(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106886
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】加熱装置、および、その制御方法
(51)【国際特許分類】
H05B 6/10 20060101AFI20240801BHJP
H05B 6/06 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
H05B6/10 381
H05B6/06 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011359
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】520285880
【氏名又は名称】中部電力ミライズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 千春
(72)【発明者】
【氏名】吉光 聖洋
【テーマコード(参考)】
3K059
【Fターム(参考)】
3K059AA02
3K059AA08
3K059AB26
3K059AC07
3K059AC38
3K059AC54
3K059AD03
3K059AD05
3K059AD13
3K059CD15
3K059CD16
3K059CD75
(57)【要約】
【課題】非磁性金属のインゴットを誘導加熱によって加熱する際の加熱効率や加熱品質のばらつきの発生を抑制する技術を提供する。
【解決手段】加熱装置は、非磁性金属のインゴットを搬送する搬送部と、前記インゴットの形状に関する情報を取得する情報取得部と、コイルを備え、前記コイルによる誘導加熱によって、前記搬送部に搬送されている前記インゴットを加熱する加熱部と、前記情報取得部によって取得された前記形状に関する情報を用いて、前記加熱部への前記インゴットの搬送の可否を判定する判定処理と、前記形状に関する情報を用いて、前記加熱部による前記インゴットの加熱条件を決定する加熱制御処理と、を実行する制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性金属のインゴットを加熱する加熱装置であって、
前記インゴットを搬送する搬送部と、
前記インゴットの形状に関する情報を取得する情報取得部と、
コイルを備え、前記コイルによる誘導加熱によって、前記搬送部に搬送されている前記インゴットを加熱する加熱部と、
前記情報取得部によって取得された前記形状に関する情報を用いて、前記加熱部への前記インゴットの搬送の可否を判定する判定処理と、前記形状に関する情報を用いて、前記加熱部による前記インゴットの加熱条件を決定する加熱制御処理と、を実行する制御部と、
を備える、加熱装置。
【請求項2】
請求項1記載の加熱装置であって、
前記情報取得部は、前記形状に関する情報として、前記インゴットの寸法を取得し、
前記制御部は、予め準備された、前記寸法に一意に対応付けられた前記インゴットに関する情報を用いて、前記判定処理と、前記加熱制御処理と、を実行する、加熱装置。
【請求項3】
請求項2記載の加熱装置であって、
前記制御部は、予め準備された、前記寸法のうちの厚みと前記インゴットの重量とが一意に対応付けられた関係を用いて、前記インゴットの重量を取得し、前記加熱制御処理において、前記重量に応じて、前記インゴットの加熱条件を決定する、加熱装置。
【請求項4】
請求項1記載の加熱装置であって、
前記加熱部は、前記搬送部によって前記コイルの内部空間に挿入された前記インゴットを加熱するように構成されており、
前記制御部は、前記判定処理において、前記形状に関する情報として取得された前記インゴットの寸法が、前記コイルの寸法に応じて予め定められた許容範囲内であるときに、前記コイルへの前記インゴットの挿入を許容し、前記インゴットの寸法が、前記許容範囲外であるときに、前記インゴットの前記コイルへの挿入を中止する、加熱装置。
【請求項5】
請求項1記載の加熱装置であって、
前記加熱部は、前記搬送部によって前記コイルの内部空間に挿入された前記インゴットを加熱するように構成されており、
前記コイルの巻き線は、前記コイルに挿入された前記インゴットの側面に対する離間距離が略均一に保たれるように巻かれている、加熱装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の加熱装置であって、
前記加熱部は、
電源に接続された共振形インバータ回路と、
前記コイルと共振コンデンサとを含む共振回路と、
前記共振形インバータ回路と前記共振回路との間に設けられ、前記共振形インバータ回路から前記共振回路に電圧降下をさせながら電力を伝達するトランスと、
を備える、加熱装置。
【請求項7】
請求項6記載の加熱装置であって、
前記搬送部は、前記インゴットを前記加熱部に対して重力方向に搬送し、
前記加熱部は、前記誘導加熱によって前記インゴットを融解させ、前記インゴットが融解した金属を重力によって下方に落下させ、
前記制御部は、前記共振形インバータ回路の出力に基づいて、前記搬送部による前記インゴットの前記コイル内への挿入を制御する、加熱装置。
【請求項8】
非磁性金属のインゴットを搬送しながら、加熱部においてコイルによる誘導加熱によって前記インゴットを加熱する加熱装置の制御方法であって、
前記インゴットの加熱前に、前記インゴットの形状に関する情報を取得する工程と、
前記インゴットの加熱前に、前記形状に関する情報を用いて、前記インゴットの前記加熱部への搬送の可否を判定する工程と、
前記インゴットの加熱前に、前記形状に関する情報を用いて、前記加熱部による前記インゴットの加熱条件を決定する工程と、
を備える、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、非磁性金属のインゴットを加熱する加熱装置、および、その制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非磁性金属のインゴットの一例としては、アルミニウムのインゴットが知られている。インゴットは、鋳物の製造の際に加熱されて融解される。例えば、下記の特許文献1には、インゴットを融解させる前の予熱のために、火炎放射によってインゴットを加熱する予熱装置が開示されている。
【0003】
ところで、非磁性金属の加熱方法としては、上記のような火炎放射等の燃焼による方法以外に、誘導加熱を用いた方法が知られている。アルミニウムなどの非磁性金属のインゴットの加熱に誘導加熱を利用すれば、加熱効率を向上させることができ、加熱のための設備の小型化も可能である。また、インゴットの加熱の際の二酸化炭素の発生量の低減も可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
誘導加熱によって非磁性金属を加熱する場合、加熱効率を高めるためには、加熱対象の非磁性金属と誘導加熱用のコイルとの間の距離をより小さくすることが好ましい。しかしながら、一般に、インゴットは、製造上の寸法誤差のばらつきが大きい傾向にある。そのため、誘導加熱によるインゴットの加熱装置では、多くの場合、インゴットの寸法のばらつきに対応できるように、コイルとインゴットとの間に、大きめのクリアランスを設けており、それが加熱効率の低下の原因になっていた。また、誘導加熱によるインゴットの加熱装置では、インゴットの寸法誤差に起因するコイルとインゴットの間の距離のばらつきにより、インゴットごとに加熱効率に差が生じ、必要な加熱時間が変動して、加熱品質に影響する場合があった。
【0006】
本願発明は、寸法のばらつきが大きい非磁性金属のインゴットを誘導加熱によって加熱する際の加熱効率や加熱品質のばらつきの発生を抑制できる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
[第1形態]第1形態は、非磁性金属のインゴットを加熱する加熱装置として提供される。第1形態の加熱装置は、前記インゴットを搬送する搬送部と、前記インゴットの形状に関する情報を取得する情報取得部と、コイルを備え、前記コイルによる誘導加熱によって、前記搬送部に搬送されている前記インゴットを加熱する加熱部と、前記情報取得部によって取得された前記形状に関する情報を用いて、前記加熱部への前記インゴットの搬送の可否を判定する判定処理と、前記形状に関する情報を用いて、前記加熱部による前記インゴットの加熱条件を決定する加熱制御処理と、を実行する制御部と、
を備える。
第1形態の加熱装置によれば、インゴットの形状に関する情報に基づいて加熱部へのインゴットの搬送の可否が判定される。そのため、例えば、寸法誤差が大きいなど、規格から大きく外れた形状のインゴットが加熱部に搬送されることを抑制できる。これにより、搬送中に加熱部に干渉する可能性がある形状を有するインゴットが加熱部に搬送されることを抑制でき、加熱部を保護することができる。また、コイルに干渉するほど大きい寸法誤差を有するインゴットが加熱部に搬送されることを抑制できるため、コイルとインゴットとの間のクリアランスを小さく設計することも可能になる。さらに、第1形態の加熱装置によれば、インゴットの形状に関する情報を用いてインゴットの加熱条件が決定されるため、加熱対象のインゴットの形状に応じた適切な加熱条件でインゴットを加熱できる。よって、インゴットの形状のばらつきに起因して、加熱効率や加熱品質にばらつきが生じることを抑制できる。
【0009】
[第2形態]上記の第1形態の加熱装置において、前記情報取得部は、前記形状に関する情報として、前記インゴットの寸法を取得し、前記制御部は、予め準備された、前記寸法に一意に対応付けられた前記インゴットに関する情報を用いて、前記判定処理と、前記加熱制御処理と、を実行してよい。
第2形態の加熱装置によれば、予め準備されたインゴットに関する情報を用いることにより、搬送中のインゴットについて、形状に関する情報以外の様々な情報を取得することができる。よって、情報取得部によって取得する情報量を低減することができる。また、情報取得部の装置構成の簡素化や、制御部による判定精度の向上、処理内容の簡略化、処理時間の短縮等が可能である。
【0010】
[第3形態]上記第2形態の加熱装置において、前記制御部は、予め準備された、前記寸法のうちの厚みと前記インゴットの重量とが一意に対応付けられた関係を用いて前記インゴットの重量を取得し、前記加熱制御処理において、前記重量に応じて、前記インゴットの加熱条件を決定してよい。
第3形態の加熱装置によれば、インゴットの厚みの計測により、インゴットの重量に応じた適切な加熱量を実現する加熱条件の決定が可能である。よって、加熱装置によるインゴットの加熱をより効率的に実行できる。
【0011】
[第4形態]上記第1形態、第2形態、および、第3形態のいずれか1つに記載の加熱装置において、前記加熱部は、前記搬送部によって前記コイルの内部空間に挿入された前記インゴットを加熱するように構成されており、前記制御部は、前記判定処理において、前記形状に関する情報として取得された前記インゴットの寸法が、前記コイルの寸法に応じて予め定められた許容範囲内であるときに、前記コイルへの前記インゴットの挿入を許容し、前記インゴットの寸法が、前記許容範囲外であるときに、前記インゴットの前記コイルへの挿入を中止してよい。
第4形態の加熱装置によれば、インゴットがコイル内に挿入されて加熱されるため、加熱部の小型化が可能であるとともに、インゴットの加熱効率を、さらに高めることができる。また、寸法が大きいインゴットが搬送されてコイルに干渉することを抑制できる。
【0012】
[第5形態]上記第1形態、第2形態、第3形態、および、第4形態のいずれかに記載の加熱装置において、前記加熱部は、前記搬送部によって前記コイルの内部空間に挿入された前記インゴットを加熱するように構成されており、
前記コイルの巻き線は、前記コイルに挿入された前記インゴットの側面に対する離間距離が略均一に保たれるように巻かれてよい。
第5形態の加熱装置によれば、挿入方向に見たときのインゴットの外周輪郭形状とコイルの内周輪郭形状とが異なることによって、コイルとコイルに挿入されたインゴットとの間に大きな隙間が生じることを抑制することができる。よって、インゴットの加熱効率をより一層、高めることができる。
【0013】
[第6形態]上記第1形態、第2形態、第3形態、第4形態、および、第5形態のいずれかに記載の加熱装置において、前記加熱部は、電源に接続された共振形インバータ回路と、前記コイルと共振コンデンサとを含む共振回路と、前記共振形インバータ回路と前記共振回路との間に設けられ、前記共振形インバータ回路から前記共振回路に電圧降下をさせながら電力を伝達するトランスと、を備えてよい。
第6形態の加熱装置によれば、共振形インバータ回路と共振回路との間でのトランスによる電圧変換により、共振回路のコイルに流れる電流を増大せることができる。また、共振回路での発振が、トランスを介在させたことによるインダクタンスの増大分を打ち消す方向に働く。そのため、共振形インバータ回路と共振回路の全体で見たときのインダクタンスの増加を抑えながら、コイルの巻き数を増加させることができる。コイルの巻き数を増加させることができれば、誘導加熱によるインゴットの加熱効率を高めることができる。
【0014】
[第7形態]上記の第6形態に記載の加熱装置において、前記搬送部は、前記インゴットを前記加熱部に対して重力方向に搬送し、前記加熱部は、前記誘導加熱によって前記インゴットを融解させ、前記インゴットが融解した金属を重力によって下方に落下させ、前記制御部は、前記共振形インバータ回路の出力に基づいて、前記搬送部による前記インゴットの前記コイル内への挿入を制御してよい。
第7形態の加熱装置によれば、誘導加熱による高い加熱効率でインゴットを融解させることができる。また、インゴットが融解した金属を、重力を利用して加熱部から移動させることができるため効率的である。さらに、第7形態の加熱装置では、融解によってインゴットの体積が減少するのに従って、加熱部の共振形インバータ回路の出力が自動的に低下する。制御部は、その共振形インバータ回路の出力に基づいて搬送部を制御するため、コイルへのインゴットの挿入を、インゴットの融解状態に応じて適切に制御することが可能である。
【0015】
[第8形態]第8形態は、非磁性金属のインゴットを搬送しながら、加熱部においてコイルによる誘導加熱によって前記インゴットを加熱する加熱装置の制御方法として提供される。第8形態の制御方法は、前記インゴットの加熱前に、前記インゴットの形状に関する情報を取得する工程と、前記インゴットの加熱前に、前記形状に関する情報を用いて、前記インゴットの前記加熱部への搬送の可否を判定する工程と、前記インゴットの加熱前に、前記形状に関する情報を用いて、前記加熱部による前記インゴットの加熱条件を決定する工程と、を備える。
第8形態の制御方法によれば、インゴットの形状に関する情報によって加熱部へのインゴットの搬送の可否が判定される。そのため、例えば、寸法誤差が大きいなど、規格から大きくはずれた形状のインゴットが加熱部に搬送されることを抑制することができる。これにより、搬送中に加熱部に干渉する可能性がある形状を有するインゴットが加熱部に搬送されることを抑制できるため、加熱部を保護することができる。また、コイルに干渉するような形状ほど大きい寸法誤差を有するインゴットが加熱部に搬送されることを抑制できるため、コイルとインゴットとの間のクリアランスを小さく設計することも可能になる。さらに、第8形態の制御方法によれば、インゴットの形状に関する情報を用いてインゴットの加熱条件が決定されるため、インゴットの形状に応じた適切な加熱条件でインゴットを加熱できる。よって、インゴットの形状のばらつきに起因して、加熱効率や加熱品質にばらつきが生じることを抑制できる。
【0016】
本願発明は、加熱装置や加熱装置の制御方法以外の種々の形態によって実現することが可能である。本願発明は、例えば、加熱システムや、加熱装置の制御装置、非磁性金属のインゴットの加熱方法、インゴットを加熱して加工する加工装置および加工方法、インゴットを融解させて鋳物を製造する製造装置および製造方法等の形態によって実現することができる。また、本願発明は、前述した制御方法を実行させるためのコンピュータプログラムや、そのプログラムが記録された記録媒体等の形態で実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態の加熱装置の構成を示す概略図。
【
図4】金型中でインゴットが鋳造されている様子を例示する概略図。
【
図5】インゴット情報の内容を説明するための概略ブロック図。
【
図6】加熱部のコイル内に挿入されたインゴットを示す概略図。
【
図7】第2実施形態の加熱部のコイルを示す概略図。
【
図8】第3実施形態の加熱装置の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.第1実施形態:
図1は、第1実施形態の加熱装置10の構成を示す概略図である。加熱装置10は、非磁性金属のインゴットIGを誘導加熱によって加熱する。本実施形態では、インゴットIGは、アルミニウムインゴットであり、棒状体として構成されている。また、本実施形態では、加熱装置10は、インゴットIGを融解する前の予熱のための加熱を実行する。なお、本実施形態のインゴットIGは、後に参照する
図6に示されているように、長手方向に見たときの外周輪郭形状が略台形形状を有している。
【0019】
加熱装置10は、複数のインゴットIGを次々に搬送して連続的に加熱する。加熱装置10は、加熱装置10の動作を制御する制御部11と、インゴットIGを搬送する搬送部20と、インゴットIGの形状に関する情報を取得する情報取得部25と、インゴットIGを加熱する加熱部30と、を備える。
【0020】
制御部11は、例えば、マイクロプロセッサによって構成された中央処理装置(CPU)と、主記憶装置(RAM)と、を備えるコンピュータによって構成される。制御部11は、CPUがRAM上の記憶領域を利用して、命令やプログラムを読み込んで実行することにより、加熱装置10を制御するための種々の機能を発揮する。なお、制御部11は、単体のコンピュータによって構成されていなくてもよい。制御部11によって実現される機能の少なくとも一部は、単体の電子回路や複数の電子回路の組み合わせによって実現されていてもよい。
【0021】
本実施形態では、制御部11は、図示しない記憶部に、予め準備されたインゴットIGに関する情報に相当するインゴット情報IDを格納している。制御部11は、インゴット情報IDを用いて、インゴットIGの加熱処理を実行する。インゴット情報IDの詳細、および、制御部11が実行する加熱処理の手順については後述する。
【0022】
搬送部20は、例えば、インゴットIGの搬送路を構成する複数の搬送ローラー21を備える。搬送部20は、図示しないモータによる搬送ローラー21の回転駆動によってインゴットIGを長手方向に搬送する。搬送部20によるインゴットIGの搬送は、制御部11によって制御される。他の実施形態では、インゴットIGの搬送路は、ベルトコンベアによって構成されてもよい。
【0023】
本実施形態では、搬送部20は、インゴットIGの搬送路の側方に、搬送中のインゴットIGを搬送路から押し出す押出機構23を有している。押出機構23は、後述する情報取得部25がインゴットIGの形状に関する情報を検出する場所と加熱部30との間に設けられている。押出機構23は、例えば、エアシリンダーなどの伸縮機構を備えており、その伸縮機構が伸長することにより、インゴットIGを側方から押して搬送路から排除することができる。押出機構23は、制御部11から指令を受けたときに、インゴットIGを搬送路から押し出す。
【0024】
情報取得部25は、インゴットIGの搬送路上に設けられている。情報取得部25は、制御部11の制御下において、搬送中のインゴットIGについて、加熱部30に搬送される前にその形状に関する情報を取得する。情報取得部25は、取得した情報を制御部11に出力する。詳細は後述するが、制御部11は、情報取得部25によって取得されたインゴットIGの形状に関する情報を用いて、インゴットIGの搬送の可否の判定や、インゴットIGの加熱条件の制御を実行する。
【0025】
本実施形態では、情報取得部25は、インゴットIGの形状に関する情報として、インゴットIGの寸法情報を取得する。情報取得部25は、例えば、レーザーセンサーによって構成され、インゴットIGを光学的に走査し、自身とインゴットIGとの間の距離を検出することにより、インゴットIGの寸法を計測する。なお、他の実施形態では、情報取得部25は、レーザーセンサーの代わりに、接触式センサーによって構成されてもよい。
【0026】
本実施形態の情報取得部25は、インゴットIGの搬送路の上方からインゴットIGにレーザーを照射することにより、インゴットIGの寸法のうちの厚みを計測する。より具体的には、情報取得部25は、インゴットIGを長手方向に走査し、複数個所の厚みを計測することにより、厚みの平均値を取得する。厚みを計測する理由については後述する。
【0027】
なお、他の実施形態では、情報取得部25は、インゴットIGの寸法として、厚みに加えて、あるいは、厚みの代わりに、他の寸法を計測してもよい。情報取得部25は、インゴットIGの幅を計測してもよいし、インゴットIGの長さを計測してもよい。情報取得部25は、レーザーによりインゴットIGを走査して、その走査方向における寸法の変化やばらつきに関する情報を取得可能であるとしてもよい。情報取得部25は、互いに直交する三方向からレーザーを照射して、インゴットIGの三次元測定が可能であるとしてもよい。
【0028】
加熱部30は、制御部11の制御下において、搬送部20によって搬送されていくインゴットIGを誘導加熱によって加熱する。本実施形態では、加熱部30は、第1加熱部30aと、第2加熱部30bと、を含む。第1加熱部30aと第2加熱部30bとは、インゴットIGの搬送路に、第1加熱部30aを上流側とし、第2加熱部30bを下流側として隣り合って配列されている。インゴットIGは、搬送部20によって搬送されることにより、第1加熱部30aと第2加熱部30bとを連続して通過する。
【0029】
なお、第1加熱部30aと第2加熱部30bの少なくとも一方は省略されてもよい。以下では、第1加熱部30aと第2加熱部30bとを特に区別しなくてもよい場合には、単に、「加熱部30」と呼ぶ場合がある。
【0030】
各加熱部30a,30bは、インゴットIGの加熱のための炉室31と、炉室31内に設置された誘導加熱用のコイル35と、を備える。本実施形態では、コイル35はソレノイドコイルによって構成されている。インゴットIGは、その長手方向を挿入方向として、搬送部20によって、コイル35の内部空間に挿入されることにより加熱される。
【0031】
本実施形態の加熱装置10では、インゴットIGがコイル35内に挿入されて加熱されるため、加熱部30の小型化が可能である。また、この構成であれば、コイル35とインゴットIGとの間の距離を小さくすることができるため、インゴットIGの加熱効率を高めることができる。
【0032】
なお、本明細書において、「加熱効率」は、加熱で消費されたエネルギー量に対する加熱対象物に付与された熱量で求められる値に相当する。従って、加熱装置10での加熱効率は、加熱部30でインゴットIGに付与された熱量を、加熱部に供給される外部電源からの出力で除することにより算出できる。インゴットIGに付与された熱量は、例えば、熱電対でインゴットIGの複数個所の温度を計測して平均温度を出し、その平均温度と、インゴットIGの重量と、インゴットIGの材料の平均比熱と、を乗算することにより算出できる。
【0033】
図2は、加熱部30が有する回路構成を示す概略図である。
図2に示す回路構成は、各加熱部30a,30bに共通する。加熱部30は、共振形インバータ回路40と、共振回路50と、トランス55と、を備える。
【0034】
共振形インバータ回路40は、制御部11の制御下において、誘導加熱用のコイル35に供給される交流の周波数及び電力を調整する電源装置として機能する。共振形インバータ回路40は、外部電源である交流電源ACに接続されたコンバータ回路部41と、交流変換回路部45と、を備える。
【0035】
コンバータ回路部41は、交流電源ACの交流を直流に変換して交流変換回路部45に出力する。コンバータ回路部41は、ノイズフィルタ42と、整流素子43と、平滑コンデンサ44と、を有する。ノイズフィルタ42は、交流電源ACと整流素子43との間に設けられている。整流素子43は、交流変換回路部45に接続されている。平滑コンデンサ44は、整流素子43とともに交流変換回路部45に対して並列に接続されている。
【0036】
交流変換回路部45は、スイッチング回路46と、一対の一次側共振コンデンサ48a,48bと、を有する。交流変換回路部45は、スイッチング回路46での周期的な開閉動作により、コンバータ回路部41から出力される直流を、制御部11からの指令に応じた周波数と電力の交流に変換して出力する。
【0037】
本実施形態では、スイッチング回路46は、フルブリッジ方式を採用しており、4つのスイッチング素子47を備える。スイッチング素子47は、例えば、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT;Insulated Gate Bipolar Transistor)によって構成される。なお、スイッチング回路46は、ハーフブリッジ方式を採用していてもよい。
【0038】
スイッチング回路46は、トランス55が有する一次コイル56に接続されている。一対の一次側共振コンデンサ48a,48bは、スイッチング回路46と一次コイル56との間に設けられている。一対の一次側共振コンデンサ48a,48bは、一次コイル56の一方の端子に対して互いに並列に接続されている。
【0039】
なお、本実施形態の共振形インバータ回路40は、業務用のIHクッキングヒータ用に設計された汎用品のIHインバータに相当する構成を有する。共振形インバータ回路40の出力周波数は、10kHz以上100kHz以下であり、定格出力は、3kW以上30kW以下としてよい。
【0040】
共振回路50は、
図1で説明したインゴットIGを加熱するための誘導加熱用のコイル35と、コイル35に直列に接続されている一対の二次側共振コンデンサ51a,51bと、を備える。コイル35は、一対の二次側共振コンデンサ51a,51bを介して、トランス55が有する二次コイル57に直列に接続されている。一対の二次側共振コンデンサ51a,51bはそれぞれ、コイル35の両端に設けられている。
【0041】
トランス55の二次コイル57の巻き数は、一次コイル56の巻き数より小さい。これにより、トランス55は、共振形インバータ回路40から共振回路50に電圧降下をさせながら電力を伝達する。
【0042】
上記の回路構成を有する各加熱部30a,30bによれば、共振形インバータ回路40と共振回路50との間に設けられたトランス55の電圧変換作用により、共振回路50のコイル35に流れる電流を増大せることができる。また、上記の回路構成によれば、一対の二次側共振コンデンサ51a,51bの作用によって共振回路50で生じる発振が、トランス55を介在させたことによるインダクタンスの増大分を打ち消す方向に働く。そのため、加熱部30の回路全体で見たときのインダクタンスの増加を抑えながら、コイル35の巻き数を増加させることができる。コイル35の巻き数を増加させることができれば、誘導加熱によるインゴットIGの加熱効率を高めることができる。
【0043】
図3には、制御部11の制御によって加熱装置10において実行される加熱処理のフローチャートが示されている。加熱装置10では、1つのインゴットIGを加熱するステップS10~S50の1周期分の加熱処理が周期的に繰り返されことにより、複数のインゴットIGの加熱が連続的に実行される。
【0044】
ステップS10では、搬送部20により、現周期の加熱対象となるインゴットIGの搬送が開始される。ステップS20では、情報取得部25により、搬送中のインゴットIGの形状に関する情報が取得される。上述したように、本実施形態では、情報取得部25は、形状に関する情報として、インゴットIGの厚みを計測する。
【0045】
図4を参照して、インゴットIGの厚みを計測する理由を説明する。
図4は、金型MM中でインゴットIGが鋳造されている様子を示す概略断面図である。
図4には、インゴットIGの長手方向に直交する切断面における金型MMのキャビティ内の様子が模式的に示されている。
【0046】
インゴットIGは、金型MMのキャビティ内に融解したアルミニウムが注入されることによって製造される。インゴットIGの寸法誤差は、多くの場合、金型MMに注入される融解金属の量の誤差や、水平面に対する金型MMの配置角度の誤差によって生じる。そのため、インゴットIGの寸法誤差の多くは、厚みTiの誤差として現れる。このことは、インゴットIGに関しては、多くの場合、その厚みTiの誤差を把握できれば、金型MMのキャビティの形状に基づいて、インゴットIGの幅Wiや体積の誤差を把握できることを意味している。そこで、本実施形態の加熱装置10では、インゴットIGの寸法誤差を把握するために、情報取得部25によって、インゴットIGの厚みを計測する。
【0047】
図5を参照して、情報取得部25によって取得したインゴットIGの厚みから、加熱処理に用いられるインゴットIGに関する情報を取得する方法を説明する。
図5は、
図1に示した、制御部11が有するインゴット情報IDの内容を示す概略ブロック図である。
【0048】
本実施形態では、制御部11は、以下に説明するように、インゴット情報IDを用いることにより、情報取得部25によって得たインゴットIGの厚みTiから、インゴットIGの他の寸法や、体積、重量を取得することができる。インゴットIGの厚みTiとインゴット情報IDに含まれる情報とは、マップやデータベースなどによって一意に対応づけられている。
【0049】
インゴット情報IDには、インゴットIGに関する情報として、例えば、インゴットIGの幅Wiや、インゴットIGの体積Viが含まれている。本明細書において、インゴットIGの幅Wiは、インゴットIGの幅方向の寸法のうちの最大値である。これらの情報は、インゴットIGの金型MMのキャビティの寸法の情報から予め取得されたものである。これにより、制御部11は、インゴット情報IDを用いて、インゴットIGの厚みTiに対して、インゴットIGの幅Wiと体積Viとを取得することができる。
【0050】
また、インゴット情報IDには、インゴットIGの材料の体積密度が含まれる。これにより、制御部11は、インゴット情報IDを用いて求めた体積Viと体積密度とを用いて、インゴット情報IDの重量を算出することができる。インゴット情報IDには、インゴットIGの材料の比熱が含まれる。制御部11は、算出したインゴットIGの重量とインゴット情報IDの比熱とを用いて、インゴットIGを目標温度まで加熱するのに必要な加熱量を算出する。
【0051】
このように、本実施形態の加熱装置10では、制御部11がインゴット情報IDを用いることにより、情報取得部25がインゴットIGの厚みTiを計測するだけで、加熱処理に用いられるインゴットIGに関する種々の情報を取得することができる。これにより、情報取得部25によって取得する情報量が低減され、情報取得部25の簡素化が実現されている。また、以下に説明するステップS30,S40において制御部11が処理する情報量が低減され、加熱装置10の制御内容の簡略化や処理時間の短縮等が実現されている。
【0052】
図3に戻る。ステップS30は、制御部11が、情報取得部25によって取得された、インゴットIGの形状に関する情報を用いて、インゴットIGが加熱部30に搬送可能か否かを判定する判定処理に相当する。この判定処理では、インゴットIGの形状が、搬送中に加熱部30に干渉するか否かが判定される。本実施形態では、制御部11は、情報取得部25が計測したインゴットIGの寸法と、加熱部30の寸法に基づいて予め定められた閾値と、を比較することによって、インゴットIGが加熱部30に干渉するか否かを判定する。また、本実施形態では、上述したように、インゴットIGは加熱部30のコイル35の内部空間に挿入されるため、判定処理の閾値は、コイル35の寸法に基づいて定められる。
【0053】
ステップS30では、制御部11は、まず、インゴット情報IDを参照することにより、情報取得部25から得られたインゴットIGの厚みTiの計測結果に対して、インゴットIGの幅Wiを取得する。次に制御部11は、厚みTiと幅Wiとを用いて、インゴットIGの加熱部30への搬送の可否を判定する。
【0054】
図6を参照する。
図6は、加熱部30のコイル35内に挿入されたインゴットIGを長手方向に見たときの概略図である。本実施形態では、インゴットIGは幅Wiが厚みTiよりも大きい略台形形状を有している。また、コイル35の内部空間の入口の開口形状は、略長方形形状を有しており、その幅Wcが高さHcより大きい。
【0055】
制御部11は、インゴットIGの厚みTiが、予め定められた厚みの上限値TL以下であり、かつ、インゴットIGの幅Wiが、予め定められた幅の上限値WL以下である場合に、インゴットIGを加熱部30へと搬送可能であると判定する。一方、制御部11は、インゴットIGの厚みTiが上限値TLより大きい場合、あるいは、インゴットIGの幅Wiが上限値WLより大きい場合に、インゴットIGを加熱部30へと搬送できないと判定する。
【0056】
ステップS30の判定処理で判定基準となる閾値は、コイル35の幅Wcと高さHcに基づいて定められる。上述した上限値TL,WLはそれぞれ、コイル35の内部空間の幅Wcおよび高さHcに所定のクリアランスの分を差し引いた値より小さい値に設定されている。所定のクリアランスは、例えば、コイル35の内部空間の幅Wcおよび高さHcの5~30%程度の値としてもよい。
【0057】
ステップS30で、インゴットIGを加熱部30へと搬送できないと判定した場合には、インゴットIGが加熱部30のコイル35に干渉する可能性が高い。そのため、制御部11は、ステップS35において、搬送部20によるインゴットIGの加熱部30への搬送を中止させる。つまり、制御部11は、インゴットIGの加熱部30のコイル35への挿入を中止させる。この場合には、本実施形態では、制御部11は、搬送部20の押出機構23によって、インゴットIGを搬送路から排除する。
【0058】
ステップS30で、インゴットIGを加熱部30へと搬送可能と判定した場合には、インゴットIGが加熱部30のコイル35に干渉する可能性が小さいため、制御部11は、搬送部20に、そのままインゴットIGを加熱部30へと搬送させる。そして、ステップS40を実行する。
【0059】
ステップS40は、制御部11が、情報取得部25によって取得されたインゴットIGの形状に関する情報を用いて、加熱部30によるインゴットIGの加熱条件を決定する加熱制御処理に相当する。ステップS40は、インゴットIGが加熱部30に到達する前に実行される。本実施形態では、制御部11は、インゴットIGの厚みTiとインゴット情報IDとを用いて、上述した方法により、インゴットIGの重量を取得する。また、制御部11は、取得したインゴットIGの重量とインゴット情報IDに含まれる比熱とからインゴットIGを目標温度まで加熱するのに必要な加熱量を算出する。
【0060】
制御部11は、算出した加熱量を達成するための加熱条件を決定する。本実施形態では、制御部11は、インゴットIGの加熱時間、つまり、インゴットIGが加熱部30を通過するのにかかる時間を決定する。制御部11は、加熱条件として、加熱部30のコイル35に流す目標電流を決定してもよい。このように、本実施形態の加熱装置10によれば、制御部11は、インゴット情報IDの利用により、情報取得部25によってインゴットIGの厚みTiを計測するだけで、インゴットIGの重量に応じたより適切な加熱条件の決定が可能である。
【0061】
ステップS50では、制御部11は決定した加熱条件によって加熱部30によるインゴットIGの加熱を実行する。制御部11は、ステップS40で決定した加熱時間に基づいて、搬送部20によるインゴットIGの搬送速度を制御する。上記のように、ステップS40において、制御部11が、加熱条件として、コイル35の目標電流を決定した場合には、制御部11は、ステップS50において、その目標電流に応じて、共振形インバータ回路40が出力する電力を制御する。
【0062】
以上のように、本実施形態の加熱装置10によれば、情報取得部25によって取得されたインゴットIGの形状に関する情報に基づいて加熱部30へのインゴットの搬送の可否が判定される。これにより、例えば、寸法誤差が大きいインゴットIG等、搬送中に加熱部30に干渉するような形状を有するインゴットIGが加熱部30に搬送されることを抑制できる。よって、加熱部30をインゴットIGの干渉から保護することができる。
【0063】
また、本実施形態の加熱装置10によれば、コイル35に干渉するほど大きい寸法誤差を有するようなインゴットIGが加熱部30に搬送されることが抑制される。そのため、コイル35とインゴットIGとの間のクリアランスを小さく設計することが可能になる。よって、コイル35とインゴットIGとの間のクリアランスを低減して加熱部30によるインゴットIGの加熱効率を高めるこができる。
【0064】
さらに、本実施形態の加熱装置10によれば、インゴットIGの形状に関する情報として取得された寸法情報を用いてインゴットIGの加熱条件が決定される。そのため、加熱対象のインゴットIGの寸法に応じた適切な加熱条件でインゴットIGを加熱できる。よって、インゴットIGの寸法のばらつきに起因して、加熱効率や加熱品質にばらつきが生じることを抑制できる。
【0065】
2.第2実施形態:
図7は、第2実施形態の加熱装置10Aが備える加熱部30Aが有する誘導加熱用のコイル35Aの構成を示す概略図である。
図7は、炉室31に収容されているコイル35AにインゴットIGが挿入された状態をインゴットIGの長手方向に見たときの様子を示している。第2実施形態の加熱装置10Aは、コイル35Aの形状が異なる点以外は、第1実施形態の加熱装置10の構成とほぼ同じである。
【0066】
第2実施形態では、コイル35Aの巻き線は、コイル35Aに挿入されたインゴットIGの側面に対する離間距離が略均一に保たれるように巻かれている。これにより、コイル35Aの開口形状は、長手方向に見たときのインゴットIGの外周輪郭形状に対応した形状となっている。第2実施形態では、コイル35Aの開口形状は、長手方向に見たときのインゴットIGの外周輪郭形状と略相似な略台形形状となっている。
【0067】
ここで、第1実施形態での参照図である
図6を参照する。
図6に示されているように、第1実施形態の加熱装置10では、コイル35の下端側ほど、コイル35とインゴットIGとの間の距離が大きくなっている。
【0068】
これに対して、第2実施形態の加熱装置10Aによれば、
図7に示すように、コイル35Aとコイル35Aの内部空間に挿入されたインゴットIGとの間の距離が、コイル35Aの部位ごとに異なってしまうことが抑制されている。そのため、第2実施形態の加熱装置10Aによれば、第1実施形態の加熱装置10よりも、誘導加熱の加熱効率が高められる。
【0069】
第2実施形態の加熱装置10Aによれば、前述のように加熱効率を高めることができる分だけ、コイル35AとインゴットIGとの間のクリアランスを大きくとることが許容される。よって、第2実施形態の加熱装置10Aによれば、加熱効率の低下を抑制しながら、加熱部30Aに搬送可能なインゴットIGの寸法の許容範囲を拡大することが可能である。
【0070】
その他に、第2実施形態の加熱装置10Aおよびその制御方法によれば、上記の第1実施形態で説明したのと同様な種々の効果を奏することができる。
【0071】
3.第3実施形態:
図8は、第3実施形態の加熱装置10Bの構成を示す概略図である。第3実施形態の加熱装置10Bは、以下に説明する点以外は、第1実施形態の加熱装置10の構成とほぼ同じである。
図8には、重力方向を示す矢印Gを図示してある。
【0072】
加熱装置10Bでは、搬送部20Bは、三軸ロボットアームによって構成されており、インゴットIGを1つずつ把持して、加熱部30Bへと運搬する。また、加熱装置10Bでは、加熱部30Bは1つであり、コイル35の中心軸が重力方向に平行になるように配置されている。搬送部20Bは、把持したインゴットIGを、加熱部30Bに対して重力方向に搬送する。これにより、インゴットIGは、コイル35の上方からコイル35の内部空間へと、その長手方向に挿入される。なお、加熱部30Bは、コイル35の代わりに、第2実施形態で説明した
図7に示すコイル35Aのように、インゴットIGの形状に適合させたコイルを備えていてもよい。
【0073】
加熱装置10Bでは、加熱部30Bは、インゴットIGを誘導加熱により融解させ、融解した金属を下方に落下させる。そのため、加熱装置10Bは、加熱部30Bの下方に、融解した金属を受けて貯留する貯留部38を有する。図示は省略するが、貯留部38は、融解した金属の温度低下を抑制する保温機構を備えている。このように、加熱装置10Bによれば、インゴットIGが融解した金属を、重力を利用して加熱部30Bから移動させることができるため効率的である。
【0074】
加熱装置10Bでは、制御部11は、上記の第1実施形態および第2実施形態で説明したのと同様に、
図3に示す手順で加熱処理を実行する。制御部11は、ステップS20で情報取得部25によって計測されたインゴットIGの寸法を用いて、ステップS30の判定処理とステップS40の加熱制御処理とを実行する。
【0075】
加熱装置10Bでは、制御部11は、ステップS30で、インゴットIGを加熱部30Bに搬送できないと判定したときには、ステップS35で、搬送部20Bに、インゴットIGを図示しない回収場所へと搬送させる。そして、ステップS10において、搬送部20Bに、次の新しいインゴットIGを把持させ、その搬送を開始させる。
【0076】
加熱装置10Bでは、コイル35内においてインゴットIGが融解してその体積が減少すると、共振形インバータ回路40と共振回路50との間の共振の作用により、共振形インバータ回路40の出力が自動的に低下する。加熱装置10Bでは、制御部11は、インゴットIGが加熱部30Bで加熱されている間、加熱部30Bの共振形インバータ回路40の出力を検出している。制御部11は、共振形インバータ回路40の出力の所定の低下を検出すると、その出力の低下に応じて、コイル35内のインゴットIGの体積が所定の値以上になり、共振形インバータ回路40の出力が上昇するように、コイル35内のインゴットIGを下方に搬送する。これにより、コイル35内でのインゴットIGの位置が、インゴットIGの融解状態に応じて次第に下方へと移動される。このように、第3実施形態の加熱装置10Bによれば、共振形インバータ回路40の出力に基づいて、搬送部20BによるインゴットIGの搬送が適切に制御される。
【0077】
以上のように、第3実施形態の加熱装置10Bによれば、誘導加熱を利用して、インゴットIGの融解をより効率的に実行することができる。その他に、第3実施形態の加熱装置10Bおよびその制御方法によれば、上記の第1実施形態や第2実施形態で説明した種々の作用効果を奏することができる。
【0078】
4.他の実施形態:
本開示の技術は、上記の各実施形態において説明された構成に限定されることはない。上記の各実施形態の構成は、例えば、以下のように改変することも可能である。以下に説明する、他の実施形態の構成は、上記の実施形態中で説明された構成と同様に、本開示の技術を実施するための一形態として位置づけられる。
【0079】
4-1.他の実施形態1:
上記の各実施形態において、インゴットIGは、アルミニウム以外の非磁性金属によって構成されていてもよい。インゴットIGは、例えば、銅によって構成されていてもよいし、アルミニウムや銅を主成分とする合金によって構成されていてもよい。
【0080】
4-2.他の実施形態2:
上記の各実施形態において、インゴットIGは、長手方向に見たときの外周輪郭形状が略台形形状以外の形状を有していてもよい。この場合には、第2実施形態のコイル35Aの開口形状は、インゴットIGのその外周輪郭形状に応じて変更されてもよい。例えば、インゴットIGの長手方向に見たときの外周輪郭形状が略三角形形状である場合には、コイル35Aの開口形状はそれに応じて略三角形状に変更されてもよい。
【0081】
4-3.他の実施形態3:
上記の各実施形態において、加熱部30,30A,30Bは、誘導加熱用のコイル35,35Aの内部空間にインゴットIGが挿入されるように構成されていなくてもよい。例えば、加熱部30,30A,30Bでは、誘導加熱用のコイルが、インゴットIGの搬送経路の側方に配置されていてもよい。この場合には、ステップS30での判定処理で用いられる閾値は、例えば、加熱部30,30A,30Bの炉室31の入口の形状や寸法に基づいて定められてもよい。
【0082】
4-4.他の実施形態4:
上記の各実施形態において、加熱部30,30A,30Bは、
図2に示した回路構成以外の回路構成を有していてもよい。加熱部30,30A,30Bは、例えば、共振形インバータ回路40と誘導加熱用のコイル35,35Aとの間のトランス55が省略された回路構成を有していてもよい。また、加熱部30,30A,30Bは、一対の二次側共振コンデンサ51a,51bが省略された回路構成を有していてもよい。
【0083】
4-5.他の実施形態5:
上記の各実施形態において、制御部11は、インゴットIGの厚みTiとインゴットIGの幅Wiの少なくとも一方が予め定めた下限値以下であるときにも、インゴットIGを加熱部30へと搬送できないと判定してもよい。この場合、前記の下限値は、コイル35,35AとインゴットIGとの間のクリアランスが大きくなりすぎてインゴットIGの加熱効率が許容範囲を超える可能性がある値として設定されてもよい。このようにすれば、加熱効率が著しく低くなる可能性があるほど寸法誤差が大きいインゴットIGの加熱を予め中止することができるため、加熱装置10によるインゴットIGの加熱品質のばらつきを抑制できる。
【0084】
4-6.他の実施形態6:
上記の各実施形態において、制御部11は、ステップS30の後に、上記の各実施形態で説明した以外の判定結果に応じた処理を実行してもよい。例えば、制御部11は、ステップS30で、加熱部30へのインゴットIGの搬送ができないと判定した場合には、判定結果を管理者に通知する処理を実行してもよい。
【0085】
4-7.他の実施形態7:
上記の各実施形態の加熱装置10,10A,10Bは、例えば、構成部の少なくとも一部が離れた場所に設置されるなどした加熱システムとして構成されていてもよい。また、上記の各実施形態の加熱装置10,10A,10Bは、非磁性金属の鋳物を製造する製造装置や製造システムの一部として組み込まれていてもよい。
【0086】
4-8.他の実施形態8:
上記の各実施形態において、情報取得部25によって取得されるインゴットIGの形状に関する情報は、寸法以外の情報であってもよい。インゴットIGの形状に関する情報は、例えば、インゴットIGの光学的な走査によって得られる三次元形状を表す三次元データであってもよい。インゴットIの形状に関する情報は、インゴットIGを所定の方向から見たときの表面形状や所定の断面の形状を表す二次元データであってもよい。また、上記の各実施形態において、制御部11は、ステップS20で情報取得部25が計測した寸法を用いて、インゴットIGの形状を求めてもよい。例えば、制御部11は、複数個所のインゴットIGの厚みや幅の計測結果のばらつきからインゴットIGの既定の形状からの反りの大きさを検出してもよい。制御部11は、ステップS30において、求めたインゴットIGの形状に基づいて、そのインゴットIGを搬送したときに加熱部30,30A,30Bに干渉する部位があるか否かを判定してもよい。この場合には、制御部11は、インゴットIGが加熱部30,30A,30Bに干渉する可能性があると判定したときにインゴットIGの搬送を不可であると判定してもよい。また、制御部11は、ステップS40において、求めたインゴットIGの形状に基づいて、加熱条件を決定してもよい。例えば、制御部11は、インゴットIGの形状に応じて、部位ごとに加熱量を変更する制御を行ってもよい。
【符号の説明】
【0087】
10...加熱装置、10A...加熱装置、10B...加熱装置、11...制御部、20...搬送部、20B...搬送部、21...搬送ローラー、23...押出機構、25...情報取得部、30...加熱部、30A...加熱部、30B...加熱部、30a...第1加熱部、30b...第2加熱部、31...炉室、35...コイル、35A...コイル、38...貯留部、40...共振形インバータ回路、41...コンバータ回路部、42...ノイズフィルタ、43...整流素子、44...平滑コンデンサ、45...交流変換回路部、46...スイッチング回路、47...スイッチング素子、48a,48b...一次側共振コンデンサ、50...共振回路、51a,51b...二次側共振コンデンサ、55...トランス、56...一次コイル、57...二次コイル、AC...交流電源、ID...インゴット情報、IG...インゴット、MM...金型