(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106815
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】基板支持台および基板保持装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/20 20060101AFI20240801BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
H01J37/20 A
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011268
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】302054866
【氏名又は名称】日新イオン機器株式会社
(72)【発明者】
【氏名】朝香 重乙
(72)【発明者】
【氏名】中澤 喜之
【テーマコード(参考)】
5C101
5F131
【Fターム(参考)】
5C101AA25
5C101FF02
5C101FF46
5C101FF49
5C101FF58
5F131AA03
5F131AA12
5F131AA32
5F131AA33
5F131BA23
5F131CA18
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA03
5F131EA14
5F131EA25
5F131EB31
5F131EB32
5F131EB54
5F131EB55
5F131EB62
5F131EB72
(57)【要約】
【課題】基板を支持する位置を変更できるとともに、基板を支持する位置が変化することを抑制できる基板支持台および基板保持装置を提供する。
【解決手段】イオンビーム照射装置1に配置され、イオンビームが照射される基板を支持する基板支持台10を、基板の被支持面Sbを支持する複数の第一支持部材20と、第一支持部材20が固定され得る支持体11とを備え、基板が支持された状態における被支持面Sbに平行な一方向Dについて、第一支持部材20の支持体11に対する配置位置を所定の範囲で選択可能であり、第一支持部材20が、選択された配置位置に固定部材25により固定される構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビーム照射装置に配置され、イオンビームが照射される基板を支持する基板支持台であって、
前記基板の被支持面を支持する複数の第一支持部材と、
前記第一支持部材が固定され得る支持体と、
を備え、
前記基板が支持された状態における前記被支持面に平行な一方向について、前記第一支持部材の前記支持体に対する配置位置を所定の範囲で選択可能であり、
前記第一支持部材が、選択された前記配置位置に固定部材により固定される、基板支持台。
【請求項2】
前記第一支持部材が、前記被支持面を支持する支持位置を前記一方向について間に挟む少なくとも二箇所において前記固定部材により固定される、請求項1に記載の基板支持台。
【請求項3】
前記支持体が、前記一方向に所定の間隔を空けて形成され、それぞれ前記固定部材を受け入れ得る複数の固定部を有し、
前記第一支持部材が、選択された少なくとも一つの前記固定部を介して前記固定部材により固定される、請求項1に記載の基板支持台。
【請求項4】
前記固定部が、貫通孔または凹形状を成しており、
前記第一支持部材が、前記第一支持部材が前記支持体に固定された状態について、前記一方向と直交する方向に貫通するとともに、前記一方向に前記間隔以上の寸法で開口する孔部を有し、
前記固定部材が、前記孔部を介して固定部に挿し込まれる棒状部を有する、請求項3に記載の基板支持台。
【請求項5】
前記支持体が、本体と、前記本体に固定される付加部材と、を備え、
前記第一支持部材が、前記付加部材に固定される、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板支持台。
【請求項6】
前記被支持面を支持し、前記支持体に対する位置が常に固定される第二支持部材をさらに備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板支持台。
【請求項7】
イオンビーム照射装置に配置され、イオンビームが照射される基板を支持する基板支持台を備える基板保持装置であって、
前記基板支持台が、
前記基板の被支持面を支持する第一支持部材と、
前記第一支持部材が固定され得る支持体と、
を備え、
前記基板が支持された状態における前記被支持面に平行な一方向について、前記第一支持部材の前記支持体に対する配置位置を所定の範囲で選択可能であり、
前記第一支持部材が、選択された前記配置位置に固定部材により固定される、基板保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板支持台および当該基板支持台を備える基板保持装置に関し、特に、イオンビーム照射装置に使用される基板支持台および基板保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フラットパネルディスプレイの製造工程で使用されるイオン注入装置に使用され、イオンビームが照射される基板を支持する基板載置装置が開示されている。この基板載置装置は、イオン注入装置の処理室内に配置され、処理対象となるガラス基板を支持するものである。この基板載置装置は、ガラス基板が載置されるテーブルと、テーブルに配置されたガイドレールと、ガイドレールに沿って移動可能な複数のスライドブロックを備えている。各スライドブロックには、ガラス基板を支持し得るように構成された複数の支持部品が固定されており、ガラス基板はこれらの支持部品に支持されるようにしてテーブルに載置される。
【0003】
特許文献1の基板載置装置は、スライドブロックをガイドレールに沿って移動させることによって、テーブルに対する支持部品の位置を変更できるように構成されている。したがって、この基板載置装置は、支持するガラス基板の種類が変更された場合であっても、支持部品の位置を適切な位置に変更することができる。この基板載置装置では、例えば、支持部品がガラス基板の薄膜トランジスタが形成されない領域を支持するように支持部品の位置が変更されることによって、最終製品である表示パネルへの意図しない影響が加わることが回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0258988号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の基板載置装置は、スライドブロックをガイドレール上に固定する手段を備えていない。したがって、この基板載置装置を使用するにつれて、スライドブロックのガイドレールに対する位置が変化するおそれがある。この場合、例えば、支持部品がガラス基板を支持する位置が経時的に変化し、その結果、例えば最終製品である表示パネル等に意図しない影響が加わるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するものであり、基板を支持する位置を変更できるとともに、基板を支持する位置が変化することを抑制できる基板支持台、および、当該基板支持台を備える基板保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の基板支持台は、イオンビーム照射装置に配置され、イオンビームが照射される基板を支持する基板支持台であって、前記基板の被支持面を支持する複数の第一支持部材と、前記第一支持部材が固定され得る支持体と、を備え、前記基板が支持された状態における前記被支持面に平行な一方向について、前記第一支持部材の前記支持体に対する配置位置を所定の範囲で選択可能であり、前記第一支持部材が、選択された前記配置位置に固定部材により固定される構成とされている。
【0008】
この構成によれば、第一支持部材の支持体に対する配置位置を一方向の所定の範囲で選択可能であることから、支持する基板に応じて第一支持部材の支持体に対する配置位置を変更することができる。さらに、第一支持部材が、選択された配置位置に固定部材により固定されることから、第一支持部材の配置位置が選択された位置から変化することが抑制される。
【0009】
本発明の基板支持台は、前記第一支持部材が、前記被支持面を支持する支持位置を前記一方向について間に挟む少なくとも二箇所において、前記固定部材により固定される構成とされてもよい。
【0010】
この構成によれば、第一支持部材が、基板の被支持面を支持する支持位置を一方向について間に挟む少なくとも二箇所において固定部材により固定される。すなわち、支持部材が基板の荷重がかかる支持位置を挟む少なくとも二箇所で固定されることから、基板からの荷重によって固定部材の固定力が弱まることが抑制される。
【0011】
本発明の基板支持台は、前記支持体が、前記一方向に所定の間隔を空けて形成され、それぞれ前記固定部材を受け入れ得る複数の固定部を有し、前記第一支持部材が、選択された少なくとも一つの前記固定部を介して前記固定部材により固定される構成であってもよい。
【0012】
この構成によれば、作業者等が、複数の固定部の中から使用する固定部を選択し、選択された固定部を使用して固定部材により第一支持部材を固定することになる。つまり、選択する固定部を変更することによって、第一支持部材の配置位置を変更することができる。
【0013】
本発明の基板支持台は、前記固定部が、貫通孔または凹形状を成しており、前記第一支持部材が、前記第一支持部材が前記支持体に固定された状態について、前記一方向と直交する方向に貫通するとともに、前記一方向に前記間隔以上の寸法で開口する孔部を有し、前記固定部材が、前記孔部を介して固定部に挿し込まれる棒状部を有する構成とされてもよい。
【0014】
この構成によれば、第一支持部材に形成された孔部が、各固定部間の間隔以上の寸法で開口していることから、固定部材の棒状部が挿し込まれる位置を一方向について当該寸法の範囲で調節することができる。したがって、固定部が形成される範囲においては、第一支持部材の配置位置を実質的に無段階で調整することができる。
【0015】
本発明の基板支持台は、前記支持体が、所定の回転軸まわりに動作する本体と、前記本体に固定される付加部材と、を備え、前記第一支持部材が、前記付加部材に固定される構成とされてもよい。
【0016】
この構成によれば、本体と、第一支持部材が付加部材を別個に作成することが可能となる。したがって、例えば、既存の本体に、新たに作成した本発明にかかる付加部材を取り付けることによって本発明の基板支持台を構成することができる。この場合、既存の基板支持台に、本発明にかかる第一支持部材の配置位置を変更できる機能を付加させることが可能となる。
【0017】
本発明の基板支持台は、前記被支持面を支持し、前記支持体に対する位置が常に固定される第二支持部材をさらに備える構成とされてもよい。
【0018】
本発明によれば、基板支持台を、基板の被支持領域のうち、支持される位置を変更する必要がない領域は第二支持部材により支持し、支持される位置を変更する必要がある領域を第一支持部材により支持する構成とすることができる。つまり、支持される位置を変更する必要がない領域は第二支持部材により支持することによって、基板をすべて複数の第一支持部材により支持する場合と比較して、基板支持台の構成が簡易なものとなる。
【0019】
本発明の基板保持装置は、イオンビーム照射装置に配置され、イオンビームが照射される基板を支持する基板支持台を備える基板保持装置であって、前記基板支持台が、前記基板の被支持面を支持する第一支持部材と、前記第一支持部材が固定され得る支持体と、を備え、前記基板が支持された状態における前記被支持面に平行な一方向について、前記第一支持部材の前記支持体に対する配置位置を所定の範囲で選択可能であり、前記第一支持部材が、選択された前記配置位置に固定部材により固定される、基板保持装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、基板を支持する位置を変更できるとともに、基板を支持する位置が変化することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態におけるイオンビーム照射装置の処理室内部を示す模式図。
【
図2】同実施形態における基板支持台が倒伏位置にある状態を示す基板保持装置の上面図。
【
図3】同実施形態における支持体の
図2の一点鎖線で囲まれた領域における、第一支持部材および第二支持部材が配置された第三板状部材の側面図である。
【
図4】同実施形態における支持体の
図2の一点鎖線で囲まれた領域における、第一支持部材および第二支持部材が配置された第三板状部材の上面図である。
【
図5】本発明の第一変形例を示す第一支持部材と付加部材の断面図である。
【
図6】本発明の第二変形例を示す第一支持部材と付加部材の側面図である。
【
図7】本発明の第三変形例を示す第一支持部材と付加部材の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明における一実施形態である基板支持台10、および基板支持台10を使用する基板保持装置100について説明する。
図1は、本実施形態における基板保持装置100を有するイオンビーム照射装置1が備える処理室2の内部を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態における基板保持装置100は、基板SにイオンビームIBを照射するイオンビーム照射装置1において使用される。本実施形態におけるイオンビーム照射装置1は、フラットパネルディスプレイ製造工程で使用されるイオン注入装置であるが、これに限定されるものではない。
なお、イオンビーム照射装置1は、本実施形態にかかる基板保持装置100を有することを除いては、フラットパネルディスプレイ製造工程で使用されるイオン注入装置に一般に採用されている構成を備えていることから、装置全体の詳細な説明は省略する。
【0023】
本実施形態における基板Sは矩形のガラス基板であり、イオンビーム照射装置1は、基板Sの被処理面Sa全域にイオンビームIBを照射する。また、基板支持台10を備える基板保持装置100は、イオンビーム照射装置1が有する処理室2内に配置されて使用される。なお、基板Sはガラス基板に限らず、形状も限定されるものではない。
【0024】
基板保持装置100は、基板Sを支持する基板支持台10を備える。基板支持台10は、基板Sの被処理面Saの裏面にあたる被支持面Sbを支持する複数の第一支持部材20および複数の第二支持部材30を備えている。また、基板支持台10は、第一支持部材20および第二支持部材30に支持された基板Sの周縁部を保持し得る複数のクランパ101を備えている。
【0025】
基板保持装置100は、基板支持台10を動作させるためのモータ102を備えており、図示されない動力伝達機構を介してモータ102からの動力を基板支持台10に伝えることによって、基板支持台10を動作させることができる。より具体的には、基板保持装置100は、基板支持台10を
図1および
図2に示された回転軸Aまわりに回転動作させることによって、基板支持台10を倒伏位置P1と起立位置P2との間で移動させることができる構成とされている。
【0026】
基板支持台10が倒伏位置P1にあるとき、基板Sは基板支持台10に水平に支持される。起立位置P2は、基板SにイオンビームIBが照射される間の基板支持台10の位置であり、基板支持台10が起立位置P2にあるとき、基板Sは被処理面SaをイオンビームIBに向けるように、基板保持装置100によって垂直に保持される。
【0027】
外部から処理室2内に搬入された基板Sは、まず倒伏位置P1にある基板支持台10に載置される。そして、基板支持台10が起立位置P2に移動するのに伴って、基板Sが起き上がり、その後、基板SにイオンビームIBが照射される。基板Sの被処理面Sa全域にイオンビームIBが照射された後、基板支持台10が再び倒伏位置P1に戻り、基板Sが処理室2の外部に搬出される。
【0028】
図2は、基板支持台10が倒伏位置P1にある状態を示す基板保持装置100の上面図である。
図2では基板支持台10に支持された基板Sが破線で示されている。
図2に示すように、基板保持装置100は、基板支持台10とモータ102に加え、基板支持台10の幅方向両端部に固定され、回転軸Aを規定する一対の軸部材103、103と、一対の軸部材103、103を回転可能に支持する正面視コ字状(U字状)の支持枠体104をさらに備えている。また、基板支持台10の外側には、前述の図示されない動力伝達機構が配置されている。
【0029】
基板支持台10は、基板Sの被支持面Sbを支持する複数の第一支持部材20と複数の第二支持部材30を備えている。また、基板支持台10は、第一支持部材20および第二支持部材30が固定され得る支持体11をさらに備えている。
【0030】
後述するように、各第一支持部材20は、支持体11に対する位置をそれぞれ変更可能であるように構成されている。一方、各第二支持部材30は、支持体11のあらかじめ定められた位置に固定されるように構成されている。また、本実施形態においては、
図2に示すように、本実施形態における基板支持台10は、第一支持部材20と第二支持部材30をそれぞれ8個ずつ備えているが、これらの数は限定されるものではない。
【0031】
本実施形態における支持体11は、回転軸Aまわりに回転動作する平面視で全体櫛状の本体12と、本体12に固定された付加部材14により構成されている。本体12は、モータ102が発生した動力が一対の軸部材103、103を介して伝えられることによって、回転軸Aまわりに回転動作する。
【0032】
本体12は、基板Sを支持した状態について、基板Sの長手方向に間隔を空けて順に配置された第一板状部材12a、第二板状部材12b、第三板状部材12cを有する。また、本体12はさらに、第一板状部材12a、第二板状部材12b、第三板状部材12cの各長手方向の一端部を連結する第四板状部材12dを有する。本体12は、一板状部材12a、第二板状部材12b、および第三板状部材12が第四板状部材12dに連結されることによって、全体が櫛状を成している。
【0033】
本体12は、第一板状部材12aおよび第二板状部材12bにそれぞれ形成され、互いに対向する第一側面13aおよび第二側面13bを有する。また、本体12は、第二板状部材12bおよび第三板状部材12cにそれぞれ形成され、互いに対向する第三側面13cおよび第四側面13dを有する。
【0034】
また、本実施形態における支持体11は、本体12に固定された8個の付加部材14を有している。より詳細には、付加部材14は、第一側面13a、第二側面13b、第三側面13cおよび第四側面13dにそれぞれ2個ずつ配置されている。そして、各付加部材14にひとつの第一支持部材20が固定されている。
【0035】
本実施形態においては、すべての第一支持部材20は、付加部材14を介して本体12に固定されているが、これに限定されるものではない。例えば、基板支持台10は、付加部材14を使用せず、すべての第一支持部材20を本体12に直接固定される構成であってもよい。また、基板支持台10は、複数の第一支持部材20のうち、一部は付加部材14を介して本体12に間接的に固定され、一部は本体12に直接固定される構成であってもよい。
【0036】
本実施形態においては、第二支持部材30は、第一側面13a、第二側面13b、第三側面13cおよび第四側面13dにそれぞれ2個ずつ配置されており、いずれの第二支持部材30も支持体11に直接固定されている。本実施形態における8個の第二支持部材30は、いずれも基板Sの被支持面Sbの周縁部を支持するように配置されているが、第二支持部材30の個数および配置位置はこれに限定されるものではない。
【0037】
図3および
図4は、それぞれ支持体11の
図2中の一点鎖線で囲まれた領域を示す第三板状部材12cの側面図および上面図であり、第三板状部材12cが有する第四側面13dに第一支持部材20および第二支持部材30が配置された状態が示されている。
【0038】
図3および
図4に示すように、第一支持部材20は、付加部材14を介して支持体11の第四側面13dに間接的に固定されている。一方、第二支持部材30は、第四側面13dに直接固定されている。第一支持部材20および第二支持部材30は、
図3および
図4に示されたもの以外についても、
図3および
図4に示されたものと同様の構成であり、これらと同様の方法で本体12に固定されている。
【0039】
付加部材14は、全体が直方体形状を成すアルミニウム等の金属の板材から形成されている。
図3に示すように、付加部材14は、付加部材14の長手方向に所定の第一の間隔B1を空けて並ぶように形成された複数の第一固定部15を有する。また、付加部材14は、第一固定部15に平行に配列され、付加部材14の長手方向に所定の第二の間隔B2を空けて並ぶように形成された複数の第二固定部16を有する。
【0040】
複数の第一固定部15および複数の第二固定部16はそれぞれ、付加部材14が本体12に固定された状態において、基板Sが基板支持台10に支持された状態における被支持面Sbに平行な所定の一方向Dに沿って並ぶように配置されている。
【0041】
付加部材14は本体12に固定され得るものであればよく、本実施形態の形状に限定されるものではない。また、複数の第一固定部15および複数の第二固定部16は、それぞれ基板Sが基板支持台10に支持された状態における被支持面Sbに平行な所定の一方向Dに沿って並ぶように形成されていればよい。
なお、一方向Dは、基板Sが自重による撓み等の変形がなく理想的に支持された状態について、被支持面Sbに平行な方向を指す。
【0042】
本実施形態においては、第一固定部15および第二固定部16は、それぞれ付加部材14の厚さ方向に貫通する貫通孔を成すものである。各第一固定部15および各第二固定部16は当該貫通孔を形成する内周面であるものと捉えてもよい。
【0043】
各第一固定部15の内周面には、
図4に示されたボルトである第一固定部材25を受けいれ、第一固定部材25によって第一支持部材20を固定するための図示されないねじ溝が形成されている。同様に、第二固定部16の内周面には、
図4に示されたボルトである第二固定部材26を受けいれ、第二固定部材26によって第一支持部材20を固定するための図示されないねじ溝が形成されている。
【0044】
図3および
図4に示すように、第二支持部材30は、基板Sを支持する第二ピン31と、第二ピン31を保持する第二保持体32とにより構成されている。第二保持体32には、第二保持体32の厚さ方向に貫通する二つの第三孔部33、33が形成されている。
【0045】
また、本体12の第三側面13cには、
図4に示されたボルトである第三固定部材35を受け入れるとともに、内周面にねじ溝を有するふたつの凹部34、34が形成されている。第二支持部材30は、各第三孔部33の位置を各凹部34の位置に合わせ、各第三孔部33に第三固定部材35を挿入し、第三固定部材35を凹部34にねじ固定することにより、本体12に固定される。
【0046】
図3に示すように、本実施形態における各付加部材14において、第一固定部15および第二固定部16はそれぞれ6箇所に形成されている。
なお、付加部材14に形成される第一固定部15および第二固定部16の数は限定されるものではなく、適宜変更される。また、ひとつの基板支持台10が、互いに第一固定部15または第二固定部16の数が異なる複数の付加部材14を備える構成であってもよい。
【0047】
図3および
図4に示すように、本実施形態の第一支持部材20は、それぞれ基板Sを支持する第一ピン21と、第一ピン21を保持する第一保持体22とにより構成されている。第一ピン21は合成樹脂材やゴム材により形成され、一端が球面状に形成されて被支持面Sbに接触して基板Sを支持し、他端が第一保持体22に圧入されて第一保持体22に保持される構成とされている。
【0048】
第一保持体22は、全体が略直方体形状を成し、アルミニウム等の金属により形成されており、第一保持体22の厚さ方向に貫通する第一孔部23および第二孔部24を有する。より詳細には、第一孔部23および第二孔部24は、第一支持部材20が支持体11に固定された状態について、一方向Dと直交する方向に貫通している。
【0049】
また、第一孔部23は、第一支持部材20が支持体11に固定された状態において、一方向Dについて第一の間隔B1以上の寸法で開口する長孔である。同様に、第二孔部24は、第一支持部材20が支持体11に固定された状態において、一方向Dについて第二の間隔B2以上の寸法で開口する長孔である。本実施形態においては、第一の間隔B1と第二の間隔B2は等しいが、これに限定されるものではない。
【0050】
第一保持体22は、第一孔部23および第二孔部24がそれぞれ、少なくとも一つの第一固定部15、および、少なくとも一つの第二固定部16と位置を合わせた状態で付加部材14に配置できるように構成されている。つまり、第一保持体22は、第一孔部23の開口と少なくとも一つの第一固定部15の開口がつながり、かつ、第二孔部24の開口と少なくとも一つの第二固定部16の開口がつながった状態で付加部材14に配置され得るように構成されている。
【0051】
これ以降、
図3に示すように、便宜上6個の第一固定部15および6個の第二固定部16を、紙面左側からそれぞれ第一固定部15a~15f、第二固定部16a~16fとして区別する場合がある。
【0052】
本体12に固定された付加部材14に第一支持部材20を取り付ける場合、作業者はまず、第一ピン21が基板Sを支持するべき位置に応じて、第一支持部材20を支持体11に配置する配置位置を決定する。その後、作業者は決定された配置位置に応じて、複数の第一固定部15および複数の第二固定部16の中からそれぞれ使用するものを選択する。
【0053】
図3および
図4では、第一固定部15cおよび第二固定部16fが選択され、第一支持部材20が第一固定部15cおよび第二固定部16fを使用して配置位置F1に固定される状態が示されている。
【0054】
この場合、作業者は、まず、第一固定部15cと第二固定部16fを、それぞれ第一孔部23および第二孔部24を通して覗くことができるように、第一支持部材20を付加部材14上に配置する。その後、作業者は、第一支持部材20を一方向Dに沿って動かすことによって、第一支持部材20が所定の配置位置F1に配置されるよう調整する。そして、作業者は、
図4に示すように、第一固定部材25と第二固定部16を使用して、第一支持部材20を付加部材14に固定する。
【0055】
より詳細には、本実施形態における第一固定部材25と第二固定部16は、それぞれ表面にねじ溝が形成された棒状部25aと棒状部26aを有するボルトである。
第一固定部材25は、棒状部25aが第一孔部23を通るようにして第一固定部15cに挿し込まれてねじにより固定される。同様に、第二固定部材26は、棒状部26aが第二孔部24を通るようにして第二固定部16fに挿し込まれてねじにより固定される。
【0056】
本実施形態における第一固定部15および第二固定部16は、付加部材14の厚さ方向に貫通孔であるが、貫通しない凹形状であってもよい。また、第一固定部15および第二固定部16は、本体12の第一板状部材12a、第二板状部材12b、第三板状部材12c、第四板状部材12dの側面に形成されていてもよい。この場合、第一支持部材20は、付加部材14を介することなく、本体12に直接固定されることになる。
【0057】
第一孔部23の一方向Dについて開口する寸法は第一の間隔B1以上であり、かつ、第二孔部24の一方向Dについて開口する寸法は第二の間隔B2以上である。本実施形態の基板支持台10は、第一孔部23内および第二孔部24内を、第一固定部材25および第二固定部材26がそれぞれ通る位置を相対的に調整することで、一方向Dについて実質的に所定の範囲内で第一支持部材20が配置される位置を調整できる。
【0058】
本実施形態における基板支持台10は、基板Sが支持された状態における被支持面Sbに平行な一方向Dについて、第一支持部材20の支持体11に対する配置位置を所定の範囲において選択可能であり、第一支持部材20が、選択された配置位置に第一固定部材25および第二固定部材26により固定される構成である。
【0059】
したがって、第一支持部材20の支持体11に対する配置位置を一方向Dの所定の範囲において選択可能であることから、支持する基板Sに応じて第一支持部材20の配置位置を変更することができる。さらに、第一支持部材20が、選択された配置位置に第一固定部材25および第二固定部材26により固定されることから、従来と異なり、第一支持部材20の配置位置が選択された位置から経時的に変化することが抑制される。
【0060】
また、本実施形態の基板支持台10においては、第一孔部23および第二孔部24が、それぞれ一方向Dについて第一ピン21の両側に位置するように形成されている。言い換えれば、第一ピン21は、一方向Dについて第一孔部23と第二孔部24の間に位置付けられている。
【0061】
つまり、基板支持台10においては、第一支持部材20が、一方向Dについて第一ピン21が被支持面Sbを支持する支持位置F2を間に挟む二箇所において、第一固定部材25および第二固定部材26により固定される。仮に、第一支持部材20を固定する位置が一方向Dについて第一ピン21の片側のみにあると、第一ピン21に基板Sの荷重がかかることで一方向に回転モーメントが発生し、第一支持部材20を固定する固定力が経時的に弱まることが想定される。
【0062】
これに対し、本実施形態では、第一支持部材20が、基板Sからの荷重がかかる支持位置F2を挟んだ二カ所で固定されることから、基板Sからの荷重によって第一固定部材25および第二固定部材26の固定力が弱まることが抑制される。
なお、第一支持部材20が、一方向Dについて第一ピン21が被支持面Sbを支持する支持位置を間に挟む3以上の箇所において固定されるよう構成されていてもよい。
【0063】
また、基板支持台10は、支持体11が、一方向Dにそれぞれ所定の第一の間隔B1および第二の間隔B2を空けて形成され、それぞれ第一固定部材25および第二固定部材26を受け入れる複数の第一固定部15および第二固定部16を有する。そして、それらの中から選択された少なくとも一つの第一固定部15および第二固定部16を介して、第一固定部材25および第二固定部材26により第一支持部材20が付加部材14に固定される。
【0064】
作業者等は、第一固定部材25を支持体11に固定する場合、複数の第一固定部15および複数の第二固定部16の中からそれぞれ使用するひとつの第一固定部15、および、ひとつの複数の第二固定部16を選択する。そして、選択された第一固定部15および第二固定部16を使用し、第一固定部材25および第二固定部材26により第一支持部材20を固定する。したがって、選択する第一固定部15および第二固定部16を変更することによって、第一支持部材20の配置位置を変更することができる。
【0065】
第一固定部15および第二固定部16は、貫通孔または凹形状を成している。また、第一固定部材25および第二固定部材26は、それぞれ第一固定部15および第二固定部16に挿し込まれる棒状部25aおよび棒状部26aを有する。また、第一支持部材20は、一方向Dと直交する方向に貫通するとともに、一方向Dについて第一の間隔B1および第二の間隔B2以上の寸法で開口する第一孔部23および第二孔部24を有する。第一孔部23および第二孔部24に棒状部25aおよび棒状部26aがそれぞれ挿し込まれた状態で、第一支持部材20は付加部材14に固定される。
【0066】
このように第一支持部材20に形成された第一孔部23および第二孔部24が、それぞれ一方向Dに沿って第一の間隔B1および第二の間隔B2以上の寸法で開口している。したがって、棒状部25aおよび棒状部26aがそれぞれ挿し込まれる位置を一方向Dについて第一孔部23および第二孔部24の一方向Dに開口する寸法の範囲で調節することができる。したがって、第一固定部15および第二固定部16が形成される範囲においては、第一支持部材20の配置位置を実質的に無段階で調整することができる。
【0067】
本実施形態の基板支持台10は、支持体11が、所定の回転軸Aまわりに動作する本体12と、本体12に固定される付加部材14とを備え、第一支持部材20が、付加部材14に固定される構成である。この構成によって、本体12と、付加部材14を別個に作成することが可能となる。したがって、例えば、既存の本体12に、新たに作成した付加部材14を取り付けることによって基板支持台10を構成することができる。この場合、既存の装置に第一支持部材20の配置位置を変更できる機能を付加させることも可能となる。
【0068】
また、基板支持台10は、基板Sの被支持面Sbを支持し、前記支持体に対する位置が常に固定される第二支持部材30をさらに備える。
【0069】
つまり、本実施形態における基板支持台10は、被支持面Sbの支持領域のうち、支持される位置を変更する必要がない領域は第二支持部材30により支持し、支持される位置を変更する必要がある領域を第一支持部材20により支持する構成とすることができる。つまり、支持される位置を変更する必要がない領域は第二支持部材30により支持することによって、基板Sをすべて複数の第一支持部材20により支持する場合と比較して、基板支持台10の構成が簡易なものとなる。
【0070】
図4に示すように、本実施形態においては、付加部材14は目盛線17を有する。目盛線17は、支持体11におけるあらかじめ定められた位置を示すものである。目盛線17は、例えば、支持体11に基板Sが理想的に支持された状態について、基板Sの所定の位置からの距離を示すものである。
【0071】
第一支持部材20を付加部材17に配置する作業において、作業者は目盛線17を利用して、第一支持部材20を所定の位置に配置することができる。したがって、付加部材14が目盛線17を有することにより、第一支持部材20を付加部材17に固定する作業の作業性が向上する。
【0072】
本実施形態においては、目盛線17は各付加部材17に一つ形成されているが、目盛線17は複数形成されるものであってもよい。また、目盛線17は、付加部材17の上面に形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、目盛線17は、付加部材17の第一固定部材25および第二固定部材26が形成される側面に一つ、または、複数形成されていてもよい。
なお、前述の通り、基板支持台10は、第一支持部材20が、付加部材17を介さず、本体12に直接固定される構成であってもよい。この場合、本体12の各第一支持部材20が取り付けられる位置近傍に目盛線17を形成すればよい。
【0073】
図5は、本実施形態における基板支持台10の第一変形例を示す、第一支持部材20と付加部材14の断面図である。
図5に示すように、第一変形例では、第一支持部材20は、第一固定部15と第二固定部16に円筒状のカラー27を受け入れる第一凹部42が形成されている。また、付加部材14の各第一固定部15および各第二固定部16にもカラー27を受け入れる第二凹部43が形成されている。この場合、第一凹部42および第二凹部43にカラー27が配置され、カラー27を介して第一固定部材25および第二固定部材26が固定される。したがって、カラー27によって、作業時に第一支持部材20の付加部材14に対する位置ずれが抑制され、作業性が向上する。
【0074】
図6は、本実施形態における基板支持台10の第二変形例を示す、第一支持部材20と付加部材14の側面図である。
図6に示すように、付加部材14および第一支持部材20は、互いに接触する面に凹部44と凹部44に嵌り合う凸部45を有する。凹部44は、一方向Dに沿って付加部材14の第一支持部材20に対向する面の全域にわたって形成されている。また、凸部45は、第一支持部材20の付加部材14に対向する面の全域にわたって形成されている。
【0075】
第一支持部材20は、凸部45を凹部44に嵌めた状態で一方向Dにスライド移動可能であり、これによって、第一支持部材20の位置を合わせる作業、および、第一支持部材20を付加部材14に固定する作業時に、第一支持部材20の上下の動きや位置ずれが規制され、作業性が向上する。
なお、凹部44は第一支持部材20に形成され、凸部45は付加部材14に形成される構成であってもよい。
【0076】
図7は、本実施形態における基板支持台10の第三変形例を示す、付加部材14および第一支持部材20の上面図である。
図7に示すように、第三変形例においては、付加部材14および第一支持部材20はそれぞれ、互いに接触する面に、互いに嵌り合う第一鋸刃状部46および第二鋸刃状部47を有している。
【0077】
第一鋸刃状部46は、付加部材14の第一支持部材20に接触する面に形成されており、断面が同一形状の山形が連続する形状とされており、隣り合う山形の頂部の間隔の寸法(ピッチ)がB3で一定であるように形成されている。
【0078】
第二鋸刃状部47は、第一支持部材20の付加部材14に接触する面に形成されており、断面が同一形状の山形が連続する形状とされており、隣り合う山形の頂部の間隔の寸法(ピッチ)が、第一鋸刃状部46と同一のB3で一定であるように形成されている。したがって、第一鋸刃状部46と第二鋸刃状部47は、互いのピッチB3だけずらして位置を合わせることができることから、第一支持部材20の付加部材14に対する位置を合わせる作業が容易になる。
【0079】
なお、第一鋸刃状部46と第二鋸刃状部47は、それぞれ付加部材14と第一支持部材20の互いに接触する面に形成されていればよく、例えば、第二変形例における凸部45と凹部44に形成されていてもよい。
【0080】
また、本発明は前記実施形態および前記変形例に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0081】
IB イオンビーム
S 基板
Sb 被支持面
D 一方向
1 イオンビーム照射装置
10 基板支持台
11 支持体
12 本体
14 付加部材
15 第一固定部
16 第二固定部
20 第一支持部材
21 第一ピン
22 第一保持体
23 第一孔部
24 第二孔部
25 第一固定部材
26 第二固定部材
100 基板保持装置