(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106874
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】プラント保全管理支援装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/12 20200101AFI20240801BHJP
G06F 30/13 20200101ALI20240801BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240801BHJP
【FI】
G06F30/12
G06F30/13
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011346
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】定岡 徹真
(72)【発明者】
【氏名】畠山 誠
(72)【発明者】
【氏名】中西 大介
(72)【発明者】
【氏名】池田 篤司
(72)【発明者】
【氏名】杉本 昌也
【テーマコード(参考)】
5B146
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5B146AA02
5B146AA04
5B146DC05
5B146DE03
5B146DG07
5B146EA01
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】予想される事象に対処する設計要求を3Dモデル又は2D図面上で一元的に可視化し保全確認の作業を容易化し品質を向上させるプラント保全管理技術を提供する。
【解決手段】
装置10は、境界領域(a1~a6,b1~b6…)により複数の部屋(A,B,C…)に仕切られた建屋の3Dモデル11から境界領域の第1幾何情報15aを抽出する第1抽出部17aと、部屋の各々について境界領域を平面展開した2D図面12から境界領域の第2幾何情報15bを抽出する第2抽出部17bと、第1幾何情報15a及び第2幾何情報15bに設計要求16を反映させる反映部25と、設計要求16が反映された境界領域を用いて3Dモデル11及び2D図面12を表示する表示部26と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
境界領域により複数の部屋に仕切られた建屋の3Dモデルから前記境界領域の第1幾何情報を抽出する第1抽出部と、
前記部屋の各々について前記境界領域を平面展開した2D図面から前記境界領域の第2幾何情報を抽出する第2抽出部と、
前記第1幾何情報及び前記第2幾何情報の少なくとも一方に設計要求を反映させる反映部と、
前記設計要求が反映された前記境界領域を用いて前記3Dモデル及び前記2D図面の少なくとも一方を表示する表示部と、を備えるプラント保全管理支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラント保全管理支援装置において、
前記3Dモデル及び前記2D図面のいずれか一方の前記境界領域において前記設計要求を修正し、他方の前記境界領域にも反映させる修正部を備えるプラント保全管理支援装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のプラント保全管理支援装置において、
前記3Dモデルの前記境界領域を平面展開し前記2D図面を生成する生成部を備えるプラント保全管理支援装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のプラント保全管理支援装置において、
前記反映部は、前記2D図面及び前記3Dモデルのいずれか一方の前記境界領域の画像を、前記第1幾何情報及び前記第2幾何情報に基づいて座標変換し、他方に合成することで、前記設計要求を反映させるプラント保全管理支援装置。
【請求項5】
境界領域により複数の部屋に仕切られた建屋の3Dモデルから前記境界領域の第1幾何情報を抽出するステップと、
前記部屋の各々について前記境界領域を平面展開した2D図面から前記境界領域の第2幾何情報を抽出するステップと、
前記第1幾何情報及び前記第2幾何情報の少なくとも一方に設計要求を反映させるステップと、
前記設計要求が反映された前記境界領域を用いて前記3Dモデル及び前記2D図面の少なくとも一方を表示するステップと、を含むプラント保全管理支援方法。
【請求項6】
コンピュータに、
境界領域により複数の部屋に仕切られた建屋の3Dモデルから前記境界領域の第1幾何情報を抽出するステップ、
前記部屋の各々について前記境界領域を平面展開した2D図面から前記境界領域の第2幾何情報を抽出するステップ、
前記第1幾何情報及び前記第2幾何情報の少なくとも一方に設計要求を反映させるステップ、
前記設計要求が反映された前記境界領域を用いて前記3Dモデル及び前記2D図面の少なくとも一方を表示するステップ、を実行させるプラント保全管理支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、建屋を部屋に仕切る境界領域に対するプラント保全管理支援技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所では、原子炉の安全停止に関わるシステムの稼働を確実にする必要がある。このため、建屋を部屋に仕切る壁や床、天井、ならびにその貫通孔、開口部も含む境界領域は、想定される事象に対し、予め定められた要求措置の厳格な管理が求められる。
【0003】
この要求措置のこれまでの管理方法は、設計図面、設備点検情報等といったプラント情報に基づいて、アクセスが容易なシステムに対し、設備ごとに構築されるに留まっている。この管理方法によると、必要な設計要求それぞれへのアクセスが容易になる一方で、手間がかかる作業が増える課題があった。つまり、要求措置に変更が生じた際に、それぞれ独立した設計要求を照らし合わせ、設備の安全対策や保全管理にどのような影響がおよぶか確認する必要があるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-84810号公報
【特許文献2】特開2018-88139号公報
【特許文献3】特開2019-32572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで図面は、建築物の構造等を平面で表すものである。このために、床、壁、天井のような部屋を仕切る境界領域は、線図や塗り潰しの色やパターン図形等により、付記する寸法とともに部材の位置・大きさなどの形状が、表現されている。
【0006】
このため、例えば、壁の防火やこの壁に設ける開口部や貫通部の止水処置等、境界領域に対する要求措置が複数あると、図面に付与する情報が膨大になる。また、要求措置に基づく設計要求は、止水処置が壁の下端から数メートルの高さまでのように部分的である場合が多い。このため要求措置に基づく設計要求は、壁全面等のように設備全体である場合は別として、図面上で表現することは困難である。
【0007】
さらに、系統設備の設計変更に伴って、水量等の上流条件が変更されると、止水に対する要求措置も変更となる。すると、その都度、境界領域の設計要求の変更が必要となり、図面に付与された膨大な情報の修正作業が発生することになる。
【0008】
このため、部材の形状(位置・大きさ等)と設計要求とを一元的に紐づける場合、複数枚の独立した図面の整合を図りつつ、情報を整理して記述し視認性を確保する作業を繰り返す必要がある。更に、要求に応じた処置が正しく実施されているかを現場で確認する際も、大量の図面を閲覧し、個々の図面と現場状態を目視で照らし合わせる必要がある。
【0009】
このように従来は、図面の作成と利用のそれぞれの段階において、非常に多くの人手を煩わせる課題があった。また、図面で示される設計要求と施工状態を表す現場情報とが、それぞれ独立に管理される場合、両者を同時に確認できない課題もある。つまり、点検作業者は、図面の管理リストと現場状態の管理リストとを個別に確認する必要があるため、作業性や効率の低下が避けられず、誤りが生じ易くなるといった課題がある。
【0010】
関連する公知技術として、設備・機能毎に管理された設計図書、保全管理、工事管理等の情報を一つのデータベースでアクセスできるよう構築したネットワークシステムが開示されている。この公知技術によれば、要件ごとにばらばらに管理されていたデータを一元管理でき、さらに設備・機能毎の情報の変更履歴を管理できる。しかし、この公知技術は、管理に必要な情報を可視化する方法ではない。このため、設計変更が発生した際は、保全情報への影響を確認するため、独立した情報をそれぞれ照らし合わす必要があり、手間がかかるうえに確認ミスが発生する可能性も高かった。
【0011】
また他の公知技術として、三次元空間に計測したデータを重ね合わせる技術が開示されている。しかし、この公知技術は、物体を合成することができても境界領域を照合することはできない。また溢水、火災など予想される事象に対処する設計要求を三次元空間上に表現する機能はなく、これらが反映されているか否かその状態を点検・照合することもできない。
【0012】
さらに他の公知技術として、溢水に対して浸水の伝播経路が容易に把握できる技術が開示されている。しかし、止水処置等の対策が必要な境界領域を一目で確認できず、図面に情報を付与して対象となる境界領域を確認する必要があり、手間がかかる。
【0013】
本発明の実施形態は、このような事情を考慮してなされたもので、予想される事象に対処する設計要求を3Dモデル又は2D図面上で一元的に可視化し、保全確認の作業を容易にするとともにその品質を向上させるプラント保全管理技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
実施形態に係るプラント保全管理支援装置において、境界領域により複数の部屋に仕切られた建屋の3Dモデルから前記境界領域の幾何情報を抽出する第1抽出部と、前記部屋の各々について前記境界領域を平面展開した2D図面から前記境界領域の第2幾何情報を抽出する第2抽出部と、前記第1幾何情報及び前記第2幾何情報の少なくとも一方に設計要求を反映させる反映部と、前記設計要求が反映された前記境界領域を用いて前記3Dモデル及び前記2D図面の少なくとも一方を表示する表示部と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態により、予想される事象に対処する設計要求を3Dモデル又は2D図面上で一元的に可視化し、保全確認の作業を容易にするとともにその品質を向上させるプラント保全管理技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るプラント保全管理装置のブロック図。
【
図2】境界領域により複数の部屋に仕切られた建屋の3Dモデル。
【
図3】3Dモデルを仕切る境界領域の第1幾何情報を示すリスト。
【
図5】2D図面で平面展開された境界領域の第2幾何情報を示すリスト。
【
図6】それぞれの部屋の境界領域における設計要求を示す登録リスト。
【
図7】設計要求を反映させた境界領域における管理対象の施工状態を示す点検リスト。
【
図8】本発明の第2実施形態に係るプラント保全管理装置のブロック図。
【
図9】(A)3Dモデルに記録された設計要求を、(B)2D図面の境界領域に反映させた図。
【
図10】2D図面に記録された設計要求を、3Dモデルの境界領域に反映させた図。
【
図11】本発明に実施形態に係るプラント保全管理方法の工程及びプラント保全管理プログラムのアルゴリズムを説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明に実施形態に係るプラント保全管理装置10A(10)(以下、単に「装置10A」という)のブロック図である。
図2は境界領域(a1~a6,b1~b6…)により複数の部屋(A,B,C…)に仕切られた建屋の3Dモデル11である。
【0018】
このようにプラント保全管理支援装置10Aは、境界領域(a1~a6,b1~b6…)により複数の部屋(A,B,C…)に仕切られた建屋の3Dモデル11から境界領域(a1~a6,b1~b6…)の第1幾何情報15aを抽出する第1抽出部17aと、部屋(A,B,C…)の各々について境界領域(a1~a6,b1~b6…)を平面展開した2D図面12から境界領域(a1~a6,b1~b6…)の第2幾何情報15bを抽出する第2抽出部17bと、第1幾何情報15a及び第2幾何情報15bの少なくとも一方に設計要求16を反映させる反映部25と、設計要求16が反映された境界領域(a1~a6,b1~b6…)を用いて3Dモデル11及び2D図面12の少なくとも一方を表示する表示部26と、を備えている。
【0019】
図3は3Dモデル11を仕切る境界領域(a1~a6,b1~b6…)の第1幾何情報15aを示すリストである。複数の部屋(A,B,C…)を仕切る境界領域(a1~a6,b1~b6…)は、3Dモデル11で定義されたグローバル座標系P(X,Y,Z)で表現することができる。第1抽出部17aでは、そのようなグローバル座標系で表現された境界領域(a1~a6,b1~b6…)を第1幾何情報15aとして抽出する。なお第1抽出部17aにおける第1幾何情報15aの抽出は、自動検出される場合や、オペレータがマニュアルで入力設定する場合もある。
【0020】
そして、3Dモデル11から抽出された第1幾何情報15aは、部屋(A,B,C…)毎に境界領域(a1~a6,b1~b6…)に関連付けされ、蓄積してリスト化される。グローバル座標系における第1幾何情報15aは、境界領域(a1~a6,b1~b6…)の高さH、幅W、さらにグローバル座標系に反映させ表示させる際に使用する基準座標点Pが含まれている。
【0021】
なお
図2において記載が省略されているが、3Dモデル11には、境界領域(a1~a6,b1~b6…)に設けられた、部屋(A,B,C…)を跨いで設置された配管やダクトを貫通させたり電路等を通したりするための貫通孔、及び/又は人や物を通行させるための開口部の情報が付記されている。同様に
図3においても記載が省略されているが、第1幾何情報15aには、グローバル座標系における貫通孔や開口部の位置情報が境界領域(a1~a6,b1~b6…)に紐付けられている。
【0022】
図4は平面展開した境界領域(a1~a6,b1~b6…)の2D図面12である。平面展開された境界領域(a1~a6,b1~b6…)は、2D図面12で定義されたローカル座標系Q(x,y)で表現される。第2抽出部17bでは、そのようなローカル座標系で表現された境界領域(a1~a6,b1~b6…)を第2幾何情報15bとして抽出する。なお第2抽出部17bにおける第2幾何情報15bの抽出は、自動検出される場合や、オペレータがマニュアルで入力設定する場合もある。
【0023】
なお図示を省略するが、装置10Aは、3Dモデル11の境界領域(a1~a6,b1~b6…)を平面展開し2D図面12を生成する生成部(図示略)を備える場合もある。生成部(図示略)では、グローバル座標系の第1幾何情報15aをローカル座標系の第2幾何情報15bに変換し、境界領域(a1~a6,b1~b6…)を生成する。
【0024】
図5は2D図面12で平面展開された境界領域(a1~a6,b1~b6…)の第2幾何情報15bを示すリストである。そして、2D図面12の第2幾何情報15bは、部屋(A,B,C…)毎に境界領域(a1~a6,b1~b6…)に関連付けされ、蓄積してリスト化される。ローカル座標系における第2幾何情報15bは、境界領域(a1~a6,b1~b6…)の高さH、幅W、さらにグローバル座標系に反映させ表示させる際に使用する基準座標点Qが含まれている。さらに第2幾何情報15bには、ローカル座標系における貫通孔や開口部の位置情報も紐付けられている。
【0025】
図6はそれぞれの部屋の境界領域(a1~a6,b1~b6…)における設計要求16を示す登録リストである。建屋の内部空間を仕切る境界領域(a1~a6,b1~b6…)、具体的には壁や床、天井ならびにこれらに設けられている貫通孔や開口部には、想定される事象に対し、部屋から別の部屋へ影響が広がらないようするための要求措置が予め定められている。
【0026】
設計要求16とは、要求措置の対策候補として「止水壁高さ」「耐火」「遮蔽」「気密」「防油」のようにいくつかの項目に分類し、それぞれの項目の要否と、必要に応じて具体的処置を明示したものである。
【0027】
反映部25は、3Dモデル11又は2D図面12の境界領域(a1~a6,b1~b6…)に、設計要求16を反映させるものである。これにより、設計要求16が3Dモデル11又は2D図面12の図面上に一元的に可視化される。特に「止水壁高さ」の項目については、床面高さと幅のパラメータが設計要求16として反映される。これにより、境界領域(a1~a6,b1~b6…)に止水範囲を表示させることができる。さらに、3Dモデル11又は2D図面12に、設計要求16を強調表示したり分類項目の違いを色や模様で付与したりすることで、視覚的に情報の整合性を確認できる(
図9(A)(B)参照)。
【0028】
例えば、系統設備が設計変更され水量等に対する境界領域の要求措置が変更されると、これに伴って止水壁高さ等の設計要求16も変更される。そのような場合、3Dモデル11及び2D図面12に設計要求16の変更を、一回の手続きで両者に反映させることができる。これにより、図面に付与された膨大な設計要求16の修正作業を短時間で済ませることができる。
【0029】
表示部26では、境界領域(a1~a6,b1~b6…)に設計要求16を反映させた状態で、3Dモデル11及び2D図面12の少なくとも一方を表示することができる(
図9(A)(B)参照)。
【0030】
このため、境界領域(a1~a6,b1~b6…)に設けられた貫通孔や開口部といった管理対象の位置・大きさ等と設計要求16とを、複数の独立する3Dモデル11及び2D図面12において、整合を図りつつ一元的に管理できる。また、要求措置を満たす設計要求16が正しく処置されているか、現場で施工状態を確認する際も、図面と現場状態を目視で点検・照合する作業が容易になる。
【0031】
図7は設計要求16を反映させた境界領域(a1~a6,b1~b6…)における管理対象の施工状態を示す点検リストである。境界領域(a1~a6,b1~b6…)の現場で実施した設計要求16の施工状態を、点検情報及び照合結果(適合/不適合)として点検リストにデータ蓄積されていく。
【0032】
(第2実施形態)
次に
図8から
図10を参照して本発明における第2実施形態について説明する。
図8は本発明の第2実施形態に係るプラント保全管理装置10B(10)(以下、単に「装置10B」という)のブロック図である。
【0033】
第2実施形態の装置10Bは、上述した第1実施形態の装置10Aの構成に、修正部21をさらに追加した構成をとる。この修正部21は、3Dモデル11の境界領域(a1~a6,b1~b6…)において設計要求16を修正し、2D図面12の境界領域にも反映させることができる。さらに修正部21は、2D図面12の境界領域(a1~a6,b1~b6…)において設計要求16を修正し、3Dモデル11の境界領域にも反映させることができる。なお、
図8において
図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0034】
図9(A)(B)は3Dモデル11に記録された設計要求16を、2D図面12の境界領域(a1~a6,b1~b6…)に反映させた図である。反映部25は、3Dモデル11に反映されている設計要求16(修正した場合は修正後の設計要求16)を、自身の3Dモデル11だけでなく2D図面12の境界領域(a1~a6,b1~b6…)にも反映させることができる。
【0035】
図10は2D図面12に記録された設計要求16を、3Dモデル11の境界領域(a1~a6,b1~b6…)に反映させた図である。反映部25は、2D図面12に反映されている設計要求16(修正した場合は修正後の設計要求16)を、自身の2D図面12だけでなく3Dモデル11の境界領域(a1~a6,b1~b6…)にも反映させることができる。
【0036】
第2実施形態において、反映部25は、2D図面12の画像を、幾何情報15(15a,15b)に基づいて座標変換し、3Dモデル11の境界領域(a1~a6,b1~b6…)に合成することで、設計要求16を反映させることができる。同様に、反映部25は、3Dモデル11の境界領域(a1~a6,b1~b6…)の画像を、幾何情報15(15a,15b)に基づいて座標変換し、2D図面12に合成することで、設計要求16を反映させることができる。そして、3Dモデル11及び2D図面12は、互いに他方の境界領域(a1~a6,b1~b6…)の画像が貼り付けられた態様で、表示部26に表示することができる。
【0037】
このように、2D図面12を3Dモデル11に合成する場合は、2D図面12のデータを3Dモデル11のデータに取り込む。そして、3Dモデル11の境界領域(a1~a6,b1~b6…)に対し、部屋の内側から見たときの左下の角にローカル座標の原点を設定し、それぞれの座標軸に対して単位ベクトルも同時に設定する。
【0038】
2D図面12を規定するローカル座標系から3Dモデル11を規定するグローバル座標系へは、座標軸方向の移動及び縮尺変更、並びに座標軸周りの回転による6自由度(X,Y,Z,ロールφ,ピッチθ,ヨーψ)変換又は座標軸の成す角度(α,β,γ)によるオイラー角変換による。これにより、2D図面12を3Dモデル11の境界領域(a1~a6,b1~b6…)に重ねて合成することができる。同時に、設計要求16もローカル座標系とグローバル座標との間で変換され、重ねて合成される。
【0039】
また一方で、3Dモデル11の境界領域(a1~a6,b1~b6…)を2D図面12に合成する場合は、グローバル座標系からローカル座標系に変換してから重ねる。なおローカル座標系とグローバル座標との間の変換方式は、上述した6自由度変換やオイラー角変換に特に限定されない。また重ねて合成される設計要求16は、例えば「止水壁高さ」「耐火」「遮蔽」「気密」「防油」のように分類された要求措置の項目毎に色や模様を分けて標記してもよい。これにより、3Dモデル11上で要求措置を視覚的に確認できる。
【0040】
なお、合成した結果、3Dモデル11及び2D図面12のそれぞれに反映された設計要求16が互いに整合しない場合が有る。そのときは、修正部21により設計要求16の記録を修正し、両者の整合を図る。また、そのような不整合が有る場合は、警告表示するようにしてもよい。
【0041】
また修正部21では、注目する境界領域の設計要求16(
図6参照)について、例えば、「止水壁高さ」、「耐火」のパラメータ(数値)を変更することで自動的に、3Dモデル11及び2D図面12の両方にその変更を反映させることができる。3Dモデル11及び2D図面12において設計要求16は、色や模様で識別できるので、要求措置の変更に伴う貫通孔、開口部等に反映される設計要求16の変更を視覚的に確認できる。
【0042】
このように本実施形態では、要求措置に対し止水、耐火、遮蔽、気密、土圧、防油等の対策を設計要求16として登録している。さらに建屋を構成する壁、床、貫通部、開口部等の部屋の境界領域(a1~a6,b1~b6…)に設計要求16を反映させて3Dモデル11及び2D図面12を可視化して表現できる。このように3Dモデル11及び2D図面12に反映される設計要求16の整合を図り、確認の作業を容易にすることができる。これにより、要求と対策の情報の整合性、現場の施工状態との照合確認の品質向上を達成する情報処理並びに表示方法の改善が実現される。
【0043】
さらに、3Dモデル11の境界領域に2D図面12、設計要求16、現場の施工状態を示す点検情報や照合結果を紐付けて表示することで、3Dモデル11上で情報を可視化して一元的に管理できる。また任意の境界領域に対し一つの表示形式でデータ表示できるため、視認性が向上し、情報の照合も容易になる。これにより、点検作業者は複数の独立情報を照合し確認する必要が減り、点検作業効率の向上し、確認誤りが生じにくくなる。
【0044】
また、3Dモデル11の境界領域に表示した設計要求16を、この境界領域の平面図、立面図である2D図面12へ反映することができる。これにより、設計者は設計段階で要求措置に変更がある場合、例えば止水高さの変更等といった設計要求16の変更が発生した際の対処がしやすくなる。つまり、変更後の要求措置の内容に対し、貫通孔、開口部の設計要求16に関係する数値を変更することで、3Dモデル11及び2D図面12に半自動的に反映させることができる。これにより、2D図面12を用いて設計を進める際に対応が必要となる貫通孔、開口部を即座に視覚的に確認することが可能となり、人為的な確認ミスや確認の手間が減り、作業効率が向上する。
【0045】
図11のフローチャートに基づいて、本発明に実施形態に係るプラント保全管理方法の工程及びプラント保全管理プログラムのアルゴリズムを説明する(適宜、
図2~
図5参照)。建屋の3Dモデル11から複数の部屋(A,B,C…)を仕切る境界領域(a1~a6,b1~b6…)の第1幾何情報15aを抽出する(S11)。そして、2D図面12に平面展開されている境界領域(a1~a6,b1~b6…)の第2幾何情報15bを抽出する(S12)。
【0046】
次に、設計要求16を第1幾何情報15a又は第2幾何情報15bに反映させて(S13)、3Dモデル11又は2D図面12を表示する(S14)。また要求措置が変更された場合は、これに伴い変更された設計要求16を境界領域(a1~a6,b1~b6…)に反映したうえで、3Dモデル11又は2D図面12が表示される。
【0047】
次に、建屋の現場で境界領域(a1~a6,b1~b6…)における設計要求16の施工状態を現場確認する(S15)。そして、検査員は、現場で確認する設計要求16を点検し(S16)、3Dモデル11又は2D図面12と照合する(S17)。そして、現場の施工状態が設計要求16の想定状態に一致していれば(S18:Yes)、照合結果は適合と判定され(S19)、次の現場に移動する(S22:No,S23)。
【0048】
その一方で、現場の施工状態が設計要求16の想定状態に不一致であれば(S18:No)、照合結果は不適合と判定され(S20)、是正勧告を発動したうえで(S21)、次の現場に移動する(S22:No,S23)。これにともなって、点検情報及び照合結果(適合/不適合)のデータは点検リスト(
図7)に蓄積されていく。そして、対象となる境界領域(a1~a6,b1~b6…)の現場を全て確認したところで終了する(S22:Yes、END)。
【0049】
以上述べた少なくともひとつの実施形態のプラント保全管理支援装置によれば、設計要求を境界領域に反映させる機能を持つことにより、予想される事象に対処する設計要求を3Dモデル又は2D図面上で一元的に可視化し保全確認の作業を容易化し品質を向上させるプラント保全管理技術を提供することが可能となる。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0051】
以上説明したプラント保全管理支援装置は、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスやキーボードなどの入力装置と、通信I/Fとを、備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。このためプラント保全管理支援装置の構成要素は、コンピュータのプロセッサで実現することも可能であり、プラント保全管理支援プログラムにより動作させることが可能である
【0052】
またプラント保全管理支援プログラムは、ROM等に予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供するようにしてもよい。
【0053】
また、本実施形態に係るプラント保全管理支援プログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしてもよい。また、プラント保全管理支援装置は、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワーク又は専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
【符号の説明】
【0054】
10(10A,10B)…プラント保全管理支援装置、11…3Dモデル、12…2D図面、15a(15)…第1幾何情報、15b(15)…第2幾何情報、16…設計要求、17a…第1抽出部、17b…第2抽出部、21…修正部、25…反映部、26…表示部。