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特開2024-106835圧力計測装置及び圧力計測装置の制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106835
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】圧力計測装置及び圧力計測装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/06 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
G01L19/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011301
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公洋
(72)【発明者】
【氏名】市原 純
(72)【発明者】
【氏名】吉川 康秀
(72)【発明者】
【氏名】小原 圭輔
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA39
2F055BB08
2F055CC02
2F055DD20
2F055EE25
2F055FF31
2F055FF38
2F055GG43
(57)【要約】
【課題】圧力計測装置の安全性を向上させる。
【解決手段】ヒータ12は、圧力センサ11を加熱する。ヒータ温度センサ14は、ヒータ12の温度を測定する。受圧部温度センサ15は、圧力センサ11の温度を測定する。制御回路21は、受圧部温度センサ15により測定される圧力センサ11の温度を基に、ヒータ12による加熱を制御する。ヒータ温度リミット回路23は、ヒータ温度センサ14により測定されるヒータ12の温度を基に、ヒータ12の駆動電流を遮断する。異常検知部20は、ヒータ12の温度が所定温度の場合の動作をヒータ温度リミット回路23に行わせて、ヒータ温度リミット回路23の異常を検知し、異常を検知した場合にアラームを報知する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力センサと、
前記圧力センサを加熱するヒータと、
前記ヒータの温度を測定するヒータ温度センサと、
前記圧力センサの温度を測定する受圧部温度センサと、
前記受圧部温度センサにより測定される前記圧力センサの温度を基に、前記ヒータによる加熱を制御する制御回路と、
前記ヒータ温度センサにより測定される前記ヒータの温度を基に、前記ヒータの駆動電流を遮断するヒータ温度リミット回路と、
前記ヒータの温度が所定温度の場合の動作を前記ヒータ温度リミット回路に行わせて、前記ヒータ温度リミット回路の異常を検知し、前記異常を検知した場合にアラームを報知する異常検知部と
を備えたことを特徴とする圧力計測装置。
【請求項2】
前記ヒータ温度リミット回路は、前記ヒータの温度に対応する電圧が印加されることで、前記ヒータの温度に基づいた前記ヒータの駆動電流の遮断を行い、
前記異常検知部は、前記ヒータ温度リミット回路に前記所定温度に対応する所定電圧を印加するダミー抵抗を有し、前記ダミー抵抗を前記ヒータ温度リミット回路に接続することで、前記所定温度の場合の前記ヒータ温度リミット回路の異常を検知することを特徴とする請求項1に記載の圧力計測装置。
【請求項3】
前記異常検知部は、前記ダミー抵抗として抵抗値が異なる第1ダミー抵抗及び第2ダミー抵抗を有し、前記第1ダミー抵抗と前記第2ダミー抵抗とを切り替えて前記ヒータ温度リミット回路に接続することで、異なる電圧を前記ヒータ温度リミット回路に印加した場合の前記ヒータ温度リミット回路のそれぞれの動作を基に、前記ヒータ温度リミット回路の異常を検知することを特徴とする請求項2に記載の圧力計測装置。
【請求項4】
前記ヒータ温度リミット回路は、予め決められた前記ヒータの温度がリミット温度に達した場合に、前記ヒータの駆動電流を遮断し、
前記異常検知部は、前記第1ダミー抵抗を前記ヒータ温度リミット回路に接続して、前記所定温度が前記リミット温度よりも高い温度の場合の、前記ヒータ温度リミット回路の動作の異常を検知し、前記第2ダミー抵抗を前記ヒータ温度リミット回路に接続して、前記所定温度が前記リミット温度よりも低い温度の場合の、前記ヒータ温度リミット回路の動作の異常を検知する
ことを特徴とする請求項3に記載の圧力計測装置。
【請求項5】
前記ヒータ温度リミット回路は、前記ヒータの温度に対応する電圧が印加されることで、前記ヒータの温度に基づいた前記ヒータの駆動電流の遮断を行い、
前記異常検知部は、前記ヒータ温度リミット回路に所定温度に対応する所定電圧を印加することで、前記所定温度の場合の前記ヒータ温度リミット回路の異常を検知する
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力計測装置。
【請求項6】
圧力センサと、
前記圧力センサを加熱するヒータと、
前記ヒータの温度を測定するヒータ温度センサと、
前記圧力センサの温度を測定する受圧部温度センサと、
前記受圧部温度センサにより測定される前記圧力センサの温度を基に、前記ヒータによる加熱を制御する制御回路と、
前記ヒータ温度センサにより測定される前記ヒータの温度を基に前記ヒータの駆動電流を遮断するヒータ温度リミット回路とを備えた圧力計測装置の制御方法であって、
前記圧力計測装置が、
前記ヒータの温度が所定温度の場合の動作を前記ヒータ温度リミット回路に行わせて、前記ヒータ温度リミット回路の異常を検知し、
前記異常を検知した場合にアラームを報知する
ことを特徴とする圧力計測装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量型センサにおけるヒータ温度リミット回路の異常検出により過昇温を防止する圧力計測装置及び圧力計測装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置では、圧力計測装置として圧力センサを有する隔膜真空計が使用されることが多い。この隔膜真空計は、半導体製造プロセスにおいて使用するガスが圧力センサに付着すると特性が変化してしまう。そこで、半導体製造装置で使用される隔膜真空計には、内部に圧力センサを加熱するためのヒータが内蔵され、ヒータによる温度上昇によりガスを付着し難くする機種が存在する。ヒータは、隔膜真空計が備えるヒータ制御部により制御され、発熱して圧力センサ内を加熱することにより、圧力センサ内のダイアフラムの周辺の温度を、汚染物質が析出することのない高温度に保つ。
【0003】
ただし、ヒータ付きの隔膜真空計では、ヒータによる過昇温により火災などの事故が発生するおそれがある。そのため、従来、ヒータの過熱を制御する機能を有するヒータ付きの隔膜真空計が提案されている。例えば、CPU(Central Processing Unit)からの信号でヒータ電流のオンオフをコントロールする隔膜真空計において、仮にCPUが暴走してヒータ電流が制御困難になった場合であっても、ヒータによる過昇温を検知して電流を遮断するヒータ温度リミット回路が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-164516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法では、ヒータ温度リミット回路自体が故障した場合、ユーザが故障していることに気が付かずに隔膜真空計の使用を継続することが考えられ、その状態でCPUが暴走するとヒータ温度リミット回路の電流制御が困難となる。その場合、ヒータへの電流が遮断されず、ヒータの過昇温により火災事故が発生する危険がある。
【0006】
本願はこのような課題を解決するためのものであり、圧力計測装置の安全性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に係る圧力計測装置は、圧力センサと、前記圧力センサを加熱するヒータと、前記ヒータの温度を測定するヒータ温度センサと、前記圧力センサの温度を測定する受圧部温度センサと、前記受圧部温度センサにより測定される前記圧力センサの温度を基に、前記ヒータによる加熱を制御する制御回路と、前記ヒータ温度センサにより測定される前記ヒータの温度を基に、前記ヒータの駆動電流を遮断するヒータ温度リミット回路と、前記ヒータの温度が所定温度の場合の動作を前記ヒータ温度リミット回路に行わせて、前記ヒータ温度リミット回路の異常を検知し、前記異常を検知した場合にアラームを報知する異常検知部とを有する。
【0008】
上記圧力計測装置において、前記ヒータ温度リミット回路は、前記ヒータの温度に対応する電圧が印加されることで、前記ヒータの温度に基づいた前記ヒータの駆動電流の遮断を行い、前記異常検知部は、前記ヒータ温度リミット回路に前記所定温度に対応する所定電圧を印加するダミー抵抗を有し、前記ダミー抵抗を前記ヒータ温度リミット回路に接続することで、前記所定温度の場合の前記ヒータ温度リミット回路の異常を検知してもよい。
【0009】
上記圧力計測装置において、前記異常検知部は、前記ダミー抵抗として抵抗値が異なる第1ダミー抵抗及び第2ダミー抵抗を有し、前記第1ダミー抵抗と前記第2ダミー抵抗とを切り替えて前記ヒータ温度リミット回路に接続することで、異なる電圧を前記ヒータ温度リミット回路に印加した場合の前記ヒータ温度リミット回路のそれぞれの動作を基に、前記ヒータ温度リミット回路の異常を検知してもよい。
【0010】
上記圧力計測装置において、前記ヒータ温度リミット回路は、予め決められた前記ヒータの温度がリミット温度に達した場合に、前記ヒータの駆動電流を遮断し、前記異常検知部は、前記第1ダミー抵抗を前記ヒータ温度リミット回路に接続して、前記所定温度が前記リミット温度よりも高い温度の場合の、前記ヒータ温度リミット回路の異常を検知し、前記第2ダミー抵抗を前記ヒータ温度リミット回路に接続して、前記所定温度が前記リミット温度よりも低い温度の場合の前記ヒータ温度リミット回路の異常を検知してもよい。
【0011】
上記圧力計測装置において、前記ヒータ温度リミット回路は、前記ヒータの温度に対応する電圧が印加されることで、前記ヒータの温度に基づいた前記ヒータの駆動電流の遮断を行い、前記異常検知部は、前記ヒータ温度リミット回路に所定温度に対応する所定電圧を印加することで、前記所定温度の場合の前記ヒータ温度リミット回路の異常を検知してもよい。
【0012】
本願に係る圧力計測装置の制御方法は、圧力センサと、前記圧力センサを加熱するヒータと、前記ヒータの温度を測定するヒータ温度センサと、前記圧力センサの温度を測定する受圧部温度センサと、前記受圧部温度センサにより測定される前記圧力センサの温度を基に、前記ヒータによる加熱を制御する制御回路と、前記ヒータ温度センサにより測定される前記ヒータの温度を基に前記ヒータの駆動電流を遮断するヒータ温度リミット回路とを備えた圧力計測装置が、前記ヒータの温度が所定温度の場合の動作を前記ヒータ温度リミット回路に行わせて、前記ヒータ温度リミット回路の異常を検知し、前記異常を検知した場合にアラームを報知する。
【発明の効果】
【0013】
上述した圧力計測装置及び圧力計測装置の制御方法によれば、ヒータ温度リミット回路に所定電圧を印加してその時の動作を基にヒータ温度リミット回路の異常検知を行い、異常を検知した場合にアラームを報知する。このように、圧力計測装置は、ヒータ温度リミット回路が故障したままで、圧力計測装置の使用を継続し、その状態で制御回路が暴走した場合に事故が発生することを回避することができる。この結果、圧力計測装置の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第1の実施形態に係る圧力計測装置のブロック図である。
図2A図2Aは、NTCサーミスタをヒータ温度センサとして使用した場合のサーミスタ特性とダミー抵抗値の関係を表す図である。
図2B図2Bは、測温抵抗体をヒータ温度センサとして使用した場合の測温抵抗体の特性とダミー抵抗値の関係を表す図である。
図3A図3Aは、NTCサーミスタをヒータ温度センサとして使用した場合の計測温度と対応するダミー抵抗値の関係を示す図である。
図3B図3Bは、測温抵抗体をヒータ温度センサとして使用した場合の計測温度と対応するダミー抵抗値の関係を示す図である。
図4A図4Aは、サーミスタ使用時の故障部品と電流遮断方法との対応をまとめた図である。
図4B図4Bは、サーミスタ使用時の故障部品と電流遮断方法との対応をまとめた図である。
図4C図4Cは、サーミスタ使用時の故障部品と電流遮断方法との対応をまとめた図である。
図4D図4Dは、サーミスタ使用時の故障部品と電流遮断方法との対応をまとめた図である。
図5A図5Aは、測温抵抗体使用時の故障部品と電流遮断方法との対応をまとめた図である。
図5B図5Bは、測温抵抗体使用時の故障部品と電流遮断方法との対応をまとめた図である。
図5C図5Cは、測温抵抗体使用時の故障部品と電流遮断方法との対応をまとめた図である。
図5D図5Dは、測温抵抗体使用時の故障部品と電流遮断方法との対応をまとめた図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る圧力計測装置によるヒータ温度リミット回路の故障診断処理のフローチャートである。
図7図7は、第2の実施形態に係る圧力計測装置のブロック図である。
図8A図8Aは、NTCサーミスタをヒータ温度センサとして使用した場合の計測温度と対応する電圧の関係を示す図である。
図8B図8Bは、測温抵抗体をヒータ温度センサとして使用した場合の計測温度と対応するダミー抵抗値の関係を示す図である。
図9図9は、第2の実施形態に係る圧力計測装置によるヒータ温度リミット回路の故障診断処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0016】
[原理]
図1は、第1の実施形態に係る圧力計測装置のブロック図である。圧力計測装置10は、例えば、隔膜真空計である。圧力計測装置10は、従来検知できなかったヒータ温度リミット回路23の故障を検出する。本実施形態では、圧力計測装置10は、ヒータ温度センサ14と並列に、リミット温度より低い温度に対応する低温側ダミー抵抗103、高い温度に対応する高温側ダミー抵抗104を接続する。
【0017】
一例として、NTCサーミスタをヒータ温度センサ14として使用する場合、サーミスタの特性に対する低温側ダミー抵抗103及び104の関係を図示すると図2Aのようになる。図2Aは、NTCサーミスタをヒータ温度センサとして使用した場合のサーミスタ特性とダミー抵抗値の関係を表す図である。図2Aのグラフは、横軸で温度を表し、縦軸で抵抗値を表す。図2Aにおけるリミット温度は、ヒータ温度リミット回路23がヒータ12に対する電流を遮断する閾値温度である。低温側ダミー抵抗103は、リミット温度より低い温度である低温側異常検知用温度に対応する抵抗値を有する。また、高温側ダミー抵抗104は、リミット温度より高い温度である高温側異常検知用温度に対応する抵抗値を有する。
【0018】
また、測温抵抗体をヒータ温度センサ14として使用する場合、測温抵抗体の特性に対する低温側ダミー抵抗103及び104の関係を図示すると図2Bのようになる。図2Bは、測温抵抗体をヒータ温度センサとして使用した場合の測温抵抗体の特性とダミー抵抗値の関係を表す図である。図2Bのグラフは、横軸で温度を表し、縦軸で抵抗値を表す。図2Bにおけるリミット温度は、ヒータ温度リミット回路23がヒータ12に対する電流を遮断する閾値温度である。この場合も、低温側ダミー抵抗103は、リミット温度より低い温度である低温側異常検知用温度に対応する抵抗値を有する。また、高温側ダミー抵抗104は、リミット温度より高い温度である高温側異常検知用温度に対応する抵抗値を有する。
【0019】
また、図3Aは、NTCサーミスタをヒータ温度センサとして使用した場合の計測温度と対応するダミー抵抗値の関係を示す図である。図3Aは、リミット温度を280℃とした場合の例を示す。NTCサーミスタをヒータ温度センサとして使用した場合、例えば、低温側ダミー抵抗103は、ヒータ温度センサ14の計測温度が低温側異常検知温度である270℃となる場合に対応させて、29(Ω)と決められる。また、高温側ダミー抵抗104は、ヒータ温度センサ14の計測温度が高温側異常検知温度である290℃となる場合に対応させて、22(Ω)と決められる。特に、リミット温度は、高すぎると火災の原因になるため、ここでは280℃に設定した。
【0020】
また、図3Bは、測温抵抗体をヒータ温度センサとして使用した場合の計測温度と対応するダミー抵抗値の関係を示す図である。図3Bも、リミット温度を280℃とした場合の例を示す。測温抵抗体をヒータ温度センサとして使用した場合、例えば、低温側ダミー抵抗103は、ヒータ温度センサ14の計測温度が低温側異常検知温度である270℃となる場合に対応させて、2013.14(Ω)と決められる。また、高温側ダミー抵抗104は、ヒータ温度センサ14の計測温度が高温側異常検知温度である290℃となる場合に対応させて、2084.84(Ω)と決められる。
【0021】
図1に戻って説明を続ける。ヒータ温度センサ14、低温側ダミー抵抗103及び高温側ダミー抵抗104は、制御回路21からの制御信号によりFETスイッチ221~223がON/OFFさせられることで、回路に接続された選状態又は切り離された状態の切り替えがなされる。また、ヒータ12へ流れるヒータ電流の有無は、信号が電流検知回路24を通して制御回路21に入力されることで、制御回路21で動作するファームウエアで認識可能である。制御回路21は、例えばCPUである。
【0022】
そして、制御回路21は、以下の方法でヒータ温度リミット回路23の異常検知を実行する。電源投入後、制御回路21は、始めに高温側ダミー抵抗104を接続しヒータ電流が流れないことを確認する。次に、制御回路21は、低温側ダミー抵抗103を接続しヒータ電流が流れることを確認する。双方の確認ができた場合、制御回路21は、ヒータ温度リミット回路23が正常であると判定し、ヒータ温度センサ14を回路に接続し通常シーケンスに進む。高温側ダミー抵抗104の接続時にヒータ電流が流れる場合又は低温側ダミー抵抗103の接続時にヒータ電流が流れない場合は、制御回路21は、ファームウエアでアラームを報知する。
【0023】
動作中にヒータ温度リミット回路23が常にヒータ12をONさせるように故障したケースでは、その状態で制御回路21が故障して制御信号が常にONになると、過昇温を防止できない。このケースに対して、本実施形態に係る圧力計測装置10は、制御回路21による異常検知のシーケンスを走らせてヒータ温度リミット回路23の異常検知を実行する。動作中に定期的に実施する異常検知のシーケンスの中で、高温側ダミー抵抗104に切り替えた時に、流れないはずのヒータ電流が流れるので、制御回路21は、アラームにより異常検知を報知することができる。
【0024】
圧力計測装置10では、異常検出機能のために構成部品が増加するが、部品が単一故障した場合にヒータ電流を遮断できる。図4A~4Dは、サーミスタ使用時の故障部品と電流遮断方法との対応をまとめた図である。また、図5A~5Dは、測温抵抗体使用時の故障部品と電流遮断方法との対応をまとめた図である。図4A~4Dや図5A~5Dで示すように、圧力計測装置10は、ヒータ温度センサ14としてサーミスタを使用した場合及び測温抵抗体を使用した場合のいずれでも、部品の単一故障であればどのような故障であっても、故障を検知することやヒータ電流を遮断することが可能であり、発火などの事故を回避することが可能である。すなわち、圧力計測装置10の安全性を向上させることが可能である。特に、図4A~4D及び5A~5Dにおいて、圧力計測装置10の特徴と記載された列で丸がついている項目については、圧力計測装置10により新たに実現された項目である。すなわち、圧力計測装置10は、従来の技術と比較して、より安全性が向上したといえる。
【0025】
[第1の実施形態]
[圧力計測装置の機能構成の一例]
以下、上述した圧力計測装置10の実施形態の一例について、図1に戻ってさらに詳細に説明する。圧力計測装置10は、圧力検出装置である。圧力計測装置10は、図1に示すように、圧力センサ11、ヒータ12、ヒータ電源13、ヒータ温度センサ14、受圧部温度センサ15、第1温度センサ回路電源16及び第2温度センサ回路電源17を有する。また、圧力計測装置10は、制御回路21、ADC(Analog to Digital Converter)22、ヒータ温度リミット回路23及び電流検知回路24を有する。また、圧力計測装置10は、固定抵抗101及び102、低温側ダミー抵抗103及び104、並びに、FETスイッチ211、212及び221~223を有する。
【0026】
圧力センサ11は、内部に真空室を備え、真空室の気圧と、測定対象の部屋の気圧との差圧をダイアフラムの変位により検出する隔膜式の圧力センサである。測定対象の気圧としては、例えば、半導体製造装置の真空チャンバ内の気圧等が挙げられる。
【0027】
ヒータ12は、圧力センサ11の外側を覆うように配置される。ヒータ12は、発熱することで圧力センサ11を加熱する。この加熱により、圧力センサ11内のダイアフラムの周辺の温度が、真空チャンバ等の測定対象の部屋から圧力センサ11内部に導入されるガスに含まれる汚染物質が析出されることのない高温度に保たれる。ヒータ12は、シーズヒータ等を含んで構成されるバンドヒータ等である。ヒータ12は、ヒータ電源13から供給されるヒータ電流が流れること、つまり、通電することで発熱し、圧力センサ11を加熱する。ヒータ電流の通電/非通電は、CPUなどの制御回路21により制御される。
【0028】
ただし、ヒータ12は、その温度が予め決められた不適切な温度上昇を防止するために用いる温度の上限閾値を超えると、制御回路21によりヒータ電流が遮断されて発熱を停止する。また、ヒータ12は、その温度が予め決められたヒータ12の過昇温を防止するための閾値であるリミット温度を超えると、ヒータ温度リミット回路23によりヒータ電流が遮断されて発熱を停止する。リミット温度は、発火などの事故の発生を回避するための温度であり、圧力センサ11やヒータ12の構成から決定されることが好ましい。例えば、リミット温度は、280℃とすることができる。
【0029】
ヒータ電源13は、不図示の外部電源から入力される電圧をヒータ12に印加する。後述のように、制御回路21が、ヒータ12にヒータ電流を流す制御を行っているとき、ヒータ電源13は、印加電圧に応じたヒータ電流をヒータ12に流す。これにより、ヒータ12は発熱し、圧力センサ11を加熱する。
【0030】
第1温度センサ回路電源16は、不図示の外部電源から入力される電流を、FETスイッチ221~223のオンオフに応じて、固定抵抗101を介して、ヒータ温度センサ14、低温側ダミー抵抗103又は高温側ダミー抵抗104のいずれかに流す。これにより、固定抵抗101とヒータ温度センサ14、低温側ダミー抵抗103又は高温側ダミー抵抗104とに応じた電圧値がヒータ温度リミット回路23及びADC22に入力される。
【0031】
第2温度センサ回路電源17は、不図示の外部電源から入力される電流を、固定抵抗102を介して受圧部温度センサ15に流す。これにより、固定抵抗102と受圧部温度センサ15とに応じた電圧値がADC22に入力される。
【0032】
ヒータ温度センサ14は、ヒータ12の所定箇所に設けられ、ヒータ12の温度を検出し、検出した温度を制御回路21に出力する。受圧部温度センサ15は、圧力センサ11の内部又は外周面に設けられて、圧力センサ11の温度を検出し、検出した温度を制御回路21に出力する。ヒータ温度センサ14及び受圧部温度センサ15のそれぞれは、温度を電圧値に変換する熱電対、サーミスタ等の素子を含んで構成され、ここでは温度を示す電圧値を出力することで、温度検出及び検出温度の情報の出力を行う。
【0033】
制御回路21、ADC22、ヒータ温度リミット回路23、並びに、FETスイッチ211及び212は、ヒータ12に流れるヒータ電流を制御することでヒータ12の発熱を制御してヒータ12の温度を制御する。また、制御回路21、低温側ダミー抵抗103及び104、並びに、FETスイッチ222及び223は、異常検知部20を構成する。異常検知部20は、ヒータ12の温度が所定温度の場合の動作をヒータ温度リミット回路23に行わせて、ヒータ温度リミット回路23の異常を検知し、異常を検知した場合にアラームを報知する。例えば、異常検知部20は、圧力計測装置10の電源投入時に、ヒータ温度リミット回路23に所定の高温を示す電圧値及び低温を示す電圧値をヒータ温度リミット回路23に流すことで、ヒータ温度リミット回路23の異常検出を行う。以下に、各部の詳細を説明する。
【0034】
FETスイッチ211及び212は、ヒータ電源13からのヒータ電流をヒータ12に流す又は流さないを切り替えるスイッチング素子である。FETスイッチ211のドレイン端子は、一端がヒータ電源13に接続されたヒータ12の他端に接続される。FETスイッチ211のソース端子は、FETスイッチ212のドレイン端子に接続される。また、FETスイッチ211のゲート端子には、ヒータ温度リミット回路23が接続される。FETスイッチ212のソース端子は、グランドに接続される。また、FETスイッチ212のゲート端子には、ヒータ12に流れる電流を制御する制御回路21が接続される。
【0035】
以上のような接続により、FETスイッチ211及び212は、ヒータ電源13からヒータ12を経由してグランドに向かって流れるヒータ電流の電流路上に設けられる。そして、FETスイッチ211及び212の両方がオン状態になっている場合に、ヒータ12にヒータ電流が流れて、ヒータ12が発熱する。
【0036】
低温側ダミー抵抗103は、ヒータ温度リミット回路23の異常を検出するための所定温度に対応する所定電圧をヒータ温度リミット回路23に流すための抵抗である。ヒータ温度リミット回路23に印加される電圧は、低温側ダミー抵抗103と固定抵抗101との分圧により規定される。例えば、低温側ダミー抵抗103は、低温側異常検知温度を示す電圧をヒータ温度リミット回路23に印加するために用いられる。ここで、低温側異常検知温度とは、リミット温度よりも低い温度であり、この温度でヒータ温度リミット回路23にヒータ電流が流れなければ異常であると判定することが可能な温度である。低温側異常検知温度は、ヒータ温度リミット回路23の能力などにより決定されることが好ましい。低温側ダミー抵抗103は、FETスイッチ222のオンオフにより、回路への接続又は回路からの切り離しが行われる。この低温側ダミー抵抗103が、「第2ダミー抵抗」の一例にあたる。
【0037】
高温側ダミー抵抗104も、ヒータ温度リミット回路23の異常を検知するための所定温度に対応する所定電圧をヒータ温度リミット回路23に流すための抵抗である。ヒータ温度リミット回路23に印加される電圧は、高温側ダミー抵抗104と固定抵抗101との分圧により規定される。例えば、高温側ダミー抵抗104は、高温側異常検知温度を示す電圧をヒータ温度リミット回路23に流すために用いられる。ここで、高温側異常検知温度とは、リミット温度よりも高い温度であり、この温度でヒータ温度リミット回路23にヒータ電流が流れている場合には異常であると判定することが可能な温度である。高温側異常検知温度は、ヒータ温度リミット回路23の能力などにより決定されることが好ましい。高温側ダミー抵抗104は、FETスイッチ223のオンオフにより、回路への接続又は回路からの切り離しが行われる。この高温側ダミー抵抗104が、「第1ダミー抵抗」の一例にあたる。
【0038】
低温側ダミー抵抗103及び104の抵抗値は、例えば、ヒータ温度センサ14としてサーミスタを用いる場合、図2Aに示すサーミスタ特性とダミー抵抗値との関係を用いて決定可能である。具体的には、以下の手順で低温側ダミー抵抗103及び104の抵抗値が決定される。まず、ヒータ温度リミット回路23の過昇温を防止するリミット温度が決定される。次に、そのリミット温度よりも低い温度である低温側異常検知温度及びリミット温度よりも高い温度である高温側異常検知温度が決定される。そして、図2Aのグラフにおいて低温側異常検知温度に対応する抵抗値が低温側ダミー抵抗103の抵抗値として決定される。また、図2Aのグラフにおいて高温側異常検知温度に対応する抵抗値が高温側ダミー抵抗104の抵抗値として決定される。
【0039】
また、低温側ダミー抵抗103及び104の抵抗値は、例えば、ヒータ温度センサ14として測温抵抗体を用いる場合、図2Bに示すサーミスタ特性とダミー抵抗値との関係を用いて決定可能である。具体的には、以下の手順で低温側ダミー抵抗103及び104の抵抗値が決定される。まず、ヒータ温度リミット回路23の過昇温を防止するリミット温度が決定される。次に、そのリミット温度よりも低い温度である低温側異常検知温度及びリミット温度よりも高い温度である高温側異常検知温度が決定される。そして、図2Bのグラフにおいて低温側異常検知温度に対応する抵抗値が低温側ダミー抵抗103の抵抗値として決定される。また、図2Bのグラフにおいて高温側異常検知温度に対応する抵抗値が高温側ダミー抵抗104の抵抗値として決定される。
【0040】
ヒータ温度センサ14としてサーミスタを用いる場合であれば、例えば、図3Aで示されるリミット温度を280℃とした場合の計測結果に基づいて、計測温度が290℃となる高温側ダミー抵抗104を用いることで、高温側異常検知温度を290℃とすることができる。また、図3Aで示されるリミット温度を280℃とした場合の計測結果に基づいて、計測温度である270℃となる低温側ダミー抵抗103を用いることで、低温側異常検知温度を270℃とすることができる。
【0041】
また、ヒータ温度センサ14として測温抵抗体を用いる場合でも同様に、例えば、図3Bで示されるリミット温度を280℃とした場合の計測結果に基づいて、計測温度が290℃となる高温側ダミー抵抗104を用いることで、高温側異常検知温度を290℃とすることができる。また、図3Bで示されるリミット温度を280℃とした場合の計測結果に基づいて、計測温度である270℃となる低温側ダミー抵抗103を用いることで、低温側異常検知温度を270℃とすることができる。
【0042】
さらに、本実施例では、計測結果を用いて低温側ダミー抵抗103及び高温側ダミー抵抗104の抵抗値を決定したが、これに限らず、サーミスタ特性や測温抵抗体の特性等から机上検討により決定することも可能である。
【0043】
制御回路21は、CPU等のプロセッサである。制御回路21は、不図示の記憶装置に記録されたプログラムを実行し、且つ、記憶装置に記憶されたデータに基づいて動作する。上記プロセッサは、記憶装置を含むマイクロコンピュータ等であってもよい。また、制御回路21は、各種の論理回路であってもよい。制御回路21は、FETスイッチ212のゲート端子が接続される。また、制御回路21は、ADC22が接続される。
【0044】
制御回路21は、圧力センサ11の温度の情報の入力をADC22から受ける。そして、制御回路21は、ADC22から入力された圧力センサ11の温度が予め設定された目標温度となるよう、オン信号(例えば、High信号)又はオフ信号(例えば、Low信号)をFETスイッチ212へ出力してFETスイッチ212のオンオフを制御する。制御回路21は、例えば、PID(Proportional Integral Differential)制御等のフィードバック制御により、FETスイッチ212をオン又はオフに切り替える。
【0045】
また、制御回路21は、ヒータ12の不適切な温度上昇を防止するために用いる温度の上限閾値を有する。制御回路21は、ヒータ12の温度の情報の入力をADC22から受ける。そして、ADC22から入力されたヒータ12の温度が上限閾値を超えたかを判定する。ヒータ12の温度が上限閾値を超えた場合、ヒータ12の温度が必要以上に高くなっていることになると判定して、制御回路21は、FETスイッチ212に対するフィードバック制御に優先して、FETスイッチ212にオフ信号(例えば、Low信号)を供給し、FETスイッチ212をオフする。これにより、ヒータ12への通電が遮断され、ヒータ12の発熱が停止する。
【0046】
また、制御回路21は、圧力計測装置10への電源投入後の動作開始時に、ヒータ温度リミット回路23の異常検知を実行する。具体的には、制御回路21は、FETスイッチ212をオンにしたうえで、以下のような高温側異常検知処理及び低温側異常検知処理により異常検知を実行する。
【0047】
高温側異常検知処理では、制御回路21は、オフ信号(例えば、Low信号)をFETスイッチ221及び222のゲートに入力してFETスイッチ221及び222をオフにして、ヒータ温度センサ14及び低温側ダミー抵抗103を回路から切り離す。次に、制御回路21は、オン信号(例えば、High信号)をFETスイッチ223のゲートに入力してFETスイッチ223をオンにして、高温側ダミー抵抗104を回路に接続する。これにより、高温側ダミー抵抗104の抵抗値により規定される高温側異常検知温度を示す電圧値がヒータ温度リミット回路23に入力される。
【0048】
その後、制御回路21は、電流検知回路24からヒータ12に流れるヒータ電流の有無の通知を受ける。ヒータ電流が流れていない場合、制御回路21は、ヒータ温度リミット回路23が正常動作していると判定する。その場合、制御回路21は、次の低温側異常検知処理に進む。
【0049】
これに対して、ヒータ電流が流れている場合、制御回路21は、本来であればヒータ温度リミット回路23によりヒータ電流が遮断されていなければならないのに、ヒータ電流が流れていることから、ヒータ温度リミット回路23が異常であると判定する。その場合、制御回路21は、例えば警告灯を点灯させるなどしてアラームを報知する。利用者は、アラームを確認することで、ヒータ温度リミット回路23の異常を確認できる。
【0050】
低温側異常検知処理では、制御回路21は、オフ信号(例えば、Low信号)をFETスイッチ221及び223のゲートに入力してFETスイッチ221及び223をオフにして、ヒータ温度センサ14及び高温側ダミー抵抗104を回路から切り離す。次に、制御回路21は、オン信号(例えば、High信号)をFETスイッチ222のゲートに入力してFETスイッチ222をオンにして、低温側ダミー抵抗103を回路に接続する。これにより、低温側ダミー抵抗103の抵抗値により規定される低温側異常検知温度を示す電圧値がヒータ温度リミット回路23に入力される。
【0051】
その後、制御回路21は、電流検知回路24からヒータ12に流れる電流であるヒータ電流の有無の通知を受ける。ヒータ電流が流れている場合、制御回路21は、ヒータ温度リミット回路23が正常動作していると判定する。そして、制御回路21は、オフ信号(例えば、Low信号)をFETスイッチ222及び223のゲートに入力してFETスイッチ222及び223をオフにして、低温側ダミー抵抗103及び104を回路から切り離す。次に、制御回路21は、オン信号(例えば、High信号)をFETスイッチ221のゲートに入力してFETスイッチ221をオンにして、ヒータ温度センサ14を回路に接続する。その後、制御回路21は、圧力センサ11やヒータ12の温度計測といった通常シーケンスに移行する。
【0052】
これに対して、ヒータ電流が流れていない場合、制御回路21は、本来であればリミット温度に達していないためFETスイッチ211はオフにされずにヒータ電流が流れていなければならないのに、ヒータ温度リミット回路23によりヒータ電流が遮断されていることから、ヒータ温度リミット回路23が異常であると判定する。その場合、制御回路21は、例えば警告灯を点灯させるなどしてアラームを報知する。利用者は、アラームを確認することで、ヒータ温度リミット回路23の異常を確認できる。
【0053】
このように、異常検知部20は、高温側ダミー抵抗104をヒータ温度リミット回路23に接続して、リミット温度よりも高い温度の場合のヒータ温度リミット回路23の動作の異常を検知する。次に、異常検知部20は、低温側ダミー抵抗103をヒータ温度リミット回路23に接続して、リミット温度よりも低い温度の場合のヒータ温度リミット回路23の動作の異常を検知する。
【0054】
ADC22は、制御回路21に接続される。ADC22は、受圧部温度センサ15が検出して出力した電圧値で表される圧力センサ11の温度を、デジタルデータに変換して制御回路21に供給する。また、ADC22は、ヒータ温度センサ14が検出して出力した電圧値で示されるヒータ12の温度を表す電圧値を、デジタルデータに変換して制御回路21に供給する。
【0055】
ヒータ温度リミット回路23は、ヒータ12の過昇温を判定するための温度の閾値であるリミット温度を有する。ヒータ温度リミット回路23は、ヒータ温度センサ14が検出したヒータ12の温度が入力される。ヒータ温度リミット回路23は、入力された温度とリミット温度とを比較する。なお、リミット温度は、制御回路21が有する上限閾値と同じでもよいし、異なる値(特に、上限閾値よりも高い値)であってもよい。
【0056】
ヒータ温度リミット回路23は、入力されたヒータ12の温度がリミット温度以下であるとき、つまり、ヒータ12の温度が正常範囲内であるとき、FETスイッチ211のゲートにオン信号を供給し、FETスイッチ211をオンする。また、ヒータ温度リミット回路23は、入力されたヒータ12の温度がリミット温度を超えたとき、つまり、ヒータ12の温度が過昇温のとき、FETスイッチ211のゲートにオフ信号を供給し、FETスイッチ211をオフする。ヒータ温度リミット回路23は、FETスイッチ211をオフにすることで、ヒータ12への通電を遮断して、ヒータ12の発熱を停止させる。
【0057】
電流検知回路24は、ヒータ電源13からヒータ12を経由して流れるヒータ電流が流れているか否かを検知する。FETスイッチ211又は212の両方がオンの場合、電流検知回路24は、ヒータ電流が流れていることを検知する。逆に、FETスイッチ211又は212の少なくともいずれかがオフの場合、電流検知回路24は、ヒータ電流が流れていないことを検知する。そして、電流検知回路24は、ヒータ電流の検知結果を制御回路21に通知する。
【0058】
[第1の実施形態における故障診断処理の一例]
図6は、第1の実施形態に係る圧力計測装置によるヒータ温度リミット回路の故障診断処理のフローチャートである。次に、図6を参照して、本実施形態に係る圧力計測装置10によるヒータ温度リミット回路23の故障診断処理の流れについて説明する。
【0059】
圧力計測装置10に、電源が投入される(ステップS101)。
【0060】
制御回路21は、FETスイッチ212及び223をオンにして、FETスイッチ221及び222をオフにする。これにより、制御回路21は、高温側ダミー抵抗104を回路に接続する(ステップS102)。
【0061】
そして、制御回路21は、電流検知回路24から入力されたヒータ電流の検知結果から、ヒータ電流が0(A)か否かを判定する(ステップS103)。
【0062】
ヒータ電流が0(A)でない場合(ステップS103:否定)、制御回路21は、ヒータ温度リミット回路23の異常を検知してアラームを報知する(ステップS108)。
【0063】
これに対して、ヒータ電流が0(A)の場合(ステップS103:肯定)、次に、制御回路21は、FETスイッチ212及び222をオンにして、FETスイッチ221及び223をオフにする。これにより、制御回路21は、低温側ダミー抵抗103を回路に接続する(ステップS104)。
【0064】
そして、制御回路21は、電流検知回路24から入力されたヒータ電流の検知結果から、ヒータ電流が0(A)か否かを判定する(ステップS105)。
【0065】
ヒータ電流が0(A)の場合(ステップS105:肯定)、制御回路21は、ヒータ温度リミット回路23の異常を検知してアラームを報知する(ステップS108)。
【0066】
これに対して、ヒータ電流が0(A)でない場合(ステップS105:否定)、制御回路21は、ヒータ温度リミット回路23が正常と判定する。そして、制御回路21は、FETスイッチ221をオンにして、FETスイッチ222及び223をオフにする。これにより、制御回路21は、ヒータ温度センサ14を回路に接続する(ステップS106)。
【0067】
その後、制御回路21は、ヒータ12の制御や圧力センサ11及びヒータ12や温度計測といった通常シーケンスを実行する(ステップS107)。
【0068】
[第1の実施形態及びその変形例における効果]
以上に説明したように、本実施形態に係る圧力計測装置10は、高温側ダミー抵抗104を用いて高温側異常検知温度をヒータ温度リミット回路23に印加して、その際に流れるヒータ電流の有無からヒータ温度リミット回路23の異常を検知してアラームを報知する。また、本実施形態に係る圧力計測装置10は、低温側ダミー抵抗103を用いて低温側異常検知温度をヒータ温度リミット回路23に印加して、その際に流れるヒータ電流の有無からヒータ温度リミット回路23の異常を検知してアラームを報知する。これにより、ヒータ温度リミット回路23の故障を利用者に気付かせることができる。すなわち、ヒータ温度リミット回路23が故障したままで、圧力計測装置10の使用を継続し、その状態で制御回路21が暴走した場合に火災などの事故が発生することを回避することができる。したがって、圧力計測装置10の安全性を向上させることが可能となる。
【0069】
ここで、以上の説明では、低温側ダミー抵抗103を用いてヒータ電流を遮断し続けるようなヒータ温度リミット回路23異常の検知を行ったが、ヒータ電流を遮断し続ける場合には火災の発生などの危険がない。そのため、制御回路21は、火災の危険がある高温側高温側ダミー抵抗104を用いた高温側異常検出処理を行い、低温側低温側ダミー抵抗103を用いた低温側異常検出処理を行わなくてもよい。また、本実施形態では、制御回路21は、高温側異常検出処理の後に低温側異常検出処理を実行したがこの順序は逆でもよい。
【0070】
また、本実施形態では、制御回路21は、電源投入時にヒータ温度リミット回路23の異常の検知を行ったが、圧力センサ11が圧力計測を行っていない場合など所定のタイミングで、ヒータ温度リミット回路23の異常の検知を繰り返し行ってもよい。例えば、圧力計測装置10への電源投入後でヒータ12に電流を流し始める前に実施してもよい。他にも、メンテナンス時などに、ヒータ温度リミット回路23の異常の検知を行ってもよい。
【0071】
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施形態に係る圧力計測装置のブロック図である。本実施形態に係る圧力計測装置10は、制御回路21からの信号によりヒータ温度リミット回路23に所定の電圧を加えて、ヒータ温度リミット回路23の動作試験を行う。以下の説明では、第1の実施形態と同様の各部の動作については説明を省略する。
【0072】
本実施形態において、制御回路21及びFETスイッチ224が異常検知部20を構成する。異常検知部20は、ヒータ12の温度が所定温度の場合の動作をヒータ温度リミット回路23に行わせて、ヒータ温度リミット回路23の異常を検知し、異常を検知した場合にアラームを報知する。以下に、異常検知部20の詳細について説明する。
【0073】
制御回路21は、DA(Digital to Analog)コンバータを内蔵する。以下では、制御回路21が内蔵するDAコンバータを内蔵DAコンバータと呼ぶ。また、制御回路21は、ヒータ温度リミット回路23の異常の検知に用いる所定温度に対応する所定電圧を予め保持する。例えば、制御回路21は、高温側異常検知温度相当の電圧値の情報及び低温側異常検知温度相当の電圧値の情報を保持する。
【0074】
図8Aは、NTCサーミスタをヒータ温度センサとして使用した場合の計測温度と対応する電圧の関係を示す図である。例えば、リミット温度を280℃とし、高温側異常検知温度を290℃とし、低温側異常検知温度を270℃とする場合で説明する。また、ここでは、固定抵抗101が2700(Ω)である。また、ヒータ温度センサ14としてNTCサーミスタを用い、ヒータ温度センサ14の抵抗値は270℃で29(Ω)であり、290℃で22(Ω)である。さらに、第1温度センサ回路電源16及び第2温度センサ回路電源17のいずれも2.5(V)である。この場合、例えば、制御回路21は、低温側異常検知温度である270℃相当の電圧値として0.0266(V)を保持する。また、例えば、制御回路21は、高温側異常検知温度である290℃相当の電圧値として0.0202(V)を保持する。
【0075】
図8Bは、測温抵抗体をヒータ温度センサとして使用した場合の計測温度と対応するダミー抵抗値の関係を示す図である。次に、ヒータ温度センサ14として測温抵抗体を用いる場合について説明する。ここでも、リミット温度を280℃とし、高温側異常検知温度を290℃とし、低温側異常検知温度を270℃とする場合で説明する。また、ここでも、固定抵抗101が2700(Ω)である。また、ヒータ温度センサ14の抵抗値は270℃で2013.14(Ω)であり、290℃で2084.84(Ω)である。さらに、第1温度センサ回路電源16及び第2温度センサ回路電源17のいずれも2.5(V)である。この場合、例えば、制御回路21は、低温側異常検知温度である270℃相当の電圧値として1.07(V)を保持する。また、例えば、制御回路21は、高温側異常検知温度である290℃相当の電圧値として1.09(V)を保持する。
【0076】
制御回路21は、FETスイッチ212をオンにする。次に、制御回路21は、FETスイッチ221をオフにして、ヒータ温度センサ14を回路から切り離す。次に、制御回路21は、FETスイッチ224をオンにする。そのうえで、制御回路21は、以下のような高温側異常検知処理及び低温側異常検知処理により異常検知を実行する。
【0077】
高温側異常検知処理では、制御回路21は、高温側異常検知温度相当の電圧を内蔵DAコンバータから出力する。これにより、制御回路21は、高温側異常検知温度相当の電圧をヒータ温度リミット回路23に印加する。例えば、ヒータ温度センサ14としてNTCサーミスタを用いる場合であれば、制御回路21は、図8Aの高温側異常検知温度である290℃相当の電圧値に基づいて、0.0202(V)をヒータ温度リミット回路23に印加する。また、ヒータ温度センサ14として測温抵抗体を用いる場合であれば、制御回路21は、図8Bの高温側異常検知温度である290℃相当の電圧値に基づいて、1.09(V)をヒータ温度リミット回路23に印加する。
【0078】
その後、制御回路21は、電流検知回路24からヒータ12に流れるヒータ電流の有無の通知を受ける。ヒータ電流が流れていない場合、制御回路21は、ヒータ温度リミット回路23が正常動作していると判定する。その場合、制御回路21は、次の低温側異常検知処理に進む。
【0079】
これに対して、ヒータ電流が流れている場合、制御回路21は、本来であればヒータ温度リミット回路23によりヒータ電流が遮断されていなければならないのに、ヒータ電流が流れていることから、ヒータ温度リミット回路23が異常である判定する。その場合、制御回路21は、例えば警告灯を点灯させるなどしてアラームを報知する。利用者は、アラームを確認することで、ヒータ温度リミット回路23の異常を確認できる。
【0080】
低温側異常検知処理では、制御回路21は、低温側異常検知温度相当の電圧を内蔵DAコンバータから出力する。これにより、制御回路21は、低温側異常検知温度相当の電圧をヒータ温度リミット回路23に印加する。例えば、ヒータ温度センサ14としてNTCサーミスタを用いる場合であれば、制御回路21は、図8Aの低温側異常検知温度である270℃相当の電圧値に基づいて、0.0266(V)をヒータ温度リミット回路23に印加する。また、ヒータ温度センサ14として測温抵抗体を用いる場合であれば、制御回路21は、図8Bの低温側異常検知温度である270℃相当の電圧値に基づいて、1.07(V)をヒータ温度リミット回路23に印加する。
【0081】
その後、制御回路21は、電流検知回路24からヒータ12に流れる電流であるヒータ電流の有無の通知を受ける。ヒータ電流が流れている場合、制御回路21は、ヒータ温度リミット回路23が正常動作していると判定する。その場合、制御回路21は、ヒータ温度リミット回路23が正常動作していると判定する。そして、制御回路21は、FETスイッチ224をオフにする。次に、制御回路21は、FETスイッチ221をオンにして、ヒータ温度センサ14を回路に接続する。その後、制御回路21は、圧力センサ11やヒータ12の温度監視といった通常シーケンスに移行する。
【0082】
これに対して、ヒータ電流が流れていない場合、制御回路21は、本来であればヒータ電流が流れていなければならないのに、ヒータ温度リミット回路23によりヒータ電流が遮断されていることから、ヒータ温度リミット回路23が異常であると判定する。その場合、制御回路21は、例えば警告灯を点灯させるなどしてアラームを報知する。利用者は、アラームを確認することで、ヒータ温度リミット回路23の異常を確認できる。
【0083】
[第2の実施形態における故障診断処理の一例]
図9は、第2の実施形態に係る圧力計測装置によるヒータ温度リミット回路の故障診断処理のフローチャートである。次に、図9を参照して、本実施形態に係る圧力計測装置10によるヒータ温度リミット回路23の故障診断処理の流れについて説明する。
【0084】
圧力計測装置10に、電源が投入される(ステップS201)。
【0085】
制御回路21は、FETスイッチ224をオンにして、FETスイッチ221をオフにする。そして、制御回路21は、高温側異常検知温度相当の電圧を内蔵DAコンバータから出力して、ヒータ温度リミット回路23に印加する(ステップS202)。
【0086】
そして、制御回路21は、電流検知回路24から入力されたヒータ電流の検知結果から、ヒータ電流が0(A)か否かを判定する(ステップS203)。
【0087】
ヒータ電流が0(A)でない場合(ステップS203:否定)、制御回路21は、ヒータ温度リミット回路23の異常を検知してアラームを報知する(ステップS208)。
【0088】
これに対して、ヒータ電流が0(A)の場合(ステップS203:肯定)、次に、制御回路21は、低温側異常検知温度相当の電圧を内蔵DAコンバータから出力して、ヒータ温度リミット回路23に印加する(ステップS204)。
【0089】
そして、制御回路21は、電流検知回路24から入力されたヒータ電流の検知結果から、ヒータ電流が0(A)か否かを判定する(ステップS205)。
【0090】
ヒータ電流が0(A)の場合(ステップS205:肯定)、制御回路21は、ヒータ温度リミット回路23の異常を検知してアラームを報知する(ステップS208)。
【0091】
これに対して、ヒータ電流が0(A)でない場合(ステップS205:否定)、制御回路21は、ヒータ温度リミット回路23が正常と判定する。そして、制御回路21は、FETスイッチ221をオンにして、FETスイッチ224をオフにする。これにより、制御回路21は、ヒータ温度センサ14を回路に接続する(ステップS206)。
【0092】
その後、制御回路21は、ヒータ12の制御や圧力センサ11及びヒータ12や温度計測といった通常シーケンスを実行する(ステップS207)。
【0093】
[第2の実施形態及びその変形例における効果]
以上に説明したように、本実施形態に係る圧力計測装置10は、制御回路21が予め決められた高温側異常検知温度相当の電圧及び低温側異常検知温度相当の電圧を内蔵DAコンバータから出力して、ヒータ温度リミット回路23に印加することで異常検知を実行する。このように、制御回路21からの信号によりヒータ温度リミット回路23に所定の電圧を加えてヒータ温度リミット回路23の動作試験を行う方法でも、ヒータ温度リミット回路23の故障を利用者に気付かせることができる。すなわち、ヒータ温度リミット回路23が故障したままで、圧力計測装置10の使用を継続し、その状態で制御回路21が暴走した場合に火災などの事故が発生することを回避することができる。したがって、圧力計測装置10の安全性を向上させることが可能となる。
【0094】
以上、実施形態の一例を説明したが、これらは例示であり、本実施形態は上記した説明に限定されるものではない。発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、実施形態の構成や詳細は、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で実施することができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0095】
10 圧力計測装置
11 圧力センサ
12 ヒータ
13 ヒータ電源
14 ヒータ温度センサ
15 受圧部温度センサ
16 第1温度センサ回路電源
17 第2温度センサ回路電源
20 異常検知部
21 制御回路
22 ADC
23 ヒータ温度リミット回路
24 電流検知回路
101,102 固定抵抗
103 低温側ダミー抵抗
104 高温側ダミー抵抗
211,212,221~224 FETスイッチ
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8A
図8B
図9