(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106744
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】ブレーカー漏電実験装置
(51)【国際特許分類】
G09B 23/18 20060101AFI20240801BHJP
G09B 9/00 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
G09B23/18 B
G09B9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011165
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】福田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 厚文
(72)【発明者】
【氏名】岡村 祐一
(72)【発明者】
【氏名】有坂 浩
(72)【発明者】
【氏名】黒田 敏行
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆司
(72)【発明者】
【氏名】渡利 高大
(72)【発明者】
【氏名】ヌルアデリンビンティ アブバカル
【テーマコード(参考)】
2C032
【Fターム(参考)】
2C032BD17
(57)【要約】
【課題】浸水による漏電事故を疑似体験させると共に、ブレーカーの状態や操作を見学者に周知することが可能なブレーカー漏電実験装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかるブレーカー漏電実験装置の構成は、2階以上の建物(1階部分120および2階部分130)を模擬した模型110と、模型の1階部分120の下部に配置され水が注入される水槽140と、電力を供給する内蔵電源150と、短絡保護回路172を備えた主幹ブレーカー170、および電力を模型の各階の回路に分岐させる分岐ブレーカー180を有する分電盤160と、模型の1階部分の回路120aに接続され、1階部分から水槽内に向かって下方に突出した短絡用電極190と、模型、水槽、内蔵電源、分電盤および短絡用電極を収容するケーシング102と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2階以上の建物を模擬した模型と、
前記模型の1階部分の下部に配置され水が注入される水槽と、
電力を供給する内蔵電源と、
短絡保護回路を備えた主幹ブレーカー、および前記電力を前記模型の各階の回路に分岐させる分岐ブレーカーを有する分電盤と、
前記模型の1階部分の回路に接続され、該1階部分から前記水槽内に向かって下方に突出した短絡用電極と、
前記模型、前記水槽、前記内蔵電源、前記分電盤および前記短絡用電極を収容するケーシングと、
を備えたことを特徴とするブレーカー漏電実験装置。
【請求項2】
前記短絡用電極は上下移動可能であり、前記模型の1階部分に収容可能であることを特徴とする請求項1に記載のブレーカー漏電実験装置。
【請求項3】
前記短絡用電極は、前記模型の1階部分の電力線を接続した電力端子と、アース線を接続したアース端子を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のブレーカー漏電実験装置。
【請求項4】
前記短絡用電極は、前記アース端子の高さが前記電力端子の高さよりも低く設定されていて、該アース端子が前記水槽に注入された水に先に浸ることを特徴とする請求項3に記載のブレーカー漏電実験装置。
【請求項5】
前記水槽の下部に連結された注水および排水用のチューブを備えることを特徴とする請求項1に記載のブレーカー漏電実験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏電事故を疑似体験させると共に、ブレーカーの動作と操作を直感的に理解することを助けるブレーカー漏電実験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
災害発生時の避難においては、分電盤のブレーカーを落としてから建物を離れることが推奨されている。そのためには、各建物にある分電盤のブレーカーを操作する必要がある。分電盤には取り扱い説明書が付いているものの、記載がやや専門的であることや日常的に必要なものではないため、説明書はほとんど読まれることはない。このため、分電盤の機能や操作方法は広く周知されていないのが現状である。また災害発生時にブレーカーを自動的に動作させるような機材はあるものの、費用増になるため普及していないのが現状である。
【0003】
そこで分電盤の操作方法を実演して見学者に周知することが検討されている。例えば特許文献1には、「家屋模型内に、照明灯、エアコン、洗濯機、冷蔵庫等の家電製品を縮小・模擬した家電製品模型(1)を設置し、各家電製品模型(1)にその作動状態を点灯明示するLED等の光源を取り付けた家屋電気設備模型(2)を備える体感型家庭電気設備模擬装置」が開示されている。
【0004】
上記の特許文献1の体感型家庭電気設備模擬装置は、家電製品模型(1)および家屋電気設備模型(2)に加えて、「前記家電製品模型(1)の光源に電力を供給する電源部(3)と、前記家電製品模型(1)の光源を点灯、消灯させるスイッチ(4)を並列配置した操作パネル(5)と、前記家電製品模型(1)の電力を遮断する配線用遮断器(6)と、前記家電製品模型(1)の電気配線上で生じる漏電を遮断する漏電遮断器(7)と、」を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、台風や豪雨等による水害が増加しており、水害が発生すると家屋に水が流れ込んで漏電事故が発生する可能性がある。このため、水害時における漏電発生時の分電盤の操作を特に周知していく必要がある。しかしながら、特許文献1の体感型家庭電気設備模擬装置では、電気事故全般の事象については学習できるものの、水害時における漏電発生時の分電盤の状態やその操作については学習できない。特に、電気に関する知識がない人たちや子供達にも直感的に理解してもらうために、漏電事故を再現することが望ましい。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、浸水による漏電事故を疑似体験させると共に、ブレーカーの状態や操作を見学者に周知することが可能なブレーカー漏電実験装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかるブレーカー漏電実験装置の代表的な構成は、2階以上の建物を模擬した模型と、模型の1階部分の下部に配置され水が注入される水槽と、電力を供給する内蔵電源と、短絡保護回路を備えた主幹ブレーカー、および電力を模型の各階の回路に分岐させる分岐ブレーカーを有する分電盤と、模型の1階部分の回路に接続され、1階部分から水槽内に向かって下方に突出した短絡用電極と、模型、水槽、内蔵電源、分電盤および短絡用電極を収容するケーシングと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記短絡用電極は上下移動可能であり、模型の1階部分に収容可能であるとよい。
【0010】
上記短絡用電極は、模型の1階部分の電力線を接続した電力端子と、アース線を接続したアース端子を備えるとよい。
【0011】
上記短絡用電極は、アース端子の高さが電力端子の高さよりも低く設定されていて、アース端子が水槽に注入された水に先に浸るとよい。
【0012】
上記水槽の下部に連結された注水および排水用のチューブを備えるとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、浸水による漏電事故を疑似体験させると共に、ブレーカーの状態や操作を見学者に周知することが可能なブレーカー漏電実験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態にかかるブレーカー漏電実験装置の全体斜視図である。
【
図2】本実施形態にかかるブレーカー漏電実験装置の四面図である。
【
図3】本実施形態のブレーカー漏電実験装置の模式的な電気回路図である。
【
図4】本実施形態のブレーカー漏電実験装置の動作について説明する図である。
【
図5】
図1の短絡用電極の詳細を説明する三面図である。
【
図6】
図1の短絡用電極の収容について説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態にかかるブレーカー漏電実験装置の全体斜視図である。
図2は、本実施形態にかかるブレーカー漏電実験装置の四面図である。本実施形態のブレーカー漏電実験装置(以下、実験装置100)は、浸水によるブレーカーの作動を意図的に発生させる漏電実験を行う装置である。
【0017】
図1および
図2に示すように本実施形態の実験装置100は、模型110(2階建ての建物)、水槽140、内蔵電源150、分電盤160、短絡用電極190、およびそれらを収容するケーシング102を備える。ケーシング102の上面102aにはハンドル104が設けられている。これにより、ハンドル104を把持することで、各部材を収容したケーシング102ひいては実験装置100を容易に持ち運ぶことが可能となる。
【0018】
模型110は、1階部分120および2階部分130からなる2階建ての建物を模擬している。模型110の1階部分120および2階部分130にはそれぞれ、電気機器としてのランプ122・132、およびランプのON/OFFを制御するスイッチ124・134が設けられている。ランプ122・132は、使用時は点灯し、不使用時は消灯するため、動作状態を視覚的に容易に判別することができる。
【0019】
また1階部分120および2階部分130にはそれぞれコンセント126・136が設けられている。これにより、コンセント126・136に電気機器のプラグ(不図示)を挿入することにより、漏電時の電気機器の動作状態を確認することが可能となる。例えばコンセント126・136に充電器とスマートフォン(不図示)を接続することにより、見学者にとって見慣れた機器で通電・非通電を納得することができる。なお、本実施形態の実験装置100では模型110として2階建ての建物を模擬した場合を例示したが、これに限定するものではない。模型110の階数は2階以上であれば適宜変更してもよい。
【0020】
模型110の1階部分の下部には、水が注入される水槽140が配置されている。水槽140は、ケーシング102に対して前後方向にスライド移動させることにより着脱可能である。また水槽140は、透明な材料からなり、内部に注入された水の量を視認可能となっている。
【0021】
水槽140の下部には、注水および排水用のチューブ142が連結されている。これにより、例えばじょうご148によってチューブ142を介して水槽140に好適に注水することができる。またチューブ142を水槽140より下げて栓144を開くことにより、水槽140内の水を好適に排水することが可能となる。
【0022】
模型110の1階部分120の下方には短絡用電極190が設けられている。短絡用電極190は、1階部分120から水槽140内に向かって下方に突出するように配置されている。短絡用電極190は、模型110の1階部分120の回路(後に詳述)に接続されている。
【0023】
ケーシング102の内部には、電力を供給する内蔵電源150(
図2参照)が収容されている。ケーシング102の表面102b(本実施形態では分電盤160の上方)には主電源ランプ150aが設けられている。主電源ランプ150aは、内蔵電源150の状態、すなわち後述する分電盤160の主幹ブレーカー170の(ON/OFF)に応じて点灯または消灯する。したがって、内蔵電源150の状態を視覚的に確認することが可能となる。
【0024】
内蔵電源150からの電力は分電盤160に送られる。分電盤160は、模型110の1階部分120および2階部分130に電力を分配する。分電盤160は、短絡保護回路172を備えた主幹ブレーカー170、および模型110の各階の回路に電力を分岐させる複数の分岐ブレーカー180を有する。
【0025】
図3は、本実施形態のブレーカー漏電実験装置の模式的な電気回路図である。
図3に示すように本実施形態の実験装置100では、内蔵電源150は、電力端子152a、中性端子152bおよびアース端子152cを有する3Pコンセント152を備えている。電力端子152aには電力線154が接続されている。中性端子152bには中性線156が接続されている。アース端子152cにはアース線158が接続されている。
【0026】
内蔵電源150の電力線154および中性線156は分電盤160の主幹ブレーカー170に接続されている。電力線154および中性線156は主幹ブレーカー170において分岐されて1階部分用の分岐ブレーカー180a、および2階部分用の分岐ブレーカー180b(複数の分岐ブレーカー180)に接続される。
【0027】
以下、説明の便宜上、1階部分用の分岐ブレーカー180aから模型110の1階部分120に配線される電力線および中性線を、分岐電力線154aおよび分岐中性線156aと称する。同様に、2階部分用の分岐ブレーカー180bから模型110の2階部分130に配線される電力線および中性線を、分岐電力線154bおよび分岐中性線156bと称する。
【0028】
1階部分120の回路120aは、分岐電力線154aおよび分岐中性線156aを含んで構成されている。分岐電力線154aおよび分岐中性線156aはそれぞれランプ122に接続されている。これにより内蔵電源150からの電力が分電盤160を介してランプ122に供給される。
【0029】
2階部分130の回路130aは、分岐電力線154bおよび分岐中性線156bを含んで構成されている。分岐電力線154bおよび分岐中性線156bはそれぞれランプ132に接続されている。これにより内蔵電源150からの電力が分電盤160を介してランプ132に供給される。
【0030】
上述した1階部分120の回路120aには短絡用電極190が接続されている。短絡用電極190は電力端子192およびアース端子194を有する。電力端子192には、模型110の1階部分120の分岐電力線154aに接続された電極用電力線190aが接続されている。アース端子194には、内蔵電源150からのアース線158が接続される。
【0031】
図4は、本実施形態のブレーカー漏電実験装置の動作について説明する図である。
図4(a)では、水槽140に水を注入する前の状態を例示している。水槽140が空の状態では、主幹ブレーカー170をONにすると内蔵電源150から分電盤160に電力が供給され、主電源ランプ150aが点灯する。
【0032】
このとき、分電盤160において分岐ブレーカー180a・180bはすべてONになっていて、1階部分120の回路120aおよび2階部分130の回路130aそれぞれにも電力が供給される。したがって、1階部分120のスイッチ124および2階部分130のスイッチ134がONになっていると、1階部分120のランプ122および2階部分130のランプ132がそれぞれ点灯する。
【0033】
図4(b)では、水槽140に水を注入した状態を例示している。水槽140に水を注入し、短絡用電極190が水に浸ると漏電が発生する。これにより、漏電が検知された分電盤160では主幹ブレーカー170が落ちる(OFFになる)。すると内蔵電源150から分電盤160への電力の供給が遮断され、主電源ランプ150aが消灯する。
【0034】
ここで、主幹ブレーカー170の短絡保護回路172を作動させるために、水を使って見せることが本装置の重要な要素の1つである。例えばスイッチを用いても、同様に短絡保護回路172を作動させることができる。しかしながらそれでは、主幹ブレーカー170の動作説明をしているに過ぎない。水槽140の中で徐々に水位が上がって短絡用電極190が水に浸り、ついには短絡に至る所を見せることで、水害による漏電事故を見学者に疑似体験させることができる。
【0035】
主幹ブレーカー170が落ちると、分岐ブレーカー180(分岐ブレーカー180a・180b)がONの状態となっていても1階部分120の回路120aおよび2階部分130の回路130aには電力が供給されない。このため、1階部分120のランプ122および2階部分130のランプも消灯する。このことから、漏電によって主幹ブレーカー170が落ちると、分岐ブレーカー180がONの状態になっていても建物全体への電力の供給が遮断されることが理解できる。
【0036】
図4(b)に示すように漏電によって主幹ブレーカー170が落ちた状態において、復旧を目的として主幹ブレーカー170を再度入れる。すると、短絡用電極190は浸水した状態のままで漏電が解消されていないため、主幹ブレーカー170は再度落ちる。このことから、漏電時に落ちた主幹ブレーカー170を単に入れ直しただけでは電力の使用を再開できないことが理解できる。
【0037】
このため漏電によって主幹ブレーカー170が落ちた際には、漏電箇所の特定を行う。本実施形態の実験装置100では、漏電箇所は浸水した短絡用電極190である。したがって、短絡用電極190が接続されている回路、すなわち1階部分120の回路120aに接続されている分岐ブレーカー180aをOFFにすれば、漏電箇所が電気的に分離される。
【0038】
そこで、
図4(c)に示すように分電盤160において漏電箇所と接続されている1階部分120の分岐ブレーカー180aをOFFにし、その後、主幹ブレーカー170をONにする。これにより、内蔵電源150の電力が分電盤160に供給され、漏電箇所と接続されていない2階部分130の分岐ブレーカー180bを通じて2階部分130に電力が供給される。このことから、漏電時には漏電箇所を特定して電気的に分離することで、漏電箇所と接続されていない回路では電力を使用可能であることが理解できる。
【0039】
上記説明したように本実施形態の実験装置100によれば、水槽140に水を注入することにより短絡用電極190において意図的に水害による漏電を発生させる。これにより見学者は、漏電時における分電盤160の主幹ブレーカー170や分岐ブレーカー180の状態や、電力の供給状態、すなわち水害時に特化した電気災害を疑似体験することができる。また漏電が発生している状態で実際に主幹ブレーカー170や分岐ブレーカー180を操作することにより、漏電時における分電盤160の操作を実際に体験しながら学習することが可能である。
【0040】
図5は、
図1の短絡用電極190の詳細を説明する三面図である。
図5に示すように190では、電力端子192およびアース端子194は、それらの背面に配置される移動部材196に固定されている。移動部材196の背面には、短絡用電極190をケーシング102の背面102c(
図2参照)に固定するためのノブ196aが設けられている。
【0041】
また電力端子192およびアース端子194の前面には、それらを保護する端子カバー198が設けられている。これにより、電力端子192およびアース端子194への見学者の接触を防ぐことができ、高い安全性を得ることが可能となる。
【0042】
ここで、短絡用電極190が洗濯機などの電気機器を模擬するものと考えれば、通常、電気を供給する一対の電極には電力線154および「中性線156」をそれぞれ接続する。これに対し本実施形態の短絡用電極190では、先に説明したように、電力端子192には、1階部分120の分岐電力線154a(厳密には電極用電力線190a)が接続されていて、アース端子194には、内蔵電源150からの「アース線158」が接続されている。
【0043】
かかる構成によれば、短絡用電極190において地絡による漏電を模擬的に発生させることとなる。過負荷では主幹ブレーカー(アンペアブレーカー)が例えば30A(契約容量)で機能して電力を遮断することになる。これに対し地絡では、例えば30mA程度で短絡保護回路172が機能して主幹ブレーカー170が電力を遮断する。したがって本実施形態の実験装置100は、小さい電流で主幹ブレーカー170を動作させることができる。このため、実際に漏電を発生させているにもかかわらず、高い安全性を確保することが可能となる。
【0044】
さらに本実施形態では、
図5に示すように短絡用電極190は、アース端子194の高さ(位置)が電力端子192の高さ(位置)よりも低く設定されている。これにより水槽140に水が注入された際、電力端子192よりもアース端子194の方が先に水に浸ることとなる。これにより、電力端子192が水に浸って漏電を発生させる際以外における不意の通電を防ぎ、安全性をより高めることが可能となる。
【0045】
図6は、
図1の短絡用電極190の収容について説明する側面図である。
図6では、説明に必要な部材以外については図示を省略している。上述したように短絡用電極190の移動部材196の背面にノブ196aが設けられていて、ケーシング102の背面102cには上下方向に延びるスリット102dが形成されている。これにより、ノブ196aをスリット102d内でスライドさせることにより、
図6に示すように短絡用電極190が上下方向(方向D1)にスライド移動可能となる。
【0046】
ノブ196aがスリット102dの下端に位置するとき、
図6に示す短絡用電極190は最も下方に位置し、水槽140の内部に配置される。一方、ノブ196aがスリット102dの上端に位置するとき、
図6に示す短絡用電極190は最も上方に位置し、模型110の1階部分120に収容可能となる。これにより、実験装置100によって漏電実験を行わない際には短絡用電極190を模型110の1階部分120に収容しておくことで、見学者の短絡用電極190への接触を好適に防ぐことができる。
【0047】
そして上記構成によれば、短絡用電極190を模型110の1階部分120に収容することにより、水槽140を前後方向(方向D2)にスライド移動させてケーシング102に着脱可能とすることができる。そしてケーシング102に対して水槽140を装着したら、短絡用電極190を下方に移動させることにより、水槽140の中に短絡用電極190を挿入することができる。
【0048】
また本実施形態の実験装置100では、模型110の1階部分120にリミットスイッチ106が設けられている。リミットスイッチ106は電極用電力線190aの途中に配置されていて、短絡用電極190が可動範囲すなわちケーシング102のスリット102dの下端にある場合にのみ電極用電力線190aの通電をONにする。
【0049】
上記構成により、短絡用電極190が模型110の1階部分120に収容されると、電力端子192への通電をOFFにする。したがって、模型110の1階部分120に収容された短絡用電極190への接触が万が一発生したとしても、感電を確実に防止することができ、より高い安全性を確保することが可能となる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、漏電事故を疑似体験させると共に、ブレーカーの状態や操作を見学者に周知することが可能なブレーカー漏電実験装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
100…実験装置、102…ケーシング、102a…上面、102b…表面、102c…背面、102d…スリット、104…ハンドル、106…リミットスイッチ、110…模型、120…1階部分、120a…回路、122…ランプ、124…スイッチ、126…コンセント、130…2階部分、130a…回路、132…ランプ、134…スイッチ、136…コンセント、140…水槽、142…チューブ、144…栓、148…じょうご、150…内蔵電源、150a…主電源ランプ、152…3Pコンセント、152a…電力端子、152b…中性端子、152c…アース端子、154…電力線、154a…分岐電力線、154b…分岐電力線、156…中性線、156a…分岐中性線、156b…分岐中性線、158…アース線、160…分電盤、170…主幹ブレーカー、172…短絡保護回路、180…分岐ブレーカー、180a…分岐ブレーカー、180b…分岐ブレーカー、190…短絡用電極、190a…電極用電力線、192…電力端子、194…アース端子、196…移動部材、196a…ノブ、198…端子カバー