(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106795
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】溝形鋼脱落防止金具
(51)【国際特許分類】
F16B 7/04 20060101AFI20240801BHJP
F16B 2/12 20060101ALI20240801BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
F16B7/04 301N
F16B2/12 A
E04B1/58 506F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011236
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000157197
【氏名又は名称】丸井産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 真也
【テーマコード(参考)】
2E125
3J022
3J039
【Fターム(参考)】
2E125AA13
2E125AB01
2E125AB05
2E125AC15
2E125BB16
2E125BB24
2E125CA03
3J022DA15
3J022EA38
3J022EB14
3J022EC02
3J022EC23
3J022ED22
3J022FB06
3J022GA12
3J022GB32
3J039AA06
3J039BB02
3J039CA15
3J039GA20
3J039JA08
(57)【要約】
【課題】挟持金具の固定ボルトの緩みが生じ、溝形鋼が脱落方向への移動姿勢となった際に、溝形鋼の脱落を防止する。
【解決手段】溝形鋼AをH形鋼のフランジC1の水平面に当接させた状態で、挟持金具BによってフランジC1と溝形鋼Aを挟持して固定ボルトB1の締付けにより固定する際の、溝形鋼Aの脱落を防止する溝形鋼脱落防止金具であって、溝形鋼Aが脱落方向への移動姿勢となった際に挟持金具Bに当接する規制部11と、該規制部から延設し溝形鋼に固定する固定部12とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝形鋼をH形鋼のフランジの水平面に当接させた状態で、挟持金具によって前記フランジと前記溝形鋼を挟持して固定ボルトの締付けにより固定する際の、前記溝形鋼の脱落を防止する溝形鋼脱落防止金具であって、前記溝形鋼が脱落方向への移動姿勢となった際に前記挟持金具に当接する規制部と、該規制部から延設した前記溝形鋼に固定する固定部とを備えた溝形鋼脱落防止金具。
【請求項2】
前記固定部にビス止め用孔部を設けた請求項1に記載の溝形鋼脱落防止金具。
【請求項3】
前記規制部に前記挟持金具に係止する係止部を設けた請求項1~2に記載のいずれか一項に記載の溝形鋼脱落防止金具。
【請求項4】
前記規制部は、前記挟持金具の前記溝形鋼と前記フランジとの重なり方向に延びる外周面に対向し、前記固定部は、前記規制部から屈曲して延び、前記溝形鋼の外周面に対向することを特徴とする請求項1に記載の溝形鋼脱落防止金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構築物の設備工事において、配管等の設備材を所定位置で支持するために長尺の溝形鋼をH形鋼からなる梁のフランジや梁間のフランジに渡して挟持金具によりそれらフランジに取り付ける場合の溝形鋼の脱落を防止するための脱落防止金具に関する。
【背景技術】
【0002】
挟持金具は、
図16、17に示すように、固定ボルトB1を進退可能に螺着した支持部B2と溝形鋼やリップ溝形鋼が挿通する開口部B3を有する保持部とから構成され、溝形鋼をH形鋼のフランジに当接した状態で溝形鋼の両側から対向するように一対の前記挟持金具をそれぞれ開口部に挿通させ、前記支持部に螺着した固定ボルトを締付けて、H形鋼のフランジと溝形鋼の両者を挟持して固定するものや、
図18に示すように、溝形鋼の開口を上向きに使用する際には、固定ボルトB1を進退可能に螺着した支持部B2と溝形鋼の長手方向に延びる開口の縁部に掛止する掛止部B4を有する保持部とから構成され、H形鋼のフランジに当接した状態で溝形鋼の両側から対向するように一対の前記挟持金具を開口の縁部に掛止部をそれぞれ掛止させ、前記支持部に螺着した固定ボルトを締付けて、H形鋼のフランジと溝形鋼の両者を挟持して固定するものがある。
【0003】
また、従来から溝形鋼をH形鋼のフランジに取付ける金具として、特許文献1、2及び3に示すように、H形鋼のフランジに溝形鋼を当接した状態で、固定ボルトの締め付けによりH形鋼と溝形鋼の両者を挟んで固定する挟持金具があり、それらの金具はビス孔を有し、そのビス孔から溝形鋼にビスを打付けてより強く固定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-325633号公報
【特許文献2】特開2019-19649号公報
【特許文献3】特開2021-195752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、
図16から
図18に示すような挟持金具Bには、溝形鋼等の長尺材の脱落を防止するための脱落防止金具はない。また、特許文献1、2においては、挟持金具の本体にビス孔を設けた一体形状のために、取付ける溝形鋼の種類が限定されて汎用性がなく利便性に欠ける。特許文献3においては、ビスを打つ施工を、溝形鋼をフランジに挟持金具で取付ける前に行う必要があり、後施工が行えないため施工時期が限定され、作業の段取りに支障が出るという問題がある。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みなされたもので、配管等の設備材を支持する長尺の溝形鋼をH形鋼のフランジに取り付ける際、地震時に大きな水平力が付加された場合や、繰り返しの振動等による挟持金具の固定ボルトの緩みが生じた場合でも溝形鋼の脱落を防止するための脱落防止金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するための脱落防止金具は、配管等の設備材を支持する溝形鋼をH形鋼からなる梁のフランジの水平面に当接させた状態で、挟持金具によって前記フランジと前記溝形鋼を挟持して固定ボルトの締付けにより固定する際の、前記溝形鋼の脱落を防止する溝形鋼脱落防止金具であって、前記溝形鋼が脱落方向への移動姿勢となった際に前記挟持金具に当接する規制部と、該規制部から延設した前記溝形鋼に固定する固定部とを備えたことを要旨とする。
【0008】
脱落防止金具について、前記固定部にビス止め用孔部を設けてもよい。
【0009】
脱落防止金具について、前記規制部に前記挟持金具に係止する係止部を設けてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、地震時に大きな水平力が付加された場合や、繰り返しの振動等による挟持金具の固定ボルトの緩みが生じた場合に溝形鋼が脱落方向への移動姿勢となった際に、溝形鋼が固定部により固定され、該固定部から延設された規制部に前記挟持金具が当接して脱落方向への移動を規制することで脱落を防止することができる。しかも、挟持金具とは別体とし、溝形鋼に直接固定することができるので、挟持金具の取り付け後にでもあと施工で取り付けできると共に、挟持金具の外側面への当接により移動を規制する手段のため、挟持金具の形態に限定されることなく多種の挟持金具に併用できるので汎用性も高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】本発明の実施形態1の取付け状態を示す斜視図。
【
図4】本発明の実施形態2の取付け状態を示す斜視図。
【
図6】本発明の実施形態3の取付け状態を示す斜視図。
【
図8】本発明の実施形態4の取付け状態を示す斜視図。
【
図10】本発明の実施形態2と溝形鋼を挟持金具の開口部に挿嵌して固定するタイプの挟持金具を使用した場合を示す斜視図。
【
図11】本発明の実施形態2と溝形鋼を挟持金具の開口部に挿嵌して固定するタイプの挟持金具を使用した場合を示す側面図。
【
図12】本発明の実施形態2とリップ溝形鋼を挟持金具の開口部に挿嵌して固定するタイプの挟持金具を使用した場合を示す斜視図。
【
図13】本発明の実施形態2とリップ溝形鋼を挟持金具の開口部に挿嵌して固定するタイプの挟持金具を使用した場合を示す側面図。
【
図14】本発明の実施形態2と挟持金具の掛止部を溝形鋼の開口縁に係止させて固定するタイプの挟持金具を使用した場合を示す斜視図。
【
図15】本発明の実施形態2と挟持金具の掛止部を溝形鋼の開口縁に係止させて固定するタイプの挟持金具を使用した場合を示す側面図。
【
図16】溝形鋼を挟持金具の開口部に挿嵌して固定するタイプの挟持金具を示す斜視図。
【
図17】リップ溝形鋼を挟持金具の開口部に挿嵌して固定するタイプの挟持金具を示す斜視図。
【
図18】挟持金具の掛止部を溝形鋼の開口縁に係止させて固定するタイプの挟持金具を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の脱落防止金具の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。本発明の脱落防止金具は、配管等の設備材を支持する溝形鋼を、H形鋼からなる梁のフランジの水平面に当接させて、溝形鋼とフランジとを重ね合わせ、固定ボルトの締付けによりフランジと溝形鋼を挟持する挟持金具によって固定した際の、溝形鋼の脱落を防止する溝形鋼用の脱落防止金具である。この脱落防止金具は、金具本体10,20,30,40,50と、これを溝形鋼Aに固定するビスとを含む。金具本体10,20,30,40,50は、挟持金具と別体の金具である。
【0013】
(実施形態1)
図1~2は実施形態1を示し、金具本体10は、薄鋼鈑からなる規制部11と、規制部11の側面を屈曲すると共に、下方に延設された固定部12とを備える。固定部12には複数のビス止め用の孔部13が形成される。
【0014】
図2において、下向きに開口を有する溝形鋼Aの上面をH形鋼のフランジC1の下面に当接させ、溝形鋼AとフランジC1とを上下に重ね合わせている。また、挟持金具Bの開口部B3へ溝形鋼Aを嵌挿させた状態で挟持金具Bに溝形鋼AとフランジC1とを挟持させて固定している。このような状態の溝形鋼Aに本実施形態の脱落防止金具を取り付ける際、挟持金具Bの溝形鋼AとフランジC1との重なり方向に延びる外周面に規制部11が対向するように、溝形鋼Aの上面A1に立設した状態で配置し、規制部11から屈曲して挟持金具Bから離れる方向及び上面A1より下方に延びる固定部12を溝形鋼Aの外周面である側面A2に当接させる。この状態で孔部13を介してビス止めをして金具本体10を溝形鋼Aに固定することができる。本実施形態において重なり方向とは、
図2における上下方向である。
【0015】
(実施形態2)
図3~4は実施形態2を示し、上記実施形態1と異なる部分のみの説明とし、共通部分の説明は省略する。金具本体20は規制部21の上端から水平方向且つ固定部22から離れる方向に屈曲して連結部24を形成し、該連結部24には透孔25を形成して係止部26とする。
【0016】
更に連結部24の先端を下方に屈曲させて掛止部27を形成することもできる。掛止部27は挟持金具Bの端部に掛止可能である。
【0017】
本実施形態の脱落防止金具を溝形鋼Aに取り付ける際、挟持金具Bの固定ボルトB1を連結部24の透孔25に挿通させながら、掛止部27を挟持金具Bの支持部B2の先端に掛止した状態で配置することで、規制部21は溝形鋼Aの上面A1に立設した状態となり、固定部22は側面A2に当接した状態で孔部23を介してビス止めをして溝形鋼Aに固定することができる。また、予め、挟持金具Bに係止部26の透孔25を固定ボルトに挿通して先組とすることで金具を集約できるので、持ち運びや作業時に煩雑にならない。
【0018】
(実施形態3)
図5~6は実施形態3を示し、金具本体30は、薄鋼鈑からなる規制部31を屈曲して略L字状に延設された固定部32であり、固定部32にはビス止め用の孔部33を形成する。本実施形態の脱落防止金具を溝形鋼Aに取り付ける際、固定部32は溝形鋼Aの上面A1に当接する。規制部31は、固定部32の挟持金具Bに近接する側の端部から上方へ延びる。規制部31は、挟持金具Bの溝形鋼AとフランジC1との重なり方向に延びる外周面に対向し、溝形鋼Aの上面A1に立設した状態となり、固定部32は孔部33を介してビス止めをして溝形鋼Aへ固定することができる。
【0019】
(実施形態4)
図7~8は実施形態4を示し、上記実施形態3と異なる部分のみの説明とし、共通部分の説明は省略する。金具本体40は規制部41の上端から水平方向に屈曲して連結部44を形成し、更に先端を下方に屈曲させて掛止部47を形成し、連結部44には透孔45を形成する。溝形鋼Aに取り付ける際、挟持金具Bの固定ボルトB1を連結部44の透孔45に挿通させながら、掛止部47を挟持金具Bの支持部B2の先端に掛止した状態で設置することで、規制部41は溝形鋼Aの上面A1に立設した状態となり、固定部42は上面A1に当接した状態で孔部43を介してビス止めをして固定することができる。
【0020】
前記実施形態1~4として示した金具本体10、20、30、40はプレス加工により一体的に形成することが望ましい。
【0021】
(実施形態5)
図9は実施形態5を示し、上記実施形態3及び4の固定方法を変更した形態であり、金具本体50の固定部52に透孔53を設け、溝形鋼Aの開口A3が上向きの際に、板状のナット54を開口A3の開口縁A4に係止し、連結ボルト55を締付けて挟持させることで固定することができる。
【0022】
次に、本発明の脱落防止金具の使用方法について実施形態2により説明する。
【0023】
図10~11は溝形鋼を挟持金具の開口部に挿通して固定するタイプ(
図16参照)の挟持金具を使用した場合であって、溝形鋼Aの開口A3を下方に向け、上面A1をH形鋼Cの下面に当接した状態で、溝形鋼Aの一端に挟持金具Bの開口部B3を嵌挿し、H形鋼Cの一方のフランジC1を介して、固定ボルトB1を締付けて固定し、同様に他端に別の挟持金具Bにより固定する。
【0024】
次に本発明の脱落防止金具を取り付けるが、金具本体20の連結部24の透孔25を挟持金具Bの固定ボルトB1を挿通させながら、掛止部27を挟持金具Bの支持部B2の先端に掛止した状態で設置することで、規制部21は溝形鋼Aの上面A1に立設した状態となり、固定部22は側面A2に当接した状態で孔部23を介してビス止めをして溝形鋼Aに固定する。
【0025】
固定ボルトB1の緩みが生じた場合、従来は挟持金具Bとともに溝形鋼Aが傾いて、溝形鋼Aが脱落するおそれがあったが、本発明の脱落防止金具を取り付ければ、固定ボルトB1の緩みが生じて溝形鋼Aが脱落方向への移動姿勢となった際に、規制部21が挟持金具Bの外側面に当接して溝形鋼Aの脱落を防止することができる。脱落方向への移動とは、例えば、溝形鋼Aが上下方向に傾くこと及び長手方向へ移動することを指す。規制部11が挟持金具Bの角度及び位置を規制することで、溝形鋼Aのこのような移動及び脱落を防止できる。
【0026】
図12~13は横向きとするリップ溝形鋼を挟持金具の開口部に挿通して固定するタイプ(
図17参照)の挟持金具を使用した場合であって、リップ溝形鋼の側面A2をH形鋼Cの下面に当接した状態で、リップ溝形鋼Aの一端に挟持金具Bの開口部B3を嵌挿し、H形鋼Cの一方のフランジC1を介して、固定ボルトB1を締付けて固定し、同様に他端に別の挟持金具Bにより固定する。
【0027】
次に本発明の脱落防止金具を取り付けるが、金具本体20の連結部24の透孔25を挟持金具Bの固定ボルトB1を挿通させながら、掛止部27を挟持金具Bの支持部B2の先端に掛止した状態で設置することで、規制部21はリップ溝形鋼Aの側面A2に立設した状態となり、固定部22は開口縁A4に当接した状態で孔部23を介してビス止めをしてリップ溝形鋼Aに固定する。
【0028】
図14~15は挟持金具の掛止部B4を溝形鋼の開口縁A4に掛止させて固定するタイプ(
図18参照)の挟持金具を使用した場合であって、溝形鋼Aの開口A3を上方に向け、開口をH形鋼Cの下面に当接し、溝形鋼Aの一端に挟持金具Bの掛止部B4を開口縁A4に掛止した状態で、H形鋼Cの一方のフランジC1を介して、固定ボルトB1を締付けて固定し、同様に他端に別の挟持金具Bにより固定する。
【0029】
次に本発明の脱落防止金具を取り付けるが、金具本体20の連結部24の透孔25を挟持金具Bの固定ボルトB1を挿通させながら、掛止部27を挟持金具Bの支持部B2の先端に掛止した状態で設置することで、規制部21は溝形鋼Aの開口A3に立設した状態となり、固定部22は側面A2に当接した状態で孔部23を介してビス止めをして溝形鋼Aに固定する。
【符号の説明】
【0030】
10、20、30、40、50 金具本体
11、21、31、41、51 規制部
12、22、32、42、52 固定部
13、23、33、43 孔部
24、44 連結部
25、45 透孔
26、46 係止部
27、47 掛止部
53 透孔
54 ナット
55 連結ボルト
A 溝形鋼、リップ溝形鋼
A1 上面
A2 側面
A3 開口
A4 開口縁
B 挟持金具
B1 固定ボルト
B2 支持部
B3 開口部
B4 掛止部
C H形鋼
C1 フランジ