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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106863
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】液体充填方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/46 20060101AFI20240801BHJP
   B29C 49/16 20060101ALI20240801BHJP
   B29C 49/12 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B29C49/46
B29C49/16
B29C49/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011331
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】飯酒盃 充章
【テーマコード(参考)】
4F208
【Fターム(参考)】
4F208AG07
4F208AH55
4F208AR02
4F208LA03
4F208LA04
4F208LB01
4F208LG03
4F208LN03
4F208LN04
4F208LN07
4F208LN23
4F208LN25
4F208LN29
(57)【要約】
【課題】小型で簡素な構成の充填装置により実施可能な液体充填方法を提供することである。
【解決手段】充填装置1を用いて容器10に液体Lを充填する液体充填方法であって、充填装置1が、筒体33とロッド体36とを有し、筒体33の下端開口33bを開いた状態とするとともにロッド体36の下端を容器10の底部13に当接または近接させた状態として液体流路33aから容器10の内部への液体Lの供給を開始する充填開始工程と、充填開始工程の後、筒体33の下端開口33bを開いた状態で、液体流路33aから容器10の内部へ所定量の液体Lを供給する第1充填工程と、第1充填工程の後、筒体33の下端を容器10の口部11の内側に配置するとともに筒体33の下端開口33bを開いた状態で、第1充填工程よりも高い圧力で液体流路33aから容器10の内部へ所定量の液体Lを供給する第2充填工程と、を有することを特徴とする液体充填方法。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填装置を用いて容器に液体を充填する液体充填方法であって、
前記充填装置が、
内側が液体流路となる筒体と、
前記筒体の内部に上下動自在に配置されたロッド部と、前記ロッド部の下端に設けられて前記筒体の下端開口を開閉する蓋部とを備えたロッド体と、を有し、
前記筒体の下端開口を開いた状態とするとともに前記ロッド体の下端を前記容器の底部に当接または近接させた状態として前記液体流路から前記容器の内部への液体の供給を開始する充填開始工程と、
前記充填開始工程の後、前記筒体の下端開口を開いた状態で、前記液体流路から前記容器の内部へ所定量の液体を供給する第1充填工程と、
前記第1充填工程の後、前記筒体の下端を前記容器の口部の内側に配置するとともに前記筒体の下端開口を開いた状態で、前記第1充填工程よりも高い圧力で前記液体流路から前記容器の内部へ所定量の液体を供給する第2充填工程と、を有することを特徴とする液体充填方法。
【請求項2】
前記充填開始工程及び前記第1充填工程において、前記筒体の下端開口を前記容器の底部に近接させ、前記蓋部と前記筒体の下端開口との間の隙間を通して前記液体流路から前記容器の内部へ液体を供給する、請求項1に記載の液体充填方法。
【請求項3】
前記充填開始工程及び前記第1充填工程において、前記ロッド体の下端を前記容器の底部に当接または近接させるとともに前記筒体の下端を前記口部の内側に配置した状態で前記液体流路から前記容器の内部に液体を供給する、請求項1に記載の液体充填方法。
【請求項4】
前記充填開始工程において、前記筒体の下端開口を前記容器の底部に近接させ、前記蓋部と前記筒体の下端開口との間の隙間を通して前記液体流路から前記容器の内部へ液体を供給し、
前記第1充填工程において、前記蓋部と前記筒体の下端開口との間の隙間を通して前記液体流路から前記容器の内部に液体を供給するとともに、前記容器の内部の液面の上昇に合わせて前記隙間を維持しつつ前記筒体及び前記ロッド体を上昇させながら前記液体流路から前記容器の内部に液体を供給する、請求項1に記載の液体充填方法。
【請求項5】
前記容器は合成樹脂製のプリフォームであり、
前記充填装置は、液体ブロー成形装置であり、
前記第1充填工程は、前記プリフォームを延伸させることなく前記プリフォームの内部に液体を供給するプレフィル工程であり、
前記第2充填工程は、前記プリフォームをブロー成形するブロー成形工程である、請求項1~4の何れか1項に記載の液体充填方法。
【請求項6】
前記第2充填工程において、前記ロッド体により前記容器を軸方向に延伸する、請求項5に記載の液体充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填装置を用いて容器に液体を充填する液体充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン(PP)製のボトルやポリエチレンテレフタレート(PET)製のボトルに代表されるような合成樹脂製の容器は、飲料、化粧品、薬品、洗剤、シャンプー等のトイレタリーなどの様々な液体を内容液として収容する用途に使用されている。
【0003】
このような容器は、上記したような熱可塑性を有する合成樹脂材料によって形成されたプリフォームをブロー成形することにより製造されるのが一般的である。
【0004】
プリフォームを容器に成形するブロー成形として、プリフォームの内部に供給する加圧媒体として、加圧エアーに替えて加圧した液体を用いるようにした液体ブロー成形が知られている。液体ブロー成形は、充填装置を用いてプリフォームに加圧した液体を供給する液体充填方法により行われる。
【0005】
従来、このような液体充填方法として、液体の供給口を有するブローノズルと、ブローノズルを開閉するシール体と、シール体に上下動自在に支持された筒体と、筒体の内部に上下動自在に配置されたロッド体とを有する充填装置を用い、筒体の内部に設けられた液体流路からプリフォームの内部に当該プリフォームを延伸させない程度の圧力で液体を供給するプレフィル工程と、プレフィル工程の後、ブローノズルの供給口からプレフィル工程よりも高い圧力でプリフォームの内部に液体を供給してプリフォームをブロー成形するブロー成形工程と、を行うようにした液体充填方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-119099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の液体充填方法では、当該液体充填方法を実施するための充填装置として、ブロー成形工程において加圧した液体を供給するためのブローノズルに加えて、プレフィル工程において液体を供給するための筒体やロッド体を備えた、大型で複雑な構成のものが必要となる、という問題点があった。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型で簡素な構成の充填装置により実施可能な液体充填方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体充填方法は、充填装置を用いて容器に液体を充填する液体充填方法であって、前記充填装置が、内側が液体流路となる筒体と、前記筒体の内部に上下動自在に配置されたロッド部と、前記ロッド部の下端に設けられて前記筒体の下端開口を開閉する蓋部とを備えたロッド体と、を有し、前記筒体の下端開口を開いた状態とするとともに前記ロッド体の下端を前記容器の底部に当接または近接させた状態として前記液体流路から前記容器の内部への液体の供給を開始する充填開始工程と、前記充填開始工程の後、前記筒体の下端開口を開いた状態で、前記液体流路から前記容器の内部へ所定量の液体を供給する第1充填工程と、前記第1充填工程の後、前記筒体の下端を前記容器の口部の内側に配置するとともに前記筒体の下端開口を開いた状態で、前記第1充填工程よりも高い圧力で前記液体流路から前記容器の内部へ所定量の液体を供給する第2充填工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の液体充填方法は、上記構成において、前記充填開始工程及び前記第1充填工程において、前記筒体の下端開口を前記容器の底部に近接させ、前記蓋部と前記筒体の下端開口との間の隙間を通して前記液体流路から前記容器の内部へ液体を供給するのが好ましい。
【0011】
本発明の液体充填方法は、上記構成において、前記充填開始工程及び前記第1充填工程において、前記ロッド体の下端を前記容器の底部に当接または近接させるとともに前記筒体の下端を前記口部の内側に配置した状態で前記液体流路から前記容器の内部に液体を供給するのが好ましい。
【0012】
本発明の液体充填方法は、上記構成において、前記充填開始工程において、前記筒体の下端開口を前記容器の底部に近接させ、前記蓋部と前記筒体の下端開口との間の隙間を通して前記液体流路から前記容器の内部へ液体を供給し、前記第1充填工程において、前記蓋部と前記筒体の下端開口との間の隙間を通して前記液体流路から前記容器の内部に液体を供給するとともに、前記容器の内部の液面の上昇に合わせて前記隙間を維持しつつ前記筒体及び前記ロッド体を上昇させながら前記液体流路から前記容器の内部に液体を供給するのが好ましい。
【0013】
本発明の液体充填方法は、上記構成において、前記容器は合成樹脂製のプリフォームであり、前記充填装置は、液体ブロー成形装置であり、前記第1充填工程は、前記プリフォームを延伸させることなく前記プリフォームの内部に液体を供給するプレフィル工程であり、前記第2充填工程は、前記プリフォームをブロー成形するブロー成形工程であるのが好ましい。
【0014】
本発明の液体充填方法は、上記構成において、前記第2充填工程において、前記ロッド体により前記容器を軸方向に延伸するのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、小型で簡素な構成の充填装置により実施可能な液体充填方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態である液体充填方法に用いられる液体充填装置の一例を示す断面図である。
図2図1に示す液体充填装置の、充填開始工程及び第1充填工程を行っている状態における断面図である。
図3図1に示す液体充填装置の、第2充填工程を行っている状態における断面図である。
図4図1に示す液体充填装置の、第2充填工程が完了した状態における断面図である。
図5図1に示す液体充填装置の、変形例に係る充填開始工程を行っている状態における断面図である。
図6図1に示す液体充填装置の、他の変形例に係る充填開始工程を開始した状態における断面図である。
図7図1に示す液体充填装置の、他の変形例に係る第1充填工程を行っている途中の状態における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係る液体充填方法をより具体的に例示説明する。
【0018】
本発明の一実施形態である液体充填方法は、充填装置を用いて容器に液体を充填する液体充填方法であって、充填装置が、内側が液体流路となる筒体と、筒体の内部に上下動自在に配置されたロッド部と、ロッド部の下端に設けられて筒体の下端開口を開閉する蓋部とを備えたロッド体と、を有し、筒体の下端開口を開いた状態とするとともにロッド体の下端を容器の底部に当接または近接させた状態として液体流路から容器の内部への液体の供給を開始する充填開始工程と、充填開始工程の後、筒体の下端開口を開いた状態で、液体流路から容器の内部へ所定量の液体を供給する第1充填工程と、第1充填工程の後、筒体の下端を容器の口部の内側に配置するとともに筒体の下端開口を開いた状態で、第1充填工程よりも高い圧力で液体流路から容器の内部へ所定量の液体を供給する第2充填工程と、を有することを特徴とする液体充填方法である。
【0019】
本発明の一実施形態に係る液体充填方法は、例えば図1に示す構成の充填装置1を用いて実施することができる。
【0020】
本実施形態では、容器は合成樹脂製のプリフォーム10である。図1に示す充填装置1は、容器としての合成樹脂製のプリフォーム10の内部に加圧した液体を供給ないし充填することで、所定形状の液体入り容器にブロー成形する液体ブロー成形装置として構成されたものである。
【0021】
充填装置1により液体ブロー成形されて形成される液体入り容器としては、例えば内容量が300ml以下のものなど、比較的小型のボトルであるのが好ましいが、これに限られない。
【0022】
プリフォーム10は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性を有する合成樹脂製であり、開口端となる円筒状の口部11と、口部11に連なる円筒状の胴部12と、胴部12の下端を閉塞する半球状の底部13と、を有する有底円筒状(略試験管状)となっている。
【0023】
口部11の外周面には、成形後の液体入り容器の口部11にキャップをねじ結合により装着するための雄ネジ14が一体に設けられている。なお、口部11の外周面に、雄ネジ14に替えて、キャップを打栓(アンダーカット係合)により装着するための円環状の係合突起を設けるようにしてもよい。また、口部11と胴部12との間には、ネックリング15が一体に設けられている。
【0024】
プリフォーム10は、上記した形状に限らず、円筒状の口部11を有していれば、その形状は種々変更可能である。
【0025】
充填装置1は、ブロー成形用の金型20の上方に配置されている。金型20は、例えばボトル形状などの液体入り容器の最終形状に対応した形状のキャビティ21を有している。キャビティ21は金型20の上面において上方に向けて開口している。プリフォーム10は、胴部12及び底部13が金型20のキャビティ21の内部に配置されるとともに、ネックリング15が金型20の上面に支持されることで口部11が金型20から上方に突出した状態となって金型20に装着される。
【0026】
金型20は左右に型開きすることができるようになっており、プリフォーム10を液体入り容器に成形した後に金型20を左右に開くことで、当該液体入り容器を金型20から取り出すことができる。
【0027】
充填装置1は、金型20の上方に配置される本体ブロック30を有している。本体ブロック30は、その下端に円筒状の係合部31を一体に有している。係合部31は、口部11の内径よりも小さい外径を有し、口部11の内側に液密に嵌合することができる。また、本体ブロック30の内部には、係合部31において下方に開口するとともに上下方向に延びる支持孔32が設けられている。
【0028】
充填装置1は、支持孔32に配置された円筒状の筒体33を有している。筒体33は、プリフォーム10の内部に挿入可能な外径となっている。筒体33の内側は液体流路33aとなっており、筒体33の下端は液体流路33aの下端開口33bとなっている。また、筒体33は、支持孔32に支持された状態で、下端開口33bが係合部31の内側に配置された上端位置と、下端開口33bが係合部31に対して下方に突出するように移動して金型20に装着されたプリフォーム10の底部13に近接する下端位置との間で本体ブロック30に対して上下方向に移動自在となっている。
【0029】
液体流路33aには、配管34を介して液体供給源35が接続されている。液体供給源35は、配管34を介して液体流路33aに所定の圧力に加圧した液体Lを供給することができる。また、液体供給源35は、液体流路33aに供給する液体Lの圧力を変更することもできる。
【0030】
充填装置1は、ロッド体36を有している。ロッド体36は、筒体33の内部に上下動自在に配置されたロッド部36aと、ロッド部36aの下端に設けられて筒体33の下端開口33bを開閉する蓋部36bとを備えている。ロッド部36aの外径は筒体33の内径よりも小さくなっており、ロッド部36aの外周面と筒体33の内周面との間が液体流路33aとなっている。
【0031】
筒体33が上端位置にあるとき、下端開口33bに当接して下端開口33bを閉じた状態の蓋部36bは係合部31の内側に配置されている。この状態からロッド部36aが筒体33に対して下方に移動すると、蓋部36bが筒体33の下端開口33bから離間し、筒体33の下端開口33bが開かれる。また、ロッド体36は、単独で、または筒体33とともに、金型20に装着されたプリフォーム10の底部13に当接または近接する位置にまで下方に移動することもできる。
【0032】
充填装置1は、本体ブロック30に吸引装置40が接続された構成とすることもできる。吸引装置40は、本体ブロック30の支持孔32の内周面に設けられた凹部41に配管42を介して接続されている。吸引装置40は、配管42及び凹部41を介して支持孔32に負圧を供給することで、支持孔32の内側に配置された筒体33の表面に付着した液体を外部に排出することができる。また、凹部41、配管42及び吸引装置40は、後述する第1充填工程において、プリフォーム10の内部の空気を外部に排出する経路としても用いることができる。
【0033】
支持孔32の内周面に、筒体33の外周面に全周に亘って当接して支持孔32と筒体33との間を液密にシールするシールリング43を設けた構成とすることもできる。この場合、凹部41はシールリング43よりも下方側に設けられ、吸引装置40は、シールリング43よりも下方側において筒体33の表面に付着した液体を外部に排出する。
【0034】
なお、充填装置1は、吸引装置40、シールリング43を備えない構成としてもよい。
【0035】
次に、上記構成の充填装置1を用いて、本実施形態に係る液体充填方法によりプリフォーム10に液体Lを充填して液体入り容器にブロー成形する手順について説明する。
【0036】
まず、図1に示すように、筒体33を上端位置とし、蓋部36bにより筒体33の下端開口33bを閉じた状態で、金型20にプリフォーム10を装着する。そして、図2に示すように、本体ブロック30を金型20に対して下方に移動させて係合部31を口部11に係合させる。
【0037】
次に、この状態から充填開始工程を行う。
【0038】
図2に示すように、充填開始工程においては、筒体33に対してロッド体36を所定距離だけ下方に移動させて筒体33の下端開口33bを開いた状態とするとともに、ロッド体36を下方に移動させてロッド体36の下端(蓋部36b)をプリフォーム10の底部13に当接または近接させた状態とする。また、筒体33を下方に移動させて下端開口33bをプリフォーム10の底部13に近接させる。このとき、蓋部36bと筒体33の下端開口33bとの間に隙間が生じるようにする。そして、この状態で、液体供給源35から液体流路33aへの液体Lの供給を行うことで、蓋部36bと筒体33の下端開口33bとの間の隙間を通して液体流路33aからプリフォーム10の内部への液体Lの供給を開始する。
【0039】
充填開始工程においてプリフォーム10の内部への液体Lの供給が開始されると、次に、第1充填工程が行われる。本実施形態では、第1充填工程は、ブロー成形に先立ってプリフォーム10の内部を液体Lで満たすためのプレフィル工程である。
【0040】
図2に示すように、第1充填工程においては、筒体33の下端開口33bを開いた状態で、液体流路33aからプリフォーム10の内部へ所定量の液体Lを供給する。本実施形態では、充填開始工程において、筒体33の下端開口33bをプリフォーム10の底部13に近接させるようにしているので、第1充填工程においても、充填開始工程と同様に、液体Lを、蓋部36bと筒体33の下端開口33bとの間の隙間を通して液体流路33aからプリフォーム10の内部に供給する。
【0041】
第1充填工程において液体流路33aからプリフォーム10の内部へ供給される液体Lの量は、プリフォーム10の内部の全体が液体Lで満たされる量である。また、第1充填工程においてプリフォーム10の内部に供給される液体Lの圧力は、プリフォーム10を延伸させない程度の圧力である。
【0042】
このように、本実施形態では、充填開始工程及び第1充填工程において、ロッド体36の下端(蓋部36b)をプリフォーム10の底部13に当接または近接させるとともに筒体33の下端開口33bをプリフォーム10の底部13に近接させた状態とし、蓋部36bと筒体33の下端開口33bとの間の隙間を通して液体流路33aからプリフォーム10の内部へ液体Lを供給するようにしているので、下端開口33bから吐出された液体Lは下端開口33bに近接する底部13に当たることになる。これにより、下端開口33bから吐出された液体Lが底部13に勢いよく当たることをなくして、プリフォーム10の内部に液体Lを泡立たせることなく(空気を巻き込むことなく)充填することができる。
【0043】
プリフォーム10の内部に所定量の液体Lが充填されてプリフォーム10が液体Lで満たされると、第1充填工程が完了する。このような第1充填工程を行うことで、プリフォーム10の内部の空気を液体Lに置換することができる。なお、第1充填工程においては、プリフォーム10の内部に液体Lが供給されるのに伴って、プリフォーム10の内部の空気が、係合部31と筒体33との隙間から凹部41、配管42及び吸引装置40を通して外部に排出される構成とすることができるが、他の経路から排出される構成としてもよい。
【0044】
第1充填工程が完了すると、次に第2充填工程が行われる。本実施形態では、第2充填工程は、プリフォーム10をブロー成形するブロー成形工程である。
【0045】
第2充填工程においては、図3図4に示すように、筒体33を上端位置、すなわちその下端(下端開口33b)がプリフォーム10のブロー成形によっては延伸されない部分である口部11の内側に配置される位置とするとともに、筒体33の下端開口33bを開いた状態で、第1充填工程よりも高い圧力で液体流路33aからプリフォーム10の内部へ所定量の液体Lを供給する。なお、第2充填工程において、筒体33は、上端位置に限らず、ブロー成形によっては延伸されない口部11の内側に配置される位置であれば、他の位置に配置されてもよい。
【0046】
第2充填工程において液体流路33aからプリフォーム10の内部へ供給される液体Lの量は、プリフォーム10の胴部12及び底部13を金型20のキャビティ21に沿った形状にブロー成形することができる程度の量である。また、第2充填工程においてプリフォーム10の内部に供給される液体Lの圧力は、第1充填工程よりも高い圧力であるとともにプリフォーム10の胴部12及び底部13を金型20のキャビティ21に沿った形状にブロー成形することができる程度の圧力である。
【0047】
図3に示すように、第2充填工程において、ロッド体36によりプリフォーム10を軸方向(上下方向)に延伸するようにしてもよい。すなわち、ロッド体36を延伸ロッドとして機能させるようにしてもよい。この場合、ロッド体36を下方に移動させ、蓋部36bにより底部13を押下げることで、プリフォーム10の胴部12及び底部13を軸方向に延伸させる。これにより、第2充填工程において、プリフォーム10を二軸延伸ブロー成形することができ、プリフォーム10をより精度よく液体入り容器に成形することが可能となる。。なお、ロッド体36によるプリフォーム10の軸方向(上下方向)への延伸は、ロッド体36に対して筒体33のみを上昇させて筒体33の下端開口33bをブロー成形によっては延伸されない非延伸部分(口部11)の内側に配置した状態で行うのが好ましい。
【0048】
図4に示すように、第2充填工程においてプリフォーム10の内部に第1充填工程よりも高い圧力に加圧された所定量の液体Lが供給されると、プリフォーム10の胴部12及び底部13が液体Lの圧力によって径方向及び軸方向に延伸され、金型20のキャビティ21の内面に沿った形状にブロー成形される。
【0049】
このとき、本実施形態に係る液体充填方法では、筒体33の下端をプリフォーム10のブロー成形では延伸されない口部11の内側に配置するようにしているので、筒体33の下端開口33bからプリフォーム10の内部に供給される液体Lによる圧力は、主に口部11の部分に直接作用し、プリフォーム10のブロー成形で延伸される部分である胴部12の内面に直接作用することが抑制される。これにより、筒体33の下端開口33bからプリフォーム10の内部に供給される液体Lの圧力が胴部12に直接作用することで胴部12が局所的に薄肉化してプリフォーム10に破裂や変形が生じることを防止することができる。
【0050】
また、第2充填工程においてプリフォーム10がブロー成形される際には、予め第1充填工程においてプリフォーム10の内部の空気が泡立ちのない液体Lに置換されているので、第2充填工程においてプリフォーム10の内部に液体Lを供給する際に、当該液体Lが空気を巻き込むことを抑制することができる。これにより、第2充填工程において、プリフォーム10を液体Lによって精度よくキャビティ21の内面に沿った所定形状にまでブロー成形することができる。
【0051】
第2充填工程が完了すると、プリフォーム10は内部に液体Lが充填された液体入り容器Cに形成される。
【0052】
なお、第2充填工程が完了すると、筒体33が上端位置にまで移動するとともにロッド体36が上方に移動して蓋部36bにより筒体33の下端開口33bが閉じられる。
【0053】
第2充填工程の後、液体入り容器Cの内部から所定量の液体Lを液体流路33aに吸い戻すサックバック工程を行うことで、液体入り容器Cの内部に所定量のヘッドスペースを形成するようにしてもよい。
【0054】
また、第2充填工程の後ないしサックバック工程が完了し、本体ブロック30を上方に移動させて係合部31を口部11から離脱させた後、口部11にキャップを装着するキャップ装着工程を行うようにしてもよい。
【0055】
さらに、本体ブロック30を上方に移動させて係合部31を口部11から離脱させた後、吸引装置40を作動させて筒体33の表面に付着した液体Lを外部に排出するようにしてもよい。
【0056】
このように、本実施形態に係る液体充填方法は、内側が液体流路33aとなる筒体33と、筒体33の内部に上下動自在に配置されたロッド部36aと、ロッド部36aの下端に設けられて筒体33の下端開口33bを開閉する蓋部36bとを備えたロッド体36とを有するが、これ以外にブロー成形用のブローノズルを備えない小型で簡素な構成の充填装置1を用いて実施することができる。したがって、本実施形態に係る液体充填方法によれば、小型で簡素な構成の充填装置1を用いてプリフォーム10に液体Lを充填することで、容易且つ安価に液体入り容器Cを製造することができる。
【0057】
特に、内容量が300ml以下のものなど比較的小型の液体入り容器Cを製造する際には、第2充填工程において、口部11よりも小径の筒体33の内部の液体流路33aからプリフォーム10の内部に加圧した液体Lを供給する際、当該液体Lの圧力すなわちブロー圧が不足することをなくして、液体入り容器Cを容易且つ確実に製造することができる。
【0058】
上記実施形態では、充填開始工程及び第1充填工程において、筒体33の下端開口33bをプリフォーム10の底部13に近接させて蓋部36bと筒体33の下端開口33bとの間の隙間を通して液体流路33aからプリフォーム10の内部へ液体Lを供給するようにしているが、図5に示すように、充填開始工程及び第1充填工程において、ロッド体36の下端(蓋部36b)をプリフォーム10の底部13に当接または近接させるとともに、筒体33の下端(下端開口33b)をプリフォーム10の口部11の内側に配置した状態で液体流路33aからプリフォーム10の内部に液体Lを供給するようにしてもよい。
【0059】
この場合、充填開始工程及び第1充填工程において、筒体33の下端開口33bから吐出された液体Lは、ロッド部36aに沿って流れて低圧力でプリフォーム10の底部13に供給される。したがって、この場合においても、下端開口33bから吐出された液体Lが底部13に勢いよく当たることをなくして、プリフォーム10の内部に液体Lを泡立たせることなく(空気を巻き込むことなく)充填することができる。
【0060】
また、図5に示す場合では、第1充填工程の完了後、筒体33及びロッド体36を移動させることなく、そのまま第2充填工程を行うことができるので、液体充填方法をより簡素化させることができる。
【0061】
なお、図5に示す場合においても、ロッド体36を下方に移動させてプリフォーム10を軸方向に延伸させてから充填開始工程及び第1充填工程を行うようにしてもよいが、当該延伸を行わなくてもよい。
【0062】
図6に示すように、充填開始工程において、筒体33の下端開口33bをプリフォーム10の底部13に近接させて蓋部36bと筒体33の下端開口33bとの間の隙間を通して液体流路33aからプリフォーム10の内部へ液体Lを供給するとともに、図7に示すように、第1充填工程において、蓋部36bと筒体33の下端開口33bとの間の隙間を通して液体流路33aからプリフォーム10の内部に液体Lを供給するとともに、プリフォーム10の内部の液面Sの上昇に合わせて蓋部36bと筒体33の下端開口33bとの間の隙間を維持しつつ筒体33及びロッド体36を上昇させながら液体流路33aからプリフォーム10の内部に液体Lを供給するようにしてもよい。
【0063】
この場合、充填開始工程において筒体33の下端開口33bから吐出された液体Lは、図2に示す場合と同様に、底部13に勢いよく当たることがなく、これによりプリフォーム10の内部に液体Lを泡立たせることなく(空気を巻き込むことなく)充填することができる。また、第1充填工程においては、筒体33の下端開口33bから吐出された液体Lは、常に液面Sの近くで液体Lの内部に吐出されるので、プリフォーム10の内部での液体Lが攪拌されることを抑制して、プリフォーム10の内部に液体Lを泡立たせることなく(空気を巻き込むことなく)充填することができる。
【0064】
なお、図7に示す場合においては、第1充填工程の完了後、ロッド体36を下方に移動させることでプリフォーム10を軸方向に延伸させるようにしてもよいが、当該延伸を行わなくてもよい。
【0065】
また、図7に示す場合では、第1充填工程の完了後、ロッド体36を下方に移動させることなく、第2充填工程を行うようにしてもよい。また、第1充填工程において、ロッド体36の下端をプリフォーム10の底部13に近接または当接させたまま、筒体33のみを液面Sに合わせて上昇させる(蓋部36bと筒体33の下端開口33bとの間の隙間が徐々に大きくなる)ようにしてもよい。
【0066】
図5図7に示す変形例の工程においても、図1図4に示す場合と同様に、小型で簡素な構成の充填装置1を用いてプリフォーム10に液体Lを充填することで、容易且つ安価に液体入り容器Cを製造することができる。
【0067】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0068】
例えば、前記実施形態では、図1に示す構成の充填装置1を用いて本実施形態に係る液体充填方法を実施する場合について説明したが、他の構成の充填装置1を用いて本実施形態に係る液体充填方法を実施することもできる。
【0069】
また、前記実施形態では、容器を合成樹脂製のプリフォーム10とし、充填装置1を液体ブロー成形装置とし、第1充填工程を、プリフォーム10を延伸させることなくプリフォーム10の内部に液体Lを供給するプレフィル工程とし、第2充填工程を、プリフォーム10をブロー成形するブロー成形工程とした場合について説明したが、本実施形態に係る液体充填方法は、例えば合成樹脂製のブロー成形容器などの容器の内部に、内容液として所定量の液体を充填する用途に用いることもできる。
【符号の説明】
【0070】
1 充填装置
10 プリフォーム(容器)
11 口部
12 胴部
13 底部
14 雄ネジ
15 ネックリング
20 金型
21 キャビティ
30 本体ブロック
31 係合部
32 支持孔
33 筒体
33a 液体流路
33b 下端開口
34 配管
35 液体供給源
36 ロッド体
36a ロッド部
36b 蓋部
40 吸引装置
41 凹部
42 配管
43 シールリング
L 液体
C 液体入り容器
S 液面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7