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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106830
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】自己位置取得装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/08 20100101AFI20240801BHJP
   G01S 19/37 20100101ALI20240801BHJP
   G01S 19/43 20100101ALI20240801BHJP
【FI】
G01S19/08
G01S19/37
G01S19/43
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011293
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清原 將裕
(72)【発明者】
【氏名】太田 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】緒方 岳
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062BB01
5J062CC07
5J062DD24
5J062EE02
5J062EE05
(57)【要約】
【課題】コストを抑えながら安定して高精度測位を行うことが可能な自己位置取得装置を提供する。
【解決手段】測位衛星から受信した測位電波の受信情報及び受信情報を補強する補強情報に基づいて測位を行う第1測位方式と、受信情報及びネットワークを介して測位サーバから受信した測位補助情報に基づいて測位を行う第2測位方式を、第1測位方式において精度が低下する阻害期間、及び、補強情報の有効期間に基づいて切り替える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位衛星から受信した測位電波の受信情報及び該受信情報を補強する補強情報に基づいて測位を行う第1測位方式と、該受信情報及びネットワークを介して測位サーバから受信した測位補助情報に基づいて測位を行う第2測位方式とを切り替える、自車両に搭載された自己位置取得装置であって、
前記第1測位方式において精度が低下する阻害期間、及び、前記補強情報の有効期間に基づいて、該第1測位方式を前記第2測位方式に切り替えることを特徴とする自己位置取得装置。
【請求項2】
前記阻害期間及び前記補強情報の有効期間に基づいて、
前記阻害期間よりも前に受信を完了する前記補強情報の有効期間が終了する時刻である第1時刻と、
前記阻害期間終了後に受信を開始する前記補強情報の有効期間開始時刻である第2時刻と、を特定し、
前記第1時刻と前記第2時刻とを比較して、前記第1測位方式を前記第2測位方式に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の自己位置取得装置。
【請求項3】
前記第1時刻までに前記第2時刻が到来する場合には、前記第1測位方式を維持し、
前記第1時刻よりも後に前記第2時刻が到来する場合には、前記第2測位方式に切り替えることを特徴とする請求項2に記載の自己位置取得装置。
【請求項4】
前記阻害期間は、自車両の上空が遮蔽される遮蔽期間であることを特徴とする請求項1に記載の自己位置取得装置。
【請求項5】
自車両に搭載された内界認識装置によってホイールオドメトリ法の精度状態に関する情報を取得し、
前記阻害期間内において、自己位置を推定するための車両の移動量を算出する算出方式として、測位衛星の数に関する以下の数式1、及び、ホイールオドメトリ法の精度状態に関する以下の数式2に応じて、
数式1が成り立つ場合には、測位衛星に基づいて車両の移動量を算出する第1算出方式に切り替え、
数式1が成り立たず、数式2が成り立つ場合には、ホイールオドメトリ法に基づいて車両の移動量を算出する第2算出方式に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の自己位置取得装置。
[数1]
N1≧Nsat1
N1:以下の全ての条件に適合する衛星数
観測できている測位衛星
阻害開始までの時間が所定値(Tthr)以上
走行経路に基づく自車進行方位(Dvehicle)、測位衛星の方位角(D
sat)、及び、所定の範囲内(Dthr)が以下の関係にあたる測位衛星
Dvehicle-Dsat%180<Dthr
ここで、“%”は剰余記号を意味する
Nsat1:衛星数に関する所定の第1閾値
[数2]
Ind<Det1
Ind:ホイールオドメトリ法の精度状態の指標
Det1:ホイールオドメトリ法の精度状態に関する所定の第1閾値
【請求項6】
数式1及び数式2が成り立たない場合において、ホイールオドメトリ法の精度状態に関する以下の数式3、及び、測位衛星の数に関する以下の数式4に応じて、
数式3が成り立つ場合には、前記第2算出方式に切り替え、
数式3が成り立たず、もしくは数式4が成り立つ場合には、前記第1算出方式に切り替えることを特徴とする請求項5に記載の自己位置取得装置。
[数3]
Det1≦Ind<Det2
Ind:ホイールオドメトリ法の精度状態の指標
Det1:ホイールオドメトリ法の精度状態に関する所定の第1閾値
Det2:ホイールオドメトリ法の精度状態に関する所定の第2閾値
[数4]
N2≧Nsat2
N2:以下の全ての条件に適合する衛星数
観測できている測位衛星
阻害開始までの時間が所定値(Tthr)以上
走行経路に基づく自車進行方位(Dvehicle)、測位衛星の方位角(D
sat)、及び、所定の範囲内(Dthr)が以下の関係にあたる測位衛星
|Dvehicle-Dsat|%180<Dthr
ここで、“%”は剰余記号を意味する
Nsat2:衛星数に関する所定の第2閾値
【請求項7】
自車両に搭載された外界認識装置によって得られる路面状態に基づいて前記ホイールオドメトリ法の精度状態に関する所定の第1閾値を変更することを特徴とする請求項5に記載の自己位置取得装置。
【請求項8】
前記阻害期間及び前記補強情報の有効期間のうち何れか1つ以上を過去履歴として記憶することを特徴とする請求項1に記載の自己位置取得装置。
【請求項9】
地図を用いて前記阻害期間を算出することを特徴とする請求項1に記載の自己位置取得装置。
【請求項10】
前記地図が更新されることを特徴とする請求項9に記載の自己位置取得装置。
【請求項11】
自車両に搭載された通信部が、他車両、道路設備及び施設のうち何れか1つ以上と通信を行うことによって得られる自車両以外が取得した情報を用いて前記阻害期間を算出するか、または、
前記通信部が他車両、道路設備及び施設のうち何れか1つ以上と通信を行うことによって得られる自車両以外が取得した補強情報から前記補強情報の有効期間を取得するかのうち少なくとも何れか一方を行うことを特徴とする請求項1に記載の自己位置取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己位置取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から移動体に関して現在の自己位置を計測する技術が知られている。例えば、測位衛星から受信した電波に載っている受信情報に基づいて自車両の測位を車両単独で行う単独測位の方式が知られている。また、受信情報及びネットワークを介して測位サーバから受信した測位補助情報に基づいて自車両の測位を行うネットワークアシスト方式も知られている。そして、特許文献1には、上述の2つの測位方式を組み合わせて使用する技術が開示されている。
【0003】
特許文献1の技術では、上方が閉じられた空間内に車両が位置することを検出し、または、近い将来に移動することを予測し、もしくは、電波の品質が所定レベルよりも低下した場合に、単独測位の方式からネットワークアシスト方式に測位方式を切り替えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-115573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上方が閉じられた空間であっても、歩道橋などのように、測位衛星と自車両の間が瞬間的に遮られる場合も多々考えられる。そのような場合であっても、特許文献1に記載の技術のように都度ネットワークアシスト方式に切り替えるとネットワーク利用料などの別途コストが過度に発生してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、ネットワークアシスト方式の利用を最小限とし、可能な限り単独測位の方式によって測位することで、コストを抑えながら安定して高精度測位を行うことが可能な自己位置取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の自己位置取得装置は、測位衛星から受信した測位電波の受信情報及び該受信情報を補強する補強情報に基づいて測位を行う第1測位方式と、該受信情報及びネットワークを介して測位サーバから受信した測位補助情報に基づいて測位を行う第2測位方式を、切り替える自車両に搭載された自己位置取得装置であって、前記第1測位方式において精度が低下する阻害期間、及び、前記補強情報の有効期間に基づいて、該第1測位方式を前記第2測位方式に切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ネットワークアシスト方式の利用を最小限とし、可能な限り単独測位の方式によって測位することで、コストを抑えながら安定して高精度測位を行うことが可能な自己位置取得装置を提供することができる。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る自己位置取得装置の構成を説明するブロック図。
図2図1に示す自己位置取得装置による測位方式の切り替え処理の流れの一例を説明するフローチャート。
図3】第1実施形態に係る補強情報の各フレームと補強情報の有効期間との関係を説明する図。
図4A】第1実施形態に係る補強情報の受信が阻害された場合における補強情報の有効期間の状態を時系列順に示す図。
図4B】第1実施形態に係る補強情報の受信が短時間阻害された場合における補強情報の有効期間の状態を時系列順に示す図。
図5】第2実施形態に係る衛星測位に基づいて自車移動量を算出する際の、測位衛星の選択に関する説明図。
図6】第2実施形態に係る自己位置取得装置の構成を説明するブロック図。
図7図6に示す算出方式切替部による自車移動量算出方式の切り替えにおける判断処理の一例を示すフローチャート。
図8】第3実施形態に係る自己位置取得装置を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各実施形態において同一の符号を付された構成については、特に言及しない限り、各実施形態において同様の機能を有し、その説明を省略する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る自己位置取得装置1の構成を説明するブロック図である。自己位置取得装置1は、自車両に搭載されており、直線路やカーブといった走行経路に対する自車両の位置を自己位置として取得し、車両内の別装置に送信する。
【0012】
自己位置取得装置1には、測位装置2と外界認識装置3が接続されている。
【0013】
測位装置2は、自車両に搭載されており、複数の測位衛星から測位電波を受信する第1受信機21と、これら複数の測位衛星とは異なる他の測位衛星から測位電波の受信情報を補強する補強情報を受信する第2受信機22と、ネットワークを介して測位サーバから測位電波の受信情報を補助する測位補助情報を受信する第3受信機23と、測位電波の受信情報と補強情報に基づく第1測位方式、または、測位電波の受信情報と測位補助情報に基づく第2測位方式のいずれかにより測位演算を行う測位エンジン24と、を有する。測位電波の受信情報には、測位衛星が測位電波を送信した日付及び時刻、測位衛星自身の位置情報、他の測位衛星の軌道情報、及び、電離層の情報の少なくとも一つが含まれている。
【0014】
第1受信機21と第2受信機22は、GPS衛星や準天頂衛星などの測位衛星から測位電波や補強情報を受信するGNSS受信機であり、第3受信機23は、例えば一般にネットワーク型RTK-GNSSと呼ばれる測位方式に用いる測位補助情報を受信するための通信装置である。測位エンジン24は、例えばマイクロコントローラによって構成されており、測位演算により緯度、経度、高度及び時刻などの自己位置情報を算出して自己位置取得装置1に出力する処理を行う。測位装置2は、第2受信機22により取得した補強情報についても自己位置取得装置1に出力する。
【0015】
第1受信機21と第2受信機22は、GNSS受信機に限らず、測位電波の受信情報に基づいて測位衛星の信号を追跡する単純な機器であってもよく、この場合は、自己位置取得装置1において自己位置情報の算出が行われる。第1受信機21と第2受信機22は別体のものに限定されず、同一の機体内において一体に構成され、測位電波と補強情報の両方の受信を行う構成のものであってもよい。
【0016】
第1測位方式は、測位衛星の測位電波に基づいて単独で現在位置を算出する単独測位の方式である。第1測位方式は、本実施形態に係る自己位置取得装置1においては、測位電波の受信が遮られて測位が困難にならない限り、優先的に用いられる測位方式である。第1測位方式では、例えば、CLAS(Centimeter Level Augmentation Service)や、HAS(High Accuracy Service)などの測位補強情報サービスにより、特定の測位衛星から送信される補強情報を利用することで、高精度測位を行う。
【0017】
第1測位方式では、補強情報に含まれる衛星時計誤差、衛星軌道誤差、衛星信号バイアス、電離圏遅延誤差といった要因ごとの誤差量が取得される。そして、要因ごとの誤差量を用いて、他の複数の測位衛星から受信した測位電波の受信情報を補正することで高精度測位を行う。
【0018】
第1測位方式では、1フレーム分の補強情報を連続して受信する必要がある。例えば、CLASでは準天頂衛星みちびきから送信される1フレーム分の補強情報の受信に必要な時間は30秒である。例えば、1フレーム分の補強情報の受信途中で、補強情報を送信する特定の測位衛星と測位装置2の受信アンテナとの間に、歩道橋や跨道橋、トンネルといった障害物が介在されて、第2受信機22による補強情報の受信が妨げられると、当該補強情報は使用できなくなり、フレームに含まれる要因ごとの誤差量を用いた補正ができなくなる。
【0019】
また、補強情報は、1フレーム分の受信が妨げられることなく完了した場合であっても、時間経過に伴って要因ごとの誤差量が変化していくという特徴を有している。したがって、受信完了から一定時間が経過すると当該補強情報は使用できなくなり、補強情報のフレームに含まれる要因ごとの誤差量を用いた補正ができなくなる。補強情報の受信を完了してからその補強情報の使用ができなくなるまでの時間は、測位補強情報サービスの種類や期待する測位精度によって異なるが、60秒程度に設定されることが多い。
【0020】
第2測位方式は、通信ネットワークを介して測位サーバから受信した測位補助情報と、測位衛星からの測位電波の受信情報とに基づいて現在位置を算出するネットワークアシスト方式である。第2測位方式として、例えば測位衛星からの測位電波に加え、自車両の近傍に設置または設定された基準局での測位電波の観測情報に基づいて測位を行うRTK(Real Time Kinematic)方式を用いることができる。RTK方式は、二重位相差に基づいて測位誤差を除去する方式であり、前述の測位補強情報サービスのような補強情報を受信し続ける必要はない。第2測位方式では、常時基準局の観測情報を通信回線経由で取得し続ける必要がある。したがって、測位サーバとの間の通信に有料のネットワークを使用する場合には、通信の通信料が発生する。
【0021】
外界認識装置3は、自車両に搭載されており、自車両の周囲の外界を認識する。外界認識装置3としては、主にステレオカメラやLiDARといった対象物との距離や位置関係を測るセンサ類を意図している。その他、外界認識装置3としては、対象物の大きさや、種別を観測することができるものであることが好ましい。外界認識装置3は、特定の測位衛星から補強情報が受信できずに測位精度が低下する空間などの対象物の情報(以下、対象物情報ともいう)を取得する。対象物情報は、対象物までの距離の情報を含み、好ましくは対象物までの距離、自車両が対象物に到達するまでの到達時間、自車両と対象物との位置関係、対象物の大きさ、及び対象物の種別の情報を含む。外界認識装置3は、計測によって得た対象物情報を、自己位置取得装置1に送信する。
【0022】
本実施形態においては、対象物のうち、自車進行路にかかる歩道橋及び高架橋、並びに、自車進行路沿いに存在する建築物などの、補強情報を送信する特定の測位衛星と各受信機の受信アンテナとの間を遮る障害物、すなわち自車両の上空を遮蔽する可能性のある外的な環境上の障害物を阻害要因とみなす。そして、阻害要因までの距離、到達時間、阻害要因の大きさ、自車両と阻害要因との位置関係、及び阻害要因の種別を阻害要因の対象物情報(以下、単に阻害要因情報ともいう)とする。なお、「阻害」とは、外的な環境上の要因によって測位精度が低下するように特定の測位衛星と各受信機の受信アンテナとの間を遮ることを指す。
【0023】
自己位置取得装置1は、例えば、中央処理装置(CPU)と、ROMやRAMなどのメモリと、タイマと、入出力部とを備えた一つ以上のマイクロコントローラによって構成される。自己位置取得装置1は、図1に示すように、位置取得部101、阻害期間算出部102、有効期間取得部103及び測位方式切替部104を備えており、これらの各部はマイクロコントローラのソフトウェア処理により具現化される。
【0024】
位置取得部101は、測位装置2から自車両の自己位置情報を取得する。位置取得部101は、取得した自己位置情報を車両内の別装置に送信する。位置取得部101は、例えば第1受信機21で測位演算することによって得られる緯度・経度・高度・時刻などを取得してもよい。
【0025】
位置取得部101は、外界認識装置3からの自車両の自己位置情報を取得してもよい。例えば、外界認識装置3の単眼カメラを用いて車室外を撮影することによって得られる標識や看板・店舗などの外観・路面標示などの情報と地図とに基づいて自己位置を推定してもよい。また、車両とは別に独立したインフラ側に設置したセンサを用いて車両を観測して得られた自己位置の情報を、無線通信や光通信・インターネット経由での通信などで取得してもよい。
【0026】
阻害期間算出部102は、自己位置を取得する第1測位方式において精度が低下する阻害期間を算出する。阻害期間算出部102は、外界認識装置3から送信された対象物情報を取得して阻害期間を算出する。例えばステレオカメラを用いて、自車進行路にかかる歩道橋や高架橋といった、補強情報を送信する特定の測位衛星と測位装置2の受信アンテナとの間を遮蔽する可能性のある障害物を認識し、それら障害物までの距離と大きさを計測する。
【0027】
阻害期間算出部102は、補強情報を送信している特定の測位衛星からの測位電波の受信情報をデコードすることによって、補強情報を送信する特定の測位衛星の仰角及び方位角を得る。阻害期間算出部102は、取得した対象物情報が含んでいる自車両から対象物までの距離及び対象物の大きさ、デコードして得た特定の測位衛星の仰角及び方位角、並びに、自車速度及び自車両の進行方向を用いて補強情報の受信が阻害されるか否かを判断する。阻害期間算出部102は、判断結果を測位方式切替部104に送信する。
【0028】
阻害期間算出部102は、補強情報の受信が阻害されると判断した場合、更に、対象物情報のうち主に対象物までの距離、自車両と対象物との位置関係、自車速度、自車両の進行方向、及び、特定の測位衛星の仰角及び方位角に基づいて阻害開始時刻を算出する。次いで、阻害開始時刻、並びに、対象物情報のうち主に対象物の大きさ及び種別の情報に基づいて阻害終了時刻を算出する。阻害開始時刻は、対象物による補強情報の受信阻害が開始される時刻を指す。阻害終了時刻は、対象物による補強情報の受信阻害が終了する時刻を指す。阻害開始時刻から阻害終了時刻までの期間を阻害期間という。阻害期間算出部102は、算出した阻害期間の情報を測位方式切替部104に送信する。阻害期間は、自車両の上空が遮蔽される遮蔽期間であるともいえる。
【0029】
なお、障害物を認識する手段として、ステレオカメラを例に出して説明したが、LiDARを用いてもよく、またはカメラなどの他センサで自車位置を同定後に地図情報と組み合わせることで障害物を認識し、阻害開始時刻や阻害終了時刻を算出してもよい。あるいは外部からの通信で阻害期間を受信して取得してもよい。
【0030】
阻害期間算出部102は、例えば対象物までの距離、自車両と対象物との位置関係、自車速度、及び、自車両の進行方向に基づいてt秒後の自車両の位置を算出し、算出した自車両の位置と特定の測位衛星の仰角及び方位角に基づいて、対象物が特定の測位衛星と受信アンテナとの間を遮るか否かを判定する。対象物が特定の測位衛星と受信アンテナとの間を遮ると判定された場合、このt秒後の時刻を阻害開始時刻とする。
【0031】
阻害期間算出部102は、阻害終了時刻を算出するにあたって、対象物の種別によって、瞬間的な阻害か、所定時間以上の連続的な阻害かを判別してもよい。すなわち、ガントリーに設置された看板や歩道橋、単車線の跨道橋といった短時間で通過することが可能な対象物である場合は短時間、例えば1秒程度でその下を通過するため瞬間的な阻害であると認識し、(t+1)を阻害終了時刻とする。一方でトンネルや多層構造道路の下部道路といった長時間、例えば数十秒程度以上継続する対象物の場合は所定時間以上の連続的な阻害であると認識し、tに一定値を加えた値を阻害終了時刻とする。
【0032】
なお、障害物や遮蔽物などの対象物となり得るものが自車進行経路上に観測できない場合や、対象物が遠方であったり自車速度が低速だったりしたために所定の時間内、例えば補強情報のフレーム長の時間内に対象物まで到達しない場合には、阻害期間がないものとして算出してもよい。
【0033】
また、画像認識による処理負荷を低減するため、認識対象をより簡素にしてもよい。例えば、車両の上空が遮蔽されることによって阻害があることを検知するだけでもよい。
【0034】
有効期間取得部103は、測位に用いる補強情報の有効期間を取得する。有効期間取得部103は、特定の測位衛星から受信する補強情報のうち、補強情報の有効期間の始点となる補強情報の受信完了時刻を取得する。例えば、CLASによる補強情報の場合、有効期間取得部103は、特定の測位衛星からL6周波数帯で送信される補強情報をデコードする。補強情報のフレーム長は各補強情報の仕様から既知である。
【0035】
CLASによる補強情報の場合は、衛星クロックは5秒、電離層補正や大気圏補正、衛星軌道などの情報は30秒毎に送信されることが決められており、送信されるメッセージフォーマット、メッセージ長及びビットレートも厳密に決められている。また、これらの内容は衛星メッセージ中のサブタイプ番号で区別されている。よって、有効期間取得部103は、デコード結果によって補強情報の受信完了時刻を取得することができる。補強情報の受信完了時刻は、補強情報の1フレーム分の受信が完了する時刻を指す。
【0036】
補強情報に含まれる情報は、時間経過に伴って実際の状態との乖離が生じ、時間が過度に経過すると利用に耐えないほどに実際の状態と乖離するおそれがある。このため、有効期間取得部103は、補強情報の有効期間を決定する。補強情報の有効期間は、実際の状態との乖離が利用に耐え得る期間であり、例えば本実施形態では、補強情報の受信完了時刻から60秒間であると定められている。
【0037】
補強情報の有効期間の決定には、補強情報に含まれる情報毎に決められた仕様の値を利用してもよい。例えばCLASの場合、衛星クロックは10秒、電離層補正や大気圏補正、衛星軌道などの情報は60秒と仕様で決められている。ただし、補強情報は、時間経過により徐々に実際の状態との乖離が拡大するおそれがあるため、特に精度が必要な場合には補強情報の有効期間をより短く設定してもよい。
【0038】
補強情報の有効期間は、太陽フレアの発生に伴い電離圏遅延誤差の変動が大きくなる場合などのように、誤差情報の変動に応じて変更してもよい。具体的には、太陽フレアが活発な時期などは、電離層擾乱が大きくなるため、補強情報の有効期間をより短く設定してもよく、逆に太陽フレアが平穏な時期などは、補強情報の有効期間をより長く設定してもよい。
【0039】
測位方式切替部104は、阻害期間と補強情報の有効期間に基づき、測位装置2によって受信される補強情報を利用できない期間が発生するか否かを判断する。例えば阻害期間が補強情報の有効期間よりも長く、補強情報を利用できない期間が発生してしまうと判断した場合には、測位装置2の測位方式を第1測位方式から第2測位方式に事前に切り替える指示を測位装置2に出力する。一方、阻害期間があったとしても補強情報の有効期間内であり、補強情報を利用できない期間が発生しないと判断した場合には、測位方式の切替は行わず、第1測位方式を維持する指示を測位装置2に出力する。
【0040】
測位装置2は、測位方式を第1測位方式から第2測位方式に切り替える場合には、通信リンクを確立し、近傍の基準局を選択する、または、測位補助情報を生成するための自車両の緯度及び経度を測位サーバに送信し、サーバ側の応答を待つ、といった時間が必要となる。したがって、測位方式切替部104は、第2測位方式に切り替えるよりも前のタイミングで、測位装置2に対して通信リンクの確立などの第2測位方式に切り替えるための事前処理を開始するよう指示を出力する。
【0041】
測位方式切替部104は、第2測位方式を実行中に阻害期間が終了して補強情報を利用可能となった場合には、測位装置2に対して第2測位方式を第1測位方式に戻す処理を行うよう指示を出力する。
【0042】
図2は、図1に示す自己位置取得装置1による測位方式の切り替え処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0043】
自己位置取得装置1の阻害期間算出部102は、第2受信機22から補強情報を取得する処理を行う(ステップS101)。取得した補強情報は、有効期間取得部103を介して測位方式切替部104に提供される。
【0044】
阻害期間算出部102は、阻害期間を算出する処理を行う(ステップS102)。阻害期間算出部102は、外界認識装置3によって得られた対象物情報、補強情報をデコードして得た特定の測位衛星の仰角及び方位角、並びに、自車速度及び自車両の進行方向の情報に基づいて対象物の有無を判断する。そして、対象物が観測された場合に阻害期間を算出し、その阻害期間の開始時刻及び終了時刻を含む情報を、測位方式切替部104に提供する。阻害期間算出部102は、対象物が観測されない場合や、所定時間内に対象物が到来しない場合には、阻害期間がないという情報を測位方式切替部104に提供する。
【0045】
測位方式切替部104は、阻害期間の有無を確認する(ステップS103)。そして、阻害期間があると判定した場合に(ステップS103でYes)、阻害期間よりも前に受信を完了する補強情報を特定し、その特定した補強情報の有効期間が終了する時刻である第1時刻tAを特定する(ステップS104)。測位方式切替部104では、阻害開始時刻と補強情報の受信完了時刻とを比較して、阻害開始時刻に最も近く、且つ、阻害期間よりも前に受信を完了する補強情報を特定する。そして、その特定した補強情報について、補強情報の有効期間が終了する時刻を第1時刻tAとして特定する処理を行う。
【0046】
測位方式切替部104は、第1時刻tAの特定を行うと、阻害期間終了後に受信を開始する補強情報の有効期間開始時刻である第2時刻tBの特定を行う(ステップS105)。測位方式切替部104では、阻害期間のうち阻害終了時刻と補強情報の受信完了時刻とを比較して、阻害終了時刻に最も近く、且つ、阻害終了時刻以降に受信を開始する補強情報を特定する。そして、その特定した補強情報について、補強情報の有効期間が開始する時刻を第2時刻tBとして特定する処理を行う。
【0047】
第2時刻tBは、具体的には、以下の式を用いて特定することができる。
阻害終了時刻をtrepとし、補強情報の1フレーム分の周期をtintとし、前回の補強情報の受信完了時刻をtoldとして、まず以下の式により最小のPを求める。なお、前述のとおり、阻害終了時刻及び補強情報フレームの周期は、既知である。
[数1]
trep<told+tint×P
【0048】
次いで以下の式によって、第2時刻tBを求める。
[数2]
tB=told+tint×P
【0049】
測位方式切替部104は、第1時刻tAと第2時刻tBの特定を行うと、第1時刻tAまでに第2時刻tBが到来するか否かを判定する処理を行う(ステップS106)。そして、第1時刻tAまでに第2時刻tBが到来しないと判定された場合(ステップS106でNo)、つまり、第1時刻tAよりも後に第2時刻tBが到来すると判定された場合に、測位装置2によって順次受信される補強情報のいずれも利用できない期間が発生すると判断し、測位装置2の測位方式を第1測位方式から第2測位方式に事前に切り替える処理を測位装置2に実行させるべく、その指示を測位装置2に出力する(ステップS107)。一方、第1時刻tAまでに第2時刻tBが到来すると判定された場合に(ステップS106でYes)、複数の補強情報がそれぞれ有する有効期間同士の連続性が確保できると判断し、測位装置2に第1測位方式を維持する処理を実行させるべく、その指示を測位装置2に出力する(ステップS110)。
【0050】
測位方式切替部104は、第1時刻tAに合わせて第1測位方式から第2測位方式に測位方式を切り替える指示を測位装置2に出力する。好ましくは、測位方式切替部104は、第1時刻tAよりも前のタイミングで、通信リンクの確立などの第2測位方式に切り替えるための事前処理を開始し、事前処理が済み次第、第1時刻tAが到来する前に第2測位方式に切り替えるよう指示を測位装置2に出力する。
【0051】
測位方式切替部104は、第2時刻tBのタイミングで第2測位方式から第1測位方式に測位方式を戻す指示を測位装置2に出力する(ステップS108)。測位方式切替部104は、第2測位方式から第1測位方式に測位方式が戻った後に第2測位方式に用いた通信リンクなどを切断させる処理を測位装置2に実行させる指示を測位装置2に出力する(ステップS109)。
【0052】
図3は、本実施形態に係る補強情報の各フレームと補強情報の有効期間との関係を示す図である。図3に示す時刻t1、t2、t3、t4及びt5は、一定時間毎の区切りであり、図示されていないが、本実施形態に係る自己位置取得装置1の動作中は、t5以降も中断することなく続いている。
【0053】
特定の測位衛星は、互いに異なる固有の補強情報を所定時間毎に順次送信している。各補強情報は、互いに切れ目なく連続するように送信されている。各補強情報は、互いに同じ一定のフレーム長さを有しており、測位装置2が1フレーム分の受信に要するフレーム受信時間も互いに同じ長さである。例えば本実施形態では図3に示すように、測位装置2は、特定の測位衛星から補強情報A、B、C、D及びEを連続して受信しており、特に図示していないがE以降も中断することなく続いて補強情報を受信している。測位装置2では、先の補強情報の受信が完了すると、連続して次の補強情報の受信が開始されるようになっている。図3に示す例では、時刻t1に補強情報Aの受信が完了すると、同時刻t1において補強情報Bの受信が開始される。
【0054】
補強情報は、補強情報の1フレーム分の受信が完了した時刻からその補強情報の有効期間が開始される。補強情報は、ある補強情報の有効期間とその次の補強情報の有効期間とが一部重なるようにその有効期間の長さが設定されている。例えば本実施形態では、補強情報の有効期間は、1フレームを受信するフレーム受信時間の2倍の長さに設定されており、測位装置2によって1フレーム分が連続して正常に受信できている補強情報の場合、受信を完了した時刻から2フレーム分のフレーム受信時間だけ先の時刻までの間となる。
【0055】
図3に示す例では、補強情報Aの有効期間A’の後半と、補強情報Bの有効期間B’の前半とが重なっている。補強情報Aの有効期間A’は、時刻t1から時刻t3までの時間となり、次ぐ補強情報Bの有効期間B’は、時刻t2から時刻t4までの時間となる。自己位置取得装置1では、補強情報の有効期間と次の補強情報の有効期間とが重なっている部分については、何れの補強情報も受信が完了していることを前提に、より新鮮な情報である次の補強情報を利用する。
【0056】
図3に示す例では、阻害期間はなく、補強情報の利用ができない期間は発生していない。したがって、測位方式切替部104から測位方式の切り替え指示は出力されず、測位装置2の測位方式として第1測位方式が維持される。
【0057】
図4A図4Bは、本実施形態に係る補強情報の受信が阻害された場合における補強情報の有効期間の状態を時系列順に示す図である。
【0058】
本実施形態に係る測位方式切替部104の(1)第2測位方式に切り替えるパターンの場合、及び、(2)第1測位方式を維持するパターンの動作を、図4A図4Bを用いて以下に詳述する。
【0059】
(1)第2測位方式に切り替えるパターン
図4Aに示す例では、補強情報Bの受信途中で阻害期間t10が開始され、補強情報Dの受信途中で阻害期間t10が終了している。したがって、測位装置2は、補強情報B、C、Dを利用できず、阻害期間t10が終了した後に受信を開始した補強情報Eの受信完了時刻t5から補強情報Eを利用することができる。これにより、補強情報Aの有効期間A’が終了する時刻t3から補強情報Eの利用が開始できる時刻t5までの間、補強情報を利用できない期間が発生する。
【0060】
図4Aに示す例の場合、測位方式切替部104によって、阻害期間t10があると判定され、阻害期間の開始時刻t11よりも前に受信を完了する補強情報Aが特定される。そして、その特定された補強情報Aの有効期間が終了する時刻t3が第1時刻tAとして特定される。次いで、阻害期間t10の終了時刻t12以降に受信を開始する補強情報Eが特定され、補強情報Eの有効期間開始時刻t5が第2時刻tBとして特定される。そして、測位方式切替部104によって、第1時刻tA(時刻t3)までに第2時刻tB(時刻t5)が到来しないので、測位装置2によって順次受信される補強情報のいずれも利用できない期間が発生すると判断され、測位装置2の測位方式を第1測位方式から第2測位方式に事前に切り替える指示が測位装置2に出力される。
【0061】
これにより、測位装置2は、第1時刻tA(時刻t3)が到来する前の時刻t3pにおいて、測位方式を第1測位方式から第2測位方式に切り替え、第2時刻tB(時刻t5)まで第2測位方式によって測位を行う。
【0062】
好ましくは、測位装置2は、第1時刻tA(時刻t3)よりも前のタイミングである時刻tpにおいて、測位方式切替部104の指示に従って第2測位方式に切り替えるための事前処理(通信リンクの確立など)を行う。
【0063】
また、測位方式切替部104によって、第2時刻tB(時刻t5)からは補強情報が利用できる期間であるので、測位装置2の測位方式を第2測位方式から第1測位方式に戻す指示が測位装置2に出力される。
【0064】
これにより、測位装置2は、第2時刻tB(時刻t5)において、測位方式を第2測位方式から第1測位方式に切り替え、第2時刻tB(時刻t5)から第1測位方式によって測位を行う。
【0065】
(2)第1測位方式を維持するパターン
図4Bに示す例では、補強情報Bの受信途中で阻害期間t10が開始され、補強情報Bの受信途中で阻害期間t10が終了している。したがって、測位装置2は、補強情報Bを利用できず、阻害期間t10が終了した後に受信を開始した補強情報Cの受信完了時刻t3から補強情報Cを利用することができる。これにより、補強情報Aの有効期間A’が終了する時刻と補強情報Cの利用が開始できる時刻がともに時刻t3となる。
【0066】
図4Bに示す例の場合、測位方式切替部104によって、瞬間的な阻害期間t10があると判定され、阻害期間t10の開始時刻t11よりも前に受信を完了する補強情報Aが特定される。そして、その特定された補強情報Aの有効期間が終了する時刻t3が第1時刻tAとして特定される。次いで、阻害期間t10の終了時刻t12以降に受信を開始する補強情報Cが特定され、補強情報Cの有効期間開始時刻t3が第2時刻tBとして特定される。そして、測位方式切替部104によって、第1時刻tA(時刻t3)までに第2時刻tB(時刻t3)が到来するので、測位装置2によって順次受信される複数の補強情報がそれぞれ有する有効期間同士の連続性が確保できると判断され、第1測位方式を維持する指示が測位装置2に出力される。これにより、測位装置2は、第1測位方式を維持したまま測位を行う。
【0067】
以上のように、本実施形態に係る自己位置取得装置1は、自車両に搭載されており、測位衛星から受信した測位電波の受信情報及び受信情報を補強する補強情報に基づいて測位を行う第1測位方式と、受信情報及びネットワークを介して測位サーバから受信した測位補助情報に基づいて測位を行う第2測位方式とを、切り替える。本実施形態に係る自己位置取得装置1は、第1測位方式において精度が低下する阻害期間、及び、補強情報の有効期間に基づいて、第1測位方式を第2測位方式に切り替える。
【0068】
本実施形態に係る自己位置取得装置1(図1)は、阻害期間前後において利用可能な補強情報が連続して利用できるか否か、すなわち阻害期間前後において利用可能な補強情報の有効期間が連続しているか否か(図2のS106)に基づいて、第1測位方式を第2測位方式に切り替える。本実施形態に係る自己位置取得装置1は、阻害期間前後において利用可能な補強情報の有効期間が連続している場合(図2のS106のYes、図3図4B)には、続けて第1測位方式によって測位可能なので、第1測位方式から第2測位方式への切り替えは行われず、第1測位方式が維持される(図2のS110)。これにより、本実施形態に係る自己位置取得装置1は、第1測位方式から第2測位方式への無駄な切り替えが起こることを抑制することができる。また、本実施形態に係る自己位置取得装置1は、阻害期間前後において利用可能な補強情報の有効期間が連続していない場合(図2のS106のNo、図4A)には、阻害期間前において利用可能な補強情報の有効期間が終了するタイミングで第1測位方式から第2測位方式に切り替え(図2のS107)、阻害期間後において利用可能な補強情報の有効期間が開始するタイミングで第2測位方式から第1測位方式に切り替える(図2のS108)。これにより、本実施形態に係る自己位置取得装置1は、測位精度を低下させずに高精度な自己位置取得を維持することができるとともに、第2測位方式による通信料などの無駄なコストの発生を防ぐことができる。したがって、本実施形態に係る自己位置取得装置1によれば、コストを抑えながら安定して高精度測位を行うことが可能となる。
【0069】
更に、本実施形態に係る自己位置取得装置1は、阻害期間及び補強情報の有効期間に基づいて、阻害期間よりも前に受信を完了する補強情報の有効期間が終了する時刻である第1時刻tAと、阻害期間終了後に受信を開始する補強情報の有効期間開始時刻である第2時刻tBと、を特定する。本実施形態に係る自己位置取得装置1は、第1時刻tAと第2時刻tBとを比較して、第1測位方式を第2測位方式に切り替える。
【0070】
本実施形態に係る自己位置取得装置1(図1)は、第1時刻tAと第2時刻tBを特定すること(図2のS104及びS105)によって、阻害期間前後において利用可能な補強情報の有効期間を具体的に把握することができるので、第1測位方式によって測位可能な期間(図3図4A図4B)を正確に把握にすることができる。これに加えて、本実施形態に係る自己位置取得装置1は、第1測位方式によって測位不可能な期間も正確に把握することができるので、第1測位方式によって測位不可能な期間を第2測位方式によって測位する期間(図4A)とすることができる。これにより、本実施形態に係る自己位置取得装置1は、第1測位方式から第2測位方式への無駄な切り替えがより発生し難く、且つ、測位精度を低下させずに高精度な自己位置取得を維持することが容易となる。したがって、本実施形態に係る自己位置取得装置1によれば、コストを抑えながら安定して高精度測位を行うことが更に可能となる。
【0071】
更に、本実施形態に係る自己位置取得装置1は、第1時刻tAまでに第2時刻tBが到来する場合には、第1測位方式を維持し、第1時刻tAよりも後に第2時刻tBが到来する場合には、第2測位方式に切り替える。
【0072】
本実施形態に係る自己位置取得装置1(図1)は、第1時刻tAの到来までに第2時刻tBが到来すること(図2のS106のYes、図3図4B)によって、阻害期間前後において利用可能な補強情報の有効期間が連続する状態を具体的に示している。また、本実施形態に係る自己位置取得装置1は、第1時刻tAの到来よりも後に第2時刻tBが到来すること(図2のS106のNo、図4A)によって、阻害期間前後において利用可能な補強情報の有効期間が連続しない状態を具体的に示している。本実施形態に係る自己位置取得装置1は、第1時刻tA及び第2時刻tBの比較指標を具体的に示すことによって、第1測位方式を維持する場合(図2のS110)と、第1測位方式から第2測位方式に切り替える場合(図2のS107)と、を正確に区別することができる。これにより、第1測位方式から第2測位方式への無駄な切り替えが起こることを抑制することが容易となる。したがって、本実施形態に係る自己位置取得装置1によれば、コストを抑えながら安定して高精度測位を行うことが更に可能となる。
【0073】
更に、本実施形態に係る自己位置取得装置1は、自車両の上空を遮蔽される遮蔽期間を阻害期間とする。
【0074】
本実施形態に係る自己位置取得装置1(図1)は、自車両の測位が遮られる障害物(阻害要因)が自車両の上空に存在しているものであることを明確にする。これにより、本実施形態に係る自己位置取得装置1は、適切な対象を障害物(阻害要因)として捉えることができるので、阻害期間を算出すること(図2のS102)が容易となる。この結果、本実施形態に係る自己位置取得装置1は、第1時刻tA及び第2時刻tBを阻害期間及び補強情報の有効期間から特定すること(図2のS104及びS105)も容易となるので、第1測位方式によって測位するのか、または、第2測位方式によって測位するのかを判断することも容易となる。したがって、本実施形態に係る自己位置取得装置1によれば、コストを抑えながら安定して高精度測位を行うことが更に可能となる。
【0075】
また、本実施形態に係る自己位置取得装置1は、外界認識装置3の認識対象をより簡素化することができる。これにより、処理負荷を抑えることができるので阻害要因情報を取得する速度を向上することができるとともに、より廉価なハードウェアによって自己位置取得装置1を構築することができる。
【0076】
[第2実施形態]
次に、図5図6及び図7を用いて、第2実施形態に係る自己位置取得装置1について説明する。第2実施形態に係る自己位置取得装置1において、第1実施形態に係る自己位置取得装置1と同様の構成及び動作については説明を省略する。
【0077】
第2実施形態に係る自己位置取得装置1は、内界認識装置4、移動量算出部111、状態取得部112、及び、算出方式切替部113を更に備えている点において、第1実施形態に係る自己位置取得装置1と相違する。
【0078】
また、第1実施形態に係る阻害期間算出部102は、補強情報を送信する特定の測位衛星と受信アンテナとの間の対象物に対して、阻害期間を算出する機能を有していることを説明した。これに加えて、第2実施形態に係る阻害期間算出部102は、特定の測位衛星以外の測位衛星についての阻害予測をする機能を含んでいてもよい。すなわち、第2実施形態に係る阻害期間算出部102は、個々の測位衛星からそれぞれの仰角及び方位角を電波に含まれる受信情報から取得することができる。これにより、第2実施形態に係る阻害期間算出部102は、補強情報を送信する特定の測位衛星と同様に、特定の測位衛星以外の測位衛星についても阻害期間を個別に算出することが可能である。
【0079】
第1実施形態に係る自己位置取得装置1は、阻害されていない場合は、第1測位方式によって車両の自己位置を取得する。一方、阻害期間内においては、第1実施形態に係る自己位置取得装置1は、第1時刻tAと第2時刻tBを比較して、第1時刻tAよりも後に第2時刻tBが到来する場合に第2測位方式によって車両の自己位置を取得する。この場合、車両の自己位置は、過去の測位結果に対して自車移動量を補間したものが推定された自己位置として位置取得部101に取得される。よって、阻害期間内における自己位置の取得は、第2測位方式を用いていても阻害されていない場合に比べて精度が落ちるおそれがある。
【0080】
そこで、第2実施形態に係る自己位置取得装置1は、阻害期間内において、車両の自己位置を推定するための自車移動量を、未だ阻害されていない測位衛星を用いた衛星測位に基づいて算出するか、または、ホイールオドメトリ法に基づいて算出することによって、上記課題を解決する。
【0081】
以下、第2実施形態に係る自己位置取得装置1が車両の自己位置を推定するための自車移動量を如何にして算出するのか説明する。
【0082】
第2実施形態に係る自己位置取得装置1は、阻害期間算出部102において個々の測位衛星の阻害期間を個別に算出可能なこと、及び、位置取得部101において自車両の将来の走行経路が認識可能なこと、を前提に未だ阻害されていない測位衛星に基づいて自車移動量を算出する。この算出方式を第1算出方式と呼ぶ。第1算出方式としては、観測可能であり、阻害期間までに猶予もあり、且つ自車方位に則した測位衛星を選択し、選択した測位衛星に基づいて自車移動量を算出する。選択する測位衛星としては、観測できている測位衛星のうち、阻害開始までの時間が所定値Tthr以上であり、且つ走行経路に基づく自車進行方位Dvehicleと測位衛星の方位角Dsatが所定の範囲内Dthrにあるものを選択する。すなわち、選択する測位衛星としては、下記数式3に示すように、進行方向に対して角度が±Dthr/2以内、すなわち進行方向の前後方向にある測位衛星を選択することが好ましく、下記数式4に示すように、進行方向に対して角度がDthr/2以内、すなわち進行方向の後方にある測位衛星を選択することがより好ましい。なお、ここで“%”は剰余記号を意味している。
[数3]
|Dvehicle-Dsat|%180<Dthr
[数4]
Dvehicle-Dsat%180<Dthr
【0083】
第1算出方式としては、例えばドップラーシフトに基づく算出方法や、搬送波位相差に基づく算出方法などの特定の1つの測位衛星と自車(観測者)との間の速度を算出する公知の方法を用いることが好ましい。また、第1算出方式としては、一部の衛星からの電波にマルチパスがあっても安定的に速度を求めるために、多数の観測可能な衛星と自車との間の速度を算出し、算出した複数の算出結果の最小二乗を用いて自車速度と移動方位を算出してもよい。
【0084】
図5は、測位衛星に基づいて自車移動量を算出する際の、測位衛星の選択に関する説明図である。
【0085】
第1算出方式の算出方法を、図5を用いて模式的に説明する。自車両10が図中上向きに走行しており、歩道橋11が前方にあり、ビル12が右側にある環境において、測位衛星S1~S4が自車両10の周囲に存在している状態を想定する。ここでドップラーシフトに基づく方法と、搬送波位相差に基づく方法のいずれかを用いて自車速度を算出する際に、選択される測位衛星について説明する。自車両10から観測できている測位衛星である必要があるという観点から、測位衛星S4は、ビル12に阻害されているため選択候補から除外される。近い将来に阻害される測位衛星S1は、阻害開始までの時間がTthr以上という制約を満たさないおそれがあるため選択候補から除外される。測位衛星S3は、自車進行方位と測位衛星の方位角がDthr以内という制約を満たさないおそれがあるため選択候補から除外される。自車両10の進行方向の後方に存在している測位衛星S2は、上述の制約全てを満たす。したがって、第1算出方式は、測位衛星S2に基づいて自車速度を算出することで、精度の高い速度を得ることができる。ここでは、1衛星のみ利用する例で記載したが、条件を満たす測位衛星が複数ある場合には、それらを用いて最小二乗法などで速度を算出してもよい。
【0086】
上述した条件に当てはまる測位衛星が無かった場合、車両のステアリング角度やタイヤの回転量から自車両の相対的な動きを推定する公知のホイールオドメトリ法に基づいて自車移動量を算出する。この算出方式を第2算出方式と呼ぶ。
【0087】
図6は、第2実施形態に係る自己位置取得装置1を示すブロック図である。
【0088】
第2実施形態に係る自己位置取得装置1には、図6に示すように、内界認識装置4が接続されている。また、第2実施形態に係る自己位置取得装置1は、図6に示すように、移動量算出部111、状態取得部112、及び算出方式切替部113を備えている。
【0089】
内界認識装置4は、自車両に搭載されており、自車両の挙動を計測する。内界認識装置4としては、ミリ波Radar、車輪速パルスセンサ、加速度センサ及び角速度センサといった自車両の速度を測るセンサ類、並びに、横滑り防止装置(ESC)及び慣性計測装置(IMU)といった自車両の姿勢を測るセンサ装置を意図している。内界認識装置4は、自己位置取得装置1の外部に備えられていてもよく、自己位置取得装置1内に備えられていてもよい。内界認識装置4は、取得した自車両の挙動に関する情報(以下、自車挙動情報ともいう)を、自己位置取得装置1に送信する。
【0090】
移動量算出部111は、測位衛星に基づいた第1算出方式、または、ホイールオドメトリ法に基づいた第2算出方式、の何れかの算出方式を用いて自車移動量を算出する。内界認識装置4から得られる自車挙動情報は、ホイールオドメトリ法を行うのに用いられる。
【0091】
状態取得部112は、内界認識装置4から送信された自車挙動情報を取得する。状態取得部112は、自車挙動情報に基づいてホイールオドメトリ法の精度状態を判断する。ホイールオドメトリ法の精度状態としては、所定時間内に一度もタイヤトルクが急変しない場合は、ホイールオドメトリ法の精度状態が良好な状態であると判断する。一方、所定時間内にタイヤトルクが複数回にわたって急変する場合や、所定時間タイヤトルクが通常よりも減少している場合は、路面に凹凸が多い、または、路面が滑りやすいことが推定され、ホイールオドメトリ法の精度状態が良好でない状態であると判断する。状態取得部112は、判断したホイールオドメトリの精度状態の情報を算出方式切替部113に送信する。
【0092】
上述の判断例としては、横滑り防止装置が瞬間的なタイヤトルクの変化を観測し、或いは、加速度センサまたは車速センサが路面の凹凸を検出し、この検出結果に基づいてホイールオドメトリ法の精度状態が良好でない状態であると状態取得部112が判断する。また例えば、車輪速パルスセンサの出力とミリ波Radarによる対地車速情報を照合し、これらの異種センサ間の整合性に基づいて、ホイールオドメトリ法の精度状態を状態取得部112が判断してもよい。同様に、慣性計測装置のセンサ出力の積算値から得られる自車移動量や角度変化量と、車輪速パルスセンサ及び舵角センサから得られる自車移動量や角度変化量と、の整合性に基づいて、ホイールオドメトリ法の精度状態を状態取得部112が判断してもよい。
【0093】
算出方式切替部113は、状態取得部112から取得したホイールオドメトリ法の精度状態の情報、及び、第2実施形態に係る阻害期間算出部102から得られる個々の測位衛星の仰角及び方位などの情報に基づいて、自車の現状に則した自車移動量の算出方式に切り替える。換言すると、算出方式切替部113は、ホイールオドメトリ法の精度、及び、阻害の程度を考慮して、第1算出方式または第2算出方式の何れかに切り替える。
【0094】
図7は、図6に示す算出方式切替部113による自車移動量算出方式の切り替えにおける判断処理の一例を示すフローチャートである。
【0095】
図7に示すように、算出方式切替部113による自車移動量算出方式の切り替えにおける判断処理は大まかには以下の通りである。
【0096】
まず、算出方式切替部113は、自車進行方向後方に自車移動量の算出に用いることができる測位衛星が所定数存在するかを判定する。自車進行方向後方に自車移動量の算出に用いることができる測位衛星が所定数存在する場合、算出方式切替部113は、算出方式を第1算出方式に切り替える。
【0097】
自車進行方向後方に自車移動量の算出に用いることができる測位衛星が所定数存在しなかった場合、次いで、算出方式切替部113は、ホイールオドメトリ法の精度状態が良好かどうかを判定する。ホイールオドメトリ法の精度状態が良好な場合、算出方式切替部113は、算出方式を第2算出方式に切り替える。
【0098】
ホイールオドメトリ法の精度状態が不良な場合、次いで、算出方式切替部113は、算出方式を第1算出方式に切り替える。
【0099】
ホイールオドメトリ法の精度状態が第2算出方式による自車移動量の算出に耐え得る状態の場合、次いで、算出方式切替部113は、自車進行方向のうち前後方向に自車移動量の算出に用いることができる測位衛星が所定数存在するかを判定する。自車進行方向のうち前後方向に自車移動量の算出に用いることができる測位衛星が所定数存在する場合、算出方式切替部113は、算出方式を第1算出方式に切り替える。自車進行方向のうち前後方向に自車移動量の算出に用いることができる測位衛星が所定数存在しなかった場合、算出方式切替部113は、算出方式を第2算出方式に切り替える。
【0100】
算出方式切替部113による自車移動量算出方式の切り替えにおける判断処理は具体的には以下の通りである。
【0101】
算出方式切替部113は、以下の(a)~(c)全ての条件に適合する測位衛星の数N1をカウントする(ステップS201)。
(a)自車両から観測可能であること。
(b)阻害開始までの時間が所定値Tthr以上であること。
(c)方位角が自車進行方向に対してDthr/2以内であること。
【0102】
算出方式切替部113は、ステップS201においてカウントした測位衛星の数N1が所定の第1閾値Nsat1以上かどうか判定する(ステップS202)。なお、カウントした測位衛星の数N1の数値が大きいほど、算出して得られる自車移動量の精度が上がる。算出方式切替部113は、測位衛星の数N1が所定の第1閾値Nsat1未満の場合に(ステップS202でNo)、ステップS203に移行する。算出方式切替部113は、測位衛星の数N1が所定の第1閾値Nsat1以上の場合に(ステップS202でYes)、ステップS208に移行する。
【0103】
算出方式切替部113は、状態取得部112から取得したホイールオドメトリ法の精度状態の指標Indが所定の第1閾値Det1未満かどうか判定する(ステップS203)。なお、ホイールオドメトリ法の精度状態の指標Indの数値が小さいほど、ホイールオドメトリ法の精度状態が良好な状態であると言える。算出方式切替部113は、ホイールオドメトリ法の精度状態の指標Indが所定の第1閾値Det1未満の場合に(ステップS203でYes)、ステップS207に移行する。算出方式切替部113は、ホイールオドメトリ法の精度状態の指標Indが所定の第1閾値Det1以上の場合に(ステップS203でNo)、ステップS204に移行する。
【0104】
算出方式切替部113は、状態取得部112から取得したホイールオドメトリ法の精度状態の指標Indが所定の第2閾値Det2未満かどうか判定する(ステップS204)。なお、ステップS204におけるホイールオドメトリ法の精度状態の指標Indは、ステップS203におけるホイールオドメトリ法の精度状態の指標Indと同一である。したがって、ホイールオドメトリ法の精度状態の指標Indは、所定の第1閾値Det1以上である。算出方式切替部113は、ホイールオドメトリ法の精度状態の指標Indが所定の第2閾値Det2未満の場合に(ステップS204でYes)、ステップS205に移行する。算出方式切替部113は、ホイールオドメトリ法の精度状態の指標Indが所定の第2閾値Det2以上の場合に(ステップS204でNo)、ステップS208に移行する。なお、所定の第2閾値Det2は、ホイールオドメトリ法の精度状態が第2算出方式による自車移動量の算出に耐え得るか否かの境目となる値である。
【0105】
算出方式切替部113は、以下の(a)、(b)及び(d)全ての条件に適合する測位衛星の数N2をカウントする(ステップS205)。
(a)自車から観測可能であること。
(b)阻害開始までの時間が所定値Tthr以上であること。
(d)方位角が自車進行方向に対して±Dthr/2以内であること。
【0106】
算出方式切替部113は、ステップS205においてカウントした測位衛星の数N2が所定の第2閾値Nsat2以上かどうか判定する(ステップS206)。なお、カウントした測位衛星の数N2の数値が大きいほど、算出して得られる自車移動量の精度が上がる。算出方式切替部113は、測位衛星の数N2が所定の第2閾値Nsat2未満の場合に(ステップS206でNo)、ステップS207に移行する。算出方式切替部113は、測位衛星の数N2が所定の第2閾値Nsat2以上の場合に(ステップS206でYes)、ステップS208に移行する。
【0107】
算出方式切替部113は、ホイールオドメトリ法の精度状態の指標Indが所定の第1閾値Det1未満の場合(ステップS203でYes)、又は、測位衛星の数N2が所定の第2閾値Nsat2未満の場合に(ステップS206でNo)、算出方式を第2算出方式に切り替える(ステップS207)。
【0108】
算出方式切替部113は、測位衛星の数N1が所定の第1閾値Nsat1以上の場合(ステップS202でYes)、ホイールオドメトリ法の精度状態の指標Indが所定の第2閾値Det2以上の場合(ステップS204でNo)、又は、測位衛星の数N2が所定の第2閾値Nsat2以上の場合に(ステップS206でYes)、算出方式を第1算出方式に切り替える(ステップS208)。
【0109】
なお、ステップS203及びステップS204において、ホイールオドメトリ法の精度状態の指標Indに対する比較対象として規定する第1閾値Det1及び第2閾値Det2の数値は、変更可能である。具体的には、内界認識装置4の検知前に、外界認識装置3が路面状態を測定し、測定した路面状態の情報を自己位置取得装置1に送信する。算出方式切替部113は、外界認識装置3から送信された路面状態の情報に基づいて、将来のホイールオドメトリ法の精度状態を予測する。算出方式切替部113は、将来のホイールオドメトリ法の精度状態が良好でない状態になり得ると判断した場合、第1閾値Det1及び第2閾値Det2の数値を小さく変更する。
【0110】
以上のように、第2実施形態に係る自己位置取得装置1は、自車両に搭載された内界認識装置4によってホイールオドメトリ法の精度状態に関する情報を取得し、阻害期間内において、自己位置を推定するための車両の移動量を算出する算出方式として、測位衛星の数に関する以下の数式5、及び、ホイールオドメトリ法の精度状態に関する以下の数式6に応じて、数式5が成り立つ場合には、測位衛星に基づいて車両の移動量を算出する第1算出方式に切り替え、数式5が成り立たず、もしくは数式6が成り立つ場合には、ホイールオドメトリ法に基づいて車両の移動量を算出する第2算出方式に切り替える。
[数5]
N1≧Nsat1
N1:以下の全ての条件に適合する衛星数
観測できている測位衛星
阻害開始までの時間が所定値(Tthr)以上
走行経路に基づく自車進行方位(Dvehicle)、測位衛星の方位角(D
sat)、及び、所定の範囲内(Dthr)が以下の関係にあたる測位衛星
Dvehicle-Dsat%180<Dthr
ここで、“%”は剰余記号を意味する
Nsat1:衛星数に関する所定の第1閾値
[数6]
Ind<Det1
Ind:ホイールオドメトリ法の精度状態の指標
Det1:ホイールオドメトリ法の精度状態に関する所定の第1閾値
【0111】
第2実施形態に係る自己位置取得装置1(図6)は、阻害期間内において、公知の測定装置及び公知の測定方法を用いて、上述の数式5(図7のS201及びS202)及び数式6(図7のS203)によって、観測可能な測位衛星(図5のS2)、及び、ホイールオドメトリ法の何れか適切な方に基づいて車両の自己位置を推定するための自車移動量を正確に算出すること(図7のS207または7のS208)ができる。これにより、第2実施形態に係る自己位置取得装置1は、阻害期間内においても過去に算出された測位結果に対して算出した自車移動量を補間することによって、精度のよい自己位置取得が可能となる。したがって、本実施形態に係る自己位置取得装置1によれば、コストを抑えながら安定して高精度測位を行うことが更に可能となる。
【0112】
更に、第2実施形態に係る自己位置取得装置1は、上述の数式5及び数式6が成り立たない場合において、ホイールオドメトリ法の精度状態に関する以下の数式7、及び、測位衛星の数に関する以下の数式8に応じて、数式7が成り立つ場合には、第2算出方式に切り替え、数式7が成り立たず、もしくは数式8が成り立つ場合には、第1算出方式に切り替える。
[数7]
Det1≦Ind<Det2
Ind:ホイールオドメトリ法の精度状態の指標
Det1:ホイールオドメトリ法の精度状態に関する所定の第1閾値
Det2:ホイールオドメトリ法の精度状態に関する所定の第2閾値
[数8]
N2≧Nsat2
N2:以下の全ての条件に適合する衛星数
観測できている測位衛星
阻害開始までの時間が所定値(Tthr)以上
走行経路に基づく自車進行方位(Dvehicle)、測位衛星の方位角(D
sat)、及び、所定の範囲内(Dthr)が以下の関係にあたる測位衛星
|Dvehicle-Dsat|%180<Dthr
ここで、“%”は剰余記号を意味する
Nsat2:衛星数に関する所定の第2閾値
【0113】
第2実施形態に係る自己位置取得装置1(図6)は、阻害期間内において、公知の測定装置及び公知の測定方法を用いて、上述の数式5(図7のS201及びS202)及び数式6(図7のS203)よりも許容範囲を広くした数式7(図7のS204)及び数式8(図7のS205及びS206)によって、観測可能な測位衛星、及び、ホイールオドメトリ法の何れか好ましい方に基づいて車両の自己位置を推定するための自車移動量を算出すること(図7のS207または7のS208)ができる。これにより、第2実施形態に係る自己位置取得装置1は、阻害期間内においても過去に算出された測位結果に対して算出した自車移動量を補間することによって、精度のよい自己位置取得をすることが容易となる。したがって、本実施形態に係る自己位置取得装置1によれば、コストを抑えながら安定して高精度測位を行うことが更に可能となる。
【0114】
更に、第2実施形態に係る自己位置取得装置1は、自車両に搭載された外界認識装置3によって得られる路面状態に基づいてホイールオドメトリ法の精度状態に関する所定の第1閾値を変更する。
【0115】
第2実施形態に係る自己位置取得装置1(図6)は、算出方式切替部113にて、外界認識装置3によって測定した路面状態の情報に基づいて、阻害期間内において、ホイールオドメトリ法の精度状態が良好でない状態になり得ると事前に判断し、ホイールオドメトリ法の精度状態に関する所定の第1閾値(図7のS203)を小さくなるよう調節する。これにより、第2実施形態に係る自己位置取得装置1は、算出方式として第1算出方式(図7のS208)を優先的に用いるようになる。この結果、第2実施形態に係る自己位置取得装置1は、算出方式に関する判断速度を向上させることができるとともに、公知の測定装置及び公知の測定方法を用いて、精度のよい自己位置取得をすることが容易となる。したがって、本実施形態に係る自己位置取得装置1によれば、コストを抑えながら安定して高精度測位を行うことが更に可能となる。
【0116】
[第3実施形態]
次に、図8を用いて、第3実施形態に係る自己位置取得装置1について説明する。第3実施形態に係る自己位置取得装置1において、第1実施形態及び第2実施形態に係る自己位置取得装置1と同様の構成及び動作については説明を省略する。
【0117】
第3実施形態に係る自己位置取得装置1は、履歴記憶部121及び地図122を更に備えており、更に地図サーバ5と通信可能となっており、且つ、通信部6に更に接続されている点において、第1実施形態及び第2実施形態に係る自己位置取得装置1と相違する。第1実施形態及び第2実施形態に係る自己位置取得装置1は、自車両単体で動作し、同一環境では同一動作を行うものであったが、第3実施形態に係る自己位置取得装置1は、必要に応じて記録を保持し、且つ、外部と通信を行う点が異なる。
【0118】
図8は、第3実施形態に係る自己位置取得装置1を示すブロック図である。
【0119】
第3実施形態に係る自己位置取得装置1は、図8に示すように、履歴記憶部121及び地図122を備えている。
【0120】
履歴記憶部121は、阻害期間や補強情報の有効期間のいずれか1つ以上を過去履歴として記憶する。履歴記憶部121は、記憶した過去履歴を阻害期間算出部102に送信する。
【0121】
図122は、各地点における周囲の対象物情報を含んでいるデータベースであり、事前に建物や人工構造物などの変化の少ない障害物について記録されていてもよい。地図122は、例えば車両に搭載されている公知のカーナビゲーションシステムのうちの一機能であってもよい。位置取得部101、阻害期間算出部102及び算出方式切替部113は、地図122に含まれる情報を利用することが可能となっている。
【0122】
例えば、位置取得部101は、取得した自己位置を地図122に挿入することによって、地図122に含まれる道路情報に基づいて自車の進行経路を予測してもよい。また、阻害期間算出部102は、地図122から対象物情報を取得してもよい。また、算出方式切替部113は、地図122から阻害が発生し得る地点を予め取得し、取得した地点付近においては、第2算出方式を第1算出方式よりも優先して用いるように衛星数に関する所定の閾値を変化させてもよい。具体的には、条件に適合する測位衛星の数N1及びN2に対する第1閾値Nsat1及び第2閾値Nsat2の値をより大きく設定する。また、ホイールオドメトリ法の精度状態の指標Indに対する第2閾値Det2をより大きくする。以上の何れかまたは両方によって第2算出方式を第1算出方式よりも優先して用いるようにする。
【0123】
図122は、経時変化でその内容が古くなり、実際の環境構造との乖離がでてくることが懸念される。この問題に対応するために、第3実施形態に係る自己位置取得装置1は、外部に設けられた地図サーバ5と接続可能であってもよい。地図122は、地図サーバ5と通信、または、記録媒体などを用いた情報のやりとりを行い、含んでいる建物などの情報を更新してもよい。
【0124】
第3実施形態に係る自己位置取得装置1には、図8に示すように、通信部6が接続されている。
【0125】
通信部6は、自車両に搭載されており、他車両、道路設備、施設のいずれか1つ以上と通信を行う。通信部6としては、公知のV2X通信機能を備えている装置であることが好ましい。
【0126】
第3実施形態に係る自己位置取得装置1は、接続されている通信部6が、他車両、道路設備、施設のいずれか1つ以上と通信を行い、自車両以外が観測した対象物情報、路面滑り状況、履歴として記録した内容のいずれか1つ以上の自車両以外が取得した情報を受信する。通信部6に接続されている第3実施形態に係る自己位置取得装置1は、通信部6が受信した当該情報に基づき阻害期間、補強情報の有効期間のいずれか1つ以上を決定してもよい。
【0127】
以上のように、第3実施形態に係る自己位置取得装置1は、阻害期間及び補強情報の有効期間のうち何れか1つ以上を過去履歴として記憶する。
【0128】
第3実施形態に係る自己位置取得装置1(図8)は、過去に取得した阻害期間や補強情報の有効期間を履歴記憶部121に記憶し、過去履歴として参照することによって、本来算出することができない自車両の現在位置とは異なる位置の阻害期間、第1時刻tA、及び第2時刻tBを算出することができる。これにより、第3実施形態に係る自己位置取得装置1は、測位の精度を向上させることができるとともに、事前に測位方式の切り替え判断を行うこともできる。これに加えて、第3実施形態に係る自己位置取得装置1は、参照する過去履歴が第2測位方式において測位を行っていた際の過去履歴の場合、通信料などのコストが再発生することを防ぐこともできる。したがって、第3実施形態に係る自己位置取得装置1によれば、コストを抑えながら安定して高精度測位を行うことが更に可能となる。
【0129】
更に、第3実施形態に係る自己位置取得装置1は、地図を用いて阻害期間を算出する。
【0130】
第3実施形態に係る自己位置取得装置1(図8)は、地図122として、例えば公知のカーナビゲーションシステムの一機能であるものを用いることによって、トンネルなどの所定時間以上の連続的な阻害が発生する対象物に対しても、阻害開始時刻や、その大きさなどが容易に把握できる。これにより、第3実施形態に係る自己位置取得装置1は、公知の機能を利用する形で、より正確に阻害期間を算出することが可能となる。したがって、第3実施形態に係る自己位置取得装置1によれば、コストを抑えながら安定して高精度測位を行うことが更に可能となる。
【0131】
更に、第3実施形態に係る自己位置取得装置1は、地図122が更新される。
【0132】
第3実施形態に係る自己位置取得装置1(図8)は、地図122が経時劣化することを防ぐことができる。これにより、第3実施形態に係る自己位置取得装置1は、時間経過によって対象物が変化した場合であっても正確な対象物情報を地図122から取得することができる。この結果、第3実施形態に係る自己位置取得装置1は、時間が経過しても正確に阻害期間を算出することが可能となる。したがって、第3実施形態に係る自己位置取得装置1によれば、コストを抑えながら安定して高精度測位を行うことが更に可能となる。
【0133】
更に、第3実施形態に係る自己位置取得装置1は、自車両に搭載された通信部6が、他車両、道路設備及び施設のうち何れか1つ以上と通信を行うことによって得られる自車両以外が取得した情報を用いて阻害期間を算出するか、または、通信部が他車両、道路設備及び施設のうち何れか1つ以上と通信を行うことによって得られる自車両以外が取得した補強情報から補強情報の有効期間を取得するかのうち少なくとも何れか一方を行う。
【0134】
第3実施形態に係る自己位置取得装置1(図8)は、通信部6として、例えば、公知のV2X通信機能を備えている装置が他車両、道路設備及び施設のうち何れか1つ以上と通信することによって自車両では得られない対象物情報や補強情報を取得することができる。これにより、第3実施形態に係る自己位置取得装置1は、測位の精度を向上させることができるとともに、未だ自車両では取得することができない対象物情報や補強情報を利用することによって事前に測位方式の切り替え判断を行うこともできる。したがって、第3実施形態に係る自己位置取得装置1によれば、コストを抑えながら安定して高精度測位を行うことが更に可能となる。
【0135】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、或る実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、或る実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0136】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路にて設計する等によりハードウェアによって実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアによって実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テープ、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(solid state drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0137】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0138】
1・・・自己位置取得装置、2・・・測位装置、3・・・外界認識装置、21・・・第1受信機、22・・・第2受信機、23・・・第3受信機、24・・・測位エンジン、101・・・位置取得部、102・・・阻害期間算出部、103・・・有効期間取得部、104・・・測位方式切替部、tA・・・第1時刻、tB・・・第2時刻
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8