(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106841
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】耐力壁、及び間柱
(51)【国際特許分類】
E04B 2/56 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
E04B2/56 605D
E04B2/56 605C
E04B2/56 651D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011307
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 弘之
(72)【発明者】
【氏名】広沢 建二
【テーマコード(参考)】
2E002
【Fターム(参考)】
2E002FB14
2E002FB15
2E002LA03
(57)【要約】
【課題】間柱の剛性の低下を抑制することが可能な耐力壁を提供すること。
【解決手段】耐力壁100は、一対の外柱10A,10Bに接続されるブレース40A,40Bと、一対の外柱10A,10Bの間にある間柱20,30と、を備え、間柱20,30は、耐力壁100の厚さ方向に押し潰された凹部50,60を有し、ブレース40A,40Bは、凹部50A,50Bを通るように配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の外柱に接続されるブレースと、
前記一対の外柱の間にある間柱と、を備え、
前記間柱は、耐力壁の厚さ方向に押し潰された凹部を有し、
前記ブレースは、前記凹部を通るように配置されていることを特徴とする耐力壁。
【請求項2】
前記間柱は、前記耐力壁の厚さ方向に対向する第1間柱及び第2間柱を有し、
前記第1間柱に形成された前記凹部と前記第2間柱に形成された前記凹部は、前記耐力壁の厚さ方向に対向して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の耐力壁。
【請求項3】
前記間柱は、
板厚方向が前記耐力壁の厚さ方向に沿う第1片と、
前記第1片と交差する第2片と、
前記第2片と交差し、前記耐力壁の厚さ方向に前記第1片と対向する第3片と、を有し、
前記凹部において、前記第3片は、前記第1片に接近するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の耐力壁。
【請求項4】
前記間柱は、
前記第3片から折り返され、前記第2片と対向し、前記耐力壁の厚さ方向において、前記第2片よりも短い返し部を有し、
前記凹部において、前記返し部は、前記第1片に当接していることを特徴とする請求項3に記載の耐力壁。
【請求項5】
耐力壁を形成する間柱であって、
第1片と、
前記第1片と交差する第2片と、を有し、
前記第2片が前記第1片の板厚方向に押し潰されて、凹部が形成されていることを特徴とする間柱。
【請求項6】
前記第2片と交差し、前記耐力壁の厚さ方向に前記第1片と対向する第3片を有し、
前記第3片が前記第1片に接近するように、前記凹部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の間柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐力壁、及び間柱に関する。
【背景技術】
【0002】
戸建て住宅や集合住宅等の建物において、間仕切壁や界壁は構造上必要な耐力壁とする場合が多い。このような耐力壁では、ブレース等の耐力要素が壁の下地材の内部(下地材の厚み内)に通された下地構造が適用される場合がある。耐力壁は、ブレースの他に、例えば2本の溝形鋼からなるスタッド(間柱)を備える(例えば特許文献1参照)。耐力壁では、スタッドを切り欠いて開口部を形成し、この開口部にブレースを挿通することにより、ブレースとスタッドとの干渉を回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の耐力壁では、ブレースと間柱とが干渉することを回避するために、切欠き部が形成されていることにより、間柱の剛性が低下していた。
【0005】
本発明は、間柱の剛性の低下を抑制することが可能な耐力壁、及び間柱を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による耐力壁の一態様は、
一対の外柱に接続されるブレースと、
前記一対の外柱の間にある間柱と、を備え、
前記間柱は、耐力壁の厚さ方向に押し潰された凹部を有し、
前記ブレースは、前記凹部を通るように配置されている。
【0007】
本態様によれば、間柱には耐力壁の厚さ方向に押し潰された凹部が形成され、この凹部にブレースが挿通される。これにより、ブレースと間柱との干渉が回避される。また、間柱が押し潰されて凹部が形成されることにより、押し潰された部分が剛性に寄与するため、間柱の一部を切り欠いて開口部を形成する構造と比較して、間柱の剛性が高い。その結果、間柱の剛性の低下を抑制することができる。さらに、本態様では、切欠き部を形成する必要がなく、例えば作業者が間柱を扱う際に、切欠き部によって手を負傷するおそれが少ない。そのため、作業者が間柱を扱う際の安全性が向上されることにより、従来と比較して安全上の注意事項が軽減され、耐力壁を施工する際の作業効率の向上を図ることができる。
【0008】
また、本発明の他の態様において、
前記間柱は、前記耐力壁の厚さ方向に対向する第1間柱及び第2間柱を有し、
前記第1間柱に形成された前記凹部と前記第2間柱に形成された前記凹部は、前記耐力壁の厚さ方向に対向して配置されている。
【0009】
本態様によれば、第1間柱の凹部と第2間柱の凹部とが対向して形成された開口部を通るように、ブレースを配置することにより、ブレースと間柱との干渉が回避される。
【0010】
また、本発明の他の態様において、
前記間柱は、
板厚方向が前記耐力壁の厚さ方向に沿う第1片と、
前記第1片と交差する第2片と、
前記第2片と交差し、前記耐力壁の厚さ方向に前記第1片と対向する第3片と、を有し、
前記凹部において、前記第3片は、前記第1片に接近するように形成されている。
【0011】
本態様によれば、耐力壁の厚さ方向に第3片を第1片に接近させるように押し潰すことにより、凹部が形成される。この場合、第2片も耐力壁の厚さ方向に押されて変形する。本態様では、このような凹部にブレースを挿通することができる。本態様では、このような凹部において、第1片、第2片、及び第3片が剛性に寄与することにより、間柱の剛性の低下を抑制することができる。
【0012】
また、本発明の他の態様において、
前記間柱は、
前記第3片から折り返され、前記第2片と対向し、前記耐力壁の厚さ方向において、前記第2片よりも短い返し部を有し、
前記凹部において、前記返し部は、前記第1片に当接している。
【0013】
本態様によれば、耐力壁の厚さ方向に第3片を第1片に接近させるように押し潰すことにより、凹部が形成され、この凹部において返し部が第1片に当接している。本態様では、このような凹部において、第1片、第2片、第3片及び返し部が剛性に寄与することにより、間柱の剛性の低下を抑制することができる。また、本態様では、返し部が第1片に当接する構造を有することにより、耐力壁の厚さ方向に返し部と第1片とが当接していない構造と比較して、間柱の剛性が高い。
【0014】
本発明による間柱の一態様は、
耐力壁を形成する間柱であって、
第1片と、
前記第1片と交差する第2片と、を有し、
前記第2片が前記第1片の板厚方向に押し潰されて、凹部が形成されている。
【0015】
本態様によれば、耐力壁の厚さ方向に押し潰された凹部が形成され、この凹部にブレースを挿通させて、耐力壁を形成することができる。これにより、ブレースと間柱との干渉が回避される。また、間柱が押し潰されて凹部が形成されることにより、押し潰された部分が剛性に寄与するため、間柱の一部を切り欠いて開口部を形成する構造と比較して、間柱の剛性が高い。その結果、間柱の剛性の低下を抑制することができる。さらに、本態様では、切欠き部を形成する必要がなく、例えば作業者が間柱を扱う際に、切欠き部によって手を負傷するおそれが少ない。そのため、作業者が間柱を扱う際の安全性が向上されることにより、従来と比較して安全上の注意事項が軽減され、耐力壁を施工する際の作業効率の向上を図ることができる。
【0016】
また、本発明の他の態様において、
前記第2片と交差し、前記耐力壁の厚さ方向に前記第1片と対向する第3片を有し、
前記第3片が前記第1片に接近するように、前記凹部が形成されている。
【0017】
本態様によれば、耐力壁の厚さ方向に第3片を第1片に接近させるように押し潰すことにより、凹部が形成される。この場合、第2片も耐力壁の厚さ方向に押されて変形する。本態様では、このような凹部にブレースを挿通することができる。本態様では、このような凹部において、第1片、第2片、及び第3片が剛性に寄与することにより、間柱の剛性の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明から理解できるように、本発明によれば、間柱の剛性の低下を抑制することが可能な耐力壁、及び間柱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る間柱を備える耐力壁を示す正面図である。
【
図3】実施形態に係る間柱の凹部を示す断面図である。
【
図4】実施形態に係る間柱の凹部を示す側面図である。
【
図5】実施形態に係る間柱の凹部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態に係る耐力壁及び間柱について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0021】
図1及び
図5を参照して、実施形態に係る間柱を備える耐力壁の一例について説明する。
図1は、実施形態に係る間柱を備える耐力壁を示す正面図である。
図2は、実施形態に係る間柱の断面図である。
図3は、実施形態に係る間柱の凹部を示す断面図である。
図4は、実施形態に係る間柱の凹部を示す側面図である。
図5は、実施形態に係る間柱の凹部を示す正面図である。また、各図において、互いに直交するX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向を示す矢印を図示する。X軸方向及びY軸方向は、水平方向に沿う。Z軸方向は、鉛直方向に沿う。
【0022】
図1に示す耐力壁100は、例えば戸建て住宅や集合住宅の間仕切耐力壁である。耐力壁100は、界壁でもよくその他の耐力壁でもよい。耐力壁100は、住宅の外壁に適用されてもよい。耐力壁100は、耐力壁下地材と、外柱10A,10Bと、ブレース40A,40Bとを備える。外柱10A,10Bは、X軸方向に離れて配置されている。外柱10A,10は、上階床を形成する上方の梁110Aと、下階床を形成する下方の梁110Bに接合されている。梁110A,110Bの長手方向は、X軸方向に沿う。
【0023】
梁110A,110Bは、例えばH形鋼であり、ウェブ111、上フランジ112、及び下フランジ113を有する。外柱10A,10Bの上端部11は、上方の梁110Aの下フランジ113に接合されている。外柱10A,10Bの下端部12は、下方の梁110A,110Bの上フランジ112に接合されている。外柱10A,10Bは、シングル柱であってもよく、ダブル柱であってもよい。
【0024】
耐力壁下地材は、X軸方向において、外柱10Aと外柱10Bとの間に配置されている。耐力壁下地材は、例えば4本の間柱20(20A,20B),30(30A,30B)と、上下のランナー16,17とを有する。ランナー16,17は、X軸方向に延在し、上方のランナー16は、上方の梁110Aの下フランジ113に接合され、下方のランナー17は、下方の梁110Bの上フランジ112に接合されている。
【0025】
間柱20と間柱30とは、X軸方向に離れて配置されている。
図2に示されるように、間柱20は、耐力壁100の厚さ方向に対向する間柱20A,20Bを有する。同様に、間柱30は、耐力壁100の厚さ方向に対向する間柱30A,30Bを有する。耐力壁100の厚さ方向は、Y軸方向に沿う。間柱20,30は、例えばスタッドとも呼ばれる。間柱20A,30Aは、第1間柱の一例であり、間柱20B,30Bは、第2間柱の一例である。耐力壁100の厚さ方向に対向する間柱のうち、一方が第1間柱であり、他方が第2間柱である。
【0026】
図1に示されるように、間柱20(20A,20B),30(30A,30B)の上端部は、上方のランナー16に接合され、間柱20(20A,20B),30(30A,30B)の下端部は、下方のランナー17に接合されている。間柱20,30は、X軸方向において、一対の外柱10A,10B間に配置され、外柱10A,10からそれぞれ離れて配置されている。間柱20は、外柱10Aに近い方に配置され、間柱30は、外柱10Bに近い方に配置されている。
【0027】
ブレース40A,40Bは、耐力壁100の厚さ方向から見て、外柱10A,10B及び間柱20,30に対して傾斜するように配置されている。ブレース40Aは、ブレース40Bの上方に配置されている、ブレース40Aの上端部40aは、外柱10Bに接続され、ブレース40Aの下端部40bは、外柱10Aに接続されている。ブレース40Bの上端部40cは、外柱10Aに接続され、ブレース40Bの下端部40dは、外柱10Bに接続されている。
【0028】
ブレース40A,40Bは、例えば、丸鋼を有するターンバックルと、平鋼とを有する形態でもよい。ブレース40A,40Bは、その他の形態でもよく、ターンバックルのみからなる形態、平鋼のみからなる形態、角形鋼管のみからなる形態などでもよい。また、ブレース40A,40Bは、制振ダンパーを有する形態でもよい。制振ダンパーは、積層ゴムを有するものでもよく、SN材(建築構造用圧延鋼材)や、LYP材(極低降伏点鋼材)等の降伏点の低い鋼材等を有するものでもよい。
【0029】
外柱10Bの上端部11には、X軸方向において、間柱30に向かって張り出すガセットプレート13が接合されている。同様に、外柱10Bの下端部12には、X軸方向において、間柱30に向かって張り出すガセットプレート15が接合されている。また、外柱10Aの上下方向における中央部には、X軸方向において、間柱20に向かって張り出すガセットプレート14が接合されている。
【0030】
ブレース40Aの上端部40aは、ガセットプレート13と接合されている。ブレース40Aの下端部40bは、ガセットプレート14と接合されている。ブレース40Bの上端部40cは、ガセットプレート14と接合されている。ブレース40Bの下端部40dは、ガセットプレート15と接合されている。
【0031】
間柱20A,20B,30A,30Bは、例えばリップ付きの溝形鋼である。間柱20Aは、
図2に示されるように、第1片21と、第2片22,23と、第3片24,25と、返し部26,27とを備える。第1片21の板厚方向は、Y軸方向に沿う。第2片22,23の板厚方向は、X軸方向に沿う。第2片22,23は、X軸方向に対向する。第2片22,23は、第1片21と交差するように形成されている。
【0032】
第3片24,25の板厚方向は、Y軸方向に沿う。第3片24,25は、Y軸方向に第1片21と対向する。第3片24,25は、X軸方向に離れて配置されている。第3片24は、第2片22と交差するように形成されている。第3片25は、第2片23と交差するように形成されている。
【0033】
返し部26は、第3片24から折り返されて、Y軸方向に第1片21に向かって突出する。返し部26の板厚方向は、X軸方向に沿う。返し部26は、X軸方向において、第2片22と対向する。Y軸方向において、返し部26の長さは、第2片22の長さよりも短い。Y軸方向において、返し部26は、第1片21と離れている。
【0034】
返し部27は、第3片25から折り返されて、Y軸方向に第1片21に向かって突出する。返し部27の板厚方向は、X軸方向に沿う。返し部27は、X軸方向において、第2片23と対向する。Y軸方向において、返し部27の長さは、第2片23の長さよりも短い。Y軸方向において、返し部27は、第1片21と離れている。返し部26,27は、X軸方向に対向する。間柱20B,30A,30Bは、間柱20Aと同じ構成である。
【0035】
間柱20A,20Bには、凹部50(50A,50B)が形成されている。凹部50は、間柱20Aに形成された凹部50Aと、間柱20Bに形成された凹部50Bとを含む。間柱20A,20Bの一部が、Y軸方向に押し潰されて凹部50A,50Bが形成されている。
図3及び
図4に示されるように、凹部50A,50Bは、Y軸方向に対向して凹部50を形成する。
【0036】
凹部50A,50Bにおいて、第3片24,25は、第1片21に接近するように形成されている。凹部50A,50Bにおいて、返し部26,27は、第1片21に当接している。Y軸方向において、第1片21と第3片24,25との間には、隙間が形成されている。Y軸方向において、第3片24,25は、第1片21と当接していてもよい。凹部50A,50Bにおいて、第2片22,23は、Y軸方向に押し潰されている。同様に、凹部50A,50Bにおいて、返し部26,27は、Y軸方向に押し潰されている。凹部50A,50Bは、例えば、プレス加工により形成されている。
【0037】
図5では、Y軸方向から見た場合の凹部50(50B)が図示されている。凹部50において、第2片22,23は、X軸方向に離れている。凹部50において、返し部26,27は、X軸方向に離れている。
【0038】
図1に示されるように、凹部50A,50Bは、Z軸方向においてブレース40A,40Bと交差する位置に形成されている。ブレース40A,40Bは、凹部50A,50Bを通るように配置されている。ブレース40A,40Bは、凹部50による開口部を貫通するように配置されている。
【0039】
間柱30A,30Bには、凹部60(60A,60B)が形成されている。凹部60は、間柱30Aに形成された凹部60Aと、間柱30Bに形成された凹部60Bとを含む。間柱30A,30Bの一部が、Y軸方向に押し潰されて凹部60A,60Bが形成されている。凹部60A,60Bは、Y軸方向に対向して凹部60を形成する。
図3及び
図4に示された凹部50A,50Bと同様に、凹部60A,60Bは、Y軸方向に対向する。
【0040】
凹部60A,60Bは、上述した凹部50A,50Bと同様に形成されている。ブレース40A,40Bは、凹部60A,60Bを通るように配置されている。ブレース40A,40Bは、凹部60による開口部を貫通するように配置されている。
【0041】
間柱20には、上下2箇所に凹部50が形成されている。間柱30には、上下2箇所に凹部60が形成されている。ブレース40Aの部分40eは、間柱30の上方の凹部60を通るように配置されている。ブレース40Bの部分40fは、間柱20の上方の凹部50を通るように配置されている。ブレース40Bの部分40gは、間柱20の下方の凹部50を通るように配置されている。ブレース40Bの部分40hは、間柱30の下方の凹部60を通るように配置されている。
【0042】
間柱20,30の外面(第1片21)には、住戸の内装材である石膏ボード等がビス等を用いて固定される。
【0043】
(耐力壁の作用効果)
本実施形態に係る耐力壁100は、一対の外柱10A,10Bに接続されるブレース40A,40Bと、一対の外柱10A,10Bの間にある間柱20,30と、を備え、間柱20,30は、耐力壁100の厚さ方向に押し潰された凹部50A,50B,60A,60Bを有し、ブレース40A,40Bは、凹部50A,50B,60A,60Bを通るように配置されている。
【0044】
本態様によれば、間柱20,30には耐力壁100の厚さ方向に押し潰された凹部50A,50B,60A,60Bが形成され、この凹部50A,50B,60A,60Bにブレース40A,40Bが挿通される。これにより、ブレース40A,40Bと間柱20A,20Bとの干渉が回避される。また、間柱20,30が押し潰されて凹部50A,50Bが形成されることにより、押し潰された部分が剛性に寄与するため、間柱20,30の一部を切り欠いて開口部を形成する従来の構造と比較して、間柱20,30の剛性が高い。その結果、間柱20,30の剛性の低下を抑制することができる。さらに、本態様では、切欠き部を形成する必要がなく、例えば作業者が間柱20,30を扱う際に、切欠き部によって手を負傷するおそれが少ない。そのため、作業者が間柱20,30を扱う際の安全性が向上されることにより、従来と比較して安全上の注意事項が軽減され、耐力壁100を施工する際の作業効率の向上を図ることができる。
【0045】
また、耐力壁100において、間柱20,30は、耐力壁100の厚さ方向に対向する第1間柱である間柱20A,30Aと、第2間柱である間柱20B,30Bと、を有し、間柱20A,30Aに形成された凹部50A,60Aと間柱20B,30Bに形成された凹部50B,60Bは、耐力壁100の厚さ方向に対向して配置されている。
【0046】
本態様によれば、間柱20A,30Aの凹部50A,60Aと間柱20B,30Bの凹部50B,60Bとが対向して形成された開口部を通るように、ブレース40A,40Bを配置することにより、ブレース40A,40Bと間柱20,30との干渉が回避される。
【0047】
また、耐力壁100において、間柱20,30は、板厚方向が耐力壁100の厚さ方向に沿う第1片21と、第1片21と交差する第2片22,23と、第2片22,23と交差し、耐力壁100の厚さ方向に第1片21と対向する第3片24,25と、を有し、凹部50,60において、第3片24,25は、第1片21に接近するように形成されている。
【0048】
本態様によれば、耐力壁100の厚さ方向に第3片24,25を第1片21に接近させるように押し潰すことにより、凹部50,60が形成される。この場合、第2片22,23も耐力壁100の厚さ方向に押されて変形する。本態様では、このような凹部50,60にブレース40A,40Bを挿通することができる。本態様では、このような凹部50,60において、第1片21、第2片22,23、及び第3片24,25が剛性に寄与することにより、間柱20,30の剛性の低下を抑制することができる。
【0049】
また、耐力壁100において、間柱20,30は、第3片24,25から折り返され、第2片22,23と対向し、耐力壁100の厚さ方向において、第2片22,23よりも短い返し部26,27を有し、凹部50において、返し部26,27は、第1片21に当接している。
【0050】
本態様によれば、耐力壁100の厚さ方向に第3片24,25を第1片21に接近させるように押し潰すことにより、凹部50,60が形成され、この凹部50,60において返し部26,27が第1片21に当接している。本態様では、このような凹部50,60において、第1片21、第2片22,23、第3片24,25に加えて、返し部26,27が剛性に寄与することにより、間柱20,30の剛性の低下を抑制することができる。また、本態様では、返し部26,27が第1片21に当接する構造を有することにより、耐力壁100の厚さ方向に返し部26,27と第1片21とが当接していない構造と比較して、間柱20,30の剛性が高い。本態様では、凹部50,60において、第1片21,第2片22,23,第3片24,25、及び返し部26,27が一体として構成されて、間柱20,30の剛性に寄与する。
【0051】
本態様の耐力壁100によれば、間柱20,30の剛性の低下を抑制し、面外強度の低下を防止できる。また、耐力壁100では、間柱20,30の剛性の低下を抑制できることにより、耐力壁100における遮音性の低下を抑制できる。また、耐力壁100では、間柱20,30の変形が抑制されることにより、ビスを用いて石膏ボードを強固に固定できる。ビスが間柱20,30に入りやすく、石膏ボードを安定して支持できる。
【0052】
また、間柱20,30では、剛性の低下が抑制されることにより、間柱20,30を運搬する際に、間柱20,30がたわみにくく、運搬しやすい。また、間柱20,30の変形が抑制されることにより、間柱20,30の建て込みを効率的に行うことができる。また、間柱20,30の運搬及び建て込みにおいて、間柱20,30の座屈のおそれが低減される。
【0053】
また、間柱20,30によれば、プレス加工により凹部50,60を形成することができることにより、間柱20,30の一部を切り欠く場合と比較して、加工費及び加工時間を削減することができる。
【0054】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0055】
上記の実施形態では、返し部26,27を有するリップ付き溝形鋼である間柱20,30について例示しているが、間柱20,30は、返し部26,27が形成されていない構成でもよい。また、間柱20,30は、溝形鋼に限定されず、その他の形鋼材でもよい。また、間柱20,30は、角形鋼管でもよい。
【0056】
また、上記の実施形態では、凹部50,60において、返し部26,27が第1片21に当接している場合について例示しているが、返し部26,27は、第1片21に当接していなくてもよい。
【符号の説明】
【0057】
100:耐力壁
10A,10B:外柱
20,30:間柱
21:第1片
22,23:第2片
24,25:第3片
26,27:返し部
50,50A,50B,60,60A,60B:凹部
X:X軸方向
Y:Y軸方向(耐力壁の厚さ方向)
Z:Z軸方向