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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106767
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/155 20230101AFI20240801BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20240801BHJP
   H10K 50/17 20230101ALI20240801BHJP
   H10K 50/818 20230101ALI20240801BHJP
   H10K 50/828 20230101ALI20240801BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240801BHJP
   H10K 85/00 20230101ALI20240801BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240801BHJP
   H10K 101/40 20230101ALN20240801BHJP
   H10K 101/00 20230101ALN20240801BHJP
【FI】
H10K50/155
H10K50/16
H10K50/17
H10K50/818
H10K50/828
H10K59/10
H10K85/00
G09F9/30 365
H10K101:40
H10K101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011200
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 逸
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC04
3K107DD03
3K107DD23
3K107DD27
3K107DD72
3K107DD73
3K107DD74
3K107DD78
3K107FF06
3K107FF15
5C094BA27
5C094DA13
5C094EA04
5C094EA06
5C094FB01
5C094JA08
5C094JA13
(57)【要約】
【課題】発光効率を向上させることが可能な表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置は、基板と、基板の上に、画素電極、下部バッファ層、発光層、上部バッファ層及び対向電極の順に積層された複数の発光素子と、を有し、下部バッファ層は、画素電極の上にこの順で積層された第1正孔輸送層、第2正孔輸送層及び第3正孔輸送層を有し、第2正孔輸送層の屈折率は、第1正孔輸送層の屈折率よりも高く、かつ、第3正孔輸送層の屈折率よりも高い。第1正孔輸送層は、p型ドーパントを含む有機半導体材料で形成され、正孔注入層及び正孔輸送層を兼ねる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上に、画素電極、下部バッファ層、発光層、上部バッファ層及び対向電極の順に積層された複数の発光素子と、を有し、
前記下部バッファ層は、前記画素電極の上にこの順で積層された第1正孔輸送層、第2正孔輸送層及び第3正孔輸送層を有し、
前記第2正孔輸送層の屈折率は、前記第1正孔輸送層の屈折率よりも高く、かつ、前記第3正孔輸送層の屈折率よりも高い
表示装置。
【請求項2】
前記第1正孔輸送層は、p型ドーパントを含む有機材料で形成され、正孔注入層及び正孔輸送層を兼ねる
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1正孔輸送層及び前記第3正孔輸送層の屈折率は、1.2以上1.75以下である
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第2正孔輸送層の屈折率は、1.85以上2.4以下である
請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記発光層の発光波長をλとしたときに、
前記第1正孔輸送層、前記第2正孔輸送層及び前記第3正孔輸送層のそれぞれの膜厚は、λ/4である
請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記基板に垂直な方向で、前記画素電極と前記第1正孔輸送層との間に設けられた正孔注入層を有する
請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記発光層の発光波長をλとしたときに、
前記正孔注入層と前記第1正孔輸送層との合計の膜厚は、λ/4であり、
前記第2正孔輸送層及び前記第3正孔輸送層のそれぞれの膜厚は、λ/4である
請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記画素電極、前記下部バッファ層、前記発光層、前記上部バッファ層及び前記対向電極は、トップエミッション型の前記発光素子であり、
前記画素電極は反射電極である
請求項1に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、複数の有機EL素子について記載されている。有機EL素子は、陽極と陰極との間に、発光層、及び、正孔輸送層、電子輸送層等のバッファ層が積層されて構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-40990号公報
【特許文献2】特開2004-247106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機EL素子を用いた表示装置では、有機EL素子の発光効率を向上させることが要求されている。
【0005】
本発明は、発光効率を向上させることが可能な表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の表示装置は、基板と、前記基板の上に、画素電極、下部バッファ層、発光層、上部バッファ層及び対向電極の順に積層された複数の発光素子と、を有し、前記下部バッファ層は、前記画素電極の上にこの順で積層された第1正孔輸送層、第2正孔輸送層及び第3正孔輸送層を有し、前記第2正孔輸送層の屈折率は、前記第1正孔輸送層の屈折率よりも高く、かつ、前記第3正孔輸送層の屈折率よりも高い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る表示装置を模式的に示す平面図である。
図2図2は、実施形態に係る画素の、画素電極、対向電極及びバンクの構成を示す平面図である。
図3図3は、図2のIII-III’断面図である。
図4図4は、図3における1つの発光素子を模式的に示す断面図である。
図5図5は、実施例及び比較例に係る発光素子のBIと色度との関係を示すグラフである。
図6図6は、実施例に係る発光素子の、第1正孔輸送層、第2正孔輸送層及び第3正孔輸送層の屈折率を示す表である。
図7図7は、変形例に係る発光素子を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本開示が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、本開示の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本開示の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本開示と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
本明細書及び特許請求の範囲において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0010】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る表示装置を模式的に示す平面図である。本実施形態の表示装置1は、自発光素子である有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)を備えた有機EL表示装置である。表示装置1は、アレイ基板2と、画素PXと、走査線駆動回路12と、信号線駆動回路13と、駆動IC(Integrated Circuit)210と、を含む。
【0011】
アレイ基板2は、各画素PXを駆動するための駆動回路基板であり、バックプレーン又はアクティブマトリクス基板とも呼ばれる。アレイ基板2は、基板21を基体として形成され、基板21上に複数のトランジスタTr(図3参照)、複数の容量及び各種配線等を有する。特に図示しないが、アレイ基板2上には、外部の制御基板から各種制御信号及び電力を入力するための配線基板(例えばフレキシブルプリント基板(FPC))等が接続されていてもよい。
【0012】
なお、以下の説明において、第1方向Dxは、基板21と平行な面内の一方向である。第2方向Dyは、基板21と平行な面内の一方向であり、第1方向Dxと直交する方向である。なお、第2方向Dyは、第1方向Dxと直交しないで交差してもよい。第3方向Dzは、第1方向Dx及び第2方向Dyと直交する方向であり、基板21の法線方向である。また、「平面視」とは、第3方向Dzから見た場合の位置関係をいう。
【0013】
走査線駆動回路12は、表示領域AAの走査線(図示しない)に信号を供給して複数の画素PXを駆動する駆動回路である。信号線駆動回路13は、表示領域AAの信号線(図示しない)に画素信号を供給して複数の画素PXを駆動する駆動回路である。駆動IC210は、走査線駆動回路12及び信号線駆動回路13に制御信号を供給して、複数の画素PXの表示を制御する回路である。なお、走査線駆動回路12及び信号線駆動回路13の少なくとも一部は、駆動IC210と一体に形成されていてもよい。また、駆動IC210は、アレイ基板2上に設けられる。ただし、これに限定されず、駆動IC210はアレイ基板2に接続された配線基板に設けられてもよい。
【0014】
アレイ基板2は、表示領域AAと、周辺領域GAとを有する。表示領域AA内には、複数の画素PXが設けられている。複数の画素PXは、表示領域AAにマトリクス状に配列される。周辺領域GAは、表示領域AAの外側の領域であり、複数の画素PXが設けられない領域である。周辺領域GAには、走査線駆動回路12、信号線駆動回路13及び駆動IC210が設けられる。走査線駆動回路12は、周辺領域GAのうち第2方向Dyに沿って延在する領域に設けられる。信号線駆動回路13及び駆動IC210は、周辺領域GAのうち第1方向Dxに沿って延在する領域に設けられる。
【0015】
本実施形態では、説明を分かりやすくするために、表示領域AAを矩形状とし、周辺領域GAを、表示領域AAの周囲を囲む矩形の枠状としている。ただし、これに限定されず、表示領域AAは、多角形状でもよく、外周の一部に切り欠き(ノッチ)や曲線部を有する異形状であってもよい。周辺領域GAも、表示領域AAの形状に対応して種々の形状に異ならせることができる。
【0016】
図2は、実施形態に係る画素の、画素電極、対向電極及びバンクの構成を示す平面図である。なお、図2は、画素PXにおける発光層31、下部バッファ層37、上部バッファ層38等(図3図4参照)の構成を省略して模式的に示す。
【0017】
図2に示すように、画素PXは、副画素SPX-R、SPX-G、SPX-Bを有する。副画素SPX-R、SPX-G、SPX-Bは、それぞれ、発光素子3(図3参照)として有機発光ダイオードを備える。なお、以下の説明では、副画素SPX-R、SPX-G、SPX-Bを区別して説明する必要が無い場合には、単に副画素SPXと表す。
【0018】
副画素SPX-Rは、例えば赤色(R)を表示する。副画素SPX-Gは、例えば緑色(G)を表示する。副画素SPX-Bは、例えば青色(B)を表示する。副画素SPX-Rと副画素SPX-Gとは第2方向Dyに隣り合って配置される。1つの副画素SPX-Bは、第2方向Dyに隣り合う副画素SPX-R及び副画素SPX-Gと第1方向Dxに隣り合って配置される。ただしこれに限定されず、画素PXは、他の配列であってもよい。例えば、副画素SPX-R、SPX-G、SPX-Bは、第1方向Dxに並んで配置されてもよい。また、画素PXは、いわゆるペンタイル配列で構成されてもよい。また、画素PXは、3つの副画素SPXに限定されず、4つ以上の副画素SPXで構成されてもよい。
【0019】
図2に示すように、表示装置1は、基板21と、発光素子3(発光素子3R、3G、3B)と、バンク24と、を有する。発光素子3は、それぞれ発光層31、下部バッファ層37及び上部バッファ層38(図3図4参照)と、画素電極32と、対向電極33と、を有する。
【0020】
複数の画素電極32は、副画素SPXごとに離隔して設けられる。より詳細には、副画素SPX-Rの画素電極32と、副画素SPX-Gの画素電極32とは、第2方向Dyで間隔を有して隣り合う。また、副画素SPX-Bの画素電極32は、副画素SPX-Rの画素電極32及び副画素SPX-Gの画素電極32と、第1方向Dxで間隔を有して隣り合う。
【0021】
バンク24は、平面視で、複数の画素電極32を囲んで設けられる。バンク24は、傾斜部24aと、平坦部24bと、を有する凸状に形成される。バンク24の傾斜部24aは、画素電極32の外縁部に重なって設けられる。バンク24の平坦部24bは、画素電極32の間に設けられる。言い換えると、バンク24は、複数の画素電極32の中央部と重なる領域に開口OPが設けられる。バンク24の開口OPを構成する内壁24eは、画素電極32の外縁部と重なる。発光素子3R、3B、3Gからの光は、開口OPを通って外部に出射される。
【0022】
対向電極33は、複数の発光素子3R、3G、3B(副画素SPX)に亘って連続して設けられる。すなわち、対向電極33は、複数の画素電極32及びバンク24を覆って連続して設けられる。
【0023】
次に、表示装置1の断面構成について説明する。図3は、図2のIII-III’断面図である。図3では、副画素SPX-B及び副画素SPX-Gの断面構成について示す。ただし、副画素SPX-Rの断面構成も副画素SPX-B及び副画素SPX-Gと同様であり、副画素SPX-B及び副画素SPX-Gについての説明は、副画素SPX-Rにも適用できる。
【0024】
また、以下の説明において、基板21の表面に垂直な方向(第3方向Dz)において、基板21から対向基板29に向かう方向を「上側」又は単に「上」とする。また、対向基板29から基板21に向かう方向を「下側」又は単に「下」とする。
【0025】
図3に示すように、表示装置1は、さらに、基板21の上に設けられた回路形成層22、平坦化膜23及び封止膜26、接着層27、フィルタ層28及び対向基板29を有する。
【0026】
基板21は絶縁基板であり、例えば、石英、無アルカリガラス等のガラス基板、又はポリイミド等の樹脂基板が用いられる。基板21として、可撓性を有する樹脂基板を用いた場合には、シートディスプレイとして表示装置1を構成することができる。また、基板21は、ポリイミドに限らず、他の樹脂材料を用いても良い。
【0027】
回路形成層22は、基板21上に設けられ、複数の発光素子3を駆動するためのトランジスタTrや各種配線(図示は省略する)が形成される層である。回路形成層22に設けられたトランジスタTrは、発光素子3の画素電極32と重なる領域に設けられる。トランジスタTrは、半導体層61、ソース電極62、ドレイン電極63及びゲート電極64を有する。また、回路形成層22は、絶縁膜として、アンダーコート膜91、ゲート絶縁膜92、層間絶縁膜93及び重畳絶縁膜94を含む。
【0028】
アンダーコート膜91は、基板21の上に設けられる。アンダーコート膜91は、例えば、シリコン窒化膜やシリコン酸化膜等の無機絶縁膜で形成される。なお、アンダーコート膜91の構成は、図3に示すものに限定されない。例えば、アンダーコート膜91は、2層あるいは3層以上積層された積層膜であってもよい。
【0029】
トランジスタTrは、基板21の上に設けられる。半導体層61は、アンダーコート膜91の上に設けられる。ゲート絶縁膜92は、半導体層61を覆ってアンダーコート膜91の上に設けられる。ゲート絶縁膜92は、例えばシリコン酸化膜等の無機絶縁膜である。ゲート電極64は、ゲート絶縁膜92の上に設けられる。
【0030】
図3に示す例では、トランジスタTrは、トップゲート構造である。ただし、これに限定されず、トランジスタTrは、ボトムゲート構造でもよく、半導体層61の上側及び下側の両方にゲート電極64が設けられたデュアルゲート構造でもよい。
【0031】
層間絶縁膜93は、ゲート電極64を覆ってゲート絶縁膜92の上に設けられる。層間絶縁膜93は、例えば、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜との積層構造を有する。ソース電極62及びドレイン電極63は、層間絶縁膜93の上に設けられる。ソース電極62は、ゲート絶縁膜92及び層間絶縁膜93に設けられたコンタクトホールを介して、半導体層61のソース領域に接続される。ドレイン電極63は、ゲート絶縁膜92及び層間絶縁膜93に設けられたコンタクトホールを介して、半導体層61のドレイン領域に接続される。重畳絶縁膜94は、ソース電極62及びドレイン電極63を覆って層間絶縁膜93の上に設けられる。
【0032】
平坦化膜23は、回路形成層22のトランジスタTr及び各種配線を覆って回路形成層22の重畳絶縁膜94の上に設けられる。平坦化膜23は、感光性アクリル等の有機絶縁材料が用いられる。
【0033】
バンク24は、基板21の上側で平坦化膜23の上に設けられる。バンク24は、傾斜部24aと、平坦部24bとを有する凸状である。バンク24は、有機絶縁材料が用いられる。
【0034】
図4は、図3における1つの発光素子を拡大して示す断面図である。図3及び図4に示すように、発光素子3は、画素電極32と、下部バッファ層37と、発光層31と、上部バッファ層38と、対向電極33と、を含む。発光素子3は、画素電極32の上に、下部バッファ層37、発光層31、上部バッファ層38及び対向電極33の順に積層される。なお、図3では図面を見やすくするために下部バッファ層37及び上部バッファ層38を省略して示している。
【0035】
本実施形態の発光素子3(画素電極32、下部バッファ層37、発光層31、上部バッファ層38及び対向電極33)はトップエミッション型の発光素子として構成される。すなわち、発光層31で生成された光は、対向電極33を透過して上側(対向基板29側)に出射される。また、画素電極32は反射電極として構成され、発光層31で生成された光の一部は、下部バッファ層37を透過して画素電極32側に進行し、画素電極32で上側(対向基板29側)に反射される。
【0036】
画素電極32は、平坦化膜23の上に設けられる。画素電極32は、平坦化膜23を貫通するコンタクトホールCH(図3参照)を介してトランジスタTrのドレイン電極63と接続される。画素電極32は、発光素子3の陽極(アノード)であり、金属材料で形成される。あるいは、画素電極32は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)等の透光性を有する導電材料と、光反射性を有する金属材料とが積層された構成であってもよい。
【0037】
上述したように、バンク24は、複数の画素電極32の中央部と重なる領域に開口が設けられる。下部バッファ層37、上部バッファ層38及び対向電極33(図3では下部バッファ層37及び上部バッファ層38は不図示)は、複数の画素電極32及びバンク24を覆って連続して設けられる。
【0038】
図4に示すように、下部バッファ層37は、第1正孔輸送層34、第2正孔輸送層35及び第3正孔輸送層36を含む。下部バッファ層37は、画素電極32の上に、第1正孔輸送層34、第2正孔輸送層35及び第3正孔輸送層36の順に積層される。
【0039】
第1正孔輸送層34、第2正孔輸送層35及び第3正孔輸送層36は、画素電極32(アノード)からの正孔を発光層31に輸送する。第1正孔輸送層34、第2正孔輸送層35及び第3正孔輸送層36の材料は、上部バッファ層38よりも正孔移動度が高い有機材料で形成される。
【0040】
発光層31は、有機EL(Electroluminescent)層で形成される。発光層31は、下部バッファ層37の上に設けられ、画素電極32と重なる領域及びバンク24と重なる領域に亘って設けられる。また、発光層31は、副画素SPXごとに選択的に形成される。
【0041】
上部バッファ層38は、発光層31の上に設けられ、画素電極32と重なる領域及びバンク24と重なる領域に亘って設けられる。上部バッファ層38は、電子輸送層である。なお、上部バッファ層38は単層に限定されず、電子注入層等を含み、2層あるいは3層以上の積層構造としてもよい。
【0042】
対向電極33は、上部バッファ層38の上に設けられる。対向電極33は、複数の副画素SPXの発光層31を覆って、表示領域AA(図1参照)に亘って設けられる。本実施形態の表示装置1では、トップエミッション構造としているため、対向電極33は透光性を有する必要がある。対向電極33は、半透過性を有する金属膜(例えば、MgAg)が用いられ、発光層31からの出射光が透過する程度の薄膜として形成される。本実施形態では、画素電極32が陽極(アノード)となり、対向電極33が陰極(カソード)となる。なお、対向電極33は、半透過性を有する金属膜に限定されず、ITO等の透光性を有する導電材料であってもよい。
【0043】
対向電極33は、表示領域AA上と、表示領域AA近傍に設けられた陰極コンタクト部(図示しない)に亘って形成され、陰極コンタクト部で回路形成層22の導電層と接続される。
【0044】
図3に戻って、封止膜26は、複数の発光素子3を覆って対向電極33の上に設けられる。封止膜26はシリコン窒化膜や酸化アルミニウム膜などの無機膜、あるいはアクリルなどの樹脂膜が用いられる。封止膜26は、単層に限定されず、上記の無機膜及び樹脂膜を組み合わせた2層以上の積層膜であってもよい。封止膜26により発光素子3は良好に封止され、上面側からの水分の侵入を抑制することができる。
【0045】
フィルタ層28は封止膜26の上に接着層27により接着される。フィルタ層28は、隣接する副画素SPXの間に設けられた遮光層28aと、副画素SPXごとに異なる色に着色されたカラーフィルタ28bとを含む。カラーフィルタ28bは、発光素子3のそれぞれに重なって設けられる。カラーフィルタ28bは、発光素子3のそれぞれから出射される光の色と同色に着色された着色層を有して構成される。隣接する発光素子3B、3G(副画素SPX-G、SPX-B)で、発光素子3Bに重なるカラーフィルタ28bの周縁部と、発光素子3Gに重なるカラーフィルタ28bの周縁部とは第1方向Dxで接している。ただしこれに限定されず、隣接するカラーフィルタ28bの周縁部どうしは、第3方向Dzで重なって設けられていてもよい。
【0046】
遮光層28aは、隣接する副画素SPXの間に設けられ、第3方向Dzでカラーフィルタ28bと対向基板29との間に積層される。遮光層28aは、ブラックマトリクスとも呼ばれる。より具体的には、遮光層28aは、隣接するカラーフィルタ28bの境界と重なって設けられる。さらに、遮光層28aは、バンク24の平坦部24bと重なる領域に設けられ、バンク24の一部(傾斜部24a)及び画素電極32と重なる領域には開口が設けられる。
【0047】
対向基板29は、フィルタ層28を覆って設けられる。対向基板29は、ガラス基板、又は樹脂基板で形成されたカバーパネルである。
【0048】
次に、図4に示す下部バッファ層37について詳細に説明する。本実施形態では、第2正孔輸送層35の屈折率は、第1正孔輸送層34の屈折率よりも高く、かつ、第3正孔輸送層36の屈折率よりも高い。第2正孔輸送層35は、屈折率の高い有機材料で形成された高屈折率層であり、第1正孔輸送層34及び第3正孔輸送層36は、第2正孔輸送層35に比べて屈折率の低い有機材料で形成された低屈折率層である。すなわち、下部バッファ層37は、画素電極32の上に、低屈折率層(第1正孔輸送層34)、高屈折率層(第2正孔輸送層35)、低屈折率層(第3正孔輸送層36)の順に積層される。
【0049】
第1正孔輸送層34の屈折率は、第3正孔輸送層36の屈折率と同じであってもよいし、異なっていてもよい。本実施形態では、第1正孔輸送層34の材料は、p型ドーパントを添加した有機材料が用いられ、正孔注入層及び正孔輸送層を兼ねる。正孔注入層は、画素電極32(アノード)からの正孔の注入効率が高い材料で形成される。p型ドーパントの添加量は、例えばp型ドーパントを除いた第1正孔輸送層34の有機材料に対して、0.1wt%以上0.5wt%以下程度である。なお、第3正孔輸送層36の材料は、p型ドーパントが添加されない有機材料が用いられる。
【0050】
発光層31の発光波長をλとしたときに、下部バッファ層37の合計の膜厚は3λ/4である。第1正孔輸送層34の膜厚d1、第2正孔輸送層35の膜厚d2及び第3正孔輸送層36の膜厚d3は、それぞれλ/4である。正孔注入層及び正孔輸送層を兼ねる第1正孔輸送層34の膜厚d1は、第2正孔輸送層35の膜厚d2及び第3正孔輸送層36の膜厚d3と実質的に等しい。
【0051】
このような構成により、発光層31から出射された光(発光波長λ)のうち、画素電極32側に向かう光は、第1正孔輸送層34、第2正孔輸送層35及び第3正孔輸送層36の各層間で反射及び透過を繰り返しつつ画素電極32側に進行し、画素電極32で反射される。第1正孔輸送層34、第2正孔輸送層35及び第3正孔輸送層36の屈折率及び膜厚は上述した関係を有するので、各層間で反射された光は互いに強め合い対向電極33側に進行する。
【0052】
具体的には、画素電極32と第1正孔輸送層34との界面で反射した光と、第1正孔輸送層34と第2正孔輸送層35との界面で反射した光とは、互いに強め合う。第1正孔輸送層34と第2正孔輸送層35との界面で反射した光と、第2正孔輸送層35と第3正孔輸送層36との界面で反射した光とは、互いに強め合う。また、第2正孔輸送層35と第3正孔輸送層36との界面で反射した光と、第3正孔輸送層36と発光層31との界面で反射した光とは、互いに強め合う。
【0053】
これにより、本実施形態の表示装置1は、所定の発光波長λで、発光素子3からの光の取り出し効率を向上させることができる。この結果、本実施形態の表示装置1は、実質的な発光効率を向上させることができる。また、第1正孔輸送層34、第2正孔輸送層35及び第3正孔輸送層36は、発光波長λの光を強め合うように構成されているので、色純度を高めることができる。
【0054】
第1正孔輸送層34、第2正孔輸送層35及び第3正孔輸送層36の膜厚は、発光素子3R、3G、3Bのそれぞれの発光波長λごとに異なる。本実施形態では、上述したように、第1正孔輸送層34は正孔注入層及び正孔輸送層を兼ねている。このため、第1正孔輸送層34、第2正孔輸送層35及び第3正孔輸送層36とは別に正孔注入層39(図7参照)を追加形成した場合に比べて、発光素子3R、3G、3Bごとに膜厚を変更する層数を少なくすることができ、生産負荷を抑制することができる。
【0055】
第1正孔輸送層34、第2正孔輸送層35及び第3正孔輸送層36は、蒸着により成膜される。より詳細には、第1正孔輸送層34の有機材料及びp型ドーパントは、共蒸着により成膜される。これにより、例えばスパッタ法により成膜した場合に比べて、第1正孔輸送層34、第2正孔輸送層35及び第3正孔輸送層36の膜厚ばらつきを小さくすることができる。この結果、表示装置1は、光学特性(色度、発光効率)のばらつきを抑制することができる。
【0056】
(実施例)
図5は、実施例及び比較例に係る発光素子のBIと色度との関係を示すグラフである。図6は、実施例に係る発光素子の、第1正孔輸送層、第2正孔輸送層及び第3正孔輸送層の屈折率を示す表である。図5のグラフにおいて、横軸はCIExy色度図における色度座標yを示し、縦軸はブルーインデックス(以下、BI(Blue Index)と表す)を示す。BI(=電流効率(cd/A)÷色度(CIE-y))は青色の発光特性を表す指標の1つである。青色発光は、CIE-yが小さいほど色純度が高くなる傾向で、色純度の高い青色発光は低い輝度でも広範囲の青色の表現が可能である。色純度の高い青色発光を用いることで、青色を表現するために必要な輝度が低下するため、消費電力の低減効果が得られる。そのため、BIが高いほどディスプレイに用いられる青色発光デバイスとしての効率が良好である。
【0057】
図5に示す実施例1、2、3は、それぞれ、第1正孔輸送層34、第2正孔輸送層35及び第3正孔輸送層36の屈折率を異ならせた場合の、発光素子3のBIのシミュレーション結果を示す。また、図5に示す比較例に係る発光素子は、正孔輸送層として単層の低屈折率層(屈折率1.2以上1.75以下、膜厚3λ/4)を有する発光素子である。
【0058】
図6の表に示すように、実施例1、2、3のいずれにおいても、第2正孔輸送層35の屈折率は、第1正孔輸送層34の屈折率よりも高く、かつ、第3正孔輸送層36の屈折率よりも高い。具体的には、実施例1において第1正孔輸送層34及び第3正孔輸送層36の屈折率は1.2であり、第2正孔輸送層35の屈折率は1.85である。実施例2において第1正孔輸送層34及び第3正孔輸送層36の屈折率は1.75であり、第2正孔輸送層35の屈折率は2.4である。実施例3において第1正孔輸送層34及び第3正孔輸送層36の屈折率は1.2であり、第2正孔輸送層35の屈折率は2.4である。
【0059】
また、実施例1、2、3のいずれにおいても、第1正孔輸送層34の膜厚d1、第2正孔輸送層35の膜厚d2及び第3正孔輸送層36の膜厚d3は、それぞれλ/4(λ=460nm)である。
【0060】
図5に示すように、実施例1、2に係る発光素子は、グラフに示す色度の範囲において比較例に比べて高いBIを示す。また、実施例3に係る発光素子は、少なくとも色度0.038以上の範囲において比較例に比べて高いBIを示す。また、最大BIで比較すると、比較例、実施例2、実施例1、実施例3の順に最大BIが大きくなる。
【0061】
以上の結果から、第2正孔輸送層35の屈折率を第1正孔輸送層34の屈折率よりも高く、かつ、第3正孔輸送層36の屈折率よりも高くすることで、発光素子3の光の取り出し効率を向上させることができることが示された。より好ましくは、第1正孔輸送層34及び第3正孔輸送層36の屈折率は、1.2以上1.75以下である。また、第2正孔輸送層35の屈折率は、1.85以上2.4以下である。この屈折率範囲であれば、より効果的に光の取り出し効率を向上させることができる。
【0062】
(変形例)
図7は、変形例に係る発光素子を模式的に示す断面図である。なお、以下の説明では、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0063】
図7に示すように、変形例に係る表示装置1Aは、上述した実施形態に比べて正孔注入層39を有する構成が異なる。正孔注入層39は、第3方向Dzで、画素電極32と第1正孔輸送層34との間に設けられる。正孔注入層39は、下部バッファ層37Aの第1正孔輸送層34、第2正孔輸送層35及び第3正孔輸送層36に比べて、画素電極32(アノード)からの正孔の注入効率が高い材料で形成される。また、本変形例では、第1正孔輸送層34は、p型ドーパントを含まず正孔注入層39の機能を兼用しない有機材料で形成される。
【0064】
本変形例においても、第2正孔輸送層35の屈折率は、第1正孔輸送層34の屈折率よりも高く、かつ、第3正孔輸送層36の屈折率よりも高い。すなわち、第1正孔輸送層34及び第3正孔輸送層36は低屈折率層として形成され、第2正孔輸送層35は高屈折率層として形成される。
【0065】
また、下部バッファ層37と正孔注入層39の合計の膜厚は3λ/4である。すなわち、第1正孔輸送層34と正孔注入層39との合計の膜厚d1aは、λ/4である。また、第2正孔輸送層35の膜厚d2及び第3正孔輸送層36の膜厚d3は、それぞれλ/4である。
【0066】
本変形例では、上述した実施形態と同様に、発光素子3の発光効率を向上させることができる。ただし、本変形例では発光素子3R、3G、3Bのそれぞれの発光色ごと(発光波長λごと)に、第1正孔輸送層34、第2正孔輸送層35、第3正孔輸送層36及び正孔注入層39の膜厚を調整する必要がある。
【0067】
なお、上述した実施形態及び変形例では、下部バッファ層37の各層は正孔輸送層であり、上部バッファ層38は電子輸送層である。ただし、これに限定されず、発光素子3が逆積層構造を有している場合には、下部バッファ層37の各層は電子輸送層であり、上部バッファ層38は正孔輸送層であってもよい。この場合、画素電極32が陰極(カソード)であり、対向電極33が陽極(アノード)である。
【0068】
以上、本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明はこのような実施の形態に限定されるものではない。実施の形態で開示された内容はあくまで一例にすぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で行われた適宜の変更についても、当然に本発明の技術的範囲に属する。上述した各実施形態及び各変形例の要旨を逸脱しない範囲で、構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。
【符号の説明】
【0069】
1、1A 表示装置
2 アレイ基板
3、3R、3G、3B 発光素子
21 基板
24 バンク
29 対向基板
31 発光層
32 画素電極
33 対向電極
34 第1正孔輸送層
35 第2正孔輸送層
36 第3正孔輸送層
37、37A 下部バッファ層
38 上部バッファ層
39 正孔注入層
AA 表示領域
GA 周辺領域
OP 開口
PX 画素
SPX、SPX-R、SPX-G、SPX-B 副画素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7