(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106798
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】免震装置および免震装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16F 15/04 20060101AFI20240801BHJP
F16F 1/40 20060101ALI20240801BHJP
F16F 1/36 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
F16F15/04 P
F16F1/40
F16F1/36 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011239
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100169111
【弁理士】
【氏名又は名称】神澤 淳子
(72)【発明者】
【氏名】森 隆浩
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048AD05
3J048BA08
3J048BA18
3J048DA01
3J048EA38
3J048EA39
3J059AD02
3J059AD05
3J059BA43
3J059BC06
3J059BD01
3J059BD05
3J059CA14
3J059CB03
3J059EA06
3J059EA11
3J059GA42
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ゴム層と剛性板との積層体の両端部に連結板が一体に加硫され、上下連結板に組立ボルトで一体とされる剛性フランジを有し、取付ボルトで構造体に取付けされる免震装置において、上下の剛性フランジの組立孔に挿通され連結板に組み付けられる組立ボルトが、積層体の軸線方向視において、ずれが生じた場合でも、ずれを補正して金型構造や製造工程を簡易なものとする。
【解決手段】連結板6A,6Bは、第一円上に組立ボルト15が螺合される組立ボルト穴7を複数有し、剛性フランジ10は、第一円上に、第一円の形状に沿った長孔に形成され、組立ボルト15の軸部15aを挿通する組立長孔11を複数有し、組立ボルト15は組立長孔11に挿通されて組立ボルト穴7に螺合され、組立ボルト15は組立長孔11に固定されて、剛性フランジ10は、連結板6A,6Bに組立ボルト15により連結する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ複数枚の板状のゴム層(3)と剛性板(4)とが軸方向に交互に積層した柱状の積層体(2)と、前記積層体(2)の軸方向の両側に一体にされる一対の連結板(6A,6B)と、前記連結板(6A,6B)に組立ボルト(15)により組み付けられる剛性フランジ(10,30,40)と、を有し、
上部構造体(20A)と下部構造体(20B)との間に配置されて、前記上部構造体(20A)と前記下部構造体(20B)に取付ボルト(16)により固定される免震装置において、
前記連結板(6A,6B)は、前記積層体(2)の中心軸線(L)を中心(Cp)とした第一円(C1)上に前記組立ボルト(15)が螺合される組立ボルト穴(7)を複数有し、
前記剛性フランジ(10,30,40)は、前記積層体(2)の中心軸線(L)を中心(Cp)とした第一円(C1)上に、前記第一円(C1)の形状に沿った長孔に形成され、前記組立ボルト(15)の軸部(15a)を挿通するための組立長孔(11)を複数有し、
前記組立ボルト(15)は、前記組立長孔(11)に挿通され、前記組立ボルト穴(7)に螺合され、前記組立ボルト(15)は、前記組立長孔(11)におけるいずれかの箇所で固定されて、前記剛性フランジ(10,30,40)は、前記連結板(6A,6B)に組立ボルト(15)により連結されることを特徴とする免震装置。
【請求項2】
前記組立長孔(11)は、外側周部(11b)と、内側周部(11c)と、前記外側周部(11b)と前記内側周部(11c)を接続する一対の端部(11a)とを備え、
一方の前記端部(11a1)に前記組立ボルト(15)が当接した際における前記組立ボルト(15)の軸中心(Cb1)と、他方の前記端部(11a2)が前記組立ボルト(15)に当接した際における前記組立ボルト(15)の軸中心(Cb2)との、前記積層体(2)の前記中心(Cp)に対する扇角度をθ1とし、
前記組立ボルト(15)の本数をNa本とし、前記取付ボルト(16)の本数をNf本とすると、
360°/Na > θ1 > 360°/(Nf×4)
を満たすことを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
【請求項3】
前記剛性フランジ(30)は、前記第一円(C1)と同心であって前記第一円(C1)よりも径が小さい第二円(C2)上に、前記第二円(C2)の形状に沿った長孔に形成され、前記組立ボルト(15)の軸部(15a)を挿通するための第二組立長孔(21b)を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の免震装置。
【請求項4】
前記剛性フランジ(40)は、前記積層体(2)の中心軸線(L)を中心(Cp)とした第三円(C3)上に、前記第三円(C3)の形状に沿って長孔に形成され、前記取付ボルト(16)の軸部(16a)を挿通するための取付長孔(23)を複数有し、
前記取付ボルト(16)は、前記取付長孔(23)におけるいずれかの箇所で固定されることを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
【請求項5】
前記組立長孔(11)は、外側周部(11b)と、内側周部(11c)と、前記外側周部(11b)と前記内側周部(11c)を接続する一対の端部(11a)とを備え、
一方の前記端部(11a1)に前記組立ボルト(10)が当接した際における前記組立ボルト(15)の軸中心(Cb1)と、他方の前記端部(11a2)が前記組立ボルト(10)に当接した際における前記組立ボルト(15)の軸中心(Cb2)との、前記積層体(2)の前記中心(Cp)に対する扇角度をθ1とし、前記組立ボルト(15)の本数をNaとし、前記取付ボルト(16)の本数をNfとすると、
360°/Na > θ1 > 360°/(Nf×8)
を満たすことを特徴とする請求項4に記載の免震装置。
【請求項6】
それぞれ複数枚の板状のゴム層(3)と剛性板(4)とが軸方向に交互に積層した柱状の積層体(2)と、前記積層体(2)の軸方向の両側に一体にされる一対の連結板(6A,6B)と、前記連結板(6A,6B)に組立ボルト(15)により組み付けられる剛性フランジ(10,30,40)と、を有し、
上部構造体(20A)と下部構造体(20B)との間に配置されて、前記上部構造体(20A)と前記下部構造体(20B)に取付ボルト(16)により固定される免震装置の製造方法において、
前記連結板(6A,6B)は、前記積層体(2)の中心軸線(L)を中心(Cp)とした第一円(C1)上に前記組立ボルト(15)が螺合される組立ボルト穴(7)を複数有し、
前記剛性フランジ(10,30,40)は、前記積層体(2)の中心軸線(L)を中心(Cp)とした第一円(C1)上に、前記第一円(C1)の形状に沿った長孔に形成され、前記組立ボルト(15)の軸部(15a)を挿通するための組立長孔(11)を複数有し、
前記組立ボルト(15)は、前記組立長孔(11)に挿通され、前記組立ボルト穴(7)に螺合され、前記組立ボルト(15)は、前記組立長孔(11)におけるいずれかの箇所で固定されて、前記剛性フランジ(10A,30,40)は、前記連結板(6A,6B)に組立ボルト(15)により連結される免震装置の製造方法であって、
加硫後の積層体(2)の上側の連結板(6A)の組立ボルト穴(7A)と、下側の連結板(6B)の組立ボルト穴(7B)との、前記積層体(2)の中心軸線(L)を中心(Cp)としたずれ角度(θ2)を計測し、
前記ずれ角度(θ2)を補正するように、前記組立ボルト(15)を前記組立長孔の所定の位置に固定することを特徴とする免震装置の製造方法。
【請求項7】
前記組立長孔(11)は、外側周部(11b)と、内側周部(11c)と、前記外側周部(11b)と前記内側周部(11c)を接続する一対の端部(11a)とを備えており、
一方の前記端部(11a1)に前記組立ボルト(15)が当接した際における前記組立ボルト(15)の軸中心(Cb1)と、他方の前記端部(11a2)が前記組立ボルト(15)に当接した際における前記組立ボルト(10)の軸中心(Cb2)との、前記積層体(2)の前記中心(Cp)に対する扇角度をθ1とし、
前記組立ボルト(15)の本数がNa本とし、前記取付ボルト(16)の本数はNf本とすると、
360°/Na > θ1 > 360°/(Nf×4)
を満たすことを特徴とする請求項6に記載の免震装置の製造方法。
【請求項8】
前記剛性フランジ(30)は、前記第一円(C1)と同心であって前記第一円(C1)よりも径が小さい第二円(C2)上に、前記第二円(C2)の形状に沿った長孔に形成され、前記組立ボルト(15)の軸部(15a)を挿通するための第二組立長孔(21b)を有することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の免震装置の製造方法。
【請求項9】
前記剛性フランジ(40)は、前記積層体(2)の中心軸線(L)を中心(Cp)とした第三円(C3)上に、前記第三円(C3)の形状に沿って長孔に形成され、前記取付ボルト(16)の軸部(16a)を挿通するための取付長孔(23)を複数有し、
前記取付ボルト(16)は、前記取付長孔(23)におけるいずれかの箇所で固定されることを特徴とする請求項6に記載の免震装置の製造方法。
【請求項10】
前記組立長孔(11)は、外側周部(11b)と、内側周部(11c)と、前記外側周部(11b)と前記内側周部(11c)を接続する一対の端部(11a)とを備えており、
一方の前記端部(11a1)に前記組立ボルト(15)が当接した際における前記組立ボルト(15)の軸中心(Cb1)と、他方の前記端部(11a2)が前記組立ボルト(10)に当接した際における前記組立ボルト(10)の軸中心(Cb2)との、前記積層体(2)の前記中心(Cp)に対する扇角度をθ1とし、前記組立ボルト(15)の本数をNaとし、前記取付ボルト(16)の本数をNfとすると、
360°/Na > θ1 > 360°/(Nf×8)
を満たすことを特徴とする請求項9に記載の免震装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部構造体と下部構造体との間に配設され、これらの構造体の間の振動を減衰させる免震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の免震装置として、ゴム層とゴム層よりも剛性の高い剛性板とが積層された積層体の軸線方向の上下両端部に一対の連結板が一体に加硫され、上下の連結板のそれぞれに組立ボルトにより組立ボルトにより一体とされる剛性フランジを備えており、剛性フランジに設けられた取付孔に取付ボルトを挿通したのち、取付ボルトを上部構造体と下部構造体のそれぞれに螺合して、下部構造体と上部構造体に固定するようになっているものがある(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
一般に上下の剛性フランジは同じ形状をしているが、上下の剛性フランジに設けられた取付孔を積層体の軸線方向視において同じ位置にするためには、上下の剛性フランジを連結板に組み付ける組立ボルトを積層体の軸線方向視において同位置にさせる必要がある。そのためには金型構造を工夫する必要があり、その構造が複雑なものとなり、製造工程も煩雑なものとなる課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-77892号公報
【特許文献2】特開2017-194098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ゴム層とゴム層よりも剛性の高い剛性板とが積層された積層体の軸線方向の両端部に一対の連結板が一体に加硫され、上下の連結板のそれぞれに組立ボルトにより一体とされる剛性フランジを有し、剛性フランジを挿通した取付ボルトにより、上部構造体と下部構造体のそれぞれに固定される免震装置において、上下の剛性フランジの組立孔に挿通され連結板に組み付けるそれぞれの組立ボルトが、積層体の軸線方向視において同じ位置になくずれが生じた場合でも、このずれを補正することが可能であり、金型構造や製造工程を簡易なものとする免震装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、それぞれ複数枚の板状のゴム層と剛性板とが軸方向に交互に積層した柱状の積層体と、前記積層体の軸方向の両側に一体にされる一対の連結板と、前記連結板に組立ボルトにより組み付けられる剛性フランジと、を有し、
上部構造体と下部構造体との間に配置されて、前記上部構造体と前記下部構造体に取付ボルトにより固定される免震装置において、
前記連結板は、前記積層体の中心軸線を中心とした第一円上に前記組立ボルトが螺合される組立ボルト穴を複数有し、
前記剛性フランジは、前記積層体の中心軸線を中心とした第一円上に、前記第一円の形状に沿った長孔に形成され、前記組立ボルトの軸部を挿通するための組立長孔を複数有し、
前記組み立てボルトは、前記組立長孔に挿通され、前記組立ボルト穴に螺合され、前記組立ボルトは、前記組立長孔におけるいずれかの箇所で固定されて、前記剛性フランジは、前記連結板に組立ボルトにより連結されることを特徴とする免震装置である。
【0007】
前記構成によれば、積層体と連結板を加硫成型して一体とした後に、剛性フランジを連結板に対して、積層体の中心軸線を中心として回動させて加硫成型における上側の連結板と下側の連結板とのずれを補正することができるので、上側の剛性フランジと下側の剛性フランジとのずれを補正することが可能となり、金型構造や製造工程を簡易なものとすることができる。
【0008】
前記構成において、前記組立長孔は、外側周部と、内側周部と、前記外側周部と前記内側周部を接続する一対の端部とを備え、
一方の前記端部に前記組立ボルトが当接した際における前記組立ボルトの軸中心と、他方の前記端部が前記組立ボルトに当接した際における前記組立ボルトの軸中心との、前記積層体の前記中心に対する扇角度をθ1とし、
前記組立ボルトの本数をNa本とし、前記取付ボルトの本数をNf本とすると、
360°/Na > θ1 > 360°/(Nf×4)
を満たすことが好ましい。
【0009】
前記構成によれば、組立ボルトの本数がNa本であり、取付ボルトの本数はNf本であり、360°/Na > θ1 > 360°/(Nf×4)の関係を満たすので、上側の連結板と下側の連結板の加硫成型時のずれの範囲を満たす補正をすることができる。
【0010】
前記構成において、前記剛性フランジは、前記第一円と同心であって前記第一円よりも径が小さい第二円上に、前記第二円の形状に沿った長孔に形成され、前記組立ボルトの軸部を挿通するための第二組立長孔を有するようにしてもよい。
【0011】
前記構成によれば、第一円と同心であって第一円よりも径が小さい第二円上に、第二円に沿った形状の第二組立長孔を有することにより、第一円上に位置する組立ボルトの本数を少なくすることができるので、第1円上の組立長孔の数を減らすことが可能となり、隣接する組立長孔どうしの間隔を広くすることができ、剛性フランジの強度を高めることができる。
【0012】
前記剛性フランジは、前記積層体の中心軸線を中心とした第三円上に、前記第三円の形状に沿った長孔に形成され、前記取付ボルトの軸部を挿通するための取付長孔を複数有し、
前記取付ボルトは、前記取付長孔におけるいずれかの箇所で固定してもよい。
【0013】
前記構成によれば、取付長孔を通常のボルト孔から長孔に変更したことにより、隣接する取付長孔どうしの間隔は狭くなるが、組立長孔の長さを短くして隣接する組立長孔どうしの間隔を広げることによる強度改善効果が勝り、結果的に強度を向上させることができる。
【0014】
前記組立長孔は、外側周部と、内側周部と、前記外側周部と前記内側周部を接続する一対の端部とを備え、
一方の前記端部に前記組立ボルトが当接した際における前記組立ボルトの軸中心と、他方の前記端部が前記組立ボルトに当接した際における前記組立ボルトの軸中心との、前記積層体の前記中心に対する扇角度をθ1とし、前記組立ボルトの本数をNaとし、前記取付ボルトの本数をNfとすると、
360°/Na > θ1 > 360°/(Nf×8)
を満たすようにしてもよい。
【0015】
前記構成によれば、任意の上下の剛性フランジの配置に対しても構造体に取り付けることが可能となる。
【0016】
本発明は、それぞれ複数枚の板状のゴム層と剛性板とが軸方向に交互に積層した柱状の積層体と、前記積層体の軸方向の両側に一体にされる一対の連結板と、前記連結板に組立ボルトにより組み付けられる剛性フランジと、を有し、
上部構造体と下部構造体との間に配置されて、前記上部構造体と前記下部構造体に取付ボルトにより固定される免震装置の製造方法において、
前記連結板は、前記積層体の中心軸線を中心とした第一円上に前記組立ボルトが螺合される組立ボルト穴を複数有し、
前記剛性フランジは、前記積層体の中心軸線を中心とした第一円上に、前記第一円の形状に沿った長孔に形成され、前記組立ボルトの軸部を挿通するための組立長孔を複数有し、
前記組立ボルトは、前記組立長孔に挿通され、前記組立ボルト穴に螺合され、前記組立ボルトは、前記組立長孔におけるいずれかの箇所で固定されて、前記剛性フランジは、前記連結板に組立ボルトにより連結される免震装置の製造方法であって、
加硫後の積層体の上側の連結板の組立ボルト穴と、下側の連結板の組立ボルト穴との、前記積層体の中心軸線を中心としたずれ角度を計測し、
前記ずれ角度を補正するように、前記組立ボルトを前記組立長孔の所定の位置に固定する免震装置の製造方法である。
【0017】
前記構成によれば、積層体と連結板を加硫成型して一体とした後に、加硫後の積層体の上側の連結板の組立ボルト穴と、下側の連結板の組立ボルト穴との、前記積層体の中心軸線を中心としたずれ角度を計測し、前記ずれ角度
を補正するように、前記組立ボルトを前記組立長孔の所定の位置に固定するので、加硫成型における上側の連結板の組立ボルト穴と、下側の連結板の組立ボルト穴とのずれに基づいて、上側の剛性フランジと下側の剛性フランジとのずれを補正することでき、金型構造や製造工程を簡易なものとすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、積層体と連結板を加硫成型して一体とした後に、剛性フランジを連結板に対して、積層体の中心軸線を中心として回動させて加硫成型における上側の連結板と下側の連結板とのずれを補正することができるので、上側の剛性フランジと下側の剛性フランジとのずれを補正することが可能となり、金型構造や製造工程を簡易なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第一の実施の形態の免震装置を積層体の軸線に沿って切断した縦断面図である。
【
図5】組立ボルトが固定された上側フランジを下方から視た図である。
【
図6】組立ボルトが固定される前の下側フランジを上方から視た図である。
【
図7】組立ボルトが固定された下側フランジを上方から視た図である。
【
図8】第二組立長孔が設けられた剛性フランジを積層体側から見た図である。
【
図9】本発明の第一二の実施の形態の免震装置を積層体の軸線に沿って切断した縦断面図である。
【
図10】取付長孔が設けられた剛性フランジを、積層体側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第一の実施形態意の免震装置1について、
図1ないし
図7に基づいて説明する。本発明の説明において、免震装置1の「中心軸線L」(以下、単に「中心軸線L」という)は、積層体2の中心軸線である。免震装置1の中心軸線Lは、鉛直方向に延在するように指向される。免震装置の1「内周側」、「外周側」、「径方向」、「周方向」は、免震装置1の中心軸線Lを中心としたときの「内周側」、「外周側」、「径方向」、「周方向」をそれぞれ指す。また、「上」、「下」とは、鉛直方向における「上」、「下」をそれぞれ指す。
【0021】
免震装置1は、
図1に示されるように、複数枚の板状のゴム層3と金属製の剛性板4とが軸方向に交互に積層した柱状の積層体2と、この積層体2の中心軸線Lの両側に一体にされる一対の連結板6と、一対の連結板6のそれぞれに組立ボルト15により組み付けられ、連結板6より径の大きい一対の剛性フランジ10とを備えている。
免震装置1は、上部構造体20Aと下部構造体20Bとの間に配置されて、上部構造体20Aと下部構造体20Bのそれぞれに、取付ボルト16により固定される。上部構造体20Aとは、例えば建物や橋等の建造物であり、下部構造体20Bとは、例えば建造物の基礎である。
【0022】
免震装置1は、免震装置1の上下方向中央に位置し、板状のゴム層3と金属製の剛性板4とが交互に重ねられた所定の高さの柱状の積層体2を備えている。本実施の形態の積層体2は円筒状に形成されているが、四角柱状や多角中状であってもよい。
ゴム層3は所定の弾性を備えており、積層体2は、鉛直方向の荷重に対して所定の剛性を有しているとともに、水平方向の荷重に対して所定の変形量を確保することができる。
【0023】
積層体2の周面は被覆ゴム5により覆われている。この被覆ゴム5により剛性板4の外周端部が覆われているので、金属製の剛性板4の劣化を防止することができる。被覆ゴム5で覆われた積層体2の上下両端を覆うように、一対の金属製の例えば鋼からなる連結板6が配置される。積層体2、被覆ゴム5および一対の連結板6は、金型(不図示)に入れられて加硫成型により接着されて強固に一体化される。
【0024】
図4に示されるように、一対の連結板6のうちの上側の連結板6Aの上面には、積層体2の中心軸線Lを中心Cpとした第一円C1上に、組立ボルト15が螺合される組立ボルト穴7Aが、等間隔で複数設けられている。
また、下側の連結板6Bの下面にも、同様に、積層体2の中心軸線Lを中心Cpとした第一円C1上に、組立ボルト15が螺合される組立ボルト穴7Bが、等間隔で複数設けられている。
【0025】
図2は、剛性フランジ10を、剛性フランジ10に接する連結板側から見た図である。例えば上側剛性フランジ10Aはその下面を、下側剛性フランジ10Bはその上面を示している。
【0026】
図1に示されるように、組立ボルト15は、軸部15aと、該軸部15aよりも径の大きい頭部15bと、を備えている。また、取付ボルト16は、軸部15aと、該軸部16aよりも径の大きい頭部16bと、を備えている。
図2に示されるように、剛性フランジ10には、組立ボルト15の軸部15aが挿通される組立長孔11が、積層体2の中心軸線Lを中心Cpとした第一円C1上に、等間隔で複数設けられている。さらに、剛性フランジ10には、取付ボルト16の軸部16aが挿通される取付孔13が、第一円C1より径が大きく、第一円C1と同心円である第三円C3上に、等間隔に複数設けられている。本実施の形態では、組立長孔11と取付孔13とは、それぞれ12個設けられているが、12個より多くても少なくてもよいし、同じ数でなくともよい。
【0027】
組立長孔11は、第一円C1の形状に沿った円弧状の長孔に形成されている。
図3に示されるように、組立長孔11は、剛性フランジ10の径方向外側に位置する外側周部11bと、径方向内側に位置する内側周部11cと、外側周部11bと内側周部11cを接続する一対の端部11a(11a
1,11a
2)から構成されている。
組立長孔11の径方向の幅dは、組立ボルト15の軸部15aの径より若干大きくなるように設定されており、組立ボルト15の軸部15aを挿通することができる。さらに、組立長孔11の径方向の幅dは、組立ボルト15の頭部15bの幅より狭くなるように形成されている。このように構成されているので、組立長孔11内に挿通された組立ボルト15は、連結板6から抜け落ちることはないが、剛性フランジ10に完全に締結される前は、組立長孔11にガイドされて相対的に移動可能なので、剛性フランジ10は、Cpを中心として回動することができる。
【0028】
図1に示されるように、組立長孔11は、剛性フランジ10の連結板6に接する面からに所定の深さに形成されている。剛性フランジ10の構造体20に接する側には、組立長孔11に連通するように、組立ボルト15の頭部15bを収容する組立長孔11より径方向に拡径された頭部収容孔12が形成されている。
【0029】
剛性フランジ10を連結板6に取り付けるには、組立ボルト15を、剛性フランジ10の頭部収容孔12から組立長孔11に向かって挿通して、その先端が連結板6の組立ボルト穴7に到達すると、組立ボルト15を組立ボルト穴7に螺合する。
組立ボルト15が組立ボルト穴7に完全に螺合されると、組立ボルト15の頭部15bは、組立長孔11より径の大きい頭部収容孔12内に収容されて、組立長孔11と頭部収容孔12の径の違いによる段部に、組立ボルト15の頭部15bの下面が当接されて、剛性フランジ10は組立ボルト15により連結板6に固定される。組立ボルト15の頭部15bは、頭部収容孔12内に完全に収容されるので、剛性フランジ10を構造体20に取り付ける妨げになることがない。
【0030】
その際、組立ボルト15が組立ボルト穴7に完全に螺合されて固定される前には、剛性フランジ10を連結板6に対して、Cpを中心として相対的に回動させることができるので、組立ボルト15を、組立長孔11における所望する箇所に位置するように、剛性フランジ10を連結板6に連結することができる。
【0031】
次に上側連結板6Aと下側連結板6Bとが、積層体2を挟んで加硫成型した際に、ずれが生じた場合において、ずれを補正して免震装置1を組み立てる一例について、
図4ないし
図7に基づいて説明する。
【0032】
図4は、加硫成型された一体とされた積層体2、上側連結板6Aおよび下側連結板6Bとを、上方から見た図である。上側連結板6Aの組立ボルト穴7Aを実線で、下側連結板6Bの組立ボルト穴7Bを破線で示している。
図5は組立ボルト15を取付けた状態の上側剛性フランジ10Aの下面図である。
図6は組立ボルト15が締結される前の状態の下側剛性フランジ10Bの上面図である。
図7は組立ボルト15を締結した状態の下側剛性フランジ10Bの上面図である。
【0033】
図4を参照して、まず、加硫後の積層体2の上側連結板6Aの組立ボルト穴7Aの位置と、下側連結板6Bの組立ボルト穴7Bの位置を計測し、積層体2の中心軸線Lを中心Cpとした組立ボルト穴7Aに対する組立ボルト穴7Bのずれ角度θ
2を計測する。
【0034】
図6に示されるように、組立ボルト15を下側連結板6Bの組立ボルト孔7Aに挿通してそのまま締結すると、上側剛性フランジ10Aの取付孔13Aと下側剛性フランジ10Bの取付孔13Bとは、組立ボルト穴7Aに対する組立ボルト穴7Bのずれ角度θ
2分、ずれが発生してしまう。
【0035】
そこで
図6および
図7に示されるように、ずれ角度θ
2に基づいて、上側剛性フランジ10Aの取付孔13Aと、下側剛性フランジ10Bの取付孔13Bとが一致するように、下側剛性フランジ10BをCpを中心として、反時計回りに角度θ
2分回動して、組立ボルト15を締結する。そのようにすることで、組立ボルト穴7Aに対する組立ボルト穴7Bのずれ角度θ
2が補正されて、
図7に示されるように、上側剛性フランジ10Aの取付孔13Aと下側剛性フランジ10Bの取付孔13Bとの位置が一致する。
【0036】
本実施の形態では、下側剛性フランジ10Bを、Cpを中心として回動して、ずれ角度θ2を補正したが、上側剛性フランジ10AをCpを中心として回動する、あるいは上側剛性フランジ10Aおよび下側剛性フランジ10Bの双方をCpを中心として回動して、ずれ角度θ2を補正してもよい。
【0037】
このように上側剛性フランジ10Aおよび下側剛性フランジ10Bの双方あるいは一方を、Cpを中心として回動することによりθ2のずれを補正することができるので、1つの組立長孔11の両端を積層体2の中心Cpと結んだ扇型の中心角度である扇角度をθ1とし、組立ボルト15の本数をNa本とし、取付ボルト16の本数はNf本とすると、隣接する組立ボルト15どうしの間隔の最大角度は、360°を取付ボルト本数Naで除した角度となるので、剛性フランジ40の組立長孔11の扇角度をθ1は、60°/Na以下であればよい。
また、θ2のずれの補正は、隣接する取付孔13のいずれか近い方に向かって回動して補正をし、さらに上側剛性フランジ10Aおよび下側剛性フランジ10Bの双方を、あるいはいずれか一方を回動して補正することができるので、組立長孔11の両端を積層体2の中心Cpと結んだ扇型の中心角度である扇角度θ1は、360°/(Nf×4)以上であればよい。
よって、
360°/Na > θ1 > 360°/(Nf×4)
を満たす範囲に、θ1を設定すれば、確実にずれ角度θ2分のずれを補正することができる。
【0038】
本発明の第一の実施の形態の免震装置1は前記したように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0039】
免震装置1は、それぞれ複数枚の板状のゴム層3と剛性板4とが軸方向に交互に積層した円筒状の積層体2と、積層体2の軸方向の両側に一体にされる一対の上側連結板6Aおよび下側連結板6Bと、上側連結板6Aに組立ボルト15により組み付けられる上側剛性フランジ10Aと、下側連結板6Bに組立ボルト15により組み付けられる下側剛性フランジ10Bと、を有し、上部構造体20Aと下部構造体20Bとの間に配置されて、上部構造体20Aと下部構造体20Bに取付ボルト16により固定される。
上側連結板6Aおよび下側連結板6Bは、積層体2の中心軸線Lを中心Cpとした第一円C1上に、組立ボルト15が螺合される組立ボルト穴7を複数有し、上側剛性フランジ10Aおよび下側剛性フランジ10Bは、積層体2の中心軸線Lを中心Cpとした第一円C1上に、第一円C1の形状に沿って長孔に形成され、組立ボルト15の軸部15aを挿通するための組立長孔11を複数有し、組立ボルト15は、組立長孔11に挿通され、組立ボルト穴7に螺合され、組立ボルト15は、組立長孔11におけるいずれかの箇所で固定されて、上側剛性フランジ10Aおよび下側剛性フランジ10Bは、上側連結板6Aおよび下側連結板6Bに組立ボルト15により連結される。
【0040】
このように構成されているので、積層体2と上側連結板6Aと下側連結板6Bを、加硫成型して一体とした後に、上側剛性フランジ10Aおよび下側剛性フランジ10Bを、またはどちらか一方を、連結板6に対して、積層体2の中心軸線Lを中心として回動させることができる。従って、加硫成型において、上側連結板6Aと下側連結板6Bとに、中心Cpを中心としたずれが発生したとしても、このずれを補正することができるので、上側剛性フランジ10Aと下側剛性フランジ10Bを補正した位置に位置させ、上側剛性フランジ10Aに設けられた取付孔13の位置と、下側剛性フランジ10Bに設けられた取付孔13の位置を一致させることが可能となる。よって、積層体2、上側連結板6Aおよび下側連結板6Bを一体に加硫する際に、積層体2の軸線方向視において、上側連結板6Aの取付孔13と下側連結板6B13とを完全に一致させる必要がなくなるので、金型構造や製造工程を簡易なものとすることができる。
【0041】
さらに、組立長孔11の積層体2の中心Cpに対する扇角度をθ1とし、組立ボルト15の本数をNa本とし、取付ボルト16の本数をNf本とすると、
360°/Na > θ1 > 360°/(Nf×4)
の関係を満たすようにされているので、上側連結板6Aと下側連結板6Bの加硫成型時のずれの範囲において、確実に補正することができる。
【0042】
次に本発明の第二の実施の形態の免震装置1について、
図8および
図9に基づいて説明する。第一の実施の形態と同じ構成には、同じ符号を付して説明する。
【0043】
第二の実施の形態の免震装置1の剛性フランジ30は、
図8に示されるように、第一円C1と同心であって、第一円C1よりも径が小さい第二円C2上に、第二円C2の形状に沿った長孔に形成され、組立ボルト15の軸部15aを挿通するための第二組立長孔21が設けられている。本実施の形態では、第二組立長孔21は4個設けられており、組立長孔11は8個設けられているので、組立ボルト15の本数は、第一の実施の形態と同じ本数が使用されている。
【0044】
図9に示されるように、第二組立長孔21は、組立長孔11と同じように、剛性フランジ30の剛性板4に接する面からに所定の深さに形成されている。剛性フランジ30の構造体20に接する側には、第二組立長孔21に連通するように、組立ボルト15の頭部15bを収容する第二組立長孔21より径方向に拡径された頭部収容孔22が形成されている。
【0045】
第二の実施の形態の免震装置1は、第一円C1と同心であって、第一円C1よりも径が小さい第二円C2上に、第二組立長孔11bが形成されているので、組立ボルト15の総数を減らすことなく、第一円C1上に位置する組立ボルト15の本数を少なくすることができるので、第一円C1上の組立長孔11の数を減らすことができ、隣接する組立長孔11どうしの間隔を広くすることができ、剛性フランジ30の強度を高めることができる。
【0046】
さらに、本発明の第三の実施の形態の免震装置1について、
図10に基づいて説明する。第三の実施の形態の免震装置1では、剛性フランジ40は、積層体2の中心軸線Lを中心Cpとした第三円C3上に、第三円C3の形状に沿って長孔に形成され、取付ボルト16の軸部16aを挿通するための取付長孔23が、複数設けられている。取付ボルト16は、取付長孔23におけるいずれかの箇所で固定される。
【0047】
このように構成されているので、上側剛性フランジ40Aと下側剛性フランジ40Bとのずれを、組立長孔11における組立ボルト15の位置と、取付長孔23における取付ボルト16の位置の双方により補正することができるので、隣接する組立長孔11どうしの間隔、および隣接する取付長孔23どうしの間隔をより確保することか可能となり、剛性フランジ40の強度をさらに増すことができる。
【0048】
また、第三の実施の形態では、上側剛性フランジ40Aを上部構造体20Aに対する取付に際して上側剛性フランジ40AをCpを中心として回動して取り付けることができるとともに、下側剛性フランジ40Bを下部構造体20Bに対する取付に際して、下側剛性フランジ40Bを、Cpを中心として回動して取り付けることができる。
従って、剛性フランジ40の組立長孔11の扇角度をθ1とし、組立ボルト15の本数をNaとし、取付ボルト16の本数をNfとすると、隣接する取付ボルト16どうしの間隔の最大角度は、360°を取付ボルト本数Naで除した角度となるので、剛性フランジ40の組立長孔11の扇角度θ1の最大値は、360°/Na以下であればよい。
また、θ2のずれの補正は、隣接する取付長孔23のいずれか近い方に向かって回動して補正をし、さらに上側剛性フランジ10Aおよび下側剛性フランジ10Bの双方を、あるいはいずれか一方を回動して補正することができる。さらに、組立長孔11の両端を積層体2の中心Cpと結んだ扇型の中心角度である扇角度θ1の最小値は、360°/(Nf×4)以下であればよい。さらに上側剛性フランジ10Aと、下側剛性フランジ10Bとを回動して補正することができるので、組立長孔11の両端を積層体2の中心Cpと結んだ扇型の中心角度である扇角度θ1の最小値は、360°/(Nf×8)以下であればよい。
よって、
360°/Na > θ1 > 360°/(Nf×8)
の関係を満たす。
【0049】
前記構成によれば、任意の上下の剛性フランジ40の配置に対しても構造体20に取り付けることが可能となる。
【0050】
本発明の実施形態につき説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能であり、本発明の要旨の範囲で多様な態様で実施されるものを含むことは勿論である。
【国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献】
【0051】
持続可能な社会の実現に向けてSDGsが提唱されている、本発明は住み続けられるまちなどに貢献する技術になり得ると考えられる。
【符号の説明】
【0052】
1…免震装置、2…積層体、3…ゴム層、4…剛性板、5…被覆ゴム、6…連結板、7…組立ボルト穴、
10…剛性フランジ、11…組立長孔、11a…端部、11b…外側周部、11b…内側周部、13…取付孔、15…組立ボルト、16…取付ボルト、
20A…上部構造体、20B…下部構造体、21…第二組立長孔、23…取付長孔、
30…剛性フランジ、
40…剛性フランジ、
Cp…中心、Ca…中心点、L…中心軸線、d…幅、r…半径、Na…組立ボルトの本数、Nf取付ボルトの本数、θ1…扇角度、θ2…ずれ角度。