【0059】
一方、切替時間が経過するまでに有段変速装置40の切替駆動が完了していない場合には(ステップS5:No)、変速制御部70は、所定の回転方向に回転している有段変速装置40の主変速軸41を、所定の回転方向とは逆方向に回転させるように無段変速装置30を制御する(ステップS7)。また、変速制御部70は、主変速軸41の逆回転を開始してから所定の逆転時間が経過すると(ステップS8:Yes)、主変速軸41を所定の回転方向に戻して回転させるように制御する(ステップS9)。そして、有段変速装置40の切替駆動が完了すると(ステップS10)、変速制御部70は、有段変速作動部66を制御してブレーキ駆動部材65を駆動してブレーキ44の作動を解除する(ステップS6)。
【0060】
上記のように、本実施形態によれば、作業車両の例である田植機1は、有段変速装置40と、有段変速操作部である変速レバー18と、変速制御部70(制御部)として機能する制御装置4とを備える。有段変速装置40は、複数の変速位置の何れかに切り替えられて、エンジン11(動力源)から一対の前輪13及び一対の後輪14の走行部へと伝達される動力を変速する。変速レバー18は、有段変速装置40の切替操作を受け付ける。変速制御部70は、変速レバー18による切替操作の検出結果に基づいて有段変速装置40の切替駆動を制御する。有段変速装置40は、複数の変速位置の何れかに切り替えられる主変速部材45(変速部材)と、主変速部材45を軸支する主変速軸41(変速軸)とを有する。変速制御部70は、有段変速装置40が変速レバー18による切替操作に対応する変速位置への切替駆動を完了していないと判定された場合、主変速軸41を所定の回転方向に回転させるように制御する。また、変速制御部70は、主変速軸41を所定の回転方向に回転させてから所定の時間経過しても、有段変速装置40が切替駆動を完了していないと判定された場合、主変速軸41を所定の回転方向とは逆方向に回転させるように制御する。
【0061】
これにより、田植機1は、有段変速装置40の変速駆動時に、主変速部材45であるクラッチの位相ずれや変速ギアの噛み込みによるトルクの閉じこもり等の不具合が生じた場合でも、主変速軸41を逆回転させることで、切替駆動をスムーズに完了させることができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、田植機1において、変速制御部70は、主変速軸41を逆方向に回転させる回転数を、有段変速装置40の目標の変速位置に応じて設定する。
【0063】
これにより、田植機1では、主変速部材45であるクラッチの構造により、前進位置又は後進位置から中立位置に変速する場合と、中立位置から前進位置又は後進位置に変速する場合とでは、変速駆動に適する主変速軸41の回転数が異なるところ、変速位置に合わせて適した変速駆動が可能となる。例えば、主変速部材45を前進位置又は後進位置に変速する場合に比べて、中立位置に変速する場合には、主変速軸41の回転数を下げることができる。従って、有段変速装置40の変速駆動を完了する時間を短縮することができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、田植機1において、変速制御部70は、変速レバー18による切替操作を検出してから主変速軸41を逆方向に回転させるまでの切替時間を、有段変速装置40の目標の変速位置に応じて設定する。
【0065】
これにより、田植機1では、主変速部材45であるクラッチの構造により、変速位置によってトルクの閉じこもり等の不具合が生じるところ、主変速軸41の逆回転を開始する切替時間を目標の変速位置毎に適した時間に設定することで、切替駆動をよりスムーズに完了させることができる。例えば、主変速部材45を中立位置に変速する場合には、トルクの閉じこもりにより、必要とする駆動力が大きくなり、変速がスムーズに行えない場合があるため、前進位置又は後進位置に変速する場合に比べて、切替時間を短く設定して、より早いタイミングで逆回転を開始することで、切替駆動をよりスムーズに完了させることができる。
【0066】
更に、本実施形態によれば、田植機1は、走行部へ伝達される動力を調節する無段変速装置30を備え、主変速軸41は、無段変速装置30から有段変速装置40へと動力を伝達するように構成され、変速制御部70は、無段変速装置30を制御することで、主変速軸41を所定の回転方向とは逆方向に回転させるように制御する。
【0067】
なお、上記した実施形態では、田植機1において、有段変速装置40が複数の変速位置として、前進位置、中立位置、後進位置を有する例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。他の例として、有段変速装置40は、複数の変速位置として、低速位置、中速位置、高速位置等を有して構成されてもよい。
【0068】
また、上記した実施形態では、田植機1において、有段変速装置40が主変速駆動部材52を作動させる有段変速作動部66を備えて、変速レバー18による切替操作を有段操作検出部18aによって検出した場合に、変速制御部70が有段変速作動部66を作動させて主変速駆動部材52や副変速駆動部材53を切替駆動する例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。他の例として、有段変速装置40は、変速レバー18と、主変速駆動部材52や副変速駆動部材53とを連結する連結部材を備えて、変速レバー18による切替操作を、連結部材を介して主変速駆動部材52や副変速駆動部材53へと伝達するように構成されてもよい。この場合でも、変速制御部70は、変速レバー18による切替操作を有段操作検出部18aによって検出した場合において、変速レバー18による切替操作に対応した有段変速装置40の変速位置の切替駆動が完了していない場合に、所定の回転方向に回転している主変速軸41を逆方向に回転させるように無段変速装置30を制御する。
【0069】
上記した実施形態では、本発明の作業車両が、田植機1で構成される例を説明したが、本発明はこの例に限定されず、本発明の作業車両は、トラクタ、コンバイン、草刈機等の他の農作業機や、農作業機以外の他の作業車両で構成されてもよい。
【0070】
なお、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う作業車両もまた本発明の技術思想に含まれる。
【0071】
〔発明の付記〕
以下、上述の実施形態から抽出される発明の概要について付記する。なお、以下の付記で説明する各構成及び各処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
【0072】
<付記1>
複数の変速位置の何れかに切り替えられて、動力源から走行部へと伝達される動力を変速する有段変速装置と、
前記有段変速装置の切替操作を受け付ける有段変速操作部と、
前記有段変速操作部による切替操作の検出結果に基づいて前記有段変速装置の切替駆動を制御する制御部と、を備え、
前記有段変速装置は、前記複数の変速位置の何れかに切り替えられる変速部材と、前記変速部材を軸支する変速軸と、を有し、
前記制御部は、前記有段変速装置が前記有段変速操作部による切替操作に対応する前記変速位置への切替駆動を完了していないと判定された場合、前記変速軸を前記所定の回転方向に回転させるように制御することを特徴とする作業車両。
【0073】
<付記2>
前記制御部は、前記変速軸を前記所定の回転方向に回転させてから所定の時間経過しても、前記有段変速装置が切替駆動を完了していないと判定された場合、前記変速軸を前記所定の回転方向とは逆方向に回転させるように制御することを特徴とする付記1に記載の作業車両。
【0074】
<付記3>
前記制御部は、前記変速軸を前記逆方向に回転させる回転数を、前記有段変速装置の目標の前記変速位置に応じて設定することを特徴とする付記2に記載の作業車両。
【0075】
<付記4>
前記制御部は、前記有段変速操作部による切替操作を検出してから前記変速軸を前記逆方向に回転させるまでの切替時間を、前記有段変速装置の目標の前記変速位置に応じて設定することを特徴とする付記1~3の何れかに記載の作業車両。
【0076】
<付記5>
前記走行部へ伝達される動力を調節する無段変速装置を更に備え、
前記変速軸は、前記無段変速装置から前記有段変速装置へと動力を伝達するように構成され、
前記制御部は、前記無段変速装置を制御することで、前記変速軸を前記所定の回転方向とは逆方向に回転させるように制御することを特徴とする付記2~4の何れかに記載の作業車両。
【符号の説明】
【0077】
1 田植機(作業車両)
2 車体部
3 植付部
4 制御装置
11 エンジン(動力源)
12 トランスミッション
13 前輪(走行部)
14 後輪(走行部)
18 変速レバー(有段変速操作部)
18a 有段操作検出部
30 無段変速装置
33 無段変速駆動部材
34 無段変速作動部
40 有段変速装置
41 主変速軸(変速軸)
45 主変速部材(変速部材)
47 副変速部材
52 主変速駆動部材
53 副変速駆動部材
66 有段変速作動部
70 変速制御部(制御部)