(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010681
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240112BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B41J2/01 129
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/01 303
B41J2/165 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109666
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】前田 拓哉
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB07
2C056EB13
2C056EB37
2C056EB38
2C056EB59
2C056EC07
2C056EC14
2C056EC23
2C056EC28
2C056EC54
2C056EC57
2C056FA10
2C056HA37
2C056HA44
2C056JA13
(57)【要約】
【課題】記録媒体や治具の表面形状に依らず、ノズル面への反射する光の積算光量が閾値を超えたか否かを適切に判定するインクジェットプリンタを提供する。
【解決手段】インクジェットプリンタ10は、記録媒体5に光硬化性インクを吐出するノズル31、32が形成されたノズル面33を有するインクヘッド30と、光硬化性インクに光を照射する光照射装置41、42と、ノズル面33と記録媒体5の上下方向距離を測定する距離センサ51と、インクヘッド30と光照射装置41、42を制御する制御装置70を備えている。距離センサ51は、所定の時間間隔ごとに記録媒体5とノズル面33の距離を測定する。ノズル面33へ反射する光の積算光量が閾値を超えたか否かを、距離センサ51の測定値に基づいて、制御装置が判定する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体が載置される載置台と、
前記載置台に載置された前記記録媒体に光硬化性インクを吐出するノズルと、前記ノズルが形成されたノズル面とを有し、前記載置台より上方に配置されたインクヘッドと、
前記載置台より上方に配置され、前記記録媒体に吐出された前記光硬化性インクに向けて光を照射する光照射装置と、
前記記録媒体に対し主走査方向に相対移動するキャリッジと、
前記キャリッジに配置され、前記記録媒体と前記ノズル面との上下方向の距離、および/または、前記記録媒体を前記載置台に固定する治具と前記ノズル面との上下方向の距離であるヘッドギャップを測定する距離センサと、
前記インクヘッドと、前記光照射装置と、前記距離センサとを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記キャリッジが前記載置台に対して前記主走査方向に相対移動するときに、前記距離センサによる前記ヘッドギャップの所定の時間間隔ごとの測定値を記憶する第1記憶部と、
前記測定値に基づいて、前記ノズル面に向かう反射光の積算光量を推定する推定部と、
前記積算光量が閾値を超えたか否かを判定する判定部と、を備えている、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記ヘッドギャップと、前記ノズル面に向かう反射光の単位時間当たりの光量との関係を規定した第1マップを記憶する第2記憶部と、
前記記録媒体に印刷をする時間である印刷時間を計数する計数部と、
前記ヘッドギャップごとの前記印刷時間の合計を算出する第1算出部と、を備え、
前記推定部は、前記第1算出部の算出結果と、第1マップと、に基づいて積算光量を推定する請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記計数部は、前記光照射装置が光を照射する時間を前記印刷時間として計数する、請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記測定値の時間積分値を算出する第2算出部と、
前記時間積分値と、前記ノズル面に向かう反射光の積算光量との関係を規定した第2マップを記憶する第3記憶部と、を備え、
前記推定部は、前記第2算出部の算出結果と、前記第2マップと、に基づいて積算光量を推定する、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記第1記憶部は、前記インクヘッドが前記光硬化性インクを吐出しているとき、または、前記光照射装置が光を照射しているときに、前記ヘッドギャップの測定値を記憶する、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記制御装置は、前記判定部が、積算光量の閾値を超えたと判定したときに、前記ノズルを洗浄するクリーニング動作を実行するクリーニング部を備える請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記キャリッジは、前記記録媒体に対し、前記主走査方向と交差する副走査方向に相対移動し、
前記第1記憶部は、前記キャリッジが前記記録媒体に対して前記主走査方向に相対移動するときに加えて、または、前記キャリッジが前記記録媒体に対して前記主走査方向に相対移動する代わりに、前記キャリッジが前記記録媒体に対して前記副走査方向に相対移動するときに、前記ヘッドギャップの所定の時間間隔ごとの測定値を記憶する、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光硬化性インクを記録媒体上に吐出するノズルと、光硬化性インクを硬化する光を照射する光照射装置と、光照射装置を制御する制御装置と、を備え、インクジェット方式により記録媒体上に所定の印刷を行うインクジェットプリンタが知られている。かかるインクジェットプリンタでは、光照射装置から照射された光が、記録媒体上などで反射し、ノズルに付着している光硬化性インクを硬化させてしまうことがある。ノズルに付着した光硬化性インクが硬化すると、ノズルに目詰まりを発生させるおそれがある。ノズルの目詰まりを回避するために、かかるインクジェットプリンタは、ノズルを洗浄するクリーニング動作を定期的に行う。ただし、クリーニング動作は、光硬化性インクを消費して行われるため、ノズルの目詰まりを回避できる頻度の範囲で、最小限の回数だけ実行されることが望ましい。
【0003】
例えば、特許文献1には、ノズル面と記録媒体との上下方向の距離、またはノズル面と治具との上下方向の距離であるヘッドギャップと、印刷中に光を照射した時間と、からクリーニング動作を実行するか否かを判定するインクジェットプリンタが開示されている。特許文献1に開示された方法では、記録媒体および治具の厚みや材質の情報が、ユーザによりあらかじめ入力される。入力された記録媒体および治具の厚みからヘッドギャップが決定される。また、印刷中に光照射装置が光を照射している時間が計数される。ヘッドギャップと、記録媒体および治具の材質の情報と、計数された時間とからノズル面に反射する光の積算光量が推定され、ノズルのクリーニング動作を実行するか否かを制御装置が判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
印刷時に、ノズル面は記録媒体または治具の上方を移動する。ところで、記録媒体や治具が凹凸表面を有する場合、その厚みは一定ではない。そのため、ヘッドギャップは、記録媒体や治具に対するノズル面の位置によって異なる。仮に、凹凸表面を有する記録媒体および治具の厚みを一定とみなしてヘッドギャップを決定し、積算光量の推定値を算出しても、実際のヘッドギャップとずれがあるため、実際の積算光量ともずれが生じる。特に、ヘッドギャップが大きくなると、ノズル面に反射する光の単位時間あたりの積算光量が増加するため、積算光量の推定値のずれは、より大きくなる。クリーニング頻度が低くなると、ノズルに付着した光硬化性インクが硬化し、印刷物に白抜けや吐出ヨレ等の発生につながる。したがって、ヘッドギャップのずれは印刷物の品質の低下につながる。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録媒体や治具の表面形状に依らず、印刷物の品質を安定化することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るインクジェットプリンタは、記録媒体が載置される載置台と、前記載置台に載置された前記記録媒体に光硬化性インクを吐出するノズルと、前記ノズルが形成されたノズル面とを有し、前記載置台より上方に配置されたインクヘッドと、前記載置台より上方に配置され前記記録媒体に吐出された前記光硬化性インクに向けて光を照射する光照射装置と、前記記録媒体に対し主走査方向に相対移動するキャリッジと、前記キャリッジに配置され、前記記録媒体と前記ノズル面との上下方向の距離、および/または、前記記録媒体を前記載置台に固定する治具と前記ノズル面との上下方向の距離であるヘッドギャップを測定する距離センサと、前記インクヘッドおよび前記光照射装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記インクヘッドが、載置台に対して相対移動するときに、前記ヘッドギャップの測定値を記憶する第1記憶部と、前記測定値に基づいて、前記ノズル面に向かう前記光照射装置からの反射光の積算光量を推定する推定部と、前記積算光量が閾値を超えたか否かを判定する判定部と、を備えている。
【0008】
本発明のインクジェットプリンタによると、距離センサがヘッドギャップの所定時間ごとの測定値を測定し、その測定値によりノズル面に反射する積算光量を推定する。このことにより、記録媒体や治具が凹凸表面を有していても、その凹凸表面の形状に応じて積算光量を推定し、ノズルのクリーニング動作が必要か否かを適切に判定することができる。したがって、印刷物の品質を安定化することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、記録媒体や治具の表面形状に依らず、ノズル面へ反射する光の積算光量が閾値を超えたか否かを適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】一実施形態に係るフロントカバーが開いた状態のプリンタの正面図である。
【
図3】一実施形態に係るインクヘッドおよび光照射装置の底面の構成を示す模式図である。
【
図4】一実施形態に係るキャッピング装置とその周辺の構成を示す正面図である。
【
図5】一実施形態に係るプリンタの制御装置のブロック図である。
【
図6】一実施形態に係るインクヘッドとその周辺の構成を示す正面図である。
【
図7】一実施形態に係るヘッドギャップに対する反射光の光量のマップである。
【
図8】一実施形態に係るプリンタのクリーニング動作のタイミングを最適化して画像を印刷する手順を示したフローチャートである。
【
図9】一実施形態に係る時刻とヘッドギャップの関係を示すグラフである。
【
図10】一実施形態に係る累積距離に対する積算光量のマップである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」という。)について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るプリンタ10の斜視図である。プリンタ10は、インクジェット式のプリンタである。プリンタ10は、記録媒体5(
図2参照)に印刷を行う。以下の説明では便宜上、プリンタ10の方向を下記のように定義することとする。プリンタ10を正面から見たときに、プリンタ10から遠ざかる方を前方、プリンタ10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、プリンタ10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。図面中の符号Yは主走査方向を示している。ここでは、主走査方向Yは左右方向である。符号Xは副走査方向を示している。ここでは、副走査方向Xは前後方向であり、平面視において主走査方向Yと直交している。符号Zは上下方向を示している。上下方向Zは、正面視において主走査方向Yと直交している。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0013】
本実施形態において用いられる記録媒体5は、例えば、記録紙や転写紙などの平面シートであってもよいし、携帯電話ケースなどの各種ケース、電子タバコなどの小型電子機器、キーホルダやフォトフレームやペンなどの部品小物、日用品、アクセサリなどの立体物であってもよい。記録媒体5を形成する材料は、普通紙やインクジェット用印刷紙などの紙類はもちろんのこと、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)共重合体などの樹脂類、アルミニウムやステンレス鋼などの金属類、カーボン、陶器、セラミック、ガラス、ゴム、皮革、木材などであってもよい。
【0014】
図1に示すように、プリンタ10は、箱状に形成されている。プリンタ10は、ケース15と、フロントカバー23と、操作パネル25とを備えている。ケース15の前部には、開口28(
図2参照)が形成されている。フロントカバー23は、ケース15の開口28を開閉自在に設けられている。ここでは、フロントカバー23は、後端を軸に回転可能なように、ケース15に支持されている。フロントカバー23を上方に回転させることによって、ケース15の内部空間と外部空間とが連通される。内部空間は、インクヘッド30(
図2参照)によって印刷が行われる空間である。このように、印刷が行われる空間がケース15およびフロントカバー23によって囲まれていることによって、印刷中、外部空間の塵および埃がケース15の内部空間に入り込み難い。
【0015】
フロントカバー23の前部および上部には、窓23Aが設けられている。窓23Aは、例えば、透明のアクリル板によって形成されている。窓23Aには、紫外線が内部空間に到達しないように処理が施されている。ユーザは、窓23Aからケース15の内部を視認することが可能である。
【0016】
操作パネル25は、ケース15に設けられている。操作パネル25は、ケース15の上面右側に設けられている。操作パネル25は、ユーザが画像の印刷に関する操作を行うパネルである。図示は省略するが、操作パネル25には、光沢感の有無などの印刷の種類、解像度、印刷の状況などの印刷に関する情報が表示される表示画面、および、印刷、記録媒体5および後述する治具45(
図6参照)に関する情報を設定するための入力ボタンなどが備えられている。
【0017】
次に、プリンタ10の内部の構成について説明する。
図2に示すように、プリンタ10は、ガイドレール18と、キャリッジ20と、インクヘッド30と、第1紫外線照射装置41と、第2紫外線照射装置42と、距離センサ51と、制御装置70とを備えている。ガイドレール18は、ケース15内に配置されている。ガイドレール18は、ケース15に固定され、主走査方向Yに延びている。ガイドレール18には、キャリッジ20が摺動自在に設けられている。キャリッジ20は、キャリッジ移動機構21(
図5参照)により、ガイドレール18に沿って主走査方向Yに往復移動する。キャリッジ移動機構21は、制御装置70によって制御される。キャリッジ20が主走査方向Yに移動することに伴い、キャリッジ20に搭載されたインクヘッド30、第1紫外線照射装置41、第2紫外線照射装置42および距離センサ51は主走査方向Yに移動する。
【0018】
キャリッジ20には、複数のインクヘッド30が搭載されている。インクヘッド30は、テーブル35より上方に配置されている。インクヘッド30は、テーブル35に載置された記録媒体5に、光硬化性を有するインク(光硬化性インク)を吐出する。インクヘッド30は、それぞれ、可撓性を有するインクチューブ(図示せず)によって、ケース15内に収容されたインクカートリッジ34と連通されている。インクカートリッジ34には、それぞれ、光硬化性インクが貯留されている。
【0019】
図3に示すように、インクヘッド30は、副走査方向Xの長さが主走査方向Yの長さよりも長い形状に形成されている。インクヘッド30は、同じ形状かつ同じ大きさに形成されている。インクヘッド30は、副走査方向Xに並ぶ複数の第1ノズル31と、副走査方向Xに並ぶ複数の第2ノズル32と、第1ノズル31および第2ノズル32が形成されたノズル面33を備えている。第1ノズル31内および第2ノズル32内は、負圧(大気圧より低い圧力)に設定されている。なお、第1ノズル31および第2ノズル32は微小であるため、
図3では複数の第1ノズル31および複数の第2ノズル32を直線で表している。インクヘッド30の第1ノズル31および第2ノズル32は、記録媒体5に光硬化性インクを吐出する。本実施形態では、プリンタ10は3つのインクヘッド30を備えているが、インクヘッド30の数は3つに限定されない。また、インクヘッド30は、第1ノズル31および第2ノズル32の2列のノズルを備えているが、1列のノズルまたは3列以上のノズルを備えていてもよい。
【0020】
光硬化性インクは、光(例えば紫外線や赤外線)が照射されると硬化する性質を有する。光硬化性インク(例えば紫外線硬化型インクや赤外線硬化型インク)は、顔料等の着色剤と光重合性モノマーと光重合開始剤系とを含み、必要に応じてその他の各種添加剤、例えば、光増感剤、重合禁止剤、捕捉剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、界面活性剤、レベリング剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、溶剤等を含み得る。光硬化性インクは、有色インクである。光硬化性インクは、例えば、プロセスカラーインクやホワイトインクである。例えば、プロセスカラーインクとしては、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク等が挙げられる。光硬化性インクとしては、例えば、紫外線硬化型のインクが挙げられる。
【0021】
図2に示すように、プリンタ10は、第1紫外線照射装置41および第2紫外線照射装置42を備えている。第1紫外線照射装置41および第2紫外線照射装置42は、光照射装置の一例である。第1紫外線照射装置41および第2紫外線照射装置42は、記録媒体5に吐出された光硬化性インクに向けて光(典型的には紫外線)を照射する。これにより、記録媒体5上で光硬化性インクが硬化される。ここでは、第1紫外線照射装置41および第2紫外線照射装置42は紫外線照射LEDである。第1紫外線照射装置41および第2紫外線照射装置42は、キャリッジ20に搭載されている。第1紫外線照射装置41および第2紫外線照射装置42は、テーブル35より上方に配置されている。
図3に示すように、第1紫外線照射装置41は、インクヘッド30の左方に配置されている。第2紫外線照射装置42は、インクヘッド30の右方に配置されている。第1紫外線照射装置41および第2紫外線照射装置42と、インクヘッド30とは、副走査方向Xに関して揃った位置に配置されている。本実施形態では、第1紫外線照射装置41および第2紫外線照射装置42は、それぞれインクヘッド30の左右に配置されているが、この配置は限定されない。例えば、インクヘッドの左方に第1紫外線照射装置41および第2紫外線照射装置42が配置されていてもよい。インクヘッド30は、紫外線照射装置を2つ備えているが、3つ以上の紫外線照射装置を備えていてもよい。また、本実施形態では、第1紫外線照射装置41および第2紫外線照射装置42は、キャリッジ20に搭載されているが、これに限定されない。例えば、第1紫外線照射装置41および第2紫外線照射装置42はプリンタ10の内部に固定されていてもよい。
【0022】
キャリッジ20には、距離センサ51が搭載されている。距離センサ51は、記録媒体5とノズル面33との上下方向の間隔、または記録媒体5を保持する治具45とノズル面33との上下方向の間隔であるヘッドギャップHG[mm](
図6参照。
図6では記録媒体5とノズル面33との上下方向の間隔をヘッドギャップHGとして図示している)を測定する。距離センサ51は、後述するテーブル35より上方かつ、インクヘッド30よりも右方に配置されている。距離センサ51の検出面51aの上下方向の位置は、ノズル面33の上下方向の位置と一致している。
図3に示すように、距離センサ51は、キャリッジ20のうち、ノズル面33が配置されている面と同一の面に配置されている。距離センサ51は、典型的には、レーザー変位計や超音波変位センサなどである。なお、本実施形態では、ノズル面33の上下方向の位置と、距離センサ51の検出面51aの上下方向の位置は一致しているが、これに限定されない。ノズル面33の上下方向の位置と検出面51aの上下方向の位置とが一致していなくても、例えば、ノズル面の上下方向の位置と検出面51aの上下方向の位置との差分を、距離センサ51aの測定値に加算または減算することにより、距離センサ51によってヘッドギャップHGを測定することができる。また、本実施形態では、距離センサ51は、インクヘッド30の右方に配置されているが、これに限定されない。例えば、距離センサ51は、インクヘッド30の左方、前方または後方に配置されていてもよいし、キャリッジ20の右側面、左側面、前側面または後側面に配置されていてもよい。また、距離センサ51は、インクヘッド30が搭載されたキャリッジ20とは別のサブキャリッジに配置されていてもよい。例えば、ガイドレール18にインクヘッド30が搭載されたキャリッジ20と、カット刃が搭載されたカットキャリッジと、が摺動自在に設けられており、カットキャリッジに距離センサ51が配置されていてもよい。ただし、サブキャリッジはカットキャリッジに限定されない。
【0023】
図2に示すように、プリンタ10は、所謂、フラットベッドタイプのプリンタである。プリンタ10は、キャリッジ20より下方に配置されたテーブル35と、第1テーブル移動機構36と、第2テーブル移動機構37とを備えている。テーブル35は、載置台の一例である。テーブル35には、記録媒体5が載置される。テーブル35は、記録媒体5を支持する台である。テーブル35は、第1テーブル移動機構36によって、副走査方向Xに移動可能に構成されている。テーブル35は、第2テーブル移動機構37によって、上下方向Zに移動可能に構成されている。
【0024】
第1テーブル移動機構36は、スライドレール36a、36bと、搬送部材36cと、第1モータ39A(
図5参照)とを備えている。スライドレール36a、36bは、副走査方向Xに延びている。搬送部材36cは、スライドレール36a、36bに対して摺動自在に設けられている。搬送部材36cの上方には、他の部材を介してテーブル35が支持されている。第1モータ39Aは、制御装置70と電気的に接続されており、制御装置70によって制御される。第1モータ39Aが駆動すると、スライドレール36a、36bに沿って搬送部材36cが移動する。これにより、テーブル35が、副走査方向Xに移動する。
【0025】
第2テーブル移動機構37は、高さ調整部材37aと、第2モータ39B(
図5参照)とを備えている。高さ調整部材37aは、テーブル35の下面に設けられている。高さ調整部材37aは、第2モータ39Bに接続されている。第2モータ39Bは、制御装置70と電気的に接続されており、制御装置70によって制御される。第2モータ39Bが駆動すると、高さ調整部材37aの高さが変化して、テーブル35の高さが調整される。即ち、テーブル35は、上下方向Zに移動する。
【0026】
図4に示すように、プリンタ10は、キャッピング装置90を備えている。キャッピング装置90は、キャップ91と、キャップ移動機構92と、吸引ポンプ93と、を備えている。キャップ91およびキャップ移動機構92は、ガイドレール18の右端部に位置するホームポジションHPに配置されている。ここで、ホームポジションHPとは、印刷待機時、すなわち、印刷が行われていないときに、キャリッジ20(即ちインクヘッド30、第1紫外線照射装置41、第2紫外線照射装置42および距離センサ51)が待機する位置である。ただし、ホームポジションHPの位置は特に限定されず、ガイドレール18の左端部であってもよい。
【0027】
キャッピング装置90は、インクヘッド30の第1ノズル31および第2ノズル32(
図3参照)に付着したインクが硬化して第1ノズル31および第2ノズル32が目詰まりすることを抑制する部材である。キャップ91は、インクヘッド30に着脱可能に設けられている。キャップ91は、印刷待機時において、ノズル面33を覆うように下方からインクヘッド30にそれぞれ取り付けられる。即ち、キャリッジ20がホームポジションHPに位置するときには、キャップ91は、インクヘッド30にそれぞれ装着されている。「ノズル面33を覆う」とは、第1ノズル31および第2ノズル32の全てのノズルとノズル面33の全体を覆う場合と、第1ノズル31および第2ノズル32の全てのノズルとノズル面33の一部を覆う場合とを含む。
【0028】
キャップ移動機構92は、キャップ91を支持している。キャップ移動機構92は、キャップ91をインクヘッド30に対してそれぞれ着脱可能なように移動させる機構である。本実施形態では、キャップ移動機構92は、キャップ91を上下方向Zに移動させるものである。キャップ移動機構92の構成は特に限定されないが、例えば、駆動モータ92Aが設けられている。キャップ移動機構92は、駆動モータ92Aを駆動させることによって、キャップ91を上下方向に移動させる。キャップ移動機構92は、キャップ91を上方に移動させることによって、キャップ91をキャップ位置に移動させる。ここで、キャップ位置とは、キャップ91がノズル面33を覆う位置である。これにより、キャップ91は、インクヘッド30にそれぞれ装着される。キャップ91がインクヘッド30にそれぞれ取り付けられたときに、キャップ91とノズル面33との間に密閉空間38がそれぞれ形成される。キャップ移動機構92は、キャップ91を下方に移動させることによって、キャップ91を離隔位置に移動させる。ここで、離隔位置とは、キャップ91がノズル面33から離隔した位置である。これにより、キャップ91は、それぞれ、インクヘッド30から取り外される。なお、キャップ91は、複数のインクヘッド30を覆う形状であってもよい。
【0029】
吸引ポンプ93は、インクヘッド30にキャップ91が装着されている状態において、密閉空間38内の流体(例えば光硬化性インク)を吸引する。これにより、密閉空間38内は、大気圧より低い圧力となる。この結果、吸引ポンプ93は、インクヘッド30の第1ノズル31および第2ノズル32(
図3参照)内の光硬化性インクを吸引する。即ち、インクヘッド30の第1ノズル31および第2ノズル32から光硬化性インクをキャップ91内に強制的に吐出させる。吸引ポンプ93の吸引口は、キャップ91に接続されている。吸引ポンプ93の排出口は、廃液タンク95に接続されている。吸引ポンプ93に吸引された密閉空間38内の流体は、廃液タンク95に貯留される。上記吸引は、第1ノズル31および第2ノズル32から光硬化性インクを吐出させて、第1ノズル31および第2ノズル32の吐出不良を解消させる作業であり、インクヘッド30の第1ノズル31および第2ノズル32の詰まりを予防するためのクリーニング動作である。吸引ポンプ93は、吸引装置の一例である。
【0030】
図4に示すように、プリンタ10は、ワイパー97を備えている。ワイパー97は、キャッピング装置90の左方に配置されている。ワイパー97は、インクヘッド30のノズル面33をワイピングする部材である。ワイパー97は、ガイドレール18より下方に配置されている。ワイパー97は、キャリッジ20がワイパー97の上方を通過するとき、ノズル面33に接するように構成されている。ワイパー97は、板状の部材であって、例えばゴムなどによって形成されている。
【0031】
図5に示すように、制御装置70は、操作パネル25と、キャリッジ移動機構21と、インクヘッド30と、第1紫外線照射装置41と、第2紫外線照射装置42と、距離センサ51と、第1テーブル移動機構36(
図2参照)の第1モータ39Aと、第2テーブル移動機構37(
図2参照)の第2モータ39Bと、キャッピング装置90(
図4参照)の駆動モータ92Aと、吸引ポンプ93と通信可能に接続している。制御装置70は、操作パネル25と、キャリッジ移動機構21と、インクヘッド30と、第1紫外線照射装置41と、第2紫外線照射装置42と、距離センサ51と、第1モータ39Aと、第2モータ39Bと、駆動モータ92Aと、吸引ポンプ93とを制御する。
【0032】
制御装置70は、インクヘッド30が光硬化性インクを吐出するタイミングおよび光硬化性インクの吐出量等を制御する。制御装置70は、駆動モータ92Aの駆動を制御することによって、キャップ91の上下方向Zの移動を制御する。制御装置70は、吸引ポンプ93が密閉空間38内の流体を吸引するタイミングなどを制御する。制御装置70は、記録媒体5に吐出された光硬化性インクに向けて第1紫外線照射装置41および第2紫外線照射装置42から紫外線を照射するタイミング等を制御する。制御装置70は、印刷中にヘッドギャップHGを測定する距離センサ51を制御する。
【0033】
図5に示すように、制御装置70は、第1記憶部71と、第1マップ72と、第2記憶部73と、計数部74と、第1算出部75と、推定部76と、判定部77と、クリーニング部80と、を備えている。これら各部は、プログラムによって実現されている。このプログラムは、例えばCDやDVDなどの記録媒体から読み込まれる。なお、このプログラムは、インターネットを通じてダウンロードされるものであってもよい。また、これら各部は、プロセッサおよび/または回路などによって実現可能なものであってもよい。
【0034】
第1記憶部71は、印刷中にヘッドギャップHG[mm](
図6参照)の所定の時間ごとの測定値を記憶する。ヘッドギャップHGは、キャリッジ20の移動中に、距離センサ51が測定するものである。
【0035】
第2記憶部73は、ヘッドギャップHGと、ノズル面33に反射される単位時間当たりの光量[mW/cm
2]との関係を規定した第1マップ72を記憶する。
図7は、第2記憶部73に記憶される第1マップ72の一例である。
図7に示す例では、A[mm]~D[mm]のヘッドギャップHGと、それらのヘッドギャップHGに対応する単位時間当たりの光量L(L1~L4)[mW/cm
2]とが含まれる。ここで、単位時間当たりの光量Lは、第1紫外線照射装置41および第2紫外線照射装置42から照射された光が記録媒体5、テーブル35および治具45において反射され、ノズル面33に到達する光量である。第1マップ72の値は、ユーザにより、事前に入力されるものである。第1マップ72の値は、例えば、事前に行われる試験または過去のデータに基づいて設定することができる。
【0036】
また、単位時間当たりの光量Lは、記録媒体5を形成する材料の種類によって異なる。第1マップ72は、記録媒体5に関する情報である記録媒体情報(例えば記録媒体5を形成する材料)に関連付けられている。第1記憶部71は、記録媒体情報に関連付けられた複数の第1マップ72を記憶するとよい。
【0037】
なお、
図6に示すように、記録媒体5に画像を印刷するときに治具45が用いられる場合には、単位時間当たりの光量Lには、治具45における光の反射が考慮されている。即ち、単位時間当たりの光量Lは、第1紫外線照射装置41および第2紫外線照射装置42から照射された光が記録媒体5およびテーブル35および治具45において反射され、ノズル面33に到達する光量となる。治具45は、テーブル35に載置される。治具45は、テーブル35に固定される。治具45は、例えば、金属材料や樹脂材料等から形成されている。
【0038】
また、単位時間当たりの光量Lは、治具45を形成する材料の種類等によって異なる。第1マップ72は、治具45に関する情報である治具情報(例えば治具45を形成する材料、治具45の色や治具45の大きさ等)に関連付けられている。第1記憶部71は、治具情報に関連付けられた複数の第1マップ72を記憶するとよい。
【0039】
図8は、ノズル31,32のクリーニング動作のタイミングを距離センサ51の測定値に基づき最適化し、画像を印刷する手順を示したフローチャートである。
図8に示すように、制御装置70は、ノズル面に反射された光の積算光量を推定し、適切なタイミングでクリーニング動作を実行する。
【0040】
ステップS10において、ユーザは、記録媒体5の情報である記録媒体情報および治具45の情報である治具情報を設定する。記録媒体情報および治具情報の設定は、例えば、操作パネル25を用いてユーザによって行われる。なお、記録媒体情報および治具情報の設定は、プリンタ10に接続された操作端末(例えばノート型のパソコン)を用いてユーザによって行われてもよい。記録媒体情報および治具情報の設定は、例えば、記録媒体5や治具45に関する情報が一覧表示されたリストから選択することによって行われる。ユーザは、例えば、一覧表示されたリストから記録媒体5や治具45を形成する材料を選択する。なお、印刷に際して治具45を用いない場合には、治具45を用いないことを設定する。
【0041】
ステップS20において、第1マップ72が第2記憶部73に記憶される。第1マップ72の設定は、例えば、操作パネル25を用いてユーザによって行われる。なお、第1マップ72の設定は、プリンタ10に接続された操作端末(例えばノート型のパソコン)を用いてユーザによって行われてもよい。また、第1マップ72の設定は、ステップS10で設定された記録媒体情報および治具情報から自動的に行われてもよい。第1マップ72の値は、ヘッドギャップHGの値に応じた単位時間当たりの反射光の光量を入力してもよいし、あらかじめ登録されたマップの情報を一覧表示されたリストから選択されるものでもよい。
【0042】
ステップS30において、ユーザは、例えば、プリンタ10に接続された操作端末を操作して所定の画像の印刷を決定する。これにより、操作端末から印刷指示信号および印刷データが送信され、プリンタ10は印刷を行う。
【0043】
ステップS40において、制御装置70は、インクヘッド30等を制御して、テーブル35に載置された記録媒体5に光硬化性インクを吐出し、記録媒体5上に画像の印刷を行う。即ち、印刷データに基づいて、記録媒体5に画像の印刷が開始される。印刷が開始されると、計数部74は、印刷時間[分]を計数する。ここで、印刷時間とは、画像の印刷を開始してから画像の印刷が終了するまでの時間である。印刷時間は、例えば、印刷のためにキャリッジ20が移動を開始してから移動を終了するまでの時間としてもよい。印刷時間は、インクヘッド30が最初のインクを吐出してから最後のインクを吐出するまでの時間としてもよい。本実施形態では、印刷時間とは、画像の印刷が開始されてから画像の印刷が終了するまでの間における、第1紫外線照射装置41および第2紫外線照射装置42から光が照射されている時間である。印刷が開始されると、距離センサ51は、ヘッドギャップHGの測定を開始し、印刷中のヘッドギャップHGの所定の時間間隔ごとの測定値が、第1記憶部71に記憶される。ヘッドギャップHGを記憶するときの所定の時間間隔は、予め定められた一定の間隔であってもよく、ユーザにより適宜設定されてもよい。ヘッドギャップHGの測定値は、所定の時間間隔が小さいほど、記録媒体5または治具45の凹凸形状によるヘッドギャップHGの変化に追従することができる。すなわち、所定の時間間隔が小さいほど、ヘッドギャップHGの測定値の精度が高くなる。
【0044】
ステップS50では、積算光量の推定が行われる。例えば、記録媒体5の表面に凹凸がない場合、印刷中のヘッドギャップHGは一定となる。単位時間当たりの反射光の強度は一定であるので、ヘッドギャップHGに対応する光量に印刷時間を乗じることにより、積算光量を推定することができる。しかし、例えば記録媒体5の表面に凹凸がある場合、印刷中にヘッドギャップHGは変動する。そこで、本実施形態では、ヘッドギャップHGごとに光量を算出し、各ヘッドギャップHGの光量を合計することによって積算光量を推定する。具体的には、以下のようにして積算光量を推定する。
【0045】
まず、第1算出部75は、第1記憶部71に記憶されたヘッドギャップHGの測定値と、計数部74が計数した値とにより、ヘッドギャップHGごとの印刷時間を算出する。第1記憶部71には、所定の時間間隔ごとのヘッドギャップHGの測定値が記憶されている。第1記憶部71に記憶されている測定値には、ヘッドギャップHGの測定値が同一であるものが含まれている。計数部74は、印刷時間を計数している。第1算出部75は、ヘッドギャップHGの測定値が同一である時間の合計を、計数部74が計数した時間を用いて算出する。次に、推定部76は、各ヘッドギャップHGについて、第1算出部75が算出した合計時間と第1マップ72とから、ノズル33へ反射する反射光の積算光量を推定する。そして、推定部76は、全てのヘッドギャップHGの積算光量を合計することによって、印刷中の積算光量を推定する。なお、第1マップ72は、第2記憶部に記憶されている。推定部76は、第1記憶部71に記憶されている、あるヘッドギャップHGの値を第1マップ72から参照する。推定部76は、第1マップ72の単位時間当たりの反射光の光量のうち、参照したヘッドギャップHGに対応する値を参照する。
【0046】
例えば、第1記憶部71に記憶されているヘッドギャップHGの測定値が、
図7に示すA[mm]と、B[mm]と、の2つであったとする。このとき、それぞれのヘッドギャップHGに対応する、単位時間当たりの反射光の光量は、L1、L2[mW/cm
2]である。例えば、印刷中にヘッドギャップHGがA[mm]であった時間が、t1秒間およびt2秒間あったとする。このとき、ヘッドギャップHGがA[mm]である時間の合計は、t1+t2秒間である。ヘッドギャップHGがB[mm]のときの合計時間が、t3秒間であったとする。推定部76は、参照した単位時間当たりの反射光の光量に、参照した合計時間を乗ずることにより、ヘッドギャップHGごとの積算光量を推定する。そして、推定部76は、ヘッドギャップHGごとの積算光量を合計することにより、印刷中の積算光量を推定する。ここでは、ヘッドギャップHGがA[mm]のときの積算光量は、L1×(t1+t2)である。ヘッドギャップHGがB[mm]のときの積算光量は、L2×t3である。よって、推定部76は、L1×(t1+t2)+L2×t3を印刷中の積算光量と推定する。
【0047】
なお、あるヘッドギャップHGの値について、第1マップ72内で合致するものがない場合が想定される。このとき、第1マップ72のデータを用いて、そのときのヘッドギャップHGに対する、ノズル面33へ反射する単位時間当たりの反射光の光量を補間して算出した値にて推定してもよい。補間の方法は、例えば線形補間である。
【0048】
ステップS60において、判定部77は、推定部76が推定した積算光量が、所定の閾値を超えたか否かを判定する。所定の閾値は、ユーザによって適宜設定される。所定の閾値は、ノズル面33に反射された光によって第1ノズル31、第2ノズル32やノズル面33に付着した光硬化性インクが未だ硬化しないが、さらに光を照射し続けると(例えば5分~10分程度)上記光硬化性インクが硬化してしまう程度に設定される。積算光量が所定の閾値を超えた場合には、ステップS70に進む。一方、積算光量が所定の閾値以下の場合には、ステップ80に進む。
【0049】
判定部77によって積算光量が閾値を超えたと判定された場合、ステップS70において、クリーニング部80はクリーニング動作を実行する。ここで、クリーニング動作とは、第1ノズル31および第2ノズル32を洗浄する動作である。クリーニング部80は、クリーニング動作において、吸引動作、ワイピング動作およびフラッシング動作を実行する。ここでは、吸引動作は、密閉空間38内の流体を吸引ポンプ93によって吸引してインクヘッド30の第1ノズル31および第2ノズル32から光硬化性インクを吐出させることである。これにより、第1ノズル31および第2ノズル32のノズルの目詰まりを抑制することができる。このとき、ノズル面33に付着していた光硬化性インクも吸引ポンプ93によって吸引される。クリーニング部80は、吸引動作を実行した後にワイパー97によってノズル面33をワイピングするワイピング動作を実行する。クリーニング部80は、ワイピング動作を実行した後に第1ノズル31および第2ノズル32から所定量のインクを吐出するフラッシング動作を実行する。例えば、第1ノズル31および第2ノズル32からキャップ91に向けてフラッシング動作を実行する。なおクリーニング部80が、吸引動作、ワイピング動作およびフラッシング動作を実行するときには、クリーニング部80は、キャリッジ移動機構21を制御してキャリッジ20をホームポジションHPに移動させ、駆動モータ92Aを制御してキャップ91をインクヘッド30に対して着脱する。その後、キャリッジ20をワイパー97の上方に移動させる。その後、クリーニング部80は、再度キャリッジ移動機構21を制御してキャリッジ20をホームポジションHPに移動させ、必要に応じて、駆動モータ92Aを制御してキャップ91をインクヘッド30に対して着脱する。なお、吸引動作、ワイピング動作およびフラッシング動作を実行する順序は、特に限定されない。
【0050】
ステップS80において、受信した印刷データに基づく印刷が完了したか否かを判定する。印刷が完了した場合は、ステップS90に進む。印刷が完了していない場合は、ステップ50に進む。
【0051】
ステップ90において、ユーザは、引き続き別の画像の印刷を行う場合には、例えば、プリンタ10に接続された操作端末を操作して新たな画像の印刷を決定する。これにより、操作端末からプリンタ10に新たな印刷指示信号および新たな印刷データが送信され、プリンタ10は印刷を開始する。そして、ステップ40に進む。一方、ユーザが引き続き別の画像の印刷を行わない場合には、画像の印刷処理を終了する。ここで、判定部77は、直近のクリーニング動作が行われた後から現在までの間に、ノズル面に反射された光の積算光量を記憶している。即ち、クリーニング動作が終わったタイミングで印刷も終了したときには、積算光量はゼロであり、クリーニング動作が行われずに印刷が終了したときには、積算光量は上記閾値より小さい値となる。
【0052】
以上のように、本実施形態のプリンタ10によると、推定部76は、距離センサ51が測定したヘッドギャップHGの所定の時間間隔ごとの測定値に基づいて、ノズル面33に反射された光の積算光量を推定する。従来、積算光量を推定するためには、ヘッドギャップHGを事前に入力しておく必要があった。しかし、記録媒体5や治具45が凹凸形状を有している場合、正確にヘッドギャップHGを入力することが困難であった。正確にヘッドギャップHGを入力することができないと、積算光量の推定値と実際の積算光量とにずれが生じ、適切なタイミングでクリーニング動作の必要の有無を判定することが困難となる。しかし、本実施形態のプリンタ10によれば、実際に距離センサ51が測定したヘッドギャップHGの所定の時間間隔ごとの測定値を用いるため、記録媒体5や治具45の表面の形状に影響されることなく、積算光量を推定することができる。
【0053】
本実施形態のプリンタ10によれば、ヘッドギャップHGの値と、それに対応する単位時間当たりの反射光の光量を記載した第1マップ72を用いて、ヘッドギャップHGごとの積算光量を第1算出部75が算出して、積算光量を推定する。このように、あらかじめ入力しておいたデータに基づき、積算光量を算出することができる。
【0054】
本実施形態のプリンタ10によれば、印刷時間は、第1紫外線照射装置41および第2紫外線照射装置42から光が照射されている時間である。ここで、記録媒体5に画像を印刷しているときには、インクヘッド30の下に、光硬化性インクが吐出されていない領域が存在することがあり得る。光硬化性インクが吐出されていない領域には、第1紫外線照射装置41および第2紫外線照射装置42から光が照射されない。光硬化性インクは、光が照射されることによって硬化する性質を有するため、第1紫外線照射装置41および第2紫外線照射装置42から光が照射されている時間を基準とすることで、推定部77は、ノズル面33に反射する積算光量をより正確に推定することができる。
【0055】
本実施形態のプリンタ10によれば、インクヘッド30による光硬化性インクの吐出および第1紫外線照射装置41および第2紫外線照射装置42による紫外線の照射が実行されると同時に、距離センサ51によるヘッドギャップHGの測定が実行される。例えば、ヘッドギャップHGの測定値を、第1記憶部71へ記憶させるために、キャリッジ20を主走査方向Yに1回往復運動させたのちに、光硬化性インクの吐出および紫外線の照射を行う動作を実行させてもよい。しかしこの場合、ヘッドギャップHGの測定値の測定の動作と、光硬化性インクの吐出および紫外線の照射を行う動作でそれぞれ1回ずつキャリッジ20を往復運動させる必要がある。したがって、光硬化性インクの吐出および紫外線の照射を行う動作と同時に、ヘッドギャップHGの測定値の測定の動作が実行されることで、キャリッジ20の往復運動を1回分削減できる。これにより、印刷時間を削減し、効率的に印刷を行うことができる。
【0056】
本実施形態のプリンタ10によれば、クリーニング部80は、判定部77によって、積算光量が所定の閾値を超えたと判定されたときに、第1ノズル31および第2ノズル32を洗浄するクリーニング動作を実行する。このように、第1ノズル31および第2ノズル32を洗浄することによって、第1ノズル31および第2ノズル32の吐出不良を解消させることができる。
【0057】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0058】
上述した実施形態では、推定部74は、ヘッドギャップHGごとの単位時間当たりの反射光の光量のマップである第1マップ72を用いて積算光量を推定したが、これに限定されない。例えば、ヘッドギャップHGの累積距離[mm・s]を算出する第2算出部91と、累積距離に対するノズル面33に反射する光の積算光量[mJ/cm
2]を記載した第2マップ92と、第2マップ92を記憶する第3記憶部93を有していてもよい。累積距離は、ヘッドギャップHGの測定値を印刷時間で積分して得られる値(測定値の時間積分値)である。第2算出部91は、距離センサ51が測定したヘッドギャップHGの所定の時間間隔ごとの測定値を、計数部74が計数した印刷時間で積分し、累積距離を算出する。例えば、
図9に示すような、ヘッドギャップHGと印刷時間tの関係を表すグラフにおいて、累積距離は、グラフによって囲まれる面積を表している。第3記憶部93は、累積距離と、積算光量との関係を規定した第2マップ92を記憶する。
図10は、第3記憶部93に記憶される第2マップ92の一例である。
図7に示すように、E[mm・s]~H[mm・s]の累積距離と積算光量L(L5~L8)[mJ/cm
2]が含まれる。推定部76は、第2算出部91が算出した累積距離を第2マップ92から参照する。推定部76は、参照した累積距離に対応する反射光の積算光量を第2マップ92から参照し、積算光量と推定する。なお、第2算出部91が算出した累積距離について、第2マップ92内で合致するものがない場合は、第2マップのデータを用いて、そのときの累積距離に対する反射光の積算光量を補間して算出した値にて推定してもよい。補間の方法は、例えば線形補間である。
【0059】
上述した実施形態では、印刷中にキャリッジ20が主走査方向Yに移動するときに、距離センサ51がヘッドギャップHGを測定しているが、これに限定されない。キャリッジ20が、記録媒体5に対して主走査方向に相対移動するときに加えて、または、主走査方向に相対移動するときに代えて、記録媒体5に対して副走査方向Xに相対移動するときに、距離センサ51の測定値を用いて積算光量を算出してもよい。例えば、記録媒体5が副走査方向Xに凹凸を有し、テーブル35が副走査方向Xに移動するときに、印刷を実行するものとする。記録媒体5が立体物のとき、記録媒体5そのものを副走査方向Xに搬送することは困難である。そこで、記録媒体5は、テーブル35に対して固定されたままで搬送される。すなわち、テーブル35が副走査方向Xに動くことにより、記録媒体5は副走査方向Xに搬送される。したがって、第1紫外線照射装置41および第2紫外線照射装置42が光を照射しながら、副走査方向Xにテーブル35および記録媒体5が搬送される場合が想定される。このとき、キャリッジ20は、記録媒体5に対して、副走査方向Xに相対移動している。第1紫外線照射装置41および第2紫外線照射装置42が紫外線を照射しながら、記録媒体5が副走査方向Xに搬送される場合にもプリンタ10は、積算光量を推定することができる。
【0060】
ここで開示される技術は、様々なタイプのプリンタに適用することができる。上述した実施形態で示したフラッドベッドタイプのプリンタ10の他、例えば、ロール状の記録媒体5を副走査方向Xに搬送する、所謂、Roll-to-Rollタイプのプリンタ10にも同様に適用することができる。また、テーブル35に載置された記録媒体5に対して、キャリッジ20を主走査方向Yおよび副走査方向Xに相対移動させる、所謂、ガントリータイプのプリンタ10にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
5 記録媒体
10 インクジェットプリンタ
20 キャリッジ
30 インクヘッド
31、32 ノズル
33 ノズル面
35 テーブル
41、42 紫外線照射装置
51 距離センサ
70 制御装置
71 第1記憶部
74 推定部
76 判定部