(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106803
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】共電解装置
(51)【国際特許分類】
C25B 1/23 20210101AFI20240801BHJP
C25B 1/042 20210101ALI20240801BHJP
C25B 15/023 20210101ALI20240801BHJP
【FI】
C25B1/23
C25B1/042
C25B15/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011249
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】内 一隆
(72)【発明者】
【氏名】川上 将史
(72)【発明者】
【氏名】山内 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】牟禮 辰洋
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021AB25
4K021BA02
4K021CA09
4K021DB40
4K021DB43
4K021DB53
4K021EA06
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で電解効率の低下を抑制する。
【解決手段】共電解装置10は第1の流路13と第2の流路14と電解反応部15と第3の流路16と第4の流路17とを有する。第1の流路13は水蒸気を供給する。第2の流路14は二酸化炭素を供給する。電解反応部15はカソード流路25を有する。カソード流路25は導入部26と導出部27とを有する。第1の流路13及び第2の流路14から供給されるガスを導入口26に導入する。電解反応部15は電解反応によりカソード流路25を流動するガスの少なくとも一部を分解する。第3の流路16を導出口26に接続する。第4の流路17を第3の流路16において分岐するように接続する。第4の流路17は排出ガスの少なくとも一部を導入口26に流動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気を供給する第1の流路と、
二酸化炭素を供給する第2の流路と、
前記第1の流路及び前記第2の流路から供給されるガスを導入口から導入させるカソード流路を有し、電解反応により前記カソード流路を流動するガスの少なくとも一部を分解する電解反応部と、
前記カソード流路の導出口に接続される第3の流路と、
前記第3の流路において分岐するように接続され、前記カソード流路から前記第3の流路に排出される排出ガスの少なくとも一部を前記導入口に流動させる第4の流路と、を備える
共電解装置。
【請求項2】
請求項1に記載の共電解装置において、
前記第4の流路を流れる前記排出ガスの流量を調節可能な第1の調節部と、
前記導出口から排出される前記排出ガスの流量に対する前記第4の流路に流す前記排出ガスの流量の比を特定の比に近づけるように前記第1の調節部を制御する制御部と、を更に備える
共電解装置。
【請求項3】
請求項2に記載の共電解装置において、
前記電解反応部における前記カソード流路に面するカソードの酸化還元状態を検出する状態検出装置と、を更に備え
前記制御部は、前記状態検出装置の出力値に基づいて、前記カソードが酸化状態であると判別する場合、前記排出ガスを前記第4の流路に流すように前記第1の調節部を制御する
共電解装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の共電解装置において、
前記第1の流路及び前記第2の流路の少なくとも一方を流れるガスの流量を調節可能な第2の調節部と、
前記第4の流路に設けられ、該第4の流路を流れるガスの組成比率を検出する第1の検出部と、を更に備え、
前記制御部は、前記第1の検出部が検出する組成比率に基づいて、前記第2の調節部を制御する
共電解装置。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の共電解装置において、
前記第1の流路及び前記第2の流路のいずれか一方を流れるガスの流量を調節可能な第2の調節部と、
前記第3の流路に設けられ、該第3の流路を流れるガスの組成比率を検出する第2の検出部と、
前記導入口近傍に設けられ、該導入口近傍におけるガスの組成比率を検出する第3の検出部と、
前記第3の流路における前記電解反応部及び前記第4の流路の間に設けられる第2の流量計と、
前記導入口に流入するガスの流量を検出する第5の流量計と、を更に備え、
前記制御部は、前記第2の検出部及び前記第3の検出部がそれぞれ検出する組成比率、並びに前記第2の流量計及び前記第5の流量計がそれぞれ検出する流量に基づいて、前記第2の調節部を制御する
共電解装置。
【請求項6】
請求項2に記載の共電解装置において、
前記導入口近傍に設けられ、該導入口近傍におけるガスの組成比率を検出する第3の検出部を、更に備え、
前記制御部は、前記第3の検出部が検出する組成比率に基づいて水蒸気に対する一酸化炭素の第1の比率及び水蒸気に対する水素の第2の比率の少なくとも一方を算出し、該少なくとも一方が閾値以上である場合、前記排出ガスの前記第4の流路への流動を停止するように前記第1の調節部を制御する
共電解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、共電解装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水及び二酸化炭素から炭化水素ガスを生成することが検討されている。例えば、水及び二酸化炭素を電解することにより得られる水素及び一酸化炭素に触媒を用いて反応させ炭化水素を生成することが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水及び二酸化炭素を電解する共電解装置において、簡易な構成で電解効率の低下の低減が望まれている。
【0005】
本開示の目的は、簡易な構成で電解効率の低下の抑制が可能な共電解装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した諸課題を解決すべく、第1の観点による共電解装置は、
水蒸気を供給する第1の流路と、
二酸化炭素を供給する第2の流路と、
前記第1の流路及び前記第2の流路から供給されるガスを導入口から導入させるカソード流路を有し、電解反応により前記カソード流路を流動するガスの少なくとも一部を分解する電解反応部と、
前記カソード流路の導出口に接続される第3の流路と、
前記第3の流路において分岐するように接続され、前記カソード流路から前記第3の流路に排出される排出ガスの少なくとも一部を前記導入口に流動させる第4の流路と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記のように構成された本開示に係る共電解装置によれば、簡易な構成で電解効率の低下の抑制が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る共電解装置を含む製造システムの概略構成図である。
【
図2】
図1の電解反応部の構成を示す分解斜視図である。
【
図3】
図1の制御部が実行するリサイクル量調節処理を説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図1の制御部が実行するリサイクル開始処理を説明するためのフローチャートである。
【
図5】
図1の制御部が実行する第1の供給量調整処理を説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図1の制御部が実行する第2の供給量調整処理を説明するためのフローチャートである。
【
図7】
図1の制御部が実行するリサイクル停止処理を説明するためのフローチャートである。
【
図8】
図1の制御部が実行する算出処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を適用した共電解装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1に示すように、本開示の一実施形態に係る共電解装置10を含む製造システム11は、共電解装置10及び反応装置12を含んで構成されてよい。共電解装置10は、水蒸気及び二酸化炭素を共電解して、水素及び一酸化炭素を生成してよい。反応装置12は、共電解装置10が生成する水素及び一酸化炭素を反応させて、メタン等の炭化水素を生成してよい。
【0011】
共電解装置10は、第1の流路13、第2の流路14、電解反応部15、第3の流路16、及び第4の流路17を含んで構成される。共電解装置10は、更に、第1の調節部18、第2の調節部19、状態検出装置20、第1の検出部21、第2の検出部22、第3の検出部23、制御部24、第1の流量計39、第2の流量計42、第3の流量計38、第4の流量計40、及び第5の流量計41を含んで構成されてよい。
【0012】
第1の流路13は、水蒸気を共電解装置10に供給する。第1の流路13に流れる水蒸気は、反応装置12において発生する熱を用いて気化させることにより発生させてよい。第2の流路14は二酸化炭素を共電解装置10に供給する。第1の流路13及び第2の流路14は、合流して電解反応部15に接続されてよく、別々に接続されてよい。
【0013】
電解反応部15は、カソード流路25を有する。カソード流路25は導入口26及び導出口27を有する。導入口26は、第1の流路13及び第2の流路14から供給されるガス、具体的には水蒸気及び二酸化炭素をカソード流路25に導入させる。カソード流路25は、カソードに面してよい。カソード流路25は、電解反応により、カソード流路25を流動するガスの少なくとも一部を分解する。
【0014】
具体的には例えば、
図2に示すように、電解反応部15は、電解質層28、カソード29、アノード30、カソード集電板31、アノード集電板32、第1の絶縁板33、第2の絶縁板34、第1の金属板35、及び第2の金属板36を含んで構成されてよい。電解質層28は固体酸化物電解質であって、共電解装置10はSOEC(Solid Oxide Electrolyzer Cell:固体酸化物形電解セル)を含んでよい。
【0015】
電解質層28の一方の主面に、カソード29、カソード集電板31、第1の絶縁板33、及び第1の金属板35が積層されていてよい。主面とは、最大の面積を有する平面である。電解質層28の他方の主面に、アノード30,アノード集電板32、第2の絶縁板34、及び第2の金属板36が積層されていてよい。
【0016】
カソード集電板31には、カソード29に面するカソード流路25が形成されていてよい。アノード集電板32には、アノード30に面するアノード流路が形成されていてよい。このような構成において、カソード29及びアノード30間に電圧を印加することにより、カソード流路25を流動するガス及びアノード流路を流動するガスに電解反応が発生する。
【0017】
カソード29は電解質層28との境界において、水蒸気状の水分子を解離させ、水素分子及び酸素イオンを生成する。又、カソード29は電解質層28との境界において、二酸化炭素を解離させ、一酸化炭素及び酸素イオンを生成する。生成した水素分子及び一酸化炭素は、カソード流路25の導出口27から、未反応の水蒸気及び二酸化炭素ガスとともに排出ガスとして排出される。生成した酸素イオンは電解質層28を透過してアノード30側に移動する。酸素イオンから、アノード30及び電解質層28の境界において、酸素が生成される。生成した酸素はアノード流路から排出される。
【0018】
カソード集電板31及び第1の絶縁板33には、主面の法線方向から見て同じ位置に貫通孔thが形成されている。第1の金属板35には、主面の法線方向から見て貫通孔thと同じ位置に窓37が設けられてよい。窓37は、透明部材によって形成されてよい。
【0019】
又、固体酸化物形電解セルとして、金属支持型SOECが適用されてよい。
【0020】
図1に示すように、第3の流路16は、導出口27に接続される。第3の流路16は、反応装置12に接続されてよい。第3の流路16には、特定のガスを除去する装置等が設けられなくてよい。それゆえ、第3の流路16においては、カソード流路25の導出口27におけるガス組成が実質的に維持され得る。
【0021】
第4の流路17は、第3の流路16において分岐するように接続される。第4の流路17は、カソード流路25から第3の流路16に排出される排出ガスの少なくとも一部を導入口26に流動させる。第4の流路17には、特定のガスを除去する装置等が設けられなくてよい。それゆえ、第4の流路17においては、カソード流路25の導出口27におけるガス組成が実質的に維持され得る。第4の流路17は、断熱材により被覆されていてよい。又、第4の流路17は、ヒータにより加熱可能であってよい。更に、第4の流路17の少なくとも一部の内面に、セラミックを主成分とした酸化膜が形成されてよい。
【0022】
第1の調節部18は、第4の流路17に流れる排出ガスの第1の流量を調節可能である。第1の調節部18は、第3の流路16を分岐して第4の流路17に接続する三方調節弁であってよい。又は、第1の調節部18は、第4の流路17に設けられる調節弁であってよい。第1の調節部18は、制御部24の制御に基づいて第1の流量を調節してよい。
【0023】
第2の調節部19は、第1の流路13及び第2の流路14の少なくとも一方を流れるガスの流量を調節可能であってよい。第2の調節部19は、第1の流路13及び第2の流路14の両方に設けられてよい。第1の流路13及び第2の流路14それぞれに設けられる第2の調節部19は、第1の流路13及び第2の流路14にそれぞれ流れるガスの流量を調節してよい。第2の調節部19は、調節弁であってよい。第2の調節部19は、制御部24の制御に基づいてガスの流量を調節してよい。
【0024】
状態検出装置20は、電解反応部15に設けられてよい。状態検出装置20は、電解反応部15におけるカソード29の酸化還元状態を検出してよい。
図2に示すように、状態検出装置20は、より具体的には、第1の金属板35の窓37に設けられてよい。状態検出装置20は、例えば、色度検出装置、放射率検出装置である。カソード29は酸化還元状態によって、色度及び放射率が変動する。それゆえ、色度検出装置により検出されるカソード29の色度、又は放射率検出装置により検出されるカソード29の放射率及び温度に基づいてカソード29の酸化還元状態が検出される。
【0025】
第1の検出部21は、
図1に示すように、第4の流路17に設けられてよい。第1の検出部21は、第4の流路17を流れる排出ガスのガス組成比率を検出してよい。第1の検出部21は、例えば、ガス分析装置及び赤外分光分析装置である。第1の検出部21は、ガス組成比率を信号として制御部24に付与してよい。第1の検出部21は、第4の流路17を流れる排出ガスのガス組成比率を定期的に検出してよい。
【0026】
第2の検出部22は、第3の流路16に設けられてよい。第2の検出部22は、第3の流路16を流れる排出ガスのガス組成比率を検出してよい。第2の検出部22は、例えば、ガス分析装置及び赤外分光分析装置である。第2の検出部22は、ガス組成比率を信号として制御部24に付与してよい。第2の検出部22は、第3の流路16を流れる排出ガスのガス組成比率を定期的に検出してよい。
【0027】
第3の検出部23は、導入口26近傍に設けられてよい。第3の検出部23は、導入口26近傍におけるガスの組成比率を検出してよい。第3の検出部23は、例えば、ガス分析装置及び赤外分光分析装置である。第3の検出部23は、ガス組成比率を信号として制御部24に付与してよい。第3の検出部24は、導入口26近傍におけるガスの組成比率を定期的に検出してよい。
【0028】
第1の流量計38は、第4の流路17に設けられてよい。第1の流量計38は、第4の流路17を流動するガス全体の流量を検出してよい。
【0029】
第2の流量計39は、第3の流路16における電解反応部15及び第4の流路17の間に設けられてよい。第2の流量計39は、設置位置における第3の流路16を流動するガス全体の流量を検出してよい。
【0030】
第3の流量計40は、第1の流路13に設けられてよい。第3の流量計40は、第1の流路13を流動するガス全体の流量を検出してよい。
【0031】
第4の流量計41は、第2の流路14に設けられてよい。第4の流量計41は、第2の流路14を流動するガス全体の流量を検出してよい。
【0032】
第5の流量計42は、導入口26近傍に設けられてよい。第5の流量計42は、導入口26に流入するガス全体の流量を検出してよい。
【0033】
制御部24は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路又はこれらの組合わせを含んで構成されてよい。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の汎用プロセッサ又は特定の処理に特化した専用プロセッサであってよい。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等であってよい。制御部24は、共電解装置10の各部を制御しながら、共電解装置10の動作に関わる処理を実行してよい。
【0034】
制御部24は、第1の流量計38から、第4の流路17に流れるガスの第1の流量を信号として取得してよい。制御部24は、第2の流量計39から、導出口38から排出される排出ガスの第2の流量を信号として取得してよい。制御部24は、第2の流量に対する第1の流量の比を特定の比に近づけるように、第1の調節部18を制御してよい。特定の比は、例えば、0~40%である。特定の比は、制御部24に設けられる入力部等の入力デバイスを用いたオペレータの操作入力により設定されてよい。
【0035】
制御部24は、状態検出装置20の出力値を信号として取得してよい。制御部24は、取得した出力値に基づいてカソード29が酸化状態であるか否かを判別してよい。制御部24は、カソード29が酸化状態であると判断する場合、排出ガスを第4の流路17に流すように第1の調節部18を制御してよい。
【0036】
制御部24は、第1の検出部21から、第4の流路17を流れる排出ガスのガス組成比率を信号として取得してよい。制御部24は、第1の検出部21が検出するガス組成比率に基づいて第2の調節部19を制御してよい。具体的には、制御部24は、当該ガス組成比率に基づいて、導入口26における二酸化炭素に対する水蒸気のモル比が特定の値に近づくように第2の調節部19を制御してよい。より具体的には、制御部24は、第1の流量計38から第1の流量を信号として取得してよい。制御部24は、第3の流量計40から、第1の流路13に流れる水蒸気の第3の流量を信号として取得してよい。制御部24は、第4の流量計41から、第2の流路14に流れる二酸化炭素の第4の流量を信号として取得してよい。制御部24は、第1の流量及びガス組成比率に基づいて、第4の流路17を流れる水蒸気及び二酸化炭素の流量成分を算出してよい。制御部24は、第4の流路17における水蒸気の流量成分、及び第3の流量に基づいて、導入口26における水蒸気の流量を算出してよい。制御部24は、第4の流路17における二酸化炭素の流量成分、及び第4の流量に基づいて、導入口26における二酸化炭素の流量を算出してよい。制御部24は、導入口26における水蒸気の流量及び二酸化炭素の流量に基づいて、導入口26における二酸化炭素に対する水蒸気のモル比を特定の値に近づける、第3の流量及び第4の流量の少なくとも一方の調整量を算出してよい。制御部24は、第3の流量及び第4の流量の少なくとも一方の調整量で調整した流量となるように、第2の調節部19を制御してよい。例示において、制御部24は、第3の流量及び第4の流量の両者をそれぞれの調整量で調整した流量となるように、第1の流路13及び第2の流路14それぞれに設けられる第2の調節部19を制御してよい。
【0037】
制御部24は、第2の検出部22から、第3の流路16を流れる排出ガスのガス組成比率を信号として取得してよい。又は、制御部24は、第2の検出部22の代わりに第1の検出部21から第4の流路17を流れる排出ガスのガス組成比率を信号として取得してよい。第1の検出部21及び第2の検出部22が検出するガス組成比率は、同一であると考えられるからである。制御部24は、第2の流量計39から第3の流路16を流れる排出ガスの流量を信号として取得してよい。制御部24は、第3の検出部23から、導入口26近傍におけるガスのガス組成比率を信号として取得してよい。制御部24は、第5の流量計42から、導入口26に流入するガスの流量を信号として取得してよい。制御部24は、第2の検出部22及び第3の検出部23がそれぞれ検出するガス組成比率、並びに第2の流量計39及び第5の流量計42がそれぞれ検出する流量に基づいて第2の調節部19を制御してよい。具体的には、制御部24は、第3の流路16を流れる排出ガスのガス組成比率及び流量に基づいて、第3の流路16を流れる一酸化炭素及び水素の流量を算出してよい。又、制御部24は、導入口26に流入するガスのガス組成比率及び流量に基づいて、導入口26に流入する二酸化炭素及び水蒸気の流量を算出してよい。制御部24は、第3の流路16を流れる水素の流量及び導入口26に流入する水蒸気の流量に基づいて、水蒸気利用率を算出してよい。水蒸気利用率は、供給した水蒸気に対する、電解によって消費された水蒸気の割合である。例えば、水蒸気利用率は、導入口25に流入する水蒸気の流量に対する、第3の流路16を流れる水素の流量のモル比として算出されてよい。又、制御部24は、第3の流路16を流れる一酸化炭素の流量及び導入口26に流入する二酸化炭素の流量に基づいて、二酸化炭素利用率を算出してよい。二酸化炭素利用率は、供給した二酸化炭素に対する、電解によって消費された二酸化炭素の割合である。例えば、二酸化炭素利用率は、導入口25に流入する二酸化炭素の流量に対する、第3の流路16を流れる一酸化炭素の流量のモル比として算出されてよい。制御部24は、例えば水蒸気利用率及び二酸化炭素利用率の大きさが大きくなるほど、水蒸気の流量を増やすように、第3の流量及び第4の流量の少なくとも一方の調整量を算出してよい。制御部24は、第3の流量及び第4の流量の少なくとも一方の調整量で調整した流量となるように、第2の調節部19を制御してよい。例示において、制御部24は、第3の流量及び第4の流量の両者をそれぞれの調整量で調整した流量となるように、第1の流路13及び第2の流路14それぞれに設けられる第2の調節部19を制御してよい。
【0038】
又は、制御部24は、第2の検出部22が検出するガス組成比率に基づいて第2の調節部19を制御してよい。具体的には、制御部24は、当該ガス組成比率に基づいて、第3の流路16における水蒸気、一酸化炭素、及び水素のモル比を算出してよい。制御部24は、算出したモル比に基づいて[H2O]/[CO][H2]を、判定値として算出してよい。[H2O]は、水蒸気のモル比である。[CO]は一酸化炭素のモル比である。[H2]は水素のモル比である。制御部24は、判定値が第1の閾値を超える場合、二酸化炭素に対する水蒸気の流量を、例えば、変更前の1.5倍に増やすように、第3の流量及び第4の流量の少なくとも一方の調整量を算出してよい。第1の閾値は、電解反応部15の温度に応じて変化させてよい。例えば、電解反応部15の温度が500℃未満である場合、第1の閾値は500に定められる。又、例えば、電解反応部15の温度が500℃以上600℃未満である場合、第1の閾値は100に定められる。又、例えば、電解反応部15の温度が600℃以上700℃未満である場合、第1の閾値は50に定められる。又、例えば、電解反応部15の温度が700℃以上800℃未満である場合、第1の閾値は20に定められる。又、例えば、電解反応部15の温度が800℃以上である場合、第1の閾値は10に定められる。
【0039】
制御部24は、第3の検出部23から、導入口26近傍におけるガスのガス組成比率を信号として取得してよい。制御部24は、当該ガス組成比率における水蒸気に対する一酸化炭素の第1の比率、及び水蒸気に対する水素の第2の比率の少なくとも一方を算出してよい。制御部24は、当該少なくとも一方が第2の閾値以上であるか否かを判別してよい。言い換えると、制御部24は、第1の比率が第2の閾値以上であるか否かを判別してよく、第2の比率が第2の閾値以上であるか否かを判別してよく、または第1の比率及び第2の比率の両者が第2の閾値以上であるか否かを判別してよい。第2閾値は、第1の比率及び第2の比率に対して同一であってよく、異なっていてよい。制御部24は、当該少なくとも一方が第2の閾値以上である場合、排出ガスの第4の流路17への流動を停止するように第1の調節部18を制御してよい。例示において、制御部24は、第1の比率が第2の閾値以上であり、且つ第2の比率が第2の閾値以上である場合、排出ガスの第4の流路17への流動を停止させてよい。
【0040】
制御部24は、上述のように、第3の流路16を流れる水素の流量及び導入口26に流入する水蒸気の流量に基づいて、水蒸気利用率を算出してよい。又、制御部24は、上述のように、第3の流路16を流れる一酸化炭素の流量及び導入口26に流入する二酸化炭素の流量に基づいて、二酸化炭素利用率を算出してよい。制御部24は、水蒸気利用率及び二酸化炭素利用率に応じて変動させる特定の比に、第2の流量に対する第1の流量の比を近づけるように、第1の調節部18を制御してよい。例えば、水蒸気利用率及び二酸化炭素利用率が大きくなるほど、特定の比が小さくなるように定められていてよい。より具体的には、水蒸気利用率及び二酸化炭素利用率が75%未満である場合、特定の比は40%であってよい。又、水蒸気利用率及び二酸化炭素利用率が75%以上80%未満である場合、特定の比は30%であってよい。又、水蒸気利用率及び二酸化炭素利用率が80%以上85%未満である場合、特定の比は20%であってよい。又、水蒸気利用率及び二酸化炭素利用率が85%以上90%未満である場合、特定の比は10%であってよい。又、水蒸気利用率及び二酸化炭素利用率が90%以上である場合、特定の比は0%であってよい。言換えると、水蒸気利用率及び二酸化炭素利用率が90%以上である場合、制御部24は、排出ガスの第4の流路17への流動を停止させてよい。なお、上記の構成例において、特定の比は離散的に変化するが、水蒸気利用率及び二酸化炭素利用率に応じて連続的に変化する構成であってよい。
【0041】
制御部24は、電解反応部15の温度に応じて、第4の流路17への排出ガスの流動を停止してよい。具体的には、制御部24は、電解反応部15の温度が第3の閾値以下である場合、第4の流路17への排出ガスの流動を停止してよい。又は、制御部24は、電解反応部15の温度に応じて、第1の比率及び第2の比率を低下させるように、第1の調節部18を制御してよい。
【0042】
反応装置12は、第3の流路16を介して、電解反応部15のカソード流路25から排出される排出ガスが供給される。排出ガスには、共電解装置10において生成した水素及び一酸化炭素、並びに未反応の水蒸気及び二酸化炭素を含んでよい。反応装置12は、水素及び一酸化炭素からメタン等の低級炭化水素を合成する触媒を含む反応器を有してよい。反応装置12は、反応器に供給するガスから水蒸気及び二酸化炭素を除去する分離器、抽出器等の分離機構を有してよい。又、反応装置12は、合成した低級炭化水素から目的とする炭化水素以外のガスを除去する分離器、抽出器等の分離機構を有してよい。
【0043】
次に、本実施形態において制御部24が実行する、リサイクル量調整処理について、
図3のフローチャートを用いて説明する。リサイクル量調整処理は、第4の流路17に排出ガスを流動させている状態において、例えば、第1の流量計38又は第2の流量計39からそれぞれ第1の流量又は第2の流量を取得する度に開始する。
【0044】
ステップS100において、制御部24は、第1の流量に対する第2の流量の比(第2の流量/第1の流量)を算出する。算出後、プロセスはステップS101に進む。
【0045】
ステップS101では、制御部24は、第1の流量に対する第2の流量の比(第2の流量/第1の流量)を特定の比と比較する。比較後、プロセスはステップS102に進む。
【0046】
ステップS102では、制御部24は、ステップS102における比較結果に基づいて第1の調節部18を制御する。例えば、制御部24は、第1の流量に対する第2の流量の比(第2の流量/第1の流量)が特定の比に近づくようにフィードバック制御を行う。第1の調節部18の制御後、リサイクル量調整処理は終了する。
【0047】
次に、本実施形態において制御部24が実行する、リサイクル開始処理について、
図4のフローチャートを用いて説明する。リサイクル開始処理は、第4の流路17への排出ガスの流動を停止させている状態において、例えば、状態検出装置20から出力値を取得する度に開始する。
【0048】
ステップS200において、制御部24は、出力値に基づいてカソード29が酸化状態であるか否かを判別する。カソード29が酸化状態である場合、プロセスはステップS201に進む。酸化状態でない場合、リサイクル開始処理は終了する。
【0049】
ステップS201において、制御部24は、第4の流路17に排出ガスを流動させるように、第1の調節部18を制御する。制御後、リサイクル開始処理は終了する。
【0050】
次に、本実施形態において制御部24が実行する、第1の供給調整処理について、
図5のフローチャートを用いて説明する。第1の供給調整処理は、第4の流路17に排出ガスを流動させている状態において、例えば、第1の検出部21からガス組成比率を取得する度に開始する。
【0051】
ステップS300において、制御部24は、取得するガス組成比率及び最新の第1の流量に基づいて、第4の流路17における水蒸気及び二酸化炭素の流量成分を算出する。算出後、プロセスはステップS301に進む。
【0052】
ステップS301では、制御部24は、ステップS300において算出した第4の流路17における水蒸気及び二酸化炭素の流量成分、並びに最新の第3の流量及び第4の流量に基づいて、第3の流量及び第4の流量それぞれの調整量を算出する。算出後、プロセスはステップS302に進む。
【0053】
ステップS302では、制御部24は、ステップS301において算出したそれぞれの調整量で第3の流量及び第4の流量を調整した流量となるように、第2の調節部19を制御する。制御後、第1の供給調整処理は終了する。
【0054】
次に、本実施形態において制御部24が実行する、第2の供給調整処理について、
図6のフローチャートを用いて説明する。第2の供給調整処理は、例えば、第1の検出部21からガス組成比率を取得する度に開始する。
【0055】
ステップS400において、制御部24は、取得するガス組成比率に基づいて、水蒸気利用率及び二酸化炭素利用率を算出する。算出後、プロセスはステップS401に進む。
【0056】
ステップS401では、制御部24は、ステップS400において算出した水蒸気利用率及び二酸化炭素利用率に基づいて、第3の流量及び第4の流量それぞれの調整量を算出する。算出後、プロセスはステップS402に進む。
【0057】
ステップS402では、制御部24は、ステップS401において算出したそれぞれの調整量で第3の流量及び第4の流量を調整した流量となるように、第2の調節部19を制御する。制御後、第2の供給調整処理は終了する。
【0058】
次に、本実施形態において制御部24が実行する、リサイクル停止処理について、
図7のフローチャートを用いて説明する。リサイクル停止処理は、第4の流路17に排出ガスを流動させている状態において、例えば、第3の検出部23からガス組成比率を取得する度に開始する。
【0059】
ステップS500において、制御部24は、取得したガス組成比率に基づいて、第1の比率(CO/H2O)及び第2の比率(H2/H2O)を算出する。算出後、プロセスはステップS501に進む。
【0060】
ステップS501では、制御部24は、第1の比率が第2の閾値以上且つ第2の比率が比率閾値以上であるか否かを判別する。第1の比率が第2の閾値以上且つ第2の比率が第2の閾値以上である場合、プロセスはステップS502に進む。第1の比率が第2の閾値以上且つ第2の比率が第2の閾値以上でない場合、リサイクル停止処理は終了する。
【0061】
ステップS502では、制御部24は、第4の流路17への排出ガスの流動を停止するように第1の調節部18を制御する。制御後、リサイクル停止処理は終了する。
【0062】
次に、本実施形態において制御部24が実行する、算出処理について、
図8のフローチャートを用いて説明する。算出処理は、導入口27から排出ガスを第3の流路16に排出させている状態において、第2の検出部22及び第3の検出部23からガス組成比率、並びに第2の流量計39及び第5の流量計42からガスの流量を取得する度に開始する。
【0063】
ステップS600において、制御部24は、第2の検出部22及び第3の検出部23からそれぞれ取得するガス組成比率、並びに第2の流量計39及び第5の流量計42からそれぞれ取得する流量に基づいて、水蒸気利用率及び二酸化炭素利用率を算出する。算出後、プロセスはステップS601に進む。
【0064】
ステップS601では、制御部24は、ステップS600において算出した水蒸気利用率及び二酸化炭素利用率に応じた特定の比を算出する。算出後、算出処理は終了する。なお、算出された特定の比は、上述の
図3に示すリサイクル量調整処理に用いられてよい。
【0065】
以上のような構成の本実施形態の共電解装置10は、水蒸気を供給する第1の流路13と、二酸化炭素を供給する第2の流路14と、第1の流路13及び第2の流路14から供給されるガスを導入口26から導入させるカソード流路25を有し、電解反応によりカソード流路25を流動するガスの少なくとも一部を分解する電解反応部15と、カソード流路25の導出口27に接続される第3の流路16と、第3の流路16において分岐するように接続され、カソード流路25から第3の流路16に排出される排出ガスの少なくとも一部を導入口26に流動させる第4の流路17と、を備える。このような構成により、共電解装置10は、電解反応部15において生成した一酸化炭素及び水素の一部をカソード流路25にリサイクルするので、電解反応部15を停止させることなく、カソード29の酸化の抑制及び酸化したカソード29の還元を実現し得る。したがって、共電解装置10は、カソード29の酸化による電解効率の低下を抑制し得る。
【0066】
又、共電解装置10は、第4の流路17を流れる排出ガスの流量を調節可能な第1の調節部18と、導出口27から排出される排出ガスの流量に対する第4の流路17に流す排出ガスの流量の比を特定の比に近づけるように第1の調節部18を制御する制御部24とを備える。このような構成により、共電解装置10は、カソード流路25に排出ガスをリサイクルさせながら、反応装置12に送出する排出ガスを確保し得る。
【0067】
又、共電解装置10は、カソード流路25に面するカソード29の酸化還元状態を検出する状態検出装置20を備え、制御部24は状態検出装置20の出力値に基づいてカソード29が酸化状態であると判別する場合に排出ガスを第4の流路17に流すように第1の調節部18を制御する。カソード29が酸化することにより、電解効率は低下し、水素及び一酸化炭素の生成量が低下する。このような事象に対し、上記の構成を有する共電解装置10は、カソード29の酸化が進んだ場合に排出ガスのカソード流路25へのリサイクルを行うので、長期の運転期間において水素及び一酸化炭素のリサイクル量を低減し得る。したがって、共電解装置10は、長期の運転期間において、水素及び一酸化炭素の、反応装置12への供給量と、カソード流路25へのリサイクル量を適切化し得る。
【0068】
又、共電解装置10は、第1の流路13及び第2の流路14の少なくとも一方を流れるガスの流量を調節可能な第2の調節部19と、第4の流路17を流れるガスの組成比率を検出する第1の検出部21とを備え、制御部24は第1の検出部21が検出する組成比率に基づいて第2の調節部19を制御する。反応装置12において主に生じる反応は、メタネーションであり、反応に用いる一酸化炭素及び水素のモル比は1:3である。それゆえ、共電解装置10において当該モル比の一酸化炭素及び水素を生成するために、導入口26においてモル比で1:3の二酸化炭素と水蒸気が用いられることが考えられる。ただし、カソード29における炭素の析出を抑制するために、導入口26においては二酸化炭素及び水蒸気のモル比を1:4に調節することが一般的である。二酸化炭素及び水蒸気の電解電圧は異なるため、排出ガスにおける二酸化炭素及び水蒸気のモル比は導入口26におけるモル比から変動する。したがって、共電解装置10において排出ガスをリサイクルすることにより、導入口26における二酸化炭素と水蒸気とのモル比の特定のモル比からのずれが生じる。このような事象に対して、上述の構成を有する共電解装置10は、水蒸気及び二酸化炭素の少なくとも一方の供給量を調節するので、導入口26における二酸化炭素と水蒸気とのモル比を所望のモル比に近づけ得る。
【0069】
又、共電解装置10は、第1の流路13及び第2の流路14のいずれか一方を流れるガスの流量を調節可能な第2の調節部19と、第3の流路16を流れるガスの組成比率を検出する第2の検出部22と、導入口26近傍に設けられ且つ導入口26近傍におけるガスの組成比率を検出する第3の検出部23と、第3の流路16における電解反応部15及び第4の流路17の間に設けられる第2の流量計39と、導入口26に流入するガスの流量を検出する第5の流量計42と、を備え、制御部24は第2の検出部22及び第3の検出部23がそれぞれ検出する組成比率、並びに第2の流量計39及び第5の流量計42がそれぞれ検出する流量に基づいて第2の調節部19を制御する。共電解装置10では、二酸化炭素及び水蒸気を燃料とする水蒸気利用率及び二酸化炭素利用率が高くなるほど、カソード29及び電解質層28の境界面における下記(1)式の反応の平衡が左側に移動する。
C+H2O⇔CO+H2 -131kJ/mol (1)
(1)式の反応の平衡が左に移動するとカソード29に炭素が析出する可能性が高まる。このような事象に対して、上述の構成を有する共電解装置10は、水蒸気の供給量を調節することにより、上記反応の平衡を右側に移動させ得るので、炭素析出の可能性を低減する。
【0070】
又、共電解装置10は、第1の流路13及び第2の流路14の少なくとも一方を流れるガスの流量を調節可能な第2の調節部19と、第3の流路16を流れるガスの組成比率を検出する第2の検出部22とを備え、制御部24は第2の検出部22が検出する組成比率及び電解反応部15の温度に基づいて第2の調節部19を制御する。上記(1)式の順反応は、吸熱反応であるため、電解反応部15内部の温度が低下すると平衡が左側に移動し、炭素が析出する可能性が高まる。このような事象に対して上記構成を有する共電解装置10は、電解反応部15の温度に応じて、炭素析出を抑制し得る導出口27におけるガス組成比率となるように水蒸気の供給量を調節し得る。したがって、共電解装置10は、炭素析出の可能性を低減する。
【0071】
又、共電解装置10では、第4の流路17には断熱材の被覆、近傍におけるヒータの設置、少なくとも一部の内面にセラミックを主成分とした酸化膜形成の少なくとも1つが施されている。このような構成により、共電解装置10は、第4の流路17の流動中のガスの温度低下を低減し得る。したがって、共電解装置10は、第4の流路17から電解反応部15へリサイクルするガスによる電解反応部15の温度低下を低減し得る。その結果、共電解装置10は、(1)式の反応の平行の左側への移動を抑制するので、リサイクル停止の頻度を低減させ得る。
【0072】
又、共電解装置10は、水蒸気利用率及び二酸化炭素利用率に応じて、特定の比を変動させる。水蒸気利用率及び二酸化炭素利用率が高い場合、第4の流路17を流れる排ガス中の水素及び一酸化炭素の割合が増えるため、上記(1)式における平衡が左側に移動し、炭素析出が生じる可能性が高まる。このような事象に対して、上記の構成を有する共電解装置10は、水蒸気利用率及び二酸化炭素利用率に応じてリサイクルさせる比率を変化させるので、第4の流路17における炭素析出の可能性を低減する。又、共電解装置10は、水蒸気利用率及び二酸化炭素利用率に応じてリサイクルさせる比率を変化させるので、更には水蒸気利用率及び二酸化炭素利用率が低いほど、水蒸気及び二酸化炭素の濃度が高い排ガスを多く電解反応部15に送り得る。したがって、共電解装置10は、排ガス中の水蒸気及び二酸化炭素を再利用する効果を得やすい。
【0073】
又、共電解装置10は、導入口26近傍におけるガスの組成比率を検出する第3の検出部23を備え、制御部24は第3の検出部23が検出する組成比率に基づいて第1の比率及び第2の比率の少なくとも一方を算出し、該少なくとも一方が閾値以上である場合に排出ガスの第4の流路17への流動を停止するように第1の調節部18を制御する。導入口26近傍において第1の比率及び第2の比率が高くなると、導出口27から排出される排出ガスにおける水素及び一酸化炭素の濃度が求められる濃度を超えて高まり、(1)式の反応の平衡が左側に移動しカソード29に炭素が析出する可能性が高まる。このような事象に対して、上述の構成を有する共電解装置10は、カソード29に炭素が析出する可能性が高まる状況において、排出ガスの第4の流路17を介したリサイクルを停止するので、炭素析出の可能性を低減する。
【0074】
又、共電解装置10は、電解反応部15の温度に応じて、第4の流路17への排出ガスの流動停止又は第1の比率及び第2の比率を低下させる制御を行う。このような構成により、共電解装置10は、電解反応部15の温度低下に伴う上記(1)式の平衡の左側への移動を抑制するで、電解反応部15において炭素が析出する可能性を低減し得る。
【0075】
一実施形態において、(1)共電解装置は、
水蒸気を供給する第1の流路と、
二酸化炭素を供給する第2の流路と、
前記第1の流路及び前記第2の流路から供給されるガスを導入口から導入させるカソード流路を有し、電解反応により前記カソード流路を流動するガスの少なくとも一部を分解する電解反応部と、
前記カソード流路の導出口に接続される第3の流路と、
前記第3の流路において分岐するように接続され、前記カソード流路から前記第3の流路に排出される排出ガスの少なくとも一部を前記導入口に流動させる第4の流路と、を備える。
【0076】
(2)上記(1)の共電解装置は、
前記第4の流路を流れる前記排出ガスの流量を調節可能な第1の調節部と、
前記導出口から排出される前記排出ガスの流量に対する前記第4の流路に流す前記排出ガスの流量の比を特定の比に近づけるように前記第1の調節部を制御する制御部と、を更に備える。
【0077】
(3)上記(2)の共電解装置は、
前記電解反応部における前記カソード流路に面するカソードの酸化還元状態を検出する状態検出装置と、を更に備え
前記制御部は、前記状態検出装置の出力値に基づいて、前記カソードが酸化状態であると判別する場合、前記排出ガスを前記第4の流路に流すように前記第1の調節部を制御する。
【0078】
(4)上記(2)又は(3)の共電解装置は、
前記第1の流路及び前記第2の流路の少なくとも一方を流れるガスの流量を調節可能な第2の調節部と、
前記第4の流路に設けられ、該第4の流路を流れるガスの組成比率を検出する第1の検出部と、を更に備え、
前記制御部は、前記第1の検出部が検出する組成比率に基づいて、前記第2の調節部を制御する。
【0079】
(5)上記(2)又は(3)の共電解装置は、
前記第1の流路及び前記第2の流路のいずれか一方を流れるガスの流量を調節可能な第2の調節部と、
前記第3の流路に設けられ、該第3の流路を流れるガスの組成比率を検出する第2の検出部と、を更に備え、
前記制御部は、前記第2の検出部が検出する組成比率に基づいて、前記第2の調節部を制御する。
【0080】
(6)上記(2)乃至(5)の共電解装置は、
前記導入口近傍に設けられ、該導入口近傍におけるガスの組成比率を検出する第3の検出部を、更に備え、
前記制御部は、前記第3の検出部が検出する組成比率に基づいて水蒸気に対する一酸化炭素の第1の比率及び水蒸気に対する水素の第2の比率の少なくとも一方を算出し、該少なくとも一方が閾値以上である場合、前記排出ガスの前記第4の流路への流動を停止するように前記第1の調節部を制御する。
【0081】
以上、共電解装置10の実施形態を説明してきたが、本開示の実施形態としては、装置を実施するための方法又はプログラムの他、プログラムが記録された記憶媒体(一例として、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、CD-RW、磁気テープ、ハードディスク、又はメモリカード等)としての実施態様をとることも可能である。
【0082】
また、プログラムの実装形態としては、コンパイラによってコンパイルされるオブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラムコード等のアプリケーションプログラムに限定されることはなく、オペレーティングシステムに組み込まれるプログラムモジュール等の形態であってもよい。さらに、プログラムは、制御基板上のCPUにおいてのみ全ての処理が実施されるように構成されてもされなくてもよい。プログラムは、必要に応じて基板に付加された拡張ボード又は拡張ユニットに実装された別の処理ユニットによってその一部又は全部が実施されるように構成されてもよい。
【0083】
本開示に係る実施形態について説明する図は模式的なものである。図面上の寸法比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。
【0084】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0085】
本開示に記載された構成要件の全て、及び/又は、開示された全ての方法、又は、処理の全てのステップについては、これらの特徴が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせることができる。また、本開示に記載された特徴の各々は、明示的に否定されない限り、同一の目的、同等の目的、または類似する目的のために働く代替の特徴に置換することができる。したがって、明示的に否定されない限り、開示された特徴の各々は、包括的な一連の同一、又は、均等となる特徴の一例にすぎない。
【0086】
さらに、本開示に係る実施形態は、上述した実施形態のいずれの具体的構成にも制限されるものではない。本開示に係る実施形態は、本開示に記載された全ての新規な特徴、又は、それらの組合せ、あるいは記載された全ての新規な方法、又は、処理のステップ、又は、それらの組合せに拡張することができる。
【0087】
本開示において「第1」及び「第2」等の記載は、当該構成を区別するための識別子である。本開示における「第1」及び「第2」等の記載で区別された構成は、当該構成における番号を交換することができる。例えば、第1の流路は、第2の流路と識別子である「第1」と「第2」とを交換することができる。識別子の交換は同時に行われる。識別子の交換後も当該構成は区別される。識別子は削除してよい。識別子を削除した構成は、符号で区別される。本開示における「第1」及び「第2」等の識別子の記載のみに基づいて、当該構成の順序の解釈、小さい番号の識別子が存在することの根拠に利用してはならない。
【符号の説明】
【0088】
10 共電解装置
11 製造システム
12 反応装置
13 第1の流路
14 第2の流路
15 電解反応部
16 第3の流路
17 第4の流路
18 第1の調節部
19 第2の調節部
20 状態検出装置
21 第1の検出部
22 第2の検出部
23 第3の検出部
24 制御部
25 カソード流路
26 導入口
27 導出口
28 電解質層
29 カソード
30 アノード
31 カソード集電板
32 アノード集電板
33 第1の絶縁板
34 第2の絶縁板
35 第1の金属板
36 第2の金属板
37 窓
38 第1の流量計
39 第2の流量計
40 第3の流量計
41 第4の流量計
42 第5の流量計