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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106865
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】焼結機の操業管理方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/20 20060101AFI20240801BHJP
   C22B 1/16 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C22B1/20 V
C22B1/20 Q
C22B1/16 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011335
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 慎平
(72)【発明者】
【氏名】岩見 友司
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001CA35
4K001CA37
4K001CA40
4K001CA41
4K001CA43
4K001CA44
4K001GA10
4K001GB11
(57)【要約】
【課題】原料装入層におけるガス流速の分布を精度良く推定する。
【解決手段】焼結機30の操業管理方法は、焼結機30の現在の造粒条件に基づいて焼結原料から造粒粒子を造粒するステップと、焼結機30の現在の装入条件に基づいて造粒粒子を容器70に装入して模擬原料装入層を形成するステップと、模擬原料装入層の構造の3次元データを取得するステップと、3次元データに基づいて模擬原料装入層の内部におけるガス流速の分布を推定するステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結機の現在の造粒条件に基づいて焼結原料から造粒粒子を造粒するステップと、
前記焼結機の現在の装入条件に基づいて前記造粒粒子を容器に装入して模擬原料装入層を形成するステップと、
前記模擬原料装入層の構造の3次元データを取得するステップと、
前記3次元データに基づいて前記模擬原料装入層の内部におけるガス流速の分布を推定するステップと、
を含む、焼結機の操業管理方法。
【請求項2】
推定した前記模擬原料装入層の内部における前記ガス流速の分布に基づいて、前記焼結機が備えるパレットの搬送方向と直交する幅方向に並べて設置されている複数の通気棒の深度を、通気棒ごとに制御するステップをさらに含む、請求項1に記載の焼結機の操業管理方法。
【請求項3】
前記3次元データを取得するステップは、X線CT装置を用いて前記3次元データを取得する、請求項1に記載の焼結機の操業管理方法。
【請求項4】
前記ガス流速の分布を推定するステップは、前記3次元データに加えて、前記焼結機の現在の排風条件に基づいて前記模擬原料装入層の内部におけるガス流速の分布を推定する、請求項1に記載の焼結機の操業管理方法。
【請求項5】
前記排風条件は、前記焼結機のウインドボックスの負圧の情報を含む、請求項4に記載の焼結機の操業管理方法。
【請求項6】
前記造粒条件は、前記造粒粒子を造粒する際の前記焼結原料の水分含有量の情報を含む、請求項1に記載の焼結機の操業管理方法。
【請求項7】
前記装入条件は、前記焼結機における原料装入層の厚みの情報を含む、請求項1に記載の焼結機の操業管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、焼結機の操業管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼結機の操業においては、原料装入層を均一に焼成することにより歩留まりを向上させることができる。原料装入層を均一に焼成するためには、原料装入層におけるガス流速の分布を把握することが重要である。
【0003】
特許文献1は、レーザー距離計によって原料装入層の層厚を測定し、層厚に基づいて原料装入層の密度を推定し、密度に基づいて原料装入層の通気状態を把握し、通気棒によって通気状態を均一にする発明を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5458780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、層厚を測定しているだけであり、原料装入層の内部の構造を推定することはできない。そのため、原料装入層の内部におけるガス流速の分布を精度良く推定することはできず、原料装入層のどの部分にむら焼けが生じるかを精度良く推定することは困難であった。
【0006】
本開示の目的は、原料装入層におけるガス流速の分布を精度良く推定することができる焼結機の操業管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]焼結機の現在の造粒条件に基づいて焼結原料から造粒粒子を造粒するステップと、
前記焼結機の現在の装入条件に基づいて前記造粒粒子を容器に装入して模擬原料装入層を形成するステップと、
前記模擬原料装入層の構造の3次元データを取得するステップと、
前記3次元データに基づいて前記模擬原料装入層の内部におけるガス流速の分布を推定するステップと、
を含む、焼結機の操業管理方法。
【0008】
[2]推定した前記模擬原料装入層の内部における前記ガス流速の分布に基づいて、前記焼結機が備えるパレットの搬送方向と直交する幅方向に並べて設置されている複数の通気棒の深度を、通気棒ごとに制御するステップをさらに含む、上記[1]に記載の焼結機の操業管理方法。
【0009】
[3]前記3次元データを取得するステップは、X線CT装置を用いて前記3次元データを取得する、上記[1]又は[2]に記載の焼結機の操業管理方法。
【0010】
[4]前記ガス流速の分布を推定するステップは、前記3次元データに加えて、前記焼結機の現在の排風条件に基づいて前記模擬原料装入層の内部におけるガス流速の分布を推定する、上記[1]から[3]のいずれか一項に記載の焼結機の操業管理方法。
【0011】
[5]前記排風条件は、前記焼結機のウインドボックスの負圧の情報を含む、上記[4]に記載の焼結機の操業管理方法。
【0012】
[6]前記造粒条件は、前記造粒粒子を造粒する際の前記焼結原料の水分含有量の情報を含む、上記[1]から[5]のいずれか一項に記載の焼結機の操業管理方法。
【0013】
[7]前記装入条件は、前記焼結機における原料装入層の厚みの情報を含む、上記[1]から[6]のいずれか一項に記載の焼結機の操業管理方法。
【発明の効果】
【0014】
本開示に係る焼結機の操業管理方法によれば、原料装入層におけるガス流速の分布を精度良く推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の一実施形態に係る焼結設備の構成例を模式的に示す図である。
図2】通気棒の配置の一例を模式的に示す図である。
図3】本開示の一実施形態に係る制御装置の構成例を模式的に示す図である。
図4】本開示の一実施形態に係る焼結機の操業管理方法の手順例を示すフローチャートである。
図5】実施例におけるガス流速の計算結果の一例を示す図である。
図6】実施例における通気棒を使用した場合のガス流速の結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本開示の一実施形態に係る焼結設備1の構成例を模式的に示す図である。焼結設備1は、鉄含有原料及び炭素含有原料を含む焼結原料から焼結鉱を製造することができる設備である。
【0018】
焼結設備1は、制御装置10と、造粒機20と、焼結機30と、破砕機40と、クーラー50と、篩分装置60と、容器70と、3次元データ取得装置80とを備える。
【0019】
制御装置10は、造粒機20、焼結機30、破砕機40、クーラー50、篩分装置60及び3次元データ取得装置80と通信可能である。制御装置10は、造粒機20、焼結機30、破砕機40、クーラー50、篩分装置60及び3次元データ取得装置80を制御する。
【0020】
制御装置10の構成及び機能の詳細については後述する。
【0021】
造粒機20は、鉄含有原料及び炭素含有原料を含む焼結原料から造粒粒子を造粒する。造粒機20が造粒粒子を造粒する際、焼結原料には造粒水が添加される。焼結原料は、副原料として、さらに酸化カルシウム(CaO)含有原料を含んでもよい。造粒機20が造粒した造粒粒子は、焼結機30に搬送される。
【0022】
造粒機20は、造粒粒子を製造可能な任意の造粒機であってよいが、例えば、ドラムミキサであってよい。
【0023】
焼結機30は、造粒粒子を焼結する任意の焼結機であってよいが、例えば、ドワイトロイド式の焼結機であってよい。焼結機30は、焼結原料供給装置31と、パレット32と、点火炉33と、ウインドボックス34とを備える。また、図1においては図示を省略しているが、焼結機30は、図2に示すような、通気棒35と、通気棒駆動装置36とを備える。
【0024】
焼結原料供給装置31は、造粒機20から供給された造粒粒子を、パレット32に装入する。
【0025】
パレット32は、無端移動式のパレットである。パレット32は、焼結原料供給装置31から造粒粒子を装入されると、パレット32上に原料装入層を形成する。
【0026】
点火炉33は、パレット32上に形成されている原料装入層の表層に含まれている炭素含有原料に点火する。
【0027】
ウインドボックス34は、パレット32上に形成されている原料装入層の空気を下方に吸引する。ウインドボックス34によって原料装入層の空気が下方に吸引されると、原料装入層内の燃焼及び溶融体は、原料装入層の下方に移動する。このように、原料装入層内において燃焼及び溶融体が移動することにより、原料装入層は焼結される。その結果、原料装入層から焼結ケーキが得られる。
【0028】
図2に示す通気棒35は、焼結原料供給装置31の下流側に配置されている。ここで、下流側とは、パレット32の搬送方向の下流側ということを意味する。焼結機30は、パレット32の搬送方向と直交する幅方向に並べて設置されている複数の通気棒35を備える。
【0029】
図2は、パレット32の搬送方向から複数の通気棒35を見た図である。図2に示すように、複数の通気棒35が、パレット32の搬送方向と直交する幅方向に並べて設置されている。
【0030】
なお、図2は、6本の通気棒35が並べて配置されている様子を示しているが、これは一例であり、並べて配置される通気棒35の本数は5本に限定されない。並べて配置される通気棒35の本数は、4本以下であってもよいし、6本以上であってもよい。
【0031】
図2に示す通気棒駆動装置36は、通気棒35を上下に駆動する駆動装置である。図2に示すように、焼結機30は、それぞれの通気棒35ごとに通気棒駆動装置36を備える。
【0032】
通気棒駆動装置36は、通気棒35を上下に駆動することにより、通気棒35の深度を制御することができる。ここで、通気棒35の深度とは、パレット32に形成されている原料装入層101に、通気棒35が挿入されている深さの程度を意味する。図2に示す例においては、左から2番目の通気棒35及び右から1番目の通気棒35の深度が大きくなっている。
【0033】
通気棒駆動装置36は、制御装置10からの指令に応じて、それぞれの通気棒35ごとに、通気棒35の深度を制御する。
【0034】
再び、図1に戻って説明を続ける。
【0035】
破砕機40は、焼結機30から供給される焼結ケーキを破砕する。破砕機40は、焼結ケーキの破砕物をクーラー50に供給する。
【0036】
クーラー50は、破砕機40から供給された焼結ケーキの破砕物を冷却する。クーラー50によって冷却された焼結ケーキの破砕物は、篩分装置60に供給される。
【0037】
篩分装置60は、クーラー50によって冷却された焼結ケーキの破砕物を、破砕物の粒径に応じて篩い分ける。例えば、篩分装置60は、焼結ケーキの破砕物を、粒径が5mm以上の焼結鉱と粒径が5mm未満の返鉱とに篩い分ける。
【0038】
このように、最終的に篩分装置60によって篩い分けられることによって、焼結鉱が製造される。また、篩分装置60によって篩い分けられた返鉱は、焼結原料に配合され、焼結鉱の原料として再び利用されてよい。
【0039】
容器70は、焼結機30のパレット32と同様の形状の容器である。容器70には、焼結機30のパレット32に造粒粒子を装入して原料装入層を形成するのと同様にして、模擬原料装入層を形成することができる。模擬原料装入層は、現在操業中の焼結機30のパレット32に形成される原料装入層を、容器70に再現したものである。
【0040】
容器70に装入する造粒粒子は、焼結機30の現在の造粒条件に基づいて造粒された造粒粒子である。造粒条件は、焼結機30の造粒機20において造粒粒子を造粒する際の条件である。造粒条件は、焼結機30の造粒機20において造粒粒子を造粒する際の水分含有量の情報を含んでいてよい。
【0041】
容器70に造粒粒子を装入して模擬原料装入層を形成する際は、焼結機30の現在の装入条件に基づいて、現在の装入条件と同様の装入条件で造粒粒子を装入する。装入条件は、焼結機30のパレット32に原料装入層を形成する際の原料装入層の厚みの情報を含んでいてよい。
【0042】
このようにして容器70に模擬原料装入層を形成することにより、現在操業中の焼結機30のパレット32に形成される原料装入層と同様の構造を有する模擬原料装入層を容器70に形成することができる。
【0043】
3次元データ取得装置80は、容器70に形成された模擬原料装入層の構造の3次元データを取得することができる装置である。3次元データ取得装置80は、3次元データを取得することが可能な任意の装置であってよいが、例えば、X線CT装置であってよい。
【0044】
模擬原料装入層の構造の3次元データは、例えば、模擬原料装入層の内部における空隙の位置、造粒粒子の位置などのデータを含む。
【0045】
3次元データ取得装置80は、容器70に形成された模擬原料装入層の構造の3次元データを取得すると、取得した3次元データを制御装置10に送信する。
【0046】
続いて、制御装置10の構成及び機能について説明する。最初に、制御装置10の機能の概要について説明する。
【0047】
制御装置10は、容器70に形成された模擬原料装入層の構造の3次元データを、3次元データ取得装置80から取得する。
【0048】
制御装置10は、取得した3次元データに基づいて、模擬原料装入層の内部におけるガス流速の分布を推定する。この際、制御装置10は、取得した3次元データに加えて、焼結機30のウインドボックス34の現在の排風条件に基づいて、模擬原料装入層の内部におけるガス流速の分布を推定してよい。
【0049】
ウインドボックス34の排風条件とは、焼結機30のウインドボックス34が、パレット32上に形成されている原料装入層の空気を下方に吸引する際のウインドボックス34の条件を意味する。排風条件は、ウインドボックス34の負圧の情報を含んでいてよい。
【0050】
制御装置10は、取得した3次元データ及び排風条件に基づいて模擬原料装入層の内部におけるガス流速の分布を推定する際、一般的な流体解析ソフトを用いて模擬原料装入層の内部におけるガス流速の分布を推定してよい。制御装置10は、例えば、CFD(Computational Fluid Dynamics)計算を行って、模擬原料装入層の内部におけるガス流速の分布を推定してよい。
【0051】
制御装置10が推定した、模擬原料装入層の内部におけるガス流速の分布は、現在操業中の焼結機30のパレット32に形成されている原料装入層の内部におけるガス流速の分布と同様の分布であると考えられる。
【0052】
制御装置10は、推定した模擬原料装入層の内部におけるガス流速の分布に基づいて、パレット32の搬送方向と直交する幅方向に並べて設置されている複数の通気棒35の深度を、通気棒35ごとに制御する。
【0053】
これにより、制御装置10は、現在操業中の焼結機30のパレット32に形成されている原料装入層における幅方向のガス流速を均一化させることができ、幅方向の焼成を均一化させることができる。
【0054】
続いて、制御装置10の構成について説明する。
【0055】
図3は、本開示の一実施形態に係る制御装置10の構成例を模式的に示す図である。制御装置10は、ワークステーション、パソコンなどのような汎用のコンピュータであってもよいし、焼結設備1の制御装置10として機能するように構成された専用のコンピュータであってもよい。
【0056】
制御装置10は、制御部11と、入力部12と、出力部13と、記憶部14と、通信部15とを備える。
【0057】
制御部11は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)若しくはGPU(Graphics Processing Unit)などの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。
【0058】
制御部11は、記憶部14に記憶されているプログラム、データなどを読み込み、各種機能を実行する。制御部11は、造粒機20、焼結機30、破砕機40、クーラー50、篩分装置60及び3次元データ取得装置80を制御する。
【0059】
制御部11は、推定した模擬原料装入層の内部におけるガス流速の分布に基づいて、パレット32の搬送方向と直交する幅方向に並べて設置されている複数の通気棒35の深度を、通気棒35ごとに制御する。
【0060】
入力部12は、ユーザ入力を検出して、ユーザの操作に基づく入力情報を取得する1つ以上の入力用インターフェースを含む。入力部12は、例えば、物理キー、静電容量キー、出力部13のディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、又は音声入力を受け付けるマイク等を含む。
【0061】
出力部13は、情報を出力してユーザに通知する1つ以上の出力用インターフェースを含む。出力部13は、例えば、情報を画像で出力するディスプレイ、情報を音声で出力するスピーカ等を含む。出力部13が含むディスプレイは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイなどであってよい。
【0062】
記憶部14は、例えば、フラッシュメモリ、ハードディスク、光メモリ等である。記憶部14の一部は、制御装置10の外部にあってもよい。この場合、記憶部14の一部は、制御装置10と任意のインターフェースを介して接続されたハードディスク、メモリーカード等であってよい。
【0063】
記憶部14は、制御部11が各機能を実行するためのプログラム、当該プログラムが使用するデータなどを格納している。
【0064】
通信部15は、有線通信に対応する通信モジュール及び無線通信に対応する通信モジュールの少なくとも一方を含む。
【0065】
図4に示すフローチャートを参照して、本実施形態に係る焼結設備1が実行する焼結機30の操業管理方法について説明する。
【0066】
ステップS101:焼結機30の現在の造粒条件に基づいて、焼結原料から造粒粒子を造粒する。
【0067】
ステップS102:焼結機30の現在の装入条件に基づいて、ステップS101で造粒した造粒粒子を容器70に装入し、模擬原料装入層を形成する。
【0068】
ステップS103:3次元データ取得装置80は、容器70に形成された模擬原料装入層の構造の3次元データを取得する。3次元データ取得装置80は、模擬原料装入層の構造の3次元データを、制御装置10に送信する。制御装置10は、模擬原料装入層の構造の3次元データを、3次元データ取得装置80から取得する。
【0069】
ステップS104:制御装置10は、取得した模擬原料装入層の構造の3次元データに基づいて、模擬原料装入層の内部におけるガス流速の分布を推定する。
【0070】
制御装置10は、ステップS104において、模擬原料装入層の内部におけるガス流速の分布を推定すると、原料装入層における幅方向のガス流速を均一化させるように、パレット32の搬送方向と直交する幅方向に並べて設置されている複数の通気棒35の深度を、通気棒35ごとに制御する。
【0071】
(実施例)
図5及び図6を参照して、本実施形態に係る焼結設備1における焼結機30の操業管理方法の実施例について説明する。
【0072】
図5は、ガス流速の計算結果の一例を示す図である。
【0073】
図5に示すグラフにおいて、横軸は、模擬原料装入層の高さ方向の位置である。また、縦軸は、ガス流速である。
【0074】
図5に示すガス流速の計算は、以下のような条件でおこなった。
焼結原料:粉鉱石、石灰、返鉱及び炭材の混合物
容器の大きさ:直径150mm、高さ600mm
造粒条件:造粒機20で造粒する際と同じ水分含有量
装入条件:焼結原料供給装置31でパレット32に原料装入層を形成する際と同じ厚さ
【0075】
図5に示すガス流速の計算は、以下のような手順でおこなった。まず、上述の条件の焼結原料を、造粒機20で造粒する際と同じ水分含有量で造粒した。その後、造粒した造粒粒子を、上述の条件の容器70に装入した。この際、容器70に形成される模擬原料装入層の厚さを、焼結原料供給装置31でパレット32に原料装入層を形成する際と同じ厚さとした。
【0076】
続いて、3次元データ取得装置80としてX線CT装置を用いて、容器70に形成された模擬原料装入層のCT撮影を行った。X線CT装置は、320kVの線源を有する装置である。取得した3次元データに対し、CFD計算を行って、模擬原料装入層内におけるガス流速を計算した。この際、排風条件として、焼結機30のウインドボックス34の負圧の情報を用いた。また、CFD計算には、ガス温度の値及びガス粘度の値も用いた。
【0077】
図5において「右側」として示しているグラフは、パレット32の搬送方向の上流側から見たときの右側の領域に対応する領域における計算結果である。また、図5において「左側」として示しているグラフは、パレット32の搬送方向の上流側から見たときの左側の領域に対応する領域における計算結果である。
【0078】
図5を参照すると、「右側」は、ガス流速が高さ方向に対しほぼ一定となっている。したがって、この場合、「右側」の領域では、焼成がほぼ均一に行われることが想定される。また、「左側」は、上層部においてはガス流速がほぼ一定となっているが、下層部においてはガス流速が大きいところがある。これは、粒子間に閉塞する部分が発生しており、局所的に風が流れているためと推定される。そのため、「左側」の領域では、焼成が均一に行われないことが想定される。
【0079】
図6は、図5の計算結果に基づいて通気棒の深度を決定し、決定した深度にしたがって通気棒を模擬原料装入層に装入したときの結果を示す図である。なお、図6においては、比較のため、図5に示したグラフもそのまま示している。
【0080】
図6において、「右側(通気棒使用)」及び「左側(通気棒使用)」として示しているガス流速の計算は、以下のような手順でおこなった。まず、図5の計算を行うときと同様にして、容器70に模擬原料装入層を形成した。その後、図5の計算結果に基づいて決定した通気棒の深度に基づいて、通気棒を容器70の模擬原料装入層に装入した。これにより、焼結機30において通気棒35を装入することの効果を模擬することができる。
【0081】
その後、通気棒を取り出し、3次元データ取得装置80としてX線CT装置を用いてCT撮影を行った。取得した3次元データに対し、CFD計算を行って、模擬原料装入層内におけるガス流速を計算した。この際、排風条件として、焼結機30のウインドボックス34の負圧の情報を用いた。また、CFD計算には、ガス温度の値及びガス粘度の値も用いた。
【0082】
図6において「右側(通気棒使用)」として示しているグラフは、右側の領域において通気棒を挿入した後の計算結果である。また、図5において「左側(通気棒使用)」として示しているグラフは、左側の領域において通気棒を挿入した後の計算結果である。
【0083】
図6を参照し、「右側(通気棒使用)」と「右側」を比べると、「右側(通気棒使用)」は、「右側」に比べて、ガス流速の高さ方向に対する均一性が向上している。また、「左側(通気棒使用)」と「左側」を比べると、「左側(通気棒使用)」は、「左側」に比べて、ガス流速の高さ方向に対する均一性が大きく向上している。
【0084】
その後、操業中の焼結機30の通気棒35を、図6のときと同様の深度になるように制御したところ、均一な焼成を実現することができた。このように、模擬原料装入層を用いて推定したガス流速の分布に基づいて、操業中の焼結機30の通気棒35の深度を制御することによって、ガス流速の分布を均一にすることができた。また、これにより、焼結鉱の歩留まりを向上させることができた。
【0085】
上述のように、本実施形態に係る焼結機30の操業管理方法は、焼結機30の現在の造粒条件に基づいて焼結原料から造粒粒子を造粒するステップと、焼結機30の現在の装入条件に基づいて造粒粒子を容器70に装入して模擬原料装入層を形成するステップと、模擬原料装入層の構造の3次元データを取得するステップと、3次元データに基づいて模擬原料装入層の内部におけるガス流速の分布を推定するステップと、を含む。このように、本実施形態に係る焼結機30の操業管理方法は、操業中の焼結機30のパレット32に形成される原料装入層を再現した模擬原料装入層の構造の3次元データを取得し、取得した3次元データに基づいて模擬原料装入層の内部におけるガス流速の分布を推定する。したがって、本実施形態に係る焼結機30の操業管理方法は、原料装入層におけるガス流速の分布を精度良く推定することができる。
【0086】
また、本実施形態に係る焼結機30の操業管理方法は、推定した模擬原料装入層の内部におけるガス流速の分布に基づいて、ガス流速の分布が均一に近づくように、複数の通気棒35の深度を通気棒35ごとに制御する。これにより、本実施形態に係る焼結機30の操業管理方法は、焼結機30において均一な焼成を実現することができ、焼結鉱の歩留まりを向上させることができる。
【0087】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の複数のブロックを統合してもよいし、又は1つのブロックを分割してもよい。フローチャートに記載の複数のステップを記述に従って時系列に実行する代わりに、各ステップを実行する装置の処理能力に応じて、又は必要に応じて、並列的に又は異なる順序で実行してもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【0088】
例えば、上述の実施形態において、焼結設備1が1台の制御装置10を備える構成を示しているが、焼結設備1は、複数の制御装置10を備えていてもよい。この場合、複数の制御装置10が、上述の制御装置10の機能を分担して実行してもよい。例えば、容器70に形成された模擬原料装入層の内部におけるガス流速の分布を推定する処理と、焼結機30を制御する処理とは、別の制御装置10が実行してもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 焼結設備
10 制御装置
11 制御部
12 入力部
13 出力部
14 記憶部
15 通信部
20 造粒機
30 焼結機
31 焼結原料供給装置
32 パレット
33 点火炉
34 ウインドボックス
35 通気棒
36 通気棒駆動装置
40 破砕機
50 クーラー
60 篩分装置
70 容器
80 3次元データ取得装置
101 原料装入層
図1
図2
図3
図4
図5
図6