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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106804
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 5/14 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
H02M5/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011250
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100171583
【弁理士】
【氏名又は名称】梅景 篤
(72)【発明者】
【氏名】柳原 卓朗
【テーマコード(参考)】
5H750
【Fターム(参考)】
5H750BA05
5H750CC06
5H750DD14
5H750DD17
5H750FF05
(57)【要約】
【課題】出力の正常化に要する時間を短縮可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置1は、三相交流電圧を供給する電源装置2に接続される入力端子1a,1b,1cと、入力端子1aにおける電圧値V1及び入力端子1bにおける電圧値V2を検出する検出回路5と、スイッチング素子SW1~SW6によって三相交流電圧を単相交流電圧に変換するコンバータ回路3と、閾値よりも大きい電圧値V1が検出されてから所定時間が経過した時点で閾値よりも大きい電圧値V2を検出した場合には、スイッチング素子SW1~SW6のスイッチングパターンを第1スイッチングパターンに設定し、閾値よりも大きい電圧値V1が検出されてから所定時間が経過した時点で閾値以下の電圧値V2を検出した場合には、上記スイッチングパターンを第2スイッチングパターンに設定する制御回路10と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電圧を供給する電源装置に接続され、それぞれが前記三相交流電圧のいずれかの相の電圧を受ける第1端子、第2端子、及び第3端子と、
前記第1端子における第1電圧値及び前記第2端子における第2電圧値を検出する検出回路と、
複数のスイッチング素子を含み、前記複数のスイッチング素子によって、前記第1端子、前記第2端子、及び前記第3端子に供給された前記三相交流電圧を単相交流電圧に変換するコンバータ回路と、
閾値よりも大きい前記第1電圧値が検出されてから所定時間が経過した時点で前記閾値よりも大きい前記第2電圧値を検出した場合には、前記複数のスイッチング素子のスイッチングパターンを第1スイッチングパターンに設定し、前記閾値よりも大きい前記第1電圧値が検出されてから前記所定時間が経過した時点で前記閾値以下の前記第2電圧値を検出した場合には、前記複数のスイッチング素子のスイッチングパターンを第2スイッチングパターンに設定する制御回路と、を備える、
電力変換装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記第1電圧値及び前記第2電圧値に基づいて、前記閾値を算出する、請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三相交流電源と装置の電源端子との誤配線を検出する電力変換装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-195375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電力変換装置では、三相交流電源と装置の電源端子との間の配線パターンとして、全6種類の配線パターンを順番に採用し、電流が流れるか否かを確認することによって、実配線パターンが検出される。そして、実配線パターンに基づいて、出力を正常化するためにスイッチング相が変更される。このように、実配線パターンの検出には、想定され得る全ての配線パターンを順番に試す必要があるので、出力の正常化に時間を要するおそれがある。
【0005】
本開示は、出力の正常化に要する時間を短縮可能な電力変換装置を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る電力変換装置は、三相交流電圧を供給する電源装置に接続され、それぞれが三相交流電圧のいずれかの相の電圧を受ける第1端子、第2端子、及び第3端子と、第1端子における第1電圧値及び第2端子における第2電圧値を検出する検出回路と、複数のスイッチング素子を含み、複数のスイッチング素子によって、第1端子、第2端子、及び第3端子に供給された三相交流電圧を単相交流電圧に変換するコンバータ回路と、閾値よりも大きい第1電圧値が検出されてから所定時間が経過した時点で閾値よりも大きい第2電圧値を検出した場合には、複数のスイッチング素子のスイッチングパターンを第1スイッチングパターンに設定し、閾値よりも大きい第1電圧値が検出されてから所定時間が経過した時点で閾値以下の第2電圧値を検出した場合には、複数のスイッチング素子のスイッチングパターンを第2スイッチングパターンに設定する制御回路と、を備える。
【0007】
この電力変換装置では、閾値よりも大きい第1電圧値が検出されてから所定時間が経過した時点で、閾値よりも大きい第2電圧値が検出された場合には、コンバータ回路に含まれる複数のスイッチング素子のスイッチングパターンが第1スイッチングパターンに設定される。閾値よりも大きい第1電圧値が検出されてから所定時間が経過した時点で、閾値以下の第2電圧値が検出された場合には、コンバータ回路に含まれる複数のスイッチング素子のスイッチングパターンが第2スイッチングパターンに設定される。このため、閾値よりも大きい第1電圧値が検出されてから所定時間が経過した時点で、第2電圧値が閾値よりも大きいか否かを判別するだけで、第1スイッチングパターン及び第2スイッチングパターンのいずれかがスイッチングパターンとして設定される。したがって、電源装置と第1端子、第2端子、及び第3端子とがどのように接続されているか(配線パターン)を検出することなく、スイッチングパターンを設定することができる。その結果、出力の正常化に要する時間を短縮することができる。
【0008】
いくつかの実施形態においては、制御回路は、第1電圧値及び第2電圧値に基づいて、閾値を算出してもよい。これにより、検出回路によって検出された第1電圧値及び第2電圧値に基づいて、閾値が算出されるので、実際の電圧値に応じた閾値が得られる。したがって、三相交流電圧の各電圧値が変動したとしても、実際の電圧値に応じた閾値と第1電圧値及び第2電圧値とを比較することができるので、より確実に出力を正常化することができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、出力の正常化に要する時間を短縮可能な電力変換装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係る電力変換装置の概略構成図である。
図2図2は、図1に示される検出回路によって検出される電圧の波形の一例を示す図である。
図3図3は、図1に示される検出回路によって検出される電圧の波形の別の例を示す図である。
図4図4は、図1に示される制御回路が行うスイッチングパターン設定方法の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、各配線パターンに対して設定されるスイッチングパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら一実施形態に係る電力変換装置を詳細に説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0012】
[電力変換装置の構成]
図1図3を参照しながら、一実施形態に係る電力変換装置の構成を説明する。図1は、一実施形態に係る電力変換装置の概略構成図である。図2は、図1に示される検出回路によって検出される電圧の波形の一例を示す図である。図3は、図1に示される検出回路によって検出される電圧の波形の別の例を示す図である。図1に示される電力変換装置1は、電源装置2から供給された三相交流電圧を単相交流電圧に変換する装置である。電力変換装置1は、例えば、充電器に適用される。この場合、電力変換装置1は、例えば、不図示のトランスと整流回路とを介してバッテリを充電する。
【0013】
電源装置2は、三相交流電源である。電源装置2は、三相交流電圧であるU相電圧Vu、V相電圧Vv、及びW相電圧Vwを供給する。U相電圧Vuの位相、V相電圧Vvの位相、及びW相電圧Vwの位相は、互いに120°ずれている。電源装置2は、出力端子2u、出力端子2v、及び出力端子2wを有している。出力端子2uは、U相電圧Vuを出力する。出力端子2vは、V相電圧Vvを出力する。出力端子2wは、W相電圧Vwを出力する。
【0014】
電力変換装置1は、入力端子1a(第1端子)、入力端子1b(第2端子)、及び入力端子1c(第3端子)を有している。電力変換装置1は、入力端子1a、入力端子1b、及び入力端子1cを介して電源装置2に接続される。具体的には、入力端子1a、入力端子1b、及び入力端子1cのそれぞれは、出力端子2u、出力端子2v、及び出力端子2wのいずれかに接続される。以下、入力端子1a、入力端子1b、及び入力端子1cと、出力端子2u、出力端子2v、及び出力端子2wとの接続のパターンを配線パターンと称する。電力変換装置1の設置工事において、電力変換装置1と電源装置2との接続が行われるが、誤配線が生じることがある。したがって、入力端子1a、入力端子1b、及び入力端子1cのそれぞれは、三相交流電圧のいずれかの相の電圧を受ける。
【0015】
電力変換装置1は、出力端子1d及び出力端子1eを有している。出力端子1d及び出力端子1eは、単相交流電圧を出力する。
【0016】
電力変換装置1は、コンバータ回路3と、フィルタ回路4と、検出回路5と、制御回路10と、を含む。
【0017】
コンバータ回路3は、入力端子1a、入力端子1b、及び入力端子1cに供給された三相交流電圧を単相交流電圧に変換する回路である。コンバータ回路3は、複数のスイッチング素子(スイッチング素子SW1、スイッチング素子SW2、スイッチング素子SW3、スイッチング素子SW4、スイッチング素子SW5、及びスイッチング素子SW6)を含む。各スイッチング素子は、その両端の電気的な接続状態を導通状態(オン状態)と遮断状態(オフ状態)との間で切り替え可能な回路要素である。各スイッチング素子は、例えば、1又は複数の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)から構成されている。各スイッチング素子に制御回路10から駆動信号が供給されることによって、スイッチング素子の状態がオン状態とオフ状態との間で切り替えられる。
【0018】
スイッチング素子SW1とスイッチング素子SW4とは、出力端子1dと出力端子1eとの間に直列に接続されている。具体的には、スイッチング素子SW1の一端は、出力端子1dに接続されている。スイッチング素子SW1の他端とスイッチング素子SW4の一端とは互いに接続されており、後述のリアクトル41を介して入力端子1aに接続されている。スイッチング素子SW4の他端は、出力端子1eに接続されている。
【0019】
スイッチング素子SW2とスイッチング素子SW5とは、出力端子1dと出力端子1eとの間に直列に接続されている。具体的には、スイッチング素子SW2の一端は、出力端子1dに接続されている。スイッチング素子SW2の他端とスイッチング素子SW5の一端とは互いに接続されており、後述のリアクトル42を介して入力端子1bに接続されている。スイッチング素子SW5の他端は、出力端子1eに接続されている。
【0020】
スイッチング素子SW3とスイッチング素子SW6とは、出力端子1dと出力端子1eとの間に直列に接続されている。具体的には、スイッチング素子SW3の一端は、出力端子1dに接続されている。スイッチング素子SW3の他端とスイッチング素子SW6の一端とは互いに接続されており、後述のリアクトル43を介して入力端子1cに接続されている。スイッチング素子SW6の他端は、出力端子1eに接続されている。
【0021】
フィルタ回路4は、コンバータ回路3のスイッチングによって発生する高調波成分を抑制する回路である。フィルタ回路4は、入力端子1a、入力端子1b、及び入力端子1cと、コンバータ回路3との間に設けられている。フィルタ回路4は、リアクトル41と、リアクトル42と、リアクトル43と、コンデンサ44と、コンデンサ45と、コンデンサ46と、を含む。
【0022】
リアクトル41の一端は入力端子1aに接続され、リアクトル41の他端はスイッチング素子SW1とスイッチング素子SW4との接続点に接続されている。リアクトル42の一端は入力端子1bに接続され、リアクトル42の他端はスイッチング素子SW2とスイッチング素子SW5との接続点に接続されている。リアクトル43の一端は入力端子1cに接続され、リアクトル43の他端はスイッチング素子SW3とスイッチング素子SW6との接続点に接続されている。
【0023】
コンデンサ44,45,46は、相間コンデンサである。コンデンサ44の一端はリアクトル41の他端に接続され、コンデンサ44の他端はリアクトル42の他端に接続されている。コンデンサ45の一端はリアクトル42の他端に接続され、コンデンサ45の他端はリアクトル43の他端に接続されている。コンデンサ46の一端はリアクトル41の他端に接続され、コンデンサ46の他端はリアクトル43の他端に接続されている。
【0024】
検出回路5は、電圧値V1(第1電圧値)、電圧値V2(第2電圧値)、及び電圧値V3を検出する回路である。電圧値V1は、入力端子1aおける電圧値である。言い換えると、電圧値V1は、入力端子1aに供給される相電圧の電圧値である。電圧値V2は、入力端子1bにおける電圧値である。言い換えると、電圧値V2は、入力端子1bに供給される相電圧の電圧値である。電圧値V3は、入力端子1cにおける電圧値である。言い換えると、電圧値V3は、入力端子1cに供給される相電圧の電圧値である。
【0025】
検出回路5は、電圧センサ51と、電圧センサ52と、電圧センサ53と、を含む。電圧センサ51は、電圧値V1を検出し、電圧値V1を制御回路10に出力する。電圧センサ52は、電圧値V2を検出し、電圧値V2を制御回路10に出力する。電圧センサ53は、電圧値V3を検出し、電圧値V3を制御回路10に出力する。
【0026】
制御回路10は、電圧値V1、電圧値V2及び電圧値V3に基づいて、コンバータ回路3のスイッチング素子SW1~SW6のスイッチングパターン(以下、「コンバータ回路3のスイッチングパターン」と称する場合がある。)を設定する。コンバータ回路3のスイッチングパターンは、コンバータ回路3に含まれる各スイッチング素子のオンオフの時系列パターンである。
【0027】
ここで、電圧値V1、電圧値V2、及び電圧値V3は周期的に変化するので、電圧値V1、電圧値V2、及び電圧値V3は、電圧値V1、電圧値V2、及び電圧値V3の順で周期的に閾値Vthを上回る(図2参照)か、電圧値V1、電圧値V3、及び電圧値V2の順で周期的に閾値Vthを上回る(図3参照)かのいずれかである。閾値Vthは、電圧値V1、電圧値V2、及び電圧値V3のうちのいずれがピークに近いか判定するための値である。
【0028】
したがって、制御回路10は、コンバータ回路3のスイッチングパターンを第1スイッチングパターン及び第2スイッチングパターンのいずれかに設定する。第1スイッチングパターンは、電圧値V1、電圧値V2、及び電圧値V3が電圧値V1、電圧値V2、及び電圧値V3の順で周期的に閾値Vthを上回る場合のスイッチングパターンである。第2スイッチングパターンは、電圧値V1、電圧値V2、及び電圧値V3が電圧値V1、電圧値V3、及び電圧値V2の順で周期的に閾値Vthを上回る場合のスイッチングパターンである。
【0029】
例えば、入力端子1aが出力端子2uに接続され、入力端子1bが出力端子2vに接続され、入力端子1cが出力端子2wに接続されている場合、電圧値V1はU相電圧Vuと等しくなり、電圧値V2はV相電圧Vvと等しくなり、電圧値V3はW相電圧Vwと等しくなる。したがって、出力端子1dにおける出力電圧Vt1及び出力端子1eにおける出力電圧Vt2は、式(1)によって表される。
【数1】
【0030】
なお、状態値Ssw1~Ssw6は、スイッチング素子SW1~SW6の状態をそれぞれ表す値である。例えば、状態値Ssw1が1である場合、その状態値Ssw1は、スイッチング素子SW1がオン状態であることを示す。状態値Ssw1が0である場合、その状態値Ssw1は、スイッチング素子SW1がオフ状態であることを示す。他の状態値についても同様である。
【0031】
この場合、電圧値V1、電圧値V2、及び電圧値V3が電圧値V1、電圧値V2、及び電圧値V3の順で周期的に閾値Vthを上回るので、コンバータ回路3のスイッチングパターンとして、第1スイッチングパターンが用いられる。
【0032】
入力端子1aが出力端子2uに接続され、入力端子1bが出力端子2wに接続され、入力端子1cが出力端子2vに接続されている場合、電圧値V1はU相電圧Vuと等しくなり、電圧値V2はW相電圧Vwと等しくなり、電圧値V3はV相電圧Vvと等しくなる。したがって、出力電圧Vt1及び出力電圧Vt2は、式(2)によって表される。
【数2】
【0033】
この場合、電圧値V1、電圧値V2、及び電圧値V3が電圧値V1、電圧値V3、及び電圧値V2の順で周期的に閾値Vthを上回るので、コンバータ回路3のスイッチングパターンとして、第2スイッチングパターンが用いられる。
【0034】
ここで、式(2)において、状態値Ssw2と状態値Ssw3とを入れ替え、状態値Ssw5と状態値Ssw6とを入れ替えることによって、式(2)によって表される出力電圧Vt1,Vt2は、式(1)によって表される出力電圧Vt1,Vt2と同じになる。したがって、第2スイッチングパターンは、第1スイッチングパターンにおけるスイッチング素子SW2のスイッチングパターンとスイッチング素子SW3のスイッチングパターンとを入れ替え、第1スイッチングパターンにおけるスイッチング素子SW5のスイッチングパターンとスイッチング素子SW6のスイッチングパターンとを入れ替えることによって得られる。
【0035】
[電力変換装置の動作]
次に、図4を更に参照しながら、制御回路10が行うスイッチングパターン設定方法を説明する。図4は、図1に示される制御回路が行うスイッチングパターン設定方法の一例を示すフローチャートである。図4に示される一連の処理は、例えば、電力変換装置1が電源装置2に接続された時に行われる。なお、検出回路5は、電圧値V1、電圧値V2及び電圧値V3を連続的に検出している。
【0036】
図4に示されるように、まず、制御回路10は、検出回路5から電圧値V1、電圧値V2、及び電圧値V3を取得する(ステップS1)。
【0037】
そして、制御回路10は、電圧値V1、電圧値V2、及び電圧値V3に基づいて、閾値Vthを算出する(ステップS2)。閾値Vthは、電圧値V1、電圧値V2、及び電圧値V3のうちの2以上の電圧値が同時に上回らないような値に設定される。制御回路10は、例えば、式(3)を用いて、閾値Vthを算出する。式(3)では、電圧値V1、電圧値V2及び電圧値V3のピーク値に係数Kを乗算することによって得られる値が、閾値Vthとして算出される。係数Kは、0.5より大きく、1より小さい。
【数3】
【0038】
続いて、制御回路10は、検出回路5から電圧値V1を取得する(ステップS3)。そして、制御回路10は、電圧値V1と閾値Vthとを比較して、電圧値V1が閾値Vthよりも大きいか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4において、電圧値V1が閾値Vth以下であると判定された場合には(ステップS4:NO)、制御回路10は、ステップS4において電圧値V1が閾値Vthよりも大きいと判定されるまでステップS3及びステップS4を繰り返す。
【0039】
ステップS4において、電圧値V1が閾値Vthよりも大きいと判定された場合(ステップS4:YES)、制御回路10は、電圧値V1が閾値Vthよりも大きいと判定されてから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS5)。所定時間は、三相交流電圧の周期の3分の1よりも大きく、3分の2よりも小さい時間に設定される。ステップS5において、所定時間が経過していないと判定された場合(ステップS5:NO)、制御回路10は、所定時間が経過するまでステップS5を繰り返す。
【0040】
ステップS5において、所定時間が経過したと判定された場合(ステップS5:YES)、制御回路10は、検出回路5から電圧値V2及び電圧値V3を取得する(ステップS6)。そして、制御回路10は、電圧値V2と閾値Vthとを比較して、電圧値V2が閾値Vthよりも大きいか否かを判定する(ステップS7)。ステップS7において、電圧値V2が閾値Vthよりも大きいと判定された場合(ステップS7:YES)、図2に示されるように、電圧値V1、電圧値V2、及び電圧値V3は、電圧値V1、電圧値V2、及び電圧値V3の順で周期的に閾値Vthを上回ることを意味する。したがって、制御回路10は、コンバータ回路3のスイッチングパターンを第1スイッチングパターンに設定する(ステップS8)。以上により、図4に示される一連の処理が終了する。
【0041】
一方、ステップS7において、電圧値V2が閾値Vth以下であると判定された場合には(ステップS7:NO)、制御回路10は、電圧値V3と閾値Vthとを比較して、電圧値V3が閾値Vthよりも大きいか否かを判定する(ステップS9)。ステップS9において、電圧値V3が閾値Vthよりも大きいと判定された場合(ステップS9:YES)、図3に示されるように、電圧値V1、電圧値V2、及び電圧値V3は、電圧値V1、電圧値V3、及び電圧値V2の順で周期的に閾値Vthを上回ることを意味する。したがって、制御回路10は、コンバータ回路3のスイッチングパターンを第2スイッチングパターンに設定する(ステップS10)。以上により、図4に示される一連の処理が終了する。
【0042】
一方、ステップS9において、電圧値V3が閾値Vth以下であると判定された場合には(ステップS9:NO)、入力端子1b及び入力端子1cが電源装置2に接続されていないなどの異常が生じていると考えられるので、コンバータ回路3のスイッチングパターンが設定されることなく、図4に示される一連の処理が終了する。
【0043】
図5に示されるように、入力端子1a、入力端子1b、及び入力端子1cと、出力端子2u、出力端子2v、及び出力端子2wとの配線パターンには、6つの配線パターンがある。例えば、1番目の配線パターンは、電圧値V1がU相電圧Vuと等しくなり、電圧値V2がV相電圧Vvと等しくなり、電圧値V3がW相電圧Vwと等しくなる配線パターンである。つまり、1番目の配線パターンは、入力端子1aが出力端子2uに接続され、入力端子1bが出力端子2vに接続され、入力端子1cが出力端子2wに接続される配線パターンである。
【0044】
1番目の配線パターンでは、電圧値V1、電圧値V2、及び電圧値V3が電圧値V1、電圧値V2、及び電圧値V3の順で周期的に閾値Vthを上回る。したがって、コンバータ回路3のスイッチングパターンは第1スイッチングパターンに設定される。同様に、4番目及び5番目の配線パターンにおいても、電圧値V1、電圧値V2、及び電圧値V3が電圧値V1、電圧値V2、及び電圧値V3の順で周期的に閾値Vthを上回るので、コンバータ回路3のスイッチングパターンは第1スイッチングパターンに設定される。2番目、3番目及び6番目の配線パターンでは、電圧値V1、電圧値V2、及び電圧値V3が電圧値V1、電圧値V3、及び電圧値V2の順で周期的に閾値Vthを上回る。したがって、コンバータ回路3のスイッチングパターンは第2スイッチングパターンに設定される。
【0045】
以上説明した電力変換装置1においては、閾値Vthよりも大きい電圧値V1が検出されてから所定時間が経過した時点で、閾値Vthよりも大きい電圧値V2が検出された場合には、コンバータ回路3のスイッチングパターンが第1スイッチングパターンに設定される。閾値Vthよりも大きい電圧値V1が検出されてから所定時間が経過した時点で、閾値Vth以下の電圧値V2が検出された場合には、コンバータ回路3のスイッチングパターンが第2スイッチングパターンに設定される。
【0046】
このため、閾値Vthよりも大きい電圧値V1が検出されてから所定時間が経過した時点で、電圧値V2が閾値Vthよりも大きいか否かを判別するだけで、第1スイッチングパターン及び第2スイッチングパターンのいずれかがコンバータ回路3のスイッチングパターンとして設定される。したがって、電源装置2と入力端子1a、入力端子1b、及び入力端子1cとがどのように接続されているか(配線パターン)を検出することなく、スイッチングパターンを設定することができる。その結果、出力の正常化に要する時間を短縮することができる。
【0047】
電力変換装置1においては、検出回路5によって検出された電圧値V1、電圧値V2、及び電圧値V3に基づいて、閾値Vthが算出されるので、実際の電圧値に応じた閾値Vthが得られる。したがって、三相交流電圧の各電圧値が変動したとしても、実際の電圧値に応じた閾値Vthと電圧値V1、電圧値V2及び電圧値V3とを比較することができるので、より確実に出力を正常化することができる。
【0048】
以上、本開示の一実施形態について詳細に説明されたが、本開示に係る電力変換装置は上記実施形態に限定されない。
【0049】
検出回路5は、入力端子1a、入力端子1b及び入力端子1cのいずれかが電源装置2に接続されていないなどの異常を検出する必要がない場合には、入力端子1b及び入力端子1cが電源装置2に接続されていないなどの異常電圧値V1,V2,V3として、入力端子1aと入力端子1bとの間の線間電圧の電圧値、入力端子1bと入力端子1cとの間の線間電圧の電圧値、及び入力端子1cと入力端子1aとの間の線間電圧の電圧値を検出してもよい。
【0050】
検出回路5は、電圧値V1、電圧値V2及び電圧値V3のうちの2つの電圧値のみを検出してもよい。この場合、検出対象ではない電圧値は、電圧値V1と電圧値V2と電圧値V3との合計がゼロであるという関係から算出され得る。例えば、ステップS2において、制御回路10は、電圧値V1、電圧値V2及び電圧値V3のうちの2つの電圧値(例えば、電圧値V1及び電圧値V2)に基づいて、閾値Vthを算出してもよい。
【0051】
図4に示されるスイッチングパターン設定方法において、ステップS9は省略されてもよい。ステップS7において、電圧値V2が閾値Vth以下であると判定された場合に(ステップS7:NO)、電圧値V1、電圧値V2、及び電圧値V3が、電圧値V1、電圧値V3、及び電圧値V2の順で周期的に閾値Vthを上回るとみなすことができる。したがって、制御回路10は、電圧値V3が閾値Vthよりも大きいか否かを判定することなく、コンバータ回路3のスイッチングパターンを第2スイッチングパターンに設定してもよい(ステップS10)。この場合、ステップS6において、制御回路10は、電圧値V2のみを取得してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…電力変換装置、1a…入力端子(第1端子)、1b…入力端子(第2端子)、1c…入力端子(第3端子)、2…電源装置、3…コンバータ回路、5…検出回路、10…制御回路、SW1~SW6…スイッチング素子。
図1
図2
図3
図4
図5