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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106749
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】溶着装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/10 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
B29C65/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011175
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】釘本 恒
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AC03
4F211AG01
4F211AR06
4F211AR07
4F211AR08
4F211TA01
4F211TC08
4F211TD11
4F211TJ14
4F211TN24
(57)【要約】
【課題】重ねられた樹脂フィルムの両側に加熱部材を設けることなく、重ねられた樹脂フィルムの一部を溶着することである。
【解決手段】溶着装置は、重ねられた樹脂フィルムの両方に張力を付与して重ねられた樹脂フィルムを密着させる張力付与部材と、重ねられて密着された樹脂フィルムの重ね方向の一方側から樹脂フィルムを加熱する加熱部材とを備えている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ねられた樹脂フィルムの両方に張力を付与して重ねられた樹脂フィルムを密着させる張力付与部材と、
重ねられて密着された前記樹脂フィルムの重ね方向の一方側から前記樹脂フィルムを加熱する加熱部材と、
を備える溶着装置。
【請求項2】
前記加熱部材は、非接触で前記樹脂フィルムに高温の気体を吹き付ける、
請求項1に記載の溶着装置。
【請求項3】
前記張力付与部材は、重ねられた前記樹脂フィルムを夫々引っ張ることで、両方の前記樹脂フィルムに張力を付与する、
請求項1に記載の溶着装置。
【請求項4】
前記張力付与部材は、一の前記樹脂フィルムの一端側の部分と一の前記樹脂フィルムの他端側の部分が重ねられた部分の両方の前記樹脂フィルムに張力を付与して重ねられた部分の前記樹脂フィルムを密着させ、
前記加熱部材は、前記一端側の部分と前記他端側の部分とか重ねられて筒状とされた一の前記樹脂フィルムの外側から重ねられて密着された部分の前記樹脂フィルムを非接触で加熱し、
一の前記樹脂フィルムの中間部分と、重ねられた部分の前記樹脂フィルムとの非接触状態を維持する維持部材を備える、
請求項1に記載の溶着装置。
【請求項5】
前記加熱部材を重ねられた前記樹脂フィルムのフィルム面に沿って移動させる移動部材を備える、
請求項1~4の何れか1項に記載の溶着装置。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、熱板の間で被成形物を加熱・加圧するホットプレスにおいて、熱板には熱板を直接加熱する加熱手段と、加熱手段とは別の冷却手段としてのヒートパイプとが配設されるホットプレスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-152913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
重ねられた樹脂フィルムの一部を溶着する溶着装置では、重ねられた樹脂フィルムを挟んで一方側と他方側とに樹脂フィルムを加熱する加熱部材が設けられている。そして、重ねられた樹脂フィルムの一部を一対の加熱部材で挟み込むことで、挟み込んだ部分の樹脂フィルムが溶着される。このような溶着装置では、重ねられた樹脂フィルムの重ね方向の両側に加熱部材を設ける必要があった。
【0005】
本開示の課題は、重ねられた樹脂フィルムの両側に加熱部材を設けることなく、重ねられた樹脂フィルムの一部を溶着することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様に係る溶着装置は、重ねられた樹脂フィルムの両方に張力を付与して重ねられた樹脂フィルムを密着させる張力付与部材と、重ねられて密着された前記樹脂フィルムの重ね方向の一方側から前記樹脂フィルムを加熱する加熱部材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、重ねられて張力を付与されることで密着された樹脂フィルムの重ね方向の一方側から加熱部材が樹脂フィルムの一部を加熱することで、重ねられた樹脂フィルムの一部が溶着される。このように、重ねられた樹脂フィルムの両側に加熱部材を設けることなく、重ねられた樹脂フィルムの一部を溶着することができる。
【0008】
本開示の第2態様に係る溶着装置は、第1態様に記載の溶着装置において、前記加熱部材は、非接触で前記樹脂フィルムに高温の気体を吹き付けることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、加熱部材が樹脂フィルムに高温の気体を吹き付けることで、樹脂フィルムの一部を加熱する。このため、赤外線ヒーターを用いて樹脂フィルムの一部を加熱する場合と比して、樹脂フィルムの一部を効果的に加熱することができる。
【0010】
本開示の第3態様に係る溶着装置は、第1態様に記載の溶着装置において、前記張力付与部材は、重ねられた前記樹脂フィルムを夫々引っ張ることで、両方の前記樹脂フィルムに張力を付与することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、張力付与部材が重ねられた樹脂フィルムを夫々引っ張ることで、両方の樹脂フィルムに張力を付与する。これにより、重ねられた樹脂フィルムをまとめて引っ張ることで樹脂フィルムに張力を付与する場合と比して、両方の樹脂フィルムに張力を付与することで確実に両方のフィルムを密着させることができる。
【0012】
本開示の第4態様に係る溶着装置は、第1態様に記載の溶着装置において、前記張力付与部材は、一の前記樹脂フィルムの一端側の部分と一の前記樹脂フィルムの他端側の部分が重ねられた部分の両方の前記樹脂フィルムに張力を付与して重ねられた部分の前記樹脂フィルムを密着させ、前記加熱部材は、前記一端側の部分と前記他端側の部分とか重ねられて筒状とされた一の前記樹脂フィルムの外側から重ねられて密着された部分の前記樹脂フィルムを非接触で加熱し、一の前記樹脂フィルムの中間部分と、重ねられた部分の前記樹脂フィルムとの非接触状態を維持する維持部材を備えることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、一の樹脂フィルムの一端側の部分と他端側の部分とを重ねて溶着させ、一の樹脂フィルムが筒状とされる。このとき、維持部材が、一の樹脂フィルムの中間部分と一の樹脂フィルムの重ねられた部分との非接触状態を維持する。これにより、一の樹脂フィルムの中間部分と一の樹脂フィルムの重ねられた部分とを溶着することなく、一の樹脂フィルムの重なった部分の一部を溶着することができる。
【0014】
本開示の第5態様に係る溶着装置は、第1~第4態様の何れか1態様に記載の溶着装置において、前記加熱部材を重ねられた前記樹脂フィルムのフィルム面に沿って移動させる移動部材を備えることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、移動部材が、加熱部材を樹脂フィルムのフィルム面に沿って移動させる。これにより、小さい加熱部材を用いて重ねられた樹脂フィルムの一部を線状に溶着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の実施形態に係る溶着装置を示した斜視図である。
図2】本開示の実施形態に係る溶着装置であって、樹脂フィルムが取り付けられる前の状態を示した正面図である。
図3】本開示の実施形態に係る溶着装置の駆動系を示したブロック図である。
図4】本開示の実施形態に係る溶着装置を用いて溶着する工程を示したフロー図である。
図5】本開示の実施形態に係る溶着装置であって、樹脂フィルムが取り付けられた状態を示した正面図である。
図6】本開示の実施形態に係る溶着装置であって、樹脂フィルムの他端をクランプした状態を示した正面図である。
図7】本開示の実施形態に係る溶着装置であって、樹脂フィルムに張力を付与した状態を示した正面図である。
図8】本開示の実施形態に係る溶着装置であって、樹脂フィルムが取り付けられた状態を示した斜視図である。
図9】本開示の実施形態に係る溶着装置であって、樹脂フィルムの他端のクランプを解除した状態を示した正面図である。
図10】本開示の実施形態に係る溶着装置を用いて製造された袋状の樹脂フィルムを示した斜視図である。
図11】(A)(B)本実形態に係る溶着装置を用いて樹脂フィルムを溶着した部分を示した図面、及び比較形態に係る溶着装置を用いて樹脂フィルムを溶着した部分を示した図面である。
図12】(A)(B)本実形態に係る溶着装置を用いて樹脂フィルムを溶着した部分を示した図面、及び比較形態に係る溶着装置を用いて樹脂フィルムを溶着した部分を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の実施形態に係る溶着装置の一例について、図1図12を用いて説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示されている各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、図中に示す矢印Hは溶着装置の上下方向(鉛直方向)を示し、矢印Wは溶着装置の幅方向(水平方向)を示し、矢印Dは溶着装置の奥行き方向(水平方向)を示す。
【0018】
(全体構成)
溶着装置10は、一枚の樹脂フィルム100を筒状とするための装置であって、図1に示されるように、奥行き方向に延びるように配置された断面円状の円管12、22、26と、奥行き方向に延びるように配置された断面矩形状の角管32、36とを備えている。さらに、溶着装置10は、重ねられた部分の樹脂フィルム100に高温の空気を吹き付けるヒートガン50と、ヒートガン50を移動可能に支持するレール58とを備えている。ヒートガン50は、加熱部材の一例であって、高温の空気は、高温の気体の一例である。また、高温の空気とは、吹き付けられた部分の樹脂フィルムが溶融温度に達する程度の温度の空気である。
【0019】
〔円管12、22、26〕
円管12は、SUS製であって、図1図2に示されるように、装置奥行き方向に延びるように配置されており、円管12の両端部は、図示せぬフレームに取り付けられている。円管12は、維持部材の一例である。
【0020】
円管22は、SUS製であって、円管12に対して幅方向の一方側で、かつ、円管12に対して下方側に配置され、装置奥行き方向に延びている。さらに、円管22の両端部は、図示せぬフレームに回転可能に取り付けられている。そして、溶着装置10には、円管22を周方向に回転させるモータ24(図3参照)が設けられており、円管22は、モータ24の駆動力が伝達されて周方向に回転するようになっている。
【0021】
円管26は、SUS製であって、円管22に対して斜め下方側に配置され、奥行き方向に延びている。そして、円管26の両端部は、図示せぬフレームに回転可能に取り付けられている。また、溶着装置10には、円管26を周方向に回転させるモータ28(図3参照)が設けられており、円管26は、モータ28の駆動力が伝達されて周方向に回転するようになっている。
【0022】
なお、円管12、22、26の奥行き方向の手前側のフレームについては、円管12、22、26から取り外すことができるようになっている。
【0023】
〔角管32、36〕
角管32は、アルミニウム製であって、図1図2に示されるように、円管12に対して幅方向の他方側で、かつ、円管12に対して下方側に配置され、装置奥行き方向に延びている。具体的には、角管32の上向き面の高さと、円管22の上端の高さとが同様となるように、角管32が配置されている。さらに、角管32の両端部は、図示せぬフレームに取り付けられている。
【0024】
角管36は、アルミニウム製であって、角管32に対して上方側に配置され、装置奥行き方向に延びている。そして、角管36の両端部は、図示せぬフレームに上下動可能に取り付けられている。また、溶着装置10には、角管36を上下方向に移動させるアクチュエータ38(図3参照)が設けられており、角管36は、アクチュエータ38の駆動力が伝達されて上下方向に移動するようになっている。
【0025】
なお、溶着装置10に樹脂フィルム100が取り付けられていない状態では、角管36は、角管32との間に隙間が形成されるように配置されている。
【0026】
また、角管32、36の奥行き方向の手前側のフレームについては、角管32、36から取り外すことができるようになっている。
【0027】
〔ヒートガン50、レール58〕
ヒートガン50は、図1図2に示されるように、奥行き方向から見て、円管22と角管32との間で、上方に高温の空気を吹き出すように配置されている。
【0028】
レール58は、奥行き方向に延びており、ヒートガン50を下方から支持している。また、溶着装置10には、ヒートガン50をレール58に沿って奥行き方向に往復移動させるモータ52(図3参照)が設けられており、ヒートガン50は、モータ52の駆動力が伝達されて奥行き方向に往復移動するようになっている。
【0029】
このように、レール58とモータ52とで、ヒートガン50を移動させる移動部材60が構成されている。
【0030】
(作用)
次に、溶着装置10を用いて、1枚の樹脂フィルム100の一端と他端とを溶着して筒状とする作業について図4に示すフロー図を用いて説明する。
【0031】
本実施形態では、樹脂フィルム100として、厚さ0.1〔mm〕のフッ素フィルムが一例として用いられており、樹脂フィルム100の外形は、長手方向の一辺が2〔m〕とされ、他辺が、1〔m〕とされている。
【0032】
樹脂フィルム100が、溶着装置10に取り付けられていない状態では、図1図2に示されるように、角管36は、角管32との間に隙間が形成されるように配置されており、ヒートガン50は、溶着装置10において奥行き方向の手前側に配置されている。
【0033】
先ず、図4に示すステップS100で、作業者は、図5に示されるように、樹脂フィルム100を、溶着装置10に取り付ける。具体的には、樹脂フィルム100の長手方向を奥行き方向とし、樹脂フィルム100の一端100aを円管22の外周面にテープ止めする。さらに、樹脂フィルム100を角管32と角管36との間を通し、樹脂フィルム100を折り返して円管12に巻き掛ける。
【0034】
また、樹脂フィルム100を円管26と接触する部分で折り返し、折り返した部分の樹脂フィルム100を円管22に巻き掛け、樹脂フィルム100の他端100bを角管32に載せる。これにより、樹脂フィルム100を筒状とする。
【0035】
さらに、円管26と接触している樹脂フィルム100の折り返し部分を、円管22の外周面にテープ止めする。
【0036】
このように、樹脂フィルム100が溶着装置10に取り付けられることで、樹脂フィルム100の一端側の部分と他端側の部分とが、円管22と角管32との間で重ねられた状態となる。
【0037】
次に、ステップS200で、作業者は、図6に示されるように、樹脂フィルム100の他端100bをクランプする。具体的には、アクチュエータ38を稼働させて角管36を下方へ移動させ、角管32と角管36とで、角管32に載せられた部分の樹脂フィルム100と、樹脂フィルム100の他端100bとを挟み込む。
【0038】
次に、ステップS300で、作業者は、図7に示されるように、樹脂フィルム100に張力を付与し、重なった部分の樹脂フィルム100を密着させる。具体的には、モータ24(図3参照)を稼働させて円管22を時計方向に回転させることで、樹脂フィルム100の一端側の部分に張力を付与する。また、モータ28(図3参照)を稼働させて円管26を時計方向に回転させることで、樹脂フィルム100の他端側の部分に張力を付与する。このように、モータ24と円管22とで、張力付与部材40が構成され、モータ28と円管26とで、張力付与部材42が構成されている。
【0039】
そして、樹脂フィルム100の一端側の部分に張力を付与し、かつ、樹脂フィルム100の他端側の部分に張力を付与することで、樹脂フィルム100の一端側の部分と樹脂フィルム100の他端側の部分とを密着させる。
【0040】
次に、ステップS400で、作業者は、図8に示されるように、樹脂フィルム100において重なった部分の一部を溶着する。
【0041】
具体的には、ヒートガン50を稼働させて樹脂フィルム100において重なった部分の一部に、筒状とされた樹脂フィルム100の外側から高温の空気を吹き付ける。そして、モータ52を稼働させてヒートガン50を樹脂フィルム100のフィルム面に沿って奥行き方向の手前側から奥側へ移動させる。ここで、ヒートガン50の移動速度について、樹脂フィルム100において高温の空気が吹き付けられた部分が、250〔℃〕以上500〔℃〕以下となるように決められている。これにより、樹脂フィルム100において重なった部分の一部を線状に溶着する。つまり、ヒートガン50を用いて樹脂フィルム100を非接触で加熱し、樹脂フィルム100の一端側の部分と他端側の部分との一部を線状に溶着する。なお、図8においては、溶着された部分が記号Y01で示されている。
【0042】
そして、樹脂フィルム100において重なった部分の一部が溶着されると、ヒートガン50を非稼働とし、モータ52を稼働させてヒートガン50を奥行き方向の奥側から手前側へ移動させる。
【0043】
次に、ステップS500で、作業者は、モータ24、28(図3参照)を非稼働し、図9に示されるように、樹脂フィルム100の他端100bのクランプを解除する。具体的には、アクチュエータ38を稼働させて角管36を上方へ移動させ、角管32と角管36との間に隙間を形成されることで、角管32に載せられた部分の樹脂フィルム100と、樹脂フィルム100の他端100bとの挟み込みを解除する。
【0044】
次に、ステップS600で、作業者は、樹脂フィルム100を溶着装置10から取り外す。具体的には、円管12、22、26の奥行き方向の手前側の端部を支持している図示せぬフレーム、及び角管32、36の奥行き方向の手前側の端部を支持している図示せぬフレームを円管12、22、26及び角管32、36から取り外す。そして、筒状の樹脂フィルム100を奥行き方向の手前側へ移動させることで、樹脂フィルム100を溶着装置10から取り外す。
【0045】
これにより、一連の動作を終了する。なお、図10には、前述した工程において筒状とされた樹脂フィルム100の長手方向の端部の開口を溶着することで、樹脂フィルム100を袋状としたものが示されている。図10においては、溶着された部分が記号Y02で示されている。
【0046】
(まとめ)
以上説明したように、溶着装置10においては、重ねられて密着された樹脂フィルム100の重ね方向の一方側から樹脂フィルム100を加熱することで、重ねられた部分の一部を溶着する。このようにして、重ねられた樹脂フィルム100の両側に加熱部材を設けることなく、重ねられた樹脂フィルム100の一部を溶着することができる。
【0047】
ここで、溶着装置10においては、図11(A)に示されるように、樹脂フィルム100の一端側の裏面と、樹脂フィルム100他端側の表面とを合わせて溶着することができる。
【0048】
これに対して、従来技術のホットプレス機、又はヒートシーラー等においては、図11(B)に示されるように、重ねられた樹脂フィルム100の両側に加熱部材を設ける必要があるため、樹脂フィルム100の同じ面を合わせて溶着することとなる。
【0049】
このため、溶着部分を挟んで一方側の部分の樹脂フィルム100と他方側の部分の樹脂フィルムとを離隔するように、樹脂フィルム100に荷重を付加すると、図11(B)に示す従来技術の溶着では、90〔°〕から180〔°〕程度の急峻な曲げが樹脂フィルム100に生じる。これにより、樹脂フィルム100は曲げによって脆弱になる。
【0050】
一方、図11(A)に示す本願の溶着では、樹脂フィルム100に曲げが生じないため、図11(B)に示す従来技術の溶着と比して、溶着部分を挟んで一方側の部分と他方側の部分とを離隔するように荷重を付加した場合に溶着周りに生じる損傷が抑制される。
【0051】
また、溶着装置10においては、図12(A)に示されるように、ヒートガン50(図8参照)を移動させながら樹脂フィルム100において重なった部分の一部を線状に溶着するため、溶着された全ての部分の強度が同様となる。
【0052】
これに対して、従来技術のホットプレス機、又はヒートシーラー等においては、図12(B)に示されるように、加熱部材の長さに限界があるため、溶着工程を複数回に分けて実施する必要がある。この場合、一対の加熱部材を一度離して樹脂フィルム100をずらして再度加圧溶着する手間が生じる。さらに、隣り合う一方の溶着部の端部と他方の溶着部の端部とを重ねる必要がある。換言すれば、樹脂フィルム100において、2度溶着される部分が生じる。2度溶着の部分の溶着強度は、1度溶着の部分の溶着強度と比して弱くなる。
【0053】
一方、図12(A)に示す本願の溶着では、樹脂フィルム100において、2度溶着の部分が生じないため、図12(B)に示す従来技術の溶着と比して、溶着強度の低下が抑制される。
【0054】
また、溶着装置10においては、ヒートガン50を用いて非接触で高温の空気を樹脂フィルム100に吹き付ける。このため、例えば、赤外線ヒーターを用いて樹脂フィルムを加熱する場合と比して、樹脂フィルム100の一部を効果的に加熱することができる。
【0055】
また、溶着装置10においては、重ねられた部分の樹脂フィルム100を夫々引っ張ることで、夫々の部分の樹脂フィルム100に張力を付与する。これにより、重ねられた部分の樹脂フィルムをまとめて引っ張る場合と比して、夫々の部分の樹脂フィルム100に張力を付与することで重ねられた部分の樹脂フィルム100を確実に密着させることができる。
【0056】
また、溶着装置10においては、1枚の樹脂フィルム100を筒状として溶着装置10に取り付けるときに、溶着装置10の円管12に樹脂フィルム100を巻き掛ける。これにより、樹脂フィルム100の中間部分と重ねられた部分の樹脂フィルム100との非接触状態が維持され、樹脂フィルム100の中間部分と樹脂フィルム100の重ねられた部分とを溶着することなく、樹脂フィルム100の重なった部分の一部を溶着することができる。
【0057】
また、溶着装置10においては、樹脂フィルム100のフィルム面に沿ってヒートガン50を移動させる移動部材60を備えている。これにより、小さいヒートガン50を用いて重ねられた部分の樹脂フィルム100の一部を線状に溶着することができる。
【0058】
また、溶着装置10においては、ヒートガン50を稼働させて樹脂フィルム100において重なった部分の一部に、筒状とされた樹脂フィルム100の外側から高温の空気を吹き付ける。このため、筒状とされた樹脂フィルム100からヒートガンが高温の空気を吹き付ける場合と比して、ヒートガン50の配置が容易となる。
【0059】
なお、本開示を特定の実施形態について詳細に説明したが、本開示は係る実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、加熱部材としてヒートガン50を例として説明したが、赤外線ヒーター(ハロゲンランプヒーター等)、レーザー加熱装置、マイクロ波加熱装置等の非接触加熱装置で樹脂フィルム100を加熱してもよい。しかし、この場合には、ヒートガン50を用いることで奏する作用は奏しない。
【0060】
また、上記実施形態では、樹脂フィルム100としてフッ素フィルムを用いたが、PPフィルムやPEフィルム等であってもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、ヒートガン50を移動させて樹脂フィルム100の一部を線状に溶着したが、樹脂フィルムを移動させて線状に樹脂フィルムの一部を溶着してもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、樹脂フィルム100の一方側をクランプし、他方側を引っ張ることで樹脂フィルム100に張力を付与したが、樹脂フィルムの一方側及び他方側の両方を引っ張ることで樹脂フィルムに張力を付与してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、重ねられた部分の樹脂フィルム100を夫々引っ張ることで、両方の部分の樹脂フィルム100に張力を夫々付与したが、重ねられた部分の樹脂フィルムをまとめて引っ張ることで樹脂フィルムに張力を付与してもよい。しかし、この場合には、重ねられた部分の樹脂フィルム100を夫々引っ張ることで奏する作用は奏しない。
【0064】
(((1)))
重ねられた樹脂フィルムの両方に張力を付与して重ねられた樹脂フィルムを密着させる張力付与部材と、
重ねられて密着された前記樹脂フィルムの重ね方向の一方側から前記樹脂フィルムを加熱する加熱部材と、
を備える溶着装置。
【0065】
(((2)))
前記加熱部材は、非接触で前記樹脂フィルムに高温の気体を吹き付ける、
請求項1に記載の溶着装置。
【0066】
(((3)))
前記張力付与部材は、重ねられた前記樹脂フィルムを夫々引っ張ることで、両方の前記樹脂フィルムに張力を付与する、
(((1)))又は(((2)))に記載の溶着装置。
【0067】
(((4)))
前記張力付与部材は、一の前記樹脂フィルムの一端側の部分と一の前記樹脂フィルムの他端側の部分が重ねられた部分の両方の前記樹脂フィルムに張力を付与して重ねられた部分の前記樹脂フィルムを密着させ、
前記加熱部材は、前記一端側の部分と前記他端側の部分とか重ねられて筒状とされた一の前記樹脂フィルムの外側から重ねられて密着された部分の前記樹脂フィルムを非接触で加熱し、
一の前記樹脂フィルムの中間部分と、重ねられた部分の前記樹脂フィルムとの非接触状態を維持する維持部材を備える、
(((1)))~(((3)))の何れか1に記載の溶着装置。
【0068】
(((5)))
前記加熱部材を重ねられた前記樹脂フィルムのフィルム面に沿って移動させる移動部材を備える、
(((1)))~(((4)))の何れか1に記載の溶着装置。
【符号の説明】
【0069】
10 溶着装置
12 円管(維持部材の一例)
40 張力付与部材
42 張力付与部材
50 ヒートガン(加熱部材の一例)
60 移動部材
100 樹脂フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12