(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010678
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】衛星通信システムにおけるランダムアクセス
(51)【国際特許分類】
H04W 84/06 20090101AFI20240117BHJP
H04W 74/08 20240101ALI20240117BHJP
H04W 56/00 20090101ALI20240117BHJP
【FI】
H04W84/06
H04W74/08
H04W56/00 130
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023189466
(22)【出願日】2023-11-06
(62)【分割の表示】P 2021514971の分割
【原出願日】2019-10-15
(31)【優先権主張番号】18200419.2
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518144182
【氏名又は名称】アイピーコム ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビナス、マイク
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ハンス、マーティン
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA13
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE07
5K067EE10
5K067JJ16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】少なくとも1つの地球外伝送局を含む通信システムにおけるランダムアクセス試行をUEデバイスによって実行する方法及び基地局を提供する。
【解決手段】衛星ベースの通信システムにおいて、ユーザ機器(UE)デバイスは、地球外伝送局(衛星Sat
n,m)によって伝送される基準信号を受信する段階と、受信した基準信号から、UEデバイスと地球外伝送局との間のトリップ時間を決定する段階と、トリップ時間を使用してランダムアクセス試行を制御する段階と、を備え、地球外伝送局によって伝送される基準信号の測定から信号トリップ時間を取得する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ機器(UE)デバイスによって、少なくとも1つの衛星伝送局を含む通信システムにおけるランダムアクセス試行を実行する方法であって、
前記衛星伝送局の軌道情報を使用して、前記UEデバイスと前記通信システムの衛星伝送局との間のトリップ時間を決定する段階であって、前記軌道情報は、前記UEデバイスに知られている、段階と、
前記トリップ時間を使用してランダムアクセス試行の伝送のためのタイミングオフセットを決定する段階と、
決定された前記タイミングオフセットを用いて、前記ランダムアクセス試行を伝送する段階と
を備える、方法。
【請求項2】
決定された前記トリップ時間は、前記UEデバイスによる前記ランダムアクセス試行の伝送が、予め決定された時間フレーム内に前記衛星伝送局で受信されるように、前記ランダムアクセス試行の伝送のための前記タイミングオフセットを決定するように使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記UEデバイスと、前記衛星伝送局と同一の、または異なる衛星伝送局との間の第2のトリップ時間が、前記通信システムにおける1または複数の衛星伝送局の相対的な移動に関連する、予め決定されたトリップ時間および情報を使用して推定される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記トリップ時間の決定の信頼性の推定に依存して、1より多いランダムアクセス方法のうちのいずれが前記ランダムアクセス試行の伝送を使用すべきか、前記UEデバイスが判断を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記トリップ時間が、前記衛星伝送局からの応答を受信するための応答時間を決定するように使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記衛星伝送局が、低地球軌道における衛星である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
衛星利用可能な通信システムの基地局であって、
前記基地局は2つのセットのランダムアクセスリソースを構成するように適合され、第1のセットのランダムアクセスリソースは、ユーザ機器デバイスによるスロットALOHAランダムアクセス試行を可能にし、第2のセットのランダムアクセスリソースは、ユーザ機器デバイスによる非同期ランダムアクセスを可能にする、
基地局。
【請求項8】
前記第1のセットのランダムアクセスリソースは、衛星伝送局への信頼できるトリップ時間を導出することが可能なユーザ機器デバイスによる使用のために提供され、前記第2のセットのランダムアクセスリソースは、前記衛星伝送局への信頼できるトリップ時間を導出することが可能でないユーザ機器デバイスによる使用のために提供される、請求項7に記載の基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星ベースの通信システムにおけるランダムアクセス試行の実行に関する。
【0002】
衛星通信または衛星電話システムは、20年もの間よく知られている。例は、イリジウム電話およびデータ通信システムである。我々は、本システムの公共に利用可能な技術的記載を参照し、本発明に必要であろうもののみを詳細に提供する。
【背景技術】
【0003】
IEEE/IMACS Circuits,Systems, Communications Conference 1999,Athens,Greeceの予稿集の、I.KoutsopoulosおよびL.Tassiulasによる、「MEOモバイル衛星ネットワークにおける信頼性のあるハンドオーバー予告およびリソース割り当て」という題名の論文は、以下のステップを有するハンドオーバー予告を論じる。基地局が、(「隣接セル」と同様に)カバレッジおよび接近の可能性があるべきものを含む衛星のリストの測定値を要求するステップ。UEが、それらの衛星の受信されたビームを(定期的に)測定するステップ。測定値のリストを戻して提供するステップ。リストにおけるエントリ(閾値および重複検出によってフィルタリングされた)は、UEとの、ハンドオーバー決定が取得される角度に従って重み付けされる。この論文は、ランダムアクセスプリアンブルのための送信時間を導出するためのいかなる方法も、記載も示唆もしていない。
【0004】
米国特許出願公開第2009/0284411A1号明細書は、可視のGPS衛星を識別して位置決めして、オープンスカイのマップを生成するように、GPS受信機を使用する方法を記載する。そして、このマップは、いずれかの通信衛星が、および、一体どの通信衛星が、その移動についての知識を使用するオープンスカイを介して到達可能であり得るか、および、それらの衛星との通信を始めるのみか通信を延期するかを、識別するように使用される。ランダムアクセスプリアンブルのための送信時間の構成はない。
【0005】
さらなる衛星ベースの通信システムが、米国特許出願公開2017/0085329A1、国際公開2017/072745A1、および国際公開02 39622A1において説明される。
【0006】
イリジウムは、6つの軌道と、軌道ごとに11の衛星を有する、低地球軌道(LEO)衛星を使用する。衛星は、781kmの高さおよびおよそ100分の軌道周期を有し、その結果、地上の同一地点を同一軌道上の2つの隣接する衛星が通過する時間の間隔ΔTSatはおよそ9分である。
【0007】
現在、次世代のモバイル通信規格(5G)が3GPP(登録商標)により定義されている。それは、コアネットワーク(5GC)および新たな無線アクセスネットワーク(NR)のネットワークアーキテクチャを規定するであろう。加えて、非3GPPアクセスネットワークから5GCへのアクセスが提供される。
【0008】
3GPPは、NRへの地球外アクセスネットワーク(NTNサポート)を含む過程内にある。3GPP Tdoc RP‐171450において、NTNが、ネットワークまたはネットワークのセグメントとして定義され、伝送のために航空機または衛星搭載車両を使用する新たな研究が提案された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
衛星搭載車両は、(LEO衛星、中地球軌道(MEO)衛星、静止地球軌道(GEO)衛星、並びに高楕円軌道(HEO)衛星を含む)衛星を含む。航空機は、空中UASより軽く(LTA)、空中UASより重く(HTA)、全てが通常8kmから50kmの間の高度で準定常で動作する、テザリングされたUASを含む高高度UASプラットフォーム(HAP)を包含する無人航空機システム(UAS)である。
【0010】
3GPPの示される目的は、NTNのサポートをNRに組み込むことである。従って、イリジウムのような既知の衛星通信技術が5GCにアクセスすることを可能にするのは提案されていない。現在開発されているNR規格に、必要な機能拡張を含めて、上記で説明された地球外車両における動作を可能にすることが提案されている。
【0011】
この目的は、UEとNTN基地局またはNTN送受信機との間の効率的な通信を可能にするのに必要な、広範な進歩をもたらす。3GPPは、2018年初期までNTNの稼働の開始を延期することを決めた。
【0012】
NTN NR基地局または送受信機の配備モデルとして最も可能性の高いものは、準定常HAPおよびLEO衛星(LEO)である。本発明は、LEO、MEOおよびHEOのNRへの組み込みを拡張する。
【0013】
配備モデルは、3G以降の3GPPにより定義されるように、そのNTNアクセスをモバイルネットワークオペレータ(MNO)へ、共有無線ネットワークアクセスとして提供する衛星オペレータによりLEOが動作されることであり得る。共有NTN RANは、MNOの地上RANを補完するであろう。各衛星は、その現在のカバレッジエリアにおける共有RANに寄与し、その結果、特定のMNOにより使用される共有RANは、複数の衛星が軌道を通してそれらの経路をたどるにつれ、動的に変化する衛星により提供され得る。
【0014】
一般にNTN配備に関して、2つのアーキテクチャ的な選択肢が存在する。衛星は、全ての典型的な基地局情報と共に基地局を構成し得る。この配備において、基地局は、衛星リンクを介して地上局に接続され、地上局は、衛星を対応するそれぞれのコアネットワークに接続する。代替で、衛星は、UEと、実際の基地局である地上局との間でデータをルーティングするリピータを実質的に構成する。この配備は、多くの場合、「曲がりパイプ」配備と呼ばれる。
【0015】
本発明の場合、特に言及されていない限り、基地局を含む衛星を有するモデルを使用する。これは、読みやすくすることのみを目的とし、一般性のあらゆる損失をもたらすべきではない。本発明の概念は、曲がりパイプ配備についても同様に有効である。
【0016】
NRのための無線インタフェースは、UEと基地局の間の最大距離が100km(通常は20km以下)である条件の下で動作するように設計されるであろう。これと対照的に、UEから衛星への距離はLEO衛星において780kmと2,050kmの間であり、他の(より高い)軌道タイプの衛星においてはより一層大きい。これは、地球上通信と比較して、少なくとも、衛星通信における追加の信号トリップ時間に基づいて、いくらかの問題をもたらす。
【0017】
LTEおよび新たな無線は、ランダムアクセスに関するスロットALOHA原則を使用する。原則は、ランダムアクセスプリアンブルが、アクセススロットと呼ばれる時間的境界内で受信機に達することを必要とする。したがって、スロットALOHA原則は、プリアンブルが異なる信号トリップ時間でUEから受信される状況で、実用的である。例えば、LTEの現在のランダムアクセス手順において受け入れ可能な、同じ基地局に接続された異なるUEの最大トリップ時間差は0.358ms(=(1/2)*プリアンブルフォーマット3のガード時間、3GPP TS 36.211; E-UTRA; Physical Channels and Modulation, Table 5.7.1-1に説明)であり、これは約119kmの最大セルサイズに関する。基地局から119kmより近いUEによって同時に伝送されるランダムアクセスプリアンブルは、同じアクセススロットの境界内の基地局にいつも達するであろう。したがって、ガード時間はそれらのアクセススロットに含まれ、すなわち、アクセススロットはおよそ、プリアンブル長さにサイクリックプレフィックスを加えたものより長いガード時間である。ランダムアクセスプリアンブルのためのタイミングは、第1アクセススロットAS#1が始まるときの基地局における時間をT
0として、
図7に示される。UEと基地局の距離のおかげで、UEにおいて認識される開始時間は、およそ、関連するトリップ時間だけ後になる(UE2に関してt
trip2として示される)。UE2は、ランダムアクセスプリアンブルP2の伝送のためにAS#1を選択した。プリアンブルは、T
0からおよそ2*t
trip2後に受信される。この例において、UE2はeNBへの最大可能距離、すなわち、t
trip2=(1/2)GT(ガード時間)をとる。したがって、P2の終端はAS#1の終端において受信され、それはeNBにおける成功した受信をもたらす。UE1は、eNBにより近く、プリアンブルP1を伝送するためにAS#2を選択したが、それはeNBによってAS#2の境界内で受信される。また、この伝送は成功した。
【0018】
リプライメッセージに関する対処が受信タイミングに基づく、すなわち、UEはこのプリアンブルの伝送の後のある時間、それらの送信プリアンブルへの応答を待っているので、アクセススロット境界内のプリアンブル受信は重要である。さらに、隣接するアクセススロットにおいて送信される同じプリアンブルとの衝突を回避すべく、アクセススロット内でのプリアンブルの受信は重要である。
【0019】
LTEの現在の構成が衛星リンクに適用される場合、LTE仕様に従ってUEによって伝送されるランダムアクセスプリアンブルは、選択されたアクセススロットの境界内で受信されないであろう。したがって、プリアンブル送信のために使用されるアクセススロットと、プリアンブル受信のアクセススロットとの間に信頼できる関係がないので、応答メッセージの対処は失敗する。衛星リンクプロパティへのNRランダムアクセス構成パラメータの適応なしに、ランダムアクセスは全く可能ではないであろう。
【0020】
図8において、衛星接続にわたってLTEランダムアクセス構成が使用される場合における、ランダムアクセスのタイミングが示される。UE2のトリップ時間は、ガード時間の半分よりはるかに大きい。したがって、AS#1を意図したP1は、AS#1の境界をはるかに超えて受信される。加えて、AS#2を意図したP2は、衝突をもたらすP1と同時に受信される。
【0021】
明らかな解決手段は、ガードインターバルを、同じ衛星に接続される異なるUEの最大トリップ時間差が十分になるように拡張することである。この値は14.32msと計算された(すなわち、衛星リンクの距離の差は、地球上リンクより約20倍大きい。この倍率はガード期間に適用されるべきである)。そのような長いガード期間は、受け入れがたいほど低いRACH容量という結果につながり、したがって、この構成は、所与のシナリオへの初期のアクセスを提供することができない。より長いプリアンブルを使用することによって、容量は増加し得る。しかしこれは、基地局の必要とされる処理能力を増加させ、ランダムアクセス手順に追加のレイテンシを加えるであろう。
【0022】
より便利な解決手段が、米国特許出願公開第2016/0173188A1で説明される。そこで説明される概念は、受信機における所与の時間グリッドとほとんど同期して、衛星における受信時間をもたらす方法における、プリアンブル送信時間を選択することである。この同期性は、UEから衛星への距離とは独立している。または、換言すれば、伝送遅延は、以前の伝送遅延とほぼ近い伝送タイミングを使用することによって補償される。提案される解決手段の問題は、現在のトリップ時間を取得することによってUEをサポートする、参照UEが必要とされることである。そのような参照UEなしで、解決手段は使用できないであろう。説明されたように、UEは受信された信号からトリップ時間を決定しない。むしろ、トリップ時間を計算するために地理的情報が使用される。
【0023】
より長いトリップ時間によってもたらされるプリアンブル受信の問題から外れると、ランダムアクセス応答の受信もまた影響される。LTEに関して、応答ウインドウ間隔はネットワークによって準静的に構成される。値は、関連するセルにおける全てのUEに共通である。間隔継続時間は、UE-基地局トリップ時間に、基地局のためのいくらかの処理時間を加えたものに依存する。これは2から10msの間に設定可能である。より長い値は、より長いトリップ時間に適し、基地局が、この時間スパン内で個々に応答時間を選択することを可能にするが、他方で、長い応答ウインドウが、ランダムアクセス手順において、より大きい遅延をもたらす。
【0024】
この概念が衛星リンクに適用されるとき、最短の間隔が、最大の期待されるラウンドトリップ時間に対応しなければならない。これは、LEO衛星の場合において14msであろう。衛星に近いUEにおいては、はるかに短い間隔で十分であり、LEO衛星では例えば6msであろう。しかし、共通配置のおかげで、これらのUEはまた、より長い間隔を使用しなければならない。したがって、ランダムアクセスに関する遅延は最適に構成され得ない。
【0025】
本発明は、少なくとも1つの地球外伝送局を有する通信システムにおけるランダムアクセス試行を、UEデバイスによって実行する方法を提供し、方法は、地球外伝送局によって伝送される基準信号を受信する段階と、基準信号を受信する段階から、UEデバイスと地球外伝送局との間のトリップ時間を決定する段階と、トリップ時間を使用してランダムアクセス試行を制御する段階と、を備える。
【0026】
本発明の一態様は、衛星によって伝送される基準信号の測定から信号トリップ時間を取得する方法である。このトリップ時間は、まずランダムアクセスプリアンブルのトリップ時間を補償するように使用され、ほとんど同期した受信タイミングが衛星において取得され、地球上通信において典型的な小さいガードインターバルが、異なるアクセススロットにおいて、衛星からの距離が異なるUEによって送信されたプリアンブルの衝突を回避するのに十分である。
【0027】
第2に、トリップ時間は、衛星において受信に成功したランダムアクセスプリアンブルへの予想される応答の時間間隔を決定するように使用され得る。この間隔はUEに固有であり、現在のトリップ時間に関して、UEによって個々に導出される。
【0028】
第3に、2つのランダムアクセス方法のうちの1つは、タイミングが十分な質での測定に基づいて決定され得るかどうかに基づいて選択され、第4に、応答の時間間隔を導出する方法は、選択されたランダムアクセス方法に基づき得る。
【0029】
UEは、以下を実行することが可能とされ得る。
UEから衛星への信号トリップ時間が、以下の基準信号測定値によって取得される。
参考信号電力。
一定期間の2以上の連続的な参考信号電力測定値の差。
受信された基準信号のドップラー周波数。
一定期間の2以上の連続的なドップラー周波数測定値の差。
上記の2以上の測定値の任意の組み合わせ。
【0030】
ダウンリンク基準信号を使用することは、アイドルモードにあるUEが、予め利用可能な信号から、すなわち、いかなる新たな信号についてダウンリンク信号を拡張する必要なしで、必要とされるトリップ時間を導出することを可能にするので、有益である。将来のUEから衛星への信号トリップ時間は、直近に取得された、または確認された信号トリップ時間、および予め設定された関数を用いた計算によって取得され得る。これは、対応する関数が既知であるならば初期決定を超える測定の必要がないので、有益である。これは時間および電池のリソースを節約する。
【0031】
取得されたトリップ時間は、受信機のアクセススロット境界より、およそトリップ時間だけ以前の時間にプリアンブルを伝送するように、UEによって使用され得る。換言すれば、UEによって認識されるタイミングに従って選択されたアクセススロットが、UEによって選択されたプリアンブル送信時間よりもトリップ時間の2倍だけ後に始まる。本明細書で認識される意味で、アクセススロット境界は、時間訂正なしでダウンリンク信号からUEによって取得され、したがって、ダウンリンクトリップ時間に影響される。
【0032】
このトリップ時間補償を、UEから衛星へのリンクのような長い範囲のリンクに適用することは、地球上通信に関するランダムアクセス手順が、能力の劣化なしで再使用され得るので、有益である。
【0033】
決定されるトリップ時間は、さらに、衛星からの応答が予想される最中の応答時間間隔を導出するように使用され得る。UEの受信機は、導出される時間間隔における対応する応答を受信するように構成され得、そのような応答が受信されない場合、直近のプリアンブル送信は成功しなかったとみなされ、すなわち、新たなランダムアクセス試行が開始されるか、または、ランダムアクセスがある時間間隔だけ遅延するかのいずれかである。導出は、推定されるトリップ時間に、衛星におけるランダムアクセスプリアンブルを処理するための予め定められた時間を加えたものに基づき得る。この変動し得る間隔は、例えばLTEにおける使用のとき、準持続的に構成される間隔と比較されるレイテンシを減少させるので、有利である。
【0034】
測定値の質の推定は、実行された測定値に基づいて決定され得、ランダムアクセス方法が、決定された測定値の質に基づいて選択される。
【0035】
応答時間間隔は、選択されたランダムアクセス方法に基づいて決定され得る。
【0036】
さらに、リンクを提供された衛星の基地局は、以下を実行することを可能とされる。
ランダムアクセスリソースの2つの独立した複数のセットを構成することであって、第1のセットはスロットALOHAベースのランダムアクセスに関し、第2セットは非同期ランダムアクセスに関する。
UEによって選択されたランダムアクセスリソースに基づいて、使用されるランダムアクセスモードを検出する。
時間遅延Tdelayを選択することであり、時間遅延は、ランダムアクセス応答時間間隔の始まりを示し、UEにこのパラメータを伝送するように、非同期ランダムアクセスモードにおいて使用される。
【0037】
よりさらに、通信ネットワークのエンティティは、以下を実行することを可能にし得る。
衛星のフライトオーバー期間の異なる位相時間に関する、RSSよびドップラー周波数の予想された値が、UEに伝送される。
トリップ時間を導出する方法を信頼性のないものとみなすようにUEによって使用される閾値が、UEに伝送される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
ここで、本発明の好ましい実施形態が、添付の図面を参照して、単に例として説明される。
【
図1】衛星ベースの通信システムにおける、異なったUEから衛星への距離を示す。
【
図3】時間および軌道面との距離に関する、受信された信号強度の変動を示す。
【
図4】時間および衛星の軌道面との距離に関する、ドップラーシフトの変動を示す。
【
図5】衛星の軌道面上における衛星からUEの投射点への距離の、時間による例示的な変動を示す。
【
図7】地球上通信システムにおける、2つのUEによるランダムアクセスプリアンブルの伝送を示す。
【
図8】従来の方式における、衛星ベースの通信システムにおける2つのUEによるランダムアクセスプリアンブルの伝送を示す。
【
図9】トリップ時間補償が本発明の態様に従って適用される場合の、ランダムアクセス試行のタイミングを例として示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図9は、トリップ時間補償が本発明の態様に従って適用される場合の、ランダムアクセス試行のタイミングを例として示す。UE2のプリアンブル送信時間T
TX,2の始まりは、選択されたアクセススロットがトリップ時間の2倍だけ後に(T
0,2に)始まるように選択される。すなわち、UE2が送信時間を以下のように選択する。
T
TX,2=T
0,2-2×t
trip2(1)
ここで、
t
trip2は、UE2から衛星に伝送された信号のトリップ時間である。
【0040】
したがって、ランダムアクセス試行の衛星における受信は、所与のアクセススロット境界内で発生する。小さいガード時間のみが、測定エラーの補償のために必要とされる。
【0041】
図1は、LEO衛星に基づく例示的な無線アクセスネットワーク10を示す。図は、2つの衛星(SAT
n,mおよびSAT
n,m+1)を示し、ここで添え字mは、同一軌道(Orbit n)上の衛星、および2つのUE(UE1およびUE2)を反復する。例示的に、LEO衛星の2つの典型的な距離は、
図1で参照される:地上の衛星の高さ(781km)、および、水平線から通常およそ10度の地上ベースの点により可視になる衛星の典型的な距離(2050km)。この例において、UE1はSAT
n,mから2050kmの距離に配置され、UE2の距離は781kmである。
【0042】
例において、衛星が水平線に現れてから反対側で同じ衛星が消えるまでの時間は、9分である。地上ベースのUEと衛星との間の距離は、実質的に予測可能な方式で、この9分内に大幅に変化することが、したがって経路損失とレイテンシもまた大幅に変化することが、
図1から明らかである。
【0043】
図2は、2つの軌道(Orbit nおよびOrbit n+1)を有する同様の例示的な設定を示し、ここで、添え字nは、衛星無線アクセスネットワークが含み得る全て(通常は6つ)の軌道を反復する。各軌道上で、2つの衛星のみが示され(それぞれ添え字mおよびm+1)、ここで、通常11の衛星が全体360度に示される。隣接軌道上の最も近い衛星は、1つの軌道上の衛星距離の半分だけオフセットされ得、その結果、軌道面間の点において地上に存在するUEが、交互軌道の衛星によりサービスを提供され得る。
【0044】
図1および
図2の設定は、現在配備されているLEO衛星ベースシステムと同様の例である。本発明は、異なる数の衛星、異なる数の軌道、異なる軌道の傾斜、異なる高さおよび衛星速度などを有する他の設定に対しても有効である。
【0045】
図3は、軌道面から異なる距離に示される衛星の単一の飛行の間(9分)の、秒の時間に対するdBm単位の、予想される受信信号強度(RSS)の例を示す図を示す。示された時間は位相時間t
Pであり、衛星が地上ベースのUEによって可視となるとき、それは"0"であり、それは、衛星が水平線からおよそ10°上に現れるときと仮定される。衛星が消えたとき、すなわち、水平線から10°上よりも下にあるとき、位相時間は540秒である。図は、
図1およびRSS(P
RSS)に関する以下の式に従ってジオメトリを仮定する。
P
RSS=P
0-10*n*log
10(r/R) (2)
ここで、
rは、
図1におけるジオメトリに従う、現在のUEから衛星への距離である。
R=2050kmは、維持される通信リンクを有する最大のUE-衛星距離である。
n=3は経路損失指数(n=2は視野の真空ライン)、n=4は典型的な都市環境である。 P
0は典型的なUEによって検出可能な最小のRSSであり、本明細書では-113dBmに設定される。
【0046】
本発明を通じて使用されるLEO衛星の例において、
図4は、正確に衛星の軌道面上の地上ベースのUEの上空飛行の期間に関する(実線)、および、衛星の軌道面から1000km離れたUEに関する(破線)、kHz単位のドップラー周波数f
Dopplerを示す。ドップラー周波数は、3GHzの搬送波周波数で示されるが、他の搬送波周波数が、
図4に関する線形変動を示すであろう。明らかに、この例におけるドップラー周波数は、上空飛行の期間の開始と終了においてそれぞれ正反対の符号を有する、およそ130kHzの最大値を有する。UEと衛星の間の急な角度の位相において(すなわち、衛星はUEの天頂にある)、ドップラー周波数は素早く+60kHzから-60kHzに低下する。
【0047】
基準信号の測定値からトリップ時間の推定値を取得することが可能であり、それは、予想値と比較することができる。初期トリップ時間を取得する原則は、衛星によって伝送された基準信号の1または複数の測定を実行することと、それらの測定値を、以前にUEに格納された既知の予想値と比較することである。比較は、最適に合致する曲線を送出し、したがって、軌道面までのUEの距離の推定値、すなわち軌道面(
図6参照)、D
U-PPおよび現在の位相時間T
PにおけるUEの投射点までの距離の推定値を送出する。これらの値から、トリップ時間が導出される。これがどのように行われるかについての詳細は、以下に説明される。
【0048】
本発明の第1の態様において、推定は複数の衛星からのRSS測定値、および、測定された衛星の相対的な位置のいくらかの知識に基づく。衛星は、例えば、それらのシステム情報における識別情報をブロードキャストし得、システム情報は、軌道上の衛星の順序の表示(
図2における添え字m)を提供し、および/または、それぞれの衛星が所属する軌道(
図2における添え字n)を提供する。上空飛行の期間の1.5倍(または、我々のLEO衛星の例においては4.5分)、または任意の他の比でシフトした異なる軌道にあることが知られている異なる衛星の、明らかに異なるダウンリンク信号に関して、UEによって実行される2つの測定値の比較は、そして、いずれかの衛星の位置の良好な推定値をもたらす。もちろん、現実の測定値は、上で説明された推定のものよりも正確な時間値、例えば秒またはその割合をもたらし得る。
【0049】
上記の第1の態様は、ある時間的距離の2以上の連続する測定値のRSS差を測定することによって拡張され得る。RSSが増加する衛星は、その飛行の前半において予想されることができ、減少するRSSは、後半に指摘され得る。より正確には、正確な差は絶対値と共に、位相時間と軌道面距離との正確な推定値に寄与する。
【0050】
本発明の第2の態様において、推定はドップラー周波数の測定値に基づく。すなわち、受信信号と伝送信号との間の周波数変動の測定値は、衛星とUEとの相対的速度によってもたらされる。
【0051】
ドップラー周波数の使用は、高速のフェージングおよびスカッタリングのような環境の影響に対する耐性があるので、有益である。ドップラー周波数測定値の使用は、位相時間の良好な表示であり、したがって、UEと衛星の相対的な位置の良好な表示である。ドップラー周波数差を導出するように、複数のドップラー周波数測定値を使用することは、位置推定の精度さえも向上させるであろう。
【0052】
RSSおよびドップラー周波数を使用する、上記の第1および第2の態様の、2つの説明された方法を組み合わせることは、さらに精度を向上させ得る。組み合わせの1つの方式は、まず、ドップラー周波数fdopplerの2以上の連続する測定値を作成し、その傾きΔfdopplerの割合を計算し、同時に、RSSの2以上の連続する測定値を作成する。そして、fdopplerおよびΔfdopplerの値は、異なる軌道面距離に関する予想されたドップラー周波数の曲線と比較される。測定された傾きに対して最小の変動を有する曲線が選択され、現在の位相時間TPが、選択された曲線と、測定された値fdopplerとの交点から取得される。
【0053】
例として、測定された値f
doppler=100kHzおよび、関連するΔf
doppler(円を通る直線の実線として示される)が
図4に示される(円として示される)。800km軌道面距離に関する曲線は、測定されたΔf
dopplerに良好に合致することが、わかるであろう。関連する位相時間はT
P1=110sである。
【0054】
次の段階において、平均値RSS
avgが、複数の測定されたRSS値から導出される。そして、RSS
avgは、導出された位相時間T
P1=110sにおける異なる軌道面距離に関して予想されるRSSの曲線と比較される。これは、この例においてRSS
avg=-111dBmが仮定されるとして、
図3に示される。値は、800kmと1200kmの軌道面距離の曲線の間にある。したがって、現在の軌道面距離D
U-PPは、1000kmとしての線形内挿によって導出される。
【0055】
ひとたび位相時間および軌道面への距離が導出されると、UEから衛星への距離DU-S、および、したがってトリップ時間が計算され得る。
【0056】
UEから衛星への距離は、以下のように計算され得る。
【数1】
ここで、
D
U-S: UEから衛星への距離
D
S-PP: 衛星から軌道面上のUEの投射点への距離
D
U-PP: UEから軌道面上のUEの投射点への距離
D
U-PPに関する値は上に説明されるようにUEによって導出され、値D
S-PPは位相時間および衛星の配置を使用した計算から導出される。LEO衛星に関するD
S-PPのコースは、
図5に示される。UEが、計算式および必要とされるパラメータ(軌道周期、軌道高度、軌道あたりの衛星の数など)によって予め設定されるか、複数の位相時間に関するD
S-PPの相対的な値が予め設定されるかのいずれかである。
【0057】
トリップ時間は以下のように計算される。
【数2】
ここで、
t
trip: UEから衛星へ伝送される信号のトリップ時間
D
U-S: UEから衛星への距離
C
l: 光の真空中での速さであり299,792,458m/sに等しい
【0058】
信頼できるトリップ時間がUEによって導出され得ない状況が、あり得る。この場合、UEは、以下に説明されるように、そのような状況を検出し、異なるランダムアクセス手順を実行するであろう。
【0059】
UEは、初期トリップ時間を導出した後、将来における任意の時間インスタンスのトリップ時間を容易に導出することができる。したがって、UEは直近導出されたトリップ時間ttrip,latest、タイムスタンプTlatest、軌道面への直近の距離DU-PP、および現在の軌道の値nを格納し、ここでトリップ時間は有効である。値nは、例えば衛星自身から導出される。
【0060】
将来のトリップ時間の計算に関して、関連する将来の位相時間が必要とされる。したがって、UEはまず、直近の時間インスタンスから将来の時間インスタンスに向けての時間差を計算し、直近の位相時間TP,latestを追加する。そして、ユークリッド除法(また、モジュラー演算として知られる)の余りは、modΔTSat、すなわち、イリジウム衛星の場合において540秒である同一軌道からの2つの連続する衛星の時間距離によって計算される。
TP,new=(Tfuture-Tlatest+TP.latest+Tcorrect)modΔTSat (5)
【0061】
値Tcorrectは、異なる軌道からの衛星の異なるタイミングを考慮するように使用される。現在の衛星が、直近のトリップ時間導出のために使用される衛星と同一軌道にある場合、Tcorrect=0である。新たな衛星が、隣接する軌道(n+1またはn-1)上にあり、隣接する軌道が上空飛行の期間の半分シフトしている場合、それは(1/2)ΔTSatであり、一般に以下のようになる。
Tcorrect=Tshift×(nlatest-nnew)ΔTSat (6)
ここで
Tshift:UEによって認識される隣接する軌道からのm衛星の時間的なオフセット
nlatest:直近のトリップ時間がUEにおいて格納された衛星の軌道番号
nnew:新たなトリップ時間が導出されるべき衛星の軌道番号
【0062】
新たな位相時間および格納された直近の軌道面距離によって、上に説明されるように、UEは新たなトリップ遅延を導出する。この計算は、直近のトリップ時間推定以来のUEの移動が小さい限りにおいて、有用な結果をもたらす。または、より正確には、直近のトリップ時間と、UEの移動の結果で新たに導出されたトリップ時間との差は、プリアンブルガード時間より小さい。これは、たいていの場合に有効である。例えば、0.684msのガードインターバルが構成される場合、計算されるトリップ時間は、少なくとも400kmまでの水平移動に使用可能である。
【0063】
誤った伝送タイミングでのプリアンブル送信は、プリアンブル衝突をもたらすことがある。無効なトリップ時間による伝送を回避するように、UEは、将来のトリップ時間の計算が信頼できるかどうかを検出する手段を使用し得る。これは、例えば、直近のトリップ導出の最大年代、例えば18分を定義することによって行われる。この最大年代の経過は、現在のトリップ時間を導出するために、上で説明された新たな測定値を必要とするであろう。
【0064】
上で説明された方法は、ランダムアクセスのためにスロットALOHA原則の使用を前提とする。なぜなら、3GPPネットワークへの衛星通信のためにもまた、最も使用されるであろうからである。アクセススロット境界内での正しい受信タイミングが所与のUEによって保証され得ない場合、成功するランダムアクセス試行の数は関連するセルにおける全てのUEで減少するか、ランダムアクセスが全く可能ではなくなるであろう。
【0065】
したがって、トリップ時間が信頼的に導出できない状況を検出することが本発明の一態様である。例えば、RSSが、衛星に接続するためには十分であるが、ランダムアクセスプリアンブルの伝送の前にトリップ時間を導出するためには過度に低いという、とても低い値である場合に、このようなことがありえる。UEは、例えば、現在測定されるRSSを設定可能閾値と比較することによって、この状況を検出し得る。RSSがこの閾値よりも下の場合、トリップ時間はUEによって導出されないであろう。UEの代わりに、異なるタイプのランダムアクセス手順が使用され、それはスロットALOHA原則に基づかず、プリアンブルがアクセススロット境界内で受信されることを必要としない。すなわち、トリップ時間についてのタイミング訂正が必要とされない。純ALOHAは、使用可能な原則である。スロットALOHAと比較すると、純ALOHAのスループットはより低いが、プリアンブルがアクセススロット境界と任意でオーバーラップするスロットALOHAを使用するよりはなお良好である。したがって、アクセススロット境界内でのプリアンブル受信が保証されるであろう場合は、スロットALOHAを使用することが有益であり、同期受信の信頼性が過度に低い場合は、純ALOHAの使用が有益である。
【0066】
異なるタイプのランダムアクセスを同時に適用するとき、ランダムアクセスプリアンブルの受信機(すなわち、衛星または地上の基地局)が、どのタイプのランダムアクセスがUEによって適用されるかを知っていることが重要である。したがって、第1の提案は、2つの異なるセットのランダムアクセスプリアンブルを使用することである。第1のセットはスロットALOHAモードのために使用され、第2のセットは非同期モード(例えば、純ALOHA)のために使用される。第2のセットは、予め指定されたプリアンブルを2つのグループに分けることによって、または、第2のグループに関する新たなプリアンブルを定義することによってのいずれかで導出される。UEは、関連するプリアンブル設定からプリアンブルを選択することによって、使用されるランダムアクセスタイプを容易に示し得る。代替の第2の提案は、2つの異なるランダムアクセス手法、例えば、スロットALOHAと非スロットALOHAの異なるサブキャリアのために、時間周波数領域における分離したリソースを割り当てることである。
【0067】
上で説明したように、ランダムアクセス応答間隔のための共通配置の使用は、ランダムアクセス手順の不要な長い遅延をもたらすであろう。したがって、本発明は、現在のトリップ時間から各UEに個々に、応答間隔を導出することを提案する。加えて、基地局からのセル特有の構成が考慮される。スロットALOHAモードTRAR,start,slottedにおける応答間隔の開始は、関連するプリアンブルの伝送が終わった後のトリップ時間の2倍と計算される。
TRAR,start,slotted=TTX+2×ttrip+TPreamble (7)
ここで
TTXは、関連するプリアンブルの伝送が始まった時間である。
TPreambleは、関連するプリアンブルの継続時間である。
【0068】
応答間隔の継続時間は、そして、基地局によって以前に伝送された構成パラメータから取得される。
【0069】
信頼できるトリップ時間が利用可能でなく、したがってUEが非同期ランダムアクセスモードを選択した場合、応答間隔TRAR,start,unsynchronisedの開始が、基地局によって伝送されたパラメータTRAR,delayから計算される。
TRAR,start,unsynchronised=TTX+Tdelay+TPreamble (8)
ここで
Tdelay:ランダムアクセスプリアンブルの伝送と、ランダムアクセス応答ウインドウの開始との間の時間オフセットである。この値は、UEへの基地局によって伝送される。それは、UEから衛星への最大トリップ時間、例えばLEO衛星の場合には14msの、少なくとも2倍であるように、基地局によって選択される。
【0070】
またこの場合、応答間隔の継続時間は、基地局によって以前に伝送された構成パラメータから取得される。
【0071】
以下の例において、LTE規格に従う無線インタフェースが前提とされる。この前提は、本発明を限定するものと理解されるべきではない。発明はまた、3GPPで指定された5Gのような将来のモバイル通信規格にも適用可能である。
【0072】
本発明の主要態様に従って、UE1が、通信に現在使用される衛星に向けて現在の信号トリップ時間を導出するように構成される。UE1は、衛星Sat
n,m(
図1参照)のカバレッジエリア内に配置される。それはアクティブ接続を有さない。すなわち、それはアイドルモードにある。UEは、衛星に向かう接続のためにランダムアクセス手順を実行するように構成される。それは、いくつかの位相時間およびいくつかの軌道面距離に関して、予想されるRSSおよびドップラー周波数に関する値を格納した。さらに、それは、信頼性のない測定値の検出および格納されたトリップ時間の無効性の検出のための閾値で構成される。
【0073】
段階1
UE1はスイッチをオンにされ、セル探索過程を実行する。それは、ネットワークへの接続のためにSATn,mを選択する。衛星によって伝送される、受信された信号から、UEは、リンクが衛星によって提供される旨の情報を取得する。さらにUEは、ブロードキャストされたシステム情報からランダムアクセス構成を導出した。LTEに予め指定されたパラメータに加えて、衛星は、非同期ランダムアクセスのために使用されるランダムアクセスプリアンブルの第2のセットを規定するパラメータを伝送する。
【0074】
段階2
UE1は、Satn,mへのランダムアクセスを実行したい。リンクが衛星を介して提供されるので、UEはプリアンブル送信の前にトリップ時間を導出するであろう。この例において、格納されたトリップ時間の、利用可能な値はない。したがって、UEはトリップ時間を取得するように、上で説明された測定を始める。
【0075】
段階3
UEは、スロットALOHAモードのそれぞれのセットから、ランダムアクセスプリアンブルおよびアクセススロットを選択する。UEは式1を使用して送信時間を計算する。
【0076】
段階4
UEは、ランダムアクセスプリアンブルを伝送して応答をリッスンする。UEがスロットALOHAモードを選択したとき、UEは上で説明されたようにランダムアクセス応答間隔TRAR,start,slottedの始まりを計算し、すなわち、現在のトリップ時間を考慮する。間隔の継続時間は、基地局によって以前に伝送された構成パラメータから導出される。
【0077】
段階5
衛星はプリアンブルを受信する。衛星はアクセススロット境界から受信時間の時間オフセットを計算し、タイミングアドバンス(TA)値を計算する。この挙動は、地球上の基地局と同様である。衛星は、TA値を含むランダムアクセス応答メッセージをUEに戻すように送信する。
【0078】
段階6
UEは計算された時間ウインドウ内で応答を受信し、TA値を次の伝送に適用する。さらに、UEは、直近のトリップ時間値を、受信されたTA値で訂正し、タイムスタンプを含む訂正された値を格納する。
【0079】
段階7
ここで、UEは通常はLTEに関するランダムアクセスを完了させる。
【0080】
以下の段階は、将来のトリップ時間計算のために使用され得る。
【0081】
段階1'
UE1はアイドルモードにあり、SATn,m+1がランダムアクセスのために使用されるであろう。UEは、例えばTracking Area Update(TAU)を伝送すべく、ここでランダムアクセスを実行したい。
【0082】
段階2'
これが衛星接続であるので、UEはプリアンブル送信の前にトリップ時間を導出するであろう。UEは直近に格納された値を使用し、上で説明されたように現在のトリップ時間を導出する。
【0083】
段階3'
UEはランダムアクセスを実行し、上のメッセージフローにおいて説明された段階4を処理し、段階5-7が続く。
【0084】
以下の段階は非同期ランダムアクセスのために使用され得る。
【0085】
段階1''
UE1はアイドルモードにあり、SATn,m+1がランダムアクセスのために使用されるであろう。UEは、ここでランダムアクセスを実行したい。
【0086】
段階2''
これが衛星接続であるので、UEはプリアンブル送信の前にトリップ時間を導出するであろう。この例において、格納されたトリップ時間の、利用可能な値はない。したがって、UEはトリップ時間を取得するように、上で説明された測定を始める。UEは、例えば、測定されたRSSが構成された閾値よりも下であるので、トリップ時間の測定が信頼性のある計算に適していないことを検出する。
【0087】
段階3''
UEは、非同期ランダムアクセスモードを選択し、このモードに関して構成されたプリアンブルおよびアクセススロットを選択する。
【0088】
段階4''
UEは、ランダムアクセスプリアンブルを伝送して応答をリッスンする。UEが非同期ランダムアクセスモードを選択したとき、UEは上で説明されたようにランダムアクセス応答間隔TRAR,start,unsynchronisedの始まりを計算し、すなわち、以前に基地局によって構成されたパラメータTdelayを考慮する。間隔の継続時間は、基地局によって以前に伝送された別のパラメータから導出される。
【0089】
段階5''
衛星はプリアンブルを受信する。衛星は直近のアクセススロット境界から受信時間の時間オフセットを計算し、タイミングアドバンス(TA)値を計算する。衛星は、TA値およびアクセススロットの数を含むランダムアクセス応答メッセージをUEに戻すように送信する。プリアンブルの受信の後の、この伝送のタイミングは、UEにおいて予め設定され、非同期ランダムアクセス方法に関して排他的に使用されるための固定値Tdelayである。
【0090】
段階6''
UEは計算された時間フレーム内で応答を受信し、TA値およびアクセススロット数に従って、次の伝送のタイミングを調整する。さらに、UEは、受信時間からのトリップ時間および伝送時間を導出する。それは、値Tdelayについて以下の式のように訂正されなければならない。
ttrip=(1/2)(TRX-TTX-Tdelay) (9)
【0091】
信頼できるトリップ時間の有効性からの1つの結果として、少なくとも指定された時間の間、将来のランダムアクセス試行として、UEはスロットランダムアクセス方法を使用し得る。
【0092】
以下の段階は、無効となる、格納されたトリップ時間値を取り除くように使用され得る。
【0093】
段階1*
UEはアイドルモードにあり、Satn,m+1がランダムアクセスのために使用されるであろう。UEは、ここでランダムアクセスを実行したい。
【0094】
段階2*
これが衛星接続であるので、UEはプリアンブル送信の前にトリップ時間を導出するであろう。UEは、直近に格納された値を読み取り、この値の有効期限が徒過したこと、すなわち、タイムスタンプのおかげで値が現在の構成によって可能とされるものより古いことを検出する。
【0095】
段階3*UEは格納された値を使用しないであろう。代わりに、UEはそれらを削除し、上の段階1から7に説明された新たな測定値から、新たなトリップ時間値を導出するであろう。
[項目1]
ユーザ機器(UE)デバイスによって、少なくとも1つの地球外伝送局を含む通信システムにおけるランダムアクセス試行を実行する方法であって、
前記地球外伝送局によって伝送される基準信号を受信する段階と、
前記UEデバイスと前記地球外伝送局との間のトリップ時間を決定する段階と、
前記トリップ時間を使用して前記ランダムアクセス試行を制御する段階と、を備え、
前記トリップ時間は、前記受信された基準信号から決定される、
方法。
[項目2]
決定された前記トリップ時間は、前記UEデバイスによるアクセス試行の伝送が、予め定められた時間フレーム内に地球外伝送局で受信されるように、前記アクセス試行の伝送のためのタイミングオフセットを決定するように使用される、項目1に記載の方法。
[項目3]
前記トリップ時間は、
i)受信された参考信号電力の測定値、
ii)2以上の連続的な参考信号電力測定値の間の決定された差、
iii)受信された基準信号のドップラー周波数シフトの決定、
iv)2以上の連続的な基準信号ドップラーシフトの決定の間の決定された差、
のうちの少なくとも1つによって決定される、項目1または項目2に記載の方法。
[項目4]
前記UEデバイスと、前記地球外伝送局と同一の、または異なる地球外伝送局との間の第2のトリップ時間が、前記通信システムにおける1または複数の地球外伝送局の相対的な移動に関連する、予め決定されたトリップ時間および情報を使用して推定される、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
[項目5]
前記トリップ時間の決定の信頼性のある推定に依存して、1より多いランダムアクセス方法のうちのいずれが前記ランダムアクセス試行の伝送を使用すべきか、前記UEデバイスが判断を行う、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。
[項目6]
前記トリップ時間が、前記地球外伝送局からの応答を受信するための応答時間を決定するように使用される、項目1から5のいずれか一項に記載の方法。
[項目7]
前記地球外伝送局が、低地球軌道における衛星である、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
[項目8]
基地局は2つのセットのランダムアクセスリソースを構成するように適合され、第1のセットのランダムアクセスリソースは、ユーザ機器デバイスによるスロットALOHAランダムアクセス試行を可能にし、第2のセットのランダムアクセスリソースは、ユーザ機器デバイスによる非同期ランダムアクセスを可能にする、衛星利用可能な通信システムの基地局。
[項目9]
前記第1のセットのランダムアクセスリソースは、地球外伝送局への信頼できるトリップ時間を導出することが可能なユーザ機器デバイスによる使用のために提供され、前記第2のセットのランダムアクセスリソースは、前記地球外伝送局への信頼できるトリップ時間を導出することが可能でないユーザ機器デバイスによる使用のために提供される、項目8に記載の通信システムの基地局。
【外国語明細書】