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特開2024-106797電動車両のバッテリパック構造体及び電動車両の車両構造
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  • 特開-電動車両のバッテリパック構造体及び電動車両の車両構造 図1
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  • 特開-電動車両のバッテリパック構造体及び電動車両の車両構造 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106797
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】電動車両のバッテリパック構造体及び電動車両の車両構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20240801BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240801BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240801BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240801BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6556
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011238
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】三輪 佳大
(72)【発明者】
【氏名】周 徐斌
【テーマコード(参考)】
3D235
5H031
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB02
3D235BB36
3D235BB43
3D235BB45
3D235CC15
3D235DD35
3D235FF43
3D235HH02
5H031AA09
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】クーリングプレートが破損する可能性を抑制ないし防止し得る電動車両のバッテリパック構造体及び電動車両の車両構造を提供する。
【解決手段】電動車両のバッテリパック構造体は、複数個のバッテリを有するバッテリ組立体及びバッテリ組立体を収容するケースを備えたバッテリパックと、ケースの下方に配置され、冷媒流路を有するクーリングプレートと、を備える。電動車両のバッテリパック構造体は、クーリングプレートを保護する保護部材を更に備える。保護部材は、クーリングプレートの下方にかつクーリングプレートとの間に隙間を設けて配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のバッテリを有するバッテリ組立体及び前記バッテリ組立体を収容するケースを備えたバッテリパックと、前記ケースの下方に配置され、冷媒流路を有するクーリングプレートと、を備えた電動車両のバッテリパック構造体であって、
前記クーリングプレートを保護する保護部材を更に備え、
前記保護部材は、前記クーリングプレートの下方にかつ前記クーリングプレートとの間に隙間を設けて配置されている
ことを特徴とする電動車両のバッテリパック構造体。
【請求項2】
前記保護部材は、バッテリパック構造体の平面視において矩形形状を有する複数の分割保護部材からなり、
前記分割保護部材は、その長手方向をバッテリパック構造体の左右方向に向けかつバッテリパック構造体の前後方向に沿って間隔を設けて配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電動車両のバッテリパック構造体。
【請求項3】
複数個のバッテリを有するバッテリ組立体、及び前記バッテリ組立体を収容するケースを備えたバッテリパックと、前記ケースの下方に配置され、冷媒流路を有するクーリングプレートと、を備えた電動車両のバッテリパック構造体と、
前記クーリングプレートの下方に配置された電動車両のアンダーカバーと、を備えた電動車両の車両構造であって、
前記電動車両のバッテリパック構造体は、クーリングプレートを保護する保護部材を更に備え、
前記保護部材は、前記クーリングプレートの下方にかつ前記アンダーカバーの上方にかつ前記クーリングプレートとの間に隙間を設けてかつ前記アンダーカバーとの間に他の隙間を設けて配置されている
ことを特徴とする電動車両の車両構造。
【請求項4】
前記保護部材は、バッテリパック構造体の平面視において矩形形状を有する複数の分割保護部材からなり、
前記分割保護部材は、その長手方向をバッテリパック構造体の左右方向に向けかつバッテリパック構造体の前後方向に沿って間隔を設けて配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の電動車両の車両構造。
【請求項5】
電動車両の上下方向における前記他の隙間の大きさに対する前記隙間の大きさの比が、2以上3以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載の電動車両の車両構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両のバッテリパック構造体及び電動車両の車両構造に係り、さらに詳細には、所定のクーリングプレートを保護する保護部材を備えた電動車両のバッテリパック構造体及び電動車両の車両構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、軽量化を図ることができると共に冷却体の冷却液の蒸発潜熱によるバッテリセルの冷却効率の低下を抑制することができるバッテリ装置を開示している。特許文献1に開示されたバッテリ装置は、バッテリケース内に並設された複数のバッテリセルを絶縁性の冷却液の蒸発潜熱を利用して冷却するバッテリ装置である。このバッテリ装置は、バッテリセルの外表面に接触するように複数のバッテリセルの間に配設されてバッテリケース内の冷却液を吸収または含浸する冷却体と、複数の前記バッテリセルの並び方向に冷却体に隣接して設けられたスペーサとを備える。スペーサのうち冷却体に対向する面には、冷却体の冷却液が蒸発することにより発生した冷媒蒸気が流通する冷媒蒸気流路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/129571号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたようなバッテリ装置においては、バッテリケース内部の冷却路に不具合が生じた場合に冷却液に起因する漏電が発生する可能性があるという問題点がある。このような問題点に対して、バッテリケース外部であるバッテリケース下方にクーリングプレートを設けるようにした場合、クーリングプレートがバッテリケース下方にむき出しの構造になる。そして、このような構造においては、路面側からのクーリングプレートへの入力によりクーリングプレートが破損する可能性があるという問題点があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであって、クーリングプレートが破損する可能性を抑制ないし防止し得る電動車両のバッテリパック構造体及び電動車両の車両構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、電動車両のバッテリパック構造体のクーリングプレートを保護する保護部材をクーリングプレートの下方にかつクーリングプレートとの間に隙間を設けて配置することにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の電動車両のバッテリパック構造体は、複数個のバッテリを有するバッテリ組立体及びバッテリ組立体を収容するケースを備えたバッテリパックと、ケースの下方に配置され、冷媒流路を有するクーリングプレートと、を備える。
電動車両のバッテリパック構造体は、クーリングプレートを保護する保護部材を更に備える。
保護部材は、クーリングプレートの下方にかつクーリングプレートとの間に隙間を設けて配置されている。
【0008】
また、本発明の電動車両の車体構造は、電動車両のバッテリパック構造体と、電動車両のアンダーカバーと、を備える。
電動車両のバッテリパック構造体は、複数個のバッテリを有するバッテリ組立体及びバッテリ組立体を収容するケースを備えたバッテリパックと、ケースの下方に配置され、冷媒流路を有するクーリングプレートと、を備える。
電動車両のアンダーカバーは、クーリングプレートの下方に配置される。
電動車両のバッテリパック構造体は、クーリングプレートを保護する保護部材を更に備える。
保護部材は、クーリングプレートの下方にかつアンダーカバーの上方にかつクーリングプレートとの間に隙間を設けてかつアンダーカバーとの間に他の隙間を設けて配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電動車両のバッテリパック構造体のクーリングプレートを保護する保護部材をクーリングプレートの下方にかつクーリングプレートとの間に隙間を設けて配置したため、クーリングプレートが破損する可能性を抑制ないし防止し得る電動車両のバッテリパック構造体及び電動車両の車両構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の電動車両の車体構造の第1実施形態を示す概略底面図である。
図2図1に示した電動車両の車体構造を示す概略側面図である。
図3図1に示した電動車両の車体構造のIII-III線に沿って切った概略断面図である。
図4】第2実施形態の電動車両の車体構造を示す概略底面図である。
図5図4に示した電動車両の車体構造を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の電動車両のバッテリパック構造体及び電動車両の車両構造について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下で引用する図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。また、以下の図面におけるFR、RRは、電動車両、これに設けられるバッテリパック構造体の前後方向における前方、後方をそれぞれ示す。さらに、LH、RHは、電動車両、これに設けられるバッテリパック構造体の左右方向における左方、右方をそれぞれ示す。さらに、UP、DNは、電動車両、これに設けられるバッテリパック構造体、ケース、クーリングプレート、アンダーカバーの上下方向における上方、下方をそれぞれ示す。
【0012】
(第1実施形態)
図1図3に示すように、本実施形態の電動車両の車体構造1は、電動車両のバッテリパック構造体10と、電動車両のアンダーカバー20とを備えている。なお、以下、本明細書において、「電動車両の車体構造」、「電動車両のバッテリパック構造体」及び「電動車両のアンダーカバー」のそれぞれを単に「車体構造」、「バッテリパック構造体」及び「アンダーカバー」ということがある。また、本明細書における電動車両は、車両の駆動源の一部又は全部としてモータを備え、モータの駆動力のみにより走行可能な自動車であればよく、例えば、電気自動車だけでなく、ハイブリッド自動車や燃料電池自動車も含まれる。さらに、車両構造1を実線で示した二輪駆動(2WD)に適用した場合を図示したが、二点鎖線で示したように、車両構造1を四輪駆動(4WD)に適用することもできる。
【0013】
バッテリパック構造体10は、バッテリパック11と、クーリングプレート13と、保護部材15と、を備えている。
【0014】
バッテリパック11は、複数個のバッテリB1~B6と、その間に配置されたクッション材C1~C6を有する複数個のバッテリ組立体111A~111Dと、複数個のバッテリ組立体111A~111Dを収容するケース113を備えている。図3中においては、6個のバッテリを表示しているが、その個数は特に限定されない。また、図3中においては、4個のバッテリ組立体を表示しているが、その個数は特に限定されない。このようなバッテリ組立体は、バッテリモジュールと呼ばれることもある。図3中のバッテリ組立体111Bは、例えば、ケース部材Cを有し、さらに、ケース部材CとバッテリB1~B6との間に従来公知の熱伝導性接着材ADを有し、ケース部材Cとケース113との間に従来公知の隙間埋め材GFを有する。
【0015】
このバッテリパック11は、インバータ44A(44B)に接続されている。そして、インバータ44A(44B)は、モータ40A(40B)に接続されている。さらに、モータ40A(40B)は、減速機41A(41B)、駆動軸42A(42B)を介して、駆動輪43A,43B(43C,43D)を駆動する。
【0016】
クーリングプレート13は、ケース113の下方に配置され、水などの冷媒CLが流れる冷媒流路13aを有している。また、図3中のクーリングプレート13は、冷媒CLを温度制御して循環させるためのラジエータ32、ファン34、バルブ36、ポンプ37、チラー38、ヒータ39を有している。また、電動車両にはグリルシャッター31が設けられている。さらに、空調ユニット35は、コンデンサ33を備えており、クーリングプレート13とファン34及びチラー38を共用している。
【0017】
アンダーカバー20は、例えば、樹脂製であり、クーリングプレート13の下方に配置されている。また、上述したモータ40Aやファン34等が配置される部位であるいわゆるモータルームにもアンダーカバー30が設けられている。
【0018】
保護部材15は、例えば、金属製であり、クーリングプレート13の下方にかつクーリングプレート13との間に隙間15cを設けて配置されている。なお、保護部材15をアンダーカバー20と同様に樹脂製とした場合、クーリングプレート13の破損抑制向上効果が小さいことがある。
【0019】
さらに、保護部材15は、アンダーカバー20の上方にかつアンダーカバー20との間に他の隙間20cを設けて配置されている。
【0020】
さらに、本実施形態においては、電動車両の上下方向における他の隙間20cの大きさH2に対する隙間15cの大きさH1の比が、2以上3以下であることが好ましい。
【0021】
次に、本実施形態の利点について説明する。本実施形態によれば、クーリングプレート13の下方にかつクーリングプレート13との間に隙間15cを設けて保護部材15を配置して、バッテリパック構造体10のクーリングプレート13を保護したので、ケース内部で冷媒に起因する漏電が発生するおそれがなく、クーリングプレートが破損する可能性を抑制ないし防止できる。また、保護部材15とクーリングプレート13との間の隙間15cにより、断熱性を有する空気層が形成されるため、路面温度が高い場合に、路面側からクーリングプレートへの入熱が抑制ないし防止され、クーリングプレートによるバッテリパックの温度制御性が向上するという副次的な利点もある。なお、所望の断熱性が得られれば、隙間15cは、冠水時における排水に利用可能な穴等を有していてもよい。
【0022】
また、本実施形態によれば、上述したH2に対するH1の比が2以上3以下であるので、クーリングプレートによるバッテリパックの温度制御性が向上するという副次的な利点が得られるだけでなく、グリルシャッター31からラジエータ32、モータ40A等を通った空気が、さらに他の隙間20cを通って外気へ抜ける際の空力性能も十分なものとなる。
【0023】
ここで、上述の温度制御性と空力性能についてより詳細に説明する。クーリングプレート13と保護部材15との間の隙間15cの大きさH1が大きいほど、断熱効果が大きくなるので、クーリングプレートの冷却性能(温度制御性)が向上する。従って、断熱効果を大きくするために、保護部材15とアンダーカバー20との間の他の隙間20cの大きさH2を限りなく小さくすることが考えられる。しかしながら、保護部材15とアンダーカバー20との間の他の隙間20cは電動車両の空力性能にも寄与する。そのため、他の隙間20cの大きさH2は一定程度確保することが好ましく、ゼロにすることは好ましくない。
【0024】
グリルシャッター31から得た空気は、ラジエータ32、モータ40A等の順に通過し、保護部材15とアンダーカバー20との間の他の隙間20cを通過して、車両外へ排出される。アンダーカバー20は、モータルームを含む形で、例えば一体部品として同じ高さになっていないと、空気が通過する際、その高さの差によって空気抵抗が上昇してしまい、十分な空力性能が得られないことがある。
【0025】
上述のような理由から、他の隙間20cの大きさH2は一定程度確保することが好ましい。なお、モータルームに別の保護部材があったとしても、同じ高さの隙間が確保されていれば、特に問題はない。さらに、優れた断熱性能と空力性能が得られるという観点からは、他の隙間20cの大きさH2に対する隙間15cの大きさH1の比が、2以上3以下であることが好ましい。
【0026】
また、図4及び図5は、本発明の電動車両のバッテリパック構造体及び電動車両の車両構造の第2実施形態を説明する図である。以下の実施形態では、上述した第1実施形態と同じ構成部位に同一符号を付して詳細な発明を省略する。
【0027】
(第2実施形態)
図4及び図5に示すように、本実施形態の電動車両の車体構造2は、保護部材15がバッテリパック構造体の平面視において矩形形状を有する複数の分割保護部材151~157からなり、分割保護部材は、その長手方向をバッテリパック構造体10の左右方向に向けかつバッテリパック構造体の前後方向に沿って間隔を設けて配置されていること以外は、第1実施系形態の電動車両の車体構造1と同様の構造を有している。なお、図4及び図5中においては、7個の分割保護部材151~157を表示しているが、その個数は特に限定されない。
【0028】
次に、本実施形態の利点について説明する。本実施形態によれば、上述した分割保護部材151~157を配置して、バッテリパック構造体10のクーリングプレート13を保護したので、第1実施形態の利点に加えて、バッテリバック構造体自体の剛性を向上させることができる。また、分割保護部材151等の長手方向をバッテリパック構造体10の前後方向に向ける場合よりも、分割保護部材151~157間にはアンダーカバー20側よりも電動車両の前後方向に空気が流れ難い部位が形成されるので、断熱性を有する空気層が形成され、断熱性が維持されやすいという利点もある。
【0029】
以上、本発明を若干の実施形態によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0030】
本発明においては、クーリングプレートが破損する可能性を抑制ないし防止すべく、クーリングプレートの下方にかつクーリングプレートとの間に隙間を設けて保護部材を設けたことを骨子とする。
【0031】
従って、例えば、上述した構成要素は、各実施形態に示した構成に限定されるものではなく、バッテリパック、クーリングプレート、保護部材などの仕様や材質の細部を変更することが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1,2 電動車両の車体構造
10 バッテリパック構造体
11 バッテリパック
111A~111D バッテリ組立体
113 ケース
13 クーリングプレート
13a 冷媒流路
15 保護部材
15c 隙間
151~157 分割保護部材
20 電動車両のアンダーカバー
20c 他の隙間
B1~B6 バッテリ
H1 隙間の大きさ
H2 他の隙間の大きさ
図1
図2
図3
図4
図5