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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106775
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】自動分析装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20240801BHJP
   G01N 35/04 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
G01N35/10 C
G01N35/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011210
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【弁理士】
【氏名又は名称】柳本 陽征
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲史
(72)【発明者】
【氏名】村田 達也
(72)【発明者】
【氏名】生田目 富夫
(72)【発明者】
【氏名】山崎 健司
(72)【発明者】
【氏名】村松 友美
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CB15
2G058CD21
2G058CF01
2G058CF17
2G058EA02
2G058EA04
2G058EA07
2G058ED03
2G058ED15
2G058ED22
2G058ED38
2G058GB03
2G058GB05
2G058GB06
2G058GC05
2G058GD05
2G058GD06
2G058GE03
(57)【要約】
【課題】自動分析装置において、正確で高速化可能なサンプリングアームの降下動作を実現すること。
【解決手段】実施形態に係る自動分析装置は、試料が収容される試料容器を撮像する第1撮像部と、前記第1撮像部により撮像された前記試料容器の画像データに基づいて、前記試料容器に収容された試料の液面の高さを取得する液面取得部と、前記液面取得部が取得した前記液面の高さに基づいて、前記試料を吸引するサンプリングプローブを保持するサンプリングアームの降下動作に関するパラメータを決定し、決定されたパラメータに基づいて、前記サンプリングアームの降下動作を制御する吸引制御部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が収容される試料容器を撮像する第1撮像部と、
前記第1撮像部により撮像された前記試料容器の画像データに基づいて、前記試料容器に収容された試料の液面の高さを取得する液面取得部と、
前記液面取得部が取得した前記液面の高さに基づいて、前記試料を吸引するサンプリングプローブを保持するサンプリングアームの降下動作に関するパラメータを決定し、決定されたパラメータに基づいて、前記サンプリングアームの降下動作を制御する吸引制御部と、
を備える自動分析装置。
【請求項2】
前記液面取得部は、前記試料容器に収容された試料の種別と、前記試料の種別毎の液面の高さを取得し、
前記吸引制御部は、前記液面取得部が取得した前記試料の種別と、前記試料の種別毎の液面の高さに基づいて、前記降下動作に関するパラメータを決定する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記吸引制御部が決定する前記降下動作に関するパラメータには、前記サンプリングアームの降下量と、前記サンプリングアームの降下速度とが、少なくとも含まれている、請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記吸引制御部は、前記サンプリングプローブの先端部の位置が、前記試料容器に収容された試料の吸引位置となるように、前記降下動作に関するパラメータを決定する、請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記吸引制御部は、前記吸引位置が、前記試料容器に収容された試料の中央位置となるように、前記降下動作に関するパラメータを決定する、請求項4に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記吸引制御部は、前記サンプリングプローブが試料の吸引とともに降下するように、前記サンプリングアームを制御する、請求項5に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記第1撮像部は、前記試料容器が当該自動分析装置の制御下に入った後、サンプリングアームの降下動作に入るまでの間に、前記試料容器を撮像する、請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項8】
当該自動分析装置の外部に設けられた、前記試料容器を当該自動分析装置まで搬送する外部搬送装置に、当該自動分析装置は接続されており、
前記第1撮像部は、前記外部搬送装置で前記試料容器が搬送されている間に、前記試料容器を撮像する、請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記試料容器がラックに保持されてラックサンプラに格納されている、又は、前記試料容器がディスクサンプラに格納されている、請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項10】
前記試料容器は、少なくとも部分的に形成された透明部を有しており、前記第1撮像部により撮像された前記試料容器の画像データにおいては、前記試料容器に収容された試料の液面の高さが前記透明部を介して取得可能である、請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項11】
前記液面取得部は、前記試料容器の容器に関する情報を、前記画像データ以外から取得する、請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項12】
前記試料容器に収容された試料の検査依頼に関する情報と、前記画像データから得られた試料に関する情報とが一致しない場合に、警告を出力する第1警告部を、さらに備える請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項13】
前記試料容器に収容された試料の検査依頼に関する情報に基づき必要とされる試料の量よりも、前記試料容器に収容されている試料から吸引できる試料の量が少ない場合に、警告を出力する第2警告部を、さらに備える請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項14】
前記試料容器から試料を吸引した後に前記試料容器を撮像する第2撮像部と、
前記第2撮像部により撮像された前記試料容器の画像データと、前記第1撮像部により撮像された前記試料容器の画像データとに基づいて、吸引された試料の量である吸引量を算出し、この算出された試料の吸引量に基づいて、試料の吸引が正常に行われたか否かを判定する第1判定部と、
をさらに備える請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の自動分析装置。
【請求項15】
前記サンプリングプローブが試料を吸引する際に、前記サンプリングプローブの先端部と、この先端部の周囲で前記試料容器に収容された試料とを撮像する第3撮像部と、
前記第3撮像部により撮像された画像データに基づいて、前記サンプリングプローブが正常な位置に降下したか否かを判定する第2判定部と、
をさらに備える請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の自動分析装置。
【請求項16】
前記第2判定部において、前記サンプリングプローブが正常な位置に降下していないと判定した場合に、警告を出力する第3警告部を、さらに備える請求項15に記載の自動分析装置。
【請求項17】
前記第2判定部において、前記サンプリングプローブが正常な位置に降下していないと判定した場合に、前記第3撮像部により撮像された画像データを保存する、画像保存部を、さらに備える請求項15に記載の自動分析装置。
【請求項18】
前記第2判定部において、前記サンプリングプローブが正常な位置に降下していないと判定した場合に、前記第3撮像部により撮像された画像データを当該自動分析装置の外部に送信する、画像送信部を、さらに備える請求項15に記載の自動分析装置。
【請求項19】
前記サンプリングアームの降下動作により、前記サンプリングプローブが降下することにより、前記試料容器を封止する封止栓を前記サンプリングプローブが穿孔する、請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の自動分析装置。
【請求項20】
試料が収容される試料容器を撮像部で撮像する工程と、
撮像された前記試料容器の画像データに基づいて、前記試料容器に収容された試料の液面の高さを取得する工程と、
取得した前記液面の高さに基づいて、前記試料を吸引するサンプリングプローブを保持するサンプリングアームの降下動作に関するパラメータを決定し、決定されたパラメータに基づいて、前記サンプリングアームの降下動作を制御する工程と、
を備える自動分析装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、自動分析装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、分析対象の成分を含む患者の血液等の試料に種々の検査項目に対応する試薬を添加し、試料に含まれる特定の成分に試薬を反応させ、この反応を、例えば光学的に測定することで、検査項目に対応した試料の成分を分析する。
【0003】
このような自動分析装置においては、サンプリングプローブを保持するサンプリングアームが、試料容器の上方から降下して、試料容器に収容された試料を吸引する降下動作が行われる。このサンプリングアームの降下動作に際しては、静電容量を用いた液面検知により、サンプリングプローブが試料の液面を検知し、検知した位置から一定量降下した位置で降下動作を停止し、試料を吸引している。
【0004】
しかし、このような降下動作では、サンプリングプローブにより液面の検知を正確に行うために、サンプリングアームの降下速度が制限される。このため、サンプリングプローブによる液面の検知が、自動分析装置の高速化の妨げとなっている。また、サンプリングプローブが液面を検知してからサンプリングアームの降下動作を停止させるため、タイムラグが不可避的に発生し、このタイムラグの分だけ余分に試料の残量を必要としてしまう。試料が微量の場合、液面を検知したとしても、サンプリングプローブの先端部が試料容器の底面と衝突し、障害物検知センサが反応して、エラーとなってしまう。つまり、吸引可能な最小の試料の量が増大してしまう。
【0005】
さらに、HbA1cを測定するために血球を吸引する際には、血球の採取位置によりHbA1cの濃度が異なることから、上端及び下端のそれぞれ20%の高さ位置は避けて、中央位置の血球を吸引する必要がある。しかし、従来の自動分析装置においては、液面を検知した後、サンプリングアームは予め定められた降下量で降下していることから、血球を適切な位置で吸引しているとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-133925号公報
【特許文献2】特表2016-510418号公報
【特許文献3】特開2010-048593号公報
【特許文献4】特開2012-108062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の1つは、自動分析装置において、正確で高速化可能なサンプリングアームの降下動作を実現することである。但し、本明細書及び図面の開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る自動分析装置は、試料が収容される試料容器を撮像する第1撮像部と、前記第1撮像部により撮像された前記試料容器の画像データに基づいて、前記試料容器に収容された試料の液面の高さを取得する液面取得部と、前記液面取得部が取得した前記液面の高さに基づいて、前記試料を吸引するサンプリングプローブを保持するサンプリングアームの降下動作に関するパラメータを決定し、決定されたパラメータに基づいて、前記サンプリングアームの降下動作を制御する吸引制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る自動分析装置の機能構成を示したブロック図。
図2図1に示す自動分析装置における分析機構の構成の一例を示す図。
図3図1に示す自動分析装置で実行される降下動作制御処理の処理内容の一例を示す図。
図4】試料ラック上の試料容器とバーコード読み取り部と第1撮像部のレイアウトの一例を概念的に示す図。
図5】サンプリングアームの降下動作により、サンプリングプローブが試料容器の内部に降下する様子を説明する図。
図6】第2実施形態に係る自動分析装置において、HbA1cを測定する場合に、血漿と血球とが分離されている試料容器の内部の状態を示す図。
図7】第3実施形態に係る自動分析装置におけるラックサンプラのレイアウトの一例を示す図。
図8】第4実施形態に係る自動分析装置に外部搬送装置が接続された場合の構成の一例を説明するブロック図。
図9】第5実施形態に係る自動分析装置において、試料容器が格納されるディスクサンプラの構成の一例を説明する図。
図10】第6実施形態に係る自動分析装置において、全面が透明部で構成された試料容器の構成の一例を示す図。
図11】第6実施形態に係る自動分析装置において、一部が透明部で構成された試料容器の構成の一例を示す図
図12】第8実施形態に係る自動分析装置の機能構成を示したブロック図。
図13図12に示す自動分析装置で実行される降下動作制御処理の処理内容の一例を示す図。
図14】第9実施形態に係る自動分析装置の機能構成を示したブロック図。
図15図14に示す自動分析装置で実行される降下動作制御処理の処理内容の一例を示す図。
図16】第9実施形態に係る自動分析装置において、試料ラック上の試料容器とバーコード読み取り部と第1撮像部と第2撮像部のレイアウトの一例を概念的に示す図。
図17】第10実施形態に係る自動分析装置で実行される降下動作制御処理の処理内容の一例を示す図。
図18】第10実施形態に係る自動分析装置において、試料ラック上の試料容器とバーコード読み取り部と第1撮像部と第2撮像部と第3撮像部のレイアウトの一例を概念的に示す図。
図19】第11実施形態に係る自動分析装置の機能構成を示したブロック図。
図20図19に示す自動分析装置で実行される降下動作制御処理の処理内容の一例を示す図。
図21】第12実施形態に係る自動分析装置において、サンプリングプローブが試料容器の封止栓を穿孔する様子を模式的に説明する図。
図22】第12実施形態に係る自動分析装置において、試料容器の封止栓を穿孔したピアサ針の内側をサンプリングプローブが通過する様子を模式的に説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る自動分析装置及びその制御方法を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行うこととする。
【0011】
〔第1実施形態〕
図1は、本実施形態に係る自動分析装置1の機能構成の例を示すブロック図である。図1に示される自動分析装置1は、例えば、分析機構2と、解析回路3と、駆動機構4と、入力インターフェース5と、出力インターフェース6と、通信インターフェース7と、記憶回路8と、制御回路9とを備えて構成されている。
【0012】
自動分析装置1は、例えば、ラテックス凝集法を用いて試料等の濃度を測定する装置であり、試薬に添加する不溶性の担体としては、各種の担体粒子が利用可能である。担体粒子としては、例えば、ラテックス粒子、ポリスチレン、ポリスチレンラテックス、シリカ粒子等を用いることができる。無論、自動分析装置1において試料等の濃度を測定する手法は、これに限られるものではない。
【0013】
分析機構2は、標準試料、又は、検体試料等の試料に、この試料に設定される各検査項目で用いられる試薬を添加する。分析機構2は、試料に試薬を添加して得られる反応液を測定し、例えば、標準データ、及び、被検データを生成する。本実施形態においては、標準データは、含まれる検出対象の濃度が既知の標準試料についての吸光度の測定データを表す。また、被検データは、試料についての吸光度の測定データを表す。
【0014】
解析回路3は、分析機構2により生成される標準データ及び被検データを解析し、検量データ及び分析データ等を生成するプロセッサである。検量データは、例えば、標準データに基づいて生成された検量線に関する情報を含んでいる。また、分析データは、被検データを検量データに基づいて分析することで得られる、例えば、試料に含まれる検出対象の濃度に関する情報を含んでいる。
【0015】
解析回路3は、記憶回路8に記憶されている動作プログラムを実行し、この動作プログラムに対応する機能を実現することで、検量データ及び分析データ等を生成する。例えば、解析回路3は、1)吸光度が既知で濃度が0の標準試料と、濃度が既知である1又は複数の標準試料とについて得られた標準データと、2)これらの標準試料について予め設定された濃度と、3)予め設定された測光タイミング等に基づき、検量線を生成し、この検量線に関する情報を含む検量データを算出する。また、解析回路3は、被検データと、この被検データに対応する検査項目の検量線を含む検量データと、予め設定された測光タイミング等に基づき、分析データを生成する。解析回路3は生成した検量データ及び分析データ等を制御回路9へ出力する。
【0016】
駆動機構4は、制御回路9の制御に従い、分析機構2を駆動させる。例えば、駆動機構4は、ギア、ステッピングモータ、ベルトコンベア、及びリードスクリュー等により実現される。
【0017】
入力インターフェース5は、例えば、ユーザから又はネットワークNWを介して、測定を依頼された試料に係る各検査項目の分析パラメータ等の設定を受け付ける。入力インターフェース5は、例えば、マウス、キーボード、及び、操作面へ触れることで指示が入力されるタッチパッド等により実現される。入力インターフェース5は、制御回路9に接続され、ユーザから入力される操作指示を電気信号へ変換し、この電気信号を制御回路9へ出力する。なお、本実施形態においては、入力インターフェース5は、マウス、及びキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、自動分析装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路9へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース5の例に含まれる。
【0018】
出力インターフェース6は、制御回路9に接続され、制御回路9から供給される信号を出力する。出力インターフェース6は、例えば、表示回路、及び印刷回路等により実現される。表示回路には、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等が含まれる。なお、本実施形態においては、表示対象を表すデータをビデオ信号に変換し、ビデオ信号を外部へ出力する処理回路も表示回路に含まれる。印刷回路は、例えば、プリンタ等を含む。なお、本実施形態においては、印刷対象を表すデータを外部へ出力する出力回路も印刷回路に含まれる。
【0019】
通信インターフェース7は、例えば、ネットワークNWに接続されており、自動分析装置1をネットワークNWに接続する。ネットワークNWは、例えば、病院ネットワークである。また、ネットワークNWは、病院外の外部ネットワークであってもよい。通信インターフェース7が病院外のネットワークに接続されている場合には、自動分析装置1は、種々のデータやプログラムを、病院外のシステムと送受信することができる。
【0020】
本実施形態においては、例えば、通信インターフェース7は、ネットワークNWを介して病院内のHIS(Hospital Information System)とデータ通信を行う。なお、通信インターフェース7は、ネットワークNWと接続する検査部門システム(Laboratory Information System:LIS)を介してHISとデータ通信を行っても構わない。
【0021】
また、本実施形態においては、例えば、通信インターフェース7は、ネットワークNWを介して、外部のネットワークにも接続されている。このため、自動分析装置1は、通信インターフェース7を介して、外部にデータを送信することが可能であり、また、外部からデータを受信することも可能である。
【0022】
記憶回路8は、磁気的、若しくは、光学的記録媒体、又は、半導体メモリ等の、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体等により構成されている。なお、記憶回路8は、必ずしも単一の記憶装置により実現される必要は無い。例えば、記憶回路8は、複数の記憶装置により実現することもできる。
【0023】
また、記憶回路8は、解析回路3で実行される動作プログラム、及び、制御回路9で実行される動作プログラムを記憶している。記憶回路8は、分析機構2内に保持されている試薬に関する検量線に関する情報を記憶する。詳しくは後述するが、分析機構2で使用される試薬に関する検量線は、自動分析装置1にて生成され、検量データとして、記憶回路8に記憶される。また、記憶回路8に記憶される検量データには、例えば、試薬について予め設定された測光タイミングに関するデータも、検査項目毎に含まれている。
【0024】
測光タイミングは、検量線を含む検量データを生成する際に用いる吸光度等の情報を取得する時点を表す。すなわち、測光タイミングは、例えば、検出対象と結合する成分が固定化された不溶性担体である担体粒子が含まれる試薬を標準試料に添加してからの経過時間を表している。また、測光タイミングは、分析データを生成する際に用いる吸光度等の情報を取得する時点を表す。すなわち、測光タイミングは、例えば、不溶性担体の粒子が含まれる試薬を試料に添加してからの経過時間を表している。
【0025】
すなわち、記憶回路8は、解析回路3により生成される検量データを、検査項目毎に記憶する。また、記憶回路8は、解析回路3により生成される分析データを、試料毎に記憶する。
【0026】
制御回路9は、自動分析装置1の中枢として機能するプロセッサである。制御回路9は、記憶回路8に記憶されている動作プログラムを実行することで、この動作プログラムに対応する機能を実現する。なお、制御回路9は、記憶回路8で記憶されているデータの少なくとも一部を記憶する記憶領域を備えていてもよい。
【0027】
図2は、図1に示す分析機構2の構成の一例を示す模式図である。この図2に示すように、本実施形態に係る自動分析装置1の分析機構2は、反応ディスク201と、恒温部202と、ラックサンプラ203と、第1試薬庫204と、第2試薬庫205とを備えて構成されている。
【0028】
反応ディスク201は、反応容器2011を所定の経路に沿って搬送する。具体的には、反応ディスク201は、複数の反応容器2011を、環状に配列させて保持する。このため、反応ディスク201は、本実施形態における保持部を構成する。反応ディスク201は、駆動機構4により、既定の時間間隔で回動と停止とが交互に繰り返される。
【0029】
反応容器2011は、例えば、ガラスにより形成されている。反応容器2011は、四角柱状をなしており、上部に開口部を有している。四角柱を形成する第1乃至第4側壁のうち、第1側壁の外面からは、測光ユニット214に設けられる光源から照射される光が入射される。第1乃至第4側壁のうち、第1側壁と対向する第2側壁の外面からは、第1側壁の外面から入射された光が出射される。
【0030】
恒温部202は、所定の温度に設定された熱媒体を貯留する。恒温部202は、貯留する熱媒体に反応容器2011を浸漬させることで、反応容器2011に収容される反応液を所定の温度まで昇温し保温する。
【0031】
ラックサンプラ203は、測定を依頼された試料を収容する複数の試料容器2035を保持可能な試料ラック2031を、搬送可能に支持する。これら複数の試料容器2035には、測定を依頼された血液などの検体が収容されている。図2に示す例では、5本の試料容器2035を並列して保持可能な試料ラック2031が示されている。
【0032】
ラックサンプラ203には、試料ラック2031を搬送する搬送領域2032が設けられている。すなわち、この搬送領域2032を使用して、試料ラック2031が投入される投入位置から、測定が完了した試料ラック2031を回収する回収位置まで、試料ラック2031が搬送される。搬送領域2032では、長手方向に整列された複数の試料ラック2031が、駆動機構4により、方向D1へ移動される。
【0033】
また、ラックサンプラ203には、試料ラック2031で保持される試料容器2035を所定の試料吸引位置へ移動させるため、試料ラック2031を搬送領域2032から引き込む引き込み領域2033が設けられている。試料吸引位置は、例えば、サンプリングプローブ207の上下方向への移動軌道と、ラックサンプラ203で支持されて試料ラック2031で保持される試料容器2035の開口部の移動軌道とが交差する位置に設けられる。引き込み領域2033では、搬送されてきた試料ラック2031が、駆動機構4により、方向D2へ移動される。
【0034】
また、ラックサンプラ203には、試料が吸引された試料容器2035を保持する試料ラック2031を搬送領域2032へ戻すための戻し領域2034が設けられている。戻し領域2034では、試料ラック2031が、駆動機構4により、方向D3へ移動される。
【0035】
第1試薬庫204は、標準試料及び被検試料に含まれる所定の成分と反応する第1試薬を収容する試薬容器を複数保冷する。第1試薬は、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)等を含む緩衝液である。試薬容器には、試薬ラベルが貼付されている。試薬ラベルには、試薬情報を表す光学式マークが印刷されている。光学式マークには、例えば、1次元画素コード及び2次元画素コード等、任意の画素コードが用いられる。試薬情報は、試薬容器に収容される試薬に関する情報であり、例えば、試薬名、試薬メーカコード、試薬項目コード、ボトル種類、ボトルサイズ、容量、製造ロット番号、及び、有効期間等を含んでいる。
【0036】
また、第1試薬庫204は、標準試料を収容する標準試料容器を複数保冷する。複数の標準試料容器のそれぞれには、濃度が異なる同一の成分の標準試料が収容されている。なお、標準試料容器は、ラックサンプラ203により試料ラック2031で搬送されるようにしてもよい。
【0037】
第1試薬庫204内には、試薬ラック2041が回転自在に設けられている。試薬ラック2041は、複数の試薬容器及び複数の標準試料容器を、円環状に配列して保持する。試薬ラック2041は、駆動機構4により回動される。また、第1試薬庫204内には、試薬容器に貼付されている試薬ラベルから試薬情報を読み取るリーダ(図示せず)が設けられている。読み取られた試薬情報は、記憶回路8で記憶される。
【0038】
第1試薬庫204上の所定の位置には、第1試薬吸引位置が設定されている。第1試薬吸引位置は、例えば、第1試薬分注プローブ209の回動軌道と、試薬ラック2041に円環状に配列される試薬容器及び標準試料容器の開口部の移動軌道とが、交差する位置に設けられる。
【0039】
第2試薬庫205は、2試薬系の第1試薬と対をなす第2試薬を収容する試薬容器を複数保冷する。第2試薬は、試料に含まれる所定の抗原又は抗体と、特異的抗原抗体反応により結合又は乖離する抗原又は抗体が固定化された不溶性担体、例えば、担体粒子を含む溶液である。特異的反応により結合又は乖離するものとして酵素、基質、アプタマー、受容体であっても良い。第2試薬庫205内には、試薬ラック2051が回転自在に設けられている。
【0040】
試薬ラック2051は、複数の試薬容器を円環状に配列して保持する。なお、第2試薬庫205において、標準試料を収容する標準試料容器が保冷されていてもよい。試薬ラック2051は、駆動機構4により回動される。また、第2試薬庫205内には、試薬容器に貼付されている試薬ラベルから試薬情報を読み取るリーダ(図示せず)が設けられている。読み取られた試薬情報は、記憶回路8で記憶される。
【0041】
第2試薬庫205上の所定の位置には、第2試薬吸引位置が設定されている。第2試薬吸引位置は、例えば、第2試薬分注プローブ211の回動軌道と、試薬ラック2051に円環状に配列される試薬容器の開口部の移動軌道とが、交差する位置に設けられる。
【0042】
また、図2に示す自動分析装置1の分析機構2は、さらに、サンプリングアーム206と、サンプリングプローブ207と、第1試薬分注アーム208と、第1試薬分注プローブ209と、第2試薬分注アーム210と、第2試薬分注プローブ211と、第1攪拌装置212と、第2攪拌装置213と、測光ユニット214と、洗浄ユニット215とを備えて構成されている。
【0043】
サンプリングアーム206は、反応ディスク201とラックサンプラ203との間に設けられている。サンプリングアーム206は、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、かつ、水平方向に回動自在に設けられている。サンプリングアーム206は、一端にサンプリングプローブ207を保持する。
【0044】
サンプリングプローブ207は、サンプリングアーム206の回動に伴い、円弧状の回動軌道に沿って回動する。この回動軌道上には、ラックサンプラ203の試料吸引位置まで移動した試料容器2035の開口部が位置するようになっている。また、サンプリングプローブ207の回動軌道上には、サンプリングプローブ207が吸引した試料を反応容器2011へ吐出するためのサンプル吐出位置が設けられている。サンプル吐出位置は、サンプリングプローブ207の回動軌道と、反応ディスク201に保持されている反応容器2011の移動軌道とが、交差する位置に設けられる。
【0045】
サンプリングプローブ207は、駆動機構4によって駆動され、ラックサンプラ203の試料吸引位置に位置する試料容器2035の開口部の直上、又は、サンプル吐出位置において上下方向に移動する。また、サンプリングプローブ207は、制御回路9の制御に従い、直下に位置する試料容器2035から試料を吸引する。また、サンプリングプローブ207は、制御回路9の制御に従い、吸引した試料を、サンプル吐出位置の直下に位置する反応容器2011へ吐出する。このことから分かるように、サンプリングアーム206とサンプリングプローブ207とにより、本実施形態に係る試料分注装置が構成されている。
【0046】
第1試薬分注アーム208は、第1試薬庫204の外周近傍に設けられている。第1試薬分注アーム208は、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、かつ、水平方向に回動自在に設けられている。第1試薬分注アーム208は、一端に第1試薬分注プローブ209を保持している。
【0047】
第1試薬分注プローブ209は、第1試薬分注アーム208の回動に伴い、円弧状の回動軌道に沿って回動する。この回動軌道上には、第1試薬吸引位置が設けられている。また、第1試薬分注プローブ209の回動軌道上には、第1試薬分注プローブ209が吸引した第1試薬又は標準試料を反応容器2011へ吐出するための第1試薬吐出位置が設定されている。第1試薬吐出位置は、第1試薬分注プローブ209の回動軌道と、反応ディスク201に保持されている反応容器2011の移動軌道とが、交差する位置に設けられる。
【0048】
第1試薬分注プローブ209は、駆動機構4によって駆動され、回動軌道上の第1試薬吸引位置又は第1試薬吐出位置において上下方向に移動する。また、第1試薬分注プローブ209は、制御回路9の制御に従い、第1試薬吸引位置の直下に位置する試薬容器から第1試薬又は標準試料を吸引する。また、第1試薬分注プローブ209は、制御回路9の制御に従い、吸引した第1試薬又は標準試料を、第1試薬吐出位置の直下に位置する反応容器2011へ吐出する。このことから分かるように、第1試薬分注アーム208と第1試薬分注プローブ209とにより、本実施形態に係る第1試薬分注装置が構成されている。
【0049】
第2試薬分注アーム210は、第1試薬庫204の外周近傍に設けられている。第2試薬分注アーム210は、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、かつ、水平方向に回動自在に設けられている。第2試薬分注アーム210は、一端に第2試薬分注プローブ211を保持している。
【0050】
第2試薬分注プローブ211は、第2試薬分注アーム210の回動に伴い、円弧状の回動軌道に沿って回動する。この回動軌道上には、第2試薬吸引位置が設けられている。また、第2試薬分注プローブ211の回動軌道上には、第2試薬分注プローブ211が吸引した第2試薬を反応容器2011へ吐出するための第2試薬吐出位置が設定されている。第2試薬吐出位置は、第2試薬分注プローブ211の回動軌道と、反応ディスク201に保持されている反応容器2011の移動軌道とが、交差する位置に設けられる。
【0051】
第2試薬分注プローブ211は、駆動機構4によって駆動され、回動軌道上の第2試薬吸引位置、又は第2試薬吐出位置において上下方向に移動する。また、第2試薬分注プローブ211は、制御回路9の制御に従い、第2試薬吸引位置の直下に位置する試薬容器から第2試薬を吸引する。また、第2試薬分注プローブ211は、制御回路9の制御に従い、吸引した第2試薬を、第2試薬吐出位置の直下に位置する反応容器2011へ吐出する。このことから分かるように、第2試薬分注アーム210と第2試薬分注プローブ211とにより、本実施形態に係る第2試薬分注装置が構成されている。
【0052】
第1攪拌装置212は、反応ディスク201の外周近傍に設けられている。第1攪拌装置212は、第1攪拌アーム2121を有し、また、この第1攪拌アーム2121の先端に設けられる第1攪拌子を有する。第1攪拌装置212は、第1攪拌子により、反応ディスク201上の第1攪拌位置に位置する反応容器2011内に収容されている標準試料と第1試薬との混合液を攪拌する。また、第1攪拌装置212は、第1攪拌子により、反応ディスク201上の第1攪拌位置に位置する反応容器2011内に収容されている被検試料と第1試薬との混合液を攪拌する。
【0053】
第2攪拌装置213は、反応ディスク201の外周近傍に設けられている。第2攪拌装置213は、第2攪拌アーム2131を有し、また、この第2攪拌アーム2131の先端に設けられる第2攪拌子を有する。第2攪拌装置213は、第2攪拌子により、反応ディスク201上の第2攪拌位置に位置する反応容器2011内に収容されている標準試料、第1試薬、及び第2試薬の混合液を攪拌する。また、第2攪拌装置213は、第2攪拌子により、第2攪拌位置に位置する反応容器2011内に収容されている被検試料、第1試薬、及び第2試薬の混合液を攪拌する。
【0054】
測光ユニット214は、反応容器2011内に吐出された試料、第1試薬、及び第2試薬の反応液を光学的に測定する。測光ユニット214は、光源、及び、光検出器を有する。測光ユニット214は、制御回路9の制御に従い、光源から光を照射する。照射された光は、反応容器2011の第1側壁から入射され、第1側壁と対向する第2側壁から出射される。測光ユニット214は、反応容器2011から出射された光を、光検出器により検出する。
【0055】
具体的には、例えば、光検出器は、光源から反応容器2011に照射される光の光軸上の位置に配置されている。光検出器は、反応容器2011内の標準試料、第1試薬、及び第2試薬の反応液を透過した光を検出し、検出した光の強度に基づき、吸光度により表される標準データを生成する。また、光検出器は、反応容器2011内の被検試料、第1試薬、及び第2試薬の反応液を透過した光を検出し、検出した光の強度に基づき、吸光度により表される被検データを生成する。測光ユニット214は、生成した標準データ及び被検データを測定結果として解析回路3へ出力する。
【0056】
洗浄ユニット215は、測光ユニット214で反応液の測定が終了した反応容器2011の内部を洗浄する。
【0057】
再び図1に示すように、制御回路9は、記憶回路8に記憶されている動作プログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。例えば、制御回路9は、動作プログラムを実行することで、システム制御機能91、校正制御機能92、測定制御機能93、バーコード読み取り機能94、撮像機能95、液面取得機能96及び吸引制御機能97を実現する。なお、本実施形態では、単一のプロセッサによってシステム制御機能91、校正制御機能92、測定制御機能93、バーコード読み取り機能94、撮像機能95、液面取得機能96及び吸引制御機能97が実現される場合を説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて制御回路を構成し、各プロセッサが動作プログラムを実行することによりシステム制御機能91、校正制御機能92、測定制御機能93、バーコード読み取り機能94、撮像機能95、液面取得機能96及び吸引制御機能97を実現するようにしてもよい。
【0058】
システム制御機能91は、入力インターフェース5から入力される入力情報に基づき、自動分析装置1における各部を統括して制御する機能である。
【0059】
校正制御機能92は、標準データを生成するように、分析機構2及び駆動機構4を制御する機能である。具体的には、制御回路9は、所定のタイミングで校正制御機能92を実行する。所定のタイミングとは、例えば、初期設定時、装置起動時、メンテナンス時、及びユーザから校正動作開始の指示が入力された際等である。
【0060】
校正制御機能92を実行すると制御回路9は、分析機構2及び駆動機構4を制御する。分析機構2及び駆動機構4が制御されることで、分析機構2では、標準データが生成される。具体的には、例えば、駆動機構4により駆動されることで、分析機構2の第1試薬分注プローブ209は、標準試料を第1試薬庫204から吸引し、吸引した標準試料を反応容器2011へ吐出する。続いて、第1試薬分注プローブ209は、第1試薬を第1試薬庫204から吸引し、吸引した第1試薬を、標準試料が吐出された反応容器2011へ吐出する。続いて、第1攪拌装置212は、標準試料に第1試薬が添加された溶液を攪拌する。
【0061】
次に、第2試薬分注プローブ211は、第2試薬を第2試薬庫205から吸引し、吸引した第2試薬を、標準試料と第1試薬とが混合された混合液へ吐出する。続いて、第2攪拌装置213は、混合液に第2試薬が添加された溶液を攪拌する。測光ユニット214は、標準試料、第1試薬、及び第2試薬が攪拌されてなる反応液を光学的に測定することで、標準データを生成する。測光ユニット214は、生成した標準データを解析回路3へ出力する。測光ユニット214は、予め設定された周期で予め設定された回数、反応液の測定を繰り返し、生成した標準データを解析回路3へ出力する。分析機構2は、予め設定した複数の濃度の標準試料について上記動作を繰り返し、生成した標準データを解析回路3へ出力する。
【0062】
測定制御機能93は、被検データを生成するように、分析機構2及び駆動機構4を制御する機能である。具体的には、制御回路9は、所定の指示に応じて測定制御機能93を実行する。所定の指示とは、例えば、ユーザから入力される測定動作開始の指示、及び予め設定した時刻に到達したことを表す指示等である。
【0063】
測定制御機能93を実行すると制御回路9は、分析機構2及び駆動機構4を制御する。分析機構2及び駆動機構4が制御されることで、分析機構2では、被検データが生成される。具体的には、駆動機構4により駆動されることで、分析機構2のサンプリングプローブ207は、試料をラックサンプラ203にある試料容器2035から吸引し、吸引した試料を反応容器2011へ吐出する。続いて、第1試薬分注プローブ209は、第1試薬を第1試薬庫204から吸引し、吸引した第1試薬を、試料が吐出された反応容器2011へ吐出する。続いて、第1攪拌装置212は、試料に第1試薬が添加された溶液を攪拌する。
【0064】
次に、第2試薬分注プローブ211は、第2試薬を第2試薬庫205から吸引し、吸引した第2試薬を、試料と第1試薬とが混合された混合液へ吐出する。続いて、第2攪拌装置213は、混合液に第2試薬が添加された溶液を攪拌する。続いて、測光ユニット214は、試料、第1試薬、及び第2試薬が攪拌されてなる反応液を光学的に測定することで、被検データを生成する。測光ユニット214は、生成した被検データを解析回路3へ出力する。測光ユニット214は、予め設定された周期で予め設定された回数、反応液の測定を繰り返し、生成した被検データを解析回路3へ出力する。
【0065】
また、詳しくは後述するが、バーコード読み取り機能94は試料ラック2031及び/又は試料容器2035に貼付されたバーコードを読み取る機能であり、撮像機能95は試料が収容された試料容器2035を撮像する機能であり、液面取得機能96は撮像された試料容器2035の画像データに基づいて試料の液面を取得する機能であり、吸引制御機能97はサンプリングプローブ207による吸引動作を制御する機能である。
【0066】
また、図1に示される解析回路3は、記憶回路8に記憶されている動作プログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。例えば、解析回路3は、動作プログラムを実行することで、検量データ生成機能31及び分析データ生成機能32を実現する。なお、本実施形態では、単一のプロセッサによって検量データ生成機能31、及び分析データ生成機能32が実現される場合を説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて解析回路を構成し、各プロセッサが動作プログラムを実行することにより検量データ生成機能31、及び分析データ生成機能32を実現するようにしてもよい。
【0067】
検量データ生成機能31は、分析機構2で生成された標準データに基づいて検量データを生成する機能である。具体的には、解析回路3は、分析機構2で生成された標準データを受信すると、検量データ生成機能31を実行する。検量データ生成機能31を実行すると解析回路3は、異なる複数の濃度の標準試料に関する吸光度を含む測定データである標準データに基づいて、検量線を生成する。この生成された検量線は、検量データとして記憶回路8に記憶される。
【0068】
分析データ生成機能32は、分析機構2で生成された被検データを解析することで分析データを生成する機能である。具体的には、解析回路3は、分析機構2で生成された被検データを受信すると、分析データ生成機能32を実行する。分析データ生成機能32を実行すると解析回路3は、検量線に関する情報を含む検量データを記憶回路8から読み出す。解析回路3は、これら被検データ及び検量データに基づき、試料の検出対象の濃度に関する情報を含む分析データを生成する。
【0069】
次に、図3に基づいて、本実施形態に係る自動分析装置1で実行される、サンプリングプローブ207の降下動作制御処理について説明する。この図3は、本実施形態に係る自動分析装置1で実行される降下動作制御処理の内容を説明するフローチャートを示す図である。この降下動作制御処理は、制御回路9が記憶回路8に記憶されている降下動作制御処理プログラムを読み出して実行することにより実現される処理である。
【0070】
この降下動作制御処理が実行される前提として、本実施形態に係る自動分析装置1においては、ラックサンプラ203に、試料ラック2031に保持された試料容器2035が投入される。この試料容器2035のラックサンプラ203への投入は、ユーザが行うようにしてもよいし、機械装置が自動的に行うようにしてもよい。
【0071】
まず、図3に示すように、本実施形態に係る自動分析装置1が実行する降下動作制御処理においては、自動分析装置1は、バーコードの読み取りを行う(ステップS10)。具体的には、自動分析装置1の制御回路9におけるバーコード読み取り機能94が、試料容器2035や試料ラック2031に貼付されているバーコードの読み取りを行う。
【0072】
図4は、本実施形態において、バーコード読み取り部300及び第1撮像部301とともに、ラックサンプラ203上の試料ラック2031に5本の試料容器2035が保持されている状態を模式的に示す図である。この図4に示すように、本実施形態に係るラックサンプラ203には、バーコード読み取り部300が設けられている。このバーコード読み取り部300は、試料容器2035に貼付されているバーコードや、試料ラック2031に貼付されているバーコードを読み取ることが可能である。バーコード読み取り機能94は、このバーコード読み取り部300を用いてバーコードを読み取ることにより、必要に応じて、その試料容器2035の検査依頼の内容を取得することができ、また、検体の情報を取得することができる。
【0073】
次に、図3に示すように、本実施形態に係る自動分析装置1は、試料容器2035の撮像を行う(ステップS12)。具体的には、自動分析装置1の制御回路9における撮像機能95が試料容器2035の撮像を行う。この撮像により、自動分析装置1は、試料容器2035の画像データを取得することができる。
【0074】
図4に示すように、本実施形態に係るラックサンプラ203には、第1撮像部301が設けられている。この第1撮像部301は、試料ラック2031に保持されている試料容器2035を撮像することが可能であり、この撮像により試料容器2035に収容されている試料も撮像される。撮像機能95は、この第1撮像部301を用いて試料容器2035を撮像することにより、試料容器2035及びその試料容器2035に収容されている試料の画像データを取得する。
【0075】
この第1撮像部301による試料容器2035の撮像は、例えば、1つの試料ラック2031に対して1回行われる。この図4の例では、1回の撮像で5本の試料容器2035の撮像が行われる。但し、第1撮像部301による試料容器2035の撮像は、1本の試料容器2035に対して1回ずつ行われるようにしてもよい。この場合、図4の例では、1つの試料ラック2031に対して、第1撮像部301による5回の撮像が行われる。
【0076】
次に、図3に示すように、本実施形態に係る自動分析装置1は、第1撮像部301により撮像された試料容器2035の画像データに基づいて、試料容器2035に収容された試料の液面の高さを取得する(ステップS14)。具体的には、自動分析装置1の制御回路9における液面取得機能96が、試料容器2035の画像データに基づいて、試料容器2035に収容された試料の液面の高さを取得する。このステップS14を実行する液面取得機能96が、本実施形態における液面取得部を構成する。
【0077】
図4に示すように、本実施形態においては、自動分析装置1は、試料容器2035に収容された液面の高さを、画像データを解析することにより算出する。ここでは、例えば、試料ラック2031の底面を基準位置とし、この基準位置からの高さを、例えば、XXmmというように、試料の液面の高さを算出する。
【0078】
また、本実施形態においては、例えば、事前に遠心分離機を用いて、採取した血液が血漿と血球とに分離されている。すなわち、図4においては、試料の上層部が血漿310を示しており、試料の下層部が血球311を示している。このため、制御回路9の液面取得機能96は、取得した画像データに基づいて、試料容器2035に収容された試料の種別と、複数の試料の種別毎の液面の高さを取得する。
【0079】
この図4の例では、制御回路9の液面取得機能96は、基準位置である試料ラック2031の底面から血漿310の液面までの高さをXXmmとして算出し、基準位置である試料ラック2031の底面から血球311の液面までの高さをYYmmとして算出する。なお、試料の種別は、血漿310と血球311に限られるものではなく、検査する試料やその前処理の内容により種々のものが考えられる。例えば、試料の種別として、血漿310と血球311ではなく、血清と血餅に試料容器2035内で分離されていることもある。これらは、第1撮像部301により撮像された画像データの解析を、液面取得機能96が行うことにより、試料容器2035に収容された試料の種別を特定し、それぞれの種別の液面の高さを算出することができる。
【0080】
なお、上述したステップS12における第1撮像部301の撮像回数は1回に限られず、複数回撮像するようにしてもよい。例えば、複数の異なるタイミングで、あるいは、複数の異なる角度で、試料容器2035を撮像することにより、複数の画像データを取得しておくようにしてもよい。複数の画像データが取得されている場合は、液面取得機能96は、複数の画像データの解析を行い、より高い精度で試料容器2035に収容された試料の種別を特定し、より高い精度で液面の高さを取得することができる。
【0081】
次に、図3に示すように、本実施形態に係る自動分析装置1は、液面取得機能96が取得した液面の高さに基づいて、試料を吸引するサンプリングプローブ207を保持するサンプリングアーム206の降下動作に関するパラメータを決定する(ステップS16)。具体的には、自動分析装置1の制御回路9における吸引制御機能97が、この降下動作に関するパラメータを決定する。
【0082】
図4に示すように、本実施形態においては、制御回路9における吸引制御機能97は、試料容器2035に収容された試料の液面の高さXXmmに基づいて、サンプリングプローブ207の先端部の降下位置を特定する。この降下位置を特定することにより、サンプリングアーム206の降下量を特定することができる。また、制御回路9における吸引制御機能97は、この降下位置までの降下速度を特定する。ここで、降下速度のパラメータには、定速状態の速度だけでなく、サンプリングアーム206の降下開始時の加速度や降下停止時の減速度も、含まれるようにしてもよい。
【0083】
特に、本実施形態においては、予め、液面取得機能96が試料の種別と、試料の種別毎の液面の高さを取得している。このため、制御回路9における吸引制御機能97は、液面取得機能96が取得した試料の種別と、試料の種別毎の液面の高さに基づいて、降下動作に関するパラメータを決定する。例えば、図4の例において、血球311を吸引する必要があるときは、その液面の高さがYYmmであることから、制御回路9における吸引制御機能97は、サンプリングプローブ207の先端部が血球311の存在する位置となるように、サンプリングアーム206の降下量を決定する。
【0084】
なお、制御回路9における吸引制御機能97が決定する降下動作に関するパラメータは、サンプリングアーム206の降下量と、サンプリングアーム206の降下速度だけでなく、降下動作の開始タイミングや降下動作の際のモータ回転数など、降下動作に関する他の要素が含まれていてもよい。換言すれば、本実施形態に係る制御回路9における吸引制御機能97が決定する降下速度に関するパラメータには、サンプリングアーム206の降下量と、サンプリングアーム206の降下速度とが、少なくとも含まれていると表現することができる。
【0085】
次に、図3に示すように、本実施形態に係る自動分析装置1は、ステップS16で決定されたパラメータに基づいて、サンプリングアーム206の降下動作を制御して、サンプリングプローブ207を降下させる(ステップS18)。具体的には、自動分析装置1の制御回路9における吸引制御機能97が、ステップS16で決定されたパラメータに基づいて、サンプリングアーム206の降下動作を制御する。これらステップS16及びステップS18を実行する吸引制御機能97が、本実施形態における吸引制御部を構成する。
【0086】
図5は、サンプリングアーム206の降下動作によりサンプリングプローブ207が、試料容器2035の内部に降下する様子を説明する図である。この図5に示すように、サンプリングアーム206の降下動作により、サンプリングプローブ207が降下し、サンプリングプローブ207の先端部が試料容器2035に収容されている試料に浸漬する。例えば、血球311を吸引する必要のある検査の場合、サンプリングプローブ207の先端部が血球311まで到達するように、サンプリングアーム206の降下量がパラメータとして設定されている。このため、サンプリングプローブ207の先端部は、血漿310ではなく、血球311の位置まで降下することができる。
【0087】
次に、図3に示すように、本実施形態に係る自動分析装置1は、サンプリングアーム206の降下動作が停止した位置で、試料の吸引を行う(ステップS20)。具体的には、自動分析装置1の制御回路9における吸引制御機能97が、サンプリングアーム206に保持されたサンプリングプローブ207の先端部から、所定量の試料の吸引を行う。この試料の吸引動作により、本実施形態に係る降下動作制御処理が終了する。
【0088】
この降下動作制御処理が終了した後、本実施形態に係る自動分析装置1は、サンプリングアーム206を上昇させて、吸引した試料を反応容器2011に吐出し、上述した分析動作により試料の分析を行う。また、サンプリングプローブ207は洗浄された後、次の試料を吸引するための降下動作制御処理が実行される。
【0089】
以上のように、本実施形態に係る自動分析装置1によれば、第1撮像部301が試料の収容された試料容器2035の撮像を行い、この撮像により得られた画像データに基づいて、サンプリングアーム206の降下動作に関するパラメータを決定することとしたので、サンプリングプローブ207を適切な位置まで高速で降下させて、試料の吸引を行うことができる。このように高速でサンプリングプローブ207を降下させることができることから、自動分析装置1が所定時間内に行うことができる検査の回数を増加させることができ、この自動分析装置1の全体的なスループットの向上を図ることができる。
【0090】
すなわち、従来のように、降下途中のサンプリングプローブ207を用いて液面を検知する必要がなくなることから、正確で高速化可能なサンプリングアーム206の降下動作を実現することができる。さらには、サンプリングプローブ207が液面を検知して降下動作を停止するまでのタイムラグが発生しないことから、試料の残量が少ない場合でも、試料容器2035の底部にサンプリングプローブ207の先端部が衝突することなく、試料の吸引を行うことができる。
【0091】
しかも、本実施形態に係る自動分析装置1の制御回路9における液面取得機能96は、試料容器2035に収容された試料の種別毎に液面の高さを取得することとしたので、検査に必要となる種別の試料を、サンプリングプローブ207の先端部から的確に吸引できるように、サンプリングアーム206の降下量を制御することができる。このため、試料容器2035に収容された様々な種別の試料を、その分量に応じて吸引することができるようになる。
【0092】
〔第2実施形態〕
上述した第1実施形態においては、試料の種別毎の液面の高さを取得して、検査対象の試料の位置までサンプリングプローブ207の先端部を降下させるように制御したが、検査対象の試料によっては、検査対象の試料の吸引を行うべき位置である吸引位置となるように、サンプリングプローブ207の先端部を降下させるように制御する必要がある。この試料の吸引を行うべき吸引位置には、例えば試料の中央位置がある。この場合、試料の中央位置から試料が吸引されるように、サンプリングプローブ207の先端部を降下させるように制御する必要がある。第2実施形態に係る自動分析装置1においては、このような検査対象についても的確に吸引動作を行うことができるようにしている。以下、上述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0093】
本実施形態に係る自動分析装置1の構成や、この自動分析装置1で実行される降下動作制御処理の概略的な流れは、第1実施形態と同等である。但し、図3で示した降下動作制御処理におけるステップS16でパラメータを決定する処理が、上述した第1実施形態と異なる。
【0094】
図6は、HbA1cを測定する場合に、試料容器2035の内部で血漿310と血球311とが分離されている状態を示す図である。この図6に示すように、HbA1cを測定する場合、図6の血球311の中央位置2036から試料を吸引する必要がある。このため、図3のステップS14において、制御回路9における液面取得機能96が取得した血球311の液面の基準位置からの高さYYmmに基づいて、制御回路9における吸引制御機能97は、試料容器2035における血球311の区間を算出する。そして、血球311の区間の中央位置2036となるように、降下動作のパラメータを決定する。つまり、サンプリングプローブ207の先端部が、血球311の区間の中央位置2036となるように、サンプリングアーム206の降下量を決定する。
【0095】
そして、制御回路9における吸引制御機能97は、この決定されたパラメータに基づいて、ステップS18における降下動作の制御を行うことにより、サンプリングプローブ207の先端部を、目的の試料である血球311の区間の中央位置2036となるように、サンプリングアーム206の降下動作を制御することができる。
【0096】
さらには、本実施形態に係る制御回路9における吸引制御機能97おいては、図3に示す降下動作制御処理におけるステップS20で、試料の吸引に伴い試料が減ることを考慮して、サンプリングプローブ207が試料の吸引とともに降下するように、サンプリングアーム206を制御することもできる。例えば、ステップS20において、血球311の吸引を行うと、この吸引に伴い血球311の量は減少し、血球311の液面の高さも低くなる。つまり、血球311の区間が短くなる。このため、吸引制御機能97は、血球311の液面の高さが低くなっても、サンプリングプローブ207の先端部の位置が、血球311の区間の中央位置2036となるように、サンプリングアーム206を降下させる。このようにすることにより、常に血球311の区間の中央位置2036で、血球311を吸引することができるようになる。
【0097】
ここで、中央位置2036の定義は任意であるが、例えば、HbA1cを測定する場合、血球311の上端、つまり液面から20%と、血球311の下端、つまり試料容器2035の底部から20%を除いた区間を意味している。どのような区間を中央位置2036と定義するのかは、検査対象となる試料の種別に応じて、任意に定められる。
【0098】
以上のように、本実施形態に係る自動分析装置1によれば、第1撮像部301が試料の収容された試料容器2035を撮像することとしたので、撮像された画像データに基づいて、サンプリングアーム206を高速で降下できるだけでなく、試料の吸引を適切な中央位置2036で行えることから、HbA1cの測定精度を向上させることができる。
【0099】
〔第3実施形態〕
上述した各実施形態に係る自動分析装置1が備えるラックサンプラ203の形態には、様々ものが考えられる。どのようなラックサンプラ203の形態であっても、第1撮像部301は、試料容器2035が自動分析装置1の制御下に入った後、サンプリングアーム206の降下動作に入るまでの間に、試料容器2035を撮像し、画像データを生成すれば足りる。
【0100】
図7は、上述した各実施形態に係る自動分析装置1が備えるラックサンプラ203の1つの形態を、第3実施形態に係る自動分析装置1として模式的に示す図である。この図7に示すように、本実施形態に係るラックサンプラ203は、試料ラック2031を搬送する搬送装置320と、搬送装置320へ試料ラック2031を投入するラック投入装置321と、搬送装置320から試料ラック2031を回収するラック回収装置322とを備えて構成されている。
【0101】
ユーザは、ラック投入装置321から、試料ラック2031を搬送装置320に投入する。試料ラック2031の投入は、ラック投入装置321が機械的に行うようにしてもよいし、ユーザが作業としてラック投入装置321を用いて行うようにしてもよい。一方で、ユーザは、ラック回収装置322で、試料ラック2031を搬送装置320から回収する。試料ラック2031の回収は、ラック回収装置322が機械的に行うようにしてもよいし、ユーザが作業としてラック回収装置322を用いて行うようにしてもよい。
【0102】
搬送装置320では、ロボットアーム323が試料ラック2031を把持して、サンプリングプローブ207による試料吸引位置まで、試料ラック2031及びその試料ラック2031に保持されている試料容器2035を搬送する。ロボットアーム323の数は任意であり、1つのロボットアーム323により、ラック投入装置321で投入された試料容器2035を試料吸引位置まで搬送し、さらにサンプリング終了後に、ラック回収装置322まで搬送するようにしてもよい。あるいは、複数のロボットアーム323が連携して動作することにより、ラック投入装置321からラック回収装置322まで、試料ラック2031の搬送を行うようにしてもよい。
【0103】
このような構成のラックサンプラ203においては、例えば、第1撮像部301は、ラック投入装置321で試料ラック2031が投入された際に、試料容器2035の撮像を行うようにすることができる。また、第1撮像部301は、サンプリングプローブ207による試料の吸引が行われる試料吸引位置で試料容器2035の撮像を行うようにしてもよいし、あるいは、その試料吸引位置の手前で試料容器2035の撮像を行うようにしてもよい。
【0104】
また、ラック投入装置321から試料吸引位置まで、ロボットアーム323により搬送されている途中に、画像読み取り区間を設定し、第1撮像部301が、この画像読み取り区間で、試料容器2035を撮像するようにしてもよい。このように、第1撮像部301が試料容器2035の撮像を行う位置やタイミングは、試料容器2035が自動分析装置1の制御下に入った後、サンプリングアーム206の降下動作に入るまでの間で、任意に設定することが可能である。
【0105】
〔第4実施形態〕
上述した各実施形態に係る自動分析装置1は、この自動分析装置1の外部に設けられた外部搬送装置に接続することも可能である。図8は、外部搬送装置330に接続された自動分析装置1の構成を説明するブロック図である。換言すれば、図8は、自動分析装置1と、この自動分析装置1に接続された外部搬送装置330とにより構成された、自動分析システムを示している。
【0106】
この図8に示すように、自動分析装置1のラックサンプラ203は、外部搬送装置330に接続されている。外部搬送装置330は、試料容器2035を自動分析装置1のラックサンプラ203まで搬送する。ラックサンプラ203まで搬送された試料容器2035は、サンプリングプローブ207による試料吸引位置まで搬送され、上述した各実施形態と同様に、自動分析装置1において降下動作制御処理が実行される。
【0107】
このような構成の自動分析システムにおいては、第1撮像部301を、外部搬送装置330に設けることが可能である。そして、第1撮像部301は、外部搬送装置330で試料容器2035が搬送されている間に、試料容器2035を撮像する。
【0108】
外部搬送装置330において、試料容器2035が試料ラック2031に保持されて搬送されている場合には、上述した各実施形態と同様に、試料ラック2031の底面を基準位置として、制御回路9における液面取得機能96は試料の液面の高さを算出することができる。
【0109】
一方で、外部搬送装置330において、試料容器2035が試料ラック2031に保持されることなく、試料ラック2031単独で搬送されている場合には、制御回路9における液面取得機能96は、外部搬送装置330の搬送面を基準位置として、搬送面からの試料の液面の高さを算出すればよい。
【0110】
このように、上述した各実施形態に係る自動分析装置1に対して、外部搬送装置330を追加的に接続した場合でも、上述した図3の降下動作制御処理を自動分析装置1が実行することにより、従来のようなサンプリングプローブ207を用いた液面の検知が不要となり、正確で高速化可能なサンプリングアーム206の降下動作を実現することができる。
【0111】
〔第5実施形態〕
上述した各実施形態に係る自動分析装置1においては、試料容器2035は試料ラック2031に保持されて、ラックサンプラ203に格納される構成を採用していた。しかし、試料容器2035は、ラックサンプラ203ではなく、ディスクサンプラに格納されるように構成することも可能である。このようなディスクサンプラを備える自動分析装置1の構成を、第5実施形態として説明する。
【0112】
図9は、本実施形態に係る自動分析装置1が備えるディスクサンプラ340の構成を説明する図である。この図9に示すディスクサンプラ340は、自動分析装置1の内部に設けられており、円盤状のディスクの上に、試料容器2035を円周状に配置することが可能に構成されている。ユーザは、例えば、このディスクサンプラ340に、試料容器2035を入れることにより、自動分析装置1に試料容器2035をセットする。
【0113】
図9の例では、ディスクサンプラ340の外周位置に、バーコード読み取り部300と、第1撮像部301とが設けられている。上述したように、バーコード読み取り部300は、試料容器2035に貼付されたバーコードを読み取り、第1撮像部301は、試料容器2035の撮像を行う。なお、バーコード読み取り部300と第1撮像部301の配置は任意であり、バーコード読み取り部300は試料容器2035に貼付されたバーコードが読み取れる位置であれば、どの位置でも配置可能であり、第1撮像部301は試料容器2035と収容されている試料とが撮像できれば、どの位置でも配置可能である。
【0114】
試料を吸引するサンプリングプローブ207を保持するサンプリングアーム206は、ディスクサンプラ340に配置された試料容器2035に対して、上述した回動動作と上下動作を繰り返すことにより、試料容器2035に収容された試料を吸引して、反応容器2011に吐出する動作が実現される。
【0115】
このように、本実施形態に係る自動分析装置1のように、ディスクサンプラ340を備える構造においても、上述した図3の降下動作制御処理を自動分析装置1が実行することにより、従来のようなサンプリングプローブ207を用いた液面の検知が不要となり、正確で高速化可能なサンプリングアーム206の降下動作を実現することができる。
【0116】
〔第6実施形態〕
上述した各実施形態に係る自動分析装置1においては、第1撮像部301が試料容器2035を撮像することにより、その試料容器2035に収容された試料の液面の高さを取得するようにしている。このため、試料容器2035は、収容されている試料の液面が撮像した画像データに含まれるように、少なくとも部分的に透明部が形成されていなければならない。つまり、試料容器2035に形成された透明部を介して試料を観察できるようにすることで、試料の種別や試料の液面の高さを画像解析により取得できるようになる。
【0117】
図10は、試料容器2035の全面が透明部350で構成されている例を示している。このように試料容器2035の全面を透明部350で構成することにより、どのような角度からでも、第1撮像部301が試料容器2035を撮像することができるようになり、取得した画像データに基づいて、収容された試料の種別や、試料の種別毎の液面の高さを取得することができるようになる。
【0118】
図11は、試料容器2035の一部が透明部350で構成されている例を示している。このように試料容器2035の一部を透明部350で構成することにより、試料容器2035の強度を向上させることができる。つまり、透明部350以外の部分を、剛性の高い材料で形成することにより、試料容器2035の全体的な強度を高めることができる。
【0119】
図10及び図11のいずれの例においても、撮像された試料容器2035の画像データを画像解析することにより、試料容器2035に収容されている試料の種別や、種別毎の液面の高さが、透明部350を介して取得可能である。換言すれば、透明部350は、画像データを画像解析することにより、試料の種別や試料の高さが取得可能な程度の透明度を有している。このため、試料容器2035は、微量な試料を収容するサンプルカップや、透明度の高いガラス瓶などにより構成することも可能である。
【0120】
〔第7実施形態〕
上述した各実施形態において、試料容器2035の容器に関する情報は、第1撮像部301が撮像した画像データにより取得するようにしてもよいし、バーコード読み取り部300が読み取ったバーコードの情報に基づいて取得するようにしてもよい。これは、試料ラック2031に関する情報についても同様である。自動分析装置1が、種々の手法で、試料容器2035の容器に関する情報や、使用されている試料ラック2031に関する情報を取得する例を、第7実施形態として説明する。
【0121】
試料容器2035の容器に関する情報や、使用されている試料ラック2031に関する情報を、第1撮像部301が撮像した画像データから取得する場合、画像データの画像解析をすることにより実現できる。例えば、制御回路9における液面取得機能96は、画像解析により、試料容器2035の大きさや形状を取得し、試料容器2035の種類を特定することができる。また、例えば、制御回路9における液面取得機能96は、画像解析により、試料ラック2031の構造や大きさを取得し、試料ラック2031の種類を特定することができる。
【0122】
一方で、試料容器2035の容器に関する情報や、使用されている試料ラック2031に関する情報を、第1撮像部301が撮像した画像データ以外から取得することも可能である。例えば、試料容器2035の容器に関する情報や、使用されている試料ラック2031に関する情報を、バーコード読み取り部300が読み取ったバーコードの情報から取得することも可能である。
【0123】
試料容器2035の容器に関する情報を、バーコード読み取り部300のバーコード読み取りで取得する場合には、試料容器2035を特定する情報に紐付けた容器に関する情報を、自動分析装置1が保持しておく必要がある。そして、制御回路9における液面取得機能96は、この保持している情報と、バーコード読み取り部300が読み取ったバーコードに基づく試料を特定する情報とに基づいて、試料容器2035の容器に関する情報を取得する。
【0124】
また、使用されている試料ラック2031に関する情報を、バーコード読み取り部300のバーコード読み取りで取得する場合には、試料ラック2031に貼付されたバーコードを読み取り、この読み取ったバーコードの情報に基づき、試料ラック2031に関する情報を取得する。例えば、試料ラック2031に貼付されたバーコードに、その種類や大きさに関する情報が含まれている場合には、制御回路9における液面取得機能96は、バーコード読み取りにより、これらの情報を取得することができる。
【0125】
試料ラック2031に貼付されたバーコードに、試料ラック2031を特定するユニークな識別情報が含まれている場合には、このユニークな識別情報と試料ラック2031に関する情報とを紐付けて、自動分析装置1が保持しておく。そして、バーコード読み取り部300が読み取ったユニークな識別情報に基づいて、制御回路9における液面取得機能96は、試料ラック2031に関する情報を取得する。
【0126】
さらには、試料容器2035の容器に関する情報や、試料ラック2031に関する情報は、バーコード読み取り部300や第1撮像部301を用いて取得するのではなく、自動分析装置1にユーザが予め設定入力するようにしてもよい。例えば、自動分析装置1で使用される、試料容器2035の容器が1種類であり、試料ラック2031も1種類であるような場合には、ユーザが、この種類に関する情報を自動分析装置1に設定入力することにより、自動分析装置1の分析動作が始まった後に、これらの情報を取得する必要はなくなる。
【0127】
〔第8実施形態〕
上述した各実施形態に係る自動分析装置1においては、第1撮像部301が撮像した画像データを解析することにより、試料容器2035に収容されている試料の種類を特定することも可能である。このため、第8実施形態に係る自動分析装置1は、検査依頼に関する情報と、画像データから得られた試料に関する情報とを比較して、両者が異なる場合に警告を出力するようにする。以下、上述した第1実施形態に本変形例を適用した場合を例に第8実施形態を説明するが、本変形例は他の実施形態にも同様に適用可能である。
【0128】
図12は、本実施形態に係る自動分析装置1の機能構成を説明するブロック図を示しており、上述した第1実施形態における図1に対応する図である。この図12に示すように、本実施形態に係る自動分析装置1においては、制御回路9が警告機能98を追加的に備えることにより構成されている。この警告機能98も、他の機能と同様に、記憶回路8に記憶されているプログラムを制御回路9が読み出して実行することにより実現される処理である。
【0129】
図13は、本実施形態に係る自動分析装置1で実行される降下動作制御処理の内容を説明するフローチャートを示す図であり、上述した第1実施形態における図3に対応する図である。この図13に示すように、本実施形態に係る降下動作制御処理は、ステップS14の液面の高さを取得するまでは、上述した第1実施形態と同様の処理である。
【0130】
このステップS14の後、自動分析装置1は、試料容器2035に収容された試料の検査依頼に関する情報を取得する(ステップS30)。具体的には、自動分析装置1の制御回路9における警告機能98が、例えば、記憶回路8に記憶されている試料の検査依頼に関する情報を取得する。この試料の検査依頼に関する情報には、少なくとも、検査をすべき試料の種別に関する情報と、検査に必要となる試料の量に関する情報とが含まれている。
【0131】
次に、自動分析装置1は、ステップS14で画像データから得られた試料に関する情報が、ステップS30で取得した検査依頼に関する情報と一致するか否かを判断する(ステップS32)。具体的には、自動分析装置1の制御回路9における警告機能98が、ステップS14で画像データから得られた試料に関する情報と、ステップS30で取得した検査依頼に関する情報とが一致するか否かを判断する。
【0132】
すなわち、ステップS14では、試料の種別毎の液面の高さを取得する際に、試料容器2035に収容されている試料の種別も特定している。例えば、制御回路9における液面取得機能96は、試料の色や濃淡に基づいて、試料の種別を特定することができる。また、試料の透明度に基づいて、試料が遠心分離機で分離されているか否かを特定することができる。このため、本実施形態においては、この試料に関する情報と、検査依頼で指定されている試料に関する情報を比較して、両者が一致するか否かを判断する。
【0133】
そして、ステップS14で画像データから得られた試料に関する情報が、ステップS30で取得した検査依頼に関する情報と一致しない場合(ステップS32:No)には、自動分析装置1は、警告を出力(ステップS34)して、この降下動作制御処理を終了する。すなわち、試料のサンプリングは行われない。具体的には、自動分析装置1の制御回路9における警告機能98が、ステップS14で画像データから得られた試料に関する情報が、ステップS30で取得した検査依頼に関する情報と一致しない旨の警告を出力する。
【0134】
例えば、このステップS34の警告は、出力インターフェース6として設けられた表示回路により表示されるようにしてもよいし、印刷回路により印刷されるようにしてもよい。これらステップS32及びステップS34を実行する警告機能98が、本実施形態における第1警告部を構成する。
【0135】
一方で、ステップS32において、ステップS14で画像データから得られた試料に関する情報が、ステップS30で取得した検査依頼に関する情報と一致する場合(ステップS32:Yes)には、自動分析装置1は、ステップS30で取得した検査依頼に関する情報に基づき必要とされる試料の量よりも、試料容器2035に収容されている試料から吸引できる試料の量が少ないか否かを判断する(ステップS36)。具体的には、自動分析装置1の制御回路9における警告機能98が、この判断を行う。
【0136】
すなわち、上述したステップS14で、制御回路9における液面取得機能96は、試料の種別毎の液面の高さを取得していることから、試料容器2035に残っている試料の種別毎の量を算出することができる。但し、試料容器2035に試料が残っていても、その全部をサンプリングプローブ207で吸引できる訳ではない。例えば、試料容器2035に残っている試料の量が少量であり、サンプリングプローブ207の先端部が降下動作により試料容器2035の底部に衝突する恐れがある場合には、試料容器2035に試料が残っていても吸引できない。
【0137】
そこで、制御回路9における警告機能98は、液面取得機能96が取得した試料の種別毎の液面の高さに基づいて、吸引できる試料の量を算出する。そして、制御回路9における警告機能98は、ステップS30で取得した検査依頼に関する情報に基づき必要とされる試料の量よりも、試料容器2035に収容されている試料から吸引できる試料の量が少ないか否かを判断する。
【0138】
検査依頼に関する情報に基づき必要とされる試料の量よりも、試料容器2035に収容されている試料から吸引できる試料の量が少ない場合(ステップS36:Yes)には、自動分析装置1は、警告を出力(ステップS34)して、この降下動作制御処理を終了する。具体的には、自動分析装置1の制御回路9における警告機能98が、試料が足らない旨の警告を出力する。
【0139】
上述したように、例えば、このステップS34の警告は、出力インターフェース6として設けられた表示回路により表示されるようにしてもよいし、印刷回路により印刷されるようにしてもよい。これらステップS34及びステップS36を実行する警告機能98が、本実施形態における第2警告部を構成する。
【0140】
一方で、ステップS36において、ステップS30で取得した検査依頼に関する情報に基づき必要とされる試料の量よりも、試料容器2035に収容されている試料から吸引できる試料の量が少なくはないと判断した場合(ステップS36:No)、つまり、試料が足りると判断した場合には、第1実施形態と同様に、パラメータを決定する処理(ステップS16)を実行する。これ以降の降下動作制御処理は、上述した第1実施形態と同様である。
【0141】
以上のように、本実施形態に係る自動分析装置1によれば、試料容器2035に収容された試料の検査依頼に関する情報と、画像データから得られた試料に関する情報とが一致しない場合や、検査依頼に関する情報に基づき必要とされる試料の量よりも、試料容器2035に収容されている試料から吸引できる試料の量が少ない場合には、警告をユーザに出力するようにした。このため、自動分析装置1にエラーが発生して停止してしまうことを未然に防ぐことができる。
【0142】
なお、本実施形態においては、自動分析装置1が、試料容器2035に収容された試料の検査依頼に関する情報と、画像データから得られた試料に関する情報とが一致しない場合に警告を発する第1警告部と、検査依頼に関する情報に基づき必要とされる試料の量よりも、試料容器2035に収容されている試料から吸引できる試料の量が少ない場合に警告を発する第2警告部の双方を備える例を説明したが、自動分析装置1は、これら第1警告部と第2警告部の一方を備えるようにしてもよい。換言すれば、自動分析装置1は、第1警告部と第2警告部のうちの少なくとも一方を備えて構成することができる。
【0143】
〔第9実施形態〕
試料容器2035が試料を吸引した後に試料容器2035を撮像し、試料を吸引する前の試料容器2035の画像データと、試料を吸引した後の試料容器2035の画像データとに基づいて、吸引された試料の吸引量を算出することができる。第9実施形態に係る自動分析装置1においては、この算出された試料の吸引量に基づいて、試料の吸引が正常に行われたか否かを判定するようにしている。以下、第8実施形態に本変形例を適用した場合を例に第9実施形態を説明するが、本変形例は他の実施形態にも同様に適用可能である。
【0144】
図14は、本実施形態に係る自動分析装置1の機能構成を説明するブロック図を示しており、上述した第8実施形態における図12に対応する図である。この図14に示すように、本実施形態に係る自動分析装置1においては、制御回路9が判定機能99を追加的に備えることにより構成されている。この判定機能99も、他の機能と同様に、記憶回路8に記憶されているプログラムを制御回路9が読み出して実行することにより実現される処理である。
【0145】
図15は、本実施形態に係る自動分析装置1で実行される降下動作制御処理の内容を説明するフローチャートを示す図であり、上述した第8実施形態における図13に対応する図である。この図15に示すように、本実施形態に係る降下動作制御処理は、ステップS20の吸引動作までは、上述した第8実施形態と同様の処理である。
【0146】
このステップS20の後、自動分析装置1は、再び試料容器2035の撮像を行う(ステップS40)。すなわち、試料容器2035から試料を吸引した後の試料容器2035の撮像を行う。
【0147】
図16は、試料を吸引した後の試料容器2035の撮像を行う第2撮像部360が追加的に設けられた自動分析装置1の構成を模式的に示す図である。この図16に示すように、第2撮像部360は、試料が吸引された後の試料容器2035の撮像を行う。第2撮像部360が設けられる位置は任意であるが、吸引された試料の吸引量を速やかに算出するためには、サンプリングプローブ207により吸引が行われる試料吸引位置近傍に設けられることが望ましい。
【0148】
また、第2撮像部360は、必ずしも、第1撮像部301と別個に設けられる必要はない。つまり、第1撮像部301が第2撮像部360を兼ねるように、自動分析装置1を構成することも可能である。
【0149】
次に、図15に示すように、自動分析装置1は、第2撮像部360により撮像された試料容器2035の画像データと、第1撮像部301により撮像された試料容器2035の画像データとに基づいて、吸引された試料の量である吸引量を算出し、この算出された試料の吸引量に基づいて、試料の吸引が正常に行われたか否かを判定する(ステップS42)。具体的には、自動分析装置1の制御回路9における判定機能99が、この算出処理と判定処理を行う。このステップS42における判定機能99が、本実施形態における第1判定部を構成する。
【0150】
すなわち、ステップS30で取得した検査依頼に関する情報には、検査をすべき試料の種別に関する情報と、検査に必要となる試料の量に関する情報とが、少なくとも含まれている。このため、第1撮像部301が撮像した試料の吸引前の画像データと、第2撮像部360が撮像した試料の吸引後の画像データとを比較することにより、ステップS20で吸引された試料の種別を特定し、その吸引量を算出することができる。
【0151】
このステップS42において、制御回路9における判定機能99は、その判定の結果、試料の吸引量が過小である又は過剰である場合には、その旨をユーザに通知する。また、吸引された試料の種別が、検査依頼に関する情報で特定される試料の種別と異なる場合には、その旨をユーザに通知する。これらの通知は、例えば、出力インターフェース6として設けられた表示回路により表示されるようにしてもよいし、印刷回路により印刷されるようにしてもよい。
【0152】
以上のように、本実施形態に係る自動分析装置1によれば、制御回路9に判定機能99を追加的に設けたので、自動分析装置1は、第2撮像部360により撮像された試料容器2035の画像データと、第1撮像部301により撮像された試料容器2035の画像データとに基づいて、吸引された試料の量である吸引量を算出し、この算出された試料の吸引量に基づいて、試料の吸引が正常に行われたか否かを判定することができる。
【0153】
そして、試料の吸引が正常に行われていない場合には、これをユーザに通知することにより、自動分析装置1において動作中にエラーが発生したり、低い精度の分析結果が出力されてしまうのを、未然に防ぐことができる。
【0154】
〔第10実施形態〕
上述した各実施形態に係る自動分析装置1においては、サンプリングプローブ207が試料を吸引する際に、サンプリングプローブ207の先端部と、この先端部の周囲で試料容器2035に収容された試料とを撮像することも可能である。第10実施形態に係る自動分析装置1においては、この撮像された画像データに基づいて、サンプリングプローブ207が正常な位置に降下したか否かを判定するようにしている。以下、第9実施形態に本変形例を適用した場合を例に第10実施形態を説明するが、本変形例は他の実施形態にも同様に適用可能である。
【0155】
図17は、本実施形態に係る自動分析装置1で実行される降下動作制御処理の内容を説明するフローチャートを示す図であり、上述した第9実施形態における図15に対応する図である。この図17に示すように、本実施形態に係る降下動作制御処理は、ステップS18の降下動作までは、上述した第9実施形態と同様の処理である。
【0156】
このステップS18の後、自動分析装置1は、試料容器2035の撮像を行う(ステップS50)。すなわち、サンプリングプローブ207が試料を吸引する際に、サンプリングプローブ207の先端部が到達した位置と、その周囲の試料の撮像を行う。
【0157】
図18は、試料を吸引する際の試料容器2035の撮像を行う第3撮像部370が追加的に設けられた自動分析装置1の構成を模式的に示す図である。この図18に示すように、第3撮像部370は、サンプリングプローブ207が降下した後の試料容器2035の撮像を行う。第3撮像部370が設けられる位置は任意であるが、サンプリングプローブ207の降下位置を特定するためには、サンプリングプローブ207により吸引が行われる試料吸引位置近傍に設けられる必要がある。
【0158】
また、第3撮像部370は、必ずしも、第1撮像部301や第2撮像部360と別個に設けられる必要はない。つまり、第1撮像部301が第3撮像部370を兼ねるように、自動分析装置1を構成することも可能であり、第2撮像部360が第3撮像部370を兼ねるように自動分析装置1を構成することも可能である。さらには、第1撮像部301と第2撮像部360と第3撮像部370とが、1つの撮像部となるように、自動分析装置1を構成することも可能である。
【0159】
次に、図17に示すように、第3撮像部370により撮像された画像データに基づいて、サンプリングプローブ207が正常な位置に降下したか否かを判定する(ステップS52)。具体的には、自動分析装置1の制御回路9における判定機能99が、この判定処理を行う。このステップS52における判定機能99が、本実施形態における第2判定部を構成する。
【0160】
すなわち、制御回路9における判定機能99が、ステップS50で取得した画像データの画像解析を行うことにより、ステップS18でサンプリングプローブ207の先端部が降下した位置を特定することができる。また、サンプリングプローブ207の先端部の周囲にある試料の種別も特定することができる。このため、サンプリングプローブ207が正常な位置に降下して、適正な試料を吸引したか否かを、制御回路9における判定機能99が判定をすることができる。このステップS52以降の処理は、上述した第9実施形態に係る降下動作制御処理と同様である。
【0161】
以上のように、本実施形態に係る自動分析装置1によれば、制御回路9における判定機能99を追加的に設けたので、自動分析装置1は、第3撮像部370により撮像された画像データに基づいて、サンプリングプローブ207の先端部が正常な位置に降下したか否かを判定することができる。
【0162】
〔第11実施形態〕
上述した第10実施形態に係る自動分析装置1においては、サンプリングプローブ207の降下動作が正常でなかった場合には、その旨をユーザに警告することも可能である。また、事後的な解析のために、第3撮像部370が撮像した画像データを保存したり、外部に送信したりすることも可能である。このような機能を備えた自動分析装置1を、第11実施形態として説明する。
【0163】
図19は、本実施形態に係る自動分析装置1の機能構成を説明するブロック図を示しており、上述した第10実施形態においても適用される図14に対応する図である。この図19に示すように、本実施形態に係る自動分析装置1においては、制御回路9が画像送信機能100を追加的に備えることにより構成されている。この画像送信機能100も、他の機能と同様に、記憶回路8に記憶されているプログラムを制御回路9が読み出して実行することにより実現される処理である。
【0164】
図20は、本実施形態に係る自動分析装置1で実行される降下動作制御処理の内容を説明するフローチャートを示す図であり、上述した第10実施形態における図17に対応する図である。この図20に示すように、本実施形態に係る降下動作制御処理は、ステップS52におけるサンプリングプローブ207の降下位置の判定までは、上述した第10実施形態と同様の処理である。
【0165】
このステップS52の後、自動分析装置1は、ステップS52の判定の結果、サンプリングプローブ207が正常な位置に降下したか否かを判断する(ステップS60)。具体的には、自動分析装置1の制御回路9における判定機能99が、この判断処理を行う。
【0166】
そして、サンプリングプローブ207が正常な位置に降下していないと判断した場合(ステップS60:No)には、自動分析装置1は、その旨の警告を出力する(ステップS62)。具体的には、自動分析装置1の制御回路9における警告機能98が、サンプリングプローブ207が正常な位置に降下していない旨の警告を出力する。
【0167】
例えば、このステップS62の警告は、出力インターフェース6として設けられた表示回路により表示されるようにしてもよいし、印刷回路により印刷されるようにしてもよい。これらステップS62を実行する警告機能98が、本実施形態における第3警告部を構成する。
【0168】
次に、図20に示すように、自動分析装置1は、第3撮像部370により撮像された画像データを保存する(ステップS64)。例えば、自動分析装置1は、第3撮像部370により撮像された画像データを、記憶回路8に保存する。ユーザは、この記憶回路8に保存された画像データを事後的に解析することにより、サンプリングプローブ207が正常な位置に降下しなかった原因を究明することができる。この記憶回路8が、本実施形態における画像保存部を構成する。
【0169】
記憶回路8に記憶された画像データは、ユーザにより任意のタイミングで削除されるまで保持される。あるいは、記憶回路8に記憶された画像データは、例えば、所定期間経過後に自動的に削除されるようにすることができる。この画像データが記憶回路8に記憶される期間は、予め固定的に設定されていてもよいし、あるいは、ユーザが任意に設定できるようにしておいてもよい。
【0170】
次に、図20に示すように、自動分析装置1は、第3撮像部370により撮像された画像データを、自動分析装置1の外部に送信する(ステップS66)。具体的には、自動分析装置1の制御回路9における画像送信機能100が、通信インターフェース7を介して、画像データを自動分析装置1の外部に送信する。この画像送信機能100が、本実施形態における画像送信部を構成する。
【0171】
例えば、制御回路9における画像送信機能100は、第3撮像部370により撮像された画像データを、自動分析装置1の製造メーカが提供するオンラインメンテナンスコンピュータに送信してもよいし、あるいは、自動分析装置1のサービス部門のコンピュータに送信するようにしてもよい。
【0172】
そして、これにより、本実施形態に係る降下動作制御処理が終了する。すなわち、サンプリングプローブ207が正常な位置に降下しなかった場合には、その試料は分析されることなく、次の試料についての降下動作制御処理が行われる。
【0173】
以上のように、本実施形態に係る自動分析装置1によれば、サンプリングプローブ207の降下動作が正常でなかった場合には、その旨をユーザに警告するようにしたので、ユーザは、異常の発生を迅速に把握することができる。また、本実施形態に係る自動分析装置1によれば、事後的な解析のために、第3撮像部370が撮像した画像データを保存したり、外部に送信したりすることができ、異常が発生した場合の迅速且つ正確な対応を期待することができる。
【0174】
なお、本実施形態に係る自動分析装置1は、画像データを保存する画像保存部と、画像データを外部に送信する画像送信部の双方を備えることとしたが、自動分析装置1は、画像保存部と画像送信部の一方を備えるようにしてもよい。換言すれば、自動分析装置1は、画像保存部と画像送信部のうちの少なくとも一方を備えるように構成することができる。
【0175】
〔第12実施形態〕
上述した各実施形態に係る自動分析装置1は、生化学自動分析装置により構成されているが、自動分析装置1は、血液凝固自動分析装置により構成することも可能である。一般的に、血液凝固自動分析装置では、試料容器2035は封止栓により試料が封止されている。また、生化学自動分析装置でも、試料容器2035が封止栓により試料を封止していることもあり得る。以下においては、試料容器2035が封止栓で封止されている場合における自動分析装置1の構成と動作を、第12実施形態として説明する。本変形例は、上述した各実施形態のいずれにも適用可能である。
【0176】
図21は、封止栓CPにより封止された試料容器2035の構成を説明する図である。この図21に示すように、試料容器2035の開口部は、封止栓CPにより封止されており、試料容器2035の外部に試料が容易には漏れないように構成されている。このような場合、本実施形態に係る自動分析装置1では、サンプリングプローブ207により、封止栓CPを穿孔する。つまり、上述した降下動作制御処理において、ステップS16で決定されたパラメータに基づいて、ステップS18にてサンプリングアーム206の降下動作を行うが、この降下動作において、サンプリングプローブ207の先端部が封止栓CPを穿孔する。
【0177】
このように、ステップS18において、サンプリングプローブ207が降下することにより、試料容器2035を封止する封止栓CPをサンプリングプローブ207が穿孔するので、上述した各実施形態と同様に、第1撮像部301が試料の収容された試料容器2035の撮像を行い、この撮像により得られた画像データに基づいて、サンプリングアーム206の降下動作に関するパラメータを決定することができる。このため、サンプリングプローブ207を適切な位置まで迅速に降下させて、試料の吸引を行うことができる。
【0178】
その一方で、試料容器2035が封止栓CPにより封止されている場合、サンプリングプローブ207の降下動作に先立ち、中空構造のピアサ針が封止栓CPを穿孔する実施態様もある。図22は、中空構造のピアサ針380が封止栓CPを穿孔した後に、ピアサ針380の内側をサンプリングプローブ207が降下する動作を説明する図である。
【0179】
この図22に示すように、ピアサ針380が封止栓CPを穿孔する場合、サンプリングプローブ207の降下動作に先立ち、ピアサ針380が試料容器2035の上方から降下して、封止栓CPを穿孔する。その後、ピアサ針380の内側をサンプリングプローブ207が降下する。ピアサ針380は、サンプリングプローブ207が通過できる程度の内径を有する中空構造となっている。サンプリングアーム206の降下動作に関して決定されたパラメータに基づいて、サンプリングアーム206は降下動作を行うことにより、サンプリングプローブ207はピアサ針380の内側を降下する。
【0180】
このように、サンプリングプローブ207の降下動作に先立ち、ピアサ針380が封止栓CPを穿孔する自動分析装置1においても、上述した各実施形態と同様に、第1撮像部301が試料の収容された試料容器2035の撮像を行い、この撮像により得られた画像データに基づいて、サンプリングアーム206の降下動作に関するパラメータを決定することができる。このため、サンプリングプローブ207がピアサ針380の中空内部を通過するように、適切な位置まで迅速に降下させて、試料の吸引を行うことができる。
【0181】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、サンプリングプローブ207を高速で降下させることができ、自動分析装置1の全体的なスループットの向上を図ることができる。
【0182】
上記説明では、「プロセッサ」が各機能に対応するプログラムを記憶回路8から読み出して実行する例を説明したが、実施形態はこれに限定されない。「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU (Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路8に保存されたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、プログラムが記憶回路8に保存される代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0183】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置および方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置および方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0184】
1…自動分析装置
2…分析機構
3…解析回路
4…駆動機構
5…入力インターフェース
6…出力インターフェース
7…通信インターフェース
8…記憶回路
9…制御回路
91…システム制御機能
92…校正制御機能
93…測定制御機能
94…バーコード読み取り機能
95…撮像機能
96…液面取得機能
97…吸引制御機能
98…警告機能
99…判定機能
100…画像送信機能
300…バーコード読み取り部
301…第1撮像部
310…血漿
311…血球
320…搬送装置
321…ラック投入装置
322…ラック回収装置
323…ロボットアーム
330…外部搬送装置
340…ディスクサンプラ
350…透明部
360…第2撮像部
370…第3撮像部
380…ピアサ針
CP…封止栓
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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