(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106831
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】粉粒体の処理装置
(51)【国際特許分類】
B01F 27/90 20220101AFI20240801BHJP
B01J 2/00 20060101ALI20240801BHJP
B01F 27/112 20220101ALI20240801BHJP
B01F 27/808 20220101ALI20240801BHJP
B01F 27/86 20220101ALI20240801BHJP
B01F 35/53 20220101ALI20240801BHJP
B01F 23/60 20220101ALI20240801BHJP
B01F 35/93 20220101ALI20240801BHJP
B01F 35/22 20220101ALI20240801BHJP
B01J 2/10 20060101ALI20240801BHJP
B02C 19/00 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B01F27/90
B01J2/00 A
B01F27/112
B01F27/808
B01F27/86
B01F35/53
B01F23/60
B01J2/00 B
B01F35/93
B01F35/22
B01J2/10 Z
B02C19/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011294
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000174965
【氏名又は名称】日本コークス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】百田 憲市
(72)【発明者】
【氏名】岩本 玄徳
(72)【発明者】
【氏名】鵜澤 茂久
(72)【発明者】
【氏名】中野 要介
(72)【発明者】
【氏名】神山 勤
(72)【発明者】
【氏名】椎名 啓
(72)【発明者】
【氏名】郡司 進
【テーマコード(参考)】
4D067
4G004
4G035
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4D067CG03
4G004AA00
4G004BA00
4G004FA04
4G035AB48
4G035AE01
4G035AE15
4G037CA04
4G037EA04
4G078AA07
4G078AB20
4G078BA05
4G078CA08
4G078CA13
4G078DA01
4G078EA03
(57)【要約】
【課題】処理中に撹拌羽根と衝突板とを接触させることなく、優れたエネルギー効率で粉粒体の処理を行うことができる粉粒体の処理装置を提供する。
【解決手段】処理物となる粉粒体を衝突させる処理を行うための粉粒体の処理装置10である。
そして、竪型の混合槽20と、混合槽の槽底を挿通して設けられる回転軸30と、回転軸に設けられる複数の撹拌羽根40と、撹拌羽根の上端部との間に隙間が空くようにして上方に配置されれる複数の衝突板50と、混合槽の内空に冷却媒体を流通させるための冷媒流通路70とを備えている。ここで、衝突板は、冷媒流通路の壁面に固定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理物となる粉粒体を衝突させる処理を行うための粉粒体の処理装置であって、
竪型の混合槽と、
前記混合槽の槽底を挿通して設けられる回転軸と、
前記回転軸に設けられる複数の撹拌羽根と、
前記撹拌羽根の上端部との間に隙間が空くようにして上方に配置される複数の衝突板と、
前記混合槽の内空に冷却媒体を流通させるための冷媒流通路とを備え、
前記衝突板は、前記冷媒流通路の壁面に固定されていることを特徴とする粉粒体の処理装置。
【請求項2】
前記衝突板には、内部に前記冷媒流通路に連通する流通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の粉粒体の処理装置。
【請求項3】
前記撹拌羽根は、略円錐状に形成されたボス部の傾斜面に配列され、前記撹拌羽根の上部がリング状上板により連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉粒体の処理装置。
【請求項4】
前記撹拌羽根の上端部と前記衝突板の下端部とは、いずれも水平方向に延伸されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉粒体の処理装置。
【請求項5】
前記撹拌羽根と前記衝突板との前記隙間の最短距離が、1mmから3mmの範囲内で調節可能であることを特徴とする請求項4に記載の粉粒体の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理物となる粉粒体を衝突させる処理を行うための粉粒体の処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉粒体の複合化や球形化は、ミクロンオーダー又はナノオーダーの粉粒体に、衝突により圧縮力と剪断力を与える処理によって行われる。粒子に衝突により圧縮力と剪断力を加えることで、粒子を粉砕してアスペクト比を小さくし、角部を取り除いて丸みのある粒子とすることができる。また、凝集している粒子を解砕して細かく分散させることができるようになる。
【0003】
同時に、粒子に衝突により圧縮力と剪断力を加えることによって、粒子同士を固着させることができる。特に、大きな粒子と小さな粒子が混在している状態で衝突により圧縮力と剪断力を加えると、大きな粒子の表面が小さな粒子で覆われた状態となって一体化することになる。以下、大きな粒子を「母粒子」、小さな粒子を「子粒子」として称して説明する。
【0004】
処理前の粒子や凝集している粒子は、粒子間に空間を備えてかさ密度が小さく、比表面積の大きい粒子であることが多い。これに対して、衝突により一体化した粒子では、母粒子の表面に子粒子が打ち込まれた状態となることや、子粒子同士が隙間なく一体化することが多いので、かさ密度が大きく、比表面積の小さな粒子となる。
【0005】
母粒子と子粒子とを一体化させることにより、概ね、粒子の球状化処理が行われることになる。そして、母粒子と子粒子の種類が異なる場合は、粒子の複合化処理と称することができる。2種類以上の子粒子を用いて複合化処理を行うことも少なくない。
【0006】
母粒子の表面を子粒子で覆うことによって、複合粒子の表面の性質は、子粒子の性質を備えることになるので、表面改質処理と称されることがある。母粒子が樹脂などの柔らかい材料である場合は、子粒子が母粒子の中に完全に打ち込まれた状態で固定化させることができる。一方、母粒子が硬い材料であって、子粒子が変形し易い材料である場合には、子粒子同士が一体化した状態となり、カプセル化処理と称される状態になることもある。
【0007】
ここで、特許文献1には、粉粒体の複合化や球形化を行う処理装置が記載されている。特許文献1に開示された処理装置は、竪型の混合槽と、混合槽の槽底を挿通して設けられる回転軸と、回転軸に設けられる複数の撹拌羽根と、混合槽に固定して設けられる複数の衝突板とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、撹拌羽根と衝突板との位置関係によって処理のエネルギー効率は変化するので、最適な位置関係に設定されることが望ましい。一方において、処理中に撹拌羽根と衝突板とが接触する事態の発生は、避けなければならない。
【0010】
そこで、本発明は、処理中に撹拌羽根と衝突板とを接触させることなく、優れたエネルギー効率で粉粒体の処理を行うことができる粉粒体の処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の粉粒体の処理装置は、処理物となる粉粒体を衝突させる処理を行うための粉粒体の処理装置であって、竪型の混合槽と、前記混合槽の槽底を挿通して設けられる回転軸と、前記回転軸に設けられる複数の撹拌羽根と、前記撹拌羽根の上端部との間に隙間が空くようにして上方に配置される複数の衝突板と、前記混合槽の内空に冷却媒体を流通させるための冷媒流通路とを備え、前記衝突板は、前記冷媒流通路の壁面に固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このように構成された本発明の粉粒体の処理装置は、衝突板が冷媒流通路の壁面に固定されているので、処理中に撹拌羽根が高速回転することによって粉粒体の温度が高温になったとしても、温度上昇が抑えられ、熱膨張による変位も抑えられる。
【0013】
このため、処理中に撹拌羽根と衝突板とが接触するような事態は起きず、エネルギー効率が高くなるように設定された撹拌羽根と衝突板との位置関係によって、粉粒体の処理を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態の処理装置の概略構成を示した縦断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態の処理装置の冷却システムの一例を示す図であって、(a)は概略平面図、(b)は概略縦断面図である。
【
図3】冷媒流通路の概略構成を説明する図であって(a)は冷却媒体の流入部の縦断面図、(b)は冷却媒体の流出部の縦断面図、(c)は移動部の縦断面図である。
【
図4】冷媒流通路及び衝突板の一例を示す図であって、(a)は概略縦断面図、(b)は(a)のA-A矢視方向で見た断面図である。
【
図5】撹拌羽根と衝突板との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態の処理装置10の概略構成を示した縦断面図である。
【0016】
本発明の実施の形態の処理装置10は、処理物となる粉粒体を衝突させる処理を行うことで、粒子の複合化や球形化などの高度な処理を行うことができる粉粒体の処理装置である。すなわち、衝突により圧縮力と剪断力を粉粒体に与える処理を行う処理装置である。例えば、母粒子の表面に子粒子を衝突させて固着させる粒子の球状化処理や、異なる種類の粒子同士を衝突させて固着させる複合化処理などを、処理装置10によって行うことができる。
【0017】
本発明の実施の形態の処理装置10は、竪型の混合槽20と、混合槽20の槽底を挿通して設けられる回転軸30と、回転軸30に設けられる複数の撹拌羽根40と、撹拌羽根40の上端部45(
図5参照)との間に隙間が空くようにして上方に配置される複数の衝突板50と、混合槽20の内空に冷却媒体を流通させるための冷媒流通路70とを備えている。
【0018】
混合槽20は、垂直な軸心を中心に形成される円筒状の容器である。一般に、軸心が水平となる円筒状の容器を「横型」と称し、軸心が垂直となる円筒状の容器を「竪型」と称している。
【0019】
混合槽20は、内空の保守や点検などが行えるようにするために、上部に開閉可能な蓋60を備えている。混合槽20のフランジ21と蓋60のフランジ61とによって、混合槽20を密閉したり、開放したりすることができる。フランジ21とフランジ61との間には、後に詳しく説明する冷却システムのフランジ80及びガスケット25が取り付けられている。
【0020】
処理装置10では、連続処理ではなくバッチ処理が行われる。このために、蓋60には、粉粒体の投入口62が設けられ、この投入口62より原料となる粉粒体が投入される。その他、蓋60には、点検口、覗き窓、排気口などが適宜設けられる。
【0021】
混合槽20は、処理物の加熱又は冷却を行うために、外周面を覆うようなジャケットを備えていることが好ましい。また、処理物の温度を測定できる温度計を備えていることが好ましい。
【0022】
混合槽20の槽底付近の隅部には排出口22が設けられ、処理された粉粒体が排出される。排出口22には排出弁が設けられていて、排出弁を閉じた状態では、弁体の先端が混合槽20の内壁面と同じ形状になるように形成されているので、粉粒体の処理に影響を与えることはない。そして、粉粒体を排出する際には、撹拌羽根40を緩く回転させた状態で排出弁を開くことにより、粉粒体を確実に排出させることができる。
【0023】
混合槽20は、図示しない電動機と共に架台90に載置され、電動機の動力が架台90の下に設けられたVベルトなどの伝達装置によって回転軸30に伝達されるように構成されている。回転軸30の回転数は可変として、自由に設定できることが好ましい。
【0024】
回転軸30は、混合槽20に対して、図示していないグランドシールやエアシールなどによりシールされている。ガスを用いる場合には、混合槽20から排出ガスに同伴する粉を捕集するために、蓋60にフィルタを設けることが好ましい。
【0025】
撹拌羽根40は、略円錐状に形成されたボス部41の傾斜面に配列されて形成され、ボス部41は回転軸30に取付けられて、ボス部41の底面が混合槽20の槽底に近接するように形成されている。
【0026】
複数設けられた撹拌羽根40のそれぞれは、リング状上板42によって連結されていることが好ましい。この場合、粉粒体は、各撹拌羽根40の間で、リング状上板42の下をくぐるようにして流れるので、安定した流動状態を得ることができる。
【0027】
そして、本実施の形態の処理装置10は、混合槽20の内空に、冷却媒体が流通する冷媒流通路70を備えていて、この冷媒流通路70の壁面に衝突板50が固定されていることを特徴としている。
【0028】
この構成の作用については後に詳しく説明するが、冷媒流通路70を中心とする冷却システムによって、衝突板50の位置が熱膨張で変位することを抑制し、撹拌羽根40と衝突板50との相対的な位置関係を、処理中も正確に維持することができるようになる。
【0029】
図1に示す実施例では、撹拌羽根40の近傍に冷媒流通路70を位置させ、衝突板50を冷媒流通路70の壁面に固定している。そして、冷媒流通路70から各衝突板50の内部にまで冷却媒体が流れるように構成されている。
【0030】
図1では、混合槽20の内部構造を示して、冷却システムと撹拌羽根40などとの位置関係を相対的に示しているが、冷却システムは全体が一体に形成されるので、
図2のように単独で示すことができる。なお、冷却媒体としては通常は冷却水を用いる。
【0031】
この冷却システムは、全体を混合槽20に固定するために、上部にフランジ80を備えている。フランジ80は、混合槽20のフランジ21と蓋60のフランジ61との間に挟まれた状態で固定される。
【0032】
フランジ80の上部には、冷却媒体の流入口81,83及び流出口82,84が固定されている。蓋60には、適宜開口63が設けられており、流入口81などを混合槽20の外側に位置させることができる。
【0033】
流入口81,83は、それぞれ流入管85,87によって冷媒流通路70に接続されており、流出口82,84は、それぞれ流出管86,88によって冷媒流通路70に接続されている。
【0034】
図3は、冷媒流通路70の概略構成を説明する図である。
図3(a)は、冷媒流通路70に流入管85(87)が接続されている部分を示している。冷媒流通路70の内部は、上下に分割され、下側が冷却媒体の流入路71であり、上側が冷却媒体の流出路72となる。
【0035】
そして、流入管85(87)は、下側に形成された冷却媒体の流入路71に接続される。一方、
図3(b)は、冷媒流通路70に流出管86(88)が接続される部分を示している。流出管86(88)は、冷却媒体の流出路72に接続される。さらに、
図3(c)に示すように、流入路71と流出路72との仕切りに開口73を設けて、冷却媒体を流入路71から流出路72へと移動させる。
【0036】
本実施の形態の処理装置10では、フランジ80と冷媒流通路70との間が、流入管85,87及び流出管86,88によって接続されている。したがって、冷却媒体が流れている状態で粉粒体の処理が行われている限り、熱膨張によって冷媒流通路70が下方に移動してしまう可能性は非常に少ない。
【0037】
すなわち、衝突板50は、単に冷媒流通路70の壁面に固定されているだけでも、熱膨張や下方への移動を抑えることができる。さらに、
図4に示すように、衝突板50の内部に冷却媒体の流通孔(51,52)を形成することで、より確実に衝突板50の熱膨張や下方への移動を防ぐことができるようになる。
【0038】
ここで、
図4(a)は、衝突板50が取付けられている部分の冷媒流通路70の概略縦断面図を示している。また、
図4(b)は、
図4(a)のA-A矢視方向で見た断面図である。
【0039】
冷媒流通路70の流入路71は、衝突板50の流入孔51に連通しており、冷媒流通路70の流出路72は、衝突板50の流出孔52に連通している。したがって、流入管85,87から冷媒流通路70の流入路71に流入した冷却媒体は、各衝突板50の流入孔51及び流出孔52を流通し、その後、冷媒流通路70の流出路72に戻って、ここから流出管86,88へと流れ出すことになる。
【0040】
このような混合槽20内における冷却システムによる冷却媒体の流通によって、各衝突板50への冷却媒体の流れが均一となり、各衝突板50が熱膨張に対してより安定した状態を保つことができるようになる。
【0041】
次に、本実施の形態の処理装置10の作用について説明する。
このように構成された本実施の形態の処理装置10は、冷却媒体の供給ライン及び排出ラインを備えた冷却システムが設けられているので、衝突板50の内部に冷却媒体を確実に流通させることができる。すなわち、フランジ80に形成された流入口81,83に冷却媒体の供給ラインを接続し、流出口82,84に冷却媒体の排出ラインを接続することにより、冷媒流通路70及び衝突板50に冷却媒体を流通させることができる。
【0042】
ここで、本実施の形態の処理装置10の特徴である衝突板50が冷媒流通路70の壁面に固定された冷却システムの効果について詳しく説明する。
【0043】
まず、撹拌羽根40と衝突板50との最短距離は、短い方が好ましいという新たな知見が得られた。すなわち、撹拌羽根40と衝突板50との隙間が狭いほど、エネルギー効率が高くなり、好ましい処理を行うことができることが判明した。具体的には、撹拌羽根40と衝突板50との隙間は5mm以下が好ましく、さらには1mmから3mmとより狭くする方がより好ましいことが判明した。なお、粉粒体の処理の進捗状態は、処理物のかさ密度及び比表面積の変化により確認した。
【0044】
しかしながら、撹拌羽根40と衝突板50との隙間を狭くするほど、両者が接触する危険性が高くなる。特に、高速回転する撹拌羽根40によって粉粒体の温度が100℃を超えるような高温となるので、衝突板50及び衝突板50を支持する内部構造の熱膨張によって、隙間が初期状態よりも1mmから2mm程度、狭くなる方へ変位することも想定される。
【0045】
そこで、撹拌羽根40と衝突板50との接触を回避するために、混合槽20の内空に冷却媒体が流通する冷媒流通路70を設けるとともに、この冷媒流通路70の壁面に衝突板50を固定する構成とした。
【0046】
処理装置10をこのような内部構造とすることにより、冷媒流通路70及び衝突板50の温度変化は、処理開始の前後で50℃程度に抑えることができるようになり、隙間の変位も、1mm未満に抑えることができるようになる。したがって、処理を開始する前に、撹拌羽根40と衝突板50との隙間を1mmから3mmの範囲で正確に調節することができれば、撹拌羽根40と衝突板50とが接触を起こさない安全な処理操作を行うことができるようになる。
【0047】
以下では、
図5を参照しながら、撹拌羽根40と衝突板50の好ましい構造について説明する。
上述した
図1-
図4では、図示を簡略化するために、衝突板50の衝突面を垂直として示していたが、詳細には
図5に示すように、衝突板50の取付け角度θには好ましい範囲が存在する。ここで、取付け角度θとは、
図5に矢印で示す撹拌羽根40の回転方向と、衝突板50の衝突面とがなす角度を指す。
【0048】
処理される粉粒体は、混合槽20において撹拌羽根40の回転方向に流動するとともに、混合槽20の軸心から外向きの遠心力を受けて、槽底の隅部から槽壁面に沿って上昇するように流動する。
【0049】
衝突板50の取付け角度θは、粉粒体に強い圧縮力と剪断力を与えるとともに、槽内における粉粒体の循環流動が好ましい状態となるように選ばれる。流動性の良好な粉粒体では45°から75°程度が好ましく、流動性が低い粉粒体では60°から90°程度が好ましい。なお、撹拌羽根40の好ましい先端速度は、50m/sから100m/sである。
【0050】
また、撹拌羽根40と衝突板50とは、互いに近接する箇所が平行となる辺であることが好ましく、さらには、平行となる方向が水平方向であることが好ましい。すなわち、各撹拌羽根40の上端部45は、リング状上板42の上面と共に同一水平面上に位置することが好ましい。また、各衝突板50の下端部55となる辺も、上端部45より少し上に位置して水平方向に延伸されていることが好ましい。
【0051】
そして、
図5に示すように、撹拌羽根40の上端部45が位置する水平面と、衝突板50の下端部55が位置する水平面との隙間Cが、撹拌羽根40と衝突板50との最短距離になる。
【0052】
このような構造とすることによって、隙間Cを0mmに近づけたときに、衝突板50の下端部55が、撹拌羽根40の上端部45の上に置かれたような状態にすることができる。ここで、
図1及び
図2に示したように、衝突板50は、冷媒流通路70と共にフランジ80を介して混合槽20に固定されている。
【0053】
したがって、冷却システムのフランジ80に隣接するガスケット25の厚さを調節すれば、隙間Cが調節できることになる。要するに処理装置10は、隙間Cに関して高い精度で組み立てることが可能である。
【0054】
例えば、最初にガスケット25を用いないで、混合槽20の中に冷却システムを入れたときに、衝突板50の下端部55が撹拌羽根40の上端部45の上に置かれた状態になるとする。その状態でフランジ80とフランジ21との間の隙間を測定して距離を求める。この隙間を距離をC1(図示省略)とする。
【0055】
最終的に組み立てた状態での隙間が、隙間C(
図5参照)となるようにするためには、ガスケット25の厚さを(C1+C)とすれば良いことになる。シム(隙間ゲージ)を用いて調節すれば、容易にガスケット25の厚みは調節することができる。したがって、撹拌羽根40と衝突板50との最短距離を、1mmから3mmの範囲で正確に調節することは簡単にできる。
【0056】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0057】
例えば、前記実施の形態では、流通孔(51,52)を備えた衝突板50について説明したが、これに限定されるものではなく、冷却媒体の流通孔を備えていない衝突板50であってもよい。上述したように、冷媒流通路70の壁面に固定するだけでも、衝突板の熱膨張や下方への移動を抑えることができる。
【0058】
また、冷媒流通路70の断面構造、撹拌羽根40及び衝突板50の形状や数量は、前記実施の形態で説明したものに限定されるものではなく、処理装置の用途や規模などに適したものを自由に選択することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 :処理装置
20 :混合槽
30 :回転軸
40 :撹拌羽根
41 :ボス部
42 :リング状上板
45 :上端部
50 :衝突板
51 :流入孔(流通孔)
52 :流出孔(流通孔)
55 :下端部
70 :冷媒流通路
C :隙間