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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106873
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】面発光装置および表示装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/52 20100101AFI20240801BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20240801BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20240801BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240801BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240801BHJP
【FI】
H01L33/52
H01L33/60
G02F1/13357
F21S2/00 481
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011345
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】金井 喜洋
(72)【発明者】
【氏名】関戸 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】續木 淳朗
【テーマコード(参考)】
2H391
3K244
5F142
【Fターム(参考)】
2H391AA01
2H391AB04
2H391AB21
2H391AC13
2H391AC32
3K244AA01
3K244BA08
3K244BA48
3K244CA02
3K244DA01
3K244DA22
3K244DA23
3K244GA01
3K244GA03
3K244GA05
3K244GA10
5F142AA13
5F142BA32
5F142CB14
5F142CD02
5F142CD13
5F142CD17
5F142CD18
5F142CE06
5F142CE08
5F142CE15
5F142CE23
5F142CE32
5F142CG03
5F142CG13
5F142CG14
5F142CG16
5F142CG22
5F142CG26
5F142DA72
5F142DA73
5F142DA74
5F142DB12
5F142DB16
5F142DB20
5F142GA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】輝度の面内均一性を向上できる面発光装置を提供する。
【解決手段】支持基板2、支持基板2の一方の面側に配置された発光ダイオード素子3、および発光ダイオード素子3の支持基板2とは反対の面側に配置された反射層4を有する発光ダイオード基板5と、発光ダイオード基板5の発光ダイオード素子3側の面側に配置され、発光ダイオード素子3を封止する封止部材6と、を有する面発光装置1であって、封止部材6のヘーズが12%以下である、面発光装置1を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板、前記支持基板の一方の面側に配置された発光ダイオード素子、および前記発光ダイオード素子の前記支持基板とは反対の面側に配置された反射層を有する発光ダイオード基板と、
前記発光ダイオード基板の前記発光ダイオード素子側の面側に配置され、前記発光ダイオード素子を封止する封止部材と、を有する面発光装置であって、
前記封止部材のヘーズが12%以下である、面発光装置。
【請求項2】
前記封止部材が複数の層を有する、請求項1に記載の面発光装置。
【請求項3】
前記封止部材が、オレフィン系樹脂を含有する層を有する、請求項2に記載の面発光装置。
【請求項4】
前記封止部材が、コア層と、前記コア層の少なくとも一方の面側に配置されたスキン層とを有する、請求項2に記載の面発光装置。
【請求項5】
前記封止部材が、線膨張係数が-15×10-6/℃以上10×10-6/℃以下である層を有する、請求項2に記載の面発光装置。
【請求項6】
前記封止部材が、前記LED基板側の最表面に密着層を有し、前記密着層が、オレフィン系樹脂とシラン成分とを含有し、架橋剤を含有せず、前記密着層の全樹脂成分に対する前記シラン成分の含有量が0.02質量%以上0.15質量%以下である、請求項1に記載の面発光装置。
【請求項7】
前記反射層が、誘電体多層膜である、請求項1に記載の面発光装置。
【請求項8】
前記封止部材の前記発光ダイオード基板とは反対の面側に配置された誘電体多層フィルムを有する、請求項1に記載の面発光装置。
【請求項9】
前記誘電体多層フィルムが、前記封止部材側の面および前記封止部材とは反対の面の少なくともいずれかに凹凸パターンを有する、請求項8に記載の面発光装置。
【請求項10】
前記誘電体多層フィルムの前記封止部材とは反対の面側に配置された波長変換部材を有する、請求項8に記載の面発光装置。
【請求項11】
前記誘電体多層フィルムにおいて、入射角の絶対値が大きくなるにつれて青色光のピーク波長の反射率が大きくなり、0度以上50度以下の入射角における緑色光のピーク波長の反射率が85%以上であり、0度以上50度以下の入射角における赤色光のピーク波長の反射率が80%以上である、請求項10に記載の面発光装置。
【請求項12】
前記封止部材と前記誘電体多層フィルムとの間、および、前記誘電体多層フィルムと前記波長変換部材との間の少なくともいずれかに配置された拡散部材を有する、請求項10に記載の面発光装置。
【請求項13】
表示パネルと、
前記表示パネルの背面に配置された請求項1から請求項12までのいずれかの請求項に記載の面発光装置と、を備える、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、面発光装置およびそれを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置の分野においては、より高画質な表示が求められている。発光ダイオード素子を用いた表示装置は、輝度が高くコントラストを高くすることができるといった利点を有することから、注目されており、開発が進められている。例えば、液晶表示装置に用いられるバックライトとして、発光ダイオード素子を用いたバックライトの開発が進められている。上記バックライトは、ミニLEDバックライトとも称される。以下の説明において、「発光ダイオード」を「LED」と称して説明する場合がある。
【0003】
ここで、LEDバックライトは、直下型方式とエッジライト型方式とに大別される。スマートフォン等の携帯端末等の中小型の表示装置においては、通常、エッジライト方式のLEDバックライトが用いられることが多いが、明るさ等の観点から、直下型方式のLEDバックライトを用いることが検討されている。一方、大画面液晶テレビ等の大型の表示装置においては、多くの場合、直下型方式のLEDバックライトが用いられる。
【0004】
直下型方式のLEDバックライトは、基板に複数のLED素子が配置された構成を有している。このような直下型方式のLEDバックライトでは、複数のLED素子を独立して制御することにより、表示画像の明暗に合わせてLEDバックライト各領域の明るさを調整する、いわゆるローカルディミングを実現できる。これにより、表示装置の大幅なコントラスト向上および低消費電力化を図ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7174216号公報
【特許文献2】韓国公開特許2022-0150200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
直下型方式のLEDバックライト等の面発光装置においては、輝度ムラが課題であり、輝度ムラを抑制する技術が種々開発されている。
【0007】
LED素子としては、主にLED素子の上面から光を出す上面発光型と、主にLED素子の側面から光を出す側面発光型とがある。側面発光型の場合、LED素子の直上の輝度が低く、LED素子間の輝度が高くなるため、輝度ムラを抑制できる。そのため、側面発光型を用いることが検討されている(例えば特許文献1、2)。
【0008】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、輝度の面内均一性を向上できる面発光装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
直下型方式のLEDバックライト等の面発光装置においては、LED素子を封止するために、LED素子を覆うように封止部材を配置している。封止部材には、配光特性を制御するために、光拡散性を付与する場合がある。LED素子としては、上述したように、上面発光型と側面発光型とがある。本開示の発明者等が鋭意検討したところ、上面発光型の場合、封止部材に光拡散性を付与することにより、輝度ムラを抑制できることが判明した。しかし、側面発光型の場合、封止部材に光拡散性を付与すると、かえって輝度の面内均一性が損なわれる場合があることが判明した。本開示は、このような知見に基づくものである。
【0010】
本開示の一実施形態は、支持基板、上記支持基板の一方の面側に配置された発光ダイオード素子、および上記発光ダイオード素子の上記支持基板とは反対の面側に配置された反射層を有する発光ダイオード基板と、上記発光ダイオード基板の上記発光ダイオード素子側の面側に配置され、上記発光ダイオード素子を封止する封止部材と、を有する面発光装置であって、上記封止部材のヘーズが12%以下である、面発光装置を提供する。
【0011】
本開示の他の実施形態は、表示パネルと、上記表示パネルの背面に配置された、上述の面発光装置と、を備える、表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本開示は、輝度の面内均一性を向上できる面発光装置を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示における面発光装置を例示する概略断面図である。
図2】本開示における面発光装置を例示する概略断面図である。
図3】従来の面発光装置を例示する概略断面図である。
図4】本開示における面発光装置を例示する概略断面図である。
図5】本開示における面発光装置を例示する概略断面図である。
図6】本開示における封止層の形成方法の一例を示す工程図である。
図7】本開示における面発光装置を例示する概略断面図である。
図8】本開示における面発光装置を例示する概略断面図である。
図9】本開示における面発光装置を例示する概略断面図である。
図10】本開示における第二の拡散部材の一例を示す概略断面図である。
図11】透過光強度分布を例示するグラフである。
図12】本開示における第二の拡散部材の反射構造体の第1態様を例示する概略平面図および断面図である。
図13】本開示における第二の拡散部材の反射構造体の第2態様を例示する概略平面図および断面図である。
図14】本開示における第二の拡散部材の反射構造体の第2態様を例示する略平面図および断面図である。
図15】本開示における表示装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。但し、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の態様の記載内容に限定して解釈されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部材の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定しない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0015】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面側に」または「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0016】
また、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されない。例えば、「シート」は、フィルムや板とも呼ばれるような部材も含む意味で用いられる。
【0017】
以下、本開示の面発光装置およびそれを用いた表示装置について、詳細に説明する。
【0018】
A.面発光装置
本開示における面発光装置は支持基板、上記支持基板の一方の面側に配置された発光ダイオード素子、および上記発光ダイオード素子の上記支持基板とは反対の面側に配置された反射層を有する発光ダイオード基板と、上記発光ダイオード基板の上記発光ダイオード素子側の面側に配置され、上記発光ダイオード素子を封止する封止部材と、を有する面発光装置であって、上記封止部材のヘーズが12%以下である。
【0019】
図1は、本開示における面発光装置の一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、面発光装置1は、支持基板2、支持基板2の一方の面側に配置されたLED素子3と、LED素子3の支持基板2とは反対の面側に配置された反射層4とを有するLED基板5と、LED基板5のLED素子3側の面側に配置され、LED素子3を封止する封止部材6とを有する。封止部材6のヘーズは所定の範囲である。面発光装置1においては、例えば図1に示すように、封止部材6のLED基板5とは反対の面側に誘電体多層フィルム7が配置されていてもよい。また、LED基板5において、支持基板2のLED素子3側の面であって、LED素子実装領域以外の領域には、反射部8が配置されていてもよい。この面発光装置1においては、LED素子3上に反射層4が配置されており、図2に例示するように、主にLED素子3の側面から光を出す側面発光型である。側面発光型の場合、LED素子3の側面から光Lが出るため、LED素子3の直上の輝度が低く、LED素子3間の輝度が高くなるので、輝度ムラの抑制に有利である。
【0020】
図3は、従来の面発光装置を例示する概略断面図である。図3に例示するように、面発光装置200において、側面発光型であり、封止部材201には光拡散性が付与されている。封止部材201が光拡散性を有すると、LED素子3の側面から出た光Lは、横方向にも進むが、封止部材201の光拡散性によってLED素子3の近傍で上方向にも拡散される。そのため、封止部材201の光拡散性が高いと、側面発光型の利点であるLED素子の直上の輝度が低くなるのを抑えてしまう。よって、輝度の面内均一性が損なわれてしまう。
【0021】
これに対し、本開示においては、封止部材6のヘーズが所定の範囲であり、封止部材6の光拡散性が低いため、LED素子3の側面から出た光Lが、封止部材6によってLED素子3の近傍で上方向にも拡散されるのを抑えることができる。よって、輝度の面内均一性を向上できる。
【0022】
以下、本開示における面発光装置について、構成毎に説明する。
【0023】
1.封止部材
本開示における封止部材は、LED基板の発光面側に配置され、発光ダイオード素子を封止する部材であり、ヘーズが12%以下である。
【0024】
(1)封止部材の特性
(a)ヘーズ
本開示における封止部材のヘーズは、12%以下であり、10%以下であってもよく、4%以下であってもよい。ヘーズが高すぎると、輝度の面内均一性が損なわれる可能性がある。一方、ヘーズの下限値は特に限定されないが、例えば、0.5%以上であり、1%以上であってもよく、2%以上であってもよい。
【0025】
本明細書において、封止部材のヘーズは、封止部材の内部ヘーズを指す。封止部材のヘーズは、JIS K7136:2000に準拠し、ヘーズメーター(村上色彩技術研究所社製「HM-150」)を用いて測定する。封止部材のヘーズを測定する際には、面発光装置から封止部材を切り出す。
【0026】
なお、封止部材が表面に凹凸パターンを有する場合、凹凸パターンでの散乱によって正しく内部ヘーズを測定することができないため、表面を平滑にする必要がある。封止部材の表面を平滑にする方法としては、内部ヘーズが小さく、表面が平滑であるフィルムを、インデックスマッチング液を介して、封止部材の凹凸面に貼り合わせる方法が挙げられる。インデックスマッチング液を封止部材表面の凹凸パターンに充填することにより、凹凸パターンでの散乱を低減できる。表面が平滑であるフィルムは、ヘーズが1%未満のフィルムであれば特に限定されないが、例えば、東洋紡社製のポリエス照りフィルム「コスモシャインA4160」を用いることができる。また、インデックスマッチング液としては、島津製作所製の接触液を用いることができる。インデックスマッチング液の屈折率は、封止部材の屈折率に近いものを適宜選択する。ただし、封止部材の屈折率が不明である場合は、いくつかの異なる屈折率のインデックスマッチング液を用いてヘーズを測定し、最も低い値となるものを選定する。さらに、表面が平滑であるフィルム単体のヘーズを予め測定し、測定後のヘーズから差し引くことにより、封止部材の内部ヘーズとする。
【0027】
封止部材のヘーズの調整方法としては、特に限定されず、既知の方法が適用できるが、樹脂の結晶化度を調整する方法、樹脂の密度を調整する方法、微粒子の屈折率、粒径、含有量を調整する方法等が挙げられる。
【0028】
樹脂の結晶化度が低いと、ヘーズが低くなる傾向にある。樹脂の結晶化度を低下させる方法としては、一般にLED素子の封止時の加熱後の冷却速度を速くする方法や、結晶核剤を使用すること等により、結晶粒径を小さく抑える方法が挙げられる。また、樹脂の結晶化度を調整する方法としては、後述するように、樹脂がポリエチレン系樹脂を含み、ポリエチレン系樹脂がエチレンとα-オレフィンとの共重合体である場合において、α-オレフィンの含有割合を調整する方法も挙げられる。α-オレフィンの含有割合が多いほど、結晶化度が低くなり、ヘーズが低くなる傾向にある。また、樹脂の密度が低いと、ヘーズが低くなる傾向にある。
【0029】
また、微粒子の屈折率がベース樹脂の屈折率に近いと、ヘーズが低くなる傾向にある。具体的には、ベース樹脂および微粒子の屈折率差が0.15以下であることが好ましい。また、微粒子の粒径が小さいと、ヘーズが低くなる傾向にある。具体的には、微粒子の平均粒径は、波長の1/10以下であることが好ましい。また、微粒子の含有量が少ないと、ヘーズが低くなる傾向にある。
【0030】
(b)全光線透過率
本開示における封止部材の全光線透過率は、面発光装置としての機能を発揮できれば特に限定されないが、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。封止部材の全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に準拠して測定する。
【0031】
(c)屈折率
封止部材のLED基板とは反対の最表面の屈折率は、1.48以下であってもよい。また、上記屈折率の下限は、1.45以上であってもよい。具体的には、上記屈折率は、1.45以上1.48以下であってもよい。上記屈折率が上記範囲内であることにより、封止部材と周囲の空気との屈折率差を小さくすることができ、LED素子から出射された光が、封止部材のLED基板とは反対の最表面を透過しやすくなり、透過率を高めることができる。これにより、面発光装置全体の輝度を向上できる。
【0032】
また、封止部材のLED基板とは反対の最表面の屈折率は、1.55以上であってもよい。また、上記屈折率の上限は、1.63以下であってもよい。具体的には、上記屈折率は、1.55以上1.63以下であってもよい。上記屈折率が上記範囲内であることにより、封止部材と周囲の空気との屈折率差を大きくすることができ、LED素子から出射された光が、封止部材のLED基板とは反対の最表面で反射しやすくなり、反射率を高めることができる。封止部材のLED基板とは反対の最表面で反射された光は、LED素子から面内方向に離れながら進む。その後、封止部材のLED基板とは反対の最表面で反射された光は、LED基板の反射部で再度反射される。このとき、LED基板の反射部で再度反射された光は、LED素子から出射された光と比べて、面内方向においてLED素子からより離れることになる。よって、輝度の面内均一性をより向上できる。
【0033】
なお、屈折率は、アッベ屈折計によって測定する。
【0034】
封止部材のLED基板とは反対の最表面の屈折率の調整方法としては、封止部材において、LED基板とは反対の最表面に位置する層の屈折率を調整する方法が挙げられる。例えば、封止部材のLED基板とは反対の最表面に、公知の所望の屈折率のフィルムを貼り合わせる方法、または、公知の所望の屈折率の組成物をコーティングする方法が用いられる。また、LED基板とは反対の最表面に位置する層に、ヘーズを損ねない範囲で、高屈折率または低屈折率の粒子を含有させることによっても、屈折率を調整できる。これらの屈折率を調整するための層は、ヘーズへの影響や封止部材としての機能不全を抑えるため、封止部材全体の厚さを100%としたとき、上記層の厚さは30%以下であることが好ましい。
【0035】
(2)封止部材の層構成
本開示における封止部材は、単一の層で構成された単層構造であってもよく、複数の層が積層された多層構造であってもよい。図1において、封止部材6は、単一の層で構成された単層構造である。図4(a)~(b)および図5(a)~(c)において、封止部材6は、複数の層が積層された多層構造である。図4(a)において、封止部材6は、2層の層が積層された多層構造であり、具体的には、コア層61と、コア層61の一方の面に配置されたスキン層62とを有する封止層60を有する。図4(b)において、封止部材6は、3層の層が積層された多層構造であり、具体的には、コア層61と、コア層61の両面に配置されたスキン層62とを有する封止層60を有する。図5(a)において、封止部材6は、2層の層が積層された多層構造であり、具体的には、単一の樹脂層で構成された封止層60と、封止層60のLED基板5とは反対の面に配置された反り防止層63とを有する。図5(b)において、封止部材6は、3層の層が積層された多層構造であり、具体的には、コア層61およびコア層61の一方の面に配置されたスキン層62を有する封止層60と、封止層60のLED基板5とは反対の面に配置された反り防止層63とを有する。図5(c)において、封止部材6は、4層の層が積層された多層構造であり、具体的には、コア層61およびコア層61の両方の面に配置されたスキン層62を有する封止層60と、封止層60のLED基板5とは反対の面に配置された反り防止層63とを有する。
【0036】
中でも、封止部材は、複数の層を有する多層構造であることが好ましい。また、封止部材は、少なくとも封止層を有することが好ましい。
【0037】
以下、封止部材を構成する封止層および反り防止層について説明する。
【0038】
(a)封止層
(i)封止層の材料
本開示における封止層に含まれる材料としては、上記ヘーズとなる材料であれば特に限定されないが、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂を用いることで、例えば、熱硬化性樹脂を用いる場合に比べ、低温、短時間で封止部材を形成できる。
【0039】
また、封止層が熱可塑性樹脂を含有する場合には、熱可塑性樹脂を含有するシート状の封止層を用いることができる。以下、シート状の封止層を封止材シートと称する場合がある。図6(a)~(b)は、封止部材の形成方法の一例を示す工程図である。例えば、図6(a)に示すように、LED基板5と封止材シート60aとを準備し、LED基板5のLED素子3側の面側に封止材シート60aを積層する。次に、真空熱プレスや真空ラミネート等により、LED基板5に封止材シート6aを圧着させることで、図6(b)に示すように、LED素子3を封止した封止層60を形成できる。
【0040】
一方、封止層が熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂等の硬化性樹脂を含有する場合には、通常、液状の封止材が用いられる。液状の封止材を用いる場合、表面張力等の関係で、中央部に比較して端部の厚さが厚くなる、もしくは薄くなるといった現象が生じる場合がある。また、硬化性樹脂の場合、硬化に際しての体積の収縮等が生じやすく、結果として、硬化後の封止部材の中央部と端部との厚さが不均一になる場合がある。このように封止部材の厚さが不均一であると、輝度ムラが生じる場合がある。
【0041】
これに対し、シート状の封止材を用いる場合には、液状の封止材を用いた場合に生じる、表面張力による塗膜の厚さ分布の発生や、熱収縮または光収縮による厚さの分布の発生といった封止層の表面凹凸が生じることを回避できる。よって、平坦性が良好な封止層を得ることができ、より高品質な面発光装置を提供できる。
【0042】
(i-1)熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、酢酸ビニル(EVA)、ポリビニルブチラール系樹脂を用いることができる。
【0043】
中でも、熱可塑性樹脂は、オレフィン系樹脂であることが好ましい。オレフィン系樹脂は、LED基板を劣化させる成分を特に生じにくく、溶融粘度も低いことから上述したLED素子を良好に封止できるからである。また、オレフィン系樹脂の中でも、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アイオノマー系樹脂が好ましい。
【0044】
ここで、本明細書におけるポリエチレン系樹脂には、エチレンを重合して得られる通常のポリエチレンのみならず、α-オレフィン等のようなエチレン性の不飽和結合を有する化合物を重合して得られた樹脂、エチレン性不飽和結合を有する複数の異なる化合物を共重合させた樹脂、およびこれらの樹脂に別の化学種をグラフトして得られる変性樹脂等が含まれる。
【0045】
中でも、上記ヘーズを得る観点において、封止層は、密度0.870g/cm以上0.930g/cm以下のポリエチレン系樹脂をベース樹脂とすることが好ましい。特に、封止層は、密度0.870g/cm以上0.910g/cm以下のポリエチレン系樹脂をベース樹脂とすることが好ましい。封止層が多層構造である場合、コア層のベース樹脂として上記密度のポリエチレン系樹脂を使用することが好ましい。なお、密度は、JIS Z8807:2012に準拠して測定する。
【0046】
ここで、本明細書において、コア層とは、図4(a)、(b)に例示するように、封止層60が、コア層61と、コア層61の少なくとも一方の面に配置されたスキン層62とを有する多層構造である場合のコア層をいう。また、ベース樹脂とは、層に含まれる樹脂成分の総量を100質量部とした場合に50質量部以上を占める樹脂をいう。
【0047】
ポリエチレン系樹脂が、エチレンとα-オレフィンとの共重合体である場合、α-オレフィンの炭素数は、3以上が好ましい。また、α-オレフィンの炭素数は、20以下が好ましく、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは6以下である。具体的には、α-オレフィンの炭素数は、3以上20以下が好ましく、より好ましくは3以上10以下であり、さらに好ましくは3以上6以下である。また、ポリエチレン系樹脂が、エチレンとα-オレフィンとの共重合体である場合、α-オレフィンの含有割合は、8モル%以上が好ましく、より好ましくは13モル%以上である。また、α-オレフィンの含有割合は、30モル%以下が好ましく、より好ましくは20モル%以下である。具体的には、α-オレフィンの含有割合は、8モル%以上30モル%以下が好ましく、より好ましくは13モル%以上20モル%以下である。α-オレフィンの含有割合が多いほど、結晶化度を下げることができ、ヘーズが低くなる傾向にある。なお、α-オレフィンの炭素数および含有割合は、13C-NMRにより測定する。
【0048】
α-オレフィンとエチレン性不飽和シラン化合物とをコモノマーとして共重合してなるシラン共重合体を好ましく使用できる。以下、このようなシラン共重合体を単に「シラン共重合体」と称する場合がある。このような樹脂を使用することにより、LED基板と封止部材とのより高い密着性を得ることができる。上記シラン共重合体は、特開2018-50027号公報に記載のものを用いることができる。
【0049】
上記ポリエチレン系樹脂としては、バイオマス由来のポリエチレンを用いてもよい。以下、バイオマス由来のポリエチレンをバイオマスポリエチレンと称する場合がある。バイオマスポリエチレンを用いることにより、封止部材の環境負荷低減性を向上できる。
【0050】
バイオマス由来のエチレンは、バイオマス由来のエタノールを原料として製造できる。特に、植物原料から得られるバイオマス由来の発酵エタノールを用いることが好ましい。植物原料は、特に限定されず、従来公知の植物を用いることができる。例えば、トウモロコシ、サトウキビ、ビート、およびマニオクを挙げることができる。
【0051】
バイオマス由来の発酵エタノールとは、植物原料より得られる炭素源を含む培養液にエタノールを生産する微生物又はその破砕物由来産物を接触させ、生産した後、精製されたエタノールを指す。培養液からのエタノールの精製は、蒸留、膜分離、及び抽出等の従来公知の方法が適用可能である。例えば、ベンゼン、シクロヘキサン等を添加し、共沸させるか、又は膜分離等により水分を除去する等の方法が挙げられる。
【0052】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラルな再生可能エネルギーである。昨今、これらバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックの実用化が急速に進んでおり、各種の樹脂をバイオマス原料から製造する試みも行われている。
【0053】
封止層中のバイオマスポリエチレンの含有量は、20質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上である。バイオマスポリエチレンの含有量が上記範囲であることにより、環境負荷低減性を実効あるものとすることができるからである。
【0054】
封止層中にバイオマスポリエチレンが含まれているか否か、および、封止層中のバイオマスポリエチレンの含有量は、ISO 16620-2 Method C(Carbon-14(放射性炭素)分析におけるAMS法)に準ずる形で測定する。
【0055】
熱可塑性樹脂の融点は、LED素子を封止できれば特に限定されない。上記融点は、例えば、50℃以上が好ましい。また、上記融点は、140℃以下が好ましい。具体的には、上記融点は、50℃以上140℃以下が好ましい。上記融点が上記範囲内であることにより、通常使用環境で融解せず、またLED素子を封止する際に過剰な温度をかけてLED基板に熱ダメージを与えることなく、使用できる。特に、後述のスキン層に含まれる熱可塑性樹脂の融点を上記範囲内とすることにより、良好な封止性を得ることができる。
【0056】
なお、熱可塑性樹脂の融点は、JIS K7121:2012のプラスチックの転移温度測定方法に準拠し、示差走査熱量分析(DSC)により測定する。複数の熱可塑性樹脂が含まれる場合においては、最も高融点の値である。封止層が多層構造である場合、コア層のベース樹脂としての熱可塑性樹脂が上記融点を有するものを使用することが好ましい。
【0057】
熱可塑性樹脂としては、加熱した際に、封止層の厚さを維持できるとともに、LED基板におけるLED素子およびその他の部材による凹凸に追従し、隙間に入り込むことができる溶融粘度を有するものが好適に用いられる。
【0058】
具体的には、熱可塑性樹脂の121℃におけるムーニー粘度は、2以上が好ましい。また、上記ムーニー粘度は、40以下が好ましい。より具体的には、上記ムーニー粘度は、2以上40以下が好ましい。ムーニー粘度が低すぎると、加熱した際に、封止層の厚さを維持するのが困難になる可能性がある。また、ムーニー粘度が高すぎると、LED素子等の隙間に入り込みにくくなる可能性がある。また、封止層が多層構造の場合、封止層において、LED素子に接する層に含まれる熱可塑性樹脂のムーニー粘度が上記範囲であることが好ましい。
【0059】
なお、ムーニー粘度は、JIS K6300-1:2013に準拠して測定する。測定条件は、L形ロータを使用し、余熱時間4分、ロータの回転時間4分、試験温度121℃とする。
【0060】
熱可塑性樹脂の室温(25℃)における弾性率は、5.0×10Pa以上が好ましい。また、上記弾性率は、1.0×10Pa以下が好ましい。具体的には、上記弾性率は、5.0×10Pa以上、1.0×10Pa以下であることが好ましい。充分なLED基板との密着性を発揮でき、かつ、例えば面発光装置に外部から衝撃が加わった場合等において耐衝撃性に優れた封止部材となる。封止層が多層構造である場合、コア層のベース樹脂としての熱可塑性樹脂が上記弾性率を有するものを使用することが好ましい。
【0061】
(i-2)樹脂の架橋
封止層に含まれる樹脂の少なくとも一部は架橋されていてもよい。封止部材のヘーズを低くするために、結晶化度の低い樹脂を用いる場合、耐熱性が低下することがある。樹脂の少なくとも一部が架橋されていることにより、耐熱性を高めることができる。
【0062】
樹脂の架橋方法としては、封止材組成物の製膜時に樹脂を架橋する第1の架橋方法、封止部材によるLED素子の封止時に樹脂を架橋する第2の架橋方法が挙げられる。第1の架橋方法の場合、封止材組成物は、架橋の程度を弱めで樹脂の分子量を増加した状態となっている。以下、この状態を弱架橋と称する場合がある。一方、第2の架橋方法の場合、封止材組成物は、未架橋の状態となっている。以下、第1の架橋方法および第2の架橋方法に分けて説明する。
【0063】
(第1の架橋方法)
第1の架橋方法においては、従来知られている封止材組成物の一般的な架橋処理を行う場合とは異なり、弱架橋処理を行う。弱架橋処理の結果は、ゲル分率からも理解できる。封止層のゲル分率は、例えば、25%以下であり、10%以下であってもよく、1%以下であってもよく、0%であってもよい。
【0064】
ここで、本明細書における「ゲル分率(%)」とは、封止層1.0gを樹脂メッシュに入れ、110℃キシレンにて24時間抽出したのち、樹脂メッシュごと取出し、乾燥処理後秤量し、抽出前後の質量比較を行い、残留不溶分の質量%を測定し、これをゲル分率とする。また、封止層が多層構造である場合、多層状態のままで上記測定を行い、得られた測定値を、封止層のゲル分率とする。
【0065】
なお、ゲル分率0%とは、上記残留不溶分が実質的に0であり、封止層の架橋反応が実質的に開始していない状態をいう。具体的には、ゲル分率0%とは、上記残留不溶分が全く存在しない場合、および、精密天秤によって測定した上記残留不溶分の質量%が0.05質量%未満である場合をいう。上記残留不溶分には、樹脂成分以外の顔料成分等は含まないものとする。これらの樹脂成分以外の混在物が、上記試験により残留不溶分に混在している場合には、例えば、予めこれらの混在物の樹脂成分中における含有量を別途測定しておくことで、これらの混在物を除く樹脂成分由来の残留不溶分について本来得られるべきゲル分率を算出できる。
【0066】
第1の架橋方法においては、従来知られている封止材組成物の一般的な架橋処理を行う場合とは異なり、封止材組成物に対する重合開始剤の含有量が、一般的な架橋処理の場合よりも少ない特定の範囲の含有量となるように重合開始剤を使用する。重合開始剤の添加が少量であるため、封止材組成物のメルトマスフローレート(MFR)が低下するものの、その低下の程度が小さい。封止層に含有される熱可塑性樹脂のMFRは、0.5g/10分以上が好ましい。また、上記MFRは、1g/10分以下が好ましい。具体的には、上記MFRは、0.5g/10分以上1g/10分以下であることが好ましい。
【0067】
なお、熱可塑性樹脂のMFRは、JIS K7210-1:2014のA法に準拠し、190℃、荷重2.16kgにて測定する。ただし、ポリプロピレン系樹脂のMFRは、JIS K7210-1:2014のA法に準拠し、230℃、荷重2.16kgにて測定する。また、封止層が多層構造である場合、多層状態のままで上記測定を行い、得られた測定値を、封止層のMFRとする。
【0068】
封止材組成物中の重合開始剤の含有量は、0.5質量%未満が好ましく、より好ましくは0.2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。上記含有量の下限は、0.02質量%以上が好ましい。上記含有量が少なすぎると、樹脂の弱架橋が進まず、耐熱性が不足する可能性がある。また、上記含有量が多すぎると、成形中にゲルが発生する等して、製膜性が低下し、透明性も低下する可能性がある。
【0069】
重合開始剤は、特に限定されず、公知のものが使用できる。例えば、公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、特許第5482896号公報に記載のラジカル重合剤を挙げることができる。
【0070】
中でも、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。これらは、活性酸素量が5%以上と高く、また重合開始剤の1分間半減期温度が160℃から190℃であり、成形時点で消費され、成形後に残留して余分な後架橋の進行を抑制できる。1分間半減期温度が低すぎると、成形中に重合開始剤を十分に分散させてから架橋反応を進行させることが困難になる可能性がある。
【0071】
第1の架橋方法においては、一般的な架橋処理とは異なり、架橋助剤を実質的に使用しない。架橋助剤とは、例えば、多官能ビニル系モノマーおよび多官能エポキシ系モノマーの少なくともいずれかである。架橋助剤としては、例えば、特許第5482896号公報に記載の架橋助剤を挙げることができる。
【0072】
なお、架橋助剤を実質的に使用しないとは、架橋効果を示さない程度の量が不純物的に含有してもよいことをいう。その量は、例えば、封止材組成物中に0.01質量%未満である。
【0073】
封止材組成物のシート化は、通常の熱可塑性樹脂において通常用いられる成形法、すなわち、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形、回転成形等の各種成形法により行われる。なお、封止層が多層構造である場合のシート化の方法としては、一例として、2種以上の溶融混練押出機による共押出により成形する方法が挙げられる。ただし、いずれの方法においても、成形中に弱架橋反応を促進させるために、成形温度は、樹脂の融点より50℃以上高いことが好ましい。具体的には、成形温度は、150℃以上が好ましく、より好ましくは190℃以上である。また、成形温度は、250℃以下が好ましく、より好ましくは230℃以下である。より具体的には、成形温度は、150℃以上250℃以下が好ましく、より好ましくは190℃以上230℃以下である。上述したように、重合開始剤の添加が少量であるため、MFRが低下するものの、その低下の程度が小さい。このため、溶融成形中に弱架橋を進行させることができる。なお、成形温度は、重合開始剤の1分間半減期温度以上であるので、成形後には重合開始剤はほとんど残留しない。このため、弱架橋はこの成形段階で終了する。
【0074】
(第2の架橋方法)
第2の架橋方法の場合、封止層のゲル分率は、例えば、50%以上であり、60%以上であってもよい。また、上記ゲル分率は、例えば、90%以下であり、80%以下であってもよい。具体的には、上記ゲル分率は、50%以上90%以下であり、60%以上80%以下であってもよい。上記ゲル分率が上記範囲内であることにより、耐熱性を向上できる。
【0075】
第2の架橋方法において、封止材組成物は、通常、架橋剤を含有する。架橋剤としては、封止材に一般的に用いられる架橋剤を使用でき、例えば、有機過酸化物が挙げられる。架橋剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0076】
また、有機過酸化物の分子量は、例えば、200以上が好ましく、220以上がより好ましい。また、上記分子量は、例えば、350以下が好ましく、300以下がより好ましい。具体的には、上記分子量は、200以上350以下が好ましく、220以上300以下がより好ましい。有機過酸化物の分子量が上記範囲内であれば、架橋点を十分に確保する量のラジカルを発生できる。また、有機過酸化物の分解生成物であるアウトガスを抑制できる。
【0077】
また、有機過酸化物の1時間半減期温度は、例えば、110℃以上145℃以下が好ましい。ここで、有機過酸化物の半減期とは、有機過酸化物が熱によって分解してその活性酸素量が分解前の量の半分になるまでの時間である。有機過酸化物の1時間半減期温度が所定の値以上であれば、製膜時に架橋が生じることを抑制できる。また、有機過酸化物の1時間半減期温度が所定の値以下であれば、封止時にラジカルを効果的に発生できる。
【0078】
また、有機過酸化物の活性酸素量は、例えば、5.0%以上10.0%以下が好ましい。有機過酸化物の活性酸素量が所定の値以上であれば、オレフィン系樹脂と架橋助剤とが架橋するために必要なラジカル量を十分に発生できる。また、封止時に封止層を効果的に架橋できる。
【0079】
有機過酸化物としては、例えば、t-アミル-パーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート等のパーオキシカーボネート類;n-ブチル4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレート、エチル3,3-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブチレート、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類;ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル-2,5-ジ(t-パーオキシ)ヘキシン-3等のジアルキルパーオキサイド類;を挙げることができる。
【0080】
封止材組成物中の架橋剤の含有量は、例えば、0.35質量%以上が好ましく、0.4質量%以上であってもよく、0.44質量%以上%以下であってもよい。また、上記架橋剤の含有量は、例えば、0.5質量%以下が好ましく、0.48質量%以下であってもよく、0.47質量%以下であってもよい。具体的には、上記架橋剤の含有量は、0.35質量%以上0.5質量%以下が好ましく、0.4質量%以上0.48質量%以下であってもよく、0.44質量%以上0.47質量%以下であってもよい。架橋剤の含有量が少なすぎると、架橋後において、架橋度が低くなり、ゲル分率が低下し、耐熱性が低下する可能性がある。また、架橋剤の含有量が多すぎると、封止時に架橋剤に起因するアウトガスが発生する可能性がある。このアウトガスは、気泡の原因となる可能性がある。
【0081】
封止材組成物は、架橋助剤を含有できる。架橋助剤としては、封止材に一般的に用いられる架橋助剤を使用できる。例えば、重合性官能基を有する多官能モノマーを挙げることができる。このような架橋助剤を含有させることにより、適度な架橋反応を促進させることができる。その結果、未反応の架橋剤が残留するのを抑制し、未反応の架橋剤によるアウトガスの発生を抑制できる。また、架橋助剤によって架橋反応を促進させることで、封止部材と他の部材との密着性を向上できる。さらに、この架橋助剤がオレフィン系樹脂の結晶性を低下させ、透明性を維持できる。
【0082】
中でも、反応性を向上させる観点から、架橋助剤は、1分子中に2以上の重合性官能基を有するヌレート環含有化合物であることが好ましい。
【0083】
重合性官能基の数は、例えば、1分子中に2個以上が好ましい。また、重合性官能基の数は、例えば、1分子中に6個以下が好ましく、1分子中に3個以下がより好ましい。具体的には、重合性官能基の数は、1分子中に2個以上6個以下であることが好ましく、1分子中に2個以上3個以下であることがより好ましい。重合性官能基の数が少なすぎると、架橋密度を十分に上げることができない可能性がある。一方、重合性官能基の数が多すぎると、架橋処理後の封止材組成物が脆くなる等、封止部材の物性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0084】
重合性官能基としては、ベース樹脂であるオレフィン系樹脂と反応し、架橋構造を付与できるものであれば特に限定されないが、中でも、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、アリル基等の炭素-炭素二重結合を有する基や、エポキシ基等が好ましい。
【0085】
架橋助剤としては、具体的には、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート等のポリアリル化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート等のポリ(メタ)アクリロキシ化合物;二重結合とエポキシ基を含む、グリシジルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、エポキシ基を2つ以上含有する、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;等を挙げることができる。架橋助剤は、1種単独でもよく、2種以上を組み合せてもよい。
【0086】
中でも、架橋助剤としては、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)を使用することが好ましい。トリアリルイソシアヌレート(TAIC)は、直鎖状低密度ポリエチレンに対する相溶性が良好で、架橋によって結晶性を低下させ、透明性を維持できる。
【0087】
封止材組成物中の架橋助剤の含有量は、例えば、0.4質量%以上が好ましく、0.45質量%以上であってもよく、0.5質量%以上であってもよい。また、上記架橋助剤の含有量は、例えば、0.8質量%以下が好ましく、0.7質量%以下であってもよく、0.6質量%以下であってもよい。具体的には、上記架橋助剤の含有量は、0.4質量%以上0.8質量%以下が好ましく、0.45質量%以上0.7質量%以下であってもよく、0.5質量%以上0.6質量%以下であってもよい。架橋助剤の含有量が上記範囲内であれば、適度な架橋反応を促進させることができる。また、架橋助剤の含有量が多すぎると、架橋助剤がブリードアウトする可能性がある。
【0088】
第2の架橋方法において、封止材組成物は、実質的な架橋を生じさせずに製膜する。封止材組成物のシート化の方法は、第1の架橋方法と同様である。成形温度は、使用する架橋剤の1時間半減期温度に応じて、製膜中に架橋が開始しない温度、すなわち、封止材組成物のゲル分率を0%に維持できる温度であればよい。成形温度は、例えば、80℃以上100℃以下である。
【0089】
なお、架橋処理は、例えば、封止時の高温加熱処理によって完了させる。
【0090】
(i-3)添加剤
封止層は、上記熱可塑性樹脂の他に、酸化防止剤、光安定剤等の添加剤が添加されていてもよい。
【0091】
(ii)封止層の構造
本開示における封止層は、単一の樹脂層で構成された単層構造であってもよく、複数の樹脂層が積層された多層構造であってもよい。図5(a)において、封止層60は、単一の樹脂層で構成された単層構造である。図4(a)~(b)において、封止層60は、複数の樹脂層が積層された多層構造である。中でも、封止層は、単層構造、2層構造、3層構造のいずれかであることが好ましい。
【0092】
封止層が、コア層と、コア層のLED基板側に配置されたスキン層とを有する2層構造である場合、スキン層とコア層との膜厚比(スキン層:コア層)は、1:0.1~1:10が好ましく、より好ましくは1:0.5~1:6である。
【0093】
また、封止層が、コア層と、コア層の両面に配置されたスキン層とを有する3層構造である場合、スキン層とコア層との膜厚比(スキン層:コア層:スキン層)は、1:0.5:1~1:10:1が好ましく、より好ましくは1:2:1~1:8:1である。
【0094】
封止層が多層構造である場合、コア層およびスキン層は、密度範囲、融点等が異なる上記熱可塑性樹脂をベース樹脂として有することが好ましい。コア層で上記ヘーズを担保しつつ、スキン層でLED基板に対する密着性やモールディング性を担保することが容易となるからである。
【0095】
上記多層構造の場合、上記多層構造においてLED基板側に位置するスキン層に、通常高価である密着性やLED素子等の隙間に入り込めるモールディング性が良好な材料を用いることが可能となる。上記多層構造において、LED基板側に配置されるスキン層を構成する材料としては、密着性が高く、かつモールディング性が高いものであれば特に限定されないが、上記熱可塑性樹脂の場合、例えば、上述したシラン共重合体等を用いることが好ましい。また、上記熱可塑性樹脂の場合、上記材料は、上記オレフィン系樹脂とシランカップリング剤とを含有することも好ましい。なお、この層には、酸化防止剤、光安定剤等の添加剤が添加されていてもよい。
【0096】
(iii)好ましい封止層
(封止層の第1態様)
本開示における封止層は、コア層と、少なくとも一方の最表面に配置されたスキン層と、を含む複数の樹脂層によって構成される多層構造であることが好ましい。コア層は、密度0.870g/cm以上0.930g/cm以下のポリエチレン系樹脂をベース樹脂とすることが好ましい。スキン層は、密度0.870g/cm以上0.910g/cm以下であって、コア層のベース樹脂よりも低密度のポリエチレン系樹脂をベース樹脂とすることが好ましい。
【0097】
コア層のベース樹脂としては、低密度ポリエチレン系樹脂(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン系樹脂(LLDPE)、またはメタロセン系直鎖低密度ポリエチレン系樹脂(M-LLDPE)を好ましく用いることができる。中でも、長期信頼性の観点から、低密度ポリエチレン系樹脂(LDPE)をコア層のベース樹脂として特に好ましく用いることができる。また、上述したように、バイオマスポリエチレンを用いてもよい。
【0098】
上記コア層のベース樹脂として用いるポリエチレン系樹脂の密度は、0.870g/cm以上0.930g/cm以下が好ましく、より好ましくは0.870g/cm以上0.910g/cm以下である。コア層のベース樹脂の密度が上記範囲であることにより、封止部材のヘーズを所定の範囲に調整しやすいからである。
【0099】
上記コア層のベース樹脂として用いるポリエチレン系樹脂の融点は、上述の熱可塑性樹脂の融点と同様である。上記融点が上記範囲であることにより、封止部材の耐熱性とモールディング特性とを、好ましい範囲内に保持できる。
【0100】
なお、コア層にポリプロピレン等の高融点の樹脂を添加することによって、封止層の融点を165℃程度にまで高めることが可能である。この場合、ポリプロピレンは、コア層の全樹脂成分に対して5質量%以上40質量%以下含有されていることが好ましい。
【0101】
上記コア層に含有させるポリプロピレンは、ホモポリプロピレンであることが好ましい。以下、ホモポリプロピレンをホモPPと称する場合がある。ホモPPは、ポリプロピレン単体のみからなる重合体であり結晶性が高いため、ブロックPPやランダムPPと比較して、更に高い剛性を有する。これをコア層への添加樹脂として用いることにより、封止部材の寸法安定性を高めることができる。また、コア層への添加樹脂として用いるホモPPのメルトマスフローレート(MFR)は、5g/10分以上125g/10分以下であることが好ましい。上記MFRが小さすぎると、分子量が大きくなり剛性が高くなりすぎて、好ましい十分な柔軟性が担保しにくくなる。また、上記MFRが大きすぎると、加熱時の流動性が十分に抑制されず、封止部材に耐熱性および寸法安定性を十分に付与できないおそれがある。なお、ホモPPのMFRは、JIS K7210-1:2014のA法に準拠し、230℃、荷重2.16kgにて測定する。
【0102】
上記コア層のベース樹脂として用いるポリエチレン系樹脂のムーニー粘度は、上述の熱可塑性樹脂のムーニー粘度と同様である。
【0103】
上記コア層の全樹脂成分に対する上記ベース樹脂の含有量は、70質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上である。また、上記ベース樹脂の含有量は、99質量%以下が好ましい。具体的には、上記ベース樹脂の含有量は、70質量%以上99質量%以下が好ましく、より好ましくは90質量%以上99質量%以下である。上記コア層は、上記範囲内でベース樹脂を含む限りにおいて、他の樹脂を含んでいてもよい。
【0104】
スキン層のベース樹脂としては、コア層と同様に、低密度ポリエチレン系樹脂(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン系樹脂(LLDPE)、またはメタロセン系直鎖低密度ポリエチレン系樹脂(M-LLDPE)を好ましく用いることができる。中でも、モールディング特性の観点から、メタロセン系直鎖低密度ポリエチレン系樹脂(M-LLDPE)をスキン層として特に好ましく用いることができる。また、上述したように、バイオマスポリエチレンを用いてもよい。
【0105】
上記スキン層のベース樹脂として用いる上記ポリエチレン系樹脂の密度は、0.870g/cm以上0.910g/cm以下が好ましい。スキン層のベース樹脂の密度が上記範囲内であることにより、封止部材の密着性を好ましい範囲に保持することができる。
【0106】
上記スキン層のベース樹脂として用いる上記のポリエチレン系樹脂の融点は、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましい。また、上記融点は、125℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましい。具体的には、上記融点は、50℃以上125℃以下が好ましく、55℃以上95℃以下がより好ましい。上記融点が上記範囲内であることにより、封止部材の密着性を更に向上できる。
【0107】
上記スキン層のベース樹脂として用いるポリエチレン系樹脂のムーニー粘度は、上述の熱可塑性樹脂のムーニー粘度と同様である。
【0108】
上記スキン層の全樹脂成分に対する上記ベース樹脂の含有量は、60質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上である。また、上記ベース樹脂の含有量は、99質量%以下が好ましい。具体的には、上記ベース樹脂の含有量は、60質量%以上99質量%以下が好ましく、より好ましくは90質量%以上99質量%以下である。上記スキン層は、上記範囲内でベース樹脂を含む限りにおいて、他の樹脂を含んでいてもよい。
【0109】
封止層を構成する全ての樹脂層には、α-オレフィンとエチレン性不飽和シラン化合物とをコモノマーとして共重合してなるシラン共重合体を、必要に応じて、一定量含有させることがより好ましい。他の部材への封止部材の接着性を向上させることができる。
【0110】
シラン共重合体は、例えば、特開2003-46105号公報に記載されているシラン共重合体を挙げることができる。上記シラン共重合体を封止層の成分として使用することにより、強度、耐久性等に優れ、且つ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、その他の諸特性に優れ、更に、封止部材を配置する際の加熱圧着等の製造条件に影響を受けることなく極めて優れた熱融着性を有し、安定的に、低コストで封止部材を得ることができる。
【0111】
シラン共重合体としては、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、および、グラフト共重合体のいずれであっても好ましく使用できるが、グラフト共重合体であることがより好ましく、重合用ポリエチレンを主鎖とし、エチレン性不飽和シラン化合物が側鎖として重合したグラフト共重合体が更に好ましい。このようなグラフト共重合体は、接着力に寄与するシラノール基の自由度が高くなるため、封止部材の接着性を向上できる。
【0112】
α-オレフィンとエチレン性不飽和シラン化合物との共重合体を構成する際のエチレン性不飽和シラン化合物の含有量としては、全共重合体質量に対して、例えば、0.001質量%以上が好ましく、より好ましくは0.01質量%以上、特に好ましくは0.05質量%以上である。また、上記エチレン性不飽和シラン化合物の含有量は、例えば、15質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。具体的には、上記エチレン性不飽和シラン化合物の含有量は、0.001質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは0.01質量%以上10質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以上5質量%以下である。α-オレフィンとエチレン性不飽和シラン化合物との共重合体を構成するエチレン性不飽和シラン化合物の含有量が多い場合には、機械的強度、および耐熱性等に優れるが、含有量が過度になると、引っ張り伸び、および熱融着性等に劣る傾向にある。
【0113】
上記シラン共重合体の全樹脂成分に対する含有量は、上記コア層においては、0質量%以上20質量%以下、上記スキン層においては、5質量%以上40質量%以下であることが好ましい。特にスキン層には、5質量%以上のシラン共重合体が含有されていることがより好ましい。なお、上記のシラン共重合体におけるシラン変性量は、0.1質量%以上2.0質量%以下程度であることが好ましい。上記の好ましいシラン共重合体の含有量範囲は、上記シラン変性量がこの範囲内であることを前提としており、この変性量の変動に応じて適宜微調整することが望ましい。
【0114】
封止層を構成する全ての樹脂層には、酸化防止剤、光安定剤等の添加剤が添加されていてもよい。また、適宜、密着性向上剤を添加することができる。密着性向上剤の添加により、他の部材との密着耐久性をより高められる。密着性向上剤としては、公知のシランカップリング剤を用いることができる。中でも、ビニル基を有する、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、エポキシ基を有するシランカップリング剤または、メルカプト基を有するシランカップリングを、特に好ましく用いることができる。
【0115】
(封止層の第2態様)
本開示における封止層は、LED基板側の最表面に密着層を有し、密着層は、オレフィン系樹脂とシラン成分とを含有し、架橋剤を含有せず、密着層の全樹脂成分に対するシラン成分の含有量が0.02質量%以上0.15質量%以下であることが好ましい。
【0116】
面発光装置において、封止部材にはLED基板との長期にわたる密着耐久性が求められる。一方、マイクロLEDテレビにおいては、1台当たり、数万から数十万個のLED素子が実装されるが、これらの全てのLED素子の発光不良を、実装の初期段階で完全に防ぐことは事実上不可能に近い。このことから、面発光装置における封止部材は、リワーク性を有することが望ましい。
【0117】
なお、「リワーク」とは、正常なLED素子にダメージを与えずに、封止部材の一部をカットして、LED基板から剥離して引き剥がして、LED基板に実装されているLED素子のうち一部の不良素子のみを交換する作業をいう。また、「リワーク性」とは、封止部材の上記の「リワーク」の作業への適応性、すなわち、同作業時における適度な剥離容易性をいう。
【0118】
本態様においては、封止層が、LED基板側の最表面に密着層を有し、密着層を、ベース樹脂を熱可塑性のオレフィン系樹脂とし、かつ、大半のシラン成分を上記オレフィン系樹脂にグラフト重合されている状態で所定量含むものとした。これにより、封止部材は、面発光装置の使用時におけるLED基板への密着耐久性と、面発光装置の製造段階過程におけるリワーク性とをバランスよく兼ね備えることができる。
【0119】
密着層のベース樹脂の種類および密度は、上記第1態様のスキン層のベース樹脂の種類および密度と同様である。
【0120】
密着層の全樹脂成分に対するシラン成分の含有量は、0.02質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましい。また、上記シラン成分の含有量は、0.15質量%以下が好ましく、0.10質量%以下がより好ましい。具体的には、上記シラン成分の含有量は、0.02質量%以上0.15質量%以下が好ましく、0.03質量%以上0.10質量%以下がより好ましい。上記シラン成分の含有量が少なすぎると、面発光装置の製造過程において初期密着性が不十分となる可能性がある。一方、上記シラン成分の含有量が多すぎると、面発光装置の製造過程におけるリワーク性が不十分となる可能性がある。また、面発光装置の製造前の封止部材の保管中におけるシラン成分の変質が起こりやすく、封止部材の引っ張り伸びや、熱融着性が低下する傾向もある。
【0121】
密着層に含まれるシラン成分の大部分、具体的には、シラン成分中の70質量%以上100質量%以下のシラン成分が、ベース樹脂であるオレフィン系樹脂にグラフト重合している「グラフトシラン成分」であり、また、シラン成分中のオレフィン系樹脂にグラフト重合していない「未反応シラン成分」の割合は、30質量%以下であることが好ましい。シラン成分中の「グラフトシラン成分」の割合が70質量%以上、すなわち、シラン成分中の「未反応シラン成分」の割合が30質量%以下であることにより、面発光装置の製造前の封止部材の使用期限(シェルフライフ)を長期化できる。
【0122】
ここで、「シラン成分」とは、「オレフィン系樹脂の主鎖にグラフトしたアルコキシシランおよびオレフィン系樹脂の主鎖にグラフトしていないアルコキシシラン」をいう。また、「グラフトシラン成分」とは、「オレフィン系樹脂にグラフト重合しているアルコキシシラン成分」をいう。他のシラン成分である「未反応シラン成分」とは、「オレフィン系樹脂にグラフトせずに遊離しているアルコキシシラン成分」をいう。
【0123】
なお、封止層において、グラフトシラン成分の含有量(質量%)は、ICP発光分光分析法や電子線プローブマイクロアナライザ(EPMA)にてSi元素量を定量するとともに、ガスクロマトグラフィーによりグラフトしたアルコキシシラン種を定性することにより、その含有量を測定する。また、未反応シラン成分、すなわち、オレフィン系樹脂中に遊離しているアルコキシシラン成分は、トルエン等の溶媒に浸すことで抽出でき、抽出後に、ICP発光分光分析法他、上記の各分析方法により同様に定量できる。
【0124】
グラフトシラン成分としては、シラン変性ポリオレフィンを用いることができ、シラン変性ポリエチレンを用いることが好ましい。シラン変性ポリエチレンは、例えば、主鎖となる直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)等に、エチレン性不飽和シラン化合物を側鎖としてグラフト重合してなるものである。このようなグラフト共重合体は、接着力に寄与するシラノール基の自由度が高くなる。これにより、封止部材のLED基板に対する密着性および密着耐久性を向上できる。シラン変性ポリエチレンは、例えば、特開2003-46105号公報に記載されているシラン変性ポリエチレンを挙げることができる。
【0125】
シラン変性ポリエチレンのエチレン性不飽和シラン化合物のグラフト量と、密着層の全樹脂成分に対するシラン変性ポリエチレンの添加量を、密着層の全樹脂成分中におけるシラン成分の含有量が所定の範囲内となるように、適宜調整すればよい。上記のグラフト量および添加量の調整については、例えば、国際公開第2019/225761号を参照できる。
【0126】
封止層は、密着層のみからなる単層構造であってもよく、密着層と他の樹脂層とが積層された多層構造であってもよい。多層構造の場合、LED基板側の最表面に密着層が配置される。また、多層構造の場合、封止層は、基材層と、基材層の少なくとも一方の面に配置された密着層とを有することが好ましく、基材層と、基材層の両面に配置された密着層とを有することがより好ましい。
【0127】
基材層は、ベース樹脂としてオレフィン系樹脂を含有することが好ましい。中でも、基材層に含まれるオレフィン系樹脂は、密着層に含まれるオレフィン系樹脂よりも耐熱性に優れることが好ましい。基材層のベース樹脂の種類、密度および融点は、上記第1態様のコア層のベース樹脂の種類、密度および融点と同様である。
【0128】
基材層において、シラン成分の含有は必須ではない。基材層は、全樹脂成分に対して、0.06質量%以下の割合でシラン成分を含有していてもよい。また、基材層がシラン成分を含有する場合においても、全シラン成分のうち70質量%以上のシラン成分が、グラフトシラン成分であることが好ましい。
【0129】
封止層において、密着層は、架橋剤を含有しない。基材層も、架橋剤を含有しないことが多い。そのため、封止層のゲル分率は0%である。
【0130】
基材層と密着層との膜厚比は、上記第1態様のスキン層とコア層との膜厚比と同様である。
【0131】
封止層が、密着層のみからなる単層構造である場合、封止層の厚さ、つまり密着層の厚さは、例えば、50μm以上である。また、封止層の厚さは、例えば、1000μm以下であり、500μm以下であってもよく、300μm以下であってもよい。具体的には、封止層の厚さは、50μm以上1000μm以下であり、50μm以上500μm以下であってもよく、50μm以上300μm以下であってもよい。また、LED素子が、厚さが10μm以下であり極めて微小である場合、封止層の厚さは、25μm以上100μm以下であってもよい。
【0132】
また、封止層が、基材層と、基材層の少なくとも一方の面に配置された密着層とを有する多層構造である場合、封止層の厚さは、例えば、70μm以上500μm以下である。この場合、密着層の厚さは、例えば、10μm以上100μm以下である。また、基材層の厚さは、例えば、50μm以上300μm以下である。また、LED素子が、厚さが10μm以下であり極めて微小である場合、封止層の厚さは、25μm以上100μm以下であってもよい。また、この場合、密着層の厚さは、5μm以上30μm以下であってもよい。
【0133】
上記厚さが上記範囲内であることにより、LED素子を外部からの衝撃から十分に保護できる。また、モールディング性を発揮しやすい。さらに、封止層の厚さが比較的薄い場合には、封止部材の全光線透過率を高めることができる。
【0134】
封止部材とLED基板との間の密着強度は、3.0N/15mm以上8.0N/15mm以下であってもよい。封止部材の密着性およびリワーク性をバランスよく兼ね備えることができる。
【0135】
封止部材とLED基板との間の密着強度は、下記方法により測定する。まず、面発光装置を、75×50mmのサイズにカットする。次いで、封止部材に、15mm幅で、LED基板の支持基板表面直上まで貫通する態様で、剥離開始箇所のきっかけとなる切り込みを入れてから、剥離試験機(A&D社製のテンシロン万能試験機RTF-1150-H)を用いて、剥離速度50mm/minにて垂直剥離試験を行い、密着強度を測定する。
【0136】
また、封止層の製膜工程においては、密着層の下記の第1密着性試験によって測定した第1密着強度が、3.0N/15mm以上8.0N/15mm以下となるように、オレフィン系樹脂に対するシラン成分の含有量を調整する試験工程を行うことが好ましい。また、封止層の製膜工程においては、密着層の下記の第1密着性試験によって測定した第1密着強度が、3.0N/15mm以上8.0N/15mm以下となり、かつ、密着層の下記の第2密着性試験によって測定した第2密着強度が、10.0N/15mm以上20.0N/15mm以下となるように、オレフィン系樹脂に対するシラン成分の含有量を調整する試験工程を行ってもよい。例えば、試験工程で得た封止層の上記の各密着強度の測定結果を、密着層中のシラン成分の含有量の調整にフィードバックし、その後は、同一組成の封止材組成物を用いて封止層の製膜を継続することにより、封止部材のリワーク性を良好に保持できる。
【0137】
<第1密着性試験>
75×50mmのサイズにカットした封止層試料を、ガラスエポキシ板(75mm×50mm×0.05mm)上に密着させて、140℃、10分にて真空加熱ラミネーターを用いてラミネート処理を行い、ガラスエポキシ板上に密着している封止層試料に、15mm幅で、ガラスエポキシ板表面直上まで貫通する態様で、剥離開始箇所のきっかけとなる切り込みを入れてから、剥離試験機(A&D社製のテンシロン万能試験機RTF-1150-H)を用いて剥離速度50mm/minにて垂直剥離試験を行い、第1密着強度を測定する。
【0138】
<第2密着性試験>
75×50mmのサイズにカットした封止層試料を、ガラスエポキシ板(75mm×50mm×0.05mm)上に密着させて、140℃、10分にて真空加熱ラミネーターを用いてラミネート処理を行い、さらに、その後、150℃、15分にて真空加熱ラミネーターを用いてキュア処理を行い、ガラスエポキシ板上に密着している封止層試料に、15mm幅で、ガラスエポキシ板表面直上まで貫通する態様で、剥離開始箇所のきっかけとなる切り込みを入れてから、剥離試験機(A&D社製のテンシロン万能試験機RTF-1150-H)を用いて剥離速度50mm/minにて垂直剥離試験を行い、第2密着強度を測定する。
【0139】
(iv)封止層の厚さ
封止層の厚さは、LED素子の厚さより厚いことが好ましい。具体的には、封止層の厚さは、50μm以上が好ましく、より好ましくは80μm以上であり、特に好ましくは200μm以上である。一方、封止層の厚さは、例えば、800μm以下が好ましく、より好ましくは750μm以下であり、特に好ましくは700μm以下である。封止層の厚さが薄すぎると、封止後にLED素子が露出する可能性や、LED素子や反射部による凹凸が封止層によって均されず、封止部材表面に表れてしまう可能性がある。また、封止層の厚さが厚すぎると、薄型化が困難になる可能性がある。
【0140】
なお、本明細書における「厚さ」は、マイクロメートルオーダーのサイズを測定可能な公知の測定方法を用いて測定する。例えば、封止部材の断面サンプルを作製し、断面の光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡(SEM)による観察像を用いて、厚さを測定できる。接触式膜厚測定装置を使用することもできる。接触式膜厚測定装置としては、例えば、ミツトヨ社製シックネスゲージ547-301が挙げられる。「大きさ」等のサイズの測定についても同様である。
【0141】
(v)封止層の形成方法
本開示における封止層は、上記熱可塑性樹脂およびその他成分を含有する封止材組成物から構成される封止材シートを用いて形成することができる。上記封止材シートは、封止材組成物を、従来公知の方法で成型加工してシート状としたものである。
【0142】
封止層が多層構造の場合、コア層用、スキン層用の各封止材組成物により、所定の厚さで、コア層とコア層の一方の面に配置されたスキン層とを有する2層構造の多層フィルムを成形することにより、例えば図4(a)に示すように、コア層61およびスキン層62の2層構造の封止層60を形成できる。または、コア層の両面にスキン層が配置された3層構造の多層フィルムを成形することにより、例えば図4(b)に示すように、スキン層62、コア層61およびスキン層62の3層構造の封止層60を形成できる。
【0143】
(b)反り防止層
本開示における封止部材においては、封止層のLED基板とは反対の面に反り防止層が配置されていてもよい。反り防止層の線膨張係数は、-15×10-6/℃以上10×10-6/℃以下である。なお、本明細書において、線膨張係数が所定の範囲内である層を反り防止層と称する。
【0144】
一般に、面発光装置では、例えば、封止部材とLED基板とを接合するに際し、熱圧着等の手段が用いられた場合、その後の冷却時に、LED基板と封止部材との線膨張係数の相違に起因する反りが生じる場合がある。また、面発光装置が極端な高温もしくは低温で用いられた場合、LED基板と封止部材との線膨張係数の相違に起因する反りが生じる場合がある。
【0145】
反り防止層の線膨張係数が上記範囲内であることにより、反りを抑制できる。これは、以下の理由による。
【0146】
すなわち、面発光装置を製造する場合、封止部材とLED基板とを熱圧着する工程を有してもよいが、熱圧着後の冷却時に封止部材がLED基板より大きく収縮する挙動をとる。この際、封止部材において、封止層のLED基板とは反対の面に、線膨張係数の小さい反反り防止層が配置されている場合には、封止層側の収縮の程度を小さくすることが可能となる。その結果、反りの発生を抑えることが可能となる。
【0147】
また、面発光装置では、例えば、面発光装置が極端な高温に長時間用いられた場合、LED基板と封止部材との間に気泡が生じてしまう場合がある。これは、加熱により、LED基板から発生するガスに起因する場合や、LED基板において支持基板上に反射膜等を形成した際に支持基板と反射膜等との間にエア噛み等により存在する空気が界面に沿ってにじみ出る等の原因により発生する。封止部材に封止されたLED素子は、封止部材とLED素子の発光面が直接接合され、界面での屈折率差が小さくなる。そのため、封止部材に封止されたLED素子は、封止されていないLED素子に比べ、光取り出し効率が向上する。しかし、上記のような気泡が存在すると、光取り出し効率の向上が得られないことがある。
【0148】
これに対し、反り防止層が配置されている場合には、気泡が発生する部位において、気泡発生の際に生じる封止部材の変形を抑えることが可能となる。これにより、封止部材とLED基板との間の気泡の発生を抑制することが可能となる。特に、反り防止層が、所定の弾性率を有し、所定の融点を有する場合には、効果的に気泡の発生を抑制できる。よって、光取り出し効率を向上させ、面発光装置の発光効率を高めることができる。
【0149】
(i)反り防止層の特性
(i-1)線膨張係数
反り防止層の線膨張係数は、-15×10-6/℃以上10×10-6/℃以下である。線膨張係数の下限値は、-10×10-6/℃以上であることが好ましい。一方、線膨張係数の上限値は、5×10-6/℃以下であることが好ましく、特に0以下であることが好ましい。すなわち、-10×10-6/℃以上5×10-6/℃以下であることが好ましく、特に-10×10-6/℃以上0×10-6/℃以下であることが好ましい。一方、用いる材料等を考慮すると、通常、反り防止層の線膨張係数は、-10×10-6/℃以上5×10-6/℃以下となる。上記線膨張係数が小さすぎると、逆ぞりの原因となる可能性がある。一方、反り防止層の線膨張係数が大きすぎると、反り防止効果が不足する可能性がある。
【0150】
線膨張係数の測定は、以下の方法により行われる。5mm×20mmにカットしたシートについて、JIS K7197:2012に準拠して、昇温後、室温までの降温時の寸法変化を測定し、100℃から25℃での線膨張係数を平均して算出する。ここでの線膨張係数は、収縮時には正の値、膨張時には負の値となる。線膨張係数の測定は、以下の測定装置および測定条件により行う。
・測定装置:セイコーインスツルメンツ社製の熱機械的分析装置「TMA/SS-6000」
・定荷重引張モード:0.1mN
・測定温度範囲:-50℃以上160℃以下
・線膨張係数算出温度範囲:25℃以上100℃以下
【0151】
(i-2)弾性率
反り防止層の弾性率は、500MPa以上が好ましく、中でも1000Mpa以上が好ましく、特に4000Mpa以上が好ましい。上記弾性率が低すぎると、気泡発生の抑止効果や、反り防止効果が低減する可能性がある。なお、通常に用いられる材料を考慮すると、上記弾性率は、5500MPa以下となる。
【0152】
弾性率の測定は、以下に示す引張測定により行われる。
<測定方法>
・測定装置:インストロン社製の万能材料試験機「5565」
・ロードセル:1kN
・試料幅:10mm
・チャック間距離:50mm
・速度:300mm/min
【0153】
(i-3)透明性
反り防止層のヘーズは、40%以下が好ましく、中でも20%以下が好ましく、特に10%以下が好ましい。上記ヘーズが上記範囲であれば、輝度の面内均一性を向上できる。なお、ヘーズが高すぎると、光が封止部材内部で散乱されるうちに吸収され、輝度が低下する可能性がある。ヘーズの測定方法は、上記封止部材のヘーズの測定方法と同様である。
【0154】
反り防止層の全光線透過率は、80%以上が好ましく、特に90%以上が好ましい。このように全光線透過率が高いことにより、面発光装置の輝度の低下を抑制できる。反り防止層の全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に準拠して測定する。具体的には、上記全光線透過率は、村上色彩技術研究所製のヘーズメーターHM―150を用いて測定できる。
【0155】
(i-4)融点
反り防止層の融点は、140℃以上が好ましく、特に260℃以上が好ましい。なお、通常用いられる材料等を考慮すると、上記融点は、350℃以下である。反り防止層が上記融点を有することにより、面発光装置が高温環境下で長時間用いられた場合においても、効果的に気泡の発生を抑制できる。反り防止層の融点は、JIS K7121:2012のプラスチックの転移温度測定方法に準拠し、示差走査熱量分析(DSC)により測定する。
【0156】
(ii)反り防止層の厚さ
反り防止層の厚さは、35μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。また、上記反り防止層の厚さは、188μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、125μm以下がさらに好ましい。具体的には、上記反り防止層の厚さは、35μm以上188μm以下が好ましく、中でも50μm以上150μm以下が好ましく、特に100μm以上125μm以下が好ましい。上記厚さが上記範囲内であれば、反り防止効果、および気泡発生の抑止効果を得ることが可能である。また、面発光装置のコンパクト化の妨げとならない。
【0157】
(iii)反り防止層の材料
反り防止層を構成する材料としては、上記特性を有するものであれば特に限定されず、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、セルロース類、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂を挙げることができる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン(PP)を挙げることができる。ポリエステルとしては、例えば、ポリテトラエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)を挙げることができる。セルロース類としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)を挙げることができる。中でもPPおよびPETが、汎用性等の観点から好ましい。
【0158】
(iv)その他
本開示において、上記反り防止層と上記封止層とは、密着していることが好ましい。反り防止効果がより効率的に発揮できるからである。本明細書において、「反り防止層と封止層とが密着している」とは、両者を取り出した際に自重で剥離しない状態をいう。具体的には、反り防止層と封止層との間の密着強度が1N以上であることが好ましい。密着強度の測定方法としては、JIS K6854-2:1999に準拠して、以下の方法を用いることができる。
【0159】
<測定方法>
反り防止層に封止層が密着している封止部材を25mm幅に切り出し、剥離試験機(A&D社製のテンシロン万能試験機「RTF-1150-H」)を用いて、剥離速度300mm/minにて180度剥離試験を行い、反り防止層と封止層との間の密着強度を測定する。
【0160】
上記反り防止層と上記封止層とを密着させるためには、両者を、接着層を介して配置する方法や、熱圧着することにより溶融させて密着させる方法等を挙げることができる。
【0161】
(3)封止部材の形状
本開示において、封止部材はLED基板とは反対の面に凹凸パターンを有していてもよい。例えば図7において、封止部材6は、LED基板5とは反対の面に凹凸パターン6pを有する。封止部材がLED基板とは反対の面に凹凸パターンを有することにより、LED素子から出射された光を拡散透過することができる。これにより、輝度の面内均一性をより向上できるとともに、面発光装置全体の輝度を向上できる。
【0162】
凹凸パターンにおいて、凸部のサイズ、凸部のピッチ、凹部の深さ、凸部および凹部の平面視形状、凸部および凹部の断面形状等としては、LED素子からの光を拡散透過できれば特に限定されない。
【0163】
また、凹凸パターンにおいて、凸部および凹部は、規則的に配置されていてもよく、不規則に配置されていてもよい。
【0164】
封止部材のLED基板とは反対の面に凹凸パターンを形成する方法としては、特に限定されず、一般的な方法を適用できる。具体的には、封止部材表面を直接切削する方法、硬化性樹脂または溶融した熱可塑性樹脂を含む層に型押しする方法、粒子を含有させる方法が挙げられる。
【0165】
また、封止部材が、複数の層が積層された多層構造である場合であって、封止部材において、隣接する層の屈折率差が0.01以上である場合、隣接する層の界面は平坦であることが好ましい。隣接する層の界面が平坦でない場合、隣接する層の界面で光が屈折され、散乱と同様の影響を生じることがある。例えば図4(a)、(b)において、コア層61とスキン層62との界面は平坦である。ただし、図8に例示するように、隣接する層の界面(図8においては、コア層61およびスキン層62の界面)が、LED素子3を中心としたレンズ状となる場合は、光の直進性を妨げないので、この限りではない。
【0166】
一方、封止部材が、複数の層が積層された多層構造である場合であって、封止部材において、隣接する層の屈折率差が0.01よりも小さい場合、光学的な影響が小さいため、隣接する層の界面は、平担であってもよく、平坦でなくてもよく、またはその両方が混在していてもよい。
【0167】
2.LED基板
本開示におけるLED基板は、支持基板と、上記支持基板の一方の面側に配置された複数のLED素子と、上記LED素子の上記支持基板とは反対の面側に配置された反射層とを有する。
【0168】
(1)LED素子
LED素子は、支持基板の一方の面側に配置され、光源として機能する。LED素子としては、例えば面発光装置とした場合に白色光を照射できれば特に限定されず、例えば、白色、青色、紫外線もしくは赤外線等を発光できるLED素子を挙げることができる。
【0169】
LED素子は、例えばチップ状のLED素子である。LED素子の形態は、例えば、発光部(LEDチップとも称する。)そのものであってもよく、表面実装型やチップオンボード型等のパッケージLED(チップLEDとも称する。)であってもよい。パッケージLEDは、例えば、発光部と、発光部を覆い、樹脂を含有する保護部とを有することができる。具体的には、LED素子が発光部そのものである場合、LED素子としては、例えば青色LED素子、紫外線LED素子または赤外線LED素子を用いることができる。また、LED素子がパッケージLEDである場合、LED素子としては、例えば白色LED素子を用いることができる。
【0170】
本開示における面発光装置が、LED素子と後述の波長変換部材とを組み合わせて白色光を照射する場合、LED素子は、青色LED素子、紫外線LED素子、または赤外線LED素子であることが好ましい。青色LED素子は、例えば黄色蛍光体と組み合わせる、あるいは赤色蛍光体および緑色蛍光体と組み合わせることにより、白色光を生成できる。また、紫外LED素子は、例えば赤色蛍光体、緑色蛍光体および青色蛍光体と組み合わせることにより、白色光を生成できる。中でも、LED素子が青色LED素子であることが好ましい。本開示における面発光装置において、輝度の高い白色光を照射できるからである。
【0171】
また、LED素子が白色LED素子である場合、白色LED素子は、白色LED素子の発光方式等により適宜選択される。白色LED素子の発光方式としては、例えば、赤色LEDと緑色LEDと青色LEDとの組み合わせ、青色LEDと赤色蛍光体と緑色蛍光体との組み合わせ、青色LEDと黄色蛍光体との組み合わせ、紫外線LEDと赤色蛍光体と緑色蛍光体と青色蛍光体との組み合わせ等を挙げることができる。
【0172】
そのため、白色LED素子としては、例えば、赤色LED発光部と緑色LED発光部と青色LED発光部とを有していてもよく、青色LED発光部と赤色蛍光体および緑色蛍光体を含有する保護部とを有していてもよく、青色LED発光部と黄色蛍光体を含有する保護部とを有していてもよく、紫外LED発光部と赤色蛍光体、緑色蛍光体および青色蛍光体を含有する保護部とを有していてもよい。
【0173】
中でも、白色LED素子は、青色LED発光部と赤色蛍光体および緑色蛍光体を含有する保護部とを有する、青色LED発光部と黄色蛍光体を含有する保護部とを有する、あるいは、紫外LED発光部と赤色蛍光体、緑色蛍光体および青色蛍光体を含有する保護部とを有することが好ましい。
【0174】
これらの中でも、白色LED素子は、青色LED発光部と赤色蛍光体および緑色蛍光体を含有する保護部とを有する、あるいは、青色LED発光部と黄色蛍光体を含有する保護部とを有することが好ましい。本開示における面発光装置において、輝度の高い白色光を照射できるからである。
【0175】
LED素子の構造は、一般的なLED素子と同様である。
【0176】
LED素子は、通常、支持基板の一方の面側に等間隔で配置される。LED素子の配置は、本開示における面発光装置の用途および大きさや、LED素子のサイズ等に応じて適宜選択される。また、LED素子の配置密度も、本開示における面発光装置の用途および大きさや、LED素子のサイズ等に応じて適宜選択される。
【0177】
LED素子のサイズ(チップサイズ)は、一般的なチップサイズであるが、中でも、ミニLEDと呼ばれるチップサイズであることが好ましい。LED素子のサイズは、例えば、数百マイクロメートル角であってもよく、数十マイクロメートル角であってもよい。具体的には、LED素子のサイズは、100μm角以上2000μm角以下である。LED素子のサイズが小さいことにより、LED素子を高密度で配置する、すなわちLED素子間の間隔(ピッチ)を小さくすることができ、LED基板および拡散部材の距離を短くする、つまり封止部材の厚さを薄くできるからである。これにより、薄型化および軽量化を図ることができる。
【0178】
(2)反射層
本開示における反射層は、LED素子の支持基板とは反対の面側に配置される。反射層は、入射する光の一部を反射し、一部を透過する。LED素子の上面から出射した光の一部が反射層で反射し、LED素子へ戻り、LED素子の側面から出射する。その結果、LED素子の上面から出射する光の量を低減させ、LED素子の直上の輝度を低下させ、輝度ムラを抑制する。
【0179】
反射層は、公知のLED基板に用いられるものと同様である。反射層としては、金属膜、誘電体多層膜、分布ブラッグ反射(DBR)膜等が挙げられる。また、反射層には、LED素子から出射する光を吸収しにくい材料を用いることが好ましい。
【0180】
中でも、反射層は、誘電体多層膜であることが好ましい。誘電体多層膜としては、屈折率の異なる無機層が交互に積層された無機化合物の多層膜が挙げられる。無機化合物の多層膜としては、例えば、後述の第二の拡散部材の第2層に用いられる無機化合物の多層膜を挙げることができる。
【0181】
反射層の反射率は、LED素子のピーク波長に対して、20%以上95%以下であることが好ましい。上記反射率が低すぎると、LED素子の上面から出射する光の量が十分に低下しないため、十分に輝度ムラを抑制できない可能性がある。また、上記反射率が高すぎると、LED素子の上面から出射する光の量が低下しすぎて、輝度ムラを抑制することが困難になる可能性がある。
【0182】
反射層によって、LED素子が出射する光の全光量の30%以上が、支持基板のLED素子側の面に対して50°未満の仰角で出射されることが好ましい。このような配光特性でLED素子から光が出射するように反射層の反射率を調整することが可能である。
【0183】
(3)支持基板
本開示に用いられる支持基板は、上記のLED素子、反射層および封止部材等を支持する部材である。
【0184】
支持基板は、透明であってもよく、不透明であってもよい。また、支持基板は、フレキシブル性を有していてもよく、剛性を有していてもよい。支持基板の材質は、有機材料であってもよく、無機材料であってもよく、有機材料および無機材料の両方を複合させた複合材料であってもよい。
【0185】
支持基板の材質が有機材料である場合、支持基板としては、樹脂基板を用いることができる。一方、支持基板の材質が無機材料である場合、支持基板としては、セラミック基板、ガラス基板を用いることができる。また、支持基板の材質が複合材料である場合、支持基板としては、ガラスエポキシ基板を用いることができる。また、支持基板として、例えばメタルコア基板を用いることもできる。支持基板としては、印刷により回路が形成された印刷回路基板を用いることもできる。
【0186】
支持基板の厚さは、特に限定されず、フレキシブル性または剛性の有無や、本開示における面発光装置の用途や大きさ等に応じて適宜選択される。
【0187】
(4)その他
本開示におけるLED基板は、上述した支持基板およびLED素子を有していれば特に限定されず、必要な構成を適宜有することができる。このような構成としては、例えば、配線部、端子部、絶縁層、反射部、放熱部材等を挙げることができる。各構成については、公知のLED基板に用いられるものと同様である。
【0188】
配線部は、LED素子と電気的に接続される。配線部は、通常、パターン状に配置される。また、配線部は、支持基板に接着層を介して配置できる。配線部の材料としては、例えば、金属材料や導電性高分子材料等を用いることができる。
【0189】
配線部は、上記LED素子と接合部によって電気的に接続される。接合部の材料としては、例えば、金属や導電性高分子等の導電性材料を有する接合剤やハンダを用いることができる。
【0190】
支持基板のLED素子が配置される面であって、LED素子実装領域以外の領域には、反射部を配置することができる。例えば、封止部材のLED基板とは反対の面側に配置された部材で反射された光を、支持基板の反射部で反射させて、再度、封止部材のLED基板とは反対の面側に配置された部材に入射させることができ、光の利用効率を高めることができる。
【0191】
反射部は、一般的にLED基板に用いられる反射部と同様である。具体的には、反射部としては、金属粒子、無機粒子または顔料と樹脂とを含有する白色樹脂膜や、金属膜、多孔質膜等が挙げられる。反射部の厚さは、所望の反射率が得られる厚さであれば特に限定されず、適宜設定される。
【0192】
LED基板の形成方法は、公知の形成方法と同様である。
【0193】
3.誘電体多層フィルム
本開示における面発光装置においては、上記封止部材の上記LED基板とは反対の面側に誘電体多層フィルムが配置されていることが好ましい。
【0194】
(1)誘電体多層フィルムの特性
LED素子が、青色LED素子または紫外線LED素子である場合、誘電体多層フィルムにおいては、入射角の絶対値が大きくなるにつれて青色光のピーク波長の反射率が大きくなり、0度以上50度以下の入射角における緑色光のピーク波長の反射率が85%以上であり、0度以上50度以下の入射角における赤色光のピーク波長の反射率が80%以上であることが好ましい。
【0195】
入射角の絶対値が大きくなるにつれて青色光のピーク波長の反射率が大きくなる場合においては、青色LED素子または紫外線LED素子から出射された青色光が、誘電体多層フィルムに高入射角で入射すると、誘電体多層フィルムでLED基板側に反射される。そのため、青色LED素子または紫外線LED素子の側面から出射する青色光の一部を、横方向により広げることができる。よって、輝度の面内均一性をより向上できる。
【0196】
また、誘電体多層フィルムの封止部材とは反対の面側に波長変換部材が配置されている場合であって、0度以上50度以下の入射角における緑色光のピーク波長の反射率が85%以上であり、0度以上50度以下の入射角における赤色光のピーク波長の反射率が80%以上である場合において、青色LED素子または紫外線LED素子から出射された青色光が、波長変換部材を透過して緑色光および赤色光に変換された後、反射されて、誘電体多層フィルム側に戻ってきた緑色光および赤色光が、誘電体多層フィルムに0度以上50度以下の比較的低い入射角で入射すると、誘電体多層フィルムで波長変換部材側に再び反射される。そのため、緑色光および赤色光のロスを低減し、緑色光および赤色光の輝度を高めることができる。
【0197】
青色光については、入射角の絶対値が大きくなるにつれて青色光のピーク波長の反射率が大きくなっていればよく、各入射角における反射率は特に限定されない。
【0198】
緑色光については、0度以上50度以下の入射角における緑色光のピーク波長の反射率が、85%以上であり、90%以上であってもよく、95%以上であってもよい。赤色光については、0度以上50度以下の入射角における赤色光のピーク波長の反射率が、80%以上であり、85%以上であってもよく、90%以上であってもよい。緑色光のピーク波長の反射率および赤色光のピーク波長の反射率が高いほど、光のロスを低減して、輝度を向上できる。
【0199】
ここで、青色光とは、波長400nm以上490nm以下の光をいう。緑色光とは、波長491nm以上570nm以下の光をいう。赤色光とは、波長571nm以上800nm以下の光をいう。また、青色光のピーク波長とは、面発光装置において、LED素子が、青色LED素子または紫外線LED素子であり、誘電体多層フィルムの封止部材とは反対の面側に波長変換部材が配置されている場合において、青色光の波長範囲で輝度が最も高い波長を指す。緑色光のピーク波長とは、面発光装置において、LED素子が、青色LED素子または紫外線LED素子であり、誘電体多層フィルムの封止部材とは反対の面側に波長変換部材が配置されている場合において、緑色光の波長範囲で輝度が最も高い波長を指す。赤色光のピーク波長とは、面発光装置において、LED素子が、青色LED素子または紫外線LED素子であり、誘電体多層フィルムの封止部材とは反対の面側に波長変換部材が配置されている場合において、赤色光の波長範囲で輝度が最も高い波長を指す。
【0200】
反射率は、変角光度計や変角分光測色器を用いて測定する。反射率の測定には、例えば、村上色彩技術研究所社製の変角光度計(ゴニオフォトメーター)GP-200や日本分光社製の自動絶対反射率測定システムを用いることができる。
【0201】
(2)誘電体多層フィルムの材料
誘電体多層フィルムとしては、例えば、例えば、屈折率の異なる無機層が交互に積層された無機化合物の多層膜や、屈折率の異なる樹脂層が交互に積層された樹脂の多層膜が挙げられる。
【0202】
(a)無機化合物の多層膜
無機化合物の多層膜は、上述の反射率の入射角依存性を有するものであれば特に限定されない。無機化合物の多層膜としては、後述の第二の拡散部材の第2層に用いられる無機化合物の多層膜に対して、反射率および透過率の入射角依存性が異なること、ならびに、無機層の屈折率および厚さが異なること以外は同様である。
【0203】
(b)樹脂の多層膜
樹脂の多層膜は、上述の反射率の入射角依存性を有するものであれば特に限定されない。樹脂の多層膜としては、後述の第二の拡散部材の第2層に用いられる樹脂の多層膜に対して、反射率および透過率の入射角依存性が異なること、ならびに、樹脂層の屈折率および厚さが異なること以外は同様である。
【0204】
上記の樹脂の多層膜としては、市販の積層フィルムを用いることができ、具体的には、東レ社製のピカサス(登録商標)、3M社製のBLT Film等が挙げられる。
【0205】
(3)誘電体多層フィルムの形状
本開示において、誘電体多層フィルムは、封止部材側の面および封止部材とは反対の面の少なくともいずれに凹凸パターンを有していてもよい。誘電体多層フィルム7は、図9(a)、(b)に示すように、片面のみに凹凸パターン7pを有していてもよく、図9(c)に示すように、両面に凹凸パターン7pを有していてもよい。誘電体多層フィルムが少なくともいずれかの面に凹凸パターンを有することにより、反射率の入射角依存性を調整できると考えられる。
【0206】
凹凸パターンにおいて、凸部のサイズ、凸部のピッチ、凹部の深さ、凸部および凹部の平面視形状、凸部および凹部の断面形状等としては、所望の反射率の入射角依存性が得られれば特に限定されない。また、凹凸パターンは、プリズムやレンチキュラーレンズであってもよい。
【0207】
また、凹凸パターンにおいて、凸部および凹部は、規則的に配置されていてもよく、不規則に配置されていてもよい。
【0208】
誘電体多層フィルムの表面に凹凸パターンを形成する方法としては、特に限定されず、一般的な方法を適用できる。具体的には、誘電体多層フィルム表面を直接切削する方法、硬化性樹脂または溶融した熱可塑性樹脂を含む層に型押しする方法、粒子を含有させる方法が挙げられる。
【0209】
4.波長変換部材
本開示における面発光装置においては、上記誘電体多層フィルムの上記封止部材とは反対の面側に波長変換部材が配置されていてもよい。
【0210】
波長変換部材は、LED素子から出射された光を吸収し、励起光を発光する蛍光体を含有する部材である。波長変換部材は、LED基板と組み合わせることにより、白色光を生成する機能を有する。
【0211】
波長変換部材は、通常、蛍光体および樹脂を含有する波長変換層を少なくとも有する。波長変換部材は、例えば、波長変換層単体であってもよく、透明基材の一方の面側に波長変換層を有する積層体であってもよい。中でも、薄型化の点から、波長変換層単体が好ましい。より好ましくは、シート状の波長変換部材が用いられる。
【0212】
上記蛍光体としては、LED素子からの発光色に応じて適宜選択することができ、例えば、青色蛍光体、緑色蛍光体、赤色蛍光体、黄色蛍光体等を挙げることができる。例えば、LED素子が青色LED素子である場合、蛍光体としては、緑色蛍光体と赤色蛍光体とを用いてもよく、黄色蛍光体を用いてもよい。また、例えば、LED素子が紫外線LED素子である場合、蛍光体としては、赤色蛍光体と緑色蛍光体と青色蛍光体とを用いることができる。
【0213】
蛍光体としては、例えばLEDバックライトの波長変換部材に用いられる蛍光体を採用できる。また、量子ドットを蛍光体として用いることもできる。波長変換層中の蛍光体の含有量は、所望の白色光を生成することができる程度であれば特に限定されず、一般的なLEDバックライトの波長変換部材における蛍光体の含有量と同様である。
【0214】
また、波長変換部材に含まれる樹脂としては、蛍光体を分散させることができれば特に限定されない。上記樹脂としては、一般的なLEDバックライトの波長変換部材に用いられる樹脂と同様であり、例えば、シリコーン系樹脂やエポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。
【0215】
波長変換部材の厚さは、面発光装置に用いた場合に、所望の白色光を生成できる厚さであれば特に限定されず、例えば、10μm以上1000μm以下である。
【0216】
5.拡散部材
本開示における面発光装置においては、上記封止部材と上記誘電体多層フィルムとの間、および、上記誘電体多層フィルムと上記波長変換部材との間の少なくともいずれかに、拡散部材が配置されていてもよい。拡散部材は、上記封止部材と上記誘電体多層フィルムとの間に配置されていてもよく、上記誘電体多層フィルムと上記波長変換部材との間に配置されていてもよく、上記封止部材と上記誘電体多層フィルムとの間、および、上記誘電体多層フィルムと上記波長変換部材との間の両方に配置されていてもよい。
【0217】
拡散部材としては、LED素子から出射された光を拡散させ、面方向に均一に出射させる機能を有する部材であれば特に限定されず、以下の第一の拡散部材、第二の拡散部材、および第三の拡散部材が挙げられる。
【0218】
(1)第一の拡散部材
第一の拡散部材は、通常、少なくとも拡散剤が分散された樹脂層を有する。上記拡散部材は、例えば、拡散剤が分散された樹脂シートであってもよく、透明基材の一方の面に拡散剤が分散された樹脂層を有する積層体であってもよい。中でも、拡散剤が分散された樹脂シートが好ましい。上記樹脂層に含有される樹脂は、拡散剤を分散できれば特に限定されないが、熱可塑性樹脂であることが好ましい。拡散剤を分散させた樹脂シートを用いて拡散部材を形成できるため、平坦性を良好にできる。
【0219】
上記拡散部材に用いられる熱可塑性樹脂としては、光透過度が高ければ特に限定されず、一般に表示装置分野において汎用されているものを用いることができる。
【0220】
上記拡散剤の材質は、LED素子からの光を拡散できれば特に限定されず、例えば、有機材料であってもよく、無機材料であってもよい。拡散剤の材質が有機材料である場合、例えば、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)を挙げることができる。一方、拡散剤の材質が無機材料である場合、例えば、TiO、SiO、Al、シリコンを挙げることができる。
【0221】
拡散剤の屈折率は、LED素子からの光を拡散させることができれば特に限定されないが、例えば、1.4以上2以下である。屈折率は、アッベ屈折計により測定する。拡散剤の形状は、例えば、粒子状を挙げることができる。拡散剤の平均粒径は、例えば、1μm以上100μm以下である。
【0222】
拡散剤が分散された樹脂層中の拡散剤の含有量は、LED素子からの光を拡散させることができれば特に限定されず、例えば、40質量%以上60質量%以下である。
【0223】
(2)第二の拡散部材
第二の拡散部材は、上記LED基板側から順に、第1層と、第2層とをこの順で有する部材であって、上記第1層は、光透過性および光拡散性を有し、上記第2層は、上記第2層の上記第1層側の面に対する光の入射角の絶対値が小さくなるにつれて反射率が大きくなり、上記第2層の上記第1層側の面に対する光の入射角の絶対値が大きくなるにつれて透過率が大きくなる、部材である。本開示においては、上述した拡散部材を有することにより、更なる輝度の面内均一性を向上させつつ、薄型化を図ることが可能である。また、コストおよび消費電力の低減も可能である。
【0224】
以下、第二の拡散部材について図面を参照して説明する。図10は、第二の拡散部材の一例を示す概略断面図である。図10に例示するように、拡散部材11は、第1層12と第2層13とをこの順で有する。第1層12は、光透過性および光拡散性を有しており、第1層12の第2層13側の面とは反対の面12Aから入射した光L1、L2を透過および拡散する。また、第2層13は、第2層13の第1層12側の面13Aに対する光の入射角の絶対値が小さくなるにつれて反射率が大きくなり、第2層13の第1層12側の面13Aに対する光の入射角の絶対値が大きくなるにつれて透過率が大きくなる。そのため、第2層13では、第2層13の第1層12側の面13Aに対して低入射角θ1で入射した光L1を反射させ、第2層13の第1層2側の面13Aに対して高入射角θ2で入射した光L2を透過させることができる。なお、低入射角とは、入射角の絶対値が小さいものをいい、高入射角とは、入射角の絶対値が大きいものをいう。
【0225】
拡散部材11は、第1層12側の面11Aが封止部材6に対向するように配置される。
【0226】
図10に示すように、拡散部材11の第1層12側の面11Aから入射した光を、第1層12で拡散させるとともに、第1層12を透過して拡散した光のうち、第2層13の第1層12側の面13Aに対して低入射角θ1で入射した光L1については、第2層13の第1層12側の面13Aで反射させ、再び第1層12に入射させて拡散させることができる。そして、第1層12を透過して拡散した光のうち、第2層13の第1層12側の面13Aに対して高入射角θ2で入射した光L2については、第2層13を透過させ、拡散部材11の第2層13側の面11Bから出射させることができる。
【0227】
また、第1層および第2層を組み合わせることにより、拡散部材の第1層側の面から入射した光、特に拡散部材の第1層側の面から低入射角で入射した光について、何度も第1層を透過させて拡散させることができるので、拡散部材の第2層側の面から高出射角で出射させることができる。したがって、このような拡散部材を有する面発光装置(特に、直下型方式のLEDバックライト)は、LED素子から発せられる光を発光面全体に拡散させることができ、輝度の面内均一性を更に向上させることができる。
【0228】
また、第1層および第2層を組み合わせることにより、拡散部材の第1層側の面から低入射角で入射した光について、何度も第1層を透過させることができるため、光が拡散部材の第1層側の面から入射してから拡散部材の第2層側の面から出射するまでの光路長を長くすることができる。これにより、LED素子から発せられたのち拡散部材の第2層側の面から出射する光の一部を、LED素子の直上ではなく、LED素子から面内方向に離れた位置から出射させることができるようになる。
【0229】
(a)第1層
第1層は、後述の第2層の一方の面側に配置され、光透過性および光拡散性を有する部材である。第1層が有する光透過性としては、例えば、第1層の全光線透過率が50%以上であることが好ましく、中でも70%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。第1層の全光線透過率が上記範囲であることにより、本開示の面発光装置の輝度を高くできる。
【0230】
なお、第1層の全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に準拠する方法により測定する。
【0231】
第1層の光拡散性としては、例えば、光をランダムに拡散する光拡散性であってもよく、光を主に特定の方向に拡散する光拡散性であってもよい。光を主に特定の方向に拡散する光拡散性は、光を偏向する性質であり、すなわち光の進行方向を変化させる性質である。第1層の光拡散性としては、光をランダムに拡散する光拡散性である場合、例えば、第1層に入射した光の拡散角は、10°以上であり、15°以上であってもよく、20°以上であってもよい。また、第1層に入射した光の拡散角は、例えば、85°以下であり、60°以下であってもよく、50°以下であってもよい。上記拡散角が上記範囲内であることにより、本開示の面発光装置の、輝度の面内均一性を更に向上できる。
【0232】
ここで、拡散角について説明する。図11は、透過光強度分布を例示するグラフであり、拡散角を説明する図である。本明細書においては、拡散部材を構成する第1層の一方の面に光を垂直に入射させて、第1層の他方の面から出射される光の最大透過光強度Imaxの2分の1になる2つの角度の差である半値幅(FWHM)を拡散角αと定義する。
【0233】
なお、拡散角は、変角光度計や変角分光測色器を用いて測定する。拡散角の測定には、例えば、村上色彩技術研究所社製の変角光度計(ゴニオフォトメーター)GP-200等を用いることができる。
【0234】
第1層としては、上述の光透過性および光拡散性を有するものであれば特に限定されず、例えば、透過型回折格子、マイクロレンズアレイ、拡散剤および樹脂を含有する拡散剤含有樹脂膜等が挙げられる。具体的には、第1層が、光を主に特定の方向に拡散する光拡散性を有する場合、透過型回折格子、マイクロレンズアレイを挙げることができる。一方、第1層が、光をランダムに拡散する光拡散性を有する場合、拡散剤含有樹脂膜を挙げることができる。中でも、光拡散性の観点から、透過型回折格子、マイクロレンズアレイが好ましい。なお、透過型回折格子は、透過型の回折光学素子(DOE;Diffractive Optical Elements)とも称される。
【0235】
第1層が透過型回折格子である場合、透過型回折格子としては、上述の光透過性および光拡散性を有するものであれば特に限定されない。透過型回折格子のピッチ等としては、上述の光透過性および光拡散性が得られればよく、適宜調整される。具体的には、LED素子の出力する波長が、赤色、緑色、青色等の単色である場合は、各波長に応じたピッチとすることで、効果的にLED素子からの光を曲げることが可能である。
【0236】
透過型回折格子を構成する材料としては、上述の光透過性および光拡散性を有する透過型回折格子が得られる材料であればよく、一般的に透過型回折格子に用いられるものを採用できる。また、透過型回折格子の形成方法としては、一般的な透過型回折格子の形成方法と同様である。
【0237】
第1層がマイクロレンズアレイである場合、マイクロレンズアレイとしては、上述の光透過性および光拡散性を有するものであれば特に限定されない。マイクロレンズの形状、ピッチ、大きさ等としては、上述の光透過性および光拡散性が得られればよく、適宜調整される。マイクロレンズを構成する材料としては、上述の光透過性および光拡散性を有するマイクロレンズが得られる材料であればよく、一般的にマイクロレンズに用いられるものを採用できる。また、マイクロレンズの形成方法としては、一般的なマイクロレンズの形成方法と同様である。
【0238】
第1層が拡散剤含有樹脂膜である場合、拡散剤含有樹脂膜としては、上述の光透過性および光拡散性を有するものであれば特に限定されない。
【0239】
第1層は、光拡散性を発現することが可能な構造を有するものであればよく、例えば、層全体で光拡散性を発現するものであってもよく、面で光拡散性を発現するものであってもよい。面で光拡散性を発現するものとしては、例えば、レリーフ型回折格子やマイクロレンズアレイが挙げられる。一方、層全体で光拡散性を発現するものとしては、例えば、体積型回折格子や拡散剤含有樹脂膜が挙げられる。第1層および第2層を積層する方法としては、例えば、第1層および第2層を接着層または粘着層を介して貼り合せる方法や、第2層の一方の面に第1層を直接形成する方法等が挙げられる。第2層の一方の面に第1層を直接形成する方法としては、例えば、印刷法、金型による樹脂賦形等が挙げられる。
【0240】
(b)第2層
第2層は、上記第1層の一方の面側に配置され、上記第2層の上記第1層側の面に対する光の入射角の絶対値が小さくなるにつれて反射率が大きくなるような反射率の入射角依存性と、上記第2層の上記第1層側の面に対する光の入射角の絶対値が大きくなるにつれて透過率が大きくなるような透過率の入射角依存性とを有する部材である。
【0241】
第2層は、第2層の第1層側の面に対する光の入射角の絶対値が小さくなるにつれて反射率が大きくなるような反射率の入射角依存性を有する。すなわち、第2層の第1層側の面に対して低入射角で入射する光の反射率は、第2層の第1層側の面に対して高入射角で入射する光の反射率よりも大きくなる。中でも、第2層の第1層側の面に対して低入射角で入射する光の反射率は、大きいことが好ましい。
【0242】
具体的には、第2層の第1層側の面に対して入射角±60°以内で入射する可視光の正反射率が、50%以上100%未満であることが好ましく、中でも80%以上100%未満であることが好ましく、特に90%以上100%未満であることが好ましい。なお、入射角±60°以内のすべての入射角において、可視光の正反射率が上記範囲を満たすことが好ましい。上記正反射率が上記範囲であることにより、本開示の面発光装置の輝度の面内均一性を更に向上できる。
【0243】
また、第2層の第1層側の面に対して入射角±60°以内で入射する可視光の正反射率の平均値は、例えば、80%以上が好ましく、中でも90%以上が好ましい。また、上記正反射率の平均値は、例えば、99%以下が好ましく、中でも97%以下が好ましい。具体的には、上記正反射率の平均値は、80%以上99%以下であることが好ましく、中でも90%以上97%以下であることが好ましい。なお、上記正反射率の平均値とは、各入射角での可視光の正反射率の平均値をいう。上記正反射率の平均値が上記範囲であることにより、本開示における面発光装置の輝度の面内均一性を更に向上できる。
【0244】
また、第2層の第1層側の面に対して入射角0°で入射する(垂直に入射する)可視光の正反射率は、例えば、80%以上100%未満であることが好ましく、中でも90%以上100%未満であることが好ましく、特に95%以上100%未満であることが好ましい。上記正反射率が上記範囲であることにより、本開示の面発光装置の輝度の面内均一性を更に向上できる。
【0245】
なお、「可視光」とは、本明細書では、波長380nm以上波長780nm以下の光を意味する。また、正反射率は、変角光度計や変角分光測色器を用いて測定する。正反射率の測定には、例えば、村上色彩技術研究所社製の変角光度計(ゴニオフォトメーター)GP-200等を用いることができる。
【0246】
第2層は、第2層の第1層側の面に対する光の入射角の絶対値が大きくなるにつれて透過率が大きくなるような透過率の入射角依存性を有する。すなわち、第2層の第1層側の面に対して高入射角で入射する光の透過率は、第2層の第1層側の面に対して低入射角で入射する光の透過率よりも大きくなる。中でも、第2層の第1層側の面に対して高入射角で入射する光の透過率は、大きいことが好ましい。具体的には、第2層の第1層側の面に対して入射角70°以上90°未満で入射する光の全光線透過率が、30%以上であることが好ましく、中でも40%以上であることが好ましく、特に50%以上であることが好ましい。なお、入射角70°以上90°未満のすべての入射角において、全光線透過率が上記範囲を満たすことが好ましい。また、入射角の絶対値が70°以上90°未満の場合に、全光線透過率が上記範囲を満たすことが好ましい。上記全光線透過率が上記範囲であることにより、本開示の面発光装置の、輝度の面内均一性を更に向上できる。
【0247】
なお、第2層の全光線透過率は、例えば、変角光度計や変角分光測色器を用いて、JIS K7361-1:1997に準拠する方法により測定する。全光線透過率の測定には、例えば、日本分光社製の紫外可視近赤外分光光度計 V-7200等を用いることができる。
【0248】
第2層としては、上述した反射率および透過率の入射角依存性を有するものであれば特に限定されず、上述した反射率および透過率の入射角依存性を有する種々の構成を採用できる。第2層としては、例えば、誘電体多層膜や、上記第1層側から順にパターン状の第1反射膜とパターン状の第2反射膜とを有し、第1反射膜の開口部および第2反射膜の開口部が平面視上重ならないように位置し、第1反射膜および第2反射膜が厚さ方向に離れて配置されている反射構造体や、反射型回折格子等が挙げられる。
【0249】
以下、第2層が、誘電体多層膜、反射構造体、または反射型回折格子である場合について説明する。
【0250】
(i)誘電体多層膜
第2層が誘電体多層膜である場合、誘電体多層膜としては、例えば、屈折率の異なる無機層が交互に積層された無機化合物の多層膜や、屈折率の異なる樹脂層が交互に積層された樹脂の多層膜が挙げられる。
【0251】
(無機化合物の多層膜)
誘電体多層膜が、屈折率の異なる無機層が交互に積層された無機化合物の多層膜である場合、無機化合物の多層膜としては、上述した反射率および透過率の入射角依存性を有するものであれば特に限定されない。
【0252】
屈折率が異なる無機層のうち、屈折率が高い高屈折率無機層に含まれる無機化合物としては、例えば、屈折率は1.7以上であり、1.7以上2.5以下であってもよい。このような無機化合物としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化インジウムを主成分とし、酸化チタン、酸化スズ、酸化セリウム等を少量含有させたもの等が挙げられる。
【0253】
また、屈折率が異なる無機層のうち、屈折率が低い低屈折率無機層に含まれる無機化合物としては、例えば、屈折率は1.6以下であり、1.2以上1.6以下であってもよい。このような無機化合物としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が挙げられる。
【0254】
高屈折率無機層および低屈折率無機層の積層数は、上述した反射率および透過率の入射角依存性が得られればよく、適宜調整される。具体的には、高屈折率無機層および低屈折率無機層の総積層数は、4層以上である。また、上記総積層数の上限としては特に限定されないが、積層数が多くなると工程が増えることから、例えば24層以下である。
【0255】
無機化合物の多層膜の厚さは、上述した反射率および透過率の入射角依存性が得られればよく、例えば、0.5μm以上10μm以下である。無機化合物の多層膜の形成方法としては、例えば、CVD法、スパッタリング法、真空蒸着法、または湿式塗工法等により、高屈折率無機層と低屈折率無機層とを交互に積層する方法が挙げられる。
【0256】
(樹脂の多層膜)
誘電体多層膜が、屈折率の異なる樹脂層が交互に積層された樹脂の多層膜である場合、樹脂の多層膜としては、上述した反射率および透過率の入射角依存性を有するものであれば特に限定されない。
【0257】
樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を挙げることができる。中でも、成形性が良好であることから、熱可塑性樹脂が好ましい。
【0258】
樹脂層には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、屈折率調整のためのドープ剤等が添加されていてもよい。
【0259】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、脂環族ポリオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチルサクシネート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン樹脂等のフッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリ乳酸樹脂等を用いることができる。中でも、強度、耐熱性、透明性の観点から、ポリエステルがより好ましい。
【0260】
本明細書において、ポリエステルとは、ジカルボン酸成分骨格とジオール成分骨格との重縮合体であるホモポリエステルや共重合ポリエステルのことをいう。ここで、ホモポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリ-1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンジフェニルレート等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレートは、安価であるため、非常に多岐にわたる用途に用いることができ好ましい。
【0261】
また、本明細書において、共重合ポリエステルとは、次に挙げるジカルボン酸骨格を有する成分とジオール骨格を有する成分とより選ばれる少なくとも3つ以上の成分からなる重縮合体のことと定義される。ジカルボン酸骨格を有する成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4-ジフェニルジカルボン酸、4,4-ジフェニルスルホンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体等が挙げられる。グリコール骨格を有する成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール等が挙げられる。
【0262】
屈折率が異なる樹脂層のうち、屈折率が高い高屈折率樹脂層と屈折率が低い低屈折率樹脂層との面内平均屈折率の差は、0.03以上が好ましく、より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.1以上である。上記面内平均屈折率の差が小さすぎると、十分な反射率が得られない場合がある。
【0263】
また、高屈折率樹脂層の面内平均屈折率と厚さ方向屈折率との差は、0.03以上が好ましく、低屈折率樹脂層の面内平均屈折率と厚さ方向屈折率との差は、0.03以下が好ましい。この場合、入射角が大きくなっても、反射ピークの反射率の低下が起こりにくい。
【0264】
高屈折率樹脂層に用いられる高屈折率樹脂と低屈折率樹脂層に用いられる低屈折率樹脂との好ましい組み合わせとしては、第一に、高屈折率樹脂および低屈折率樹脂のSP値の差の絶対値が、1.0以下であることが好ましい。SP値の差の絶対値が上記範囲であると、層間剥離が生じにくくなる。この場合、高屈折率樹脂および低屈折率樹脂が同一の基本骨格を含むことがより好ましい。ここで、基本骨格とは、樹脂を構成する繰り返し単位のことである。例えば、一方の樹脂がポリエチレンテレフタレートの場合、エチレンテレフタレートが基本骨格である。また例えば、一方の樹脂がポリエチレンの場合、エチレンが基本骨格である。高屈折率樹脂および低屈折率樹脂が同一の基本骨格を含む樹脂であると、さらに層間での剥離が生じにくくなる。
【0265】
高屈折率樹脂層に用いられる高屈折率樹脂と低屈折率層に用いられる低屈折率樹脂との好ましい組み合わせとしては、第二に、高屈折率樹脂および低屈折率樹脂のガラス転移温度の差が、20℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度の差が大きすぎると、高屈折率樹脂層および低屈折率樹脂層の積層フィルムを製膜する際の厚さ均一性が不良となる場合がある。また、上記積層フィルムを成形する際にも、過延伸が発生する場合がある。
【0266】
また、高屈折率樹脂がポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートであり、低屈折率樹脂がスピログリコールを含むポリエステルであることが好ましい。ここで、スピログリコールを含むポリエステルとは、スピログリコールを共重合したコポリエステル、またはホモポリエステル、またはそれらをブレンドしたポリエステルのことをいう。スピログリコールを含むポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度の差が小さいため、成形時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離もしにくいために好ましい。
【0267】
より好ましくは、高屈折率樹脂がポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートであり、低屈折率樹脂がスピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸を含むポリエステルであることが好ましい。低屈折率樹脂がスピログリコールおよびシクロヘキサンジカルボン酸を含むポリエステルであると、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとの面内屈折率の差が大きくなるため、高い反射率が得られやすくなる。また、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度の差が小さく、接着性にも優れるため、成形時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離もしにくい。
【0268】
また、高屈折率樹脂がポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートであり、低屈折率樹脂がシクロヘキサンジメタノールを含むポリエステルであることも好ましい。ここで、シクロヘキサンジメタノールを含むポリエステルとは、シクロヘキサンジメタノールを共重合したコポリエステル、またはホモポリエステル、またはそれらをブレンドしたポリエステルのことをいう。シクロヘキサンジメタノールを含むポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度の差が小さいため、成形時に過延伸になることがなりにくく、かつ層間剥離もしにくいために好ましい。この場合、低屈折率樹脂は、シクロヘキサンジメタノールの共重合量が15mol%以上60mol%以下であるエチレンテレフタレート重縮合体であることがより好ましい。
【0269】
このようにすることにより、高い反射性能を有しながら、特に加熱や経時による光学的特性の変化が小さく、層間での剥離も生じにくくなる。シクロヘキサンジメタノールの共重合量が上記範囲内であるエチレンテレフタレート重縮合体は、ポリエチレンテレフタレートと非常に強く接着する。また、そのシクロヘキサンジメタノール基は幾何異性体としてシス体あるいはトランス体があり、また配座異性体としてイス型あるいはボート型もあるので、ポリエチレンテレフタレートと共延伸しても配向結晶化しにくく、高反射率で、熱履歴による光学特性の変化もさらに少なく、製膜時のやぶれも生じにくい。
【0270】
上記の樹脂の多層膜においては、高屈折率樹脂層と低屈折率樹脂層とが厚さ方向に交互に積層された構造を有している部分が存在していればよい。すなわち、高屈折率樹脂層および低屈折率樹脂層の厚さ方向における配置の序列がランダムな状態ではないことが好ましく、高屈折率樹脂層および低屈折率樹脂層以外の樹脂層の配置の序列については特に限定されるものではない。また、上記の樹脂の多層膜が、高屈折率樹脂層と低屈折率樹脂層と他の樹脂層とを有する場合、それらの配置の順列としては、高屈折率樹脂層をA、低屈折率樹脂層をB、他の樹脂層をCとしたとき、A(BCA)、A(BCBA)、A(BABCBA)等の規則的順列で各層が積層されることがより好ましい。ここで、nは繰り返しの単位数であり、例えばA(BCA)においてn=3の場合、厚さ方向にABCABCABCAの順列で積層されているものを表す。
【0271】
また、高屈折率樹脂層および低屈折率樹脂層の積層数は、上述した反射率および透過率の入射角依存性が得られればよく、適宜調整される。具体的には、高屈折率樹脂層と低屈折率樹脂層とは交互にそれぞれ30層以上積層することができ、それぞれ200層以上積層してもよい。また、高屈折率樹脂層および低屈折率樹脂層の総積層数は、例えば600層以上である。積層数が少なすぎると、十分な反射率が得られなくなる場合がある。また、積層数が上記範囲であることにより、所望の反射率を容易に得ることができる。また、上記総積層数の上限としては特に限定されないが、装置の大型化や層数が多くなりすぎることによる積層精度の低下を考慮すると、例えば1500層以下である。
【0272】
さらに、上記の樹脂の多層膜は、少なくとも片面に厚さ3μm以上のポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを含有する表面層を有することが好ましく、中でも両面に上記表面層を有することが好ましい。また、表面層の厚さは5μm以上であることがより好ましい。上記表面層を有することにより、上記の樹脂の多層膜の表面を保護することができる。
【0273】
上記の樹脂の多層膜の製造方法としては、例えば、共押出法等が挙げられる。具体的には、特開2008-200861号公報に記載の積層フィルムの製造方法を参照することができる。
【0274】
また、上記の樹脂の多層膜としては、市販の積層フィルムを用いることができ、具体的には、東レ社製のピカサス(登録商標)、3M社製のESR等が挙げられる。
【0275】
(ii)反射構造体
反射構造体は、上記第1層側から順にパターン状の第1反射膜とパターン状の第2反射膜とを有し、第1反射膜の開口部および第2反射膜の開口部が平面視上重ならないように位置し、第1反射膜および第2反射膜が厚さ方向に離れて配置されているものである。
【0276】
反射構造体は、2つの態様を有する。反射構造体の第1態様は、透明基材と、透明基材の一方の面に配置されたパターン状の第1反射膜と、透明基材の他方の面に配置されたパターン状の第2反射膜とを有し、第1反射膜の開口部および第2反射膜の開口部が平面視上重ならないように位置し、第1反射膜および第2反射膜が厚さ方向に離れて配置されているものである。また、反射構造体の第2態様は、透明基材と、透明基材の一方の面に配置され、光透過性を有するパターン状の凸部と、凸部の透明基材側の面とは反対の面側に配置されたパターン状の第1反射膜と、透明基材の一方の面の凸部の開口部に配置されたパターン状の第2反射膜とを有し、第1反射膜の開口部および第2反射膜の開口部が平面視上重ならないように位置し、第1反射膜および第2反射膜が厚さ方向に離れて配置されているものである。以下、各態様に分けて説明する。
【0277】
(反射構造体の第1態様)
本開示における反射構造体の第1態様は、透明基材と、透明基材の一方の面に配置されたパターン状の第1反射膜と、透明基材の他方の面に配置されたパターン状の第2反射膜とを有し、第1反射膜の開口部および第2反射膜の開口部が平面視上重ならないように位置し、第1反射膜および第2反射膜が厚さ方向に離れて配置されているものである。本態様の反射構造体の場合、第二の拡散部材において、反射構造体の第1反射膜側の面側に第1層が配置される。
【0278】
図12(a)、(b)は、本態様の反射構造体の一例を示す概略平面図および断面図であり、図12(a)は反射構造体の第1反射膜側の面から見た平面図であり、図12(b)は図12(a)のA-A線断面図である。図12(a)、(b)に示すように、反射構造体20は、透明基材21と、透明基材21の一方の面に配置されたパターン状の第1反射膜22と、透明基材21の他方の面に配置された第2反射膜24とを有している。第1反射膜22の開口部23および第2反射膜24の開口部25は、平面視上重ならないように位置している。また、第1反射膜22および第2反射膜24は、透明基材21の両面にそれぞれ配置されており、厚さ方向に離れて配置されている。なお、図12(a)において、第2反射膜の開口部は破線で示している。
【0279】
このような反射構造体においては、パターン状の第1反射膜および第2反射膜が積層されており、第1反射膜の開口部および第2反射膜の開口部が平面視上重ならないように位置していることから、本態様の反射構造体を有する拡散部材を面発光装置に用いた場合、LED素子の直上には第1反射膜22および第2反射膜24の少なくともいずれか一方が必ず存在することになる。そのため、反射構造体20の第1反射膜22側の面、すなわち反射構造体20(第2層)の第1層(図示なし)が配置される側の面13Aに対して低入射角で入射した光L11を、第1反射膜22および第2反射膜24で反射させることができる。
【0280】
また、第1反射膜の開口部および第2反射膜の開口部が平面視上重ならないように位置し、第1反射膜および第2反射膜が厚さ方向に離れて配置されていることから、反射構造体20の第1反射膜22側の面、すなわち反射構造体20(第2層)の第1層(図示なし)が配置される側の面13Aに対して高入射角で入射した光L12、L13を、第1反射膜22の開口部23および第2反射膜24の開口部25から出射させることができる。これにより、LED素子から発せられたのち拡散部材の第2層側の面から出射する光の一部を、LED素子の直上ではなく、LED素子から面内方向に離れた位置から出射させることができるようになる。よって、輝度の面内均一性を向上させることができる。
【0281】
第1反射膜および第2反射膜としては、一般的な反射膜を用いることができ、例えば、金属膜、誘電体多層膜等を用いることができる。金属膜の材料としては、一般的な反射膜に使用される金属材料を採用でき、例えば、アルミニウム、金、銀、およびそれらの合金等が挙げられる。また、誘電体多層膜としては、一般的な反射膜に使用されるものを採用でき、例えば、酸化ジルコニウムと酸化ケイ素とが交互に積層された多層膜等の無機化合物の多層膜が挙げられる。第1反射膜および第2反射膜に含まれる材料は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0282】
第1反射膜および第2反射膜の開口部のピッチとしては、上述した反射率および透過率の入射角依存性が得られればよく、本態様の拡散部材が用いられる面発光装置におけるLED素子の配光特性、サイズ、ピッチおよび形状や、LED基板と拡散部材との距離等に応じて適宜設定される。第1反射膜および第2反射膜の開口部のピッチは、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0283】
第1反射膜の開口部のピッチは、例えば、LED素子のサイズよりも大きくてもよい。具体的には、第1反射膜の開口部のピッチは、0.1mm以上20mm以下である。
【0284】
また、第2反射膜の開口部のピッチは、輝度ムラを抑制できれば特に限定されないが、中でも、上記第1反射膜の開口部のピッチ以下であることが好ましく、上記第1反射膜の開口部のピッチより小さいことが好ましい。具体的には、第2反射膜の開口部のピッチは、0.1mm以上2mm以下である。上記のように第2反射膜の開口部のピッチを微細にすることにより、第2反射膜の部分と第2反射膜の開口部の部分とのパターンを視認しにくくすることができ、ムラのない面発光が可能となる。
【0285】
なお、第1反射膜の開口部のピッチとは、例えば図12(a)に示すような、隣り合う第1反射膜22の開口部23の中心間の距離P1をいう。また、第2反射膜の開口部のピッチとは、例えば図12(a)に示すような、隣り合う第2反射膜24の開口部25の中心間の距離P2をいう。
【0286】
第1反射膜および第2反射膜の開口部の大きさとしては、上述した反射率および透過率の入射角依存性が得られればよく、LED素子の配光特性、サイズ、ピッチおよび形状や、LED基板と拡散部材との距離等に応じて適宜設定される。第1反射膜および第2反射膜の開口部の大きさは、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0287】
第1反射膜の開口部の大きさとしては、具体的には、第1反射膜の開口部の形状が矩形状である場合、第1反射膜の開口部の長さは、0.1mm以上5mm以下である。
【0288】
また、第2反射膜の開口部の大きさは、輝度ムラを抑制できれば特に限定されないが、中でも、上記第1反射膜の開口部の大きさ以下であることが好ましく、上記第1反射膜の開口部の大きさより小さいことが好ましい。具体的には、第2反射膜の開口部の形状が矩形状である場合、第2反射膜の開口部の長さは、0.05mm以上2mm以下である。上記のように第2反射膜の開口部の大きさを微細にすることにより、第2反射膜の部分と第2反射膜の開口部の部分とのパターンを視認しにくくすることができ、ムラのない面発光が可能となる。
【0289】
なお、第1反射膜の開口部の大きさとは、例えば第1反射膜の開口部の形状が矩形状である場合、図12(a)に示すような、第1反射膜22の開口部23の長さx1をいう。また、第2反射膜の開口部の大きさとは、例えば図12(a)に示すような、第2反射膜24の開口部25の長さx2をいう。
【0290】
第1反射膜および第2反射膜の開口部の形状としては、例えば、矩形状、円形状等、任意の形状である。第1反射膜および第2反射膜の厚さとしては、上述した反射率および透過率の入射角依存性が得られればよく、適宜調整される。具体的には、第1反射膜および第2反射膜の厚さは、0.05μm以上100μm以下である。
【0291】
第1反射膜および第2反射膜は、透明基材の面に形成されたものであってもよく、シート状の反射膜であってもよい。第1反射膜および第2反射膜の形成方法としては、透明基材の面にパターン状に反射膜を形成できる方法であれば特に限定されず、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等が挙げられる。また、第1反射膜および第2反射膜がシート状の反射膜である場合、開口部の形成方法としては、例えば、打ち抜き加工等により複数の貫通孔を形成する方法等が挙げられる。この場合、透明基材およびシート状の反射膜の積層方法としては、例えば、透明基材に接着層や粘着層を介してシート状の反射膜を貼り合せる方法を用いることができる。
【0292】
本態様の反射構造体における透明基材は、上記の第1反射膜および第2反射膜等を支持する部材であり、また、第1反射膜および第2反射膜を厚さ方向に離れて配置させるための部材である。
【0293】
透明基材は光透過性を有する。透明基材の光透過性としては、透明基材の全光線透過率が、例えば80%以上であることが好ましく、中でも90%以上であることが好ましい。なお、透明基材の全光線透過率は、例えば、JIS K7361-1:1997に準拠する方法により測定する。
【0294】
透明基材を構成する材料としては、上述した全光線透過率を有する材料であればよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル、シクロオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、アクリルスチレン等の樹脂や、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英等のガラスが挙げられる。
【0295】
透明基材の厚さとしては、例えば図12(b)に示すように、反射構造体20の第1反射膜22側の面、すなわち反射構造体20(第2層)の第1層(図示なし)が配置される側の面13Aに対して高入射角で入射した光L12を、第1反射膜22の開口部23および第2反射膜24の開口部25から出射させることができるような厚さであることが好ましく、第1反射膜および第2反射膜の開口部のピッチおよび大きさや、第1反射膜および第2反射膜の厚さ等に応じて適宜設定される。具体的には、透明基材の厚さは、0.05mm以上であり、0.1mm以上が好ましい。また、透明基材の厚さは、2mm以下であり、0.5mm以下が好ましい。より具体的には、透明基材の厚さは、0.05mm以上2mm以下であり、中でも0.1mm以上0.5mm以下であることが好ましい。
【0296】
(反射構造体の第2態様)
反射構造体の第2態様は、透明基材と、透明基材の一方の面に配置され、光透過性を有するパターン状の凸部と、凸部の透明基材側の面とは反対の面側に配置されたパターン状の第1反射膜と、透明基材の一方の面の凸部の開口部に配置されたパターン状の第2反射膜とを有し、第1反射膜の開口部および第2反射膜の開口部が平面視上重ならないように位置し、第1反射膜および第2反射膜が厚さ方向に離れて配置されているものである。本態様の反射構造体の場合、第二の拡散部材において、反射構造体の第1反射膜側の面側に第1層が配置される。
【0297】
図13(a)、(b)は、本開示における反射構造体の第2態様の一例を示す概略平面図および断面図であり、図13(a)は反射構造体の第1反射膜側の面から見た平面図であり、図13(b)は図13(a)のA-A線断面図である。図13(a)、(b)に示すように、反射構造体20は、透明基材21と、透明基材21の一方の面に配置され、光透過性を有するパターン状の凸部26と、凸部26の透明基材21側の面とは反対の面に配置されたパターン状の第1反射膜22と、透明基材21の一方の面の凸部26の開口部に配置されたパターン状の第2反射膜24とを有している。第1反射膜22の開口部23および第2反射膜24の開口部25は、平面視上重ならないように位置している。また、第1反射膜22および第2反射膜24は、凸部26によって隔てられており、厚さ方向に離れて配置されている。
【0298】
このような反射構造体においては、パターン状の第1反射膜および第2反射膜が積層されており、第1反射膜の開口部および第2反射膜の開口部が平面視上重ならないように位置していることから、本態様の反射構造体を有する拡散部材を用いた面発光装置(特に、LEDバックライト)は、LED素子の直上には第1反射膜および第2反射膜の少なくともいずれか一方が必ず存在することになる。そのため、上記反射構造体の第1態様と同様に、例えば図13(b)に示すように、反射構造体20の第1反射膜22側の面、すなわち反射構造体20(第2層)の第1層(図示なし)が配置される側の面13Aに対して低入射角で入射した光L11を、第1反射膜22および第2反射膜24で反射させることができる。
【0299】
また、第1反射膜の開口部および第2反射膜の開口部が平面視上重ならないように位置し、第1反射膜および第2反射膜が厚さ方向に離れて配置されていることから、反射構造体20の第1反射膜22側の面、すなわち反射構造体20(第2層)の第1層(図示なし)が配置される側の面13Aに対して高入射角で入射した光L12を、凸部26の側面および第2反射膜24の開口部25から出射させることができる。これにより、LED素子から発せられたのち拡散部材の第2層側の面から出射する光の一部を、LED素子の直上ではなく、LED素子から面内方向に離れた位置から出射させることができるようになる。よって、輝度の面内均一性を向上させることができる。また、本態様においては、凸部を有することから、第1反射膜および第2反射膜の開口部のセルフアライメントが可能であり、製造コストを削減できる。
【0300】
なお、第1反射膜および第2反射膜の材料、第1反射膜および第2反射膜の開口部のピッチ、第1反射膜および第2反射膜の開口部の大きさ、第1反射膜および第2反射膜の開口部の形状、第1反射膜および第2反射膜の厚さ、ならびに第1反射膜および第2反射膜の形成方法等については、上記第1態様と同様である。
【0301】
また、透明基材については、上記第1態様と同様である。
【0302】
本態様の反射構造体における凸部は、上記の第1反射膜および第2反射膜を厚さ方向に
離れて配置させるための部材である。凸部は光透過性を有する。凸部の光透過性としては、凸部の全光線透過率が、例えば80%以上であることが好ましく、中でも90%以上であることが好ましい。なお、凸部の全光線透過率は、例えば、JIS K7361-1:1997に準拠する方法により測定することができる。
【0303】
凸部を構成する材料としては、パターン状の凸部を形成可能であり、上述した全光線透過率を有する材料であればよく、例えば、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等が挙げられる。
【0304】
凸部の高さとしては、例えば図13(b)に示すように、反射構造体20の第1反射膜22側の面、すなわち反射構造体20(第2層)の第1層(図示なし)が配置される側の面13Aに対して高入射角で入射した光L12を、凸部26の側面および第2反射膜24の開口部25から出射させることができるような高さであることが好ましく、第1反射膜および第2反射膜の開口部のピッチおよび大きさや、第1反射膜および第2反射膜の厚さ等に応じて適宜設定される。具体的には、凸部の高さは、0.05mm以上であり、0.1mm以上が好ましい。また、凸部の高さは、2mm以下であり、0.5mm以下が好ましい。より具体的には、凸部の高さは、0.05mm以上2mm以下であり、中でも0.1mm以上0.5mm以下であることが好ましい。
【0305】
凸部のピッチ、大きさおよび平面視形状については、上記第2反射膜の開口部のピッチ、大きさおよび形状と同様である。凸部の表面は、例えば図13(b)に示すように平滑面であってもよく、図14(a)に示すように粗面であってもよい。凸部の表面が粗面である場合には、凸部に光拡散性を付与できる。
【0306】
また、凸部の表面の形状としては、例えば図13(b)に示すように平面であってもよく、図14(b)に示すように曲面であってもよい。凸部の表面が曲面である場合には、凸部に光拡散性を付与できる。
【0307】
凸部の形成方法としては、パターン状の凸部を形成可能な方法であれば特に限定されず、例えば、印刷法、金型による樹脂賦形等が挙げられる。
【0308】
(iii)反射型回折格子
第2層が反射型回折格子である場合、反射型回折格子としては、上述した反射率および透過率の入射角依存性を有するものであれば特に限定されない。
【0309】
反射型回折格子のピッチ等としては、上述した反射率および透過率の入射角依存性が得られればよく、適宜調整される。具体的には、LED素子の出力する波長が、赤色、緑色、青色等の単色である場合は、各波長に応じたピッチとすることで、効果的にLED素子の光を反射させることが可能である。
【0310】
反射型回折格子を構成する材料としては、上述した反射率および透過率の入射角依存性を有する反射型回折格子が得られる材料であればよく、一般的に反射型回折格子に用いられるものを採用できる。また、反射型回折格子の形成方法としては、一般的な反射型回折格子の形成方法と同様である。
【0311】
(3)第三の拡散部材
第三の拡散部材としては、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート等の光透過性樹脂を有する樹脂板であり、内部に多数の空隙が存在するもの、または、表面に凹凸を有するものが挙げられ、一般に表示装置分野において汎用されているものを用いることができる。
【0312】
6.その他光学部材
本開示の面発光装置においては、上記拡散部材のLED基板とは反対の面側に光学部材がさらに配置されていてもよい。光学部材としては、例えば、プリズムシート、反射型偏光シート等が挙げられる。
【0313】
(1)プリズムシート
本開示におけるプリズムシートは、入射した光を集光し、正面方向の輝度を集中的に向上させる機能を有する。プリズムシートは、例えば、透明樹脂基材の一方の面側に、アクリル樹脂等を含むプリズムパターンが配置されたものである。プリズムシートとしては、例えば、3M社製の輝度上昇フィルムBEFシリーズを用いることができる。
【0314】
(2)反射型偏光シート
本開示における反射型偏光シートは、第1の直線偏光成分(例えば、P偏光)のみを透過し、かつ第1の直線偏光成分と直交する第2の直線偏光成分(例えば、S偏光)を吸収せずに反射する機能を有する。反射型偏光シートで反射された第2の直線偏光成分は再度反射され、偏光が解消された状態(第1の直線偏光成分と第2の直線偏光成分とを両方含んだ状態)で、再度、反射型偏光シートに入射する。よって、反射型偏光シートは再度入射する光のうち第1の直線偏光成分を透過し、第1の直線偏光成分と直交する第2の直線偏光成分は再度反射される。
【0315】
以下、同上の過程を繰り返す事により、上記第2層から出射した光の70%~80%程度が第1の直線偏光成分となった光として出光される。したがって、本開示の面発光装置を表示装置に用いた場合、反射型偏光シートの第1の直線偏光成分(透過軸成分)の偏光方向と表示パネルの偏光板の透過軸方向とを一致させることにより、面発光装置からの出射光は全て表示パネルで画像形成に利用可能となる。そのため、LED素子から投入される光エネルギーが同じであっても、反射型偏光シートを未配置の場合に比べて、より高輝度の画像形成が可能となる。
【0316】
反射型偏光シートとしては、例えば、3M社製の輝度上昇フィルムDBEFシリーズが挙げられる。また、反射型偏光シートとして、例えば、Shinwha Intertek社製の高輝度偏光シートWRPS、ワイヤーグリッド偏光子等を用いることもできる。
【0317】
7.用途
本開示における面発光装置の用途は、特に限定されないが、表示装置に好適に使用できる。また、照明装置等にも使用できる。
【0318】
8.面発光装置の製造方法
本開示における面発光装置は、例えば、LED基板および封止部材を積層してなる積層体とし、この積層体を真空熱プレスや真空ラミネート等により一体化する封止工程を少なくとも行うことにより製造できる。
【0319】
封止部材の封止層が第2態様の封止層である場合、上記の封止工程は、初期ラミネートの1段階の処理のみで行ってもよく、初期ラミネート処理と最終キュア処理との2段階の処理に分けて順次行ってもよい。封止工程を2段階の処理で行う場合、封止部材をLED素子による凹凸に対して気泡の発生なく追従させて密着する初期ラミネート処理と、密着させた後にさらに密着力を増加させて、密着力を安定したものとする最終キュア処理とに分けて行うことにより、より密着力の強い面発光装置の封止部材を高い品質安定性の下で製造できる。
【0320】
上記の面発光装置の製造方法を行う際、封止部材の封止層が第2態様の封止層である場合、封止部材の一部を切り出してLED基板から剥離するリワーク工程を行うことが好ましい。また、封止工程を2段階の処理で行う場合、上記の初期ラミネート処理の終了後、最終キュア処理の開始前に、封止部材の一部を切り出してLED基板から剥離するリワーク工程を行うことが好ましい。リワーク工程では、発光不良を起こしているLED素子を交換できる。封止工程を2段階の処理で行う場合、上述したように、封止部材は、初期ラミネート処理の完了後においては、上記の第1密着強度を基準とするリワーク可能な程度の密着性を発現し、かつ、最終キュア処理の完了後においては、上記の第2密着強度を基準とする、良好な密着耐久性を発現する。
【0321】
B.表示装置
本開示における表示装置は、表示パネルと、上記表示パネルの背面に配置された、上述の面発光装置とを備える。
【0322】
図15は、本開示の表示装置の一例を示す模式図である。図15に例示するように、表示装置100は、表示パネル31と、表示パネル31の背面に配置された、上述の面発光装置1とを備える。
【0323】
本開示によれば、上述の面発光装置を有することにより、輝度の面内均一性を向上できる。したがって、高品質な表示装置を得ることができる。
【0324】
1.面発光装置
本開示における面発光装置は、上記「A.面発光装置」の項に記載したものと同様である。
【0325】
2.表示パネル
本開示における表示パネルとしては、特に限定されず、例えば、液晶パネルが挙げられる。
【0326】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例0327】
以下、実施例および比較例を示し、本開示をさらに詳細に説明する。
【0328】
[材料]
封止部材の各層を形成するための樹脂組成物に用いた樹脂成分および添加剤を下記に示す。
【0329】
・低密度ポリエチレン(LDPE):密度0.919g/cm 融点106℃ MFR3.5g/10分(190℃、2.16kg(A法))
・メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M-LLDPE)(1):密度0.880g/cm 融点60℃ MFR3.5g/10分(190℃、2.16kg(A法))
・メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M-LLDPE)(2):密度0.901g/cm 融点93℃ MFR2.0g/10分(190℃、2.16kg(A法))
・シラン変性ポリオレフィン樹脂(1):密度0.902g/cm 融点90℃ MFR1.0g/10分(190℃、2.16kg(A法))
・シラン変性ポリオレフィン樹脂(2):密度0.886g/cm 融点60℃ MFR1.3g/10分(190℃、2.16kg(A法))
【0330】
・架橋剤マスターバッチ(MB):融点60℃、密度0.880g/cm、MFR3.1g/10分(190℃、2.16kg(A法))のメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンのペレット100質量部に対して、架橋剤として2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン0.5質量部を含浸させ、マスターバッチを得た。
【0331】
・耐候剤マスターバッチ(MB):密度0.880g/cmのチーグラー直鎖状低密度ポリエチレンを粉砕したパウダー100質量部に対して、ベンゾフェノール系紫外線吸収剤3.8質量部と、ヒンダードアミン系光安定化剤5質量部と、リン系熱安定化剤0.5質量部とを混合して溶融、加工し、ペレット化したマスターバッチを得た。
【0332】
[実施例1]
(1)LED基板の作製
支持基板上に、ジェネライツ社製のLEDチップ「B0815ACQ0」(チップサイズ0.2mm×0.4mm、チップ厚さ0.1mm)を3mmピッチで正方配置した。次いで、上記支持基板上に、LEDチップの周囲(半径0.5mmの円形)を除き、反射部(反射率98%)を配置した。続いて、LEDチップ上に、TiO及びSiOをスパッタ法により交互に製膜し、反射層を形成した。これにより、LED基板を製造した。
【0333】
(2)封止部材シートの作製
上記の樹脂成分および添加剤を用い、下記表1に示す組成にて、スキン層、コア層、スキン層の各層を形成するための樹脂組成物を調製した。300mm幅のTダイを有するフィルム成形機(各層共φ30mm押出機)を用いて、各樹脂組成物を押出し温度210℃で溶融し、各層の厚さの比がスキン層:コア層:スキン層=1:6:1、封止部材シートの総厚が450μmとなるように調整して、3層共押出しすることにより、スキン層とコア層とスキン層とがこの順に積層された封止部材シートを得た。
【0334】
(3)面発光装置の作製
上記LED基板および上記封止部材シートを、上記LED基板のLED素子が封止部材シート側となるように積層した。次いで、真空ラミネーターを用いて、下記の条件で、上記LED基板および上記封止部材シートを一体化した。具体的には、厚さ3mmのガラスと、厚さ100μmのETFE(テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体)フィルムと、LED基板と、封止部材シートと、厚さ100μmのETFEフィルムと、厚さ3mmのガラスとを順に有する積層体を、下記の条件により真空ラミネートを行った。ガラスは適切なフラット面を得るために使用した。
【0335】
<真空ラミネート条件>
(a)真空引き:5.0分
(b)加圧:0kPaから100kPaに5秒かけて上昇
(c)圧力保持:100kPa、7分
(d)温度:150℃
【0336】
次に、ラミネート直後に、15℃から20℃の水に上記積層体を浸漬し、急冷冷却を行った。
【0337】
次に、冷却後、封止部材のLED基板とは反対側の面に、誘電体多層フィルムと、波長変換部材と、拡散部材と、2枚のプリズムシートと、反射型偏光シートと、厚さ3mmの青板ガラスとを順に積層し、面発光装置を製造した。誘電体多層フィルムは、下記表1に示す反射特性を有するものを用いた。拡散部材は、エンタイア社製の拡散板「55K3」を用いた。波長変換部材は、昭和電工マテリアルズ社製「QF-6000」を用いた。プリズムシートは、3M社製「BEF」を用いた。2枚のプリズムシートは、プリズム稜線が直交する方向に配置した。反射型偏光シートは、3M社製「DBEF」を用いた。
【0338】
【表1】
【0339】
[実施例2]
封止部材シートの作製において、下記の冷却条件としたこと以外は、実施例1と同様にして面発光装置を製造した。冷却については、ラミネート直後に、サイズ300mm×300mm、厚さ3mm、23℃に設定した鉄板の上に積層体を8分間放置し、通常冷却を行った。
【0340】
[実施例3]
封止部材シートの作製において、下記表2に示す組成にて、各層を形成するための樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様にして面発光装置を製造した。
【0341】
[実施例4]
封止部材シートの作製において、下記表2に示す組成にて、各層を形成するための樹脂組成物を調製したこと、および、封止部材シートの総厚を400μmとしたこと以外は、実施例2と同様にして面発光装置を製造した。
【0342】
[比較例1]
下記のようにしてLED基板を作製したこと、および、封止部材シートの作製において、実施例4と同じ組成にて、各層を形成するための樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様にして面発光装置を製造した。
【0343】
LED基板は、LEDチップ上に反射層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして作製した。
【0344】
[比較例2]
封止部材シートの作製において、実施例3と同じ組成にて、各層を形成するための樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例2と同様にして面発光装置を製造した。
【0345】
[評価]
(1)封止部材のヘーズ
封止部材シートのヘーズは、下記処理を行った後、JIS K7136:2000に準拠して、村上色彩技術研究所社製のヘーズメーターHM-150を用いて測定した。
【0346】
まず、封止部材シートを100mm×100mmの大きさに切断した。その後、2枚の厚さ75μmのシリコーンコート離型PETフィルムの間に、封止部材シートを挟み込んだ。この際、各PETフィルムは、離型面が封止材シートを向くように配置した。次に、日清紡社製の真空ラミネーター「PVL0505S」を用い、温度150℃、真空引き時間3分、プレス保持時間7分、圧力100kPaの条件で、真空ラミネート処理を行った。ラミネート後、以下の条件で冷却し、測定用封止部材シートを作製した。冷却条件は、下記の2通りとした。1つ目の冷却条件では、ラミネート直後に、15℃から20℃の水に積層体を浸漬し、急冷冷却を行った。2つの冷却条件では、ラミネート直後に、サイズ300mm×300mm、厚さ3mm、23℃に設定した鉄板の上に積層体を8分間放置し、通常冷却を行った。
【0347】
(2)輝度ムラ
面発光装置を点灯し、目視にて輝度ムラを観察した。輝度ムラは、下記基準にて評価した。
A:輝度ムラは認識できなかった。
B:輝度ムラは認識できるが、LEDの粒は視認されず、実用上問題無かった。
C:LEDの粒がわずかに視認された。
D:LEDの粒がはっきりと視認された。
【0348】
【表2】
【0349】
【表3】
【0350】
実施例1~4の面発光装置では、封止部材のヘーズが所定の範囲であり、輝度ムラの発生を抑制できた。一方、ヘーズが高い封止部材を用いた比較例2では、輝度ムラの発生を抑制できなかった。また、比較例1では、封止部材のヘーズは低いものの、上発光であるため、輝度ムラの発生を抑制できなかった。
【0351】
本開示においては、例えば、以下の発明が提供される。
[1]
支持基板、上記支持基板の一方の面側に配置された発光ダイオード素子、および上記発光ダイオード素子の上記支持基板とは反対の面側に配置された反射層を有する発光ダイオード基板と、
上記発光ダイオード基板の上記発光ダイオード素子側の面側に配置され、上記発光ダイオード素子を封止する封止部材と、を有する面発光装置であって、
上記封止部材のヘーズが12%以下である、面発光装置。
[2]
上記封止部材が、複数の樹脂層を有する、[1]に記載の面発光装置。
[3]
上記封止部材が、オレフィン系樹脂を含有する層を有する、[2]に記載の面発光装置。
[4]
上記封止部材が、コア層と、上記コア層の少なくとも一方の面側に配置されたスキン層とを有する、[2]または[3]に記載の面発光装置。
[5]
上記封止部材が、線膨張係数が-15×10-6/℃以上10×10-6/℃以下である層を有する、[2]から[4]までのいずれかに記載の面発光装置。
[6]
上記封止部材が、上記LED基板側の最表面に密着層を有し、上記密着層が、オレフィン系樹脂とシラン成分とを含有し、架橋剤を含有せず、上記密着層の全樹脂成分に対する上記シラン成分の含有量が0.02質量%以上0.15質量%以下である、[1]から[3]までのいずれかまたは[5]に記載の面発光装置。
[7]
上記反射層が、誘電体多層膜である、[1]から[6]までのいずれかに記載の面発光装置。
[8]
上記封止部材の上記発光ダイオード基板とは反対の面側に配置された誘電体多層フィルムを有する、[1]から[7]までのいずれかに記載の面発光装置。
[9]
上記誘電体多層フィルムが、上記封止部材側の面および上記封止部材とは反対の面の少なくともいずれかに凹凸パターンを有する、[8]に記載の面発光装置。
[10]
上記誘電体多層フィルムの上記封止部材とは反対の面側に配置された波長変換部材を有する、[8]または[9]に記載の面発光装置。
[11]
上記誘電体多層フィルムにおいて、入射角の絶対値が大きくなるにつれて青色光のピーク波長の反射率が大きくなり、0度以上50度以下の入射角における緑色光のピーク波長の反射率が85%以上であり、0度以上50度以下の入射角における赤色光のピーク波長の反射率が80%以上である、[10]に記載の面発光装置。
[12]
上記封止部材と上記誘電体多層フィルムとの間、および、上記誘電体多層フィルムと上記波長変換部材との間の少なくともいずれかに配置された拡散部材を有する、[10]または[11]に記載の面発光装置。
[13]
表示パネルと、
上記表示パネルの背面に配置された[1]から[12]までのいずれかに記載の面発光装置と、を備える、表示装置。
【符号の説明】
【0352】
1 … 面発光装置
2 … 支持基板
3 … LED素子
4 … 反射層
5 … LED基板
6 … 封止部材
7 … 誘電体多層フィルム
8 … 反射部
11 … 拡散部材
60 … 封止層
61 … コア層
62 … スキン層
63 … 反り防止層
100 … 表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15