(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106777
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】シリコーン離型剤組成物及び積層体
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20240801BHJP
C08K 5/34 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K5/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011212
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】513244753
【氏名又は名称】株式会社カーリット
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 司
(72)【発明者】
【氏名】島村 愛
(72)【発明者】
【氏名】梅山 晃典
(72)【発明者】
【氏名】田村 正明
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP031
4J002EU046
4J002EU116
4J002GF00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】離型層表面へのブリードアウトが抑制され、剥離性能を損なうことなく帯電防止能が付与されたシリコーン離型剤組成物及びその積層体を提供する。
【解決手段】シリコーン系樹脂と式(1)で表されるオニウム塩を含むシリコーン離型剤組成物。
式(1):Q+・(R1SO2)2N-(1)
(式中、Q+はアルケニル基を有するピリジニウムカチオン又はイミダゾリウムカチオンを表す。)
式(1)中のR1は炭素鎖が1~4のパーフルオロアルキル基もしくはフルオロ基を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン系樹脂と式(1)で表されるオニウム塩を含むシリコーン離型剤組成物。
式(1):Q
+・(R
1SO
2)
2N
-(1)
(式中、Q
+は式(2)又は式(3))
【化2-3】
式(1)中のR
1は炭素鎖が1~4のパーフルオロアルキル基もしくはフルオロ基を表す。式(2)中、R
2は、同一又は異なってもよい、炭素数1~4のアルキル基もしくは水素原子である。式(3)中、R
3は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは1~4を示す。
【請求項2】
式(1)中のR1がトリフルオロメチル基もしくはフルオロ基である請求項1に記載のシリコーン離型剤組成物。
【請求項3】
シリコーン系樹脂100質量部に対して、式(1)で表されるオニウム塩を0.1~10質量部含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコーン離型剤組成物。
【請求項4】
前記シリコーン系樹脂が付加反応型シリコーン系樹脂である請求項1~3のいずれか1つに記載のシリコーン離型剤組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のシリコーン離型剤組成物を含む離型層が、基材上に形成された積層体。
【請求項6】
基材上に、請求項1~4のいずれか1つに記載のシリコーン離型剤組成物を含む離型層を形成させる工程を含む積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオンにアルケニル基を有するオニウム塩含有シリコーン離型剤組成物及びその積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン離型剤組成物への帯電防止機能付与は導電性高分子(PEDOT分散液)を用いることが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリコーン系樹脂を含有する離型層は、帯電防止剤のシリコーン樹脂への相溶性の低さから、表面へのブリードアウトが問題となっている。また、離型層の帯電防止能を補うために、別途導電性高分子などを含む帯電防止プライマー層の塗工が必要となる。
従って、本発明は、カチオンにアルケニル基を有するオニウム塩を帯電防止剤としてシリコーン系樹脂に含有させることで、ブリードアウトにより帯電防止特性を損なうことがない、剥離特性に優れたシリコーン離型剤組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究の結果、カチオン部位にアルケニル基を有するオニウム塩をシリコーン系樹脂に一定量含有させることで、十分な帯電防止能を有する剥離特性に優れたシリコーン離型剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
本発明は以下[1]~[6]に示すものである。
【0007】
[1]シリコーン系樹脂と式(1)で表されるオニウム塩を含むシリコーン離型剤組成物。
式(1):Q
+・(R
1SO
2)
2N
-(1)
(式中、Q
+は式(2)又は式(3))
式(1)中のR
1は炭素鎖が1~4のパーフルオロアルキル基もしくはフルオロ基を表す。
【化2-3】
式(2)中、R
2は、同一又は異なってもよい、炭素数1~4のアルキル基もしくは水素原子である。式(3)中、R
3は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは1~4を示す。
[2]式(1)中のR
1がトリフルオロメチル基もしくはフルオロ基である[1]に記載のシリコーン離型剤組成物。
[3]シリコーン系樹脂100質量部に対して、式(1)で表されるオニウム塩を0.1~10質量部含むことを特徴とする[1]又は[2]に記載のシリコーン離型剤組成物。
[4]前記シリコーン系樹脂が付加反応型シリコーン系樹脂である[1]~[3]のいずれか1つに記載のシリコーン離型剤組成物。
[5][1]~[4]のいずれか1つに記載のシリコーン離型剤組成物を含む離型層が、基材上に形成された積層体。
[6]基材上に、[1]~[4]のいずれか1つに記載のシリコーン離型剤組成物を含む離型層を形成させる工程を含む積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、剥離性能を損なうことなく、帯電防止能が付与されたシリコーン系樹脂を含むシリコーン離型剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明について説明する。
【0010】
[アルケニル基含有オニウム塩]
本発明のシリコーン離型剤組成物は、式(1)で表されるオニウム塩を含有する。
式(1):
Q
+・(R
1SO
2)
2N
-(1)
(式中、Q
+は式(2)又は式(3))
【化2-3】
【0011】
式(1)中のR1は炭素鎖が1~4のパーフルオロアルキル基もしくはフルオロ基であり、例えば、フルオロ基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基が挙げられ、好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0012】
式(2)中、R2は炭素数1~4のアルキル基もしくは水素原子であり、このアルキル基は直鎖及び分枝鎖状のいずれであってもよい。好ましくは直鎖状のアルキル基又は水素原子である。具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、炭素数1~2の直鎖状のアルキル基又は水素原子が特に好ましい。R3は炭素数1~4のアルキル基である。このアルキル基は直鎖及び分枝鎖状のいずれであってもよく、好ましくは直鎖状のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基である。式(2)及び式(3)中のnは1~4を示し、好ましくは1である。
【0013】
本発明の式(1)で表されるオニウム塩は、種々の方法で製造することができる。その代表的な方法はアルケニル基を有するアルキルハライド類に対しアミン類を作用させオニウム=ハライドを合成したのち、イミド酸アルカリ金属塩との複分解反応でオニウム塩を合成する方法である。
【0014】
本合成に適したアミン類としては、例えば2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2-エチルピリジン、3-エチルピリジン、4-エチルピリジン、2-プロピルピリジン、3-プロピルピリジン、4-プロピルピリジン、2-ブチルピリジン、3-ブチルピリジン、4-ブチルピリジン、2,3-ジメチルピリジン、3,4-ジメチルピリジン、1-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、1-プロピルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール等が挙げられる。
【0015】
アルキルハライド類としては、例えば、アリルクロライド、アリルブロミド、アリルヨージド、4-クロロ-1-ブテン、4-ブロモ-1-ブテン、4-ヨード-1-ブテン、5-クロロ-1-ペンテン、5-ブロモ-1-ペンテン、5-ヨード-1-ペンテン、6-クロロ-1-ヘキセン、6-ブロモ-1-ヘキセン、6-ヨード-1-ヘキセン等が挙げられる。
【0016】
アミン類とアルキルハライド類との四級化反応は、溶媒を使用してもしなくてもよい。溶媒を使用するときの溶媒としては、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0017】
アルキルハライド類の使用量は、アミン類1モルに対して0.7モル以上であればよく、好ましくは0.9~1.5モルである。
【0018】
イミド酸アルカリ金属塩としては、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカリウム、ビス(フルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、ビス(フルオロメタンスルホニル)イミドナトリウム、ビス(フルオロメタンスルホニル)イミドカリウム等が挙げられる。
【0019】
複分解反応におけるイミド酸アルカリ金属塩の使用量は、オニウム=ハライド類1モルに対して、通常0.8モル以上、好ましくは0.9~1.2モルであり、より好ましくは1~1.05モルである。
【0020】
複分解反応は通常溶媒中で行われる。溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0021】
オニウム=ハライド類、イミド酸アルカリ金属塩及び溶媒の混合順序は特に限定されず、オニウム=ハライド類と溶媒を混合した後にイミド酸アルカリ金属塩を添加してもよいし、イミド酸アルカリ金属塩と溶媒を混合した後にオニウム=ハライド類を添加してもよい。
【0022】
複分解反応における反応温度は、通常10℃以上、好ましくは10~60℃、特に好ましくは10~30℃である。
【0023】
複分解反応終了後の反応液からオニウム塩を単離するには、溶媒及び生成する無機塩を反応液から除去する。得られた反応液中に無機塩が析出していれば、反応液を濾過して析出の無機塩を除き、次いで濃縮、ろ過、抽出等の単位操作を適宜組み合わせて、オニウム塩を単離する。
【0024】
アミン化合物や、アンモニウムカチオンは、白金触媒への触媒毒となりうることが知られている。そのため、アンモニウム系オニウム塩はシリコーン系樹脂の硬化阻害を起こしやすく、硬化不良による耐溶剤性の低下から、被着体(粘着層など)へ離型層が溶出してしまう。また、アンモニウム系オニウム塩はシリコーン系樹脂との相溶性が乏しいため、表面にブリードアウトして、被着体を汚染する問題が生じる。
式(2)、(3)で表されるカチオンは、白金触媒への触媒毒とはならないため、シリコーン系樹脂の硬化阻害を起こさず、硬化不良による耐溶剤性の低下が起こらないため、基材からの離型層の脱落が抑制される。
また、式(1)で表されるオニウム塩は、反応性のアルケニル基を持つため、離型層形成の際の硬化反応時に、シリコーン系樹脂中で反応して固定化されるため、ブリードアウトによるオニウム塩の溶出が抑制され、被着体の汚染や帯電性能の経時変化が生じにくい。
【0025】
[シリコーン離型剤組成物]
本発明のシリコーン離型剤組成物は、オニウム塩及びシリコーン系樹脂を少なくとも含むものである。シリコーン系樹脂としては、有機系とシリコーン系の混合もしくは共重合樹脂などを含有するものも用いることができる。優れた剥離性や耐熱性から、特に硬化型シリコーン系樹脂を含有することが好ましい。
【0026】
硬化型シリコーン系樹脂には、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとを白金触媒のもとに加熱硬化させた「付加反応型」、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと末端に水酸基を含有するオルガノポリシロキサンとを有機錫触媒を用いて加熱硬化させた「縮重合反応型」、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとメルカプト基を含有するオルガノポリシロキサンとを光重合触媒を用いて硬化させる「ラジカル付加型」、エポキシ基をオニウム塩開始剤にて光開環させて硬化させる「カチオン重合型」があり、アルケニル基の反応性の観点から、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとを、白金触媒のもとに加熱硬化させた付加反応型が好ましい。
本発明におけるシリコーン離型剤組成物は、塗料組成物を必要に応じて乾燥工程で溶媒を除去の上、硬化することで形成される。
【0027】
[塗料組成物]
前述の塗料組成物は、室温にて液体の性状を示す混合物であり、シリコーン離型剤組成物を形成可能な材料と、重合開始剤、硬化剤、硬化触媒を含み、更に溶媒、粒子、架橋剤、帯電防止剤などの各種添加剤を含んでもよい。
塗料組成物は、その組成は特に限定されないが、前述のように剥離性や耐熱性の観点から、硬化型シリコーン系樹脂を形成可能な樹脂前駆体が好ましく、「付加反応型」の樹脂前駆体、及び重合開始剤、硬化剤、硬化触媒を含む塗料組成物がより好ましい。
【0028】
付加反応型シリコーン系樹脂は、末端にビニル基を含有するポリジメチルシロキサンとハイドロジェンシロキサンとを含むものが好ましく、具体例としては、信越化学工業(株)社製のKS―3650、KS843、KS847、KS847H、KS847T、X62-2829、KS838、東レ・ダウコーニング(株)社製のSD7333、SRX357、SRX345、LTC310、LTC303E、LTC300B、LTC350G、LTC750A、LTC851、LTC759、LTC755、LTC761、LTC856などが挙げられる。
【0029】
硬化触媒としては、白金系の触媒、すなわち、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコール溶液との反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサン化合物との反応物、白金-オレフィン錯体、白金-ビニル基含有シロキサン錯体、白金-リン錯体等が挙げられる。上記のような硬化触媒として、より具体的には、信越化学工業(株)社製のCAT-PL-50T、東レ・ダウコーニング(株)社製のSRX-212等が挙げられる。
【0030】
硬化触媒の配合量は白金元素量として、シリコーン系樹脂成分に対して、通常0.1~1質量部、好ましくは、0.3~0.6質量部である。0.1質量部未満では、硬化性が低下して離型層の凝集力(保持力)が低下し、1質量部以上では、白金含有量が多くコストアップになり、かつ離型層の安定性が低下する。ここで、離型層とは、支持基材上に塗工された塗料組成物が、乾燥工程により溶媒除去された上で硬化し、形成される層を示す。
【0031】
剥離特性を維持したまま十分な帯電防止性が付与される必要があるため、本発明のシリコーン離型剤組成物におけるオニウム塩の含有量は、シリコーン系樹脂100質量部固形分に対し、通常0.1~10質量部が好ましく、更には1~6質量部がより好ましい。
【0032】
本発明における塗料組成物の固形分濃度は、特に限定されるものではないが、塗料組成物が溶媒を含む場合には、通常10質量部以下であり、更には0.5~5質量部であることが好ましい。
【0033】
本発明における塗料組成物は、従来のように剥離性能を損なわないよう、離型層の支持基材への塗工と帯電防止層を有するプライマー層の二層に分けなくても良く、支持基材への一層塗工が可能である。
【0034】
[その他の塗料組成物添加剤]
塗料組成物は、製造適性の面から溶媒を含むことが好ましい。ここで溶媒とは塗布後の乾燥工程にてほぼ全量を蒸発させることが可能な、常温、常圧で液体である物質を指す。本発明の積層体に適した塗料組成物は、溶媒を含んでもよい。溶媒の種類数としては1種類以上10種類以下が好ましく、より好ましくは1種類以上5種類以下、更に好ましくは1種類以上3種類以下である。塗料組成物を乾燥させることでシリコーン離型剤組成物となり、離型層を形成することができる。
【0035】
溶剤は、トルエンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、メチルエチルケトン(MEK)、イソブチルメチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール類、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルなどのエーテル類などを使用することができる。これらは溶解性、塗工性、沸点等を考慮し、単独又は複数混合して使用するのが好ましい。
【0036】
水系の溶媒は、シリコーン系樹脂の硬化に必要な白金触媒の触媒毒になりうるため、本発明における塗料組成物の溶媒には有機溶媒を用いることが好ましい。
【0037】
本発明における積層体は、支持基材上にシリコーン離型剤組成物を含む離型層が形成されたものを指す。ここでいう積層体とは、離型フィルム等のことである。
【0038】
[支持基材]
本発明における支持基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等が挙げられるが、特に離型フィルムとして用いられる際は、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0039】
基材の厚みは、好ましくは10~100μmであり、より好ましくは15~80μmであり、更には20~50μm程度の厚みであれば取り扱い易く、より好ましい。
【0040】
[積層体の製造方法]
支持基材上への塗料組成物の塗布方法は特に限定されないが、塗料組成物をディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法などにより支持基材等に塗布し、層を形成することが好ましい。更に、これらの塗布方式のうち、ワイヤーバーコート塗布方法がより好ましい。次いで、支持基材等の上に塗布された液膜を乾燥する。得られる積層体中から完全に溶媒を除去することに加え、塗膜の硬化を促進する観点からも、乾燥工程では液膜の加熱を伴うことが好ましい。乾燥工程において、熱で硬化する場合には、室温から200℃以下であることが好ましく、硬化反応の活性化エネルギーの観点から、より好ましくは80℃以上200℃以下、更に80℃以上150℃以下であることが好ましい。
【実施例0041】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。なお、同一の化合物については特記しない限り同一の製品を用いた。
【0042】
(合成例1)
3-メチルピリジン13.0g(140ミリモル)とアリルブロミド18.6g(154ミリモル)との混合物を80℃で3時間攪拌して反応させた。反応終了後、減圧下で乾燥して1-アリル-3-メチルピリジニウム=ブロマイド29.1g(収率97%)を得た。
得られた1-アリル-3-メチルピリジニウム=ブロマイド15.0g(70ミリモル)を純水30gに溶解させ、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウム22.1g(77ミリモル)を加えた後、1時間室温で攪拌した。反応液を濾過した後、純水洗浄で無機塩を除去した。濃縮後、液体の1-アリル-3-メチルピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド25.2g(収率91%)を得た。
【0043】
(合成例2)
合成例1の合成条件に記載のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウムの代わりにビス(フルオロスルホニル)イミド酸リチウムを用いた以外は変更せず合成し、液体の1-アリル-3-メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド20.7g(収率94%)を得た。
【0044】
(合成例3)
1-メチルイミダゾリウム11.5g(140ミリモル)とアリルブロミド18.6g(154ミリモル)との混合物を80℃で3時間攪拌して反応させた。反応終了後、減圧下で乾燥して1-メチル-3-アリルイミダゾリウム=ブロマイド28.4g(収率99%)を得た。
得られた1-メチル-3-アリルイミダゾリウム=ブロマイド12.8g(63ミリモル)を純水30gに溶解させ、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウム20.1g(70ミリモル)を加えた後、1時間室温で攪拌した。反応液を濾過した後、純水洗浄で無機塩を除去した。濃縮後、液体の1-メチル-3-アリルイミダゾリウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド24.0g(収率99%)を得た。
【0045】
(合成例4)
合成例1の合成条件に記載のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウムの代わりにビス(フルオロスルホニル)イミド酸リチウムを用いた以外は変更せず合成し、液体の1-メチル-3-アリルイミダゾリウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド17.9g(収率93%)を得た。
【0046】
(合成例5)
3-メチルピリジン13.0g(140ミリモル)と5-ブロモ-1-ペンテン23.0g(154ミリモル)との混合物を80℃で4時間攪拌して反応させた。反応終了後、減圧下で乾燥して1-ペンテニル-3-メチルピリジニウム=ブロマイド30.5g(収率90%)を得た。
得られた1-ペンテニル-3-メチルピリジニウム=ブロマイド15.0g(70ミリモル)を純水に溶解させ、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウム22.1g(77ミリモル)を加えた後、1時間室温で攪拌した。反応液を濾過した後、純水洗浄で無機塩を除去した。濃縮後、液体の1-ペンテニル-3-メチルピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド29.4g(収率95%)を得た。
【0047】
(合成例6)
合成例5の合成条件に記載のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウムの代わりにビス(フルオロスルホニル)イミド酸リチウムを用いた以外は変わらず合成し、液体の1-ペンテニル-3-メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド23.0g(収率96%)を得た。
【0048】
(合成例7)
1-メチルイミダゾール11.5g(140ミリモル)と5-ブロモ-1-ペンテン23.0g(154ミリモル)との混合物を80℃で4時間攪拌して反応させた。反応終了後、減圧下で乾燥して1-メチル-3-ペンテニルイミダゾリウム=ブロマイド30.4g(収率94%)を得た。
得られた1-メチル-3-ペンテニルイミダゾリウム=ブロマイド15。0g(70ミリモル)を純水に溶解させ、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウム22.1g(77ミリモル)を加えた後、1時間室温で攪拌した。反応液を濾過した後、純水洗浄で無機塩を除去した。濃縮後、液体の1-メチル-3-ペンテニルイミダゾリウム=ビス(トリフルオロスルホニル)イミド27.5g(収率91%)を得た。
【0049】
(合成例8)
合成例7の合成条件に記載のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウムの代わりにビス(フルオロスルホニル)イミド酸リチウムを用いた以外は変更せず合成し、液体の1-メチル-3-ペンテニルイミダゾリウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド20.9g(収率90%)を得た。
【0050】
(実施例1)
[塗料組成物の作製]
・メチルビニルポリシロキサン及びメチル水素化ポリシロキサン(シリコーン系樹脂前駆体固形分):100質量部
(KS847 信越化学工業(株)製 固形分濃度 30質量部)
・メチルビニルポリシロキサンと白金の錯体溶液:2質量部
(CAT_PL-50T 信越化学工業(株)製)
・合成例1のオニウム塩:4質量部
上記組成をトルエン:MEK=1:1で希釈し、固形分濃度5質量部の塗料を調整した。
【0051】
(実施例2)
実施例1のオニウム塩に合成例2を使用した以外は変更せずに塗料組成物を作製した。
【0052】
(実施例3)
実施例1のオニウム塩に合成例3を使用した以外は変更せずに塗料組成物を作製した。
【0053】
(実施例4)
実施例1のオニウム塩に合成例4を使用した以外は変更せずに塗料組成物を作製した。
【0054】
(実施例5)
実施例1のオニウム塩に合成例5を使用した以外は変更せずに塗料組成物を作製した。
【0055】
(実施例6)
実施例1のオニウム塩に合成例6を使用した以外は変更せずに塗料組成物を作製した。
【0056】
(実施例7)
実施例1のオニウム塩に合成例7を使用した以外は変更せずに塗料組成物を作製した。
【0057】
(実施例8)
実施例1のオニウム塩に合成例8を使用した以外は変更せずに塗料組成物を作製した。
【0058】
(比較例1)
実施例1のオニウム塩を未添加にした条件以外は変更せずに塗料組成物を作製した。
【0059】
(比較例2)
実施例1のオニウム塩に1-ブチルピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを使用した以外は変更せずに塗料組成物を作製した。
【0060】
(比較例3)
実施例1のオニウム塩に1-エチル-3-メチルイミダゾリウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを使用した以外は変更せずに塗料組成物を作製した。
【0061】
(比較例4)
実施例1のオニウム塩に1-エチル-3-メチルイミダゾリウム=ビス(フルオロスルホニル)イミドを使用した以外は変更せずに塗料組成物を作製した。
【0062】
(比較例5)
実施例1のオニウム塩にジアリルジメチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを使用した以外は変更せずに塗料組成物を作製した。
【0063】
(比較例6)
実施例1のオニウム塩にジアリルジメチルアンモニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミドを使用した以外は変更せずに塗料組成物を作製した。
【0064】
[塗工条件]
塗料組成物をPETフィルム上にバーコーターを用いて乾燥後膜厚約500nmの厚みでコートし、150℃で2分間加熱させて試験片(離型フィルム)を作製した。
【0065】
[表面抵抗率測定]
Simco-Ion表面抵抗計ST-4を用いて、室温下50%RH、印加電圧100Vで試験片の表面抵抗率を初期及び室温保管7日後に測定した。
【0066】
[剥離試験]
塗料組成物塗工面に対し日東電工No.31テープを貼付し、1時間養生後、ピール速0.3m/minにて180°剥離時の剥離力を測定した。
【0067】
[基材密着性の評価]
実施例および比較例で製造した離型層に対して、カッターナイフで十字の切り込み(50mm×50mm)を入れた。そして、切り込みを入れた部位の離型層を指の腹で擦り、離型層の脱落度合いを確認し、基材密着性を評価した。
〇・・・離型層が基材から脱落せず、良好な密着性を維持
△・・・離型層の一部が白濁するが、脱落はなく密着性を維持
×・・・離型層の全部が基材から脱落し、密着性不足
【0068】
実施例1~8及び比較例1~6の結果を表1に示す。
【表1】
【0069】
上記のとおり、本発明の実施例1~8のシリコーン離型剤組成物は、一層塗工において、基材との密着性を損なうことなく、帯電防止に必要な表面抵抗率(1013Ω/□未満)を有していた。また、いずれの実施例の剥離力も比較例1のブランクと同等であったことから、アルケニル基含有オニウム塩は剥離特性に悪影響を及ぼさないことが示された。さらに、保管7日後においても表面抵抗率の増減は指数の変化1以内に抑えられ、かつ、剥離力も維持していたことから、本オニウム塩には離型層表面へのブリードアウトを抑制する効果があることが示された。一方、比較例1及び5~6は経時変化はないが表面抵抗率が高く、比較例2~4は密着性が不足している上に、表面抵抗率と剥離力の経時変化が大きいことからブリードアウトが発生したと考えられ、いずれの比較例も帯電防止能付与シリコーン離型剤に必要な性能が不足していた。