(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106895
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】指定動物駆除装置及び指定動物駆除システム
(51)【国際特許分類】
A01M 29/16 20110101AFI20240801BHJP
A01M 29/10 20110101ALI20240801BHJP
A01M 29/12 20110101ALI20240801BHJP
【FI】
A01M29/16
A01M29/10
A01M29/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011377
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】522114232
【氏名又は名称】株式会社ヒューロビント
(71)【出願人】
【識別番号】522371787
【氏名又は名称】株式会社ゆまな
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松下 光次郎
(72)【発明者】
【氏名】日笠 克己
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121CC21
2B121DA33
2B121DA52
2B121DA58
(57)【要約】
【課題】
指定動物が指定区域に侵入することを抑制することができる指定動物駆除装置及び指定動物駆除システムを提供すること。
【解決手段】
指定動物駆除装置10は、指定動物Qを駆除するための装置であって、指定区域40に侵入した指定動物Qを追跡する追跡機能と、指定動物Qの追跡中または追跡終了後に、指定区域40における指定箇所に所定の臭い物質を散布する臭い散布要素14と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指定動物を駆除するための装置であって、
指定区域に侵入した前記指定動物を追跡する追跡機能と、
前記指定動物の追跡中または追跡終了後に、前記指定区域における指定箇所に所定の臭い物質を散布する臭い散布要素と、を備える指定動物駆除装置。
【請求項2】
請求項1の指定動物駆除装置であって、
前記指定動物に対する威嚇装置を備え、
前記威嚇装置は、音の出力、光の発光、前記指定動物に向かって物体の射出、追跡終了後の周囲の探索行動のうち少なくとも1つを含む指定動物駆除装置。
【請求項3】
請求項1の指定動物駆除装置であって、
前記指定動物駆除装置は前記指定動物の位置を認識することが可能な認識要素を備え、
前記指定動物駆除装置は前記認識要素により前記指定動物が前記指定区域の一部であるコア区域に侵入したことを認識した場合において、前記認識要素により前記指定動物が前記指定区域内であって前記コア区域外に侵入したと認識していた場合よりも前記威嚇装置による威嚇の度合いが高くなるように調整されている指定動物駆除装置。
【請求項4】
請求項1の指定動物駆除装置であって、
前記指定動物駆除装置は前記指定箇所を記憶する記憶部を備え、
前記指定動物駆除装置は所定期間毎に前記臭い散布要素により前記指定箇所に所定の臭い物質を散布する指定動物駆除装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のうちいずれか1項に記載の指定動物駆除装置を備えた指定動物駆除システムであって、
前記指定地域に侵入した前記指定動物の位置情報を取得する監視装置と、
前記監視装置により取得された位置情報を前記指定動物駆除装置に送信する通信装置と、を備え、
前記通信装置から位置情報を受信した指定動物駆除装置は、前記位置情報に基づいて前記指定動物が検知された位置に移動する指定動物駆除システム。
【請求項6】
請求項5に記載の指定動物駆除システムであって、
前記指定動物駆除装置は、前記通信装置から前記指定動物が前記指定区域の一部であるコア区域に侵入した前記指定動物の位置情報を受信した場合において、前記通信装置から前記指定動物が前記指定区域内であって前記コア区域外に侵入した前記指定動物の位置情報を受信した場合よりも前記威嚇装置による威嚇の度合いが高くなるように調整されている指定動物駆除システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指定動物駆除装置及び指定動物駆除システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シカ、サルなどの獣類及びカラスなどの鳥類を含む害獣が、田畑などの農地区域に侵入して、農作物を食すること及び農地を荒らすることなどの被害が発生している。そのため、害獣が農地区域に侵入した際に害獣を農地区域から追い出し、害獣が農地区域に近づくことを防止する必要がある。
【0003】
そこで従来は、自律移動要素と、駆除対象か否かの判断機能と、駆除機能とを有する害獣駆除用無人機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した害獣駆除用無人機は、害獣が侵入した場合に都度害獣のもとに行き、害獣に対して駆除機能を実施しなければならない。そのため、害獣が指定区域に侵入した場合に一時的に害獣を駆除することできても、害獣が指定区域に侵入することを抑制することはできない。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、指定動物が指定区域に侵入することを抑制することができる指定動物駆除装置及び指定動物駆除システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の指定動物駆除装置は、
指定動物を駆除するための装置であって、
指定区域に侵入した前記指定動物を追跡する追跡機能と、
前記指定動物の追跡中または追跡終了後に、前記指定区域における指定箇所に所定の臭い物質を散布する臭い散布要素と、を備える。
【0008】
当該構成の指定動物駆除装置は、指定区域に侵入した指定動物を追跡することで、指定動物の指定区域からの駆除を図ることができる。その一方、指定動物は、その周囲から指定動物駆除装置が消えたことを確認すると、再び指定区域に侵入を試みる可能性が高い。
【0009】
そこで、指定動物駆除装置は、指定動物の追跡後に、特定の動物が自己の縄張りであることを示すマーキングと同様に、所定の臭い物質を指定区域における指定箇所に散布する。そのことにより、指定動物に、指定動物の周囲に指定動物駆除装置が存在していない状況であるにもかかわらず、指定箇所に残存する所定の臭い物質によって、指定動物駆除装置に再び遭遇することに対する警戒心を植え付けることができる。そして、指定動物が指定区域に侵入することを抑制することができる。
【0010】
前記構成の指定動物駆除装置において、
指定動物に対する威嚇装置を備え、威嚇装置は、音の出力、光の発光、前記指定動物に向かって物体の射出及び追跡終了後の周囲の探索行動のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0011】
当該構成の指定動物駆除装置によれば、指定動物に対して威嚇装置を用いた威嚇を実施することで、指定動物駆除装置に対するより強い恐怖心または警戒心を当該指定動物に植え付けることができる。これにより、指定動物の周囲に指定動物駆除装置が存在していない状況であるにもかかわらず、指定箇所に残存する所定の臭い物質によって、指定動物駆除装置に再び遭遇することに対するより強い警戒心を植え付けることができる。そして、指定動物が指定区域に侵入することを抑制することができる。
【0012】
前記構成の指定動物駆除装置において、
指定区域はコア区域を有し、
指定動物駆除装置は指定動物の位置を認識することが可能な認識要素を備え、
指定動物駆除装置は認識要素により指定動物がコア区域に侵入したことを認識した場合において、認識要素により指定動物が指定区域内であってコア区域外に侵入したと認識していた場合よりも威嚇装置による威嚇の度合いが高くなるように調整されていることが好ましい。
【0013】
当該構成の指定動物駆除装置によれば、例えば、指定動物に荒らされるおそれのある田畑をコア区域とすることで、指定動物のコア区域からの駆除を図ることができるとともに、コア区域に侵入することに対するより強い警戒心を植え付けることができる。そして、指定動物が指定区域に侵入することを抑制することができる。
【0014】
前記構成の指定動物駆除装置において、
指定動物駆除装置は指定動物の追跡中または追跡終了後に、臭い散布要素により所定の臭い物質を散布が散布された指定区域における指定箇所を記憶する記憶部を備え、
指定動物駆除装置は所定期間毎に臭い散布要素により当該指定箇所に所定の臭い物質を散布することが好ましい。
【0015】
前記構成の指定動物駆除装置によれば、過去に指定動物駆除装置が指定動物の追跡した際に、臭い散布要素により所定の臭い物質を散布した指定箇所に定期的に所定の臭い物質を残留させることができる。過去に指定動物が往来した経路は、再度使用される可能性が高いため、指定動物が所定区域の往来に使用する可能性が高い箇所に効率的に所定の臭い物質を残留させることができる。そして、所定の臭い物質により指定動物が指定区域に侵入することを抑制することができる。
【0016】
本発明の指定動物駆除システムは、
上記の指定動物駆除装置と、
指定地域に侵入した指定動物の位置情報を取得する監視装置と、
監視装置により取得された位置情報を指定動物駆除装置に送信する通信装置と、を備え、
前記通信装置から位置情報を受信した指定動物駆除装置は、当該位置情報に基づいて指定動物が検知された位置に移動する。
【0017】
当該構成の指定動物駆除システムによれば、監視装置により取得された指定区域における指定動物の位置情報が通信装置により指定動物駆除装置に対して送信され、当該位置情報に応じた指定動物の位置へ当該指定動物駆除装置を移動させることができる。このため、監視装置による監視領域の遠隔に指定動物駆除装置に存在する状況であっても、指定区域に侵入した指定動物が当該指定動物駆除装置により追跡される確率を高めることができる。これにより、指定動物の周囲に指定動物駆除装置が存在していない状況であるにもかかわらず、指定箇所に残存する所定の臭い物質によって、指定動物駆除装置に再び遭遇することに対するより強い警戒心を植え付けることができる。そして、指定動物が指定区域に侵入することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態による指定動物駆除装置を示す正面図。
【
図2A】指定動物駆除装置が指定動物を駆除する過程を示した概略図。
【
図2B】指定動物駆除装置が指定動物を駆除する過程を示した概略図。
【
図3】本発明の第2実施形態による指定動物駆除装置を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
図を参照して、指定動物駆除装置10を詳しく説明する。同一又は対応する構成については同一の符号を付して説明を適宜省略する場合がある。
【0020】
図1には、本発明の第1実施形態としての指定動物駆除装置10が示されている。指定動物駆除装置10は、指定区域に侵入した指定動物を追跡する追跡装置と、威嚇装置13と、臭い散布要素14とを備える。追跡装置は、自律移動要素11と、認識要素12と、制御装置15の自律移動要素制御部155とを有する。
自律移動要素11は、指定動物駆除装置10の下部に左右対称に設けられた一対の車輪と、当該一対の車輪を駆動するアクチュエータ(例えば、電動モータ)と、当該アクチュエータの動作を制御する制御装置15と、により構成されており、田畑などを含む指定区域40を接地した状態で自走可能に形成されている。アクチュエータ等に対して電力を供給する電源装置が指定動物駆除装置10に搭載されている。
【0021】
なお、本実施形態では、アクチュエータにより駆動されて地面に対して並進力を作用させる(これにより地面から床反力を受ける)ための自律移動要素11の構成要素が一対の車輪により構成されている。他の実施形態として、当該構成要素が一または複数の車輪、一対のクローラまたは関節機構を有する複数の脚体により構成されてもよい。指定動物駆除装置10が走行して当該構成要素が接地した場所の雑草などは踏み潰され、防草効果が得られる。
【0022】
認識要素12は、例えば、指定動物駆除装置10の上方に設けられ、指定動物駆除装置10の周囲の画像を撮像することが可能なCCDカメラおよび/または赤外線カメラ等の撮像装置により構成されている。撮像装置による撮像領域は、例えば、指定動物駆除装置10の前方領域(指定動物駆除装置10の進行方向を示すベクトルを基準線として広がる領域)に固定されていてもよく、撮像装置の光軸が適応的に追従対象に向けられるなど、動的に変更されてもよい。指定動物駆除装置10は、認識要素12により威嚇対象である指定動物Qの位置情報を認識する。「位置情報」とは、指定動物駆除装置10に対して位置および姿勢が固定されている装置座標系における座標値により定義されていてもよく、世界座標系または実空間座標系における座標値(経度、緯度、高さ)により定義されていてもよい。
【0023】
なお、本実施形態では、認識要素12を撮像装置により構成したが、他の実施形態では認識要素12が、撮像装置のほか、指定動物駆除装置10を基準とした周囲の物体までの距離を取得する測距装置または当該距離を画素値とする3次元画像を取得する3次元カメラにより構成されてもよい。指定動物駆除装置10は、認識要素12を構成する撮像装置により撮像された撮像画像に映り込んでいる対象物の外観特徴データと、後述する制御装置15の記憶部154に記憶された指定動物の外観特徴データとを比較して、当該対象物が指定動物Qに該当するか否か、さらには当該指定動物Qの種類を識別することができる。指定動物の外観特徴データとは猪、鹿及び猿など、各種の指定動物の特徴部分または全体のシルエット(形状)及び大きさなどの外観的特徴を表わしている。威嚇対象である指定動物Qの種類を識別することで、指定動物駆除装置10は、威嚇対象に対して適切な威嚇装置13を動作させること、及び、臭い散布要素14により所定の臭い物質を散布する適切な場所、位置を指定箇所の位置として選定することができる。例えば、猪または鹿などであれば、指定箇所としての木の根本などに向かって所定の臭い物質を散布し、猿などであれば、指定箇所としての木の枝などに向かって所定の臭い物質を散布する。
【0024】
「指定箇所」とは、所定区域に予め定められた箇所でもよく、流動的に定められる箇所でも良い。予め定められた箇所として、例えば、指定動物に荒らされるおそれのある田畑の周囲に指定箇所を定めてもよい。また、流動的に定められる箇所として、指定動物の出現頻度または通過頻度の高い箇所を指定箇所として定めてもよい。また、指定箇所は、所定区域の複数箇所に定められていることが好ましい。
【0025】
制御装置15は、主に演算処理装置151(CPU、プロセッサまたはプロセッサコアにより構成されている。)により構成されている。制御装置15は、情報受信部152、測位部153、記憶部154、自律移動要素制御部155、威嚇装置制御部156を備える。制御装置15を構成する演算処理装置151が、記憶部154から必要なプログラム(ソフトウェア)および/またはデータを読み取り、当該データを対象に当該プログラムにしたがった演算処理を実行することにより、自律移動要素制御部155、威嚇装置制御部156、臭い散布要素制御部157のそれぞれの機能を発揮する。測位部153は、GPSのほか、必要に応じてジャイロセンサにより構成されている。
【0026】
指定動物駆除装置10は、情報受信部152により、後述する監視装置30により取得された、指定区域40に侵入した指定動物Qの位置情報を含む検知情報を通信装置31から受信する。指定動物駆除装置10は測位部153と記憶部154に記憶された指定区域40の地図情報を用いて、指定動物駆除装置10自身の位置と監視装置30の位置および当該監視装置30が検知した指定動物Qの位置を認識することができる。
【0027】
指定動物駆除装置10は、自律移動要素制御部155によって、自律移動要素11の動作が制御されることにより、地面の上を移動する。例えば、自律移動要素制御部155は指定動物を追跡するとき、監視装置30により指定区域に侵入した指定動物Qを検知した場所に移動するときに自律移動要素11の動作を制御する。威嚇装置制御部156は威嚇装置13の動作を制御する。臭い散布要素制御部157は、臭い散布要素14の動作を制御し、指定箇所に所定の臭い物質を散布する。
【0028】
記憶部154には、指定区域40の地図情報、指定動物Qの特徴データ、音声データ、臭い散布要素により所定の臭い物質を散布した位置情報、指定動物Qを追跡した際の追跡経路、追跡した指定動物Qの種類などが記憶されている。
【0029】
威嚇装置13としては、音声出力装置131、発光装置132、物体射出装置133、追跡終了後の周囲の探索行動制御部134を有している。威嚇装置13を用いて、威嚇対象である指定区域40に侵入した指定動物Qを威嚇することにより、威嚇対象を指定区域40から駆除することを容易に行えるとともに、指定動物駆除装置10に対してより強い恐怖心または警戒心を植え付けることができる。
【0030】
音声出力装置131は、指定動物駆除装置10の記憶部154に記憶された音声データを出力する。音声データとしては、銃声などの破裂音、大型動物または肉食動物の鳴き声、人間の声などを採用することができる。また、音声出力装置131から発生する音声は、威嚇対象である指定動物に向かって放たれる指向性の音声でも、無指向性の音声であってもよい。音声出力装置131は、例えば、猪及び鹿などの動物及び鳥類に対して有効である。
【0031】
発光装置132は、LED発光体などの発光装置を用いることができる。発光装置から発光される光の波長は可視光に限定されず、赤外光または紫外光でもよく、指定動物Qの種類に応じて、当該指定動物Qが認識可能な波長体の光を発するために複数の発光装置132が使い分けられてもよい。また、発光装置132から発光される光は、威嚇対象である指定動物Qに向かって放たれる指向性の光でも、無指向性の光であってもよい。発光装置132は、例えば、猪及び鹿などの動物に対して有効である。
【0032】
物体射出装置133は、例えば、球形弾などの物体を射出または出射する。当該物体が、内部に所定の臭い物質を内蔵または収容し、射出後に破裂または溶解することにより内部の当該所定の臭い物質を外部に放出することができる外郭部材により構成されていてもよい。当該外郭部材が、水溶性の材料により構成されていてもよい。このことにより、威嚇装置13を実施するとともに、効率的に所定の臭い物質を指定箇所に残留させることができる。また、物体射出装置133から射出または出射される物体は固体に限らず、液体、気体またはそれらの組み合わせであってもよい。例えば、所定の臭い物質とは成分が異なる物質により構成される害獣忌避剤を出射してもよい。物体射出装置133は、例えば、猿及び猪などの動物に対して有効である。
【0033】
追跡終了後の周囲の探索行動制御部134は、指定動物駆除装置10が指定動物Qの追跡を終了した後に、その周囲に指定動物Qが存在するか否かの探索を継続する行動を制御する。例えば、認識要素12および/または監視装置30により指定動物Qの位置情報が継続的に取得されていた後に、当該位置情報の取得が指定時間にわたり失敗に終わった場合、指定動物駆除装置10が指定動物Qの追跡を終了する。探索中の指定動物駆除装置10は、追跡終了時点における自機位置を基準として所定距離にわたり、あるいは、追跡終了時点から所定期間にわたり、移動を継続する。探索中の指定動物駆除装置10の移動速度は、追跡中の指定動物駆除装置10の移動速度より低くてもよい。また、探索中の指定動物駆除装置10が、追跡終了時点における自機位置またはその周囲にある一または複数の特定位置を複数回にわたり経由するような軌道を描いてもよい。指定動物Qが指定動物駆除装置10の追跡から逃げるまたは隠れることができた場合に、指定動物駆除装置10がその周囲を探索することで、指定動物Qに対してより恐怖心または警戒心を植え付けることができる。
【0034】
探索中に認識要素12および/または監視装置30により指定動物Q(直前まで追跡していた指定動物Qと異なる指定動物であってもよい。)の位置情報が再び取得された場合、指定動物駆除装置10が当該指定動物Qの追跡を開始または再開する。探索終了後に指定動物駆除装置10が所定の待機位置まで戻ってもよく、その場にしばらく留まっていてもよい。
【0035】
臭い散布要素14は、指定動物駆除装置10内に貯蔵した所定の臭い物質または徐放性物質を散布する機能である。指定動物駆除装置10は、指定区域に侵入した指定動物を追跡終了後に臭い散布要素14により所定の臭い物質を散布する。
【0036】
このことにより、指定動物駆除装置10の追跡または威嚇により、指定動物駆除装置10に恐怖心または警戒心を抱いた指定動物Qは、所定の臭い物質を指定動物駆除装置10が放つ臭いであると認識し、当該臭いが残留する指定区域40に近づくことを抑制することができる。つまり、特定の動物が自己の縄張りであることを示すマーキングと同様の効果が得られる。よって、指定動物駆除装置10がその場にいなくとも、所定の臭い物質を残留させるだけで指定動物Qが指定区域40に侵入することを抑制することができる。
【0037】
所定の臭い物質としては、多くの動物の天敵である狼などのし尿、ピラジン化合物などアミン類などを配合して動物のマーキングと同類の臭いを発生させる人工配合物、または、芳香族系炭化水素、フェノール類などを配合した獣臭を発生させる人工配合物などを用いることができる。
【0038】
また、所定の臭い物質は液体、固体(例えば、ピラジン化合物の粉末または錠剤)、またはそれらの組み合わせ(例えば、徐放性の液体が開気孔に含侵された多孔質物体)を用いることができる。固体であれば、雨などにより固体が溶解した際に所定の臭いを発生させることができるため、長期間所定の臭い物質を残留させることができる。
【0039】
図2A及び
図2Bを用いて、指定区域40に侵入した指定動物Qに対しての指定動物駆除システムの動作過程の一例を説明する。指定動物Qに最も侵入されたくないコア区域40Aを含む指定区域40には複数の監視装置30が設けられており、指定動物Qの指定区域40への侵入を監視している。指定動物駆除装置10は、監視装置30からの指定動物Qを検知した情報を受信するまで所定の待機場所で待機している。
【0040】
コア区域40Aとは、例えば、畑または田んぼなど農作物などを栽培している区域である。また、指定動物Qとは、例えば、猿、猪、鹿などの動物またはカラスなどの鳥類など農作物を食したり、農地を荒らす害獣である。
【0041】
指定動物Qの位置がコア区域40Aに含まれている場合、指定動物Qの位置が指定区域に含まれている一方でコア区域40Aから外れている場合よりも、指定動物駆除装置10による威嚇装置13を通じた当該指定動物Qに対する威嚇度が高くなるように調節されてもよい。具体的には、出力音響の音量が大きくなること、出力音響に含まれる周波数スペクトルが広く/狭くなること、断続的な出力音響の断続周波数が高くなること、発光強度が大きくなること、断続的な発光の断続周波数が高くなること、物体の発射頻度が高くなること、物体の発射速度が高くなること、および、指定動物Qに対する接近速度または追跡速度が高くなること、のうち少なくとも1つにより、威嚇度の向上が図られる。
【0042】
監視装置30は、指定区域40に侵入した指定動物Qの位置を認識することが可能な撮像装置である。ここでいう位置情報とは、監視装置30に対して位置および姿勢が固定されている撮像座標系における座標値により定義されていてもよく、世界座標系または実空間座標系における座標値(経度、緯度、高さ)により定義されていてもよい。
【0043】
なお、本実施形態では、監視装置30を撮像装置により構成したが、他の実施形態では監視装置30が、撮像装置のほか、指定動物駆除装置10を基準とした周囲の物体までの距離を取得する測距装置または当該距離を画素値とする3次元画像を取得する3次元カメラなどにより構成されてもよい。監視装置30が指定区域40に侵入した指定動物Qの位置(および種類)を検知する。監視装置30は指定動物駆除装置10に対して指定動物Qを検知した検知情報を送信する。検知情報とは、検知した指定動物Qの位置情報と検知した時刻情報である。指定動物駆除装置10が、監視装置30からの検知情報を受信する。指定動物駆除装置10は受信した検知情報に基づいて、指定動物Qが検知された位置に向かって移動する。
【0044】
このとき、指定動物Qは、指定動物駆除装置10が移動している間に、監視装置30によって検知した位置から移動する可能性がある。その場合に、指定動物駆除装置10は、複数の監視装置30からの検知情報のうち、最新の検知情報に基づいて、逐次移動する位置を更新しながら移動する。監視装置30からの最新の検知情報による位置に移動した指定動物駆除装置10は、認識要素12を用いて指定動物Qを探索し、威嚇対象である指定動物Qの位置を認識する。そして、指定動物駆除装置10は、威嚇装置13により指定動物Qを威嚇する。
【0045】
その後、指定動物駆除装置10は、逃走する指定動物Qを追跡する。指定動物駆除装置10は、認識要素12により指定動物Qを認識できなくなるまで追跡を続け、認識要素12により指定動物Qを認識できなくなった後は、所定期間その周囲に指定動物Qが存在するか否かを探索する。その場合に指定動物駆除装置10は、監視装置30からの検知情報も利用して指定動物の探索を行う。指定動物駆除装置10は、探索終了後に臭い散布要素14により所定の臭い物質を散布する。この一連の動作を行った後に、指定動物駆除装置10は、所定の待機場所に帰還する。
【0046】
このことにより、指定動物駆除装置10は、指定区域40に侵入した指定動物Qに対して、恐怖心または警戒心を植え付けることができるとともに、指定動物Qの逃走経路に指定動物駆除装置10の縄張りであることを示す所定の臭い物質を散布することができる。そのため、指定動物Qが再び指定区域40に近づくことを抑制することができる。
【0047】
また、指定動物駆除装置10は、指定動物Qを追跡した際の追跡経路及び追跡した指定動物Qの種類を関連付けて、記憶部154に記憶する。指定動物駆除装置10は、指定動物Qの追跡時に指定動物Qを認識できなくなった場合に、記憶部154に記憶された過去に同種の指定動物を追跡した際の追跡経路(指定動物駆除装置10の追跡期間(例えば、指定動物Qの存在が認識された時刻から、当該指定動物Qの存在が認識されなくなった・見失った時刻まで)の測位結果の時系列)を重視して探索を行う。そのため、一度認識できなくなった指定動物Qを効率的に探索することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、監視装置30が指定区域40に侵入したことを検知した場合に、指定動物駆除装置10が監視装置30によって検知された指定動物Qの場所に移動する構成について説明したが、指定動物駆除装置10が自ら指定区域40を移動して指定区域40に侵入した指定動物Qを検知してもよい。
【0049】
指定動物駆除装置10が自ら指定区域40を移動する際に、指定の箇所で臭い散布要素14により所定の臭い物質を散布することが好ましい。このことにより、指定箇所に所定の臭い物質が残留し、指定動物駆除装置10の縄張りであることを誇示することができるため、指定動物Qが指定区域に近づくことを抑制することができる。また、指定箇所とは、過去に指定動物Qを追跡したときに臭い散布要素14により所定の臭い物質を散布した箇所であることが好ましい。一度指定動物Qが逃走時に使用した経路は、繰り返し使用される場合が多いため、指定動物Qが指定区域40に近づくことをより効果的に抑制することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、指定動物駆除装置10は、認識要素12により指定動物Qを認識できなくなるまで追跡を続けたが、指定動物駆除装置10は指定動物Qが指定区域40外に出るまで追跡を続けるなどしてもよいし、状況によりそれらを組み合わせてもよい。例えば、指定動物Qが山又は森林などに向かって逃走した場合には、認識要素12により指定動物Qを認識できなくなるまで追跡を続け、指定動物Qが民家などが建ち並ぶ方向に逃走した場合には、指定区域40外に出るまで追跡するなどしてもよい。
【0051】
(第2実施形態)
次に、
図3に示す本発明の第2実施形態による指定動物駆除装置10について、説明する。なお、本発明の第1実施形態による指定動物駆除装置10と同一の構成については適宜説明を省略する。
【0052】
第2実施形態の指定動物駆除装置10は、指定動物駆除装置10は、指定区域に侵入した指定動物を追跡する追跡機能と、威嚇装置13と、臭い散布要素14とを備える。追跡機能は、自律移動要素21と、認識要素12と、制御装置15の自律移動要素制御部155とを有する。
【0053】
図3に示すように、第2実施形態の指定動物駆除装置10の自律移動要素21は、複数の(例えば4つ)の回転翼と、当該複数の回転翼を回転駆動するアクチュエータ(例えば、電動モータ)と、当該アクチュエータの動作を制御する制御装置15と、により形成されている。指定動物駆除装置10は、当該回転翼を回転させることにより、空中を自律移動することができる。
【0054】
そのため、指定動物駆除装置10は、上空から指定区域40に侵入した指定動物Qを探索することができるため、より効率的かつ効果的に指定区域への侵入した指定動物Qを認識することができる。また、指定動物駆除装置10は、空中移動するため、指定区域40の地面が未舗装である場合または雨などにより地面が泥濘である場合などでも、移動することが容易にできる。
【0055】
以上、詳細に説明したように、指定動物Qが指定区域40に侵入することを抑制することができる指定動物駆除装置10を提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
10 指定動物駆除装置
11 自律移動要素
12 認識要素
13 威嚇装置
14 臭い散布要素
15 制御装置
21 自律移動要素
30 監視装置
31 通信装置
40 指定区域
40A コア区域
131 音声出力装置
132 発光装置
133 物体射出装置
134 探索行動制御部
151 演算処理装置
152 情報受信部
153 測位部
154 記憶部
155 自律移動要素制御部
156 威嚇装置制御部
157 臭い散布要素制御部
Q 指定動物