(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106748
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】プッシュスイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 13/06 20060101AFI20240801BHJP
H01H 13/52 20060101ALI20240801BHJP
H01H 9/04 20060101ALI20240801BHJP
H01H 13/48 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
H01H13/06 B
H01H13/52 F
H01H9/04 B
H01H13/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011173
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】小山田 哲
【テーマコード(参考)】
5G052
5G206
【Fターム(参考)】
5G052AA05
5G052BB01
5G052HA01
5G052HA13
5G206AS11H
5G206AS11J
5G206AS38H
5G206AS38J
5G206AS38N
5G206DS02N
5G206FS32J
5G206FS32K
5G206FU03
5G206HU54
5G206HU64
5G206KS15
5G206KS37
5G206NS02
5G206NS05
(57)【要約】
【課題】繰り返し押下した場合にも、防水性を担保可能なプッシュスイッチを提供することを目的とする。
【解決手段】凹部(2e)を有するケース(2)と、凹部内に配置された第1固定接点(2a)と、第1固定接点の周囲に配置された第2固定接点(2b)と、第2固定接点上に配置され且つ押下により第1固定接点に接触する可動接点(3)と、可動接点の上方に配置され且つ中央部より薄く形成された外縁段差部(4a)を有する押し子(4)と、可動接点を覆うように可動接点と離間してケース上に固定され且つ中央部に貫通孔(5a)を有する保護シート(5)と、を備え保護シートの貫通孔近傍と外縁段差部の一部が接合されているプッシュスイッチ(1a)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有するケースと、
前記凹部内に配置された第1固定接点と、
前記第1固定接点の周囲に配置された第2固定接点と、
前記第2固定接点上に配置され、押下により前記第1固定接点に接触する可動接点と、
前記可動接点の上方に配置され、中央部より薄く形成された外縁段差部を有する押し子と、
前記可動接点を覆うように、前記可動接点と離間して前記ケース上に固定され、中央部に貫通孔を有する保護シートと、を備え
前記保護シートの前記貫通孔近傍と前記外縁段差部の一部が接合されている、
ことを特徴とするプッシュスイッチ。
【請求項2】
前記押し子は、第1部材と、前記第1部材の上に形成され且つ前記第1部材より小さい第2部材を有し、前記第2部材が形成されていない前記第1部材の上面が前記外縁段差部を形成する、請求項1に記載のプッシュスイッチ。
【請求項3】
前記第2部材の上部は、前記貫通穴から外部へ露出している、請求項2に記載のプッシュスイッチ。
【請求項4】
前記保護シートの前記貫通穴近傍の裏側の一部と、前記外縁段差部の一部が接合されている、請求項1および請求項2に記載のプッシュスイッチ。
【請求項5】
前記押し子は、第1部材と、前記第1部材の下に形成され且つ前記第1部材より小さい第2部材を有し、前記第2部材が形成されていない前記第1部材の下面が前記外縁段差部を形成する、請求項1に記載のプッシュスイッチ。
【請求項6】
前記第1部材の上部は、前記貫通穴から外部へ露出している、請求項5に記載のプッシュスイッチ。
【請求項7】
前記保護シートの前記貫通穴近傍の表側の一部と、前記外縁段差部の一部が接合されている、請求項1および請求項5に記載のプッシュスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プッシュスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器の入力操作部に用いられるプッシュスイッチにおいて、操作箇所に押し子が多く用いられるようになってきた。このような従来の押し子付きプッシュスイッチの構造としては、可動接点の上方に設けられたフィルム状の粘着付シート上面へ押し子を突状に形成し、この突部を介して押圧力を可動接点に伝達する構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来のプッシュスイッチの構造では、回路基板の上面に収納孔を有したスペーサーシートが形成されている。収納孔には、中央部が上方に突出した板バネと下面に粘着剤を有し板バネより小さい粘着付シートが板バネの上面に沿うように配置され、粘着シートの上面には突部が形成されている。また、下面に粘着剤を有し、突部に干渉しないよう中央部に挿通孔を有した絶縁シートが板バネと粘着付シートに沿うように密着し、且つ、スペーサーシートに固定されている。そして、突部を押圧した際には、その押圧力が粘着付シートを介して下方の板バネへ伝達されるため、板バネが反転しスイッチオン状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の押し子付きプッシュスイッチでは、突部を形成した粘着付シートが板バネへ沿うように配置されているため、繰り返し押下した場合、板バネの反転変形により絶縁シートと粘着付シート間に隙間ができ、防水性が確保できない問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、繰り返し押下した場合にも、防水性を担保可能なプッシュスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るプッシュスイッチは、凹部を有するケースと、凹部内に配置された第1固定接点と、第1固定接点の周囲に配置された第2固定接点と、第2固定接点上に配置され且つ押下により第1固定接点に接触する可動接点と、可動接点の上方に配置され且つ中央部より薄く形成された外縁段差部を有する押し子と、可動接点を覆うように可動接点と離間してケース上に固定され且つ中央部に貫通孔を有する保護シートと、を備え保護シートの貫通孔近傍と外縁段差部の一部が接合されている、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係るプッシュスイッチでは、押し子は、第1部材と、第1部材の上に形成され且つ第1部材より小さい第2部材を有し、第2部材が形成されていない第1部材の上面が外縁段差部を形成することが好ましい。
【0009】
本発明に係るプッシュスイッチでは、第2部材の上部は、貫通穴から外部へ露出していることが好ましい。
【0010】
本発明に係るプッシュスイッチでは、保護シートの貫通穴近傍の裏側の一部と、外縁段差部の一部が接合されていることが好ましい。
【0011】
本発明に係るプッシュスイッチでは、押し子は、第1部材と、第1部材の下に形成され且つ第1部材より小さい第2部材を有し、第2部材が形成されていない第1部材の下面が外縁段差部を形成する、ことが好ましい。
【0012】
本発明に係るプッシュスイッチでは、第1部材の上部は、貫通穴から外部へ露出している、ことが好ましい。
【0013】
本発明に係るプッシュスイッチでは、保護シートの貫通穴近傍の表側の一部と、外縁段差部の一部が接合されている、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、繰り返し押下した場合にも、防水性を担保可能なプッシュスイッチを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態のプッシュスイッチ1aを示す分解斜視図である。
【
図4】本発明の第2実施形態のプッシュスイッチ1bを示す断面図である。
【
図5】本発明の第3実施形態のプッシュスイッチ1cを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。但し、本開示の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0017】
図1は本発明の第1実施形態のプッシュスイッチ1aを示す分解斜視図であり、
図2はプッシュスイッチ1aの平面図であり、
図3は
図2のA-A線で切断した断面図である。
【0018】
プッシュスイッチ1aは、
図1~3に示すように、ケース2、第1固定接点2a、第2固定接点2b、可動接点3、押し子4、及び、保護シート5等を有する。
【0019】
ケース2は、絶縁材料の合成樹脂製で略直方体の外観を備え、一方が開口した凹状の収納部2eを有する。この収納部2eの底面には第1固定接点2aと、第2固定接点2bが固定されている。ケース2は1部品で構成しているが、2部品以上で構成しても良い。ケース2を2部品で構成する場合には、基板上に中央部が開口した樹脂枠を接着剤で接合し収納部を形成すれば良い。
【0020】
第1固定接点2aは収納部2eの底面の中央付近に配置され、第2固定接点2bは第1固定接点2aを囲むように配置されている。なお、第2固定接点2bの個数は可動接点3が安定するよう配置できれば2つ以上にしても良い。第1固定接点2aはケース2の外方に突出する第1端子2cと電気的に接続され、第2固定接点2bはケースの外方に突出する第2端子2d(
図2及び
図3参照)と電気的に接続されている。第1固定接点2aと第2固定接点2bは互いに電気的に独立しており、同様に第1端子2cと第2端子2dも電気的に独立している。
【0021】
第1固定接点2a、第2固定接点2bおよび第1端子2c、第2端子2dは導電性の金属板を機械加工して作成されている。固定接点および端子の形成方法は、金属板の機械加工以外にも絶縁物の表裏に配置された金属箔をめっき付けしたスルーホールで導通させるなど、固定接点と端子が絶縁物に配置され、固定接点と端子が導通されれば手段は特に限定されない。
【0022】
可動接点3は、導電性の金属板を機械加工し作成されており、中央部が突出する略ドーム状に形成されている。可動接点3は下端が第2固定接点2bに常時接触するように収納部2e内に配置されており、可動接点3の中央部下面は第1固定接点2aに対して上下方向に所定の間隔で離れているため、この状態では第1固定接点2aとは接触しない。また、可動接点3は複数枚を重ねて配置してもよい。
【0023】
保護シート5は絶縁材料の合成樹脂を用いたフィルムからなり、平面視で略長方形に形成されている。保護シート5は中央に円形の貫通孔5aと外縁に周縁部5bを有する。保護シート5はケース2の収納部2eを覆うようにケース2上面と保護シート5の周縁部5bの下面を重ねて配置され、ケース2上面と保護シート5の周縁部5b下面は界面が接合されている。
【0024】
押し子4は、絶縁材料の合成樹脂製で略円柱の外観を備え、押し子中央部4bと外縁が全周にわたり押し子中央部4bより薄く形成された外縁段差部4aを有する。
【0025】
押し子4は保護シート5と可動接点3の間に保護シート5の貫通孔5aから押し子中央部4bが露出するように配置され、保護シート5の貫通孔5a近傍の下面と外縁段差部4aの上面の界面が接合されている。
【0026】
押し子4の押し子中央部4bは、保護シート5より厚く形成されることが望ましいが、保護シート5と同一厚みでもよい。
【0027】
また、押し子4は1部品で構成することが望ましいが、外縁段差部4a面で押し子中央部4bと分割し接着剤で接合するなど2部品以上で構成してもよい。
【0028】
なお、外縁段差部4aの厚みを薄く形成することで、外縁段差部4aが保護シート5の変形に追従するため、押下時の保護シート5の変形を阻害せず、操作感触のよいプッシュスイッチ1aが提供できる付帯効果が期待できる。
【0029】
ケース2と保護シート5および押し子4と保護シート5を接合する方法はレーザー溶着や超音波溶着などにより合成樹脂同士を溶着し接合することが好ましいが、接着剤を用いて接着してもよい。
【0030】
プッシュスイッチ1aの動作について説明する。押し子4の上方からケース2方向へ押し子4を押下すると、押し子4により可動接点3が弾性変形し反転する。可動接点3が反転した際には、可動接点3の可動接点中央部3aと第1固定接点2aが接触し、第1固定接点2aと第2固定接点2bが電気的に導通するため、第1端子2cと第2端子2dも導通する。押し子4への押下を解除すると、可動接点3が元の突出形状へ復元し第1固定接点2aと所定の間隔で離れるため、第1固定接点2aと第2固定接点2bは電気的に独立し、第1端子2cと第2端子2dも電気的に独立した状態に戻る。
【0031】
プッシュスイッチ1aでは、押下時に可動接点3が変形しても、保護シート5は押し子4へ接合しており、保護シート5と押し子4の接合界面に隙間が出来ないため押下時の防水性が確保できる。
【0032】
また、保護シート5の貫通孔5aにより押し子4の押し子中央部4bが厚くなっても保護シート5と押し子4間の接合に影響は無い。このことから押し子中央部4bの厚みに影響されず、容易に押下時の防水性のあるプッシュスイッチ1aを提供することができる。
【0033】
図3に示す様に、プッシュスイッチ1aでは、押し子4の押し子中央部4bが保護シート5の貫通孔5aから外部に露出している。しかしながら。押し子4を上下反転し、保護シート5の貫通孔5a近傍の上面と外縁段差部4aの下面を接合する様にしてもよい。押し子4が、外縁段差部4aを構成する第1部材と、押し子4の押し子中央部4bを構成する第2部材が接合されて形成されている場合、外縁段差部4aを構成する第1部材の下に、外縁段差部4aより小さい押し子中央部4bを構成する第2部材が配置され、外縁段差部4aが保護シート5の貫通孔5aから外部に露出することとなる。
【0034】
図4は、本発明の第2実施形態におけるプッシュスイッチ1bの断面図である。
【0035】
プッシュスイッチ1bとプッシュスイッチ1aとの差異は、プッシュスイッチ1bにおいて、押し子40が可動接点3へ向けて突出する突起部40cを有している点のみである。また、プッシュスイッチ1bにおいて、保護シート5の貫通孔5aから押し子中央部40bが露出するように配置される点も、プッシュスイッチ1aと同様である。なお、突起部40cは押し子40の本体と一体形状が望ましいが別部品でもよい。プッシュスイッチ1bにおいて、プッシュスイッチ1aと同じ構成には同じ番号を付して、説明を省略する。
【0036】
プッシュスイッチ1bにおいて、押し子40が突起部40cを有していても、押し子40の外縁段差部40aと保護シート5が接合されているため、プッシュスイッチ1aと同様に押下時であっても防水性のあるプッシュスイッチを提供することができる。
【0037】
可動接点を押下する接触面積が低減するとプッシュスイッチの操作感触がよくなることが知れているが、押し子4へ突起部40cを追加することで、可動接点3の押下時の接触面積が低減されるため、操作感触のよいプッシュスイッチ1bが提供できる付帯効果が期待できる。
【0038】
図5は、本発明の第3実施形態におけるプッシュスイッチ1cの平面図である。
【0039】
プッシュスイッチ1cとプッシュスイッチ1aとの差異は、プッシュスイッチ1cにおいて、保護シート5と押し子41の外縁段差部41aの接合が一部接合しない押し子未接合部41dを有している点のみである。また、プッシュスイッチ1cにおいて、保護シート5の貫通孔5aから押し子中央部41bが露出するように配置される点も、プッシュスイッチ1aと同様である。なお、押し子未溶接部4dは1ヶ所のみでなく複数個所設けてもよい。
【0040】
プッシュスイッチは防水性能を向上させるため気密性が高くなっており、リフローによる表面実装時の加熱により内部空気が膨張し保護シートが膨らんでしまう。保護シートが樹脂強度を超えて過度に膨らんだ場合、膨らんだままになり元の状態に戻らないため、押し子と可動接点が接触した状態を維持出来ず安定して可動接点3の中心を押下することが困難になってしまうことが知られている。
【0041】
そこで、プッシュスイッチ1cは、押し子未接合部41dが空気弁構造となるため加熱時に内部空気膨張が発生しても外部へ内部空気が移動できるため、保護シート5の膨らみを抑制することが可能となる。これにより、可動接点3の中心を安定して押下することが出来るため操作感触のよいプッシュスイッチ1cを提供できる付帯効果が期待できる。
【0042】
ところで、空気弁は直径5~10μm以下の隙間にすることで、日常生活の防水に必要な水の浸入を防ぐことが知られている。プッシュスイッチ1cでは保護シート5と押し子41の外縁段差部41aは密接し配置されているので、押し子未接合部4dによる隙間を10μm以下に形成することで、保護シート5の膨らみを抑制したうえで、実質的に外部からの水の浸入を防ぐことができる。
【0043】
押し子未接合部4d以外の外縁段差部4aと保護シート5は接合されており押下時も接合状態に変化がないため、押し子未接合部4dによる隙間も押下時には変化はしない。このことから空気弁構造を有しながら容易に防水性のあるプッシュスイッチ1cを提供することができる。
【符号の説明】
【0044】
1a、1b、1c プッシュスイッチ
2 ケース
2a 第1固定接点
2b 第2固定接点
2c 第1端子
2d 第2端子
2e 収納部
3 可動接点
3a 可動接点中央部
4、40、41 押し子
4a、40a、41a 外縁段差部
4b、40b、40c 押し子中央部
40c 突起部
41d 押し子未接合部
5 保護シート
5a 貫通孔
5b 周縁部