(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106868
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】小型発電機
(51)【国際特許分類】
H02K 7/18 20060101AFI20240801BHJP
A63H 30/02 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
H02K7/18 A
A63H30/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011338
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】知念 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 勇輔
【テーマコード(参考)】
2C150
5H607
【Fターム(参考)】
2C150DD01
2C150EB41
2C150EB44
2C150FA07
2C150FA11
5H607BB02
5H607BB07
5H607BB14
5H607BB17
5H607CC05
5H607DD02
5H607FF21
5H607GG01
5H607GG08
5H607GG25
(57)【要約】
【課題】使用性の高い小型発電機を提供する。
【解決手段】小型発電機(1)は、ユーザの指に弾かれて回転軸(12)の周りを回転するブレード(20)と、回転軸(12)に設けられ、ブレード(20)を回転可能に支持するベアリング(15)と、ブレード(20)と連結する磁石(13)と、磁石(13)と対向して配置され、磁石(13)の回転により電磁誘導を生じるコイル(14)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの指に弾かれて回転軸の周りを回転する回転部と、
前記回転軸に設けられ、前記回転部を回転可能に支持する軸受部と、
前記回転部と連結する磁石と、
前記磁石と対向して配置され、前記磁石の回転により電磁誘導を生じるコイルと、
を備える小型発電機。
【請求項2】
前記軸受部は、ボールベアリングであり、
前記ボールベアリングは、潤滑剤として、イオン液体又は深共晶溶媒を含有する、請求項1に記載の小型発電機。
【請求項3】
前記電磁誘導により生じた電気を蓄電する蓄電部を備える、請求項1または2に記載の小型発電機。
【請求項4】
前記蓄電部から給電されるGPS発信機を備える、請求項3に記載の小型発電機。
【請求項5】
前記コイルは、前記回転軸と前記磁石との間に位置する、請求項1または2に記載の小型発電機。
【請求項6】
前記磁石は、前記回転軸と前記コイルとの間に位置する、請求項1または2に記載の小型発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用性の高い小型発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
運動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機は公知であり、その一例として、特許文献1に記載の発電ユニットが挙げられる。特許文献1の発電ユニットは、容量の小さな発電体を直列に複数基配設すると共に、各発電体の回転軸を連結することで、大きな発電容量を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-013284号公報(2021年2月4日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の発電ユニットは、容量の小さな発電体を直列に複数基配設する構成であるため、構造が大型化かつ複雑化するという課題を有する。
【0005】
小型の発電機として、手回し型発電機が知られている。手回し型発電機は、ユーザがハンドルを手で回すことにより、その運動エネルギーを電気エネルギーに変換する仕組みを有しており、ハンドルを早く回すほど発電量が増加する。
【0006】
しかしながら、手回し型発電機は、ギア比の低さゆえに発電効率が低く、特定の状況(緊急時など)には不向きであり、使用性が高いとは言い難い。
【0007】
本開示は、前記の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、使用性の高い小型発電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る小型発電機は、ユーザの指に弾かれて回転軸の周りを回転する回転部と、前記回転軸に設けられ、前記回転部を回転可能に支持する軸受部と、前記回転部と連結する磁石と、前記磁石と対向して配置され、前記磁石の回転により電磁誘導を生じるコイルと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、使用性の高い小型発電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示に係る小型発電機を説明するための図である。
【
図2】本開示に係る本体の断面図であって、
図1に示すAA線の断面図である。
【
図3】本開示に係る、磁石とコイルの位置関係の一例を説明するための図である。
【
図4】本開示に係る小型発電機の概略断面図である。
【
図5】本開示に係る小型発電機における磁石とコイルの位置関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態に係る小型発電機1について、模式的に示した
図1等を参照しながら説明する。以下の説明において、「上」、「下」は、重力方向を下側、重力方向と反対側を上側とする。図中、図面下側が重力方向であるものとする。また、「横方向」は、上下方向と垂直な方向とする。
【0012】
(小型発電機の概要)
図1は、本開示に係る小型発電機1を説明するための図である。
図1において、参照番号100に示す図は小型発電機1の斜視図を示し、参照番号110に示す図は小型発電機1の上面図を示す。
【0013】
図1を参照して、小型発電機1は、人の手のひらに乗る程度の大きさの小型発電機であり、いわゆる「ハンドスピナー」(登録商標)と称される玩具と外観が類似する。小型発電機1は、本体10と、回転可能に本体10に連結したブレード(回転部)20とで構成される。
【0014】
参照番号100に示す図を参照して、本体10は、本体10の天面部を構成する天面部10a、本体10の底面部を構成する底面部10b、及び、本体10の胴体部を構成する胴体部10cによって外形が形成されている。胴体部10cは、ブレード20と一体に形成されている。図示の例では、本体10は、略円筒形であるが、直方形状等の他の形状であってもよい。本体10は、その内部に、回転軸12、磁石13、コイル14、及びベアリング15等を含む。これらの詳細については、
図2を参照して後述する。
【0015】
ブレード20は、本体10の外縁から放射状に外側に向かって延在する、ブレード20aとブレード20bとで構成される(以下では、ブレード20aとブレード20bとを区別しないときは、単に「ブレード20」と称する)。ブレード20は、3つ以上のブレードにより構成されてもよい。ブレード20は、複数のブレードが等間隔(又は、略等間隔)に設けられていることが好ましい。ブレード20は、種々の形状が採用されてよく、
図1の参照番号110に示すように上面視で扇形であってもよいし、あるいは、矩形等の他の形状であってもよい。ブレード20は、その材質は特に限定されず、例えば、軽量かつ製造容易な樹脂製である。ブレード20は、回転中に水平を保てる構造であればよい。
【0016】
小型発電機1は、例えば次のように使用される。まず、ユーザは、底面部10bを床に置く。次に、ユーザは、天面部10aを片方の手(又は、指)で抑えつつ、他方の手の指でブレード20を弾く。ブレード20を弾く強さにもよるが、ユーザは、ブレード20を数分~10数分間にわたって回転させることができる。詳細は後述するが、小型発電機1は、ブレード20の回転によって発電する。そのため、小型発電機1は、他の外力を介在させることなく、ユーザがブレード20を指で弾く力のみによって、容易かつ長時間にわたって発電できる。
【0017】
(小型発電機の詳細)
次に、本体10の内部構造を
図2により説明する。
図2は、本体10の断面図であって、
図1に示すAA線の断面図である。
【0018】
図2に示すように、本体10は、天面部10aと底面部10bとの間に形成された内部空間に、回転軸12、磁石13、コイル14、ベアリング(軸受部)15、基板16、キャパシタ17、及びGPS発信機18を設けている。以下、各部について説明する。なお、以下の小型発電機1の内部構造の説明は、本開示に係る小型発電機1の一例であって、これに限定されない。
【0019】
(回転軸)
回転軸12は、上面視したときの本体10の中心に位置決めされている。回転軸12は、本体10の内部において上下方向に延在する。回転軸12は、回転軸12の内側に内部空間S1を有し、その内部空間S1にコイル14(後述)とキャパシタ17(後述)とを接続する配線が敷設される。
【0020】
回転軸12は、一体に形成された、回転軸胴体部12a、ベアリング支持部12b、及び回転軸上部12cにより構成される。前述の内部空間S1は、回転軸胴体部12a、ベアリング支持部12b、及び回転軸上部12cの内側にわたって形成されている。
【0021】
回転軸胴体部12aは、磁石13(後述)及びコイル(後述)と対向する位置に設けられる。ベアリング支持部12bは、回転軸胴体部12aの上部に位置し、ベアリング15a(後述)を支持する。回転軸上部12cは、ベアリング支持部12bの上部に位置し、その上面に基板16(後述)が載置される。
【0022】
回転軸12は、回転軸胴体部12aの下部の内部空間S1に挿入部11bが挿入される。挿入部11bは、ベアリング支持部11a(後述)を介して底面部10bと接続する。これにより、回転軸12は、本体10内において安定的に固定される。
【0023】
なお、前記の説明では、ベアリング支持部11a及び挿入部11bは、回転軸12と別体として説明しているが、回転軸12と一体的に形成されていてもよい。また、図示の例においては、ベアリング支持部11a及び挿入部11bは、回転軸12の一部であると表現することもできる。
【0024】
図2を参照して、回転軸上部12cは、その外径が天面部10aの内径よりも僅かに小さく形成されており、これにより回転軸上部12cは本体10に固定される。その結果、回転軸12は、本体10内で安定的に固定される。
【0025】
なお、前述の説明では、ベアリング支持部12b及び回転軸上部12cは、回転軸12と一体に形成されているものとして説明したが、ベアリング支持部12b及び回転軸上部12cは、前述の機能を果たすのであれば、回転軸12と別体として形成されてもよい。
【0026】
(ブレード)
ブレード20は、ユーザの指に弾かれて回転軸12の周りを回転する。前述したように、ブレード20は、本体10の外縁から放射状に外側に向かって延在する、ブレード20aとブレード20bとで構成される。ブレード20は、ベアリング支持部12bに設けられたベアリング15a、及び、ベアリング支持部11aに設けられたベアリング15b(以下、両者を区別しないときは、単に「ベアリング15」と称する。)によって回転軸12周りを回転可能に支持されている。ブレード20は、
図1を参照して説明した胴体部10cと一体に形成されている。従って、胴体部10cはブレード20の一部を構成するともいえる。胴体部10cは、磁石13を設けるための内部空間S2を有する。
【0027】
図2を参照して、内部空間S2は、回転軸12の近傍に形成されており、上面視したときに本体10の外縁よりも内側に位置する。内部空間S2は、磁石13を収容可能な大きさに形成されていればよい。
【0028】
なお、ブレード20は、内部空間S2を有していなくてもよく、例えば、回転軸12側の胴体部10cの端面に磁石13が結合されていてもよい。
【0029】
(磁石)
磁石13は、ブレード20の内部空間S2内に設けられて、ブレード20と連結(接合)する。これにより、磁石13は、ブレード20の回転に伴って、ブレード20と共に回転軸12の周りを回転する。磁石13は、少なくとも一対の、N極及びS極の磁石を含む。磁石13は、その種類は特に限定されず、例えば、ネオジム系、サマリウム系といった希土類磁石、又は、バリウムフェアライト径、ストロンチウムフェライト系などの磁石が用いられる。回転軸12と磁石13との間にはコイル14が設けられている。磁石13の最適な数量は、負荷側が要求する条件に応じて決定されてよい。このことは、後述のコイル14も同様である。
【0030】
(コイル)
コイル14は、ブレード20と回転軸12との間に形成された内部空間S4に配置され、磁石13と対向する。コイル14は、回転軸12に固定されている。コイル14は、特定の個数に限定されない。
【0031】
コイル14の近くで磁石13を動かすと磁界が変化する。そのとき、コイル14の周りの磁界の変化を少なくするような電流がコイル14に生ずる。これが電磁誘導であり、回転軸12周りの磁石13の回転により電磁誘導が生じる。コイル14は、磁石13の回転によって生じた電気を、回転軸12の内部の内部空間S1内に敷設された配線を介して、基板16に実装されたキャパシタ17(後述)に蓄電させる。
【0032】
(磁石とコイルの位置関係)
本開示の一例である、磁石13とコイル14の位置関係を
図3により説明する。
図3は、本開示に係る、磁石13とコイル14の位置関係の一例を説明するための図である。
【0033】
図3では、小型発電機1のうち、底面部10b、磁石13、及びコイル14のみが図示されている。磁石13及びコイル14は、いずれも、回転軸12(不図示)の周りを取り囲むように配置され、互いに対向して配置されている。コイル14は、回転軸12と磁石13との間に位置する。
図3に示す例において、磁石13は、磁石13N及び磁石13Sにより構成される。コイル14は、6つのコイルにより構成される。
【0034】
磁石13及びコイル14は、本体10内において対称性を有するように個数又は配置等が決められることが好ましい。これは、本体10内において複数の構成部品(磁石13及びコイル14を含む)がバランスよく配置されることにより、本体10の重心位置を本体10の中心(回転軸12の位置)に設定する、あるいは、回転軸12の近傍に設定するためである。これにより、小型発電機1は、重心の偏りを抑えることができ、その結果、ユーザの指によりブレード20が弾かれたときに、長時間にわたってブレード20を回転させることができる。
【0035】
(ベアリング)
ベアリング15は、ベアリング15a及びベアリング15bを含む。ベアリング15aはベアリング支持部12bに設けられ、ベアリング15bはベアリング支持部11aに設けられている。ベアリング15は、ブレード20を回転可能に支持する。ベアリング15は、ブレード20を回転可能に支持できるのであれば種類を問わないが、例えばボールベアリングである。ベアリング15は、内部空間S3を有し、その内部空間S3に潤滑剤を含んでよい。潤滑剤は周知の潤滑剤が使用されてもよいが、本開示においては、潤滑剤としてイオン液体が使用される。
【0036】
ベアリング15aが設けられるベアリング支持部12b、及び、ベアリング15bが設けられるベアリング支持部11aはそれぞれ、ベアリング15に対応する形状を有する。
【0037】
(イオン液体)
小型発電機1は、過酷な環境下(常温常圧範囲外)での使用を可能とするため、ベアリング15の微小変化による抵抗上昇リスク、及び/又は、油の粘度変化若しくは変質劣化による抵抗上昇リスクを抑制するための潤滑剤(潤滑油)としてイオン液体を使用する。一般的なグリース潤滑は寿命が短いのに対して、イオン液体は、その蒸気圧の低さから高寿命が期待できる。イオン液体による効果は改めて後述する。
【0038】
一般に、ボールベアリングのように潤滑油によって固体同士の直接接触を防止する流体潤滑においては、潤滑油膜を形成するために適度な粘度を必要とする。通常、粘度は温度上昇とともに低下することから、粘度低下の小さい潤滑油が、特に特殊環境においても使用可能とする本開示に係るベアリング15には好適な潤滑油といえる。
【0039】
イオン液体は、アルキル鎖伸長により粘度調整が可能であるため、粘度特性の設計自由度が高い。そこで、例えば、30℃における動粘度が10~2,000mm2/sの範囲に制御したイオン液体を潤滑油として使用することによって、小型発電機1は、過酷な環境下においても使用することができる。動粘度が10mm2/s未満の場合には油膜が形成されない。動粘度が2,000mm2/sよりも大きい場合には、発熱及び/又は抵抗が大きくなる。
【0040】
さらに、イオン液体は、蒸気圧が低い、熱容量が大きい、溶解性を有する、熱分解温度が高い、化学安定性が高い、安定性が高い(低揮発性、低融点等)といった、様々な物理的・化学的な特徴を有している。小型発電機1は、こういったイオン液体の特徴を活用して、過酷な環境下においても使用可能となる。
【0041】
例えば、イオン液体は、蒸気圧が低いことから、宇宙又は半導体技術など真空中においても使用でき、さらに、蒸発による熱損失がないことから、長寿命が期待できる。また、イオン液体は、熱容量が大きいことから、摩擦熱の冷却効果を期待でき、温度上昇を抑制できる。さらに、イオン液体は、高い化学安定性を有することから、高温冷温等の過酷な環境下での使用に好適である。
【0042】
イオン液体は、基本的に、陽イオンの種類で、ピリジン系、脂環族アミン系、及び脂肪族アミン系の3種類に大別される。これに組み合わせる陰イオンの種類を選択することで、多様な構造を有するイオン液体を合成できる。用いられる陽イオンには、イミダゾリウム塩類又はピリジニウム塩類などのアンモニウム系、ホスホニウム系イオン、無系イオンなどが挙げられる。陰イオンとしては、臭化物イオンやトリフラートなどのハロゲン系、テトラフェニルボレートなどのホウ素系、又は、ヘキサフルオロホスフェートなどのリン系などが挙げられる。さらに、フッ素フリーイオン液体(ドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)含む)は、腐食性が低く、ブリードアウトしにくい点で好ましい。フッ素フリーイオン液体は、例えば、ジアルキルジメチルアンモニウム・DBS、又はトリアルキルメチルアンモニウム・DBSなどである。
【0043】
さらに、小型発電機1は、過酷な環境下(常温常圧範囲外)での使用を可能とするため、ベアリング15の潤滑剤として深共晶溶媒を使用してもよい。調整された深共晶溶媒は、イオン液体に類似した挙動を示すとされ、イオン液体に比べ、環境親和性が高く比較的低コストである。深共晶溶媒は、エタリン(塩化コリン+エチレングリコール)等が挙げられる。
【0044】
(基板、蓄電部、GPS発信機)
図2を参照して、次に、基板16、キャパシタ(蓄電部)17、及びGPS発信機18を説明する。
【0045】
天面部10aの下面と回転軸上部12cの上面との間には内部空間S5が形成されている。内部空間S5は、内部に基板16を収容する。基板16は、回転軸上部12cの上面に設けられる。基板16は、キャパシタ17及びGPS発信機18を実装する。
【0046】
キャパシタ17は、回転軸12の内部の内部空間S1内に敷設された配線を介してコイル14における電磁誘導により生じた電気を蓄電する。キャパシタ17は、蓄電部の一例であって、前述する機能を発揮する限りにおいて、その仕様、種類、又は形状等が適宜に決められてよい。
【0047】
GPS発信機18は、携帯電波などの無線電波を使ってGPS位置情報を発信し、離れた場所にいる人に位置情報を通知する。GPS発信機18は、キャパシタ17から給電される。GPS発信機18は、前述する機能を発揮する限りにおいて、その仕様、種類、又は形状等が適宜に決められてよい。
【0048】
以上、小型発電機1の構成を説明した。次に、小型発電機1により得られる動作、及び効果を説明する。
【0049】
小型発電機1は、ブレード20がユーザの指に弾かれることによって、ブレード20に連結された磁石13の回転によりコイル14に電磁誘導を生じさせる。つまり、小型発電機1は、ユーザがブレード20を指で弾くという動作のみにより発電可能な小型発電機を実現する。しかも、ブレード20を指で弾くという動作は、極めて単純であり、特定の状況(緊急時など)であっても老若男女を問わず簡単に行える。それゆえ、小型発電機1は、使用性の高い小型発電機を提供することができる。
【0050】
この効果は、従来の手回し型発電機が、手回しに力を要すること、そして、ギア比の低さゆえに発電効率が低く、特定の状況(緊急時など)には不向きであったこととは対照的といえる。
【0051】
また、小型発電機1のベアリング15は、ボールベアリングであり、該ボールベアリングは、潤滑剤としてイオン液体を含有する。イオン液体は、蒸気圧が低い、熱容量が大きい、溶解性を有する、熱分解温度が高い、化学安定性が高いといった、様々な物理的・化学的な特徴を有している。小型発電機1は、このような特徴を有するイオン液体をベアリング15に使用することによって、過酷な環境下(遭難又は漂流など)においても使用可能となる。
【0052】
さらに、小型発電機1は、電磁誘導により生じた電気を蓄電するキャパシタ17を備える。それゆえ、小型発電機1は、ライター、ワイヤレス充電、ディスプレー表示、アンプ接続による音発信、又はライト点灯・点滅といった機能を付帯でき、ユーザの様々なニーズに応えることができる。
【0053】
加えて、小型発電機1は、キャパシタ17から給電されるGPS発信機18を備える。従来のGPSトラッカーは、バッテリーを内蔵しており、そのバッテリーの充電が切れると使用できなくなる。これに対して、小型発電機1は、発電した電気を蓄電する蓄電部を備え、ブレード20を指で回転することにより容易に発電し、蓄電できる。従って、小型発電機1は、自家発電型の装置であって、GPS発信機18を常時機能させることができ、バッテリーの充電が切れると使用できなくなるという課題も解消する。それゆえ、小型発電機1は、ユーザが過酷環境(遭難又は漂流等)に遭遇したときにも使用でき、人命救助に役立てることができる。さらに、小型発電機1は、コンパクトな構造ゆえに持ち運びも容易であるため、過酷環境の発生が予想される状況にもユーザが持参でき、それゆえ、使用性の高い装置であるといえる。
【0054】
(小型発電機4)
本開示に係る他の小型発電機4を
図4、
図5により説明する。
図4は、本開示に係る小型発電機4の概略断面図である。
図5は、小型発電機4における磁石43とコイル44の位置関係を説明するための図である。小型発電機4は、小型発電機1と同様に、手のひらに乗る程度の大きさの小型発電機である。以下、小型発電機4について、小型発電機1との構造上の差異に絞って説明する。
【0055】
最初に、
図4を参照して、小型発電機4は、ブレード40、回転軸42、磁石43、及びコイル44を備える。
【0056】
ブレード40は、複数枚のブレードで構成されている。ブレード40は回転軸42の上端に連結されており、ブレード40がユーザの指に弾かれて回転すると回転軸42も共に回転する。ブレード40は、回転軸42と一体形成されてよい。
【0057】
回転軸42は、小型発電機4を上面視したときに小型発電機4の中心に位置決めされている。回転軸42は、小型発電機4が起立したときに、上下方向に延在する。回転軸42は、その上端がブレード40に連結しており、ブレード40の回転に伴って回転する。
【0058】
磁石43は、少なくとも一対の、N極及びS極の磁石43A、及び磁石43Bを含む(以下、両者を区別しないときは、単に「磁石43」と称する。)。磁石43は、回転軸42と連結しており、回転軸42の回転に伴って共に回転する。磁石43は、回転軸42とコイル44との間に位置する。
【0059】
コイル44は、磁石43と対向して配置される。コイル44は、磁石43の回転により電磁誘導を生じる。コイル44は、特定の個数に限定されない。
図5に示す例において、コイル44は、6つのコイルにより構成される。コイル44は、巻き方が適宜に調節されてよい。コイル44にて生成された電気が蓄電部(不図示)に蓄電され、GPS発信機(不図示)に給電される構成は、本開示に係る小型発電機1と同じである。
【0060】
図5では、理解の容易のため、底面部41、磁石43、及びコイル44のみが図示されている。底面部41は、
図3の底面部10bに対応する部材であって、筐体の一部と考えてよい。磁石43及びコイル44は、いずれも、回転軸42(不図示)の周囲に設けられており、互いに対向して配置されている。
【0061】
このように、小型発電機1と小型発電機4とを比較すると、回転軸を基準として、磁石とコイルの位置が逆になっている。また、小型発電機4において、ベアリング15(不図示)は、例えば、小型発電機4の筐体と回転軸42との間に設けられる。
【0062】
小型発電機4は、例えば次のように使用される。まず、ユーザは、小型発電機4の筐体を片方の手で把持する。次に、ユーザは、他方の手の指でブレード40を弾く。ブレード40を弾く強さにもよるが、ユーザは、ブレード40を数分間にわたって回転させることができる。小型発電機4は、ブレード40の回転によって発電する。そのため、小型発電機4は、他の外力を介在させることなく、ユーザがブレード40を指で弾く力のみによって、容易かつ長時間にわたって発電できる。なお、ユーザは、ブレード40を把持しつつ小型発電機4の筐体を回転させてもよい。
【0063】
小型発電機1と小型発電機4との差異として、次の点を挙げることができる。
【0064】
具体的に、小型発電機1において、基板16は、回転軸上部12cの上面に設けられる(
図2参照)。これは、小型発電機1では回転軸12が回転しないことから、回転軸上部12cの上面が基板16を好適に配置できるためである。
【0065】
これに対して、小型発電機4では回転軸42が回転することから、回転軸42の上面とは異なる位置に基板16を配置することが好ましい。そこで、小型発電機4では、基板16(不図示)を小型発電機4の筐体内の他の位置に設けることになる。そのため、小型発電機4は小型発電機1よりも筐体サイズが大きくなる可能性がある。こういった構成上の差異が存在するものの、小型発電機4は、上述した、小型発電機1と同様の効果を奏することができる。
【0066】
以上、本開示に係る小型発電機を説明した。該小型発電機は、直流モータ及び交流モータの何れであっても採用できる。また、本開示に係る小型発電機は、直流モータからブラシと整流子を取り除き、電子的な整流機構を備えたブラシレスモータとするなど、モータの種類を適宜に変更できる。
【0067】
〔まとめ〕
本開示の態様1に係る小型発電機は、ユーザの指に弾かれて回転軸の周りを回転する回転部と、前記回転軸に設けられ、前記回転部を回転可能に支持する軸受部と、前記回転部と連結する磁石と、前記磁石と対向して配置され、前記磁石の回転により電磁誘導を生じるコイルと、備える。
【0068】
前記の構成によれば、本開示の態様1に係る小型発電機では、ユーザが指で前記回転部を弾くことによって、前記磁石の回転により前記コイルに電磁誘導が生じる。つまり、本開示の態様1に係る小型発電機は、ユーザが前記回転部を指で弾くという動作のみにより発電可能な小型発電機を実現できる。しかも、前記回転部を指で弾くという動作は、極めて単純であり、特定の状況(緊急時など)であっても老若男女を問わず簡単に行える。それゆえ、本開示の態様1に係る小型発電機は、使用性の高い小型発電機を提供することができる。
【0069】
本開示の態様2に係る小型発電機は、前記の態様1において、前記軸受部は、ボールベアリングであり、前記ボールベアリングは、潤滑剤として、イオン液体又は深共晶溶媒を含有する。
【0070】
イオン液体は、蒸気圧が低い、熱容量が大きい、溶解性を有する、熱分解温度が高い、化学安定性が高いといった、様々な物理的・化学的な特徴を有している。深共晶溶媒は、イオン液体と類似した物性特徴を有し、かつ、安価という特徴を有している。本開示の態様2に係る小型発電機は、このような種々の特徴を有するイオン液体を前記ベアリングに使用することによって、過酷な環境下(遭難又は漂流など)においても使用可能となる。
【0071】
本開示の態様3に係る小型発電機は、前記の態様1または2において、前記電磁誘導により生じた電気を蓄電する蓄電部を備える。
【0072】
前記の構成によれば、本開示の態様3に係る小型発電機は、前記蓄電部に蓄電した電気を他のデバイス(後述のGPS発信機など)に使用できる。これにより、本開示の態様3に係る小型発電機は、前記他のデバイスと連携して新たな機能をユーザに提供できる。
【0073】
本開示の態様4に係る小型発電機は、前記の態様3において、前記蓄電部から給電されるGPS発信機を備える。
【0074】
前記の構成によれば、本開示の態様3に係る小型発電機は、遭難又は漂流などの緊急時における位置情報発信デバイスとしても有効活用できる。
【0075】
本開示の態様5に係る小型発電機は、前記の態様1から4の何れかにおいて、前記コイルは、前記回転軸と前記磁石との間に位置する。
【0076】
本開示の態様6に係る小型発電機は、前記の態様1から4の何れかにおいて、前記磁石は、前記回転軸と前記コイルとの間に位置する。
【0077】
本開示の態様5、6に係る小型発電機の構成によれば、部品配置のバリエーション豊かな小型発電機を実現できる。
【0078】
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。さらに、それぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0079】
1、4 小型発電機
10 本体
10a 天面部
10b、41 底面部
10c 胴体部
11a、12b ベアリング支持部
11b 挿入部
12、42 回転軸
12a 回転軸胴体部
12c 回転軸上部
13、13N、13S、43N、43S、43 磁石
14、44 コイル
15、15a、15b ベアリング
16 基板
17 キャパシタ
18 GPS発信機
20、20a、20b、40 ブレード
S1、S2、S3、S4、S5 内部空間