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特開2024-106800ロボットシステムおよび産業用ロボットの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106800
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】ロボットシステムおよび産業用ロボットの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20240801BHJP
   B25J 9/06 20060101ALI20240801BHJP
   B25J 19/06 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J9/06 D
B25J19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011246
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 隆之
(72)【発明者】
【氏名】志村 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 陽介
(72)【発明者】
【氏名】田辺 智樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 一樹
【テーマコード(参考)】
3C707
5F131
【Fターム(参考)】
3C707AS24
3C707BS15
3C707BS26
3C707HS27
3C707MS05
3C707NS12
3C707NS13
5F131AA02
5F131AA03
5F131CA38
5F131CA55
5F131DA02
5F131DA32
5F131DA33
5F131DA43
5F131DB03
5F131DB52
5F131DB57
5F131DB62
5F131DB76
5F131DB95
5F131GA14
(57)【要約】
【課題】共通アーム部の回動中心と第1先端側アーム部の回動中心との水平方向の距離よりも、第1先端側アーム部の回動中心と第1ハンドの回動中心との水平方向の距離が短くなっていても、第1ハンドで搬送対象物を搬送するときの、ロボットシステムの各装置等と第1ハンドに搭載される搬送対象物との干渉を防止することが可能なロボットシステムを提供する。
【解決手段】ロボットシステム1では、収容部3に対する搬送対象物2の受渡しを行うときの第1ハンド6の位置である第1受渡し位置と第1基準位置6Bとの間で第1ハンド6が移動するときに、上下方向から見ると、第1ハンド中心C1の軌跡がシステム基準線CL3に対してY方向の両側に振れるように、第1ハンド6が第1基準位置6Bに配置されているときにシステム基準線CL3に対して第1ハンド基準線CL1を傾けるとともに、共通アーム部駆動機構および第1先端側アーム部駆動機構を駆動している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物が収容される収容部と、前記収容部からの前記搬送対象物の搬出および前記収容部への前記搬送対象物の搬入の少なくともいずれか一方を行う水平多関節型の産業用ロボットとを備え、
前記産業用ロボットは、前記搬送対象物が搭載される第1ハンドおよび第2ハンドと、前記第1ハンドおよび前記第2ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、前記アームの基端側が回動可能に連結される本体部と、前記本体部に対して前記アームを水平方向に伸縮させるアーム駆動機構と、前記産業用ロボットを制御する制御部とを備え、
前記アームは、前記第1ハンドが先端側に回動可能に連結される第1先端側アーム部と、前記第2ハンドが先端側に回動可能に連結される第2先端側アーム部と、前記第1先端側アーム部の基端側および前記第2先端側アーム部の基端側が互いに異なる位置で回動可能に連結されるとともに前記本体部に回動可能に連結される共通アーム部とを備え、
前記アーム駆動機構は、上下方向を回動の軸方向として前記本体部に対して前記共通アーム部を回動させる共通アーム部駆動機構と、上下方向を回動の軸方向として前記共通アーム部に対して前記第1先端側アーム部を回動させるとともに前記第1先端側アーム部に対して前記第1ハンドを回動させる第1先端側アーム部駆動機構と、上下方向を回動の軸方向として前記共通アーム部に対して前記第2先端側アーム部を回動させるとともに前記第2先端側アーム部に対して前記第2ハンドを回動させる第2先端側アーム部駆動機構とを備え、
上下方向から見たときの前記第1ハンドおよび前記第2ハンドの形状は、所定方向を長手方向とする長手形状となっており、
前記本体部に対する前記共通アーム部の回動中心を第1回動中心とし、前記共通アーム部に対する前記第1先端側アーム部の回動中心を第2回動中心とし、前記共通アーム部に対する前記第2先端側アーム部の回動中心を第3回動中心とし、前記第1先端側アーム部に対する前記第1ハンドの回動中心を第4回動中心とし、前記第2先端側アーム部に対する前記第2ハンドの回動中心を第5回動中心とし、前記第1回動中心と前記第2回動中心との水平方向の距離を第1中心間距離とし、前記第1回動中心と前記第3回動中心との水平方向の距離を第2中心間距離とし、前記第2回動中心と前記第4回動中心との水平方向の距離を第3中心間距離とし、前記第3回動中心と前記第5回動中心との水平方向の距離を第4中心間距離とし、上下方向から見たときに前記第1ハンドの長手方向に直交する前記第1ハンドの短手方向を第1短手方向とし、上下方向から見たときに前記第2ハンドの長手方向に直交する前記第2ハンドの短手方向を第2短手方向とし、上下方向から見たときの前記第1ハンドの前記第1短手方向の中心線を第1ハンド基準線とし、上下方向から見たときの前記第2ハンドの前記第2短手方向の中心線を第2ハンド基準線とし、前記本体部に対する前記共通アーム部の回動速度を共通アーム部回動速度とし、前記共通アーム部に対する前記第1先端側アーム部の回動速度を第1先端側アーム部回動速度とし、前記共通アーム部に対する前記第2先端側アーム部の回動速度を第2先端側アーム部回動速度とし、前記第1ハンドの正規の位置に搭載される前記搬送対象物の上下方向から見たときの中心を第1ハンド中心とし、前記第2ハンドの正規の位置に搭載される前記搬送対象物の上下方向から見たときの中心を第2ハンド中心とし、前記収容部の正規の位置に収容される前記搬送対象物の上下方向から見たときの中心を収容部中心とし、上下方向から見たときの前記第1回動中心と前記収容部中心とを結ぶ仮想線をシステム基準線とし、前記システム基準線の方向を前後方向とし、上下方向と前後方向とに直交する方向を左右方向とし、前記第1先端側アーム部側が伸びている状態で前記収容部に対する前記搬送対象物の受渡しを行うときの前記第1ハンドの位置を第1受渡し位置とし、前記第2先端側アーム部側が伸びている状態で前記収容部に対する前記搬送対象物の受渡しを行うときの前記第2ハンドの位置を第2受渡し位置とし、前記本体部に前記第1ハンドおよび前記第2ハンドが近づくように所定の状態まで前記アームが縮んでいるときの前記第1ハンドの位置を第1基準位置とし、前記第1ハンドが前記第1基準位置に配置されているときの前記第2ハンドの位置を第2基準位置とすると、
前記第1中心間距離と前記第2中心間距離とは、等しくなっており、
前記第3中心間距離は、前記第1中心間距離よりも短くなっており、
前記第4中心間距離は、前記第2中心間距離よりも短くなっており、
前記第1受渡し位置と前記第1基準位置との間で前記第1ハンドが移動するときに、前記共通アーム部回動速度と前記第1先端側アーム部回動速度との比率は、一定になっており、
前記第2受渡し位置と前記第2基準位置との間で前記第2ハンドが移動するときに、前記共通アーム部回動速度と前記第2先端側アーム部回動速度との比率は、一定になっており、
前記第1ハンドが前記第1受渡し位置に配置されているときに、上下方向から見ると、前記システム基準線と前記第1ハンド基準線とが重なり、
前記第2ハンドが前記第2受渡し位置に配置されているときに、上下方向から見ると、前記システム基準線と前記第2ハンド基準線とが重なり、
前記制御部は、前記第1受渡し位置と前記第1基準位置との間で前記第1ハンドが移動するときに、上下方向から見ると、前記第1ハンド中心の軌跡が前記システム基準線に対して左右方向の両側に振れるように、前記第1ハンドが前記第1基準位置に配置されているときに前記システム基準線に対して前記第1ハンド基準線を傾けるとともに、前記共通アーム部駆動機構および前記第1先端側アーム部駆動機構を駆動し、なおかつ、前記第2受渡し位置と前記第2基準位置との間で前記第2ハンドが移動するときに、上下方向から見ると、前記第2ハンド中心の軌跡が前記システム基準線に対して左右方向の両側に振れるように、前記第2ハンドが前記第2基準位置に配置されているときに前記システム基準線に対して前記第2ハンド基準線を傾けるとともに、前記共通アーム部駆動機構および前記第2先端側アーム部駆動機構を駆動することを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
前記第1先端側アーム部と前記第2先端側アーム部とは、上下方向において同じ位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載のロボットシステム。
【請求項3】
上下方向から見たときに前記共通アーム部の外形は、二等辺三角形状になっていることを特徴とする請求項1または2記載のロボットシステム。
【請求項4】
搬送対象物が搭載される第1ハンドおよび第2ハンドと、前記第1ハンドおよび前記第2ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、前記アームの基端側が回動可能に連結される本体部と、前記本体部に対して前記アームを水平方向に伸縮させるアーム駆動機構とを備え、前記搬送対象物が収容される収容部からの前記搬送対象物の搬出および前記収容部への前記搬送対象物の搬入の少なくともいずれか一方を行う水平多関節型の産業用ロボットであって、
前記アームは、前記第1ハンドが先端側に回動可能に連結される第1先端側アーム部と、前記第2ハンドが先端側に回動可能に連結される第2先端側アーム部と、前記第1先端側アーム部の基端側および前記第2先端側アーム部の基端側が互いに異なる位置で回動可能に連結されるとともに前記本体部に回動可能に連結される共通アーム部とを備え、
前記アーム駆動機構は、上下方向を回動の軸方向として前記本体部に対して前記共通アーム部を回動させる共通アーム部駆動機構と、上下方向を回動の軸方向として前記共通アーム部に対して前記第1先端側アーム部を回動させるとともに前記第1先端側アーム部に対して前記第1ハンドを回動させる第1先端側アーム部駆動機構と、上下方向を回動の軸方向として前記共通アーム部に対して前記第2先端側アーム部を回動させるとともに前記第2先端側アーム部に対して前記第2ハンドを回動させる第2先端側アーム部駆動機構とを備え、
上下方向から見たときの前記第1ハンドおよび前記第2ハンドの形状は、所定方向を長手方向とする長手形状となっており、
前記本体部に対する前記共通アーム部の回動中心を第1回動中心とし、前記共通アーム部に対する前記第1先端側アーム部の回動中心を第2回動中心とし、前記共通アーム部に対する前記第2先端側アーム部の回動中心を第3回動中心とし、前記第1先端側アーム部に対する前記第1ハンドの回動中心を第4回動中心とし、前記第2先端側アーム部に対する前記第2ハンドの回動中心を第5回動中心とし、前記第1回動中心と前記第2回動中心との水平方向の距離を第1中心間距離とし、前記第1回動中心と前記第3回動中心との水平方向の距離を第2中心間距離とし、前記第2回動中心と前記第4回動中心との水平方向の距離を第3中心間距離とし、前記第3回動中心と前記第5回動中心との水平方向の距離を第4中心間距離とし、上下方向から見たときに前記第1ハンドの長手方向に直交する前記第1ハンドの短手方向を第1短手方向とし、上下方向から見たときに前記第2ハンドの長手方向に直交する前記第2ハンドの短手方向を第2短手方向とし、上下方向から見たときの前記第1ハンドの前記第1短手方向の中心線を第1ハンド基準線とし、上下方向から見たときの前記第2ハンドの前記第2短手方向の中心線を第2ハンド基準線とし、前記本体部に対する前記共通アーム部の回動速度を共通アーム部回動速度とし、前記共通アーム部に対する前記第1先端側アーム部の回動速度を第1先端側アーム部回動速度とし、前記共通アーム部に対する前記第2先端側アーム部の回動速度を第2先端側アーム部回動速度とし、前記第1ハンドの正規の位置に搭載される前記搬送対象物の上下方向から見たときの中心を第1ハンド中心とし、前記第2ハンドの正規の位置に搭載される前記搬送対象物の上下方向から見たときの中心を第2ハンド中心とし、前記収容部の正規の位置に収容される前記搬送対象物の上下方向から見たときの中心を収容部中心とし、上下方向から見たときの前記第1回動中心と前記収容部中心とを結ぶ仮想線をシステム基準線とし、前記システム基準線の方向を前後方向とし、上下方向と前後方向とに直交する方向を左右方向とし、前記第1先端側アーム部側が伸びている状態で前記収容部に対する前記搬送対象物の受渡しを行うときの前記第1ハンドの位置を第1受渡し位置とし、前記第2先端側アーム部側が伸びている状態で前記収容部に対する前記搬送対象物の受渡しを行うときの前記第2ハンドの位置を第2受渡し位置とし、前記本体部に前記第1ハンドおよび前記第2ハンドが近づくように所定の状態まで前記アームが縮んでいるときの前記第1ハンドの位置を第1基準位置とし、前記第1ハンドが前記第1基準位置に配置されているときの前記第2ハンドの位置を第2基準位置とすると、
前記第1中心間距離と前記第2中心間距離とは、等しくなっており、
前記第3中心間距離は、前記第1中心間距離よりも短くなっており、
前記第4中心間距離は、前記第2中心間距離よりも短くなっており、
前記第1受渡し位置と前記第1基準位置との間で前記第1ハンドが移動するときに、前記共通アーム部回動速度と前記第1先端側アーム部回動速度との比率は、一定になっており、
前記第2受渡し位置と前記第2基準位置との間で前記第2ハンドが移動するときに、前記共通アーム部回動速度と前記第2先端側アーム部回動速度との比率は、一定になっており、
前記第1ハンドが前記第1受渡し位置に配置されているときに、上下方向から見ると、前記システム基準線と前記第1ハンド基準線とが重なり、
前記第2ハンドが前記第2受渡し位置に配置されているときに、上下方向から見ると、前記システム基準線と前記第2ハンド基準線とが重なっている産業用ロボットの制御方法であって、
前記第1受渡し位置と前記第1基準位置との間で前記第1ハンドが移動するときに、上下方向から見ると、前記第1ハンド中心の軌跡が前記システム基準線に対して左右方向の両側に振れるように、前記第1ハンドが前記第1基準位置に配置されているときに前記システム基準線に対して前記第1ハンド基準線を傾けるとともに、前記共通アーム部駆動機構および前記第1先端側アーム部駆動機構を駆動し、なおかつ、前記第2受渡し位置と前記第2基準位置との間で前記第2ハンドが移動するときに、上下方向から見ると、前記第2ハンド中心の軌跡が前記システム基準線に対して左右方向の両側に振れるように、前記第2ハンドが前記第2基準位置に配置されているときに前記システム基準線に対して前記第2ハンド基準線を傾けるとともに、前記共通アーム部駆動機構および前記第2先端側アーム部駆動機構を駆動することを特徴とする産業用ロボットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送対象物が収容される収容部と、搬送対象物を搬送する産業用ロボットとを備えるロボットシステムに関する。また、本発明は、搬送対象物が収容される収容部に対する搬送対象物の搬送を行う産業用ロボットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ用のガラス基板を搬送する産業用ロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の産業用ロボットは、ガラス基板が搭載される第1ハンドおよび第2ハンドと、第1ハンドおよび第2ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、アームの基端側が回動可能に連結される本体部と、本体部に対してアームを水平方向に伸縮させるアーム駆動機構とを備えている。アームは、第1ハンドが先端側に回動可能に連結される第1先端側アーム部と、第2ハンドが先端側に回動可能に連結される第2先端側アーム部と、第1先端側アーム部の基端側および第2先端側アーム部の基端側が回動可能に連結されるとともに本体部に回動可能に連結される共通アーム部とから構成されている。
【0003】
特許文献1に記載の産業用ロボットでは、共通アーム部は、略V形状に形成されている。略V形状に形成される共通アーム部の中心部分は、本体部に回動可能に連結されている。略V形状に形成される共通アーム部の一方の先端側には、第1先端側アーム部の基端側が回動可能に連結され、共通アーム部の他方の先端側には、第2先端側アーム部の基端側が回動可能に連結されている。アーム駆動機構は、本体部に対して共通アーム部を回動させる共通アーム部駆動機構と、共通アーム部に対して第1先端側アーム部を回動させるとともに第1先端側アーム部に対して第1ハンドを回動させる第1先端側アーム部駆動機構と、共通アーム部に対して第2先端側アーム部を回動させるとともに第2先端側アーム部に対して第2ハンドを回動させる第2先端側アーム部駆動機構とを備えている。
【0004】
特許文献1に記載の産業用ロボットでは、本体部に対する共通アーム部の回動中心を第1回動中心とし、共通アーム部に対する第1先端側アーム部の回動中心を第2回動中心とし、共通アーム部に対する第2先端側アーム部の回動中心を第3回動中心とし、第1先端側アーム部に対する第1ハンドの回動中心を第4回動中心とし、第2先端側アーム部に対する第2ハンドの回動中心を第5回動中心とし、第1回動中心と第2回動中心との水平方向の距離を第1中心間距離とし、第1回動中心と第3回動中心との水平方向の距離を第2中心間距離とし、第2回動中心と第4回動中心との水平方向の距離を第3中心間距離とし、第3回動中心と第5回動中心との水平方向の距離を第4中心間距離とすると、第1中心間距離と第2中心間距離と第3中心間距離と第4中心間距離とが等しくなっている。
【0005】
特許文献1に記載の産業用ロボットは、アームを伸縮させて、ガラス基板の製造装置等の、ガラス基板が収容される収容部に対するガラス基板の搬送を行う。この産業用ロボットでは、ガラス基板の収容部に対して第1ハンドによってガラス基板を搬送するときには、第2先端側アーム部駆動機構が停止している状態で、共通アーム部駆動機構および第1先端側アーム部駆動機構が駆動する。このときには、第1ハンドが一定方向を向いた状態で(すなわち、第1ハンドが一定の姿勢を保った状態で)直線的に移動するように、共通アーム部駆動機構および第1先端側アーム部駆動機構が制御される。
【0006】
また、収容部の正規の位置に収容されたガラス基板の上下方向から見たときの中心を収容部側基板中心とし、上下方向から見たときの第1回動中心と収容部側基板中心とを結ぶ仮想線をシステム基準線とすると、このときには、上下方向から見ると、第1ハンドに搭載されたガラス基板の中心の軌跡がシステム基準線と重なるように、共通アーム部駆動機構および第1先端側アーム部駆動機構が制御される。具体的には、本体部に対する共通アーム部の回動角度と第1先端側アーム部に対する第1ハンドの回動角度とが等しくなるとともに、共通アーム部に対する第1先端側アーム部の回動角度が本体部に対する共通アーム部の回動角度の2倍となるように、共通アーム部駆動機構および第1先端側アーム部駆動機構が制御される。
【0007】
同様に、特許文献1に記載の産業用ロボットでは、ガラス基板の収容部に対して第2ハンドによってガラス基板を搬送するときには、第1先端側アーム部駆動機構が停止している状態で、共通アーム部駆動機構および第2先端側アーム部駆動機構が駆動する。このときには、第2ハンドが一定方向を向いた状態で直線的に移動するように、共通アーム部駆動機構および第2先端側アーム部駆動機構が制御される。
【0008】
また、このときには、上下方向から見ると、第2ハンドに搭載されたガラス基板の中心の軌跡がシステム基準線と重なるように、共通アーム部駆動機構および第2先端側アーム部駆動機構が制御される。具体的には、本体部に対する共通アーム部の回動角度と第2先端側アーム部に対する第2ハンドの回動角度とが等しくなるとともに、共通アーム部に対する第2先端側アーム部の回動角度が本体部に対する共通アーム部の回動角度の2倍となるように、共通アーム部駆動機構および第2先端側アーム部駆動機構が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2021-13961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の産業用ロボットでは、上述のように、第1中心間距離と第2中心間距離と第3中心間距離と第4中心間距離とが等しくなっている。この産業用ロボットでは、第1先端側アーム部と第2先端側アーム部との干渉を防止するため、第1先端側アーム部が第2先端側アーム部よりも上側に配置されている。したがって、この産業用ロボットの場合、産業用ロボットが上下方向で大型化するおそれがある。また、この産業用ロボットの場合、第1先端側アーム部を第2先端側アーム部よりも上側に配置するために、第1先端側アーム部と共通アーム部との連結部分に円筒状の回動軸が配置されており、第1先端側アーム部と共通アーム部との連結部分の剛性が低下するおそれがある。
【0011】
そこで、本願発明者は、第1中心間距離および第2中心間距離よりも第3中心間距離および第4中心間距離を短くして、第1先端側アーム部と第2先端側アーム部とを上下方向において同じ位置に配置することを検討している。一方で、第3中心間距離が第1中心間距離よりも短くなっていると、上下方向から見たときに、第1ハンドに搭載されたガラス基板の中心の軌跡がシステム基準線と重なるようにアームを伸縮させて第1ハンドによってガラス基板を搬送することは困難になる。同様に、第4中心間距離が第2中心間距離よりも短くなっていると、上下方向から見たときに、第2ハンドに搭載されたガラス基板の中心の軌跡がシステム基準線と重なるようにアームを伸縮させて第2ハンドによってガラス基板を搬送することは困難になる。
【0012】
また、本願発明者は、ガラス基板の収容部に対して第1ハンドによってガラス基板を搬送するときに、従来のように、一定方向を向いた状態で第1ハンドが移動するように、共通アーム部駆動機構および第1先端側アーム部駆動機構を制御することを検討した。しかしながら、システム基準線の方向を前後方向とし、上下方向と前後方向とに直交する方向を左右方向とすると、第1ハンドが一定方向を向いた状態で移動する場合には、上下方向から見たときに、第1ハンドに搭載されたガラス基板の中心の軌跡の、システム基準線に対する左右方向のずれ量が大きくなることが本願発明者の検討によって明らかになった。
【0013】
また、上下方向から見たときに、第1ハンドに搭載されたガラス基板の中心の軌跡の、システム基準線に対する左右方向のずれ量が大きくなると、ガラス基板の製造システムを構成する各装置等と第1ハンドに搭載されたガラス基板とが干渉するおそれが高くなる。同様に、第2ハンドが一定方向を向いた状態で移動する場合には、上下方向から見たときに、第2ハンドに搭載されたガラス基板の中心の軌跡の、システム基準線に対する左右方向のずれ量が大きくなって、ガラス基板の製造システムを構成する各装置等と第2ハンドに搭載されたガラス基板とが干渉するおそれが高くなることが本願発明者の検討によって明らかになった。
【0014】
そこで、本発明の課題は、搬送対象物が収容される収容部と、収容部に対する搬送対象物の搬送を行う産業用ロボットとを備えるロボットシステムにおいて、本体部に対する共通アーム部の回動中心と共通アーム部に対する第1先端側アーム部の回動中心との水平方向の距離よりも、共通アーム部に対する第1先端側アーム部の回動中心と第1先端側アーム部に対する第1ハンドの回動中心との水平方向の距離が短くなっており、かつ、本体部に対する共通アーム部の回動中心と共通アーム部に対する第2先端側アーム部の回動中心との水平方向の距離よりも、共通アーム部に対する第2先端側アーム部の回動中心と第2先端側アーム部に対する第2ハンドの回動中心との水平方向の距離が短くなっていても、第1ハンド、第2ハンドで搬送対象物を搬送するときの、ロボットシステムの各装置等と第1ハンド、第2ハンドに搭載される搬送対象物との干渉を防止することが可能なロボットシステムを提供することにある。
【0015】
また、本発明の課題は、搬送対象物が収容される収容部に対する搬送対象物の搬送を行うとともにロボットシステムで使用される産業用ロボットの制御方法において、本体部に対する共通アーム部の回動中心と共通アーム部に対する第1先端側アーム部の回動中心との水平方向の距離よりも、共通アーム部に対する第1先端側アーム部の回動中心と第1先端側アーム部に対する第1ハンドの回動中心との水平方向の距離が短くなっており、かつ、本体部に対する共通アーム部の回動中心と共通アーム部に対する第2先端側アーム部の回動中心との水平方向の距離よりも、共通アーム部に対する第2先端側アーム部の回動中心と第2先端側アーム部に対する第2ハンドの回動中心との水平方向の距離が短くなっていても、第1ハンド、第2ハンドで搬送対象物を搬送するときの、ロボットシステムの各装置等と第1ハンド、第2ハンドに搭載される搬送対象物との干渉を防止することが可能となる産業用ロボットの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様のロボットシステムは、搬送対象物が収容される収容部と、収容部からの搬送対象物の搬出および収容部への搬送対象物の搬入の少なくともいずれか一方を行う水平多関節型の産業用ロボットとを備え、産業用ロボットは、搬送対象物が搭載される第1ハンドおよび第2ハンドと、第1ハンドおよび第2ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、アームの基端側が回動可能に連結される本体部と、本体部に対してアームを水平方向に伸縮させるアーム駆動機構と、産業用ロボットを制御する制御部とを備え、アームは、第1ハンドが先端側に回動可能に連結される第1先端側アーム部と、第2ハンドが先端側に回動可能に連結される第2先端側アーム部と、第1先端側アーム部の基端側および第2先端側アーム部の基端側が互いに異なる位置で回動可能に連結されるとともに本体部に回動可能に連結される共通アーム部とを備え、アーム駆動機構は、上下方向を回動の軸方向として本体部に対して共通アーム部を回動させる共通アーム部駆動機構と、上下方向を回動の軸方向として共通アーム部に対して第1先端側アーム部を回動させるとともに第1先端側アーム部に対して第1ハンドを回動させる第1先端側アーム部駆動機構と、上下方向を回動の軸方向として共通アーム部に対して第2先端側アーム部を回動させるとともに第2先端側アーム部に対して第2ハンドを回動させる第2先端側アーム部駆動機構とを備え、上下方向から見たときの第1ハンドおよび第2ハンドの形状は、所定方向を長手方向とする長手形状となっており、本体部に対する共通アーム部の回動中心を第1回動中心とし、共通アーム部に対する第1先端側アーム部の回動中心を第2回動中心とし、共通アーム部に対する第2先端側アーム部の回動中心を第3回動中心とし、第1先端側アーム部に対する第1ハンドの回動中心を第4回動中心とし、第2先端側アーム部に対する第2ハンドの回動中心を第5回動中心とし、第1回動中心と第2回動中心との水平方向の距離を第1中心間距離とし、第1回動中心と第3回動中心との水平方向の距離を第2中心間距離とし、第2回動中心と第4回動中心との水平方向の距離を第3中心間距離とし、第3回動中心と第5回動中心との水平方向の距離を第4中心間距離とし、上下方向から見たときに第1ハンドの長手方向に直交する第1ハンドの短手方向を第1短手方向とし、上下方向から見たときに第2ハンドの長手方向に直交する第2ハンドの短手方向を第2短手方向とし、上下方向から見たときの第1ハンドの第1短手方向の中心線を第1ハンド基準線とし、上下方向から見たときの第2ハンドの第2短手方向の中心線を第2ハンド基準線とし、本体部に対する共通アーム部の回動速度を共通アーム部回動速度とし、共通アーム部に対する第1先端側アーム部の回動速度を第1先端側アーム部回動速度とし、共通アーム部に対する第2先端側アーム部の回動速度を第2先端側アーム部回動速度とし、第1ハンドの正規の位置に搭載される搬送対象物の上下方向から見たときの中心を第1ハンド中心とし、第2ハンドの正規の位置に搭載される搬送対象物の上下方向から見たときの中心を第2ハンド中心とし、収容部の正規の位置に収容される搬送対象物の上下方向から見たときの中心を収容部中心とし、上下方向から見たときの第1回動中心と収容部中心とを結ぶ仮想線をシステム基準線とし、システム基準線の方向を前後方向とし、上下方向と前後方向とに直交する方向を左右方向とし、第1先端側アーム部側が伸びている状態で収容部に対する搬送対象物の受渡しを行うときの第1ハンドの位置を第1受渡し位置とし、第2先端側アーム部側が伸びている状態で収容部に対する搬送対象物の受渡しを行うときの第2ハンドの位置を第2受渡し位置とし、本体部に第1ハンドおよび第2ハンドが近づくように所定の状態までアームが縮んでいるときの第1ハンドの位置を第1基準位置とし、第1ハンドが第1基準位置に配置されているときの第2ハンドの位置を第2基準位置とすると、第1中心間距離と第2中心間距離とは、等しくなっており、第3中心間距離は、第1中心間距離よりも短くなっており、第4中心間距離は、第2中心間距離よりも短くなっており、第1受渡し位置と第1基準位置との間で第1ハンドが移動するときに、共通アーム部回動速度と第1先端側アーム部回動速度との比率は、一定になっており、第2受渡し位置と第2基準位置との間で第2ハンドが移動するときに、共通アーム部回動速度と第2先端側アーム部回動速度との比率は、一定になっており、第1ハンドが第1受渡し位置に配置されているときに、上下方向から見ると、システム基準線と第1ハンド基準線とが重なり、第2ハンドが第2受渡し位置に配置されているときに、上下方向から見ると、システム基準線と第2ハンド基準線とが重なり、制御部は、第1受渡し位置と第1基準位置との間で第1ハンドが移動するときに、上下方向から見ると、第1ハンド中心の軌跡がシステム基準線に対して左右方向の両側に振れるように、第1ハンドが第1基準位置に配置されているときにシステム基準線に対して第1ハンド基準線を傾けるとともに、共通アーム部駆動機構および第1先端側アーム部駆動機構を駆動し、なおかつ、第2受渡し位置と第2基準位置との間で第2ハンドが移動するときに、上下方向から見ると、第2ハンド中心の軌跡がシステム基準線に対して左右方向の両側に振れるように、第2ハンドが第2基準位置に配置されているときにシステム基準線に対して第2ハンド基準線を傾けるとともに、共通アーム部駆動機構および第2先端側アーム部駆動機構を駆動することを特徴とする。
【0017】
本態様のロボットシステムでは、制御部は、第1受渡し位置と第1基準位置との間で第1ハンドが移動するときに、上下方向から見ると、第1ハンド中心の軌跡がシステム基準線に対して左右方向の両側に振れるように、第1ハンドが第1基準位置に配置されているときにシステム基準線に対して第1ハンド基準線を傾けるとともに、共通アーム部駆動機構および第1先端側アーム部駆動機構を駆動している。そのため、本願発明者の検討によると、本態様では、第3中心間距離が第1中心間距離より短くなっていても、上下方向から見ると、第1受渡し位置と第1基準位置との間で第1ハンドが移動するときの、第1ハンド中心の軌跡の、システム基準線に対する左右方向のずれ量を低減することが可能になる。したがって、本態様では、第3中心間距離が第1中心間距離より短くなっていても、第1ハンドで搬送対象物を搬送するときの、ロボットシステムの各装置等と第1ハンドに搭載される搬送対象物との干渉を防止することが可能になる。
【0018】
また、本態様では、制御部は、第2受渡し位置と第2基準位置との間で第2ハンドが移動するときに、上下方向から見ると、第2ハンド中心の軌跡がシステム基準線に対して左右方向の両側に振れるように、第2ハンドが第2基準位置に配置されているときにシステム基準線に対して第2ハンド基準線を傾けるとともに、共通アーム部駆動機構および第2先端側アーム部駆動機構を駆動している。そのため、本願発明者の検討によると、本態様では、第4中心間距離が第2中心間距離より短くなっていても、上下方向から見ると、第2受渡し位置と第2基準位置との間で第2ハンドが移動するときの、第2ハンド中心の軌跡の、システム基準線に対する左右方向のずれ量を低減することが可能になる。したがって、本態様では、第4中心間距離が第2中心間距離より短くなっていても、第2ハンドで搬送対象物を搬送するときの、ロボットシステムの各装置等と第2ハンドに搭載される搬送対象物との干渉を防止することが可能になる。
【0019】
本態様において、たとえば、第1先端側アーム部と第2先端側アーム部とは、上下方向において同じ位置に配置されている。また、本態様において、たとえば、上下方向から見たときに共通アーム部の外形は、二等辺三角形状になっている。
【0020】
また、上記の課題を解決するため、本発明の一態様の産業用ロボットの制御方法は、搬送対象物が搭載される第1ハンドおよび第2ハンドと、第1ハンドおよび第2ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、アームの基端側が回動可能に連結される本体部と、本体部に対してアームを水平方向に伸縮させるアーム駆動機構とを備え、搬送対象物が収容される収容部からの搬送対象物の搬出および収容部への搬送対象物の搬入の少なくともいずれか一方を行う水平多関節型の産業用ロボットであって、アームは、第1ハンドが先端側に回動可能に連結される第1先端側アーム部と、第2ハンドが先端側に回動可能に連結される第2先端側アーム部と、第1先端側アーム部の基端側および第2先端側アーム部の基端側が互いに異なる位置で回動可能に連結されるとともに本体部に回動可能に連結される共通アーム部とを備え、アーム駆動機構は、上下方向を回動の軸方向として本体部に対して共通アーム部を回動させる共通アーム部駆動機構と、上下方向を回動の軸方向として共通アーム部に対して第1先端側アーム部を回動させるとともに第1先端側アーム部に対して第1ハンドを回動させる第1先端側アーム部駆動機構と、上下方向を回動の軸方向として共通アーム部に対して第2先端側アーム部を回動させるとともに第2先端側アーム部に対して第2ハンドを回動させる第2先端側アーム部駆動機構とを備え、上下方向から見たときの第1ハンドおよび第2ハンドの形状は、所定方向を長手方向とする長手形状となっており、本体部に対する共通アーム部の回動中心を第1回動中心とし、共通アーム部に対する第1先端側アーム部の回動中心を第2回動中心とし、共通アーム部に対する第2先端側アーム部の回動中心を第3回動中心とし、第1先端側アーム部に対する第1ハンドの回動中心を第4回動中心とし、第2先端側アーム部に対する第2ハンドの回動中心を第5回動中心とし、第1回動中心と第2回動中心との水平方向の距離を第1中心間距離とし、第1回動中心と第3回動中心との水平方向の距離を第2中心間距離とし、第2回動中心と第4回動中心との水平方向の距離を第3中心間距離とし、第3回動中心と第5回動中心との水平方向の距離を第4中心間距離とし、上下方向から見たときに第1ハンドの長手方向に直交する第1ハンドの短手方向を第1短手方向とし、上下方向から見たときに第2ハンドの長手方向に直交する第2ハンドの短手方向を第2短手方向とし、上下方向から見たときの第1ハンドの第1短手方向の中心線を第1ハンド基準線とし、上下方向から見たときの第2ハンドの第2短手方向の中心線を第2ハンド基準線とし、本体部に対する共通アーム部の回動速度を共通アーム部回動速度とし、共通アーム部に対する第1先端側アーム部の回動速度を第1先端側アーム部回動速度とし、共通アーム部に対する第2先端側アーム部の回動速度を第2先端側アーム部回動速度とし、第1ハンドの正規の位置に搭載される搬送対象物の上下方向から見たときの中心を第1ハンド中心とし、第2ハンドの正規の位置に搭載される搬送対象物の上下方向から見たときの中心を第2ハンド中心とし、収容部の正規の位置に収容される搬送対象物の上下方向から見たときの中心を収容部中心とし、上下方向から見たときの第1回動中心と収容部中心とを結ぶ仮想線をシステム基準線とし、システム基準線の方向を前後方向とし、上下方向と前後方向とに直交する方向を左右方向とし、第1先端側アーム部側が伸びている状態で収容部に対する搬送対象物の受渡しを行うときの第1ハンドの位置を第1受渡し位置とし、第2先端側アーム部側が伸びている状態で収容部に対する搬送対象物の受渡しを行うときの第2ハンドの位置を第2受渡し位置とし、本体部に第1ハンドおよび第2ハンドが近づくように所定の状態までアームが縮んでいるときの第1ハンドの位置を第1基準位置とし、第1ハンドが第1基準位置に配置されているときの第2ハンドの位置を第2基準位置とすると、第1中心間距離と第2中心間距離とは、等しくなっており、第3中心間距離は、第1中心間距離よりも短くなっており、第4中心間距離は、第2中心間距離よりも短くなっており、第1受渡し位置と第1基準位置との間で第1ハンドが移動するときに、共通アーム部回動速度と第1先端側アーム部回動速度との比率は、一定になっており、第2受渡し位置と第2基準位置との間で第2ハンドが移動するときに、共通アーム部回動速度と第2先端側アーム部回動速度との比率は、一定になっており、第1ハンドが第1受渡し位置に配置されているときに、上下方向から見ると、システム基準線と第1ハンド基準線とが重なり、第2ハンドが第2受渡し位置に配置されているときに、上下方向から見ると、システム基準線と第2ハンド基準線とが重なっている産業用ロボットの制御方法であって、第1受渡し位置と第1基準位置との間で第1ハンドが移動するときに、上下方向から見ると、第1ハンド中心の軌跡がシステム基準線に対して左右方向の両側に振れるように、第1ハンドが第1基準位置に配置されているときにシステム基準線に対して第1ハンド基準線を傾けるとともに、共通アーム部駆動機構および第1先端側アーム部駆動機構を駆動し、なおかつ、第2受渡し位置と第2基準位置との間で第2ハンドが移動するときに、上下方向から見ると、第2ハンド中心の軌跡がシステム基準線に対して左右方向の両側に振れるように、第2ハンドが第2基準位置に配置されているときにシステム基準線に対して第2ハンド基準線を傾けるとともに、共通アーム部駆動機構および第2先端側アーム部駆動機構を駆動することを特徴とする。
【0021】
本態様の産業用ロボットの制御方法では、第1受渡し位置と第1基準位置との間で第1ハンドが移動するときに、上下方向から見ると、第1ハンド中心の軌跡がシステム基準線に対して左右方向の両側に振れるように、第1ハンドが第1基準位置に配置されているときにシステム基準線に対して第1ハンド基準線を傾けるとともに、共通アーム部駆動機構および第1先端側アーム部駆動機構を駆動している。そのため、本願発明者の検討によると、本態様では、第3中心間距離が第1中心間距離より短くなっていても、上下方向から見ると、第1受渡し位置と第1基準位置との間で第1ハンドが移動するときの、第1ハンド中心の軌跡の、システム基準線に対する左右方向のずれ量を低減することが可能になる。したがって、本態様では、第3中心間距離が第1中心間距離より短くなっていても、第1ハンドで搬送対象物を搬送するときの、ロボットシステムの各装置等と第1ハンドに搭載される搬送対象物との干渉を防止することが可能になる。
【0022】
また、本態様では、第2受渡し位置と第2基準位置との間で第2ハンドが移動するときに、上下方向から見ると、第2ハンド中心の軌跡がシステム基準線に対して左右方向の両側に振れるように、第2ハンドが第2基準位置に配置されているときにシステム基準線に対して第2ハンド基準線を傾けるとともに、共通アーム部駆動機構および第2先端側アーム部駆動機構を駆動している。そのため、本願発明者の検討によると、本態様では、第4中心間距離が第2中心間距離より短くなっていても、上下方向から見ると、第2受渡し位置と第2基準位置との間で第2ハンドが移動するときの、第2ハンド中心の軌跡の、システム基準線に対する左右方向のずれ量を低減することが可能になる。したがって、本態様では、第4中心間距離が第2中心間距離より短くなっていても、第2ハンドで搬送対象物を搬送するときの、ロボットシステムの各装置等と第2ハンドに搭載される搬送対象物との干渉を防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明では、搬送対象物が収容される収容部と、収容部に対する搬送対象物の搬送を行う産業用ロボットとを備えるロボットシステムにおいて、本体部に対する共通アーム部の回動中心と共通アーム部に対する第1先端側アーム部の回動中心との水平方向の距離よりも、共通アーム部に対する第1先端側アーム部の回動中心と第1先端側アーム部に対する第1ハンドの回動中心との水平方向の距離が短くなっており、かつ、本体部に対する共通アーム部の回動中心と共通アーム部に対する第2先端側アーム部の回動中心との水平方向の距離よりも、共通アーム部に対する第2先端側アーム部の回動中心と第2先端側アーム部に対する第2ハンドの回動中心との水平方向の距離が短くなっていても、第1ハンド、第2ハンドで搬送対象物を搬送するときの、ロボットシステムの各装置等と第1ハンド、第2ハンドに搭載される搬送対象物との干渉を防止することが可能になる。
【0024】
また、本発明の制御方法で産業用ロボットを制御すれば、本体部に対する共通アーム部の回動中心と共通アーム部に対する第1先端側アーム部の回動中心との水平方向の距離よりも、共通アーム部に対する第1先端側アーム部の回動中心と第1先端側アーム部に対する第1ハンドの回動中心との水平方向の距離が短くなっており、かつ、本体部に対する共通アーム部の回動中心と共通アーム部に対する第2先端側アーム部の回動中心との水平方向の距離よりも、共通アーム部に対する第2先端側アーム部の回動中心と第2先端側アーム部に対する第2ハンドの回動中心との水平方向の距離が短くなっていても、第1ハンド、第2ハンドで搬送対象物を搬送するときの、ロボットシステムの各装置等と第1ハンド、第2ハンドに搭載される搬送対象物との干渉を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態にかかるロボットシステムの構成を説明するための平面図である。
図2図1に示すロボットシステムの構成を説明するための平面図である。
図3図1に示す産業用ロボットの斜視図である。
図4図1に示す産業用ロボットの斜視図である。
図5図4に示す産業用ロボットの背面図である。
図6図3に示す産業用ロボットの構成を説明するためのブロック図である。
図7図1に示す第1ハンドが第1受渡し位置と第1基準位置との間で移動するときの第1ハンド中心の軌跡の一例を説明するための図である。
図8図1に示す第1ハンドが第1受渡し位置と第1基準位置との間で移動するときの第1ハンド中心の軌跡の比較例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
(ロボットシステムの構成)
図1図2は、本発明の実施の形態にかかるロボットシステム1の構成を説明するための平面図である。図3図4は、図1に示す産業用ロボット4の斜視図である。図5は、図4に示す産業用ロボット4の背面図である。図6は、図3に示す産業用ロボット4の構成を説明するためのブロック図である。
【0028】
本形態のロボットシステム1は、搬送対象物である半導体ウエハ2(以下、「ウエハ2」とする。)が収容される収容部3と、収容部3に対するウエハ2の搬送を行うための水平多関節型の産業用ロボット4(以下、「ロボット4」とする。)とを備える半導体製造システムである。ウエハ2は、薄い円板状に形成されている。本形態の収容部3は、たとえば、複数枚のウエハ2が上下方向(鉛直方向)において一定のピッチで収容されるFOUPである。したがって、以下の説明では、収容部3を「FOUP3」とする。ロボットシステム1は、FOUP3およびロボット4に加えて、半導体を製造するための各種の処理装置を備えている。
【0029】
ロボット4は、FOUP3からのウエハ2の搬出およびFOUP3へのウエハ2の搬入の少なくともいずれか一方を行う。ロボット4は、ウエハ2が搭載されるハンド6、7と、ハンド6、7が先端側に回動可能に連結されるアーム8と、アーム8の基端側が回動可能に連結される本体部9とを備えている。本形態のロボット4は、上下方向において重なった状態で配置される4個のハンド6と、上下方向において重なった状態で配置される4個のハンド7とを備えている。本形態のハンド6は、第1ハンドであり、ハンド7は、第2ハンドである。
【0030】
また、ロボット4は、ロボット4を制御する制御部10と、本体部9に対してアーム8を水平方向に伸縮させるアーム駆動機構11と、本体部9に対してハンド6、7およびアーム8を昇降させる昇降機構(図示省略)とを備えている。アーム8は、ハンド6が先端側に回動可能に連結される先端側アーム部13と、ハンド7が先端側に回動可能に連結される先端側アーム部14と、先端側アーム部13の基端側および先端側アーム部14の基端側が互いに異なる位置で回動可能に連結されるとともに本体部9に回動可能に連結される共通アーム部15とを備えている。本形態のアーム8は、先端側アーム部13、14と共通アーム部15とによって構成されている。本形態の先端側アーム部13は、第1先端側アーム部であり、先端側アーム部14は、第2先端側アーム部である。
【0031】
上下方向から見たときのハンド6、7の形状は、所定方向を長手方向とする長手形状となっている。具体的には、上下方向から見たときのハンド6、7の形状は、Y形状となっており、ハンド6、7の先端側部分は、二股状となっている。ハンド6とハンド7とは略同形状に形成されている。ウエハ2は、ハンド6、7の先端側部分に搭載される。ハンド6、7は、ハンド6、7に搭載されるウエハ2を水平方向で位置決めするための位置決め部材を備えている。4個のハンド6は、上下方向において一定の間隔をあけた状態でハンド固定部材16に固定されている。ハンド固定部材16には、ハンド6の基端部が固定されている。4個のハンド7は、上下方向において一定の間隔をあけた状態でハンド固定部材17に固定されている。ハンド固定部材17には、ハンド7の基端部が固定されている。
【0032】
ハンド固定部材16は、先端側アーム部13の先端側に回動可能に連結されている。すなわち、4個のハンド6は、ハンド固定部材16を介して先端側アーム部13の先端側に回動可能に連結されている。ハンド固定部材17は、先端側アーム部14の先端側に回動可能に連結されている。すなわち、4個のハンド7は、ハンド固定部材17を介して先端側アーム部14の先端側に回動可能に連結されている。4個のハンド6のそれぞれと4個のハンド7のそれぞれとは、上下方向において交互に配置されている。
【0033】
以下の説明では、図1図2に示すように、ハンド6の正規の位置(設計上の位置)に搭載されるウエハ2の上下方向から見たときの中心を第1ハンド中心C1とし、ハンド7の正規の位置(設計上の位置)に搭載されるウエハ2の上下方向から見たときの中心を第2ハンド中心C2とし、FOUP3の正規の位置(設計上の位置)に収容されるウエハ2の上下方向から見たときの中心をFOUP中心C3とする。ハンド6の正規の位置に搭載されるウエハ2は、ハンド6の位置決め部材によって水平方向で位置決めされ、ハンド7の正規の位置に搭載されるウエハ2は、ハンド7の位置決め部材によって水平方向で位置決めされている。本形態のFOUP中心C3は、収容部中心である。
【0034】
また、以下の説明では、上下方向から見たときにハンド6の長手方向に直交するハンド6の短手方向を第1短手方向とし、上下方向から見たときのハンド6の第1短手方向の中心線を第1ハンド基準線CL1とする。また、上下方向から見たときにハンド7の長手方向に直交するハンド7の短手方向を第2短手方向とし、上下方向から見たときのハンド7の第2短手方向の中心線を第2ハンド基準線CL2とする。上下方向から見たときに、第1ハンド中心C1は、第1ハンド基準線CL1上にあり、第2ハンド中心C2は、第2ハンド基準線CL2上にある。
【0035】
先端側アーム部13、14は、ハンド6、7よりも下側に配置されている。先端側アーム部13と先端側アーム部14とは、上下方向において同じ位置に配置されている。共通アーム部15は、先端側アーム部13、14よりも下側に配置されている。また、共通アーム部15は、本体部9よりも上側に配置されている。本体部9は、円筒状に形成されている。先端側アーム部13、14は、上下方向から見たときの形状が細長い略長方形状となるとともに上下方向の厚さが薄いブロック状に形成されている。先端側アーム部13、14の上下方向の厚さは一定になっている。先端側アーム部13、14は、中空状に形成されている。先端側アーム部13と先端側アーム部14とは同形状に形成されている。
【0036】
共通アーム部15は、上下方向から見たときの外形が二等辺三角形状となるブロック状に形成されている。すなわち、上下方向から見たときの共通アーム部15の外形は二等辺三角形状となっている。共通アーム部15の上下方向の厚さは一定になっている。共通アーム部15は、中空状に形成されている。二等辺三角形状をなす共通アーム部15の底辺の長さは、円筒状をなす本体部9の外径よりも長くなっている。先端側アーム部13の基端側は、二等辺三角形状をなす共通アーム部15の、一方の斜辺と底辺とが交わる角部に回動可能に連結され、先端側アーム部14の基端側は、二等辺三角形状をなす共通アーム部15の、他方の斜辺と底辺とが交わる角部に回動可能に連結されている。本体部9には、共通アーム部15の中心部分が回動可能に連結されている。
【0037】
アーム駆動機構11は、上下方向を回動の軸方向として本体部9に対して共通アーム部15を回動させる共通アーム部駆動機構19と、上下方向を回動の軸方向として共通アーム部15に対して先端側アーム部13を回動させるとともに先端側アーム部13に対してハンド6を回動させる先端側アーム部駆動機構20と、上下方向を回動の軸方向として共通アーム部15に対して先端側アーム部14を回動させるとともに先端側アーム部14に対してハンド7を回動させる先端側アーム部駆動機構21とを備えている。本形態のアーム駆動機構11は、共通アーム部駆動機構19と先端側アーム部駆動機構20、21とによって構成されている。本形態の先端側アーム部駆動機構20は、第1先端側アーム部駆動機構であり、先端側アーム部駆動機構21は、第2先端側アーム部駆動機構である。
【0038】
以下の説明では、図1図5に示すように、本体部9に対する共通アーム部15の回動中心を第1回動中心C6とし、共通アーム部15に対する先端側アーム部13の回動中心を第2回動中心C7とし、共通アーム部15に対する先端側アーム部14の回動中心を第3回動中心C8とし、先端側アーム部13に対するハンド6の回動中心を第4回動中心C9とし、先端側アーム部14に対するハンド7の回動中心を第5回動中心C10とし、第1回動中心C6と第2回動中心C7との水平方向の距離を第1中心間距離L1とし、第1回動中心C6と第3回動中心C8との水平方向の距離を第2中心間距離L2とし、第2回動中心C7と第4回動中心C9との水平方向の距離を第3中心間距離L3とし、第3回動中心C8と第5回動中心C10との水平方向の距離を第4中心間距離L4とする。
【0039】
また、以下の説明では、上下方向から見たときの第1回動中心C6とFOUP中心C3とを結ぶ仮想線をシステム基準線CL3とし、システム基準線CL3の方向(図1図2のX方向)を前後方向とし、上下方向と前後方向とに直交する方向(図1図2のY方向)を左右方向とする。FOUP3と本体部9とは、前後方向に所定の間隔をあけた状態で配置されている。FOUP3には、左右方向に平行な2個の側壁が形成されている。ウエハ2は、2個の側壁の間に収容される。
【0040】
第3中心間距離L3は、第1中心間距離L1よりも短くなっている。第4中心間距離L4は、第2中心間距離L2よりも短くなっている。また、第1中心間距離L1と第2中心間距離L2とは等しくなっており、第3中心間距離L3と第4中心間距離L4とは等しくなっている。第1短手方向において、第4回動中心C9は、第1ハンド基準線CL1からずれている。第2短手方向において、第5回動中心C10は、第2ハンド基準線CL2からずれている。第1短手方向における第4回動中心C9と第1ハンド基準線CL1との距離と、第2短手方向における第5回動中心C10と第2ハンド基準線CL2との距離とは等しくなっている。
【0041】
共通アーム部駆動機構19は、モータ24と、モータ24の動力を共通アーム部15に伝達する動力伝達機構とを備えている。動力伝達機構は、減速機、プーリおよびベルト等によって構成されている。モータ24および動力伝達機構は、本体部9の内部に配置されている。先端側アーム部駆動機構20は、モータ25と、モータ25の動力を先端側アーム部13およびハンド6に伝達する動力伝達機構とを備えている。動力伝達機構は、減速機、プーリおよびベルト等によって構成されている。モータ25および動力伝達機構は、先端側アーム部13および共通アーム部15の内部に配置されている。先端側アーム部駆動機構21は、モータ26と、モータ26の動力を先端側アーム部14およびハンド7に伝達する動力伝達機構とを備えている。動力伝達機構は、減速機、プーリおよびベルト等によって構成されている。モータ26および動力伝達機構は、先端側アーム部14および共通アーム部15の内部に配置されている。
【0042】
モータ24~26は、サーボモータである。モータ24~26のそれぞれには、モータ24~26のそれぞれの回転位置を検知するためのロータリーエンコーダが取り付けられている。モータ24~26およびロータリーエンコーダは、制御部10に電気的に接続されている。制御部10は、ロータリーエンコーダの検知結果に基づいてモータ24~26を制御する。また、制御部10は、アーム8の伸縮動作時に、2個のモータ25、26のうちのいずれか1個のモータ25、26と、モータ24とを駆動する。すなわち、制御部10は、アーム8の伸縮動作時に、モータ26を停止させた状態でモータ25とモータ24とを駆動するか、あるいは、モータ25を停止させた状態でモータ26とモータ24とを駆動する。
【0043】
先端側アーム部13側が伸びている状態でFOUP3に対するウエハ2の受渡しを行うときのハンド6の位置を第1受渡し位置6Aとし(図1参照)、本体部9にハンド6、7が近づくように所定の状態までアーム8が縮んでいるときのハンド6の位置を第1基準位置6Bとすると(図2図4参照)、ハンド6によってFOUP3に対してウエハ2を搬送するときには、第1受渡し位置6Aと第1基準位置6Bとの間でハンド6が移動する。第1受渡し位置6Aにハンド6が配置されているときには、上下方向から見ると、第1ハンド中心C1とFOUP中心C3とが一致している。
【0044】
また、先端側アーム部14側が伸びている状態でFOUP3に対するウエハ2の受渡しを行うときのハンド7の位置を第2受渡し位置7Aとし(図3参照)、ハンド6が第1基準位置6Bに配置されているときのハンド7の位置を第2基準位置7Bとすると(図4参照)、ハンド7によってFOUP3に対してウエハ2を搬送するときには、第2受渡し位置7Aと第2基準位置7Bとの間でハンド7が移動する。第2受渡し位置7Aにハンド7が配置されているときには、上下方向から見ると、第2ハンド中心C2とFOUP中心C3とが一致している。
【0045】
本形態では、ハンド6が第1基準位置6Bに配置され、ハンド7が第2基準位置7Bに配置されている状態では、共通アーム部駆動機構19が駆動して本体部9に対してアーム8およびハンド6、7が回動するときの、第1回動中心C6を中心とするアーム8およびハンド6、7の旋回半径が最小となる位置までアーム8が縮んでいる。すなわち、第1回動中心C6を中心とするアーム8およびハンド6、7の旋回半径が最小となる位置までアーム8が縮んでいるときのハンド6の位置が第1基準位置6Bであり、ハンド7の位置が第2基準位置7Bである。
【0046】
本体部9に対する共通アーム部15の回動速度を共通アーム部回動速度とし、共通アーム部15に対する先端側アーム部13の回動速度を第1先端側アーム部回動速度とし、共通アーム部15に対する先端側アーム部14の回動速度を第2先端側アーム部回動速度とすると、第1受渡し位置6Aと第1基準位置6Bとの間でハンド6が移動するときに、共通アーム部回動速度と第1先端側アーム部回動速度との比率は一定になっている。また、第2受渡し位置7Aと第2基準位置7Bとの間でハンド7が移動するときに、共通アーム部回動速度と第2先端側アーム部回動速度との比率は一定になっている。たとえば、第1先端側アーム部回動速度および第2先端側アーム部回動速度は、共通アーム部回動速度の1.5倍~2.5倍程度となっている。
【0047】
また、第1受渡し位置6Aと第1基準位置6Bとの間でハンド6が移動するときに、共通アーム部回動速度および第1先端側アーム部回動速度は一定になっている。同様に、第2受渡し位置7Aと第2基準位置7Bとの間でハンド7が移動するときに、共通アーム部回動速度および第2先端側アーム部回動速度は一定になっている。本形態では、第1受渡し位置6Aと第1基準位置6Bとの間でハンド6が移動するときの共通アーム部回動速度と、第2受渡し位置7Aと第2基準位置7Bとの間でハンド7が移動するときの共通アーム部回動速度とが等しくなっている。
【0048】
図1に示すように、ハンド6が第1受渡し位置6Aに配置されているときには、上下方向から見ると、システム基準線CL3と第1ハンド基準線CL1とが重なっている。同様に、ハンド7が第2受渡し位置7Aに配置されているときには、上下方向から見ると、システム基準線CL3と第2ハンド基準線CL2とが重なっている。ハンド6が第1基準位置6Bに配置され、ハンド7が第2基準位置7Bに配置されているときには、上下方向から見ると、ハンド6とハンド7とが重なっている(図2図4参照)。
【0049】
また、ハンド6が第1基準位置6Bに配置され、ハンド7が第2基準位置7Bに配置されているときには、上下方向から見ると、システム基準線CL3に対して第1ハンド基準線CL1が傾いている(図2参照)。同様に、ハンド6が第1基準位置6Bに配置され、ハンド7が第2基準位置7Bに配置されているときには、上下方向から見ると、システム基準線CL3に対して第2ハンド基準線CL2が傾いている。ハンド6が第1基準位置6Bに配置され、ハンド7が第2基準位置7Bに配置されているときには、上下方向から見ると、第1ハンド基準線CL1と第2ハンド基準線CL2とが重なっている。
【0050】
(産業用ロボットの制御方法)
図7は、図1に示すハンド6が第1受渡し位置6Aと第1基準位置6Bとの間で移動するときの第1ハンド中心C1の軌跡の一例を説明するための図である。
【0051】
制御部10は、第1受渡し位置6Aと第1基準位置6Bとの間でハンド6が移動するときに、上下方向から見ると、第1ハンド中心C1の軌跡がシステム基準線CL3に対して左右方向の両側に振れるように、ハンド6が第1基準位置6Bに配置されているときにシステム基準線CL3に対して第1ハンド基準線CL1を傾けるとともに(すなわち、前後方向に対して第1ハンド基準線CL1を傾けるとともに、図2参照)、共通アーム部駆動機構19および先端側アーム部駆動機構20を駆動する。すなわち、制御部10は、第1受渡し位置6Aと第1基準位置6Bとの間でハンド6が移動するときに、上下方向から見ると、第1ハンド中心C1がシステム基準線CL3に対して左右方向の両側に移動するように、ハンド6が第1基準位置6Bに配置されているときにシステム基準線CL3に対して第1ハンド基準線CL1を傾けるとともに、モータ24、25を駆動制御する。
【0052】
たとえば、制御部10は、第1受渡し位置6Aと第1基準位置6Bとの間でハンド6が移動するときの第1ハンド中心C1の軌跡が図7の曲線CV1となるように、ハンド6が第1基準位置6Bに配置されているときにシステム基準線CL3に対して第1ハンド基準線CL1を傾けるとともに、共通アーム部駆動機構19および先端側アーム部駆動機構20を駆動する。図7において、縦軸の「0」の位置は、左右方向におけるシステム基準線CL3の位置を示している。また、ハンド6の長手方向において第4回動中心C9と同じ位置に配置される第1ハンド基準線CL1上の一点を点P1とすると(図1図2参照)、図7の曲線CV2は、第1受渡し位置6Aと第1基準位置6Bとの間でハンド6が移動するときに、上下方向から見たときの点P1の軌跡である。
【0053】
図7に示す例では、上下方向から見ると、ハンド6が第1基準位置6Bに配置されているときにシステム基準線CL3よりも左右方向の一方側に配置される第1ハンド中心C1が、ハンド6が第1受渡し位置6Aに向かって移動するにしたがってさらに左右方向の一方側に移動した後、システム基準線CL3よりも左右方向の他方側に移動する。また、ハンド6が第1受渡し位置6Aに到達すると、第1ハンド中心C1はシステム基準線CL3上に配置される。このときには、点P1もシステム基準線CL3上に配置される。
【0054】
また、図7に示す例では、第1受渡し位置6Aと第1基準位置6Bとの間でハンド6が移動するときの、システム基準線CL3に対する第1ハンド中心C1の左右方向の一方側への振れ量(ずれ量)A1と、システム基準線CL3に対する第1ハンド中心C1の左右方向の他方側への振れ量A2とがほぼ等しくなっている。すなわち、図7に示す例では、制御部10は、第1受渡し位置6Aと第1基準位置6Bとの間でハンド6が移動するときの振れ量A1と振れ量A2とがほぼ等しくなるように、ハンド6が第1基準位置6Bに配置されているときにシステム基準線CL3に対して第1ハンド基準線CL1を傾けるとともに、共通アーム部駆動機構19および先端側アーム部駆動機構20を駆動する。
【0055】
同様に、制御部10は、第2受渡し位置7Aと第2基準位置7Bとの間でハンド7が移動するときに、上下方向から見ると、第2ハンド中心C2の軌跡がシステム基準線CL3に対して左右方向の両側に振れるように、ハンド7が第2基準位置7Bに配置されているときにシステム基準線CL3に対して第2ハンド基準線CL2を傾けるとともに、共通アーム部駆動機構19および先端側アーム部駆動機構21を駆動する。
【0056】
たとえば、制御部10は、第2受渡し位置7Aと第2基準位置7Bとの間でハンド7が移動するときの第2ハンド中心C2の軌跡が図7の曲線CV1と同じ曲線になるように、ハンド7が第2基準位置7Bに配置されているときにシステム基準線CL3に対して第2ハンド基準線CL2を傾けるとともに、共通アーム部駆動機構19および先端側アーム部駆動機構21を駆動する。なお、この場合には、ハンド7の長手方向において第5回動中心C10と同じ位置に配置される第2ハンド基準線CL2上の一点を点P2とすると(図2参照)、第2受渡し位置7Aと第2基準位置7Bとの間でハンド7が移動するときに、上下方向から見たときの点P2の軌跡は、図7の曲線CV2と同じ曲線になる。
【0057】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、制御部10は、第1受渡し位置6Aと第1基準位置6Bとの間でハンド6が移動するときに、上下方向から見ると、第1ハンド中心C1の軌跡がシステム基準線CL3に対して左右方向の両側に振れるように、ハンド6が第1基準位置6Bに配置されているときにシステム基準線CL3に対して第1ハンド基準線CL1を傾けるとともに、共通アーム部駆動機構19および先端側アーム部駆動機構20を駆動している。
【0058】
そのため、本願発明者の検討によると、本形態では、第3中心間距離L3が第1中心間距離L1より短くなっていても、上下方向から見ると、第1受渡し位置6Aと第1基準位置6Bとの間でハンド6が移動するときの、第1ハンド中心C1の軌跡の、システム基準線CL3に対する左右方向の振れ量A1、A2を低減することが可能になる。したがって、本形態では、第3中心間距離L3が第1中心間距離L1より短くなっていても、ハンド6でウエハ2を搬送するときの、FOUP3等のロボットシステム1の各装置等とハンド6に搭載されるウエハ2との干渉を防止することが可能になる。
【0059】
また、本形態では、制御部10は、第2受渡し位置7Aと第2基準位置7Bとの間でハンド7が移動するときに、上下方向から見ると、第2ハンド中心C2の軌跡がシステム基準線CL3に対して左右方向の両側に振れるように、ハンド7が第2基準位置7Bに配置されているときにシステム基準線CL3に対して第2ハンド基準線CL2を傾けるとともに、共通アーム部駆動機構19および先端側アーム部駆動機構21を駆動している。
【0060】
そのため、本願発明者の検討によると、本形態では、第4中心間距離L4が第2中心間距離L2より短くなっていても、上下方向から見ると、第2受渡し位置7Aと第2基準位置7Bとの間でハンド7が移動するときの、第2ハンド中心C2の軌跡の、システム基準線CL3に対する左右方向の振れ量を低減することが可能になる。したがって、本形態では、第4中心間距離L4が第2中心間距離L2より短くなっていても、ハンド7でウエハ2を搬送するときの、FOUP3等のロボットシステム1の各装置等とハンド7に搭載されるウエハ2との干渉を防止することが可能になる。
【0061】
ちなみに、ロボットシステム1において、第1受渡し位置6Aと第1基準位置6Bとの間でハンド6が移動するときに、一定方向を向いた状態でハンド6が移動するように(具体的には、ハンド6の長手方向と前後方向が一致した状態でハンド6が移動するように)、ハンド6が第1基準位置6Bに配置されているときにシステム基準線CL3に第1ハンド基準線CL1を重ねるとともに、共通アーム部駆動機構19および先端側アーム部駆動機構20を駆動すると、たとえば、上下方向から見たときに、第1受渡し位置6Aと第1基準位置6Bとの間でハンド6が移動するときの第1ハンド中心C1の軌跡は図8の曲線CV11となる。
【0062】
図8に示すように、上下方向から見ると、第1受渡し位置6Aと第1基準位置6Bとの間でハンド6が移動するときに、第1ハンド中心C1の軌跡は、システム基準線CL3よりも左右方向の他方側のみに振れている。システム基準線CL3に対する第1ハンド中心C1の左右方向の他方側への振れ量A11は、上述の振れ量A1、A2よりも大きくなっている。なお、図8の曲線CV12は、第1ハンド中心C1の軌跡が曲線CV11となるように第1受渡し位置6Aと第1基準位置6Bとの間でハンド6が移動するときの、上下方向から見たときの点P1の軌跡である。
【0063】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0064】
上述した形態では、システム基準線CL3に対する第1ハンド中心C1の左右方向の一方側への振れ量A1と、システム基準線CL3に対する第1ハンド中心C1の左右方向の他方側への振れ量A2とがほぼ等しくなっているが、振れ量A1が振れ量A2より大きくなっていても良いし、振れ量A1が振れ量A2より小さくなっていても良い。また、上述した形態において、上下方向から見たときの共通アーム部15の外形は、V形状となっていても良いし、長方形状となっていても良いし、台形状となっていても良い。
【0065】
上述した形態において、ロボット4が有するハンド6の数は、5個以上であっても良いし、1個であっても良い。同様に、ロボット4が有するハンド7の数は、5個以上であっても良いし、1個であっても良い。また、上述した形態において、FOUP3以外の収容部にウエハ2が収容されても良い。たとえば、半導体を製造するための各種の処理装置にウエハ2が収容されても良い。さらに、上述した形態において、ロボット4は、ウエハ2以外の搬送対象物を搬送しても良い。たとえば、ロボット4は、液晶ディスプレイ用のガラス基板を搬送しても良い。この場合のロボットシステム1は、液晶ディスプレイの製造システムである。
【符号の説明】
【0066】
1 ロボットシステム
2 ウエハ(半導体ウエハ、搬送対象物)
3 FOUP(収容部)
4 ロボット(産業用ロボット)
6 ハンド(第1ハンド)
6A 第1受渡し位置
6B 第1基準位置
7 ハンド(第2ハンド)
7A 第2受渡し位置
7B 第2基準位置
8 アーム
9 本体部
10 制御部
11 アーム駆動機構
13 先端側アーム部(第1先端側アーム部)
14 先端側アーム部(第2先端側アーム部)
15 共通アーム部
19 共通アーム部駆動機構
20 先端側アーム部駆動機構(第1先端側アーム部駆動機構)
21 先端側アーム部駆動機構(第2先端側アーム部駆動機構)
C1 第1ハンド中心
C2 第2ハンド中心
C3 FOUP中心(収容部中心)
C6 第1回動中心
C7 第2回動中心
C8 第3回動中心
C9 第4回動中心
C10 第5回動中心
CL1 第1ハンド基準線
CL2 第2ハンド基準線
CL3 システム基準線
L1 第1中心間距離
L2 第2中心間距離
L3 第3中心間距離
L4 第4中心間距離
X 前後方向
Y 左右方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8