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特開2024-106826発電システム、これを備えた発電プラント、発電システムの制御方法及び発電システムの制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106826
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】発電システム、これを備えた発電プラント、発電システムの制御方法及び発電システムの制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04746 20160101AFI20240801BHJP
   H01M 8/0444 20160101ALI20240801BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20240801BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20240801BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240801BHJP
【FI】
H01M8/04746
H01M8/0444
H01M8/0432
H01M8/04313
H01M8/12 101
H01M8/12 102B
H01M8/12 102A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011286
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】一橋 友介
(72)【発明者】
【氏名】寺本 雄一
(72)【発明者】
【氏名】仙石 建斗
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127AC02
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA06
5H127BA28
5H127BA37
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB25
5H127BB37
5H127BB39
5H127DB01
5H127DB47
5H127DC02
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE29
(57)【要約】
【課題】燃料ガスの炭化水素の供給量の制御の即応性を高めるとともに、効率的に運転することができる発電システムを提供する。
【解決手段】発電システムは、酸化性ガスと燃料ガスとを反応させて発電を行う発電部215を備える燃料電池313と、燃料電池へ供給される燃料ガスの流路とされた燃料ガス供給管341に設けられ、燃料ガス密度を計測する密度計測部DMと、燃料ガス供給管に設けられるとともに、燃料ガスの炭化水素の供給量を制御するために開閉量が調整される制御弁342と、密度計測部の計測値に基づいて制御弁の開閉量を制御する制御部380とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化性ガスと燃料ガスとを反応させて発電を行う発電部を備える燃料電池と、
前記燃料電池へ供給される前記燃料ガスの流路とされた燃料ガス供給管に設けられ、前記燃料ガスの密度を計測する密度計測部と、
前記燃料ガス供給管に設けられるとともに、前記燃料ガスの炭化水素の供給量を制御するために開閉量が調整される制御弁と、
前記密度計測部の計測値に基づいて前記制御弁の開閉量を制御する制御部と
を備える発電システム。
【請求項2】
前記発電部に設けられ、前記発電部の温度を計測する温度計測部を備え、
前記制御部は、前記温度計測部の計測値に基づいて前記制御弁の開閉量を制御する請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
酸化性ガスと燃料ガスとを反応させて発電を行う発電部を備える燃料電池と、
前記発電部に設けられ、前記発電部の内部における状態量を取得する取得部と、
前記発電部へ供給される前記燃料ガスが搬送される燃料ガス供給管に設けられるとともに、前記燃料ガスの炭化水素の供給量を変更するために開閉量が調整される制御弁と、
前記取得部によって取得された前記発電部の内部における状態量の適性を判断するとともに、該判断結果に基づいて前記制御弁の開閉量を制御する制御部と
を備える発電システム。
【請求項4】
前記燃料ガスは、少なくとも3種類以上の成分によって構成される請求項1に記載の発電システム。
【請求項5】
前記温度計測部は、前記発電部における前記燃料ガスの流れ方向の上流側に設けられた上流側温度計測部であり、
前記制御部は、前記上流側温度計測部の計測値に基づいて、前記制御弁の開閉量を制御する請求項2に記載の発電システム。
【請求項6】
前記温度計測部は複数とされ、前記発電部の中央部付近の温度を計測する中部温度計測部であり、
前記制御部は、各前記中部温度計測部による計測値に基づいて、前記制御弁の開閉量を制御する請求項2に記載の発電システム。
【請求項7】
請求項1又は請求項3に記載の発電システムを備えた発電プラント。
【請求項8】
酸化性ガスと燃料ガスとを反応させて発電を行う発電部を備える燃料電池を備える発電システムの制御方法であって、
前記発電部へ供給される前記燃料ガスの流路とされた燃料ガス供給管に設けられた密度計測部によって、前記燃料ガスの密度を計測する工程と、
前記密度計測部の計測値に基づいて前記燃料ガス供給管に設けられた制御弁の開閉量を制御する工程と
を有する発電システムの制御方法。
【請求項9】
酸化性ガスと燃料ガスとを反応させて発電を行う発電部を備える燃料電池を備える発電システムの制御方法であって、
前記発電部に設けられた取得部によって、前記発電部の内部における状態量を取得する工程と、
前記取得部によって取得された前記発電部の内部における状態量の適性を判断するとともに、該判断結果に基づいて前記発電部へ供給される前記燃料ガスが搬送される燃料ガス供給管に設けられた制御弁の開閉量を制御する工程と
を有する発電システムの制御方法。
【請求項10】
酸化性ガスと燃料ガスとを反応させて発電を行う発電部を備える燃料電池を備える発電システムの制御プログラムであって、
前記発電部へ供給される前記燃料ガスの流路とされた燃料ガス供給管に設けられた密度計測部によって、前記燃料ガスの密度を計測する処理と、
前記密度計測部の計測値に基づいて前記燃料ガス供給管に設けられた制御弁の開閉量を制御する処理と
をコンピュータに実行させる発電システムの制御プログラム。
【請求項11】
酸化性ガスと燃料ガスとを反応させて発電を行う発電部を備える燃料電池を備える発電システムの制御プログラムであって、
前記発電部に設けられた取得部によって、前記発電部の内部における状態量を取得する処理と、
前記取得部によって取得された前記発電部の内部における状態量の適性を判断するとともに、該判断結果に基づいて前記発電部へ供給される前記燃料ガスが搬送される燃料ガス供給管に設けられた制御弁の開閉量を制御する処理と
をコンピュータに実行させる発電システムの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発電システム、これを備えた発電プラント、発電システムの制御方法及び発電システムのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスと酸化性ガスとを化学反応させることにより発電する燃料電池は、優れた発電効率及び環境対応等の特性を有している。このうち、固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)は、電解質としてイットリア安定化ジルコニアなどのセラミックスが用いられ、水素、都市ガス、天然ガス、石油、メタノール、及び炭素含有原料をガス化設備により製造したガス化ガス、バイオマスを原料としたバイオガス等のガスなどを燃料ガスとして供給して、およそ700℃~1000℃の高温雰囲気で反応させて発電を行う。
また、水を電気化学的に分解して水素および酸素を製造する電解セルは二酸化炭素の排出を伴わない水素製造法であり優れた環境特性を有している。このうち、固体酸化物形電解セル(Solid Oxide Electrolysis Cell:SOEC)は、電解質としてイットリア安定化ジルコニアなどのセラミックスが用いられ、高温の水蒸気を原料とするため他の電解セルに比べ高い効率で水素の製造が可能である。また、脱炭素化を目的として二酸化炭素(CO2)を原料とし電解水素を還元剤として利用し、直接一酸化炭素(CO)を製造する共電解も可能である。
さらに固体酸化物形電気化学セルには燃料電池としての発電機能と、外部から電力と高温水蒸気を供給して逆反応により水素および酸素を製造する機能を備えたリバーシブル固体酸化物形電気化学セル(Reversible Solid Oxide Electrochemical Cell:RSOC)として使用可能なものもある。
【0003】
特許文献1には、メタン濃度の不安定なバイオガスの組成の変化に対応し、安定したSOFCの稼働を行うために、稼働中の複合発電システムおけるバイオガスの組成を計測し、計測値に基づいてバイオガスの供給量を制御する制御装置が記載されている。バイオガスの組成の計測とは、具体的には、バイオガス中のメタン濃度を計測することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-88324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バイオガスの組成を計測する機器(以下、「組成計」という)は高価であるため、発電システムに取り付ける場合、コストがかかってしまう。また、組成計は一定の計測周期で計測しており、組成計によってバイオガスの組成を計測する場合、1回の計測において約10分程度の時間を要する。このため、バイオガスの組成の計測値に基づいてバイオガスの供給量を制御したとしても、連続的に変化するバイオガスの組成の変化に対する追従性が低く、バイオガスの供給量の制御の精度が低くなってしまう。
【0006】
バイオガスの組成の計測間隔を短時間化するためには、組成計の設置数を増やすことで可能ではあるが、設置スペースを確保する必要があることや、コストが増加してしまうことから、現実的ではなかった。このため、組成計を用いてバイオガスの供給量を制御する場合には、連続的に変化するバイオガスの組成を把握すること、及び精度の高いバイオガスの供給量制御を実現することが困難な場合があった。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、燃料ガスに含まれる炭化水素の供給量に基づく制御の即応性を高めるとともに、効率的に運転することができる発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の幾つかの実施形態における一態様に係る発電システムは、酸化性ガスと燃料ガスとを反応させて発電を行う発電部を備える燃料電池と、前記燃料電池へ供給される前記燃料ガスの流路とされた燃料ガス供給管に設けられ、前記燃料ガスの密度を計測する密度計測部と、前記燃料ガス供給管に設けられるとともに、前記燃料ガスの炭化水素の供給量を制御するために開閉量が調整される制御弁と、前記密度計測部の計測値に基づいて前記制御弁の開閉量を制御する制御部とを備える。
【0009】
本開示の幾つかの実施形態における一態様に係る発電システムは、酸化性ガスと燃料ガスとを反応させて発電を行う発電部を備える燃料電池と、前記発電部に設けられ、前記発電部の内部における状態量を取得する取得部と、前記発電部へ供給される前記燃料ガスが搬送される燃料ガス供給管に設けられるとともに、前記燃料ガスの炭化水素の供給量を変更するために開閉量が調整される制御弁と、前記取得部によって取得された前記発電部の内部における状態量の適性を判断するとともに、該判断結果に基づいて前記制御弁の開閉量を制御する制御部とを備える。
【0010】
本開示の幾つかの実施形態における一態様に係る発電プラントは、上記発電システムを備える。
【0011】
本開示の幾つかの実施形態における一態様に係る発電システムの制御方法は、酸化性ガスと燃料ガスとを反応させて発電を行う発電部を備える燃料電池を備える発電システムの制御方法であって、前記発電部へ供給される燃料ガスの流路とされた燃料ガス供給管に設けられた密度計測部によって、前記燃料ガスの密度を計測する工程と、前記密度計測部の計測値に基づいて前記燃料ガス供給管に設けられた制御弁の開閉量を制御する工程とを有する。
【0012】
本開示の幾つかの実施形態における一態様に係る発電システムの制御方法は、酸化性ガスと燃料ガスとを反応させて発電を行う発電部を備える燃料電池を備える発電システムの制御方法であって、前記発電部に設けられた取得部によって、前記発電部の内部における状態量を取得する工程と、前記取得部によって取得された前記発電部の内部における状態量の適性を判断するとともに、該判断結果に基づいて前記発電部へ供給される前記燃料ガスが搬送される燃料ガス供給管に設けられた制御弁の開閉量を制御する工程とを有する。
【0013】
本開示の幾つかの実施形態における一態様に係る発電システムの制御プログラムは、酸化性ガスと燃料ガスとを反応させて発電を行う発電部を備える燃料電池を備える発電システムの制御プログラムであって、前記発電部へ供給される前記燃料ガスの流路とされた燃料ガス供給管に設けられた密度計測部によって、前記燃料ガスの密度を計測する処理と、前記密度計測部の計測値に基づいて前記燃料ガス供給管に設けられた制御弁の開閉量を制御する処理とをコンピュータに実行させる。
【0014】
本開示の幾つかの実施形態における一態様に係る発電システムの制御プログラムは、複酸化性ガスと燃料ガスとを反応させて発電を行う発電部を備える燃料電池を備える発電システムの制御プログラムであって、前記発電部に設けられた取得部によって、前記発電部の内部における状態量を取得する処理と、前記取得部によって取得された前記発電部の内部における状態量の適性を判断するとともに、該判断結果に基づいて前記発電部へ供給される前記燃料ガスが搬送される燃料ガス供給管に設けられた制御弁の開閉量を制御する処理とをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、燃料ガスに含まれる炭化水素の供給量に基づく制御の即応性を高めるとともに、発電システムを効率的に運転することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の一実施形態に係る電気化学セルスタックを示した部分縦断面図である。
図2】本開示の一実施形態に係る電気化学セルモジュールを示した分解斜視図である。
図3】本開示の一実施形態に係る電気化学セルカートリッジを示した縦断面図である。
図4】本開示の一実施形態に係るSOFC複合発電システムの概略構成図である。
図5】本開示の一実施形態に係るSOFCへ供給される燃料ガスの炭化水素の供給量の制御に関する模式図である。
図6】本開示の一実施形態に係る燃料ガス密度と燃料ガスに含まれる炭化水素の濃度との関係を示すグラフである。
図7】本開示の一実施形態に係る燃料ガス密度と、燃料ガスの供給量の補正係数との関係を示すグラフである。
図8】本開示の一実施形態に係るSOFCカートリッジの長手方向の中央部付近における、最高温度と最低温度との温度差と、燃料ガスの供給量の補正係数との関係を示すグラフである。
図9】本開示の一実施形態に係る発電室における燃料ガス供給側の温度と、燃料ガスの供給量の補正係数との関係を示すグラフである。
図10図6に示した各ポイントにおいて、燃料ガスの供給量を制御するために用いる状態量の推移を示したタイミングチャートである。
図11】本開示の一実施形態に係るSOFCへ供給される燃料ガスの供給量の補正制御に関する手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本開示に係る発電システム、これを備えた発電プラント、発電システムの制御方法及び発電システムの制御プログラムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
以下においては、説明の便宜上、紙面を基準として「上」及び「下」の表現を用いて説明した各構成要素の位置関係は、各々鉛直上方側、鉛直下方側を示すものである。また、本実施形態では、上下方向と水平方向で同様な効果を得られるものは、紙面における上下方向が必ずしも鉛直上下方向に限定することなく、例えば鉛直方向に直交する水平方向に対応してもよい。
【0019】
また、以下においては、固体酸化物形電気化学セルのセルスタックとして筒状の円筒形固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例として説明するが、必ずしもこの限りである必要はなく、例えば平板形のセルスタックであってもよい。基体上に電気化学セルを形成するが、基体ではなく電極(燃料極もしくは空気極)が厚く形成されて、基体を兼用したものでも良い。
【0020】
まず、図1を参照して本実施形態に係る一例として、基体管を用いる円筒形セルスタックについて説明する。基体管を用いない場合は、例えば燃料極を厚く形成して基体管を兼用してもよく、基体管の使用に限定されることはない。また、本実施形態での基体管は円筒形状を用いたもので説明するが、基体管は筒状であればよく、必ずしも断面が円形に限定されなく、例えば楕円形状でもよい。円筒の周側面を垂直に押し潰した扁平円筒(Flat tubular)等のセルスタックでもよい。ここで、図1は、実施形態に係るセルスタックの一態様を示すものである。セルスタック101は、一例として円筒形状の基体管103と、基体管103の外周面に複数形成された電気化学単セル105と、隣り合う電気化学単セル105の間に形成されたインターコネクタ107とを備える。電気化学単セル105は、燃料極109と固体電解質膜111と空気極113とが積層して形成されている。また、セルスタック101は、基体管103の外周面に形成された複数の電気化学単セル105の内、基体管103の軸方向において最も端の一端に形成された電気化学単セル105の空気極113に、インターコネクタ107を介して電気的に接続されたリード膜115を備え、最も端の他端に形成された電気化学単セル105の燃料極109に電気的に接続されたリード膜115を備える。
【0021】
基体管103は、多孔質材料からなり、例えば、CaO安定化ZrO2(CSZ)、CSZと酸化ニッケル(NiO)との混合物(CSZ+NiO)、又はY2O3安定化ZrO2(YSZ)、又はMgAl2O4などを主成分とされる。この基体管103は、電気化学単セル105とインターコネクタ107とリード膜115とを支持すると共に、基体管103の内周面に供給される燃料ガスを基体管103の細孔を介して基体管103の外周面に形成される燃料極109に拡散させるものである。
【0022】
燃料極109は、Niとジルコニア系電解質材料との複合材の酸化物で構成され、例えば、Ni/YSZが用いられる。燃料極109の厚さは50μm~250μmであり、燃料極109はスラリーをスクリーン印刷して形成されてもよい。この場合、燃料極109は、燃料極109の成分であるNiが燃料ガスに対して触媒作用を備える。この触媒作用は、基体管103を介して供給された燃料ガス、例えば、メタン(CH4)と水蒸気との混合ガスを反応させ、水素(H2)と一酸化炭素(CO)に改質するものである。また、燃料極109は、改質により得られる水素(H2)及び一酸化炭素(CO)と、固体電解質膜111を介して供給される酸素イオン(O2-)とを固体電解質膜111との界面付近において電気化学的に反応させて水(H2O)及び二酸化炭素(CO2)を生成するものである。なお、電気化学単セル105は、この時、酸素イオンから放出される電子によって発電する。
固体酸化物形電気化学セルの燃料極109に供給し利用できる燃料ガスとしては、水素(H2)および一酸化炭素(CO)、メタン(CH4)などの炭化水素系ガス、都市ガス、天然ガスのほか、石油、メタノール、及び石炭などの炭素含有原料をガス化設備により製造したガス化ガス、バイオマスを原料としたバイオガスなどが挙げられる。
【0023】
固体電解質膜111は、ガスを通しにくい気密性と、高温で高い酸素イオン導電性とを備えるYSZが主として用いられる。この固体電解質膜111は、空気極で生成される酸素イオン(O2-)を燃料極に移動させるものである。燃料極109の表面上に位置する固体電解質膜111の膜厚は10μm~100μmであり固体電解質膜111はスラリーをスクリーン印刷して形成されてもよい。
【0024】
空気極113は、例えば、LaSrMnO3系酸化物、又はLaCoO3系酸化物で構成され、空気極113はスラリーをスクリーン印刷またはディスペンサを用いて塗布される。この空気極113は、固体電解質膜111との界面付近において、供給される空気等の酸化性ガス中の酸素を解離させて外部より供給された電子と結合し酸素イオン(O2-)を生成するものである。
空気極113は2層構成とすることもできる。この場合、固体電解質膜111側の空気極層(空気極中間層)は高いイオン導電性を示し、触媒活性に優れる材料で構成される。空気極中間層上の空気極層(空気極導電層)は、SmをドープしたセリアやSr及びCaドープLaMnO3で表されるペロブスカイト型酸化物で構成されても良い。こうすることにより、発電性能をより向上させることができる。
酸化性ガスとは,酸素を略15%~30%含むガス であり、代表的には空気が好適であるが、空気以外にも燃焼排ガスと空気の混合ガスや、酸素と空気の混合ガスなどが使用可能である。
【0025】
インターコネクタ107は、SrTiO3系などのM1-xLxTiO3(Mはアルカリ土類金属元素、Lはランタノイド元素)で表される導電性ペロブスカイト型酸化物から構成され、スラリーをスクリーン印刷する。インターコネクタ107は、燃料ガスと酸化性ガスとが混合しないように緻密な膜となっている。また、インターコネクタ107は、酸化雰囲気と還元雰囲気との両雰囲気下で安定した耐久性と電気導電性を備える。このインターコネクタ107は、隣り合う電気化学単セル105において、一方の電気化学単セル105の空気極113と他方の電気化学単セル105の燃料極109とを電気的に接続し、隣り合う電気化学単セル105同士を直列に接続するものである。
【0026】
リード膜115は、電子伝導性を備えること、及びセルスタック101を構成する他の材料との熱膨張係数が近いことが必要であることから、Ni/YSZ等のNiとジルコニア系電解質材料との複合材やSrTiO3系などのM1-xLxTiO3(Mはアルカリ土類金属元素、Lはランタノイド元素)で構成されている。このリード膜115は、インターコネクタ107により直列に接続される複数の電気化学単セル105で発電された直流電力をセルスタック101の端部付近まで導出するものである。
【0027】
次に、図2図3とを参照して本実施形態に係る電気化学セルカートリッジ及び電気化学セルモジュールについて説明する。ここで、図2は、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)モジュールの一態様を示すものである。また、図3は、本実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)カートリッジの一態様の断面図を示すものである。
【0028】
SOFCモジュール(電気化学セルモジュール)201は、図2に示すように、例えば、複数のSOFCカートリッジ(電気化学セルカートリッジ)203と、これら複数のSOFCカートリッジ203を収納するモジュール容器205とを備える。なお、図2には円筒形のSOFCのセルスタック101を例示しているが、必ずしもこの限りである必要はなく、例えば平板形のセルスタックであってもよい。また、SOFCモジュール201は、燃料ガス供給管207と複数の燃料ガス供給枝管207a及び燃料ガス排出管209と複数の燃料ガス排出枝管209aとを備える。また、SOFCモジュール201は、酸化性ガス供給管(不図示)と酸化性ガス供給枝管(不図示)及び酸化性ガス排出管(不図示)と複数の酸化性ガス排出枝管(不図示)とを備える。
【0029】
燃料ガス供給管207は、モジュール容器205の内部に設けられ、SOFCモジュール201の発電量に対応して所定ガス組成と所定流量の燃料ガスを供給する燃料ガス供給部に接続されると共に、複数の燃料ガス供給枝管207aに接続されている。この燃料ガス供給管207は、上述の燃料ガス供給部から供給される所定流量の燃料ガスを、複数の燃料ガス供給枝管207aに分岐して導くものである。また、燃料ガス供給枝管207aは、燃料ガス供給管207に接続されると共に、複数のSOFCカートリッジ203に接続されている。この燃料ガス供給枝管207aは、燃料ガス供給管207から供給される燃料ガスを複数のSOFCカートリッジ203に略均等の流量で導き、複数のSOFCカートリッジ203の発電性能を略均一化させるものである。
【0030】
燃料ガス排出枝管209aは、複数のSOFCカートリッジ203に接続されると共に、燃料ガス排出管209に接続されている。この燃料ガス排出枝管209aは、SOFCカートリッジ203から排出される排燃料ガスを燃料ガス排出管209に導くものである。また、燃料ガス排出管209は、複数の燃料ガス排出枝管209aに接続されると共に、一部がモジュール容器205の外部に配置されている。この燃料ガス排出管209は、燃料ガス排出枝管209aから略均等の流量で導出される排燃料ガスをモジュール容器205の外部に導くものである。
【0031】
モジュール容器205は、内部の圧力が大気圧~約3MPa、内部の温度が大気温度~約550℃で運用されるので、耐圧性と酸化性ガス中に含まれる酸素などの酸化剤に対する耐食性を保有する材質が利用される。例えばSUS304などのステンレス系材が好適である。
【0032】
ここで、本実施形態においては、複数のSOFCカートリッジ203が集合化されてモジュール容器205に収納される態様について説明しているが、これに限られず例えば、SOFCカートリッジ203が集合化されずにモジュール容器205内に収納される態様とすることもできる。
【0033】
SOFCカートリッジ203は、図3に示す通り、複数のセルスタック101と、発電室(発電部)215と、燃料ガス供給ヘッダ217と、燃料ガス排出ヘッダ219と、酸化性ガス(空気)供給ヘッダ221と、酸化性ガス排出ヘッダ223とを備える。また、SOFCカートリッジ203は、上部管板225aと、下部管板225bと、上部断熱体227aと、下部断熱体227bとを備える。なお、本実施形態においては、SOFCカートリッジ203は、燃料ガス供給ヘッダ217と燃料ガス排出ヘッダ219と酸化性ガス供給ヘッダ221と酸化性ガス排出ヘッダ223とが図3のように配置されることで、燃料ガスと酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れる構造となっているが、必ずしもこの必要はなく、例えば、セルスタック101の内側と外側とを平行して流れる、または酸化性ガスがセルスタック101の長手方向と直交する方向へ流れるようにしても良い。
【0034】
発電室215は、上部断熱体227aと下部断熱体227bとの間に形成された領域である。この発電室215は、セルスタック101の電気化学単セル105が配置された領域であり、燃料ガスと酸化性ガスとを電気化学的に反応させて発電を行う領域である。計測また、この発電室215のセルスタック101長手方向の中央部付近での温度を、温度計測部(熱電対などの温度センサ)で監視してもよく、SOFCモジュール201の定常運転時に、およそ700℃~1000℃の高温雰囲気となる。
【0035】
燃料ガス供給ヘッダ217は、SOFCカートリッジ203の上部ケーシング229aと上部管板225aとに囲まれた領域であり、上部ケーシング229aの上部に設けられた燃料ガス供給孔231aによって、燃料ガス供給枝管207aと連通されている。また、複数のセルスタック101は、上部管板225aとシール部材237aにより接合されており、燃料ガス供給ヘッダ217は、燃料ガス供給枝管207aから燃料ガス供給孔231aを介して供給される燃料ガスを、複数のセルスタック101の基体管103の内部に略均一流量で導き、複数のセルスタック101の発電性能を略均一化させるものである。
【0036】
燃料ガス排出ヘッダ219は、SOFCカートリッジ203の下部ケーシング229bと下部管板225bとに囲まれた領域であり、下部ケーシング229bに備えられた燃料ガス排出孔231bによって、図示しない燃料ガス排出枝管209aと連通されている。また、複数のセルスタック101は、下部管板225bとシール部材237bにより接合されており、燃料ガス排出ヘッダ219は、複数のセルスタック101の基体管103の内部を通過して燃料ガス排出ヘッダ219に供給される排燃料ガスを集合して、燃料ガス排出孔231bを介して燃料ガス排出枝管209aに導くものである。
【0037】
SOFCモジュール201の発電量に対応して所定ガス組成と所定流量の酸化性ガスを酸化性ガス供給枝管へと分岐して、複数のSOFCカートリッジ203へ供給する。酸化性ガス供給ヘッダ221は、SOFCカートリッジ203の下部ケーシング229bと下部管板225bと下部断熱体227bとに囲まれた領域であり、下部ケーシング229bの側面に設けられた酸化性ガス供給孔233aによって、図示しない酸化性ガス供給枝管と連通されている。この酸化性ガス供給ヘッダ221は、図示しない酸化性ガス供給枝管から酸化性ガス供給孔233aを介して供給される所定流量の酸化性ガスを、後述する酸化性ガス供給隙間235aを介して発電室215に導くものである。
【0038】
酸化性ガス排出ヘッダ223は、SOFCカートリッジ203の上部ケーシング229aと上部管板225aと上部断熱体227aとに囲まれた領域であり、上部ケーシング229aの側面に設けられた酸化性ガス排出孔233bによって、図示しない酸化性ガス排出枝管と連通されている。この酸化性ガス排出ヘッダ223は、発電室215から、後述する酸化性ガス排出隙間235bを介して酸化性ガス排出ヘッダ223に供給される排酸化性ガスを、酸化性ガス排出孔233bを介して図示しない酸化性ガス排出枝管に導くものである。
【0039】
上部管板225aは、上部ケーシング229aの天板と上部断熱体227aとの間に、上部管板225aと上部ケーシング229aの天板と上部断熱体227aとが略平行になるように、上部ケーシング229aの側板に固定されている。また上部管板225aは、SOFCカートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応した複数の孔を有し、該孔にはセルスタック101が夫々挿入されている。この上部管板225aは、複数のセルスタック101の一方の端部をシール部材237a及び接着部材のいずれか一方又は両方を介して気密に支持すると共に、燃料ガス供給ヘッダ217と酸化性ガス排出ヘッダ223とを隔離するものである。
【0040】
上部断熱体227aは、上部ケーシング229aの下端部に、上部断熱体227aと上部ケーシング229aの天板と上部管板225aとが略平行になるように配置され、上部ケーシング229aの側板に固定されている。また、上部断熱体227aには、SOFCカートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応して、複数の孔が設けられている。この孔の直径はセルスタック101の外径よりも大きく設定されている。上部断熱体227aは、この孔の内面と、上部断熱体227aに挿通されたセルスタック101の外面との間に形成された酸化性ガス排出隙間235bを備える。
【0041】
この上部断熱体227aは、発電室215と酸化性ガス排出ヘッダ223とを仕切るものであり、上部管板225aの周囲の雰囲気が高温化し強度低下や酸化性ガス中に含まれる酸化剤による腐食が増加することを抑制する。また、上部管板225a等が発電室215内の高温に晒されて温度差による上部管板225a等の熱変形を抑制するために、Ni基合金などの高温耐久性のある金属材料を用いてもよい。また、上部断熱体227aは、発電室215を通過して高温に晒された排酸化性ガスを、酸化性ガス排出隙間235bを通過させて酸化性ガス排出ヘッダ223に導くものである。
【0042】
本実施形態によれば、上述したSOFCカートリッジ203の構造により、燃料ガスと排酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れるものとなっている。このことにより、排酸化性ガスは、基体管103の内部を通って発電室215に供給される燃料ガスとの間で熱交換がなされ、金属材料から成る上部管板225a等が座屈などの変形をしない温度に冷却されて酸化性ガス排出ヘッダ223に供給される。また、燃料ガスは、発電室215から排出される排酸化性ガスとの熱交換により昇温され、発電室215に供給される。その結果、ヒーター等を用いることなく発電に適した温度に予熱昇温された燃料ガスを発電室215に供給することができる。
【0043】
下部管板225bは、下部ケーシング229bの底板と下部断熱体227bとの間に、下部管板225bと下部ケーシング229bの底板と下部断熱体227bとが略平行になるように下部ケーシング229bの側板に固定されている。また下部管板225bは、SOFCカートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応した複数の孔を有し、該孔にはセルスタック101が夫々挿入されている。この下部管板225bは、複数のセルスタック101の他方の端部をシール部材237b及び接着部材のいずれか一方又は両方を介して気密に支持すると共に、燃料ガス排出ヘッダ219と酸化性ガス供給ヘッダ221とを隔離するものである。
【0044】
下部断熱体227bは、下部ケーシング229bの上端部に、下部断熱体227bと下部ケーシング229bの底板と下部管板225bとが略平行になるように配置され、下部ケーシング229bの側板に固定されている。また、下部断熱体227bには、SOFCカートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応して、複数の孔が設けられている。この孔の直径はセルスタック101の外径よりも大きく設定されている。下部断熱体227bは、この孔の内面と、下部断熱体227bに挿通されたセルスタック101の外面との間に形成された酸化性ガス供給隙間235aを備える。
【0045】
この下部断熱体227bは、発電室215と酸化性ガス供給ヘッダ221とを仕切るものであり、下部管板225bの周囲の雰囲気が高温化し強度低下や酸化性ガス中に含まれる酸化剤による腐食が増加することを抑制する。下部管板225b等はインコネルなどの高温耐久性のある金属材料から成るが、下部管板225b等が高温に晒されて下部管板225b等内の温度差が大きくなることで熱変形することを防ぐものである。また、下部断熱体227bは、酸化性ガス供給ヘッダ221に供給される酸化性ガスを、酸化性ガス供給隙間235aを通過させて発電室215に導くものである。
【0046】
本実施形態によれば、上述したSOFCカートリッジ203の構造により、排燃料ガスと酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れるものとなっている。このことにより、基体管103の内部を通って発電室215を通過した排燃料ガスは、発電室215に供給される酸化性ガスとの間で熱交換がなされ、金属材料から成る下部管板225b等が座屈などの変形をしない温度に冷却されて燃料ガス排出ヘッダ219に供給される。また、酸化性ガスは排燃料ガスとの熱交換により昇温され、発電室215に供給される。その結果、ヒーター等を用いることなく発電に必要な温度に昇温された酸化性ガスを発電室215に供給することができる。
【0047】
発電室215で発電された直流電力は、複数の電気化学単セル105に設けたNi/YSZ等からなるリード膜115によりセルスタック101の端部付近まで導出した後に、SOFCカートリッジ203の集電部材(不図示)に集電板(不図示)を介して集電して、各SOFCカートリッジ203の外部へと取り出される。前記集電部材によってSOFCカートリッジ203の外部に導出された直流電力は、各SOFCカートリッジ203の発電電力を所定の直列数および並列数へと相互に接続され、SOFCモジュール201の外部へと導出されて、図示しないパワーコンディショナ等の電力変換装置(インバータなど)により所定の交流電力へと変換されて、電力供給先(例えば、負荷設備や電力系統)へと供給される。
【0048】
また、図2に例示するように、SOFCモジュール201の内部には、発電室215の内部の温度を計測するための複数の温度計測部TM1~TM4が設けられている。ここで、発電室215の内部とは、SOFCカートリッジ203の長手方向において、上部断熱体227aと下部断熱体227bの間の領域を意味し、この領域内の所定の位置に温度計測部が設けられることによって発電室215の内部の温度が計測される。また、発電室215の内部に設けられた複数の温度計測部TM1~TM4は、例えば、熱電対などの温度センサであり、設置箇所周辺の温度を計測する。また、複数の温度計測部TM1~TM4は、例えば、発電室215における燃料ガスの供給側に設けられる第1温度計測部TM1と、SOFCカートリッジ203の長手方向の中央部付近に設けられる第2温度計測部TM2~第4温度計測部TM4の3つである。また、SOFCカートリッジ203の1つにつき長手方向の中央部付近に設けられる温度計測部を1つずつ設けて温度計測部TM1~TM5(図2においてTM5は不図示)としてもよい。なお、図2に示すように、複数のSOFCカートリッジ203を備える場合には、長手方向の中央部付近に設けられる温度計測部は2つ以上のSOFCカートリッジ203に設けることが好ましい。
なお、複数の温度計測部の設置位置及び個数は、発電室215を構成するカートリッジの数やSOFCモジュールの構成に応じて適宜変更されてもよい。
【0049】
本開示の一実施形態に係るSOFC複合発電システムの概略構成について説明する。ここではガスタービンに数十から数百kW級のマイクロガスタービン(以下「MGT」と言う。)を用いたSOFC複合発電システムについて説明するが、ガスタービンの出力は数十から数百kWに限定されず、複合発電の出力に応じて任意に選定されてよい。
図4は、本開示の一実施形態に係るSOFC複合発電システム(以下「発電システム」という。)310の概略構成図である。
図4に示すように、発電システム310は、マイクロガスタービン(以下「MGT」という)311、発電機312、及びSOFC313を備えている。SOFC313は、図示しないSOFCモジュールが1つまたは複数が組み合わされて構成され、以降は単に「SOFC」と記載する。この発電システム310は、MGT311による発電と、SOFC313による発電とを組み合わせることで、高い発電効率を得るように構成されている。
【0050】
MGT311は、圧縮機321、燃焼器322、タービン323を備えており、圧縮機321とタービン323とは回転軸324により一体的に回転可能に連結されている。後述するタービン323が回転することで圧縮機321が回転駆動する。本実施形態は酸化性ガスとして空気を用いた例であり、圧縮機321は、空気取り込みライン325から取り込んだ空気Aを圧縮する。
燃焼器322には、第1酸化性ガス供給ライン326を介して圧縮機321からの空気Aの少なくとも一部である圧縮空気A1が供給されるとともに、第1燃料ガス供給ライン351を介して燃料ガスL1が供給される。第1酸化性ガス供給ライン326には、燃焼器322へ供給する空気A1の空気量を調整するための制御弁327が設けられ、第1燃料ガス供給ライン351には、燃焼器322へ供給する燃料ガスの供給量を調整するための制御弁352が設けられている。更に、燃焼器322には、後述するSOFC313の燃料ガス再循環ライン349を循環する排燃料ガスL3の一部が排燃料ガス供給ライン345を通じて供給される。排燃料ガス供給ライン345には、燃焼器322に供給する排燃料ガス量を調整するための制御弁347が設けられている。更に、燃焼器322には、後述する排酸化性ガス供給ライン334を通じてSOFC313の空気極113で用いられた排空気A3の一部が供給される。
【0051】
燃焼器322は、燃料ガスL1、空気Aの一部(空気A1)、排燃料ガスL3、及び排空気A3を混合して燃焼させ、燃焼ガスGを生成する。燃焼ガスGは燃焼ガス供給ライン328を通じてタービン323に供給される。タービン323は、燃焼ガスGが断熱膨張することにより回転し、排ガスが燃焼排ガスライン329から排出される。発電機312は、タービン323と同軸上に設けられており、タービン323が回転駆動することで発電する。
【0052】
燃焼器322に供給する燃料ガスL1及び後述する燃料ガスL2は可燃性ガスであり、例えば、液化天然ガス(LNG)を気化させたガスあるいは天然ガス、都市ガス、水素(H2)及び一酸化炭素(CO)、メタン(CH4)等の炭化水素ガス、及び炭素質原料(石油や石炭等)のガス化設備により製造されたガス及びバイオマスを原料としたバイオガス等が用いられる。燃料ガスとは、予め発熱量が略一定に調整された燃料ガスを意味する。
【0053】
熱交換器330は、タービン323から排出された排ガスと圧縮機321から供給される空気Aとの間で熱交換を行う。排ガスは、空気Aとの熱交換で冷却された後に、図示しない煙突を通して外部に放出される。
【0054】
SOFC313は、還元剤として燃料ガスL2と、酸化剤として空気A2とが供給されることで、所定の作動温度にて反応して発電を行う。このSOFC313は、図示しないSOFCモジュールから構成され、SOFCモジュールのモジュール容器内に設けた複数のセルスタックの集合体が収容されており、図示しないセルスタックには、燃料極109と空気極113と固体電解質膜111を備えている。
SOFC313は、空気極113に空気A2が供給され、燃料極109に燃料ガスL2が供給されることで発電して、図示しないパワーコンディショナ等の電力変換装置(インバータなど)により所定の交流電力へと変換される。
本実施形態では、SOFC313に供給される酸化性ガスとして、圧縮機321によって圧縮された空気Aの少なくとも一部(空気A2)を採用する場合を例示して説明する。
【0055】
SOFC313には、第1酸化性ガス供給ライン326から分岐した第2酸化性ガス供給ライン331を通じて酸化性ガスとして空気A2が空気極113の図示しない酸化性ガス導入部に供給される。この第2酸化性ガス供給ライン331には、供給する空気A2の流量を調整するための制御弁335が設けられている。また、第1酸化性ガス供給ライン326において、第2酸化性ガス供給ライン331の分岐点よりも空気A2の上流側(換言すると、圧縮機321側)には、熱交換器330が設けられている。熱交換器330において、空気Aは、燃焼排ガスライン329から排出される排ガスとの間で熱交換されて昇温される。更に、第2酸化性ガス供給ライン331には、熱交換器330をバイパスするバイパスライン332が設けられている。バイパスライン332には、制御弁336が設けられ、空気Aのバイパス流量が調整可能とされている。制御弁335、336の開度が後述する制御装置(制御部)380によって制御されることで、熱交換器330を通過する空気Aと熱交換器330をバイパスする空気Aとの流量割合が調整され、空気Aの一部である第2酸化性ガス供給ライン331を通じてSOFC313に供給される空気A2の温度が調整される。SOFC313に供給される空気A2の温度は、SOFC313を構成する図示しないSOFCモジュール内部の各構成機器の材料に損傷を与えないよう温度の上限が制限されている。
【0056】
更に、第2酸化性ガス供給ライン331には、可燃性ガスとして燃料ガスL2を供給する空気極燃料供給ライン371が接続されている。空気極燃料供給ライン371には、第2酸化性ガス供給ライン331へ供給する燃料ガス量を調整するための制御弁372が設けられている。制御弁372の弁開度が後述する制御装置380によって制御されることにより、空気A2に添加される燃料ガスL2の供給量が調整される。空気A2に添加される燃料ガスL2の量は、可燃限界濃度以下で供給され、より好ましくは3体積%以下で供給される。
【0057】
SOFC313には、空気極113で用いられた排空気A3を排出する排酸化性ガス排出ライン333が接続されている。この排酸化性ガス排出ライン333には、燃焼器322に排空気A3を供給するための排酸化性ガス供給ライン334が接続されている。排酸化性ガス供給ライン334には、SOFC313とMGT311との間の系統を切り離すための制御弁(もしくは遮断弁)338が設けられている。
また、排酸化性ガス排出ライン333には、空気極113で用いられた排空気A3を系統外へ排出する排酸化性ガス量を調整するための制御弁(もしくは遮断弁)337が設けられている。
【0058】
SOFC313には、更に、燃料ガスL2を燃料極109の図示しない燃料ガス導入部に供給する第2燃料ガス供給ライン341と、燃料極109で反応に用いられた後の排燃料ガスL3を排出する排燃料ガスライン343とが接続されている。第2燃料ガス供給ライン341には、SOFC313及び燃料極109へ供給される燃料ガス密度(燃料ガスの密度)を計測する密度計測部DMが設けられている。ここで、密度計測部DMは、例えば、密度計である。また、第2燃料ガス供給ライン341には、燃料極109に供給する燃料ガスL2の流量を調整するための制御弁342が設けられ、排燃料ガスライン343には燃料極109で反応に用いられた後の排燃料ガスL3を系統外へ排出する排燃料ガス量を調整するための制御弁(もしくは遮断弁)346が設けられている。排燃料ガスライン343の制御弁346と、排酸化性ガス排出ライン333の制御弁337を制御することにより、排燃料ガスL3もしくは排空気A3を系外に排出することで過剰になった圧力を素早く調整することができる。また、SOFC313の燃料極109と空気極113の差圧(以下、燃料空気差圧)は、燃料極109側が所定の圧力範囲で高くなるように、制御弁347により制御する。また、排燃料ガスライン343には、排燃料ガスL3をSOFC313の燃料極109の燃料ガス導入部へと再循環させるための燃料ガス再循環ライン349が接続されている。燃料ガス再循環ライン349には、排燃料ガスL3を再循環させるための再循環ブロワ348が設けられている。
【0059】
更に、燃料ガス再循環ライン349には、燃料極109に燃料ガスL2を改質するための純水を供給する純水供給ライン361が設けられている。純水供給ライン361にはポンプ362が設けられている。ポンプ362の吐出流量が制御装置380によって制御されることにより、燃料極109に供給される純水量が調整される。
【0060】
制御装置380は、例えば、発電システム(複合発電システム)310に備える圧力計測部及び各温度計測部、流量計測部などの計測値等に基づき、各遮断弁及び各流量調整弁の制御を行う。
制御装置380は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0061】
本実施形態ではSOFC複合発電システムについて説明する。燃料ガス中の炭素に対する水蒸気のモル比率をS/C(スチームカーボン比)という。SOFC313の燃料極109側の系統入口付近において、S/Cは燃料の内部改質を行うためには量論的に1.0以上が必要で、更に図示しないセルスタックの付近にてS/Cが低くなる領域があると炭素が析出する恐れがある。炭素析出防止と改質率促進のためにS/C≧3.0であることが好ましい。一方、S/Cが高すぎると、最終的に発電システム310の系外に排出される排ガス中の水蒸気含有量が増加し、この潜熱分が無駄な熱量として系外に排出されてシステム効率が低下する。この為、SOFCの運転状態に合わせて過剰とならない適切な量のS/Cを設定できることが望ましく、SOFC313の定格運転時では、例えばS/Cが3.0~5.0、好ましくは3.5~5.0となるよう設定されている。
燃料ガス再循環ライン349を経由した排燃料ガスL3の再循環を行う場合においては、第2燃料ガス供給ライン341によりSOFC313に供給される燃料ガスL2のS/Cが規定値よりも低いとき、第2燃料ガス供給ライン341に純水供給ライン361を介して純水を供給し、純水が第2燃料ガス供給ライン341内で水蒸気となって供給されることによって、不足する水蒸気を補う。また、SOFC313の起動時又は停止動作時など、発電による水蒸気の発生がない場合はS/Cが低下し炭素析出の恐れがあるため第2燃料ガス供給ライン341に純水供給ライン361を介して純水を供給する。
【0062】
ここで、MGTを用いた本実施形態の発電システム310の起動方法について説明する。発電システム310を起動する場合、MGT311が起動した後にSOFC313が起動する。発電システム310の起動時において、制御装置380は、まずMGT311を起動させ、MGT311の出力がある一定の負荷で安定してから、圧縮機321から供給される圧縮空気A1の一部(空気A2)をSOFC313に供給することで、SOFC313の空気極113を加圧していくことができる。
【0063】
まず、MGT311の起動では、圧縮機321が空気Aを圧縮し、燃焼器322が圧縮空気A1と燃料ガスL1とを混合して燃焼し、タービン323が燃焼ガスGにより回転することで、発電機312が発電を開始する。空気Aの全量を燃焼器322へ供給するため、制御弁335、336、338は全閉とされるのが好ましい。
【0064】
SOFC313の起動では、まず、圧縮空気A1の少なくとも一部(空気A2)をSOFC313の空気極113へ供給して昇圧を開始し、昇温を開始する。排酸化性ガス排出ライン333の制御弁337と排酸化性ガス供給ライン334の制御弁338を閉止し、制御弁335を所定開度だけ開放する。なお、ここで昇圧速度を制御するための開度調整を行う。なお、制御弁335は所定開度にて維持し、制御弁336は閉とする。すると、圧縮機321で圧縮した圧縮空気A1の少なくとも一部である空気A1が第2酸化性ガス供給ライン331からSOFC313側へ供給される。空気A1は、熱交換器330により温度が300~500℃に昇温されおり、これにより、SOFC313は、圧縮空気A1が供給されることで昇圧とともに温度が上昇する。
【0065】
一方、SOFC313の燃料極109では、燃料極側に窒素等の不活性ガスを供給して昇圧を開始する。制御弁346と制御弁347を閉止し、再循環ブロワ348を停止した状態で、不活性ガスを供給すると共に、燃料ガス再循環ライン349の再循環ブロワ348を駆動する。なお、再循環ブロワ348は燃料極109側の加圧前に起動していても良い。すると、不活性ガスが第2燃料ガス供給ライン341からSOFC313側へ供給されると共に燃料ガス再循環ライン349により再循環される。これにより、SOFC313側は、不活性ガスが供給されることで圧力が上昇する。
【0066】
そして、SOFC313の空気極113側の圧力が圧縮機321の出口圧力と等しくなると、制御弁335にてSOFC313への供給空気流量を制御すると共に、制御弁338を開放してSOFC313からの排空気A3を排酸化性ガス供給ライン334から燃焼器322に供給する。SOFC313とMGT311とを連結させ、SOFC313を経由してMGT311の燃焼器322に空気を供給するコンバインド状態に移行する。このとき、制御弁337も開度を制御してSOFC313からの排空気A3の一部を系統外へ排出してもよい。それと同時に制御弁346の開度を制御してSOFC313からの不活性ガスを系統外へ排出してもよい。そして、SOFC313における空気極113側の圧力と燃料極109側の圧力とが目標圧力に到達すると、SOFC313の昇圧が完了する。
【0067】
コンバインド状態への移行後に、制御弁335および制御弁336を開度調整することにより、SOFC313を昇温するためにSOFC313に供給される空気A2の流量を増加させ、第1酸化性ガス供給ライン326を介して燃焼器322に供給される空気A1の流量を減少させる。そして、所定の条件となった後にSOFC313が発電を開始するまでは空気Aの全量がSOFC313を経由して、排酸化性ガス排出ライン333から排酸化性ガス供給ライン334を経由して,燃焼器322に供給されるように制御して、SOFC313をできるだけ均一な温度で早く昇温できるようにしてもよい。
【0068】
その後、SOFC313の圧力制御が安定してから、制御弁337が開となっている場合は閉止する一方、制御弁338の開放を維持する。このため、SOFC313からの排空気A3が排酸化性ガス供給ライン334から燃焼器322に供給され続ける。
【0069】
制御装置380は、SOFC313の起動にあたり、第1昇温モード、第2昇温モード、及び負荷上昇モードを順に実行し、図示しないセルスタック周囲の温度である発電室温度を定格温度まで上昇させるとともに、目標負荷まで負荷を上昇させる。
【0070】
まず、第1昇温モードでは、前述のように熱交換器330による熱交換によって加熱された空気A2を空気極113に供給することにより、空気極113をはじめとする発電室を昇温させる。第1昇温モードにより、第1温度閾値に到達すると、第1昇温モードから第2昇温モードに切り替える。ここで、第1温度閾値は、空気極113が可燃性ガスとしての燃料ガスL2との燃焼反応に対して触媒として機能する温度であり、例えば、約400℃から450℃の範囲で設定されている。
【0071】
第2昇温モードでは、第1昇温モードと同様に空気極113に空気A2を供給するとともに、空気極燃料供給ライン371に設けた制御弁372を開くことにより燃料ガスL2を空気A2に添加供給する。空気A2と燃料ガスL2とが流入した空気極113では、空気極113の触媒作用によって燃料ガスL2が空気極113で触媒燃焼し、燃焼熱が発生する。このように、第2昇温モードでは、触媒燃焼による発熱を用いて空気極113を上昇させる。
制御装置380は、発電室温度が第2温度閾値に到達すると、第2昇温モードから負荷上昇モードに切り替える。
【0072】
負荷上昇モードでは、昇温時間の短縮のために、第1昇温モードと同様に空気極113に空気A2を供給するとともに、第2燃料ガス供給ライン341の制御弁342を開くことで燃料ガスL2を燃料極109に供給し、純水供給ライン361のポンプ362を駆動することで純水を燃料極109に供給し、発電を開始する。負荷上昇モードでは、空気極113に燃料ガスL2を添加供給することによる触媒燃焼による発熱と、発電の両方による発熱とによって発電室温度を上昇させる。負荷上昇モードでは、SOFC313の発電室温度が発電による自己発熱で温度維持ができるまで温度上昇をした後は、空気極113へ添加供給される燃料ガスL2の供給量を徐々に減少させ、例えば、目標負荷到達と同時に空気極113への燃料ガスL2の添加供給がゼロになるように制御される。
【0073】
上記第2温度閾値は、例えば、750℃以上に設定されている。これは、燃料極109が十分な温度に達していないときに燃料極109側に燃料ガスL2を投入してしまうと、固体電解質膜111が高抵抗状態のままでSOFC313を発電させることになり、電極構成材料が組織変化して劣化し、SOFC313の性能低下の要因になるからであり、SOFC313の性能低下が起きにくいように、第2温度閾値は例えば、750℃付近に設定されることが好ましい。
【0074】
また、排燃料ガスL3の成分が燃焼器322へ投入可能な成分となったら、制御弁346を閉止する一方、制御弁347を開放する。すると、SOFC313からの排燃料ガスL3が排燃料ガス供給ライン345から燃焼器322に供給される。このとき、第1燃料ガス供給ライン351に備えた制御弁352によって燃焼器322に供給される燃料ガスL1を減量する。
【0075】
負荷上昇モードにおいて、発電室温度が発電室目標温度に到達し、負荷が定格負荷など目標負荷に到達すると、起動完了となる。
発電室目標温度はSOFC313が発電による発熱による自己発熱で温度が維持できる温度以上であり、例えば750℃~950℃で設定されてもよい。
【0076】
こうして、MGT311の駆動による発電機312での発電、SOFC313の昇圧・昇温・起動での発電が行われることとなり、発電システム310が定常運転となる。
【0077】
ここで、本実施形態のSOFC313の停止方法について説明する。SOFC313を停止する場合、SOFC313の通常停止時または緊急停止時には、まず、燃料極109側への燃料ガスL2の供給継続、および空気極113側への酸化性ガスである空気A2の供給を停止する。
【0078】
SOFC313を停止するため、制御弁335、336,347及び制御弁338を閉止して燃焼器322を停止する一方、制御弁342は所定の開度とし、各制御弁337,346を開放(制御弁337,346は、例えば、半開)して排空気A3および排燃料ガスL3を系外へ排出する。すると、SOFC313は、空気極113への圧縮空気A2の供給が停止される一方、燃料極109への燃料ガスL2および純水供給ライン361を介して純水の供給が継続され、燃料極の還元雰囲気が維持された状態で、発電が停止する。燃料ガスL2および純水が燃料極109へ供給され、燃料極109から排燃料ガスライン343に排出された排燃料ガスL3の一部は燃料ガス再循環ライン349を通して燃料極109に循環されるため、燃料極側の系統の過剰な圧力低下を防ぐことができる。
【0079】
SOFC313の温度の冷却が進み所定温度より低下したら、発電停止に伴う空気極113の還元や燃料極109の酸化による劣化を防止するため、SOFC313の運転停止後に燃料極109側の系統へ窒素等の不活性ガスをパージすることで、SOFC313を保護する。SOFC313が予め設定された所定温度まで冷却されると、制御弁342を閉止して燃料ガスL2の供給を停止する一方、制御弁346を開放したままとし排燃料ガスL3の一部を系外へ排出する。また、SOFC313は、図示しないパージガス供給ラインからパージガス(不活性ガス)を燃料極109に供給される一方、排燃料ガスライン343および燃料ガス再循環ライン349の排燃料ガスL3が制御弁346から系統外に排出される。そのため、燃料極109は、パージガスにより還元雰囲気が不活性雰囲気に短時間で置換される。燃料極109側の系統の雰囲気を不活性ガスで置換することで、残存した燃料ガスが空気極113へと拡散することによって空気極113の材料が還元されることを防止できる。また、燃料極109側の系統へ窒素等の不活性ガスを供給しつつ燃料ガス再循環ライン349を通して燃料極109に循環されているため、排燃料ガスL3が系統外に排出されることによる燃料極側の系統の過剰な圧力低下を防ぎつつSOFC313を冷却することができる。
【0080】
燃料極109側の系統に供給する不活性ガスは、窒素(N2)ガス、アルゴン(Ar)ガス、He(ヘリウム)ガス、または燃焼排ガスなどである。不活性ガスは、N2ガスおよびH2ガスの混合ガスであってもよい。不活性ガスに含まれるH2ガスは、空気極113側から拡散してきた酸素(O2)と反応する。よって、不活性ガスにH2ガスを含ませることで、拡散してきた酸素が燃料極109の材料と反応するのを防止できる。
【0081】
燃料極109側の系統への不活性ガスの供給と並行して、空気極113側の系統に図示しない冷却ガス供給ラインから冷却ガスを供給する。冷却ガスは、酸素を含むことが好ましい。冷却ガスの温度は、発電時にSOFC313に供給される空気A2よりも低い。冷却ガスは、外気(常温の空気)などが好適である。常温とは、0℃~40℃程度の温度を指す。図示しない冷却ガス供給ラインは、SOFC313の空気極113へ冷却ガスを供給できるように例えば第2酸化性ガス供給ライン331に接続され、冷却ガスは、冷却ガス供給ラインに設けられた図示しない別置のコンプレッサや送風機にて供給しても良い。
【0082】
図5は、SOFCへ供給される燃料ガスの炭化水素の供給量の制御に関する模式図である。図5において、実線の矢印は燃料ガスの供給路を示し、破線の矢印は空気の流路を示し、一点鎖線の矢印は各計測部の計測値に基づく出力信号や制御弁342の制御信号の通信経路を示す。なお、図5において空気極燃料供給ライン371は省略している。
【0083】
まず、密度計測部DMによって第2燃料ガス供給ライン341を流れる燃料ガス密度がリアルタイムに計測される。そして、制御装置380は、密度計測部DMの計測値に基づいて、燃料ガス組成(燃料ガスに含まれる炭化水素の濃度)を予測する。そして、制御装置380は、燃料ガス組成の予測に基づいて、SOFC313へ供給される燃料ガスの基準の供給量を設定する(第1の制御)。
【0084】
また、複数の温度計測部TM1~TM4によって発電室215の複数箇所の温度が計測される。そして、制御装置380は、第1温度計測部TM1~第4温度計測部TM4の各計測値に基づいて、SOFC313の内部における改質反応の状況を予測する。そして、制御装置380は、SOFC313の内部における改質反応の状況に基づいて、燃料ガスの基準の供給量を補正するための供給量補正係数を設定する(第2の制御)。燃料ガスの供給量補正係数の算出については、後述する。
【0085】
制御装置380は、燃料ガスの基準の供給量に対して、燃料ガスの供給量の補正係数を用いて、燃料ガスの供給量を補正する。そして、制御装置380は、補正後の燃料ガスの供給量に対応して、制御弁342の開閉量を調整するための指令を変更する。
このように、制御装置380は、密度計測部DMの計測値と、複数の温度計測部TM1~TM4の計測値に基づいて、SOFC313へ供給される燃料ガスの供給量を制御する。
【0086】
上述のように、制御装置380は、密度計測部DMの計測値と各温度計測部TM1~TM4の計測値に基づいて、制御弁342の開閉量を制御する。制御弁342の開閉量を制御することにより、SOFC313へ供給される燃料ガスの供給量が制御される。ここで、SOFC313へ供給される燃料ガスの供給量を制御することは、燃料ガスに含まれる炭化水素の量を制御することと同義である(以降の説明において、「燃料ガスの供給量」との記載は「燃料ガスの炭化水素の量」との意味を含む)。すなわち、制御装置380によって、SOFC313へ供給される燃料ガスの供給量が制御されることにより、燃料ガスに含まれる炭化水素の量を、発電量を維持するための改質反応がSOFC313の内部において好適に行われる量となるように制御することができる。
【0087】
また、制御装置380は、燃料ガス密度と燃料ガス組成が対応付けられたテーブルが記憶された記憶部(不図示)を備えていてもよい。制御装置380は、例えば、密度計測部DMによって計測された計測値と記憶部に記憶されたテーブルとを照合することにより、燃料ガス密度に対応した燃料ガス組成を予測し、この予測結果に基づいて制御弁342の開閉量を制御する。
【0088】
なお、記憶部に記憶されたテーブルは、例えば、燃料ガス密度のみに限らず、燃料ガス密度と、SOFC313の内部の温度と、燃料ガス組成とが対応付けられたテーブルである。これにより、より正確に予測された燃料ガス組成に基づいて制御弁の開閉量が制御される。
【0089】
また、記憶部は、制御装置380に備えられたものでなくてもよい。この場合、制御装置380と記憶部は双方向通信可能な構成であり、制御装置380と記憶部が双方向通信されることによって、燃料ガス密度に対応した燃料ガス組成が予測される。
【0090】
また、制御装置380は、演算部(不図示)を備えていてもよい。演算部は、例えば、密度計測部DMによって計測された計測値に基づいて燃料ガス組成を演算するとともに、演算した燃料ガス組成に基づいて、制御弁342の開閉量に対する操作量を演算する。そして、制御装置380は、演算部の演算結果に基づいて、制御弁342の開閉量を制御する。
【0091】
また、演算部によって、燃料ガス組成や、制御弁342の開閉量に対する操作量が演算される際、これらの演算は、燃料ガス密度とSOFC313の内部の温度に基づいて演算されてもよい。これにより、燃料ガス組成や、制御弁342の開閉量に対する操作量がより正確に演算される。
【0092】
なお、上述する制御装置380の構成は、一例であり、燃料ガスの供給量を制御する制御が実行可能な構成であれば、適宜変更されてもよい。例えば、制御装置380は、密度計測部DMの計測値に基づいて燃料ガス組成を把握する際には、記憶部に記憶されたテーブルを用いて燃料ガス組成を把握し、さらに、燃料ガス組成に基づいて燃料ガスの供給量を適切化する際には、演算部によって演算された制御弁342の操作量を用いることとしてもよい。
【0093】
また、制御装置380は、上述の制御の実行時において、計測値の範囲が予め設定された制御可能範囲の値であるか否かを判定し、仮に制御可能範囲でない場合には、ユーザまたは管理者へ異常を報知してもよい。
【0094】
次に、燃料ガス密度とSOFCの内部の温度に基づく、発電室へ供給される燃料ガスの供給量の制御について説明する。
図6は、燃料ガス密度と燃料ガスに含まれる炭化水素の濃度との関係を示すグラフである。図6の横軸は燃料ガス密度であり、図6の縦軸は燃料ガス中の炭化水素の濃度である。燃料ガス密度と炭化水素濃度の関係は、燃料ガスに含まれる炭化水素とその他の成分の割合(燃料ガス組成)により、変化する。図6において、実線は、SOFCへ供給される燃料ガスの基準流量を算出する際の燃料ガス組成(基準ガス組成)の場合の、燃料ガス密度と炭化水素濃度の関係を示す。2つの破線に挟まれる領域は、燃料ガス組成が変動した場合に、密度計測部による基準流量の制御のみで運転可能な領域を示す。2つの一点鎖線に挟まれる領域は、燃料ガス組成が変動した場合に、密度計測部による基準流量の制御とSOFC内部温度による流量補正を組み合わせることで運転可能な領域を示す。これらの各領域については後述する。
【0095】
実際にSOFCに供給される燃料ガス組成が、基準ガス組成から変動しない場合、燃料ガス密度と、燃料ガスに含まれる炭化水素の濃度は、図6の制御基準を表す実線で示されるように比例関係にある。このため、密度計測部によって燃料ガス密度を計測することにより、燃料ガスに含まれる炭化水素の濃度を予測し、燃料ガスの供給量を適切化することができる。
【0096】
具体的には、例えば、燃料ガス密度が低く、燃料ガスに含まれる炭化水素の濃度が高いと予測される場合には、SOFCの内部における改質反応の反応量が不足しないため、SOFCへ供給される燃料ガスの供給量を低減するように制御弁が制御される。反対に、燃料ガスに含まれる炭化水素の濃度が低いと予測される場合には、SOFCの内部における改質反応の反応量が不足していると判断して、SOFCへ供給される燃料ガスの供給量を増加するように制御弁が制御される。
【0097】
ここで、SOFCへ供給される燃料ガスは、メタン、二酸化炭素、窒素など3種類以上の成分を含み、各成分がそれぞれ変動する。そのため、燃料ガス密度が変化しない場合においても、燃料ガス組成の変動によって炭化水素の濃度が変動する。例えば、燃料ガス密度X1において、燃料ガスに含まれる各種類の成分のうち、3種類以上の成分が変動すると、燃料ガスに含まれる炭化水素の濃度は、制御基準線上のポイントP6から、2つの破線に挟まれた領域内に存在するP5又はP7へ推移する。この領域内の変動に対しては、密度計測部による基準流量の制御により、SOFCの運転継続が可能である。燃料ガスに含まれる炭化水素の濃度は、燃料ガスに含まれる各種類の成分のうち多くの成分が変動するほど、基準値とのずれ量が大きくなる。基準値とのずれ量が大きいP4またはP8へ推移した際は,前述の密度計測部による基準燃料流量の制御だけでは、発電室内の温度又は発電室内各部の温度差が許容値(許容上限)を超過し、運転継続が困難となる場合がある。
【0098】
また、同様に、燃料ガス密度X2においても、燃料ガスに含まれる成分が変動すると、燃料ガスに含まれる炭化水素の濃度は、基準線上のポイントP1から、ポイントP2、P10、P3及びP9のいずれかのポイントへ推移する。燃料ガス密度X1で例示した場合と同様に、燃料ガスに含まれる炭化水素の濃度は、燃料ガスに含まれる各種類の成分のうち多くの成分が変動するほど、基準値とのずれ量が大きくなる。基準値とのずれ量が大きいP3またはP9へ推移した際は,前述の密度計による基準燃料流量の制御だけでは、発電室内の温度又は発電室内各部の温度差が許容値(許容上限)を超過し、運転継続が困難となる場合がある。
【0099】
次に、上述の各計測値と燃料ガスの供給量を補正する補正係数との関係を説明する。図7図9は、燃料ガスの供給量制御に関する制御パラメータと補正係数の関係を示す例図である。
図7は、燃料ガス密度と、燃料ガスの供給量の補正係数との関係を示すグラフである。
制御装置は、密度計測部の計測値に基づいて、予め設定されている燃料ガスの基準供給量に対して補正を行う。具体的には、燃料ガス密度が大きくなると、燃料ガスの供給量の補正係数も大きくなる。すなわち、燃料ガス密度が増加すると、燃料ガスに含まれる炭化水素の濃度が低下したと判断し、発電室の内部における改質反応量を維持するために、燃料ガスの供給量を増加する補正を行う。そのため、図6に示すように、燃料ガス密度と燃料ガスの供給量の補正係数は正の比例関係となる。
【0100】
図8は、SOFCカートリッジの長手方向の中央部付近における、最高温度と最低温度との温度差(以下、中部温度の温度差と言う。)と、燃料ガスの供給量の補正係数との関係を示すグラフである。
制御装置は、第2温度計測部~第4温度計測部の各計測値のうちの最高値と最低値との温度差Tdeffに基づいて、SOFCへ供給される燃料ガスの供給量を補正する。具体的には、燃料ガス組成の変動に伴って炭化水素の濃度が高くなると、発電室の内部における改質反応に伴う吸熱反応の反応量が増加し、後述するメカニズムにより、中部温度の温度差が大きくなる。この場合、制御装置は、発電室の内部における改質反応を抑制するために燃料ガスの供給量を低減するように補正係数を小さくする。
【0101】
ここで、燃料ガス組成の変動に伴う中部温度の温度差の挙動について説明する。
SOFCモジュールの内部において、外周側に配置されるカートリッジの発電室の温度は、外部への放熱のため、内周側に配置されるカートリッジの発電室の温度よりも低くなる傾向にある。このため、外周側のカートリッジでは、燃料供給時の圧損が小さくなり、内周側のカートリッジと比べて燃料が流れやすくなる傾向にある。そこで、所定の燃料利用率(SOFCに供給される燃料成分のうち、実際に発電反応に消費される燃料成分の割合)の範囲において、カートリッジ間の燃料流量が均一になるように分配する機能(例えば、圧損を均一化するためのオリフィス等)を備えている。ここで、燃料ガス組成の変動に伴い、燃料利用率が低下して前記所定の燃料利用率の範囲を逸脱すると、燃料分配機能が低下し(例えば、オリフィスによる圧損調整範囲を逸脱する、など)、外周側のカートリッジに燃料が多く流れるような、燃料分配の偏りが生じる。その結果、燃料が多く流れるほど改質吸熱による影響が大きくなり、外周側カートリッジの発電室温度が低下する。すなわち、外周側カートリッジの発電室温度と内周側カートリッジの発電室温度の温度差が発生し、中部温度の温度差が大きくなる。
【0102】
図9は、発電室における燃料ガス供給側の温度と、燃料ガスの供給量の補正係数との関係を示すグラフである。
制御装置は、第1温度計測部の計測値(温度)に基づいて、SOFCへ供給される燃料ガスの供給量を補正する。具体的には、燃料ガス組成の変動に伴って炭化水素の濃度が低くなると、発電室の内部における改質反応に伴う吸熱反応の反応量が減少し、特に発電室の内部の燃料供給側の温度が上昇する。このため、第1温度計測部の計測値が所定の閾値th1以上となる。この場合、制御装置は、発電室の内部における改質反応を促進するために燃料ガスの供給量を増加するように補正係数を大きくする。
【0103】
以上説明した燃料ガスの供給量の補正制御については、全ての制御が並行して行われてもよく、また、発電システムの稼働条件等に基づいて適宜選択的に行われてもよい。
【0104】
また、上述のように、燃料ガス組成が変動すると、特に、燃料ガス成分のうち3種類以上の成分の割合が変動すると、燃料ガス密度と燃料ガスの炭化水素の濃度との関係において、基準ガス組成(図5の実線で示す制御基準)からのずれが大きくなる。このため、SOFCへ供給される燃料ガスの供給量を適切化するために、制御装置は、燃料ガス密度と発電室各部の温度との各計測値に基づいて、制御弁の開閉量を制御する。
一方で、燃料ガス組成は、ユーザの選択によって使用する燃料ガスの種類が任意に切替えられる場合にも、変動する。燃料ガス種類が切替えられる場合とは、例えば、都市ガスからバイオガスに切り替えられる場合である。この場合には、切替前後の燃料ガスの各組成範囲、すなわち、各燃料ガス密度と燃料ガスの炭化水素の濃度の関係(制御基準)は既知であり、これらの情報は記憶部に記憶されている。また、記憶部には、燃料ガスの種類毎の各組成範囲と、切替前後の燃料ガスの種類に対応した各制御パラメータの変位量が記憶されていることとしてもよい。そして、制御装置は、記憶部に記憶されている情報に基づいて、制御パラメータの操作量を制御することにより、燃料ガスの種類を切替える際にも発電効率を維持しながら発電システムの稼働を継続することができる。
【0105】
図10は、図6に示した各ポイント(P1~P10)において、燃料ガスの供給量を制御するために用いる状態量の推移を示したタイミングチャートである。具体的には、図6に示される各ポイントP1~P10における、燃料ガス密度、燃料ガス中の炭化水素の濃度、第1温度計測部の計測値と第2温度計測部~第4温度計測部の各計測値の最小値との差分、第1温度計測部TM1の計測値、SOFCへ供給される燃料ガスの供給量の推移を示すタイミングチャートである。図10において、破線は密度計測部の計測値である計測密度のみに基づいて燃料ガスの供給量が補正及び制御された場合の推移を示し、実線は計測密度及び各温度計測部の各計測値である各計測温度に基づいて燃料ガスの供給量が補正及び制御された場合の推移を示す。なお、閾値th2は、第2温度計測部~第4温度計測部の各計測値のうちの最高温度と最低値との差分に関する所定の閾値である。閾値th1は、第1温度計測部の計測値(上部温度)に関する所定の閾値である。
【0106】
まず、ポイントP9及びポイントP10においては、燃料ガス密度が密度X2で一定であるにも関わらず、燃料ガスの炭化水素の濃度が、基準値であるポイントP1における濃度Y3よりも低い濃度Y1,Y2である。すなわち、ポイントP9及びポイントP10においては、燃料ガス組成の変動によって、燃料ガスの炭化水素の濃度が低下し、SOFCの内部における改質反応の反応量が基準量よりも減少する。これにより、改質反応による吸熱量も減少されるため、SOFCの内部における上部温度が上昇する。
【0107】
この場合、制御装置は、SOFCの内部の改質反応の反応量を増加させるために、SOFCへ供給される燃料ガスの供給量を増加するように制御弁の開閉量を制御する。SOFCへ供給される燃料ガスの供給量の補正に発電室の状態量である計測温度が考慮されるため、計測密度のみに基づいて燃料ガスの供給量を補正する制御よりも、より正確にSOFCへ供給される燃料ガスの供給量を制御することができる。特に、制御基準からのずれ量が大きいポイントP9においては、計測温度を加味した制御により、発電室上部温度が許容上限を超過することなくSOFCの運転継続が可能となる。
【0108】
次に、ポイントP2及びポイントP3においては、燃料ガス密度が密度X2で一定であるにも関わらず、燃料ガスの炭化水素の濃度が、基準値であるポイントP1における濃度Y3よりも高い濃度Y4,Y5である。すなわち、ポイントP2及びポイントP3においては、燃料ガス組成の変動によって、燃料ガスの炭化水素の濃度が増加し、SOFCの内部における改質反応の反応量が基準量よりも増加する。これにより、改質反応による吸熱量も増加するため、SOFCの内部における中部温度が低下して発電室目標温度を維持する発電部に対し温度分布が発生する。すなわち、中部温度T2~T4の最高値と最低値の温度差が増加する。
【0109】
この場合、制御装置は、SOFCの改質反応の反応量を減少させるために、SOFCへ供給される燃料ガスの供給量を減少するように制御弁の開閉量を制御する。SOFCへ供給される燃料ガスの供給量の補正に発電室の内部の状態量である計測温度が考慮されるため、計測密度のみに基づいて燃料ガスの供給量を補正する制御よりも、より正確にSOFCへ供給される燃料ガスの供給量を制御することができる。特に、制御基準からのずれ量が大きいポイントP3においては、計測温度を加味した制御により、発電室の中部温度の温度差が許容上限を超過することなくSOFCの運転継続が可能となる。
【0110】
次に、ポイントP4及びポイントP5においては、燃料ガス密度が密度X1で一定であるにも関わらず、燃料ガスの炭化水素の濃度が、基準値であるポイントP6における濃度Y4よりも高い濃度Y6,Y5である。すなわち、ポイントP4及びポイントP5においては、燃料ガス組成の変動によって、燃料ガスの炭化水素の濃度が増加し、SOFCの内部における改質反応の反応量が基準量よりも増加する。これにより、改質反応による吸熱量も増加するため、SOFCの内部における中部温度が低下して発電室目標温度を維持する発電部に対し温度分布が発生する。すなわち、中部温度の温度差が増加する。
【0111】
この場合、制御装置は、SOFCの改質反応の反応量を減少させるために、SOFCへ供給される燃料ガスの供給量を減少するように、制御弁の開閉量を制御する。SOFCへ供給される燃料ガスの供給量の補正に発電室の内部の状態量である計測温度が考慮されるため、計測密度のみに基づいて燃料ガスの供給量を補正する制御よりも、より正確にSOFCへ供給される燃料ガスの供給量を制御することができる。特に、制御基準からのずれ量が大きいポイントP4においては、計測温度を加味した制御により、発電室の中部温度の温度差が許容上限を超過することなくSOFCの運転継続が可能となる。
【0112】
次に、ポイントP7及びポイントP8においては、燃料ガス密度が密度X1で一定であるにも関わらず、燃料ガスの炭化水素の濃度が、基準値であるポイントP6における濃度Y4よりも低い濃度Y3,Y2である。すなわち、ポイントP7及びポイントP8においては、燃料ガス組成の変動によって、燃料ガスの炭化水素の濃度が減少し、SOFCの内部における改質反応の反応量が基準量よりも減少する。これにより、改質反応による吸熱量も減少されるため、SOFCの内部における上部温度が上昇する。
【0113】
この場合、制御装置は、SOFCの改質反応の反応量を増加させるために、SOFCへ供給される燃料ガスの供給量を増加するように、制御弁の開閉量を制御する。SOFCへ供給される燃料ガスの供給量の補正に発電室の内部の状態量である計測温度が考慮されるため、計測密度のみに基づいて燃料ガスの供給量を補正する制御よりも、より正確にSOFCへ供給される燃料ガスの供給量を制御することができる。特に、制御基準からのずれ量が大きいポイントP8においては、計測温度を加味した制御により、発電室上部温度が許容上限を超過することなくSOFCの運転継続が可能となる。
【0114】
以上のように、制御装置は、燃料ガス密度を計測する密度計測部を用いて燃料ガス組成を把握するため、組成計を用いる場合よりも1回分の計測時間が短い。このため、燃料ガス組成の変動を早期に把握することができるとともに、燃料ガスの供給量を早期に適切化することができる。
【0115】
次に、上述の制御装置による燃料ガスの供給量の補正制御について図11を参照して説明する。図11は、本実施形態に係るSOFCへ供給される燃料ガスの供給量の補正制御に関する手順の一例を示すフローチャートである。
【0116】
まず、発電システムの運転が開始すると、制御装置は、発電室の内部に設けられた複数の温度計測部により計測された最高温度に基づいて、燃料ガスの供給量を制御する制御弁の開閉量を制御する指令を算出する(S101)。次に、制御装置は、算出した指令と、密度計測部により計測された燃料ガス密度に基づいて燃料ガスの供給量を補正するために、制御弁の開閉量を制御する(S102)。
【0117】
次に、制御装置は、発電室の内部に設けられた第1温度計測部の計測値である上部温度が、所定の閾値th1以上あるか否かを判定する(S103)。所定の閾値th1は、発電室の内部において改質反応が適切に行われているかを判断するための基準となる温度である。制御装置は、上部温度が、閾値th1以上であると判定した場合(S103:YES)、上部温度に基づいてSOFCへ供給される燃料ガスの供給量を増加させるように、制御弁の開閉量を制御し、再びS102の処理に移行する(S104)。
【0118】
次に、制御装置は、上部温度が、閾値th1以上でないと判定した場合(S103:NO)、第2温度計測部、第3温度計測部及び第4温度計測部の各計測値の最高温度と最低温度との温度差(中部温度の温度差)が、所定の閾値th2以上であるか否かを判定する(S105)。所定の閾値th2は、発電室の内部において改質反応が適切に行われているかを判断するための基準となる温度差である。制御装置は、中部温度の温度差が、閾値th2以上であると判定した場合(S105:YES)、中部温度の温度差に基づいてSOFCへ供給される燃料ガスの供給量を減少させるように、制御弁の開閉量を制御する(S106)。
【0119】
そして、制御装置は、中部温度の温度差が、閾値th2以上でないと判定した場合(S105:NO)、現在制御弁の開閉量を維持するように制御するとともに、再びS102の処理に移行する(S107)。以降、S102~S107の処理を繰り返すことにより、SOFCへ供給される燃料ガスの供給量を適切化することができる。
【0120】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
本実施形態の発電システムにおいて、制御装置380は、密度計測部DMの計測値と、複数の温度計測部TM1~TM4の計測値とに基づいて制御弁342の開閉量を制御することにより、SOFC313へ供給される燃料ガスの炭化水素の供給量を制御する。本実施形態の発電システムにおいては、密度計測部DMの計測値に基づいて、燃料ガス組成の変動が把握される。密度計測部DMを用いることにより、組成計を用いて燃料ガスの計測を行うよりも短い周期で燃料ガスの計測を行うことが可能であり、連続的かつ高精度に燃料ガス組成の変動を低コストで計測できる。したがって、燃料ガス組成の変動に対して、燃料ガスの炭化水素の供給量の制御の即応性を高めるとともに、発電システムを効率的に運転することができる。
【0121】
また、本実施形態の発電システムにおいて、制御装置380は、複数の温度計測部TM1~TM4の各計測値に基づいて制御弁342の開閉量を制御することとしてもよい。これにより、SOFC313の内部の発電室215の改質反応の状態に基づいて、燃料ガスの炭化水素の供給量の制御ができるため、より高精度かつ適切に燃料ガスの炭化水素の供給量を制御することができる。
【0122】
また、本実施形態の発電システムにおいて、燃料ガスは、少なくとも3種類以上の成分が変動するものであってもよい。燃料ガスを構成する成分のうち3種類以上が変動する場合、燃料ガス密度と燃料ガスの炭化水素の濃度の関係において、制御基準からのずれ量が大きくなってしまう。本実施形態においては、複数の温度計測部TM1~TM4の各計測値に基づいて制御弁342の開閉量を制御することとしてもよい。これにより、SOFC313の内部の発電室215の改質反応の状態に基づいて、燃料ガスの炭化水素の供給量の制御ができる。このため、燃料ガス密度と燃料ガスの炭化水素の濃度の関係において、制御基準からのずれ量が大きい場合においても、より高精度かつ適切に燃料ガスの炭化水素の供給量を制御することができる。
【0123】
(その他の実施形態)
また、本実施形態の発電システムにおいて、制御装置380は、発電室215の温度分布、具体的には、第1温度計測部TM1(上流側温度計測部)によって計測された発電室215内における燃料ガス流れ方向の上流側の温度、および/または、第2温度計測部TM2~第4温度計測部TM4(中部温度計測部)によって計測された発電室215内における各SOFCカートリッジ203の長手方向の中部温度の温度差に基づいて、制御弁342の開閉量を制御する。すなわち、制御装置380は、SOFC313内部の発電室215の温度分布に基づいて、SOFC313へ供給される燃料ガスの炭化水素量の供給量を制御する。これにより、発電システムは、より確実に、SOFC313において目標通りの改質反応を得ることができる。
【0124】
また、制御装置380は、上述するように燃料ガス密度と発電室215の内部の温度に基づいて制御弁342の開閉量を制御する他に、SOFC313および/または発電室215の内部の状態量を取得することにより、制御弁342の開閉量を制御することとしてもよい。
例えば、制御装置380は、燃料ガス密度、発電室215の内部の温度に限らず、制御弁342の開閉量(燃料ガスの供給量)、発電室215の内部の圧力や体積、発電室215のエンタルピー等の種々の状態量に基づいて、制御弁342の開閉量を制御することとしてもよい。なお、状態量は、密度、温度、圧力、体積、内部エネルギー、エンタルピー等の発電室215における改質反応に関与する物理量である。
【0125】
この場合、制御装置380は、制御弁342の開閉量(燃料ガスの供給量)、発電室215の内部の圧力、発電室215のエンタルピー等の種々の状態量を取得する取得部(不図示)より、種々の状態量を受信可能である。そして、制御装置380は、取得部によって取得された種々の状態量に基づいて、発電室215へ供給される燃料ガスの供給量が、発電室215内部における改質反応が適切に行われるものであるか否かの適性を判断する。ここで、取得部は、例えば、状態量とされる物理量を計測可能な計測器であり、計測する状態量の数や計測範囲に応じて、複数の計測器によって構成されるものであってもよい。なお、各計測器については公知なものであるとし、説明を省略する。
【0126】
具体的には、例えば、制御装置380は、予め記憶部に記憶された各状態量と発電室215へ供給される燃料ガス組成が対応付けられたテーブルと、取得部によって取得された発電室215の内部の状態量と照合し、発電室215内部における改質反応が適切に行われるものであるか否かの適性を判断する。仮に、発電室215の内部において改質反応が適切に行われていないと判断された場合、制御装置380は、制御弁342の開閉量を制御することにより、発電室215へ供給される燃料ガスの供給量を制御する。
【0127】
このように、制御装置380は、発電室215の内部の状態量に基づいて制御弁342の開閉量を制御することにより、発電室215へ供給される燃料ガスの供給量を制御することとしてもよい。なお、上述の説明では、発電室215の状態量を例に説明したが、取得部はSOFC313の内部の状態量を取得する場合も、制御装置380は上述の制御を行ってもよい。
【0128】
また、上述する発電システムは、発電プラントに設置されてもよい。このような発電プラントは、組成計を用いずに、燃料ガス密度と発電室の内部の温度に基づいて燃料ガスの供給量が制御されるため、3種類以上の成分を含む燃料ガスの各成分が変動する場合においても、安定した発電及び電力供給が可能となる。すなわち、プラント効率の低下及びハンドリング性の悪化を改善することができる。さらに、これにより、発電プラント周辺の設備の生産活動を支援し、産業の発達に寄与することができる。
【0129】
以上、本開示について実施形態を用いて説明したが、本開示の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本開示の技術的範囲に含まれる。また、上記実施形態を適宜組み合わせてもよい。
また、上記実施形態で説明した各処理の流れも一例であり、本開示の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0130】
以上、本開示について実施形態を用いて説明したが、本開示の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。本開示の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本開示の技術的範囲に含まれる。また、上記実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0131】
上述した実施形態に記載の発電システム、これを備えた発電プラント、発電システムの制御方法及び発電システムの制御プログラムは、例えば以下のように把握される。
本開示の第1態様に係る発電システムは、酸化性ガスと燃料ガスとを反応させて発電を行う発電部(215)を備える燃料電池(313)と、前記燃料電池へ供給される前記燃料ガスの流路とされた燃料ガス供給管(341)に設けられ、前記燃料ガスの密度を計測する密度計測部(DM)と、前記燃料ガス供給管に設けられるとともに、前記燃料ガスの炭化水素の供給量を制御するために開閉量が調整される制御弁(342)と、前記密度計測部の計測値に基づいて前記制御弁の開閉量を制御する制御部(380)とを備える。
【0132】
本開示に係る発電システムによれば、制御部は、発電部へ供給される燃料ガス密度を計測する密度計測部の計測値に基づいて、燃料ガスを供給する燃料ガス供給管に設けられた制御弁の開閉量を制御する。すなわち、密度計測部の計測値に基づいて燃料ガスの炭化水素の供給量が制御される。例えば、3種類以上の成分が含まれる燃料ガスは組成が変動し易いため、燃料ガスの炭化水素の供給量を適切化するためには、燃料ガス組成を計測する周期は短いことが好ましい。本開示に係る発電システムによれば、密度計測部を用いることにより、組成計を用いて燃料ガスの計測を行うよりも短い周期で燃料ガスの計測を行うことが可能であり、連続的かつ高精度に燃料ガス組成の変動を低コストで計測できる。したがって、燃料ガスの炭化水素の供給量の制御の即応性を高めるとともに、発電システムを効率的に運転することができる。
【0133】
本開示の第2態様に係る発電システムは、前記第1態様において、前記発電部に設けられ、前記発電部の温度を計測する温度計測部(TM1~TM4)を備え、前記制御部は、前記温度計測部の計測値に基づいて前記制御弁の開閉量を制御する。
【0134】
本開示に係る発電システムによれば、発電部に設けられた温度計測部によって、発電部の温度が計測される。そして、制御部は、密度計測部の計測値と温度計測部の計測値に基づいて、制御弁の開閉量を調整することにより、燃料ガスの炭化水素の供給量を制御する。これにより、発電部の内部状態を考慮して、燃料ガスの炭化水素の供給量の制御ができるため、より高精度かつ適切に燃料ガスの炭化水素の供給量を制御することができる。
【0135】
本開示の第3態様に係る発電システムは、酸化性ガスと燃料ガスとを反応させて発電を行う発電部(215)を備える燃料電池(313)と、前記発電部に設けられ、前記発電部の内部における状態量を取得する取得部と、前記発電部へ供給される前記燃料ガスが搬送される燃料ガス供給管に設けられるとともに、前記燃料ガスの炭化水素の供給量を変更するために開閉量が調整される制御弁(342)と、前記取得部によって取得された前記発電部の内部における状態量の適性を判断するとともに、該判断結果に基づいて前記制御弁の開閉量を制御する制御部(380)とを備える。
【0136】
本開示に係る発電システムによれば、制御部は、取得部によって発電部の内部における状態量を取得する。例えば、取得部は温度計であり、状態量は発電部の温度である。そして、温度計の計測温度に基づいて発電部の内部における状態量の適正が制御部によって判断される。そして、制御部は、該判断結果に基づいて燃料ガス供給管に設けられた制御弁の開閉量を調整することにより、発電部へ供給する燃料ガスの炭化水素の供給量を制御する。例えば、発電部への燃料ガスの炭化水素の供給量が多い場合、発電室内部における改質反応の度合いが所定量以下となり、改質反応による温度低下量が低減されるため、発電部の温度は高温化する。そこで、制御部は、発電室内部で行われる改質反応の度合いを適正化し、発電部の温度を低減するために、制御弁の開閉量を制御する。すなわち、制御部は、発電室内部の改質反応の度合いを取得するとともに、発電部への燃料ガスの炭化水素の供給量を制御することにより、発電室内部で行われる改質反応の度合いを適正化することができる。
なお、状態量とは、温度に限らず、圧力、体積、内部エネルギー、及びエントロピーであってもよい。また、取得部は、温度計に限らず、上述の状態量を取得する手段であればよい。
【0137】
本開示の第4態様に係る発電システムは、前記第1態様から前記第3態様のいずれかにおいて、前記燃料ガスは、少なくとも3種類以上の成分によって構成される。
【0138】
本開示に係る発電システムによれば、燃料ガスは、少なくとも3種類以上の成分によって構成される。燃料ガスは、例えば、炭化水素をはじめとする炭素化合物や窒素が含まれる。また、水、硫黄酸化物、硫化水素、二酸化炭素等の不純物を含む場合もある。このように、燃料ガスに3種類以上の成分が含まれる場合は燃料ガス組成が変動し易いため、燃料ガスの炭化水素の供給量を適切化するためには、燃料ガス組成を計測する周期が短いことが好ましい。本開示に係る発電システムによれば、組成計を用いて燃料ガスの計測を行うよりも短い周期で燃料ガスの計測を行うことが可能な密度計測部を用いることにより、燃料ガス組成の変動を、低コストで連続的かつ高精度な計測を行うことができる。
【0139】
本開示の第5態様に係る発電システムは、前記第2態様において、前記温度計測部は、前記発電部における前記燃料ガスの流れ方向の上流側に設けられた上流側温度計測部(TM1)であり、前記制御部は、前記上流側温度計測部の計測値に基づいて、前記制御弁の開閉量を制御する。
【0140】
本開示に係る発電システムによれば、温度計測部は、発電部の内部における前記燃料ガスの流れ方向の上流側に設けられた上流側温度計測部であり、制御部は、上流側温度計測部の計測値に基づいて、制御弁の開閉量を制御する。すなわち、制御部は、発電部内の温度分布に基づいて、発電部へ供給される燃料ガスの炭化水素量の供給量を制御する。これにより、発電システムは、より確実に、発電部において目標通りの改質反応を得ることができる。
【0141】
本開示の第6態様に係る発電システムは、前記第2態様において、前記温度計測部は複数とされ、各前記発電部の中央部付近の温度を計測する中部温度計測部(TM2~TM4)であり、前記制御部は、各前記中部温度計測部による計測値に基づいて、前記制御弁の開閉量を制御する。
【0142】
本開示に係る発電システムによれば、温度計測部は複数とされ、各発電部の中央部付近の温度を計測する中部温度計測部であり、制御部は、各中部温度計測部による計測値に基づいて、制御弁の開閉量を制御する。すなわち、制御部は、発電部内の温度分布に基づいて、発電部へ供給される燃料ガスの炭化水素量の供給量を制御する。これにより、発電システムは、より確実に、発電部において目標通りの改質反応を得ることができる。
【0143】
本開示の第7態様に係る発電プラントは、前記第1態様又は前記第3態様の発電システムを備える。
【0144】
本開示の第8態様に係る発電システムの制御方法は、酸化性ガスと燃料ガスとを反応させて発電を行う発電部(215)を備える燃料電池(313)を備える発電システムの制御方法であって、前記発電部へ供給される前記燃料ガスの流路とされた燃料ガス供給管(341)に設けられた密度計測部(DM)によって、前記燃料ガスの密度を計測する工程と、前記密度計測部の計測値に基づいて前記燃料ガス供給管に設けられた制御弁(342)の開閉量を制御する工程とを有する。
【0145】
本開示の第9態様に係る発電システムの制御方法は、酸化性ガスと燃料ガスとを反応させて発電を行う発電部(215)を備える燃料電池(313)を備える発電システムの制御方法であって、前記発電部に設けられた取得部によって、前記発電部の内部における状態量を取得する工程と、前記取得部によって取得された前記発電部の内部における状態量の適性を判断するとともに、該判断結果に基づいて前記発電部へ供給される前記燃料ガスが搬送される燃料ガス供給管(341)に設けられた制御弁(342)の開閉量を制御する工程とを有する。
【0146】
本開示の第10態様に係る発電システムの制御プログラムは、酸化性ガスと燃料ガスとを反応させて発電を行う発電部(215)を備える燃料電池(313)を備える発電システムの制御プログラムであって、前記発電部へ供給される前記燃料ガスの流路とされた燃料ガス供給管(341)に設けられた密度計測部(DM)によって、前記燃料ガスの密度を計測する処理と、前記密度計測部の計測値に基づいて前記燃料ガス供給管に設けられた制御弁(342)の開閉量を制御する処理とをコンピュータに実行させる。
【0147】
本開示の第11態様に係る発電システムの制御プログラムは、酸化性ガスと燃料ガスとを反応させて発電を行う発電部(215)を備える燃料電池(313)を備える発電システムの制御プログラムであって、前記発電部に設けられた取得部によって、前記発電部の内部における状態量を取得する処理と、前記取得部によって取得された前記発電部の内部における状態量の適性を判断するとともに、該判断結果に基づいて前記発電部へ供給される前記燃料ガスが搬送される燃料ガス供給管(341)に設けられた制御弁(342)の開閉量を制御する処理とをコンピュータに実行させる。
【符号の説明】
【0148】
101 セルスタック
103 基体管
105 電気化学単セル(燃料電池と電解セルの両方を含む)
107 インターコネクタ
109 燃料極
111 固体電解質膜
113 空気極
115 リード膜
201 SOFCモジュール
203 SOFCカートリッジ(電気化学セルカートリッジ)
207 燃料ガス供給管(または水蒸気供給管)
209 燃料ガス排出管(または水蒸気排出管)
215 発電室(または水素発生室)
217 燃料ガス供給ヘッダ(または水蒸気供給ヘッダ)
219 燃料ガス排出ヘッダ(または水蒸気排出ヘッダ)
225a 上部管板
225b 下部管板
227a 上部断熱体
227b 下部断熱体
310 発電システム(SOFC・ガスタービン発電システム)
311 MGT(マイクロガスタービン)
312 発電機
313 SOFC
321 圧縮機
322 燃焼器
323 タービン
327、335、336、338、342、347、352、372 制御弁(弁)
330 熱交換器
341 第2燃料ガス供給ライン
349 燃料ガス再循環ライン
371 空気極燃料供給ライン
380 制御装置(制御部)
P1~P10 ポイント
Tdeff 温度差
TM1~TM4 第1温度計測部~第4温度計測部
X1,X2 密度
Y1~Y6 濃度
th1,th2 閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11