(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106780
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】格納式視準ターゲット
(51)【国際特許分類】
G01C 15/06 20060101AFI20240801BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
G01C15/06 T
G01C15/00 103A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011216
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505356491
【氏名又は名称】株式会社マシノ
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】若竹 亮
(72)【発明者】
【氏名】巽 義知
(72)【発明者】
【氏名】内藤 雅人
(72)【発明者】
【氏名】榎枝 千鶴子
(72)【発明者】
【氏名】中藤 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】西原 直哉
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 浩樹
(57)【要約】
【課題】視準ターゲットの破損リスクを小さくして、計測作業者の労力を軽減する。
【解決手段】格納式視準ターゲット1は、トータルステーション4による計測の際に用いられる視準ターゲット5が、無線操作で作動する作動源により中空のケース6内に格納可能とされており、計測時に視準ターゲット5が外部に臨む状態と、格納時に視準ターゲット5がケース6内に格納された状態とが切り換え可能となっている。これにより、切羽の発破時に飛散した土砂や石などが視準ターゲット5に当たって、視準ターゲット5が破損するリスクが大幅に低減できる。また、計測時に視準ターゲット5を取り付ける手間が省け、計測作業者の労力が軽減できる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トータルステーションによる計測の際に用いられる視準ターゲットが、無線操作で作動する作動源により中空のケース内に格納可能とされており、
計測時に前記視準ターゲットが外部に臨む状態と、格納時に前記視準ターゲットが前記ケース内に格納された状態とが切り換え可能となっていることを特徴とする格納式視準ターゲット。
【請求項2】
前記ケースが上下方向に二分されてそれぞれ固定側ケース部と可動側ケース部とを形成し、前記固定側ケース部と可動側ケース部とが一辺でヒンジ固定され、このヒンジ固定端を中心として前記可動側ケース部が回動することにより、前記ケースが開閉可能となっており、
前記固定側ケース部内の前記ヒンジ固定端とこれに対向するケース開口部が形成される開口端との間に沿って、シリンダとピストンロッドとからなるアクチュエータが配置され、
前記視準ターゲットの上端が前記ピストンロッドの先端に回動自在に連結されるとともに、前記視準ターゲットの下端が前記可動側ケース部の開口端近傍に回動自在に連結されており、
計測時には、前記ピストンロッドが前記シリンダから突出して、前記視準ターゲットが前記ケース開口部から外部に臨むように配置され、
格納時には、前記ピストンロッドが前記シリンダ内に収縮して、前記視準ターゲットが前記ケース内に折り畳まれようにして格納される請求項1記載の格納式視準ターゲット。
【請求項3】
一端が開口する有底筒状のケースの底部内面に、シリンダとピストンロッドとからなるアクチュエータが配置され、
前記ピストンロッドの先端に前記視準ターゲットが連結されており、
計測時には、前記ピストンロッドが前記シリンダから突出して、前記視準ターゲットが前記ケースの開口から外部に突出するように配置され、
格納時には、前記ピストンロッドが前記シリンダ内に収縮して、前記視準ターゲットが前記ケース内に没入される請求項1記載の格納式視準ターゲット。
【請求項4】
前記格納式視準ターゲットは、トンネルの内空変位計測用である請求項1記載の格納式視準ターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トータルステーションによる計測の際に用いられる視準ターゲットが、無線操作で作動する作動源により中空のケース内に格納可能とされた格納式視準ターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、NATM工法に代表される山岳トンネル工事においては、発破による掘削後に、あまり時間をおくことなく、掘削壁面に対する吹付けコンクリートによる一次覆工を行うとともに、ロックボルトを打設することで周辺地山の変形を抑えるようにした後、トンネル壁面の変位を日常的に管理する、所謂A計測(天端沈下量、内空変位等)が経時的に行われる。これらの計測の目的は、(1)周辺地山の変形が弾性範囲に留まっているのか、塑性しているのかの判断、(2)施工済み支保構造の妥当性の確認、(3)未施工区間の設計、施工性の検討、(4)二次覆工コンクリートの打設時期の判断などである。
【0003】
従来、この種の坑内A計測は、
図5に示されるように、トンネル内に設置された常設式又は移動式のトータルステーション50により、天端及び側壁に設置したプリズムや計測用反射シール等の視準ターゲット51を計測した後、この測定結果をコンピューターに入力し、各点の変位量や沈下量を表示していた。このような測量技術としては、例えば下記特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記視準ターゲットを切羽付近に設置すると、発破時に飛散した土砂や石などが当たって破損するリスクが大きくなるという問題があった。そのため、視準ターゲットを着脱式にして、計測時以外は取り外す等の措置をとっていた。
【0006】
ところが、視準ターゲットの着脱は、重機や工事車両が通る合間の僅かな時間に、高所作業車を用いて行う必要があるため、計測の時間的制約が大きく、計測作業者にかかる負担が過大になるなどの問題があった。そのため、視準ターゲットを取り外さなくても済む構造が求められていた。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、視準ターゲットの破損リスクを小さくして、計測作業者の労力を軽減した格納式視準ターゲットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、トータルステーションによる計測の際に用いられる視準ターゲットが、無線操作で作動する作動源により中空のケース内に格納可能とされており、
計測時に前記視準ターゲットが外部に臨む状態と、格納時に前記視準ターゲットが前記ケース内に格納された状態とが切り換え可能となっていることを特徴とする格納式視準ターゲットが提供される。
【0009】
上記請求項1記載の発明では、トータルステーションによる計測の際に用いられる視準ターゲットが、無線操作によって作動源を作動させることにより中空のケース内に格納可能とされ、計測時に前記視準ターゲットが外部に臨む状態と、格納時に前記視準ターゲットが前記ケース内に格納された状態とが切り換え可能となっているため、切羽の発破時に視準ターゲットを格納状態としておくことにより、飛散した土砂や石などが視準ターゲットに当たって、視準ターゲットが破損するリスクが大幅に低減できる。また、計測時には視準ターゲットをケースの外部に臨ませてトータルステーションにより視準ターゲットを視準できる計測状態に切り換えることにより、計測時以外は視準ターゲットを取り外し計測時に取り付けるという手間がなくなり、計測作業者の労力が軽減できる。
【0010】
請求項2に係る本発明として、前記ケースが上下方向に二分されてそれぞれ固定側ケース部と可動側ケース部とを形成し、前記固定側ケース部と可動側ケース部とが一辺でヒンジ固定され、このヒンジ固定端を中心として前記可動側ケース部が回動することにより、前記ケースが開閉可能となっており、
前記固定側ケース部内の前記ヒンジ固定端とこれに対向するケース開口部が形成される開口端との間に沿って、シリンダとピストンロッドとからなるアクチュエータが配置され、
前記視準ターゲットの上端が前記ピストンロッドの先端に回動自在に連結されるとともに、前記視準ターゲットの下端が前記可動側ケース部の開口端近傍に回動自在に連結されており、
計測時には、前記ピストンロッドが前記シリンダから突出して、前記視準ターゲットが前記ケース開口部から外部に臨むように配置され、
格納時には、前記ピストンロッドが前記シリンダ内に収縮して、前記視準ターゲットが前記ケース内に折り畳まれようにして格納される請求項1記載の格納式視準ターゲットが提供される。
【0011】
上記請求項2記載の発明は、視準ターゲットを格納可能とする第1形態例であり、視準ターゲットがケース内に折り畳まれるようにして格納されるようにしたものである。視準ターゲットがケース内に折り畳まれるようにして格納されるため、ケースが小型化でき、切羽の発破時に飛散した土砂や石などが当たって破損するリスクが更に低減できる。
【0012】
請求項3に係る本発明として、一端が開口する有底筒状のケースの底部内面に、シリンダとピストンロッドとからなるアクチュエータが配置され、
前記ピストンロッドの先端に前記視準ターゲットが連結されており、
計測時には、前記ピストンロッドが前記シリンダから突出して、前記視準ターゲットが前記ケースの開口から外部に突出するように配置され、
格納時には、前記ピストンロッドが前記シリンダ内に収縮して、前記視準ターゲットが前記ケース内に没入される請求項1記載の格納式視準ターゲットが提供される。
【0013】
上記請求項3記載の発明は、視準ターゲットを格納可能とする第2形態例であり、視準ターゲットがケースに対し出没可能に設けられたものである。このケースをトンネル壁面に設けられた削孔などの内部に嵌入させることにより、格納時に視準ターゲットがトンネル壁面から完全に没入するように配置されるため、切羽の発破時に飛散した土砂や石などが当たって破損するリスクが更に低減できる。
【0014】
請求項4に係る本発明として、前記格納式視準ターゲットは、トンネルの内空変位計測用である請求項1記載の格納式視準ターゲットが提供される。
【0015】
上記請求項4記載の発明では、本発明に係る格納式視準ターゲットの好適な用途として、トンネルの内空変位計測を挙げている。トンネルの内空変位計測では、切羽の発破時に飛散した土砂や石などが当たって視準ターゲットが破損するリスクが大きくなるため、視準ターゲットを格納可能とすることにより、そのようなリスクが軽減できる。
【発明の効果】
【0016】
以上詳説のとおり本発明によれば、視準ターゲットの破損リスクを小さくできるとともに、計測作業者の労力が軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】トンネル掘削後の変位計測システムを示すトンネル縦断面図である。
【
図2】(A)~(B)は変位計測要領を示す手順図である。
【
図3】第1形態例に係る格納式視準ターゲット1を示す、(A)は計測時、(B)は格納時の断面図である。
【
図4】第2形態例に係る格納式視準ターゲット1を示す、(A)は計測時、(B)は格納時の断面図である。
【
図5】従来の変位計測システムを示すトンネル斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る格納式視準ターゲット1を山岳トンネルの内空変位計測に適用した例について詳述する。
【0019】
図1に示されるように、例えば発破工法による山岳トンネルの掘削の場合には、切羽Sの近傍に、ドリルジャンボ2、吹付け機3、ホイールローダなどのトンネル施工用重機が配置され、例えば、補助ベンチ付全断面工法や上部半断面工法などにより、上半及び下半のそれぞれにおいて削孔及び装薬を行った後、上半及び下半を一気に切り崩し(発破し)、その後ズリ出し→当り取り→一次吹付け→支保建込み→二次吹付け→ロックボルト打設の手順によって掘削が行われるようになっている。
【0020】
掘削及び支保工を完了した掘削済み坑内では、所謂A計測と呼ばれるトンネルの内空変位測定が経時的に行われる。
【0021】
計測システムは、例えば
図1に示されるように、坑内にトータルステーション4が配設されるとともに、計測箇所に本発明に係る格納式視準ターゲット1が配設される。前記トータルステーション4は、トンネル掘進に合わせて順次盛り替えるようにするが、三脚方式により測定時に設置するようにしてもよい。また、図示しない現場事務所内に管理用コンピュータが設備され、制御器を介して有線又は無線で計測データ等の情報を双方向に伝送可能となっている。
【0022】
前記トータルステーション4による計測作業は、先ず、
図2(A)に示されるように、予め座標が既知とされる少なくとも2点の基準点A、Bをトータルステーション4により視準し、三角測量の原理を応用した後方交会法によりトータルステーション4の設置座標を算出する。このトータルステーション4の設置座標の特定作業は、設置点が変化している場合もあるため、各種測量が行われる毎に繰り返し行うようにするのが望ましい。なお、同図に示されるように、算出した座標を確認するためのチェック点を設けてもよい。
【0023】
その後、同
図2(B)に示されるように、所定時間毎に、又は現場事務所内に設置された管理用コンピュータからの指令を受ける度毎に、トータルステーション4が自動的に格納式視準ターゲット1を視準することにより、複数の内空断面の形状計測箇所についてトンネル壁面の形状計測を行う。
【0024】
前記内空断面形状の計測箇所は、坑口から切羽Sにかけて、その数及び間隔などを任意に選定することができる。また、計測箇所の断面数は、計測期間中、固定的なものではなく、掘進に伴って順次断面を追加するようにする。また、坑口側の計測が不要になった断面については順次計測対象から外すようにする。計測対象となる断面については、変位の推移を把握するために、所定の時間間隔で経時的に複数回繰り返して計測が行われる。
【0025】
以下、前記格納式視準ターゲット1について詳細に説明する。
【0026】
本発明に係る格納式視準ターゲット1は、トータルステーション4による計測の際に用いられる視準ターゲット(プリズム)が、無線操作で作動する作動源により中空のケース内に格納可能とされており、計測時に前記視準ターゲットが外部に臨む状態と、格納時に前記視準ターゲットが前記ケース内に格納された状態とが切り換え可能となっている。前記視準ターゲットがケース内に格納された状態では、視準ターゲットがトンネル内空に露出せず、ケースによって覆われており、トータルステーション4によるプリズムの視準が不可能な状態である。つまり、トータルステーション4による計測を行うには、視準ターゲットの格納状態を解除し、視準ターゲットのプリズム面をトンネル内空に露出させる操作が必要となる。
【0027】
前記視準ターゲットとしては、通常より小型のものを用いるのが好ましい。通常はプリズム径が1.5インチ(約38mm)のものが多く用いられるが、本発明では、これより小型の1インチ(約25mm)又は0.7インチ(約18mm)のものを用いるのがよい。これにより、視準ターゲットを格納するケース内のスペースが小さくて済み、機器の小型化が図れる。
【0028】
前記視準ターゲットの格納及びその解除は、無線操作で作動源を作動させることによって行われる。具体的には、格納式視準ターゲット1に受信器が備えられ、この受信器が、計測作業者が携帯する送信器からの指令信号や、現場事務所内に設置された管理用コンピュータからの指令信号などを無線で受信することにより、作動源となるアクチュエータなどが作動するようになっている。無線操作により視準ターゲットの格納及びその解除が可能となっているため、配線の手間や断線による故障などが生じず、計測作業にかかる労力が軽減できる。
【0029】
本発明に係る格納式視準ターゲット1では、視準ターゲットが中空のケース内に格納可能となっているため、視準ターゲットをケース内に格納した状態としておくことにより、切羽Sの発破時に飛散した土砂や石などが視準ターゲットに当たって、視準ターゲットが破損するリスクが大幅に低減できる。このような格納状態から、計測時には視準ターゲットが外部に臨む状態に簡単に切り換えられるため、発破時に視準ターゲットを取り外さなくて済むとともに、計測時に狭隘なトンネル坑内で視準ターゲットを取り付ける手間が省け、車両・重機との接触災害を防止することができ、計測作業者の労力が大幅に軽減できるとともに、トンネルの施工期間の短縮化が図れる。
【0030】
次に、前記視準ターゲットを格納可能とする具体的な実施形態例について説明する。
【0031】
〔第1形態例〕
第1形態例に係る格納式視準ターゲット1は、
図3に示されるように、視準ターゲット5を格納するケース6が上下方向に二分されてそれぞれ固定側ケース部6Aと可動側ケース部6Bとを形成し、前記固定側ケース部6Aと可動側ケース部6Bとが一辺でヒンジ固定され、このヒンジ固定端8を中心として前記可動側ケース部6Bが回動することにより、前記ケース6が開閉可能となっており、
前記固定側ケース部6A内のヒンジ固定端とこれに対向するケース開口部が形成される開口端との間に沿って横向きに、シリンダ9とピストンロッド10とからなるアクチュエータ7(作動源)が配置され、
前記視準ターゲット5の上端が前記ピストンロッド10の先端に回動自在に連結されるとともに、前記視準ターゲット5の下端が前記可動側ケース部6Bの開口端近傍に回動自在に連結されており、
計測時には、
図3(A)に示されるように、ピストンロッド10がシリンダ9から突出して、視準ターゲット5がケース6の開口部から外部に臨むように配置され、
格納時には、
図3(B)に示されるように、ピストンロッド10がシリンダ9内に収縮して、前記視準ターゲット5がケース6内に折り畳まれるようにして格納される。
【0032】
格納時に前記ケース6内に視準ターゲット5が格納されることにより、切羽Sの発破時に飛散した土砂や石などが視準ターゲット5に当たって破損するリスクが低減できる。一方、トータルステーション4による計測時は、無線操作により、ケース6を開いて格納された視準ターゲット5をケース開口部から外部に臨ませて視準可能な状態とする。
【0033】
前記ケース6は、
図3に示されるように、平面視で長辺と短辺とを有する平たい直方体からなる中空函体であり、上下方向(厚み方向)に2つに分割されて、その一方(トンネル壁面側)が固定側ケース部6A、他方(トンネル内空側)が可動側ケース部6Bを形成している。前記ケース6は、平面視の長辺がトンネル軸方向に沿うように配置され、これと直交する短辺がトンネル周方向に沿うように配置される。前記固定側ケース部6Aと可動側ケース部6Bとは、一方の短辺(切羽S側の短辺)が、蝶番などによって回動自在に連結されるヒンジ固定端8とされ、これと反対側の他方の短辺(坑口側の短辺)にケース開口部11が形成できるようになっている。
【0034】
前記固定側ケース部6Aは、上板の外面をトンネル壁面(一次吹付け面又は二次吹付け面)に対面させた状態で固定される。この固定側ケース部6Aには、格納式視準ターゲット1をトンネル壁面に固定するためのアンカーボルト挿通孔などの固定部が備えられている。
【0035】
一方、前記可動側ケース部6Bは、前記ヒンジ固定端8を中心に回動可能に設けられており、前記固定側ケース部6Aに重ね合わされてケース6が閉じた状態と、前記ヒンジ固定端8を中心に所定角度だけ回転して、前記ヒンジ固定端8と反対側の端部に前記ケース開口部11を形成した状態とに切り換えできるようになっている。
【0036】
前記固定側ケース部6A内には、ケース6の長辺方向、すなわち前記ヒンジ固定端8となる一方の短辺と前記ケース開口部11が形成される他方の短辺とを結ぶ方向に沿って、作動源となる前記アクチュエータ7が配置されている。前記アクチュエータ7としては、直線的な移動が可能な油圧式又は空圧式のシリンダや、ソレノイド、電動シリンダ、圧電アクチュエータなどを挙げることが可能である。
【0037】
また、前記ケース6内には、図示しないが、無線操作の電気信号を受信する受信器や、前記アクチュエータ7及び受信器を動作させる電源装置が配置されている。
【0038】
前記視準ターゲット5は、
図3(A)に示される計測時には、固定側ケース部6Aと可動側ケース部6Bとの間に形成された前記ケース開口部11からプリズム面が外部に臨むように配置される一方で、
図3(B)に示される格納時には、ほぼ90°回転してプリズム面が固定側ケース部6Aの上板の内面に対向した状態でケース6内に格納される。
【0039】
前記視準ターゲット5は、
図3(A)に示されるようにプリズム面をケース開口部11から臨ませた状態で、プリズム外縁のフレーム上端から上方に延びる連結杆12の先端が、前記シリンダ9から突出したピストンロッド10先端の連結部13に回動自在に連結されるとともに、プリズム外縁のフレーム下端から下方に延びる連結杆14の先端が、前記可動側ケース部6Bのケース開口部11近傍の連結部15に回動自在に連結されている。
【0040】
そして、計測時には、
図3(A)に示されるように、ピストンロッド10をシリンダ9から突出させることにより、視準ターゲット5のプリズム面がケース開口部11から外部に臨むように配置される。このとき、前記視準ターゲット5は、固定側ケース部6Aと可動側ケース部6Bとで挟まれた空間内に大部分が配置されており、この空間内において、前記ケース開口部11からプリズム面を外部に臨ませた状態、すなわちプリズム面を坑口側に向けた状態で配置されている。
【0041】
一方、格納時には、
図3(B)に示されるように、ピストンロッド10をシリンダ9内に収縮させることにより、視準ターゲット5がケース6内に折り畳まれるようにして格納される。具体的には、視準ターゲット5のプリズム面が上方に向くように約90°回転した状態で格納される。これによって、ケース6の高さ(厚み)を小さくでき、格納式視準ターゲット1の小型化が可能になり、石などが当たって破損するリスクがより低減できる。
【0042】
図3(A)に示される計測時の状態から、
図3(B)に示される格納時の状態に変化する機構は、ピストンロッド10が収縮することにより、ピストンロッド10の先端に連結された視準ターゲット5の上端が切羽S側に引き寄せられ、視準ターゲット5が下端の可動側ケース部6Bとの連結部15を中心に回転すると同時に、可動側ケース部6Bが上方に引き上げられる。その後、視準ターゲット5のプリズム面が固定側ケース部6Aの上板の内面に対向する位置に配置されると、固定側ケース部6Aに可動側ケース部6Bが重ね合わされ、視準ターゲット5がケース6内に格納された状態となる。このとき、ヒンジ固定端8やケース開口部11近傍両側の固定側ケース部6Aと可動側ケース部6Bとの間に、前記ケース開口部11を閉塞する方向に付勢された付勢手段を設けることにより、固定側ケース部6Aと可動側ケース部6Bとの閉塞を補助するようにしてもよい。
【0043】
前記視準ターゲット5をケース6内に格納可能とする実施形態例は、
図3に示されるものに限定されず、例えば、ケース6に開閉式の窓を設け、開放した窓から視準ターゲット5が臨むようにしてもよい。また、
図3に示される形態例では、ケース6がトンネル壁面から突出して設けられているが、トンネル壁面にケース6の全部又は一部が嵌入可能な凹部を設け、この凹部内にケース6を配置してもよい。
【0044】
〔第2形態例〕
次いで、視準ターゲット5を格納可能とする第2形態例について説明する。上記第1形態例と同様の部材については同一の符号を付して詳細な説明を割愛する。
【0045】
第2形態例では、
図4に示されるように、一端が開口する有底筒状のケース20の底部内面に、シリンダ9とピストンロッド10とからなるアクチュエータ7が配置され、
前記ピストンロッド10の先端に視準ターゲット5が連結されており、
計測時には、ピストンロッド10がシリンダ9から突出して、視準ターゲット5がケース20の開口から外部に突出するように配置され、
格納時には、ピストンロッド10がシリンダ9内に収縮して、視準ターゲット5がケース20内に没入される。
【0046】
第2形態例では、視準ターゲット5をケース20に対して出没可能に設けたものである。視準ターゲット5がケース20に出没可能となっているため、計測時以外は視準ターゲット5をケース20内に没入させておくことにより、切羽の発破時に飛散した土砂や石などが視準ターゲット5に当たって破損するリスクが低減できる。また、計測時には、視準ターゲット5をケース20から突出させることにより、トータルステーションで視準できるようになる。
【0047】
前記ケース20は、軸方向の一端に開口部21を有し他端に底部が形成された有底円筒形を成しており、開口側端縁に設けられたフランジ部などに、トンネル壁面に固定するためのアンカーボルト挿通孔などの固定部が備えられている。また、図示しないが、前記ケース20には、無線操作の電気信号を受信する受信器や、前記アクチュエータ7及び受信器を動作させる電源装置が備えられている。
【0048】
前記ケース20は、トンネル壁面に穿孔された削孔Hに嵌入した状態で配置される。この削孔Hは、ロックボルトを打ち込む穿孔機械などによってトンネル壁面(一次吹付け面又は二次吹付け面)に穿設された凹部であって、前記ケース20の外径とほぼ同じ大きさで形成されている。
【0049】
前記ケース20内には、ケース20の底部内面の中央部に深さ方向に伸縮可能なアクチュエータ7が固定され、このアクチュエータ7のピストンロッド10の先端に視準ターゲット5が固定されている。前記視準ターゲット5の前記アクチュエータ7と反対側の端部(トンネル内空側端部)には、前記ケース20の開口部21を閉塞する蓋体22が設けられている。図示の形態例では、前記ピストンロッド10の先端に、視準ターゲット5を取り付けるための枠体23が固定されており、この枠体23の下端に連続して前記蓋体22が設けられている。
【0050】
図4(A)に示される計測時には、ピストンロッド10をシリンダ9から突出させることにより、ピストンロッド10の先端に固定された視準ターゲット5をケース20の開口部21より外側に突出させる。このとき視準ターゲット5は、プリズム面が坑口側に設けられたトータルステーション4で視準可能なように配置される。
【0051】
一方、
図4(B)に示される格納時には、ピストンロッド10をシリンダ9内に収縮させることにより、視準ターゲット5がケース20内に完全に没入した状態で配置される。またこれと同時に、視準ターゲット5の下方に設けられた蓋体22が、ケース20の開口部21を閉塞するように配置される。
【0052】
第2形態例に係る格納式視準ターゲット1では、ケース20をトンネル壁面に穿設した削孔H内に嵌入した状態で配置することにより、格納時は視準ターゲット5が削孔H内に完全に没入し、トンネル壁面から突出するものが無くなるため、切羽の発破時に飛散した土砂や石などが当たって破損するリスクが大幅に低減できる。
【0053】
〔他の形態例〕
上記形態例では、格納式視準ターゲット1を山岳トンネルの変位計測に適用した例について説明したが、本発明に係る格納式視準ターゲット1は、地形測量や、土木工事、建築工事における位置管理計測、杭打ち管理計測など、角度及び距離を計測する広範な用途に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…格納式視準ターゲット、2…ドリルジャンボ、3…吹付け機、4…トータルステーション、5…視準ターゲット、6…ケース、7…アクチュエータ(作動源)、8…ヒンジ固定端、9…シリンダ、10…ピストンロッド、11…ケース開口部、12・14…連結杆、13・15…連結部、20…ケース、21…開口部、22…蓋体、23…枠体