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特開2024-106770排水ソケット及びそれを備えた水洗大便器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106770
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】排水ソケット及びそれを備えた水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   F16L 21/00 20060101AFI20240801BHJP
   E03C 1/12 20060101ALI20240801BHJP
   E03D 1/24 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
F16L21/00 C
E03C1/12 E
E03D1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011203
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100224672
【弁理士】
【氏名又は名称】深田 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】岡部 大輝
(72)【発明者】
【氏名】戸次 允
(72)【発明者】
【氏名】小林 祥子
(72)【発明者】
【氏名】黄 翔輝
【テーマコード(参考)】
2D039
2D061
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC02
2D039AC03
2D039CB02
2D061AA03
2D061AB10
2D061AC03
2D061DE01
(57)【要約】
【課題】本発明は、便器本体のトラップ排水路の出口端が排水管よりも高い場合でも接続可能であると共に、異物の詰まりを防止することができる排水ソケット及びそれを備えた水洗大便器を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明は、壁面Wに設けられる排水管Dと、この排水管Dよりも高い位置に設けられる便器本体2のトラップ排水路6の出口端6eとを接続する排水ソケット20であって、便器本体2のトラップ排水路6の出口端6eに接続される流入口部22と、排水管Dの上流端に接続される流出口部24と、流入口部22と流出口部24とを接続し、便器本体2から排水管Dへ汚物等を排出するための排水流路26と、を有し、排水流路26には、上方領域に流路を拡大するための流路拡大部36が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に設けられる排水管と、この排水管よりも高い位置に設けられる便器本体のトラップ排水路の出口端とを接続する排水ソケットであって、
上記便器本体のトラップ排水路の出口端に接続される流入口部と、
上記排水管の上流端に接続される流出口部と、
上記流入口部と上記流出口部とを接続し、上記便器本体から上記排水管へ汚物等を排出するための排水流路と、を有し、
上記排水流路には、上方領域に流路を拡大するための流路拡大部が形成されていることを特徴とする排水ソケット。
【請求項2】
上記流路拡大部が設けられている部分において、上記排水流路の鉛直断面の断面積は、上記トラップ排水路の出口端の流路断面の断面積よりも大きくなっている、請求項1に記載の排水ソケット。
【請求項3】
上記流路拡大部は、上記排水流路の上方領域の全域に形成されている、請求項2に記載の排水ソケット。
【請求項4】
上記流路拡大部は、後方に延びる上面と、この上面から下方に延びる側面と、を備えている、請求項3に記載の排水ソケット。
【請求項5】
上記排水流路は、湾曲する湾曲底面を有している、請求項4に記載の排水ソケット。
【請求項6】
上記湾曲底面は、ほぼ同一の曲率半径の円弧を描くように湾曲している、請求項5に記載の排水ソケット。
【請求項7】
上記排水流路と上記流出口部とが接続する下側の接続点は、上記排水流路と上記流出口部とが接続する上側の接続点よりも上流側に位置している、請求項6に記載の排水ソケット。
【請求項8】
上記湾曲底面は、後方から流出口部の開口を見た場合、湾曲底面の全域が視認可能な位置に配置されている、請求項7に記載の排水ソケット。
【請求項9】
請求項1~8に記載の何れか1項に記載の排水ソケットを有し、
上記トラップ排水路の下流側は、後方に向けて下方へ傾斜していることを特徴とする水洗大便器。
【請求項10】
上記トラップ排水路の下流側は、上記トラップ排水路の中心軸を延長した延長線が上記排水ソケットと交わることなく上記流出口部の開口に向けて延びるように構成されている、請求項9に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水ソケット及びそれを備えた水洗大便器に係り、特に、壁面に設けられる排水管と、この排水管よりも高い位置に設けられる便器本体のトラップ排水路の出口端とを接続する排水ソケット及びそれを備えた水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トイレ空間の壁面には下水配管に排出するための排水管が設けられ、この排水管に排水ソケットによって水洗大便器が接続されている。排水管の高さ位置は施工現場毎に異なり、トラップ排水路の出口端の高さ位置が排水管の高さ位置よりも高い場合がある。この場合に対応するために、接続口の高さ位置を調整することができる排水ソケットが知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的に、特許文献1の排水ソケットは、便器に接続される第1ソケット管路と、排水管に接続される第2ソケット管路とを備え、第1ソケット管路が第2ソケット管路内に突出し、第2ソケット管路又は第1ソケット管路の長さを調整することによって、排水管よりもトラップ排水路の出口端が高い場合でも接続可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-068533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の排水ソケットは、第1ソケット管路が第2ソケット管路内に突出しているので、排水ソケット内の流路が狭くなっている。このため、使用者がライター等の異物を誤って流すと排水ソケット内で異物が詰まる恐れがある。
【0005】
一方、水洗大便器と排水管とを蛇腹ホースにより接続することによって、流路を狭くせずに一定の流路断面を確保しながら、排水管よりも高い位置にあるトラップ排水路の出口端に接続することが考えられる。しかしながら、蛇腹ホースは、その内面に凹凸が形成されているため、この凹凸部分に異物が詰まる恐れがある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、便器本体のトラップ排水路の出口端が排水管よりも高い場合でも接続可能であると共に、異物の詰まりを防止することができる排水ソケット及びそれを備えた水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、壁面に設けられる排水管と、この排水管よりも高い位置に設けられる便器本体のトラップ排水路の出口端とを接続する排水ソケットであって、便器本体のトラップ排水路の出口端に接続される流入口部と、排水管の上流端に接続される流出口部と、流入口部と流出口部とを接続し、便器本体から排水管へ汚物等を排出するための排水流路と、を有し、排水流路には、上方領域に流路を拡大するための流路拡大部が形成されていることを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明においては、排水流路には、上方領域に流路を拡大するための流路拡大部が形成されているので、トラップ排水路の出口端が排水管よりも高い場合でも接続可能であると共に、異物の詰まりを防止することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、流路拡大部が設けられている部分において、排水流路の鉛直断面の断面積は、トラップ排水路の出口端の流路断面の断面積よりも大きくなっている。このように構成された本発明においては、流路拡大部が設けられている部分において、排水流路の鉛直断面の断面積は、トラップ排水路の出口端の流路断面の断面積よりも大きくなっているので、異物の詰まりをより防止することができる。
【0010】
また、本発明において、好ましくは、流路拡大部は、排水流路の上方領域の全域に形成されている。このように構成された本発明においては、流路拡大部は、排水流路の上方領域の全域に形成されているので、異物の詰まりをより防止することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、流路拡大部は、後方に延びる上面と、この上面から下方に延びる側面と、を備えている。このように構成された本発明においては、流路拡大部は、後方に延びる上面と、この上面から下方に延びる側面と、を備えているので、流路拡大部に流れ込んだ異物を側面に衝突させて下方へ導くことができるため異物の詰まりをより防止することができる。
【0012】
また、本発明においては、排水流路は、湾曲する湾曲底面を有している。このように構成された本発明においては、排水流路は、湾曲する湾曲底面を有しているので、異物を滑らかに下流側へ流すことができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、湾曲底面は、ほぼ同一の曲率半径の円弧を描くように湾曲している。このように構成された本発明においては、湾曲底面は、ほぼ同一の曲率半径の円弧を描くように湾曲しているので、異物を湾曲底面に沿って滑らかに下流側へ流すことができる。
【0014】
また、本発明において、好ましくは、排水流路と流出口部とが接続する下側の接続点は、排水流路と流出口部とが接続する上側の接続点よりも上流側に位置している。このように構成された本発明においては、排水流路の流路断面を狭くすることなく湾曲底面を形成することができる。その結果、異物の詰まりをより防止することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、湾曲底面は、後方から流出口部の開口を見た場合、湾曲底面の全域が視認可能な位置に配置されている。このように構成された本発明においては、湾曲底面は、後方から流出口部の開口を見た場合、湾曲底面の全域が視認可能な位置に配置されているので、異物を湾曲底面で受けた後に流出口部に向けて流すことができる。
【0016】
また、本発明において、好ましくは、水洗大便器は、上述した排水ソケットを有し、トラップ排水路の下流側は、後方に向けて下方へ傾斜している。このように構成された本発明においては、水洗大便器は、上述した排水ソケットを有し、トラップ排水路の下流側が後方に向けて下方へ傾斜しているので、水洗大便器から異物を滑らかに排出することができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、トラップ排水路の下流側は、トラップ排水路の中心軸を延長した延長線が排水ソケットと交わることなく流出口部の開口に向けて延びるように構成されている。このように構成された本発明においては、トラップ排水路は、トラップ排水路の中心軸を延長した延長線が排水ソケットと交わることなく流出口部の開口に向けて延びるように構成されているので、水洗大便器から排出された異物を排水管に向けて流すことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の排水ソケット及びそれを備えた水洗大便器によれば、便器本体のトラップ排水路の出口端が排水管よりも高い場合でも接続可能であると共に、異物の詰まりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態による水洗大便器の斜視図である。
図2図1のII-II線に沿って見た側方断面図である。
図3図2の排水ソケットを含む部分を拡大した部分拡大断面図である。
図4A図3のA-A線に沿って見た断面図である。
図4B図3のB-B線に沿って見た断面図である。
図4C図3のC-C線に沿って見た断面図である。
図4D図3のD-D線に沿って見た断面図である。
図4E図3のE-E線に沿って見た断面図である。
図4F図3のF-F線に沿って見た断面図である。
図5A図3のG-G線に沿って見た断面図である。
図5B図3のH-H線に沿って見た断面図である。
図5C図3のI-I線に沿って見た断面図である。
図5D図3のJ-J線に沿って見た断面図である。
図6】本発明の実施形態による水洗大便器の排水ソケットを後方から見た背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態(以下、本実施形態)による排水ソケット及びそれを備えた水洗大便器を説明する。
まず、図1及び図2により、本実施形態による水洗大便器1を説明する。図1は本実施形態による水洗大便器1の斜視図であり、図2図1のII-II線に沿って見た側方断面図である。
【0021】
図1に示すように、水洗大便器1は、ボウル部内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す洗い落し式便器である。水洗大便器1は、陶器製の便器本体2と、この便器本体2を洗浄する洗浄水を貯水する貯水タンク(図示せず)と、便器本体2と壁面Wに設けられた排水管Dとを接続する排水ソケット20とを備えている。また、便器本体2には、汚物を受けるボウル形状のボウル部4と、このボウル部4の下方から後方に向けて延びるトラップ排水路6とが形成されている。
なお、本実施形態においては、洗い落とし式便器について説明するが、これに限定されるものではなく、本発明の水洗大便器には、サイホン作用により汚物を排出するサイホン式便器が含まれる。
【0022】
ここで、本明細書において、使用者が水洗大便器1を前方から見て、水洗大便器1の手前を前方、奥側を後方、右側を右方、左側を左方、として説明する。
【0023】
図2に示すように、ボウル部4は、ボウル形状の汚物受け面4aと、汚物受け面4aの上方に形成されて外部に露出した内周面を有するリム部4bと、汚物受け面4aの下方に形成されその内部に溜水面WFを形成するツボ部4cと、を備えている。
【0024】
ボウル部4のリム部4bには、リム吐水口4dが形成されており、洗浄水をこのリム吐水口4dからリム部4bの内周面に沿って前方に吐水するようになっている。リム吐水口4dから吐水された洗浄水は、汚物受け面4aを旋回する旋回流を形成し、ツボ部4cに流れ込むようになっている。
【0025】
図2に示すように、トラップ排水路6は、ボウル部4のツボ部4cの下方に形成された入口部6aと、この入口部6aから後方に向けて上方に延びる上昇管路6bと、この上昇管路6bの頂点6cから後方に向けて下方に延びる下降管路6dと、この下降管路6dの下流端である出口端6eと、を備えている。出口端6eは、後方斜め下方に開口し、排水ソケット20が接続されるようになっている。出口端6eは、内径d1の流路を有している(図3を参照)。トラップ排水路6の出口端6eは、床から約170mmの高さ位置に設けられ、排水管Dよりも大幅に高い位置(床から上方へ約120mmの高さ位置に設けられた排水管Dから約50mm上方の位置)に設けられている。
【0026】
図2に示すように、壁面Wには、汚物等をトイレ空間外に排出するための排水管Dが設けられている。排水管Dは、その上流端が水平方向に前方へ向けて開口しており、上流端から管路が後方に向けて水平方向に延びている。排水管Dに流入した汚物等は建物側の下水配管(図示せず)に排出されるようになっている。排水管Dは、床から上方へ約120mmの高さ位置に設けられ、トラップ排水路6の出口端6eよりも大幅に低い位置に設けられている。
【0027】
図1及び図2に示すように、排水ソケット20は、前方斜め上方に開口して便器本体2のトラップ排水路6の出口端6eに接続される流入口部22と、水平方向に後方へ向けて開口して排水管Dの上流端に接続される流出口部24と、流入口部22と流出口部24とを接続し、便器本体2から流入した汚物等を排水管Dへ排出するための排水流路26と、を備えている。排水ソケット20は、塩化ビニール等のプラスチック材料で構成される。
【0028】
次に、図1図6により、本実施形態による水洗大便器1の排水ソケット20を詳細に説明する。図3は、図2の排水ソケット20を含む部分を拡大した部分拡大断面図であり、図4A図4Fは、それぞれ、図3のA-A線~F-F線に沿って見た断面図であり、図5A図5Dは、それぞれ、図3のG-G線~J-J線に沿って見た断面図であり、図6は、本実施形態による水洗大便器1の排水ソケット20を後方から見た背面図である。なお、図3において、トラップ排水路6の下降管路6dの中心軸を延長した延長線をXで表している。
【0029】
排水ソケット20の流入口部22は、中空の円筒状により形成されている。排水ソケット20の流入口部22の内径は、トラップ排水路6の出口端6eの外径とほぼ同一の大きさに設定されている。排水ソケット20の流入口部22の内側にはゴムパッキン30が設けられ、排水ソケット20の流入口部22がゴムパッキン30を介してトラップ排水路6の出口端6eに接続されている。また、排水ソケット20の流入口部22は、トラップ排水路6の下降管路6dと同軸方向に、後方に向けて下方に傾斜して延びている。
【0030】
排水ソケット20の流出口部24は、中空の円筒状により形成されている。流水ソケットの流出口部24の外径は、排水管Dの内径とほぼ同一の大きさに設定されている。排水ソケット20の流出口部24の外側にはゴムパッキン32が設けられ、排水ソケット20の流出口部24がゴムパッキン32を介して排水管Dの上流端に接続されている。流出口部24は、排水管Dと同軸方向に、後方に向けて水平方向に延びている。
【0031】
図2及び図3に示すように、排水ソケット20の流入口部22及び流出口部24は、高さ位置が異なるように設定され、流出口部24の高さ位置が流入口部22の高さ位置よりも低い位置に設定されている。また、排水ソケット20の流入口部22及び流出口部24は、互いの開口が上下方向において半分以上重なるようになっている。
【0032】
図3及び図4に示すように、排水ソケット20の排水流路26には、流路を上方且つ後方に拡大する流路拡大部36が設けられている。この流路拡大部36は、その内部に流路と連通して上方且つ後方に拡大する拡大空間36aを形成している(図3及び図4に二点鎖線により囲まれた空間)。
【0033】
流路拡大部36は、排水流路26の上方領域の全域に設けられている。また、流路拡大部36は、トラップ排水路6の出口端6eの開口と対向する位置に設けられ、出口端6eの高さ位置とほぼ同一の高さ位置に設けられている。すなわち、トラップ排水路6の出口端6e近傍に流路拡大部36が設けられているため、トラップ排水路6の出口端6eから排出された異物を直ぐに流路拡大部36に流し込むことができるようになっている。
【0034】
流路拡大部36は、後方に向けて下方に延びる上面36bと、この上面36bからほぼ鉛直下方に延びる側面36cを備えている。流路拡大部36の上面36bは、下方に向けて凹状に形成されている。流路拡大部36の上面36bは、排水ソケット20の流入口部22の上面を延長するように後方且つ下方に延びている。流路拡大部36の側面36cは、平面状に形成されている。流路拡大部36の側面36cは、鉛直方向に対して約10°の傾斜角度で後方に向けて下方に延びている。上面36b及び側面36cは、全体としてドーム状の流路拡大部36を構成している。
【0035】
図4A図4Eに示すように、流路拡大部36が設けられている部分において、排水流路26の鉛直断面(図4B図4E)の断面積は、トラップ排水路6の出口端6eの流路断面(図4A)の断面積よりも大きく形成されている。また、排水流路26の鉛直断面(図4B図4E)の断面積は、排水ソケット20の流出口部24の流路断面(図4F)よりも大きく形成されている。これらにより、排水流路26が屈曲する部分の流路断面積が大きくなっているので、異物が詰まらないようになっている。
【0036】
図4A図4Eに示すように、流路拡大部36が設けられている部分において、排水流路26の鉛直断面(図4B図4E)における上下方向の長さ(h1~h4)は、トラップ排水路6の出口端6eの流路断面(図4A)の内径d1よりも大きく形成されている。また、排水流路26の鉛直断面(図4B図4E)における上下方向の長さ(h1~h4)は、排水ソケット20の流出口部24の流路断面(図4F)の内径d2よりも大きく形成されている。これにより、排水流路26の流路断面が左右方向ではなく上下方向に拡大しているので、便器本体のトラップ排水路の出口端よりも低い排水管に接続することができると共に、異物の詰まりを防止することができるようになっている。
【0037】
図3に示すように、排水ソケット20をトラップ排水路6の出口端6eに取り付けた状態において、トラップ排水路6の下降管路6dの中心軸を延長した延長線Xは、排水ソケット20と交わることなく、排水ソケット20の流出口部24の開口に向けて延びている。例えば、下降管路6dは、延長線Xが排水ソケット20の上面36bや側面36cと交わることなく流出口部24の開口に向けて延びるように形成されている。これにより、トラップ排水路6の出口端6eから排出された異物を流出口部24に向けて導くことができるようになっている。
【0038】
図3及び図5A図5Dに示すように、排水ソケット20の排水流路26には、その底面に滑らかに湾曲する湾曲底面38が設けられている。湾曲底面38は、排水流路26と流出口部24とが接続する上側の接続点A1(排水流路26と流出口部24との上側の境界)を中心とし、ほぼ同一の曲率半径d3の円弧を描くように湾曲している。これにより、異物を湾曲底面38により受けて、湾曲底面38に沿って滑らかに下流側へ流すことができるようになっている。
【0039】
図3に示すように、排水流路26と流出口部24とが接続する接続点(排水流路26と流出口部24との境界)において、下側の接続点A2は上側の接続点A1よりも上流側(前方側)に位置している。これにより、下側の接続点A2が上側の接続点A1よりも下流側(後方側)に位置している場合と比べて、排水流路26の流路断面を狭くすることなく湾曲底面38を形成することができるようになっている。
【0040】
図6に示すように、後方から流出口部24の開口を見た場合(流出口部24の開口から覗いた場合)、湾曲底面38の全域を視認することができるようになっている。これにより、異物を湾曲底面38で受けた後に流出口部24に向けて流すことができるようになっている。
【0041】
以下、上述した本実施形態による排水ソケット20及びそれを備えた水洗大便器1の作用効果を説明する。
先ず、本実施形態による排水ソケット20においては、排水流路26には、上方領域に流路を拡大するための流路拡大部36が形成されているので、異物の詰まりを防止することができる。また、本実施形態による排水ソケット20においては、トラップ排水路6の出口端6eが排水管Dよりも高い場合、例えば、床から約120mmの高さ位置に設けられた排水管Dに対して、トラップ排水路6の出口端6eが排水管Dの約50mm上方の位置に設けられている場合でも接続することができるようになっている。
【0042】
また、本実施形態による排水ソケット20においては、流路拡大部36が設けられている部分において、排水流路26の鉛直断面(図4B図4E)の断面積は、トラップ排水路6の出口端6eの流路断面の断面積(図4A)よりも大きくなっているので、異物の詰まりをより防止することができる。
【0043】
本実施形態による排水ソケット20においては、流路拡大部36は、排水流路26の上方領域の全域に形成されているので、異物の詰まりをより防止することができる。
【0044】
また、本実施形態による排水ソケット20においては、流路拡大部36は、後方に延びる上面36bと、この上面36bから下方に延びる側面36cと、を備えているので、流路拡大部36に流れ込んだ異物を側面36cに衝突させて下方へ導くことができるため異物の詰まりをより防止することができる。
【0045】
本実施形態による排水ソケット20においては、排水流路26は、湾曲する湾曲底面38を有しているので、異物を滑らかに下流側へ流すことができる。
【0046】
また、本実施形態による排水ソケット20においては、湾曲底面38は、ほぼ同一の曲率半径d3の円弧を描くように湾曲しているので、異物を湾曲底面に沿って滑らかに下流側へ流すことができる。
【0047】
本実施形態による排水ソケット20においては、排水流路26と流出口部24とが接続する下側の接続点A2は、排水流路26と流出口部24とが接続する上側の接続点A1よりも上流側に位置しているので、排水流路26の流路断面を狭くすることなく湾曲底面38を形成することができる。その結果、異物の詰まりをより防止することができる。
【0048】
また、本実施形態による排水ソケット20においては、湾曲底面38は、後方から流出口部24の開口を見た場合、湾曲底面38の全域が視認可能な位置に配置されているので、異物を湾曲底面38で受けた後に流出口部24に向けて流すことができる。
【0049】
本実施形態による水洗大便器1においては、上述した排水ソケット20を有し、トラップ排水路6の下流側が後方に向けて下方へ傾斜しているので、水洗大便器1から異物を滑らかに排出することができる。
【0050】
また、本実施形態による水洗大便器1においては、トラップ排水路6の下流側は、トラップ排水路6の下降管路6dの中心軸を延長した延長線Xが排水ソケット20と交わることなく流出口部24の開口に向けて延びるように構成されているので、水洗大便器1から排出された異物を排水管に向けて流すことができる。
【0051】
本発明の上述した実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【0052】
1 水洗大便器
2 便器本体
6 トラップ排水路
6e 出口端
20 排水ソケット
22 流入口部
24 流出口部
26 排水流路
36 流路拡大部
36b 上面
36c 側面
38 湾曲底面
A1 上側の接続点
A2 下側の接続点
D 排水管
W 壁面
X 延長線
d3 曲率半径
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図5D
図6