(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106828
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】燃料電池システムおよび燃料電池システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04537 20160101AFI20240801BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20240801BHJP
H01M 8/0656 20160101ALI20240801BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20240801BHJP
C25B 1/042 20210101ALI20240801BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240801BHJP
C25B 15/023 20210101ALI20240801BHJP
C25B 1/23 20210101ALI20240801BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240801BHJP
【FI】
H01M8/04537
H01M8/00 Z
H01M8/0656
H01M8/04858
C25B1/042
C25B9/00 H
C25B15/023
C25B1/23
H01M8/12 101
H01M8/12 102B
H01M8/12 102C
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011288
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】一橋 友介
(72)【発明者】
【氏名】寺本 雄一
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021AB25
4K021BA02
4K021BB03
4K021CA06
4K021CA09
4K021DB40
4K021DB53
4K021DC03
5H126BB06
5H127AA07
5H127AC15
5H127AC19
5H127BA02
5H127BA14
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA59
5H127BB02
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5H127BB25
5H127BB37
5H127BB39
5H127DB63
5H127DB69
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5H127DC44
5H127DC45
5H127DC82
5H127DC89
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE29
(57)【要約】
【課題】燃料電池の発電効率を維持しつつ燃料電池が生成する余剰の電力を有効に活用する。
【解決手段】燃料極12に供給される燃料ガスと空気極11に供給される酸化性ガスとを反応させて発電を行う燃料電池10と、水素極22に供給される水蒸気を水蒸気電解して水素を生成する電解セル20と、燃料電池10で生成される直流電力を交流電力に変換して電力系統PSへ出力する変換器40と、電力系統PSから要求される電力需要よりも燃料電池10で生成された直流電力を変換した交流電力が大きい場合に、電解セル20の消費電流値を増加するよう制御する制御部90と、を備える燃料電池システム100を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気極と燃料極とを有し、前記燃料極に供給される燃料ガスと前記空気極に供給される酸化性ガスとを反応させて発電を行う燃料電池と、
酸素極と水素極とを有し、前記水素極に供給される水蒸気を水蒸気電解して水素を生成する電解セルと、
前記燃料電池で生成される直流電力を交流電力に変換して電力系統へ出力する第1変換部と、
前記電力系統から要求される電力需要よりも前記燃料電池で生成された直流電力を変換した交流電力が大きい場合に、前記電解セルの消費電流値を増加するよう制御する制御部と、を備える燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料電池は、前記空気極および前記燃料極が配置される発電室を備え、
前記電解セルの前記酸素極および前記水素極は前記発電室に配置される請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料電池で生成される直流電力を前記電解セルへ供給する第1供給状態と、前記燃料電池で生成される直流電力を前記電解セルへ供給しない第1遮断状態とを切り替える第1切替部と、
直流電力生成部で生成される直流電力を前記電解セルへ供給する第2供給状態と、前記直流電力生成部で生成される直流電力を前記電解セルへ供給しない第2遮断状態を切り替える第2切替部と、を備え、
前記制御部は、前記電力系統から要求される前記電力需要よりも前記燃料電池で生成された直流電力を変換した交流電力が大きい場合に、前記第1供給状態とするよう前記第1切替部を制御し、前記直流電力生成部で生成される直流電力が前記電力系統の前記電力需要以上である場合に、前記第2供給状態とするよう前記第2切替部を制御する請求項1または請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記電力系統から供給される交流電力を直流電力に変換して前記電解セルへ出力する第2変換部を備える請求項1または請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
燃料電池システムの制御方法であって、
前記燃料電池システムは、
空気極と燃料極とを有し、前記燃料極に供給される燃料ガスと前記空気極に供給される酸化性ガスとを反応させて発電を行う燃料電池と、
酸素極と水素極とを有し、前記水素極に供給される水蒸気を水蒸気電解して水素を生成する電解セルと、
前記燃料電池で生成される直流電力を交流電力に変換して電力系統へ出力する第1変換部と、を有し、
前記電力系統から要求される電力需要よりも前記燃料電池で生成された直流電力を変換した交流電力が大きい場合に、前記電解セルの消費電流値を増加するよう制御する第1制御工程を備える燃料電池システムの制御方法。
【請求項6】
前記燃料電池は、前記空気極および前記燃料極が配置される発電室を備え、
前記電解セルの前記酸素極および前記水素極と前記発電室に配置される請求項5に記載の燃料電池システムの制御方法。
【請求項7】
前記燃料電池システムは、
前記燃料電池で生成される直流電力を前記電解セルへ供給する第1供給状態と、前記燃料電池で生成される直流電力を前記電解セルへ供給しない第1遮断状態とを切り替える第1切替部と、
直流電力生成部で生成される直流電力を前記電解セルへ供給する第2供給状態と、前記直流電力生成部で生成される直流電力を前記電解セルへ供給しない第2遮断状態を切り替える第2切替部と、を有し、
前記第1制御工程は、前記電力系統から要求される前記電力需要よりも前記燃料電池で生成された直流電力を変換した交流電力が大きい場合に、前記第1供給状態とするよう前記第1切替部を制御し、
前記直流電力生成部で生成される直流電力が前記電力系統の前記電力需要以下である場合に、前記第2供給状態とするよう前記第2切替部を制御する第2制御工程を備える請求項5または請求項6に記載の燃料電池システムの制御方法。
【請求項8】
前記燃料電池システムは、前記電力系統から供給される交流電力を直流電力に変換して前記電解セルへ出力する第2変換部を有する請求項5または請求項6に記載の燃料電池システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システムおよび燃料電池システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスと酸化性ガスとを化学反応させることにより発電する燃料電池は、優れた発電効率及び環境対応等の特性を有している。このうち、固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:以下「SOFC」という)は、電解質としてイットリア安定ジルコニアセラミックスなどのセラミックスが用いられ、水素、都市ガス、天然ガス、石油、メタノール、及び炭素含有原料をガス化設備により製造したガス化ガス、バイオマスを原料としたバイオマスガス等のガスなどを燃料ガスとして供給して、およそ700℃~1000℃の高温雰囲気の発電室で反応させて発電を行う(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、SOFCとターボチャージャを組み合わせたSOFCシステムが開示されている。特許文献1では、SOFCから排出される排燃料ガスを燃焼器で燃焼させてタービンに燃焼ガスを供給してタービンを回転駆動する。タービンに連結された圧縮機は、酸化性ガスを圧縮して空気極へ供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1等に開示される燃料電池において、発電した電力を他の電源(例えば、太陽光や風力等の再生可能エネルギーによる電源)が接続される電力系統に発電した電力を供給する場合、電力系統の電力需要を満たすために燃料電池が出力すべき電力が、他の電源が生成する電力の変化に応じて変動してしまう。
【0006】
例えば、燃料電池が出力すべき電力が減少する場合、燃料電池が出力する電力を低下させる必要があるが、燃料電池の出力を低下させて発電室の温度が低下してしまうと、発電効率が低下してしまう。また、発電室の温度を維持するように燃料電池を動作させると、燃料電池が出力すべき電力に対して余剰の電力が発生してしまう。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、燃料電池の発電効率を維持しつつ燃料電池が生成する余剰の電力を有効に活用することが可能な燃料電池システムおよび燃料電池システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示は以下の手段を採用する。
本開示に係る燃料電池システムは、空気極と燃料極とを有し、前記燃料極に供給される燃料ガスと前記空気極に供給される酸化性ガスとを反応させて発電を行う燃料電池と、酸素極と水素極とを有し、前記水素極に供給される水蒸気を水蒸気電解して水素を生成する電解セルと、前記燃料電池で生成される直流電力を交流電力に変換して電力系統へ出力する第1変換部と、前記電力系統から要求される電力需要よりも前記燃料電池で生成された直流電力を変換した交流電力が大きい場合に、前記電解セルの消費電流値を増加するよう制御する制御部と、を備える。
【0009】
本開示に係る燃料電池システムの制御方法において、前記燃料電池システムは、空気極と燃料極とを有し、前記燃料極に供給される燃料ガスと前記空気極に供給される酸化性ガスとを反応させて発電を行う燃料電池と、酸素極と水素極とを有し、前記水素極に供給される水蒸気を水蒸気電解して水素を生成する電解セルと、前記燃料電池で生成される直流電力を交流電力に変換して電力系統へ出力する第1変換部と、を有し、前記電力系統から要求される電力需要よりも前記燃料電池で生成された直流電力を変換した交流電力が大きい場合に、前記電解セルの消費電流値を増加するよう制御する第1制御工程を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、燃料電池の発電効率を維持しつつ燃料電池が生成する余剰の電力を有効に活用することが可能な燃料電池システムおよび燃料電池システムの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一実施形態に係る燃料電池システムの電力系統を示す構成図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る燃料電池システムのガス系統を示す構成図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る固体酸化物型電気化学セルの例を示す断面図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る固体酸化物形電気化学セルモジュールの一態様を示す斜視図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る固体酸化物形電気化学セルカートリッジを示す断面図である。
【
図6】電気化学セルカートリッジにおける燃料電池および電解セルの配置の一例を示す横断面図である。
【
図7】本開示の一実施形態に係る燃料電池システムの制御方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図7の水素需要追従モードを示すフローチャートである。
【
図9】
図7の高効率負荷追従運転モードを示すフローチャートである。
【
図10】
図7の水蒸気電解運転モードを示すフローチャートである。
【
図11】高効率負荷追従運転モードにおける燃料電池の負荷電流の変化と電力との関係を示すグラフである。
【
図12】高効率負荷追従運転モードにおける燃料電池の負荷電流の変化と発電室温度との関係を示すグラフである。
【
図13】水蒸気電解運転モードおよび水素需要追従モードにおける燃料電池の負荷電流の変化と電力との関係を示すグラフである。
【
図14】水蒸気電解運転モードおよび水素需要追従モードにおける燃料電池の負荷電流の変化と発電室温度との関係を示すグラフである。
【
図15】高効率負荷追従運転モードにおける電力および発電室温度の時系列変化を示すグラフである。
【
図16】水蒸気電解運転モードにおける電力および発電室温度の時系列変化を示すグラフである。
【
図17】水素需要追従モードにおける電力および発電室温度の時系列変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下においては、説明の便宜上、紙面を基準として「上」及び「下」の表現を用いて説明した各構成要素の位置関係は、各々鉛直上方側、鉛直下方側を示すものである。また、本実施形態では、上下方向と水平方向で同様な効果を得られるものは、紙面における上下方向が必ずしも鉛直上下方向に限定することなく、例えば鉛直方向に直交する水平方向に対応してもよい。
【0013】
以下、本開示の一実施形態に係る燃料電池システム100について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の燃料電池システム100の電力系統を示す構成図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の燃料電池システム100は、燃料電池10と、電解セル20と、補助機器30と、変換器(第1変換部)40と、変換器(第2変換部)45と、切替部(第1切替部)S1と、切替部(第2切替部)S2と、切替部S3と、制御部90と、を備える。
【0015】
燃料電池10は、空気極11と燃料極12とを有し、燃料極12に供給される燃料ガスFGと空気極11に供給される空気(酸化性ガス)とを反応させて発電を行う装置である。
電解セル20は、酸素極21と水素極22とを有し、水素極22に供給される水蒸気を電気分解して水素を生成する装置である。
補助機器30は、燃料電池システム100の動作を補助する各種の機器(コンプレッサ、ブロワ、弁、熱交換器など)を総称したものであり、燃料電池10で生成した電力の一部、または電力系統PSから供給される交流電力により動作する。
【0016】
変換器40は、燃料電池10で生成される直流電力を交流電力に変換して電力系統PSへ出力する装置である。
変換器45は、電力系統PSもしくは燃料電池10から供給される交流電力を直流電力に変換して電解セル20へ出力する装置である。
【0017】
切替部S1は、燃料電池10で生成される直流電力を電解セル20へ供給する供給状態(第1供給状態)と、燃料電池10で生成される直流電力を電解セル20へ供給しない遮断状態(第1遮断状態)とを切り替える装置(開閉器)である。
切替部S2は、直流電力生成部200で生成される直流電力を電解セル20へ供給する供給状態(第2供給状態)と、直流電力生成部200で生成される直流電力を電解セル20へ供給しない遮断状態(第2遮断状態)とを切り替える装置(開閉器)である。
【0018】
直流電力生成部200は、例えば、太陽光や風力等の再生可能エネルギーを直流電力に変換する装置である。直流電力生成部200が生成する直流電力は、変換器210により交流電力に変換されて電力系統PSに出力される。直流電力生成部200のエネルギー源が太陽光や風力等の自然エネルギーである場合、天候や時間帯など、自然エネルギーの状態によって直流電力生成部200が生成する直流電力が大きく変化する。
【0019】
切替部S3は、変換器45から電解セル20に直流電力を供給する供給状態と、変換器45から電解セル20に直流電力を供給しない遮断状態とを切り替える装置(開閉器)である。
【0020】
制御部90は、燃料電池10と、電解セル20と、補助機器30と、変換器40と、変換器45と、切替部S1と、切替部S2と、切替部S3と、を含む燃料電池システム100の各部を制御する装置である。
【0021】
次に、本開示の一実施形態に係る燃料電池システム100のガス系統について、図面を参照して説明する。
図2は、本開示の一実施形態に係る燃料電池システム100のガス系統を示す構成図である。なお、直流電力生成部200は電気系統のみ接続されているため、ガス系統を示す
図2では直流電力生成部200の記載を省略している。
【0022】
図2に示すように、本実施形態に係る燃料電池システム100は、燃料電池10と、電解セル20と、再生熱交換器50と、冷却器60と、水素濃度計70と、ブロワ81,82,83と、開閉弁91,92と、制御弁93,94,95,96と、を備える。
【0023】
再生熱交換器50は、ブロワ81により供給され空気ラインL1を流通する空気と、空気極11および酸素極21から排出されて空気ラインL2を流通する空気との熱交換を行う装置である。空気ラインL1から再生熱交換器50へ供給される空気の量と、空気ラインL1から再生熱交換器50へ供給されずにバイパスラインL3へ供給される空気の量は、制御弁94,95の開度により調整され、再生熱交換器50の下流側で合流する。この流量分配調整により所定の温度に加熱された空気は、空気極11および酸素極21へ供給される。
【0024】
制御部90は、制御弁93の開度を調整することにより、燃料ガスラインL4から燃料電池10の燃料極12へ供給する燃料ガスFGの供給量を制御する。燃料極12からは、水素等の未反応の燃料成分を含む排燃料ガスが、燃料ガスラインL5に排出される。また、燃料ガスラインL5には、電解セル20の水素極22で生成される水素が排出される。
【0025】
燃料ガスラインL5のブロワ82で昇圧された排燃料ガスと水素の混合ガスの一部は、再循環ラインL6から燃料ガスラインL4へ再循環する。再循環ラインL6へ導かれる排燃料ガスと水素の混合ガスの再循環量は、制御弁96の開度により調整される。
【0026】
燃料ガスラインL5のブロワ82で昇圧された排燃料ガスと水素の混合ガスは、一部が再循環ラインL6に導かれ、残りは冷却器60に供給される。冷却器60は、燃料ガスラインL5から導かれるガスを冷却水で冷却してガスに含まれる水分を凝縮させて水ラインL7へ排出してドレンとして回収する。水分が除去された水素を含むガスは、燃料ガスラインL8へ導かれる。燃料ガスラインL8を流通するガスに含まれる水素の濃度は、水素濃度計70により検知されて制御部90に伝達される。
【0027】
燃料ガスラインL8へ導かれた水素を含むガスは、開閉弁91および開閉弁92が閉状態の場合は、全量が外部の水素貯蔵装置(図示略)へ供給される。また、開閉弁91および開閉弁92が開状態の場合、水素を含むガスの一部は水素貯蔵装置へ導かれ、他の一部はブロワ83で昇圧されて燃料ガスラインL9から燃料ガスラインL4へ導かれ、燃料電池10の燃料極12に供給される。
【0028】
水ラインL7には、電解セル20の水素極22で電気分解される水蒸気となる純水が供給される。水ラインL7に供給された純水は再循環ラインL6で水蒸気となる。再循環ラインL6の水蒸気は、燃料ガスラインL4に導かれる。燃料ガスラインL4で燃料ガスFGと混合した水蒸気は、供給ラインL10を介して電解セル20の水素極22に導かれる。
【0029】
次に、
図3を参照して、燃料電池10で空気極11および燃料極12として用いられ、電解セル20で酸素極21および水素極22として用いられる固体酸化物型電気化学セルについて説明する。
図3は、本開示の一実施形態に係る固体酸化物型電気化学セルの例を示す断面図である。以下の説明において、第1電極109が燃料電池10の燃料極12に対応し、第2電極113が燃料電池10の空気極11に対応する。また、第1電極109が電解セル20の水素極22に対応し、第2電極113が電解セル20の酸素極21に対応する。
【0030】
図3を参照して本実施形態に係る一例として、基体管を用いる円筒形セルスタックについて説明する。基体管を用いない場合は、例えば電極を厚く形成して基体管を兼用してもよく、基体管の使用に限定されることはない。また、本実施形態での基体管は円筒形状を用いたもので説明するが、基体管は筒状であればよく、必ずしも断面が円形に限定されなく、例えば楕円形状でもよい。円筒の周側面を垂直に押し潰した扁平円筒(Flat tubular)等のセルスタックでもよい。
【0031】
セルスタック101は、一例として円筒形状の基体管103と、基体管103の外周面に複数形成された電気化学単セル105と、隣り合う電気化学単セル105の間に形成されたインターコネクタ107とを備える。電気化学単セル105は、第1電極109と固体電解質膜111と第2電極113とが積層して形成されている。また、セルスタック101は、基体管103の外周面に形成された複数の電気化学単セル105の内、基体管103の軸方向において最も端の一端に形成された電気化学単セル105の第2電極113に、インターコネクタ107を介して電気的に接続されたリード膜115を備え、最も端の他端に形成された電気化学単セル105の第1電極109に電気的に接続されたリード膜115を備える。
【0032】
基体管103は、多孔質材料からなり、例えば、CaO安定化ZrO2(CSZ)、CSZと酸化ニッケル(NiO)との混合物(CSZ+NiO)、又はY2O3安定化ZrO2(YSZ)、又はMgAl2O4などを主成分とされる。この基体管103は、電気化学単セル105とインターコネクタ107とリード膜115とを支持すると共に、基体管103の内周面に供給される燃料ガスを基体管103の細孔を介して基体管103の外周面に形成される第1電極109に拡散させるものである。
【0033】
第1電極109は、Niとジルコニア系電解質材料との複合材の酸化物で構成され、例えば、Ni/YSZが用いられる。第1電極109の厚さは50μm~250μmであり、第1電極109はスラリーをスクリーン印刷して形成されてもよい。この場合、第1電極109は、第1電極109の成分であるNiが燃料ガスに対して触媒作用を備える。この触媒作用は、基体管103を介して供給された燃料ガス、例えば、メタン(CH4)と水蒸気との混合ガスを反応させ、水素(H2)と一酸化炭素(CO)に改質するものである。
【0034】
また、第1電極109は、改質により得られる水素(H2)及び一酸化炭素(CO)と、固体電解質膜111を介して供給される酸素イオン(O2-)とを固体電解質膜111との界面付近において電気化学的に反応させて水(H2O)及び二酸化炭素(CO2)を生成するものである。なお、電気化学単セル105は、この時、酸素イオンから放出される電子によって発電する。固体酸化物形電気化学セルの第1電極109に供給し利用できる燃料ガスとしては、水素(H2)および一酸化炭素(CO)、メタン(CH4)などの炭化水素系ガス、都市ガス、天然ガスのほか、石油、メタノール、及び石炭などの炭素含有原料をガス化設備により製造したガス化ガス、バイオマスを原料としたバイオガスなどが挙げられる。
【0035】
固体電解質膜111は、ガスを通しにくい気密性と、高温で高い酸素イオン導電性とを備えるYSZが主として用いられる。この固体電解質膜111は、第2電極113で生成される酸素イオン(O2-)を第1電極109に移動させるものである。第1電極109の表面上に位置する固体電解質膜111の膜厚は10μm~100μmであり固体電解質膜111はスラリーをスクリーン印刷して形成されてもよい。
【0036】
第2電極113は、例えば、LaSrMnO3系酸化物、又はLaCoO3系酸化物で構成され、第2電極113はスラリーをスクリーン印刷またはディスペンサを用いて塗布される。この第2電極113は、固体電解質膜111との界面付近において、供給される空気等の酸化性ガス中の酸素を解離させて外部より供給された電子と結合し酸素イオン(O2-)を生成するものである。
【0037】
第2電極113は2層構成とすることもできる。この場合、固体電解質膜111側の層(中間層)は高いイオン導電性を示し、触媒活性に優れる材料で構成される。中間層上の層(導電層)は、SmをドープしたセリアやSr及びCaドープLaMnO3で表されるペロブスカイト型酸化物で構成されても良い。こうすることにより、発電性能をより向上させることができる。酸化性ガスとは,酸素を略15%~30%含むガス
であり、代表的には空気が好適であるが、空気以外にも燃焼排ガスと空気の混合ガスや、酸素と空気の混合ガスなどが使用可能である。
【0038】
インターコネクタ107は、SrTiO3系などのM1-xLxTiO3(Mはアルカリ土類金属元素、Lはランタノイド元素)で表される導電性ペロブスカイト型酸化物から構成され、スラリーをスクリーン印刷する。インターコネクタ107は、燃料ガスと酸化性ガスとが混合しないように緻密な膜となっている。また、インターコネクタ107は、酸化雰囲気と還元雰囲気との両雰囲気下で安定した耐久性と電気導電性を備える。このインターコネクタ107は、隣り合う電気化学単セル105において、一方の電気化学単セル105の第2電極113と他方の電気化学単セル105の第1電極109とを電気的に接続し、隣り合う電気化学単セル105同士を直列に接続するものである。
【0039】
リード膜115は、電子伝導性を備えること、及びセルスタック101を構成する他の材料との熱膨張係数が近いことが必要であることから、Ni/YSZ等のNiとジルコニア系電解質材料との複合材やSrTiO3系などのM1-xLxTiO3(Mはアルカリ土類金属元素、Lはランタノイド元素)で構成されている。このリード膜115は、インターコネクタ107により直列に接続される複数の電気化学単セル105で発電された直流電力をセルスタック101の端部付近まで導出するものである。
【0040】
次に、
図4および
図5を参照して、本実施形態に係る電気化学セルカートリッジ及び電気化学セルモジュールについて説明する。
図4は、本開示の一実施形態に係る固体酸化物形電気化学セルモジュールの一態様を示す斜視図である。
図5は、本開示の一実施形態に係る固体酸化物形電気化学セルカートリッジを示す断面図である。
【0041】
図4に示すように、電気化学セルモジュール201は、例えば、複数の電気化学セルカートリッジ203と、これら複数の電気化学セルカートリッジ203を収納するモジュール容器205とを備える。なお、
図4には円筒形のセルスタック101を例示しているが、例えば平板形のセルスタックであってもよい。また、電気化学セルモジュール201は、燃料ガス供給管207と複数の燃料ガス供給枝管207a及び燃料ガス排出管209と複数の燃料ガス排出枝管209aとを備える。また、電気化学セルモジュール201は、酸化性ガス供給管(図示略)と酸化性ガス供給枝管(図示略)及び酸化性ガス排出管(図示略)と複数の酸化性ガス排出枝管(図略示)とを備える。
【0042】
燃料ガス供給管207は、モジュール容器205の内部に設けられ、電気化学セルモジュール201の発電量に対応して所定ガス組成と所定流量の燃料ガスを供給する燃料ガス供給部に接続されると共に、複数の燃料ガス供給枝管207aに接続されている。この燃料ガス供給管207は、上述の燃料ガス供給部から供給される所定流量の燃料ガスを、複数の燃料ガス供給枝管207aに分岐して導くものである。また、燃料ガス供給枝管207aは、燃料ガス供給管207に接続されると共に、複数の電気化学セルカートリッジ203に接続されている。この燃料ガス供給枝管207aは、燃料ガス供給管207から供給される燃料ガスを複数の電気化学セルカートリッジ203に略均等の流量で導き、複数の電気化学セルカートリッジ203の発電性能を略均一化させるものである。
【0043】
燃料ガス排出ヘッダ219は、電気化学セルカートリッジ203の下部ケーシング229bと下部管板225bとに囲まれた領域であり、下部ケーシング229bに備えられた燃料ガス排出孔231bによって、図示しない燃料ガス排出枝管209aと連通されている。また、複数のセルスタック101は、下部管板225bとシール部材237bにより接合されており、燃料ガス排出ヘッダ219は、複数のセルスタック101の基体管103の内部を通過して燃料ガス排出ヘッダ219に供給される排燃料ガスを集合して、燃料ガス排出孔231bを介して燃料ガス排出枝管209aに導くものである。
【0044】
電気化学セルモジュール201の発電量に対応して所定ガス組成と所定流量の酸化性ガスを酸化性ガス供給枝管へと分岐して、複数の電気化学セルカートリッジ203へ供給する。酸化性ガス供給ヘッダ221は、電気化学セルカートリッジ203の下部ケーシング229bと下部管板225bと下部断熱体227bとに囲まれた領域であり、下部ケーシング229bの側面に設けられた酸化性ガス供給孔233aによって、図示しない酸化性ガス供給枝管と連通されている。この酸化性ガス供給ヘッダ221は、図示しない酸化性ガス供給枝管から酸化性ガス供給孔233aを介して供給される所定流量の酸化性ガスを、後述する酸化性ガス供給隙間235aを介して発電室215に導くものである。
【0045】
酸化性ガス排出ヘッダ223は、電気化学セルカートリッジ203の上部ケーシング229aと上部管板225aと上部断熱体227aとに囲まれた領域であり、上部ケーシング229aの側面に設けられた酸化性ガス排出孔233bによって、図示しない酸化性ガス排出枝管と連通されている。この酸化性ガス排出ヘッダ223は、発電室215から、後述する酸化性ガス排出隙間235bを介して酸化性ガス排出ヘッダ223に供給される排酸化性ガスを、酸化性ガス排出孔233bを介して図示しない酸化性ガス排出枝管に導くものである。
【0046】
上部管板225aは、上部ケーシング229aの天板と上部断熱体227aとの間に、上部管板225aと上部ケーシング229aの天板と上部断熱体227aとが略平行になるように、上部ケーシング229aの側板に固定されている。また上部管板225aは、電気化学セルカートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応した複数の孔を有し、該孔にはセルスタック101が夫々挿入されている。この上部管板225aは、複数のセルスタック101の一方の端部をシール部材237a及び接着部材のいずれか一方又は両方を介して気密に支持すると共に、燃料ガス供給ヘッダ217と酸化性ガス排出ヘッダ223とを隔離するものである。
【0047】
上部断熱体227aは、上部ケーシング229aの下端部に、上部断熱体227aと上部ケーシング229aの天板と上部管板225aとが略平行になるように配置され、上部ケーシング229aの側板に固定されている。また、上部断熱体227aには、電気化学セルカートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応して、複数の孔が設けられている。この孔の直径はセルスタック101の外径よりも大きく設定されている。上部断熱体227aは、この孔の内面と、上部断熱体227aに挿通されたセルスタック101の外面との間に形成された酸化性ガス排出隙間235bを備える。
【0048】
この上部断熱体227aは、発電室215と酸化性ガス排出ヘッダ223とを仕切るものであり、上部管板225aの周囲の雰囲気が高温化し強度低下や酸化性ガス中に含まれる酸化剤による腐食が増加することを抑制する。また、上部管板225a等が発電室215内の高温に晒されて温度差による上部管板225a等の熱変形を抑制するために、Ni基合金などの高温耐久性のある金属材料を用いてもよい。また、上部断熱体227aは、発電室215を通過して高温に晒された排酸化性ガスを、酸化性ガス排出隙間235bを通過させて酸化性ガス排出ヘッダ223に導くものである。
【0049】
本実施形態によれば、上述した電気化学セルカートリッジ203の構造により、燃料ガスと排酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れるものとなっている。このことにより、排酸化性ガスは、基体管103の内部を通って発電室215に供給される燃料ガスとの間で熱交換がなされ、金属材料から成る上部管板225a等が座屈などの変形をしない温度に冷却されて酸化性ガス排出ヘッダ223に供給される。また、燃料ガスは、発電室215から排出される排酸化性ガスとの熱交換により昇温され、発電室215に供給される。その結果、ヒーター等を用いることなく発電に適した温度に予熱昇温された燃料ガスを発電室215に供給することができる。
【0050】
下部管板225bは、下部ケーシング229bの底板と下部断熱体227bとの間に、下部管板225bと下部ケーシング229bの底板と下部断熱体227bとが略平行になるように下部ケーシング229bの側板に固定されている。また下部管板225bは、電気化学セルカートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応した複数の孔を有し、該孔にはセルスタック101が夫々挿入されている。この下部管板225bは、複数のセルスタック101の他方の端部をシール部材237b及び接着部材のいずれか一方又は両方を介して気密に支持すると共に、燃料ガス排出ヘッダ219と酸化性ガス供給ヘッダ221とを隔離するものである。
【0051】
下部断熱体227bは、下部ケーシング229bの上端部に、下部断熱体227bと下部ケーシング229bの底板と下部管板225bとが略平行になるように配置され、下部ケーシング229bの側板に固定されている。また、下部断熱体227bには、電気化学セルカートリッジ203に備えられるセルスタック101の本数に対応して、複数の孔が設けられている。この孔の直径はセルスタック101の外径よりも大きく設定されている。下部断熱体227bは、この孔の内面と、下部断熱体227bに挿通されたセルスタック101の外面との間に形成された酸化性ガス供給隙間235aを備える。
【0052】
この下部断熱体227bは、発電室215と酸化性ガス供給ヘッダ221とを仕切るものであり、下部管板225bの周囲の雰囲気が高温化し強度低下や酸化性ガス中に含まれる酸化剤による腐食が増加することを抑制する。下部管板225b等はインコネルなどの高温耐久性のある金属材料から成るが、下部管板225b等が高温に晒されて下部管板225b等内の温度差が大きくなることで熱変形することを防ぐものである。また、下部断熱体227bは、酸化性ガス供給ヘッダ221に供給される酸化性ガスを、酸化性ガス供給隙間235aを通過させて発電室215に導くものである。
【0053】
本実施形態によれば、上述した電気化学セルカートリッジ203の構造により、排燃料ガスと酸化性ガスとがセルスタック101の内側と外側とを対向して流れるものとなっている。このことにより、基体管103の内部を通って発電室215を通過した排燃料ガスは、発電室215に供給される酸化性ガスとの間で熱交換がなされ、金属材料から成る下部管板225b等が座屈などの変形をしない温度に冷却されて燃料ガス排出ヘッダ219に供給される。また、酸化性ガスは排燃料ガスとの熱交換により昇温され、発電室215に供給される。その結果、ヒーター等を用いることなく発電に必要な温度に昇温された酸化性ガスを発電室215に供給することができる。
【0054】
発電室215で発電された直流電力は、複数の電気化学単セル105に設けたNi/YSZ等からなるリード膜115によりセルスタック101の端部付近まで導出した後に、電気化学セルカートリッジ203の集電部材(不図示)に集電板(不図示)を介して集電して、各電気化学セルカートリッジ203の外部へと取り出される。前記集電部材によって電気化学セルカートリッジ203の外部に導出された直流電力は、各電気化学セルカートリッジ203の発電電力を所定の直列数および並列数へと相互に接続され、電気化学セルモジュール201の外部へと導出されて、図示しないパワーコンディショナ等の電力変換装置(インバータなど)により所定の交流電力へと変換されて、電力供給先(例えば、負荷設備や電力系統)へと供給される。
【0055】
次に、電気化学セルカートリッジ203における燃料電池10および電解セル20の配置の一例について図面を参照して説明する。
図6は、電気化学セルカートリッジ203における燃料電池10および電解セル20の配置の一例を示す横断面図である。
図6に示す電気化学セルカートリッジ203は、モジュール容器205の内部空間である発電室215に、6列6行で36本のセルスタック101を配置したものである。
【0056】
図6において、外周側の20本のセルスタック101の第1群10Aと内周側の4本のセルスタック101の第2群10Bは、燃料電池10の空気極11および燃料極12として用いられる。一方、外周側と内周側のセルスタック101に挟まれる12本のセルスタック101は、電解セル20の酸素極21および水素極22として用いられる。
【0057】
図6に示すように、燃料電池10は、空気極11および燃料極12が配置される発電室215を備える。そして、発電室215には、電解セル20の酸素極21および水素極22が配置される。燃料電池10と電解セル20とで発電室215を共用するため、燃料電池10で発電する際に生じた熱を電解セル20の酸素極21および水素極22を運転可能な温度に加熱するために用いることができる。そのため、燃料電池システム100の熱効率を高めることができる。
【0058】
次に、本開示の一実施形態に係る燃料電池システム100の制御方法について説明する。
図7は、本開示の一実施形態に係る燃料電池システム100の制御方法を示すフローチャートである。
図7に示す各処理は、制御部90に記憶された制御プログラムにより実行される。
【0059】
ステップS101で、制御部90は、電力系統PSの電力需要P(直流電力生成部200の出力を加味した燃料電池システム100に要求される電力量)を取得する。
ステップS102で、制御部90は、直流電力生成部200が生成する電力Eを取得する。
ステップS103で、制御部90は、燃料ガスラインL8の供給先で要求される水素需要Hを取得する。
【0060】
ステップS104で、制御部90は、電力需要Pから電力Eを減算した値が所定の電力閾値を下回るかどうかを判定し、YESであればステップS105に処理を進め、NOであればステップS108へ処理を進める。電力需要Pに対して電力Eが電力閾値以上に不足する場合はNOと判断されてステップS108の高効率負荷追従運転モードに移行する。すなわち、電力需要Pに対して電力Eが電力閾値以上に不足する場合は、水素需要追従モードよりも高効率負荷追従運転モードを優先する。
【0061】
ステップS105で、制御部90は、ステップS103で取得した水素需要Hが所定の水素閾値を上回るかどうかを判定し、YESであればステップS106に処理を進め、NOであればステップS107へ処理を進める。
【0062】
ステップS106で、制御部90は、水素需要追従モードを実行する。水素需要追従モードは、
図8に示す各処理を実行するモードである。水素需要追従モードの制御および終了条件については後述する。
【0063】
ステップS107で、制御部90は、電力系統PSの電力需要Pが直流電力生成部200が生成する電力Eよりも大きいかどうかを判定し、YESであればステップS108に処理を進め、NOであればステップS109に処理を進める。
【0064】
ステップS108で、制御部90は、高効率負荷追従運転モードを実行する。高効率負荷追従運転モードは、
図9に示す各処理を実行するモードである。
ステップS109で、制御部90は、水蒸気電解運転モードを実行する。水蒸気電解運転モードは、
図10に示す各処理を実行するモードである。水蒸気電解運転モードを実行後は、ステップS108に処理を進める。
なお、上述した高効率負荷追従運転モード、水蒸気電解運転モード、水素需要追従モードの各モードを移行する際には、切替部S1、切替部S2、切替部S3は遮断した状態であることが好ましい。
【0065】
次に、
図8を参照して、
図7のステップS106で実行される水素需要追従モードについて説明する。
図8は、
図7の水素需要追従モードを示すフローチャートである。
なお、水素需要追従モードでは、切替部S3は供給可能な状態、切替部S1と切替部S2はそれぞれ遮断された状態である。燃料電池10から電力系統PSへ変換器(第1変換部)40を介して電力供給が可能であり、電力系統PSから電解セル20へ変換器(第2変換部)45を介して電力供給が可能である。直流電力生成部200と電解セル20は切り離され、直流電力生成部200から電力系統PSへ電力供給が可能な状態である。
【0066】
ステップS201で、制御部90は、電力需要Pを超えない範囲で燃料電池10の目標負荷電流を決定する。制御部90は、決定された目標負荷電流に応じた電力が出力されるように燃料電池10を制御する。
ステップS202で、制御部90は、水素需要Hから水素濃度計70から推定される水素供給量を減算して乖離値ΔHを算出する。
ステップS203で、制御部90は、乖離値ΔHが0より大きいかどうかを判断し、YESであればステップS204で切替部S3を供給状態とし、ステップS205に処理を進める。制御部90は、ステップS203の判断がNOであればステップS207に処理を進める。
【0067】
ステップS205で、制御部90は、水素需要Hが水素供給量よりも多いため、電解セル20が供給する水素量を増加させるよう、電解セル20の消費電流値を増加させる。
ステップS206で、制御部90は、電解セル20の消費電流値の増加に見合う水蒸気を電解セル20へ供給するため、水ラインL7へ供給される純水供給量を増加させる。その後、ステップS210に処理を進める。
【0068】
ステップS207で、制御部90は、電解セル20の消費電力が0より大きいかどうかを判定し、YESであれば切替部S3を供給状態としてステップS208に処理を進め、NOであればステップS210に処理を進める。
ステップS208で、制御部90は、水素需要Hが水素供給量以下であり、かつ電解セル20の消費電力が0より大きく水素を生成しているため、電解セル20が供給する水素量を減少させるよう、電解セル20の消費電流値を減少させる。
【0069】
ステップS209で、制御部90は、電解セル20の消費電流値の減少に見合う水蒸気を電解セル20へ供給するため、水ラインL7へ供給される純水供給量を減少させる。その後、ステップS210に処理を進める。
ステップS210で、制御部90は、燃料ガスラインL8の供給先で要求される水素需要Hを取得する。
【0070】
ステップS211で、制御部90は、ステップS209で取得した水素需要Hが所定の水素閾値(ステップS105の所定の水素閾値と同じ値)を下回るかどうかを判定し、YESであればステップS212でS3を遮断状態として本フローチャートの処理を終了させ、NOであればステップS201を再び実行する。水素需要追従モードを終了した後は、
図7のステップS107へ処理を進める。
【0071】
次に、
図9を参照して、
図7のステップS107で実行される高効率負荷追従運転モードについて説明する。
図9は、
図7の高効率負荷追従運転モードを示すフローチャートである。
なお、高効率負荷追従運転モードでは、切替部S1は供給可能な状態、切替部S2と切替部S3はそれぞれ遮断された状態である。燃料電池10から電解セル20へ変換器(第1変換部)40と変換器(第2変換部)45を介さずに電力供給が可能であり、直流電力生成部200と電解セル20は切り離され、直流電力生成部200から電力系統PSへ電力供給が可能な状態である。
【0072】
ステップS301で、制御部90は、燃料電池10を定格負荷で運転させ、発電室215の温度を一定とするように制御(負荷制御)する。
ステップS302で、制御部90は、電力需要Pから、燃料電池システム100の送電端出力(燃料電池システム100から
図1のT点に出力される電力)を減算した乖離値ΔPを算出する。
ステップS303で、制御部90は、燃料電池10で生成される直流電力を電解セル20へ供給する供給状態とするよう切替部S1を制御する。
【0073】
ステップS304で、制御部90は、乖離値ΔPが0より小さいかどうかを判断し、YESであればステップS305に処理を進め、NOであればステップS307に処理を進める。乖離値ΔPが0より小さい場合とは、電力系統PSの電力需要Pよりも燃料電池システム100の送電端出力が大きい場合であり、電力需要Pを満たしており、余剰の電力を発生している状態である。
【0074】
ステップS305で、制御部90は、乖離値ΔPが0よりも小さく、電力需要Pに対して送電端出力に余剰があるため、余剰の送電端出力を消費させるよう、電解セル20の消費電流値を増加させる。
ステップS306で、制御部90は、電解セル20の消費電流値の増加に見合う水蒸気を電解セル20へ供給するため、水ラインL7へ供給される純水供給量を増加させる。
【0075】
ステップS307で、制御部90は、乖離値ΔPが0以上であり、電力需要Pに対して送電端出力に余剰がないため、送電端出力を増加させるよう、電解セル20の消費電流値を減少させる。
ステップS308で、制御部90は、電解セル20の消費電流値の減少に見合う水蒸気を電解セル20へ供給するため、水ラインL7へ供給される純水供給量を減少させる。
【0076】
ステップS309で、制御部90は、電力系統PSの電力需要Pを取得する。
ステップS310で、制御部90は、直流電力生成部200が生成する電力Eを取得する。
ステップS311で、制御部90は、電力需要Pから電力Eを減算した値が所定の電力閾値を下回るかどうかを判定し、YESであればステップS312に処理を進め、NOであればステップS301へ処理を進める。
ステップS312で、制御部90は、燃料電池10で生成される直流電力を電解セル20へ供給しない遮断状態とするよう切替部S1を制御し、本フローチャートの処理を終了させる。
【0077】
次に、
図10を参照して、
図7のステップS108で実行される水蒸気電解運転モードについて説明する。
図10は、
図7の水蒸気電解運転モードを示すフローチャートである。
なお、水蒸気電解運転モードでは、切替部S2は供給可能な状態、切替部S1と切替部S3はそれぞれ遮断された状態である。電気系統としては燃料電池10と電解セル20、直流電力生成部200と電力系統PSは切り離されている。
【0078】
ステップS401で、制御部90は、電力需要Pを超えない範囲で燃料電池10の目標負荷電流を決定する。制御部90は、決定された目標負荷電流に応じた電力が出力されるように燃料電池10を制御する。
ステップS402で、制御部90は、直流電力生成部200から電解セル20へ電力が供給されるように、切替部S2を遮断状態から供給状態に切り替える。
【0079】
ステップS403で、制御部90は、直流電力生成部200から電解セル20へ供給される電力に見合う水蒸気を電解セル20へ供給するため、水ラインL7へ供給される純水供給量を調整する。
ステップS404で、制御部90は、電力系統PSの電力需要Pを取得する。
ステップS405で、制御部90は、直流電力生成部200が生成する電力Eを取得する。
【0080】
ステップS406で、制御部90は、電力系統PSの電力需要Pが直流電力生成部200が生成する電力Eよりも大きいかどうかを判断し、YESであればステップS407でS2を遮断状態とし本フローチャートの処理を終了させ、NOであれステップS401を再び実行する。
【0081】
次に、各運転モードにおける燃料電池10の負荷電流の変化と電力および発電室温度との関係について説明する。
図11は、高効率負荷追従運転モードにおける燃料電池10の負荷電流値と燃料電池システム100の送電端出力との関係を示すグラフである。
図12は、高効率負荷追従運転モードにおける燃料電池10の負荷電流値と発電室温度との関係を示すグラフである。
【0082】
図11に示すように、高効率負荷追従運転モードでは、燃料電池10の負荷電流が、定格電流値Ir(燃料電池10の定格負荷運転時の負荷電流)に到達するまでは、送電端出力がP2まで漸次増加する。これは、高効率負荷追従運転モードでは、定格電流値Irに到達するまでは、電解セル20を動作させないため、電解セル20による電力消費が発生しないためである。
【0083】
また、高効率負荷追従運転モードでは、燃料電池10の負荷電流が、定格電流値Irから上限電流値Imax(燃料電池10の運転可能な最大負荷時の電流)に到達するまでは、送電端出力がP2からP1まで漸次減少する。これは、高効率負荷追従運転モードでは、定格電流値Irから上限電流値Imaxまでは、電解セル20の消費電力が漸次増加するためである。高効率負荷追従運転モードでは、送電端出力が電力系統の電力需要Pを満たすように制御される。
【0084】
図12に示すように、高効率負荷追従運転モードでは、燃料電池10の負荷電流が定格電流値Irに到達するまでは、発電室温度が定格温度Tr(定格負荷運転時の発電室温度)まで漸次増加する。これは、高効率負荷追従運転モードでは、定格電流値Irに到達するまでは、電解セル20を動作させないため、電解セル20による吸熱反応が発生しないためである。
【0085】
また、高効率負荷追従運転モードでは、燃料電池10の負荷電流が定格電流値Irから上限電流値Imaxに到達するまでは、発電室温度が定格温度Trで一定となる。これは、高効率負荷追従運転モードでは、発電室温度を一定とする制御を行うためである。
【0086】
図13は、水蒸気電解運転モードおよび水素需要追従モードにおける燃料電池10の負荷電流値と燃料電池システム100の送電端出力との関係を示すグラフである。
図14は、高効率負荷追従運転モードおよび水素需要追従モードにおける燃料電池10の負荷電流値と発電室温度との関係を示すグラフである。
【0087】
図13に示すように、水蒸気電解運転モードおよび水素需要追従モードでは、燃料電池10の負荷電流が定格電流値Irに到達するまでは、送電端出力が実線で示す上限値と点線で示す下限値との間の範囲で変動する。これは、水蒸気電解運転モードおよび水素需要追従モードでは、定格電流値Irに到達するまでは、電解セル20による吸熱反応に伴い発電室温度が低下することで燃料電池10の出力が低下するからである。
【0088】
図14に示すように、水蒸気電解運転モードおよび水素需要追従モードでは、燃料電池10の負荷電流が定格電流値Irに到達するまでは、発電室温度が実線で示す上限値と点線で示す下限値との間の範囲で変動する。これは、水蒸気電解運転モードおよび水素需要追従モードでは、定格電流値Irに到達するまでは、電解セル20に供給される電力の変動が生じて吸熱反応による発電室温度の変動が生じるからである。
【0089】
次に、各運転モードにおける電力および発電室温度の時系列変化について説明する。
図15は、高効率負荷追従運転モードにおける電力および発電室温度の時系列変化を示すグラフである。
図16は、水蒸気電解運転モードにおける電力および発電室温度の時系列変化を示すグラフである。
図17は、水素需要追従モードにおける電力および発電室温度の時系列変化を示すグラフである。
【0090】
図15に示すように、高効率負荷追従運転モードでは、電力系統PSの電力需要がP4からP3に減少すると、それに追従して燃料電池システム100から電力系統PSへ出力される電力である送電端出力もP4からP3に減少する。同様に、電力需要がP3からP4に増加すると、それに追従して送電端出力もP3からP4に増加する。電力需要がP4からP3に減少する際には、燃料電池10の余剰の電力を電解セル20へ供給するため、燃料電池システム100においてP6の電力が消費される。
【0091】
電解セル20での吸熱反応により発電室温度が低下することを避けるため、燃料電池10の出力電力をP4からP5に増加する。電解セル20での消費電力量の増加分P6から燃料電池10の出力電力の増加量P5-P4を減算したP6-P5+P4が、送電端出力の減少量P4-P3と一致する。このようにして、発電室温度は時系列に変化しないように一定に維持される。
【0092】
図16は、電力系統PSの電力需要Pが一定である場合の水蒸気電解運転モードにおける電力および発電室温度の時系列変化を示している。
図16に示すように、水蒸気電解運転モードでは、直流電力生成部200から電解セル20へ供給される直流電力の変動に伴って、電解セル20の消費電力が変動する。燃料電池10は、負荷電流が一定となるように制御されるため、燃料電池10の出力電力と発電室温度と送電端出力は、電解セル20の消費電力が変動に伴う電解セル20の吸熱反応の状態により変動する。
【0093】
図17は、電力系統PSの電力需要Pが一定である場合の水素需要追従モードにおける電力および発電室温度の時系列変化を示している。
図17に示すように、水素需要追従モードでは、水素需要Hの変動に伴って、電解セル20の消費電力が変動する。燃料電池10は、負荷電流が一定となるように制御されるため、燃料電池10の出力電力と発電室温度と送電端出力は、電解セル20の消費電力の変動に伴う電解セル20の吸熱反応の状態により変動する。
【0094】
以上説明した本実施形態の燃料電池システム100が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の燃料電池システム100によれば、燃料ガスFGと酸化性ガスとを反応させて発電を行う燃料電池10と、水蒸気電解により水素を生成する電解セル20とを備える。燃料電池10で生成される直流電力は、変換器40により交流電力に変換されて電力系統PSへ出力される。電解セル20の水蒸気電解に用いられる直流電力は、燃料電池10から供給される。
【0095】
本実施形態の燃料電池システム100によれば、電力系統PSから要求される電力需要Pよりも燃料電池10で生成された直流電力を変換した交流電力が大きい場合、制御部90が、燃料電池10で生成される直流電力を電解セル20へ供給する供給状態とするよう切替部S1を制御する。このようにすることで、燃料電池10が出力する電力を低下させる必要がないため、燃料電池10の高い発電効率を維持することができる。また、燃料電池10が生成する余剰の電力を電解セル20の水蒸気電解に用いる電力として有効に活用することができる。また、燃料電池10の発電電力の一部を変換器(第1変換部)40と変換器(第2変換部)45
を介さずに、切替部S1を介して電解セル20へ供給するため、直交変換及び交直変換による電力損失がなく効率よく運用できる。
【0096】
また、本実施形態の燃料電池システム100によれば、燃料電池10の発電室215に電解セル20の酸素極21および水素極22が配置されるため、燃料電池10で発電する際に生じた熱を電解セル20の酸素極21および水素極22を運転可能な温度に加熱するために用いることができる。そのため、燃料電池システム100の熱効率を高めることができる。
【0097】
また、本実施形態の燃料電池システム100によれば、直流電力生成部200で生成される直流電力が電力系統PSの電力需要P以上である場合、制御部90が、直流電力生成部200で生成される直流電力を電解セル20へ供給する供給状態とするよう切替部S2を制御する。このようにすることで、直流電力生成部200が生成する余剰の電力を電解セル20の水蒸気電解に用いる電力として有効に活用することができる。
【0098】
本実施形態の燃料電池システム100によれば、電力系統PSから供給される交流電力が、変換器45により直流電力に変換されて電解セル20へ出力されるため、電力系統PSから供給される電力を用いて電解セル20における水素の生成を促進することができる。
【0099】
以上説明した各実施形態に記載の燃料電池システムは例えば以下のように把握される。
本開示の第1態様に係る燃料電池システム(100)は、空気極と燃料極とを有し、前記燃料極に供給される燃料ガスと前記空気極に供給される酸化性ガスとを反応させて発電を行う燃料電池(10)と、酸素極と水素極とを有し、前記水素極に供給される水蒸気を水蒸気電解して水素を生成する電解セル(20)と、前記燃料電池で生成される直流電力を交流電力に変換して電力系統(PS)へ出力する第1変換部(40)と、前記電力系統から要求される電力需要よりも前記燃料電池で生成された直流電力を変換した交流電力が大きい場合に、前記電解セルの消費電流値を増加するよう制御する制御部と、を備える。
【0100】
本開示の第1態様に係る燃料電池システムによれば、燃料ガスと酸化性ガスとを反応させて発電を行う燃料電池と、水蒸気電解により水素を生成する電解セルとを備える。燃料電池で生成される直流電力は、第1変換部により交流電力に変換されて電力系統へ出力される。電解セルの水蒸気電解に用いられる直流電力は、燃料電池から供給される。
【0101】
本開示の第1態様に係る燃料電池システムによれば、電力系統から要求される電力需要よりも燃料電池で生成された直流電力を変換した交流電力が大きい場合、制御部が、電解セルの消費電流値を増加するよう制御する。このようにすることで、燃料電池が出力する電力を低下させる必要がないため、燃料電池の発電効率を維持することができる。また、燃料電池が生成する余剰の電力を電解セルの水蒸気電解に用いる電力として有効に活用することができる。
【0102】
本開示の第2態様に係る燃料電池システムは、第1態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記燃料電池は、前記空気極および前記燃料極が配置される発電室(215)を備え、前記電解セルの前記酸素極および前記水素極は前記発電室に配置される。
本開示の第2態様に係る燃料電池システムによれば、燃料電池の発電室に電解セルの酸素極および水素極が配置されるため、燃料電池で発電する際に生じた熱を電解セルの酸素極および水素極を運転可能な温度に加熱するために用いることができる。そのため、燃料電池システムの熱効率を高めることができる。
【0103】
本開示の第3態様に係る燃料電池システムは、第1態様または第2態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記燃料電池で生成される直流電力を前記電解セルへ供給する第1供給状態と、前記燃料電池で生成される直流電力を前記電解セルへ供給しない第1遮断状態とを切り替える第1切替部(S1)と、直流電力生成部で生成される直流電力を前記電解セルへ供給する第2供給状態と、前記直流電力生成部で生成される直流電力を前記電解セルへ供給しない第2遮断状態を切り替える第2切替部(S2)と、を備え、前記制御部は、前記電力系統から要求される電力需要よりも前記燃料電池で生成された直流電力を変換した交流電力が大きい場合に、前記第1供給状態とするよう前記第1切替部を制御し、前記直流電力生成部で生成される直流電力が前記電力系統の前記電力需要以上である場合に、前記第2供給状態とするよう前記第2切替部を制御する。
【0104】
本開示の第3態様に係る燃料電池システムによれば、電力系統から要求される電力需要よりも燃料電池で生成された直流電力を変換した交流電力が大きい場合、制御部が、燃料電池で生成される直流電力を電解セルへ供給する第1供給状態とするよう第1切替部を制御する。このようにすることで、燃料電池が出力する電力を低下させる必要がないため、燃料電池の発電効率を維持することができる。また、燃料電池が生成する余剰の電力を電解セルの水蒸気電解に用いる電力として有効に活用することができる。
また、直流電力生成部で生成される直流電力が電力系統の電力需要以上である場合、制御部が、直流電力生成部で生成される直流電力を電解セルへ供給する第2供給状態とするよう第2切替部を制御する。このようにすることで、直流電力生成部が生成する余剰の電力を電解セルの水蒸気電解に用いる電力として有効に活用することができる。
【0105】
本開示の第4態様に係る燃料電池システムは、第1態様または第2態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記電力系統から供給される交流電力を直流電力に変換して前記電解セルへ出力する第2変換部(45)を備える。
本開示の第4態様に係る燃料電池システムによれば、電力系統から供給される交流電力が、第2変換部により直流電力に変換されて電解セルへ出力されるため、電力系統から供給される電力を用いて電解セルにおける水素の生成を促進することができる。
【0106】
本開示の第5態様に係る燃料電池システムの制御方法において、前記燃料電池システムは、空気極と燃料極とを有し、前記燃料極に供給される燃料ガスと前記空気極に供給される酸化性ガスとを反応させて発電を行う燃料電池と、酸素極と水素極とを有し、前記水素極に供給される水蒸気を水蒸気電解して水素を生成する電解セルと、前記燃料電池で生成される直流電力を交流電力に変換して電力系統へ出力する第1変換部と、を有し、前記電力系統から要求される電力需要よりも前記燃料電池で生成された直流電力を変換した交流電力が大きい場合に、前記電解セルの消費電流値を増加するように制御する第1制御工程を備える。
【0107】
本開示の第5態様に係る燃料電池システムの制御方法によれば、燃料電池システムは、燃料ガスと酸化性ガスとを反応させて発電を行う燃料電池と、水蒸気電解により水素を生成する電解セルとを備える。燃料電池で生成される直流電力は、第1変換部により交流電力に変換されて電力系統へ出力される。電解セルの水蒸気電解に用いられる直流電力は、燃料電池から供給される。
【0108】
本開示の第5態様に係る燃料電池システムの制御方法によれば、電力系統から要求される電力需要よりも燃料電池で生成された直流電力を変換した交流電力が大きい場合、第1制御工程が、電解セルの消費電流値を増加するよう制御する。このようにすることで、燃料電池が出力する電力を低下させる必要がないため、燃料電池の発電効率を維持することができる。また、燃料電池が生成する余剰の電力を電解セルの水蒸気電解に用いる電力として有効に活用することができる。
【0109】
本開示の第6態様に係る燃料電池システムの制御方法は、第5態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記燃料電池は、前記空気極および前記燃料極が配置される発電室(215)を備え、前記電解セルの前記酸素極および前記水素極と前記発電室に配置される。
本開示の第6態様に係る燃料電池システムの制御方法によれば、燃料電池の発電室に電解セルの酸素極および水素極が配置されるため、燃料電池で発電する際に生じた熱を電解セルの酸素極および水素極を運転可能な温度に加熱するために用いることができる。そのため、燃料電池システムの熱効率を高めることができる。
【0110】
本開示の第7態様に係る燃料電池システムの制御方法は、第5態様または第6態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記燃料電池システムは、前記燃料電池で生成される直流電力を前記電解セルへ供給する第1供給状態と、前記燃料電池で生成される直流電力を前記電解セルへ供給しない第1遮断状態とを切り替える第1切替部と、直流電力生成部で生成される直流電力を前記電解セルへ供給する第2供給状態と、前記直流電力生成部で生成される直流電力を前記電解セルへ供給しない第2遮断状態を切り替える第2切替部と、を有し、前記第1制御工程は、前記電力系統から要求される電力需要よりも前記燃料電池で生成された直流電力を変換した交流電力が大きい場合に、前記第1供給状態とするよう前記第1切替部を制御し、前記直流電力生成部で生成される直流電力が前記電力系統の前記電力需要以下である場合に、前記第2供給状態とするよう前記第2切替部を制御する第2制御工程を備える。
【0111】
本開示の第7態様に係る燃料電池システムの制御方法によれば、電力系統から要求される電力需要よりも燃料電池で生成された直流電力を変換した交流電力が大きい場合、第1制御工程が、燃料電池で生成される直流電力を電解セルへ供給する第1供給状態とするよう第1切替部を制御する。このようにすることで、燃料電池が出力する電力を低下させる必要がないため、燃料電池の発電効率を維持することができる。また、燃料電池が生成する余剰の電力を電解セルの水蒸気電解に用いる電力として有効に活用することができる。
また、直流電力生成部で生成される直流電力が電力系統の電力需要以上である場合、第2制御工程が、直流電力生成部で生成される直流電力を電解セルへ供給する第2供給状態とするよう第2切替部を制御する。このようにすることで、直流電力生成部が生成する余剰の電力を電解セルの水蒸気電解に用いる電力として有効に活用することができる。
【0112】
本開示の第8態様に係る燃料電池システムの制御方法は、第5態様または第6態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記燃料電池システムは、前記電力系統から供給される交流電力を直流電力に変換して前記電解セルへ出力する第2変換部を有する。
本開示の第8態様に係る燃料電池システムの制御方法によれば、電力系統から供給される交流電力が、第2変換部により直流電力に変換されて電解セルへ出力されるため、電力系統から供給される電力を用いて電解セルにおける水素の生成を促進することができる。
【符号の説明】
【0113】
10 燃料電池
11 空気極
12 燃料極
20 電解セル
21 酸素極
22 水素極
30 補助機器
40 変換器(第1変換部)
45 変換器(第2変換部)
50 再生熱交換器
60 冷却器
70 水素濃度計
81,82,83 ブロワ
90 制御部
91,92 開閉弁
93,94,95,96 制御弁
100 燃料電池システム
101 セルスタック
103 基体管
105 電気化学単セル
107 インターコネクタ
109 第1電極
111 固体電解質膜
113 第2電極
115 リード膜
200 直流電力生成部
201 電気化学セルモジュール
203 電気化学セルカートリッジ
215 発電室
E 電力
FG 燃料ガス
H 水素需要
Imax 上限電流値
Ir 定格電流値
P 電力需要
PS 電力系統
S1 切替部(第1切替部)
S2 切替部(第2切替部)
S3 切替部
Tr 定格温度
ΔH 乖離値
ΔP 乖離値