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特開2024-106859VOC除去触媒及びその製造方法、並びにVOCの除去方法
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  • 特開-VOC除去触媒及びその製造方法、並びにVOCの除去方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106859
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】VOC除去触媒及びその製造方法、並びにVOCの除去方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/34 20060101AFI20240801BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20240801BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240801BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B01J23/34 A
B01J37/04 102
B01J37/08
B01D53/86 280
B01D53/86 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011327
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】301029388
【氏名又は名称】時空化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521493765
【氏名又は名称】株式会社関兵
(71)【出願人】
【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】趙 井崗
(72)【発明者】
【氏名】官 国清
(72)【発明者】
【氏名】関 和治
(72)【発明者】
【氏名】阿布 里提
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
4D148AA17
4D148AB01
4D148BA28X
4D148BA41X
4G169AA02
4G169AA08
4G169BA21C
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC62A
4G169BC62B
4G169BE06C
4G169CA10
4G169CA15
4G169CA17
4G169CA19
4G169DA05
4G169EC02Y
4G169EC22X
4G169EC22Y
4G169FB06
4G169FB30
4G169FC07
(57)【要約】
【課題】製造が容易でVOC除去効率に優れ、低温であっても効率よくVOCを除去することができるVOC除去触媒及びその製造方法並びにVOCの除去方法を提供する。
【解決手段】本発明のVOC除去触媒は、バーネサイト型マンガン酸化物を含むVOC除去触媒であって、前記バーネサイト型マンガン酸化物は、(100)結晶面を有する。本発明のVOC除去触媒の製造方法は、マンガン化合物と、アルコール化合物とを混合して前駆体を得る工程1、及び、前記前駆体を焼成処理してバーネサイト型マンガン酸化物を得る工程2を備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーネサイト型マンガン酸化物を含むVOC除去触媒であって、
前記バーネサイト型マンガン酸化物は、(100)結晶面を有する、VOC除去触媒。
【請求項2】
前記バーネサイト型マンガン酸化物は、ナノ粒子の凝集体を形成している、請求項1に記載のVOC除去触媒。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のVOC除去触媒を製造する方法であって、
マンガン化合物と、アルコール化合物とを混合して前駆体を得る工程1、及び
前記前駆体を焼成処理してバーネサイト型マンガン酸化物を得る工程2
を備える、製造方法。
【請求項4】
前記アルコール化合物は、モノアルコール又は多価アルコールである、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記焼成処理の温度は200~400℃である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のVOC除去触媒を用いてVOCを分解する工程を備える、VOCの除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VOC除去触媒及びその製造方法、並びにVOCの除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
VOCは、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds)の略称であり、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、酢酸エチル、メタノール及びジクロロメタン等が知られている。このようなVOCは、溶剤、接着剤、化学品原料等に広く利用されている反面、VOCは、光化学オキシダント、あるいは、浮遊粒子状物質(SPM)の原因になると指摘されていることから、大気汚染防止法によりその排出量が厳しく規制されている。このため、VOC排出量をさらなる低減すべく、VOCをより効率良く除去する技術の確立が望まれている。
【0003】
VOCを除去する技術としては、触媒酸化による方法が知られている。この方法では、比較的低温でVOC除去が行われる点で最も有望であると考えられている。触媒酸化による方法では、主に遷移金属酸化物が使用されることから、貴金属触媒と比較してコスト面でも有利であり、この観点から遷移金属酸化物の触媒性能を向上させる研究が広く行われている。例えば、特許文献1には、酸化マンガン(IV)を含む材料により、VOCを効率的に除去する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-147131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のVOC除去触媒は、低温環境化においてはVOCの除去性能が未だ十分ではなく、また、製造にも時間を要するという問題点もあり、実用化を考えると総合的には依然として課題を有するものであった。このような観点から、容易に製造でき、低温であっても効率よくVOCを除去することができる触媒の開発が望まれているのが現状である。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、製造が容易であり、VOC除去効率に優れ、低温であっても効率よくVOCを除去することができるVOC除去触媒及びその製造方法並びにVOCの除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の結晶構造を有するバーネサイト型マンガン酸化物により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
バーネサイト型マンガン酸化物を含むVOC除去触媒であって、
前記バーネサイト型マンガン酸化物は、(100)結晶面を有する、VOC除去触媒。
項2
前記バーネサイト型マンガン酸化物は、ナノ粒子の凝集体を形成している、項1に記載のVOC除去触媒。
項3
項1又は2に記載のVOC除去触媒を製造する方法であって、
マンガン化合物と、アルコール化合物とを混合して前駆体を得る工程1、及び
前記前駆体を焼成処理してバーネサイト型マンガン酸化物を得る工程2
を備える、製造方法。
項4
前記アルコール化合物は、モノアルコール又は多価アルコールである、項3に記載の製造方法。
項5
前記焼成処理の温度は200~400℃である、項3又は4に記載の製造方法。
項6
項1又は2に記載のVOC除去触媒を用いてVOCを分解する工程を備える、VOCの除去方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のVOC除去触媒は、製造が容易であり、VOC除去効率に優れ、低温であっても効率よくVOCを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例及び比較例で得たVOC除去触媒のSEM画像を示す。
図2】実施例及び比較例で得たVOC除去触媒のXRDスペクトルを示す。
図3】実施例及び比較例で得たVOC除去触媒によるVOC除去試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0012】
1.VOC除去触媒
本発明のVOC除去触媒は、(100)結晶面を有するバーネサイト型マンガン酸化物を含む。これにより、本発明のVOC除去触媒は、VOC除去効率に優れ、低温であっても効率よくVOCを除去することができる。また、本発明のVOC除去触媒は、簡便な方法で製造することができるものである。
【0013】
本発明のVOC除去触媒に含まれるバーネサイト型マンガン酸化物は、バーネサイト型を有するマンガン酸化物であって、特にはバーネサイト型二酸化マンガンである。バーネサイト型二酸化マンガン(ε-MnO)は、二酸化マンガンが層上に形成されてなる、いわゆる層状構造を有する酸化物である。バーネサイト型二酸化マンガンにおいて、層間に水分子やカチオン種を含有し得る。
【0014】
バーネサイト型マンガン酸化物は、二酸化マンガン以外のマンガン酸化物を含むことができる。すなわち、バーネサイト型マンガン酸化物において、4価のマンガン以外の価数を有するマンガンを含むことができる。例えば、バーネサイト型マンガン酸化物には、2価のマンガンが含まれていてもよく、3価のマンガンが含まれていてもよい。バーネサイト型マンガン酸化物に含まれるマンガンは4価のみでもよい。
【0015】
バーネサイト型マンガン酸化物は、(100)結晶面を有する。(100)とはミラー指数を意味する。バーネサイト型マンガン酸化物が(100)結晶面を有するかどうかは、バーネサイト型マンガン酸化物のXRDスペクトル(X線回折スペクトル)を測定することで判断することができる。具体的には、バーネサイト型マンガン酸化物のXRDスペクトルにおいて、回折角度35~40°にピークを示す場合、バーネサイト型マンガン酸化物は、(100)結晶面を有すると判断することができる。
【0016】
従って、「バーネサイト型マンガン酸化物が(100)結晶面を有する」とは、「バーネサイト型マンガン酸化物のXRDスペクトルにおいて、回折角度35~40°にピークを示す」と読み替えることができる。
【0017】
バーネサイト型マンガン酸化物は、(100)結晶面を有することで、VOCを分解する性能が大きく向上し、これにより、低温であっても効率よくVOCを除去することができるものとなる。
【0018】
バーネサイト型マンガン酸化物は、(100)結晶面以外の結晶面を有することもできる。例えば、バーネサイト型マンガン酸化物は、(001)結晶面を有することも好ましい。この場合、本発明のVOC除去触媒はVOC除去効率がさらに向上しやすい。バーネサイト型マンガン酸化物のXRDスペクトルにおいて、回折角度10~20°にピークを示す場合、バーネサイト型マンガン酸化物は、(001)結晶面を有すると判断することができる。なお、「バーネサイト型マンガン酸化物が(001)結晶面を有する」とは、「バーネサイト型マンガン酸化物のXRDスペクトルにおいて、回折角度10~20°にピークを示す」と読み替えることができる。
【0019】
バーネサイト型マンガン酸化物のXRDスペクトルにおいて、回折角度40~50°の間にピークを示さないことが好ましい。この場合、VOC除去効率がさらに向上しやすく、低温であってもより効率的にVOCを除去することができる。バーネサイト型マンガン酸化物のXRDスペクトルにおいて、回折角度50~60°の間にピークを示さないことも好ましい。
【0020】
バーネサイト型マンガン酸化物の形状は特に限定されない。本発明のVOC除去触媒のVOC除去効率が特に向上しやすい点で、バーネサイト型マンガン酸化物は、ナノ粒子の凝集体を形成していることが好ましい。ナノ粒子の凝集体を形成するナノ粒子の平均粒子径は、例えば、0.01~0.15μmとすることができる。また、ナノ粒子の凝集体の平均粒子径は、例えば、0.01~30μmであり、好ましくは0.1~20μm、より好ましくは0.5~10μm、さらに好ましくは1~5μmである。ナノ粒子の凝集体の大きさは、バーネサイト型マンガン酸化物のSEM画像から計測することができ、具体的には、SEM画像において無作為に50個の粒子を選択し、これらの円相当径を計測して算術平均した値をナノ粒子の凝集体の大きさとすることができる。
【0021】
バーネサイト型マンガン酸化物はキュービック状の形状を有さないことが好ましい。この場合、本発明のVOC除去触媒は、VOC除去効率が向上しやすい。
【0022】
バーネサイト型マンガン酸化物のBET比表面積は、例えば、60m/g以上とすることができ、VOC除去効率が向上しやく、低温であってもより効率的にVOCを除去しやすい点で、100m/g以上であることが好ましい。バーネサイト型マンガン酸化物のBET比表面積は、130m/g以上であることがより好ましく、150m/g以上であることがさらに好ましく、170m/g以上であることが特に好ましい。
【0023】
本発明のVOC除去触媒は、本発明の効果が阻害されない限り、上述のバーネサイト型マンガン酸化物以外の成分を含むことができ、あるいは、バーネサイト型マンガン酸化物のみであってもよい。本発明のVOC除去触媒は、バーネサイト型マンガン酸化物の含有割合が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0024】
2.VOC除去触媒の製造方法
本発明のVOC除去触媒を製造する方法は特に限定されない。例えば、本発明のVOC除去触媒は、下記の工程1及び工程2を備える製造方法により製造することができる。
工程1:マンガン化合物と、アルコール化合物とを混合して前駆体を得る工程。
工程2:前記前駆体を焼成処理してバーネサイト型マンガン酸化物を得る工程。
【0025】
(工程1)
工程1は、マンガン化合物と、アルコール化合物とを混合して前駆体を得るための工程である。
【0026】
工程1で使用するマンガン化合物は、例えば、マンガンの無機化合物、マンガンの塩化物、マンガンの有機化合物を挙げることができる。中でも、反応性に優れる点で、マンガン化合物は、マンガンの無機化合物であることが好ましい。
【0027】
マンガンの無機化合物は、例えば、過マンガン酸塩、マンガンの硝酸塩、硫酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、クロリド錯体、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩及びリン酸水素塩等を挙げることができ、中でも、過マンガン酸塩であることが好ましい。過マンガン酸塩としては、過マンガン酸カリウムを挙げることができる。
【0028】
工程1で使用するアルコール化合物は特に限定されず、例えば、公知のアルコール化合物を広く適用することができる。例えば、アルコール化合物は、モノアルコール又は多価アルコールである。
【0029】
モノアルコールとしては、低級アルコール化合物を例示することができ、好ましくは炭素数1~5のアルコール化合物、より好ましくは炭素数1~3のアルコール化合物である。具体的なモノアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等を挙げることができる。
【0030】
多価アルコールとしては、2価以上のアルコール化合物であり、例えば、2~4価のアルコール化合物を好ましく挙げることができる。具体的には、グリセリン(グリセロール)、エチレングリコール、数平均分子量が100~1000であるポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール等を挙げることができる。
【0031】
工程1は、マンガン化合物と、アルコール化合物とを混合する方法は特に限定されない。混合の一態様として、マンガン化合物とアルコール化合物とを水中で混合する方法が挙げられる。この場合、例えば、マンガン化合物の水溶液とアルコール化合物とを混合することができる。
【0032】
上記マンガン化合物の水溶液は、例えば、0.01~5Mとすることができ、好ましくは、0.01~3M、より好ましくは0.02~1Mである。
【0033】
工程1において、マンガン化合物と、アルコール化合物との使用割合は特に限定されない。例えば、マンガン化合物1モルに対し、アルコール化合物の使用量を0.5~20モルとすることができ、0.8~15モルが好ましく、1~10モルがより好ましく、2~9モルがさらに好ましく、3~8モルが特に好ましい。
【0034】
工程1において、マンガン化合物と、アルコール化合物との混合は、適宜の混合手段によって行うことができる。例えば、公知の混合機を使用して混合を行うことができる。混合する際の温度も特に限定されず、例えば、室温であり、具体的には5~40℃、好ましくは10~30℃、より好ましくは15~25℃である。混合時間も特に限定されず、例えば、後記する沈殿物が十分に生成するまで混合を行うことができる。
【0035】
マンガン化合物と、アルコール化合物とを混合することで前駆体が生成する。例えば、マンガン化合物の水溶液とアルコール化合物とを混合した場合、前駆体は沈殿物として生成する。得られた沈殿物は、適宜の方法で洗浄することができ、また、適宜の方法で乾燥することもできる。乾燥温度は、例えば、50~150℃とすることができる。
【0036】
(工程2)
工程2は、工程1で得られた前記前駆体を焼成処理して、目的のバーネサイト型マンガン酸化物を得るための工程である。
【0037】
焼成処理の方法は特に限定的ではなく、公知の焼成方法を広く採用することができる。
例えば、焼成処理の温度は、200~400℃とすることができる。この場合、マンガン酸化物はバーネサイト型を容易に形成しやすく、また、比表面積も前述の範囲になりやすく、結果としてVOC除去効率に優れるVOC除去触媒が得られやすい。
【0038】
工程2の焼成処理の温度は、250℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、320℃以上であることがさらに好ましく、330℃以上であることが特に好ましい。また、工程2の焼成処理の温度は、390℃以下であることが好ましく、380℃以下であることがより好ましく、370℃以下であることがさらに好ましい。
【0039】
焼成時間は、焼成温度によって適宜選択すればよく、例えば、1.5~5時間とすることができる。工程2において、焼成を行う際の昇温速度も特に限定されず、適宜設定することができ、例えば、1~10℃/分である。
【0040】
焼成処理は、空気中及び不活性ガス雰囲気中のいずれで行ってもよい。好ましくは、空気中で焼成処理を行うことである。焼成処理は、例えば、市販の加熱炉等の公知の加熱装置を使用することができる。
【0041】
工程2の焼成処理によって、工程1で得られた前駆体は、前述の本発明のバーネサイト型マンガン酸化物へと変化し、バーネサイト型マンガン酸化物が得られる。斯かるバーネサイト型マンガン酸化物は、例えば、黒色粉末である。
【0042】
工程2の焼成処理によって得られるバーネサイト型マンガン酸化物をVOC除去触媒として使用することができ、あるいは、バーネサイト型マンガン酸化物と他の成分とを組み合わせてVOC除去触媒として使用することもできる。
【0043】
3.VOC除去方法
本発明のVOC除去方法は、前述の本発明のVOC除去触媒、又は、前記工程1及び前記工程2を備える製造方法で得られたVOC触媒を用いてVOCを燃焼する工程を備えるものである。
【0044】
例えば、VOC除去触媒を反応器内に収容し、該反応器にトルエン等のVOCを導入し、所定の温度で処理することで、VOCを燃焼する。これにより、VOCを除去することができる。必要に応じて、反応器内には窒素と酸素の混合ガスを流入させ、VOCを燃焼させる。
【0045】
VOCの除去にあたり、使用する反応器の種類は特に限定されず、例えば、VOCの触媒燃焼で使用される公知の反応器を広く使用することができる。反応器内でのVOCの処理温度は特に限定されず、公知のVOCの除去のために設定される処理温度と同様とすることができる。特に本発明では、上記VOC除去触媒を使用することで、低温であってもVOC除去効率に優れる。
【実施例0046】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
10mmolのKMnOを150mLの脱イオン水に溶解して水溶液を調製し、斯かる水溶液に40mmolのエチレングリコールをすばやく滴下し、2時間にわたって連続攪拌した。これにより生成した大量の沈殿物を、水洗浄及び遠心分離を計3回実施し、前駆体を得た(工程1)。次いで、得られた前駆体を100℃で12時間乾燥した後、空気中、350℃で3時間にわたって焼成処理をすることで、黒色粉末を得た(工程2)。得られた黒色粉末をVOC除去触媒とし、「Bir-Mn-100」と命名した。Bir-Mn-100のBET比表面積は180m/gであった。
【0048】
(実施例2)
エチレングリコールの使用量を10mmolに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で黒色粉末を得た。得られた黒色粉末をVOC除去触媒とし、「Bir-Mn-001」と命名した。Bir-Mn-001のBET比表面積は62.4m/gであった。
【0049】
(比較例1)
焼成処理の温度を450℃に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で黒色粉末を得た。得られた黒色粉末をVOC除去触媒とし、「Cry-MnO」と命名した。Cry-MnOのBET比表面積は36.6m/gであった。
【0050】
<評価方法>
(VOC除去試験)
VOC除去触媒のトルエン除去試験は、公知の方法(例えば、特開2023-003146で号公報)で行った。具体的には、管状反応器内にVOC除去触媒を石英ウールで挟み込むように充填し、そこへトルエンを所定の流速で流入させて反応させることで、トルエンを除去するようにした。反応器は、酸素ボンベ及び窒素ボンベと連結させ、反応器内に酸素及び窒素を流入できるようにした。トルエン除去試験の条件として、内径8mmのガラス反応器を使用し、そこへVOC除去触媒の充填量を50mgとし、反応器内のトルエン濃度を1000体積ppmとなるようにした。また、反応器内へのキャリアー用窒素ガス流量を35cm/min、トルエン導入用窒素ガス流量を5cm/min、酸素ガス流量を10cm/minとした。反応器内での反応温度を130~300℃の範囲の種々の温度に調節して、トルエン除去特性を評価した。なお、130~200℃の範囲では10℃毎に3回サンプリングをし、200~300℃の範囲では5℃毎に3回サンプリングをした。VOC濃度の測定は、島津製作所社製「GC-2014ガスクロマトグラフ」を使用した。また、反応器出口から排出される二酸化炭素濃度をHORIBA社製FT-IRガス分析装置「FG-120」を使用して計測した。
【0051】
図1は、実施例1(Bir-Mn-100)、実施例2(Bir-Mn-001)及び比較例1(Cry-MnO)で得た黒色粉末のSEM画像を示している。図1から、実施例1、2では不規則なナノ粒子の凝集体が形成されていることがわかった。これに対し、比較例1では、短いロッド状であることがわかった。
【0052】
図2は、実施例1~2及び比較例1で得たVOC除去触媒のXRDスペクトルを示している。XRDスペクトルから、実施例1(Bir-Mn-100)及び実施例2(Bir-Mn-001)は、バーネサイト型であることがわかり、また、回折角度35~40°にピークを示すことから、顕著な(100)結晶面があることもわかった。また、実施例1,2のVOC除去触媒は、回折角度10~20°にピークを示すことから、(001)結晶面を有することもXRDスペクトルから確認された。また、XRDスペクトルにおいて、実施例1,2では、回折角度40~60°の間にピークは認められなかった。
【0053】
比較例1(Cry-MnO)では、クリプトメラン(cryptomelane)の結晶相のピークと一致したため、バーネサイト型の二酸化マンガンが得られていないことがわかった。
【0054】
図3は、実施例1~2及び比較例1で得られた触媒によるVOC除去試験の結果を示している。具体的に図3は、温度(X軸)とトルエン除去率(Y軸)との関係を示すプロットである。
【0055】
表1は、図3の結果のまとめでありトルエンの50%分解温度(T50%)、90%分解温度(T90%)、100%分解温度(T100%)を示している。
【0056】
【表1】
【0057】
図3及び表1の結果から、各実施例で得られたVOC除去触媒は、比較例よりも優れたVOC除去性能を有していることがわかる。従って、各実施例で得られたVOC除去触媒は、代表的なVOC物質の一種であるトルエンの触媒燃焼の触媒として好適に使用できることがわかった。
図1
図2
図3