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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001069
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】がんを治療するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20231226BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20231226BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20231226BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20231226BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALN20231226BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20231226BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALN20231226BHJP
   C12N 15/86 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61K48/00
A61K9/127
A61P35/00
A61K35/17
G01N33/53 M
C12N15/11 Z
C12Q1/6869 Z
C12N5/10
C12N5/0784
C12N15/86 Z
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023164102
(22)【出願日】2023-09-27
(62)【分割の表示】P 2021149024の分割
【原出願日】2016-04-27
(31)【優先権主張番号】1507100.4
(32)【優先日】2015-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1603663.4
(32)【優先日】2016-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1603731.9
(32)【優先日】2016-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】511085460
【氏名又は名称】キャンサー・リサーチ・テクノロジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マクグラナハン,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンタール,レイチェル
(72)【発明者】
【氏名】スウォントン,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ペグス,カール
(72)【発明者】
【氏名】ケサダ,セルジオ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】がんの治療に有用である方法及び組成物であって、特に腫瘍に存在するネオ抗原を同定し標的化するための方法を提供する。
【解決手段】2種以上のクローンネオ抗原ペプチド若しくはタンパク質、又は2種以上のクローンネオ抗原ペプチド若しくはタンパク質をコードするDNA若しくはRNA分子を含む治療的ワクチンであって、前記クローンネオ抗原ペプチド又はタンパク質のそれぞれが、クローン突然変異を含む配列によりコードされている抗原であり、クローン突然変異が、0.75以上のがん細胞率(CCF)95%信頼区間を有する突然変異であり、各クローンネオ抗原ペプチド又はタンパク質が、対象のMHC分子に結合すると予測される、治療的ワクチンを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上のクローンネオ抗原ペプチド若しくはタンパク質、又は2種以上のクローンネオ抗原ペプチド若しくはタンパク質をコードするDNA若しくはRNA分子を含む治療的ワクチンであって、
前記クローンネオ抗原ペプチド又はタンパク質のそれぞれが、クローン突然変異を含む配列によりコードされている抗原であり、
クローン突然変異が、0.75以上のがん細胞率(CCF) 95%信頼区間を有する突然変異であり、
各クローンネオ抗原ペプチド又はタンパク質が、対象のMHC分子に結合すると予測される、
治療的ワクチン。
【請求項2】
クローン突然変異が一塩基変異、多塩基変異、欠失、挿入、転座、ミスセンス、又はアミノ酸配列の変化をもたらすスプライス部位突然変異である、請求項1に記載の治療的ワクチン。
【請求項3】
突然変異が、エクソーム配列決定、RNA配列決定、全ゲノム配列決定及び/又は標的遺伝子パネル配列決定により同定される、請求項1又は2に記載の治療的ワクチン。
【請求項4】
各クローンネオ抗原ペプチド又はタンパク質が、500nM未満の対象のMHC分子への予測される結合親和性を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の治療的ワクチン。
【請求項5】
それぞれが幹ネオ抗原ペプチド若しくはタンパク質を含む2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10種の異なるポリペプチド、又は2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10種のクローンネオ抗原ペプチド若しくはタンパク質をコードするDNA若しくはRNA分子を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の治療的ワクチン。
【請求項6】
抗原提示細胞の形態である請求項1~5のいずれか一項に記載の治療的ワクチンであって、抗原提示細胞が、パルス又は負荷された、前記クローンネオ抗原ペプチドを有するか、又は前記クローンネオ抗原ペプチド若しくはクローンネオ抗原タンパク質を発現するように遺伝子的に改変されている、治療的ワクチン。
【請求項7】
前記抗原提示細胞が樹状細胞である、請求項6に記載の治療的ワクチン。
【請求項8】
クローンネオ抗原ペプチド又はタンパク質をコードするDNA又はRNA分子が、細菌若しくはウイルスベクターを介した、又は送達系としてリポソームを用いた対象への直接注射により送達される、請求項1~6のいずれか一項に記載の治療的ワクチン。
【請求項9】
医薬組成物の形態であり、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の治療的ワクチン。
【請求項10】
アジュバントをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の治療的ワクチン。
【請求項11】
がんの治療に使用するための請求項1~10のいずれか一項に記載の治療的ワクチン。
【請求項12】
対象におけるがんの治療のための医薬の製造における請求項1~10のいずれか一項に記載の治療的ワクチンの使用。
【請求項13】
治療的ワクチンが、追加のがん療法と組み合わせて使用される、請求項11に記載の治療的ワクチン、又は請求項12に記載の治療的ワクチンの使用。
【請求項14】
追加のがん療法が、クローンネオ抗原を標的にする増殖T細胞を含む、請求項13に記載の治療的ワクチン又は請求項13に記載の治療的ワクチンの使用。
【請求項15】
治療的ワクチンが、T細胞組成物の投与前に、これと同時に又はこの後で投与される、請求項14に記載の治療的ワクチン又は請求項14に記載の治療的ワクチンの使用。
【請求項16】
追加のがん治療が、チェックポイント遮断療法を含む、請求項15に記載の治療的ワクチン又は請求項15に記載の治療的ワクチンの使用。
【請求項17】
チェックポイント遮断療法が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、LAG-3阻害剤、TIM-3阻害剤、TIGIT阻害剤、BTLA阻害剤又はCTLA-4阻害剤を含む、請求項16に記載の治療的ワクチン又は請求項16に記載の治療的ワクチンの使用。
【請求項18】
2種以上の異なるクローンネオ抗原ペプチド又はクローンネオ抗原タンパク質を含む治療的ワクチンを製造するための方法であって、
(a)i)腫瘍から単離された試料に存在する突然変異を決定するステップ、
ii) 0.75以上のがん細胞率(CCF) 95%信頼区間を有する突然変異をクローン突然変異として同定するステップ、
iii)クローン突然変異を含む配列によりコードされている抗原であるクローンネオ抗原を同定するステップ、
iv) 対象のHLA対立遺伝子プロファイルを評価し、クローンネオ抗原ペプチドが対象のMHC分子に結合すると予測されるかどうかを判定するステップ、及び
v) 対象のMHC分子に結合すると予測されるクローンネオ抗原ペプチドを選択するステップ
を含む対象由来の腫瘍において2種以上のクローンネオ抗原を同定するステップ、並びに
(b)前記選択されたクローンネオ抗原から2種以上のクローンネオ抗原ペプチド又はクローンネオ抗原タンパク質を製造するステップ、並びに
(c)前記クローンネオ抗原ペプチド又はクローンネオ抗原タンパク質を含む治療的ワクチンを製造するステップ
を含む方法。
【請求項19】
2種以上のクローンネオ抗原ペプチド又はクローンネオ抗原タンパク質をコードするDNA又はRNA分子を含む治療的ワクチンを製造するための方法であって、
(a)i)腫瘍から単離された試料に存在する突然変異を決定するステップ、
ii) 0.75以上のがん細胞率(CCF) 95%信頼区間を有する突然変異をクローン突然変異として同定するステップ、
iii)クローン突然変異を含む配列によりコードされている抗原であるクローンネオ抗原を同定するステップ、
iv) 対象のHLA対立遺伝子プロファイルを評価し、クローンネオ抗原ペプチドが対象のMHC分子に結合すると予測されるかどうかを判定するステップ、及び
v) 対象のMHC分子に結合すると予測されるクローンネオ抗原ペプチドを選択するステップ
を含む対象由来の腫瘍において2種以上のクローンネオ抗原を同定するステップ、並びに
(b)前記クローンネオ抗原ペプチド又はクローンネオ抗原タンパク質をコードするDNA又はRNA分子を含む治療的ワクチンを製造するステップ
を含む方法。
【請求項20】
治療的樹状細胞ワクチンを製造するための方法であって、
(a)i)腫瘍から単離された試料に存在する突然変異を決定するステップ、
ii) 0.75以上のがん細胞率(CCF) 95%信頼区間を有する突然変異をクローン突然変異として同定するステップ、
iii)クローン突然変異を含む配列によりコードされている抗原であるクローンネオ抗原を同定するステップ、
iv) 対象のHLA対立遺伝子プロファイルを評価し、クローンネオ抗原ペプチドが対象のMHC分子に結合すると予測されるかどうかを判定するステップ、及び
v) 対象のMHC分子に結合すると予測されるクローンネオ抗原ペプチドを選択するステップ
を含む対象由来の腫瘍において2種以上のクローンネオ抗原を同定するステップ、並びに
(b) 樹状細胞に2種以上の前記の選択されたクローンネオ抗原をパルス若しくは負荷するか、又は2種以上の前記の選択されたクローンネオ抗原、例えば2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のクローンネオ抗原又はクローンネオ抗原ペプチドを発現するように樹状細胞を遺伝子的に改変するステップ
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はがんの治療に有用である方法及び組成物に関する。特に、本発明は腫瘍に存在するネオ抗原を同定し標的化するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍内不均一性(ITH)及び腫瘍の突然変異のランドスケープはがんに応答する免疫系の能力に影響を及ぼし得ることが知られている。
【0003】
例えば、遺伝的不安定性は免疫異物除去を逃れるエスケープ突然変異体を発生させる腫瘍細胞の能力に大きな役割を果たしている。腫瘍細胞のこの基本的な特徴が、強力な腫瘍抗原特異的T細胞免疫を誘発するように設計された多くの有望な免疫療法が最終的に失敗する主な理由であり、この特徴が上首尾ながんワクチン戦略の開発でかなりの難題となっている。かくして、腫瘍に対して抗原特異的T細胞免疫を確立するように設計された免疫療法が、腫瘍を効果的に除去する腫瘍特異的免疫がT細胞除去に抵抗性である腫瘍エスケープ突然変異体の発生を促進する選択圧もかけるという点でパラドックスを示す。数多くの報告によれば、腫瘍は、点突然変異、フレームシフト突然変異、ゲノム転座、挿入又は欠失を通じて遺伝子を起動させる又は停止させるランダム突然変異を発現している腫瘍細胞の選択的成長により免疫異物除去を回避していることが示されている。
【0004】
腫瘍不均一性は、異なる腫瘍細胞が細胞形態、遺伝子発現、遺伝子的及びエピジェネティック突然変異、代謝、運動性、増殖、並びに転移能の違いを含むはっきりと異なる形態学的及び表現型プロファイルを示し得るという観察について述べるものである。この現象は腫瘍間(腫瘍間不均一性)でも腫瘍内(腫瘍内不均一性すなわちITH)でも起こる。がん細胞の不均一性は効果的治療戦術の設計で顕著な難題となっている。
【0005】
例として、不均一腫瘍は、異なるクローン集団の間で細胞障害性薬物又は標的化薬物に対して異なる感受性を示すことがある。これは治療効果を阻害する又は変更することがあるクローン相互作用に起因すると考えられており、不均一腫瘍(及びその不均一な転移)における治療の成功にとり難題となっている。
【0006】
不均一腫瘍における薬物投与ですべての腫瘍細胞が死滅することはめったにない。生き残る薬物抵抗性細胞がほとんどないようにするには、最初の不均一腫瘍集団が妨げになることがある。これが、抵抗性腫瘍集団が枝分かれ進化機構を通じて複製し腫瘍を再成長することを可能にする。こうして生じる再増殖した腫瘍も不均一であることがあり、使用された最初の薬物療法に対して抵抗性になる。再増殖した腫瘍はさらに高悪性度な形態で再発することもある。
【0007】
細胞障害性薬物の投与はしばしば最初の腫瘍の退縮をもたらす。これは不均一腫瘍内での最初の非抵抗性サブクローン集団の破壊を示し、抵抗性クローンのみを残すことになる。これらの抵抗性クローンは今や、化学療法の存在下での選択優位性を有しており複製して腫瘍を再増殖し得る。複製はおそらく枝分かれ進化を通じて起き、それが腫瘍不均一性の一因となっている。再増殖した腫瘍はさらに高悪性度であり得る。これは、腫瘍細胞の薬物抵抗性選択優位性並びに治療及び疾患経過中に起こる追加の遺伝子変化に起因していると考えられている。
【0008】
国際公開第2014/168874号は、新生物を有すると診断された対象に対する個別化新生物ワクチンを製造するための方法であって、新生物中の複数の突然変異を同定し、その複数の突然変異を分析してネオ抗原ペプチドをコードすると予測される少なくとも5つのネオ抗原突然変異のサブセットを同定し、その同定されたサブセットに基づいて個別化新生物ワクチンを製造することを含む方法を記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、がん、特に不均一腫瘍を治療するための代替方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、幹突然変異(truncal mutation)、すなわち、不均一腫瘍内の実質的にすべての腫瘍細胞に存在する突然変異は、腫瘍の複数領域のサンプリングを通じて、又は単一生検中のクローン突然変異(clonal mutation)を同定するアプローチを通じて同定することができることを決定した。例えば、突然変異を有するがん細胞の割合を記述するがん細胞率は、腫瘍中のがん細胞毎に存在しているであろうネオ抗原(幹ネオ抗原)を腫瘍細胞のサブセットにだけ存在しているネオ抗原(枝ネオ抗原)と区別するために決定することができる。本明細書で使用されるように、用語「幹突然変異」は用語「クローン突然変異」と同義である。これらの用語は両方とも、不均一腫瘍中の実質的にすべての腫瘍細胞に存在する突然変異を定義することが意図されている。本明細書で使用されるように、用語「枝突然変異」は用語「サブクローン突然変異(sub-clonal mutation)」と同義である。これらの用語は両方とも、腫瘍細胞のサブセットに存在する突然変異を定義することが意図されている。枝ネオ抗原ではなく幹ネオ抗原を標的にする治療T細胞を投与すれば、又は本明細書に記載されるワクチンを投与すれば、有効な免疫応答を腫瘍全体に対して開始することができ、したがって、抵抗性細胞が腫瘍を再増殖するリスクを減少させる。
【0011】
したがって、第1の態様では、本発明は対象由来の腫瘍において幹ネオ抗原を同定するための方法であって、
i)腫瘍から単離された試料に存在する突然変異を決定するステップ、及び
ii)実質的にすべての腫瘍細胞に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、及び
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ
を含む方法を提供する。
【0012】
第2の態様では、本発明は対象由来の腫瘍において幹ネオ抗原を同定するための方法であって、
i)腫瘍から単離された複数の試料に存在する突然変異を決定するステップ、及び
ii)すべての試料に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、及び
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ
を含む方法を提供する。
【0013】
幹突然変異は、アミノ酸配列の変化(コード化突然変異)をもたらす一塩基変異、挿入/欠失、又はスプライス部位突然変異であり得る。
【0014】
突然変異は、エクソーム配列決定、RNA配列決定、全ゲノム配列決定及び/又は標的化遺伝子パネル配列決定により同定することができる。適切な方法は当技術分野では公知である。エクソーム配列決定及びRNA配列決定の説明は、それぞれBoaら、(Cancer Informatics. 2014年、13巻(補遺2):67~82頁)及びAresら、(Cold Spring Harb Protoc. 2014年11月3日2014(11):1139~48頁)により提供されている。標的化遺伝子パネル配列決定の説明は、例えば、Kammermeierら、(J Med Genet. 2014年11月、51巻(11号):748~55頁)及びYap KLら、(Clin Cancer Res. 2014年、20巻:6605頁)に見ることが可能である。Meyersonら、Nat. Rev. Genetics、2010年及びMardis、Annu Rev Anal Chem、2013年も参照されたい。標的化遺伝子配列決定パネルは市販もされている(例えば、Biocompareにより概括されている(http://www.biocompare.com/Editorial-Articles/161194-Build-Your-Own-Gene-Panels-with-These-Custom-NGS-Targeting-Tools/))。
【0015】
本方法は、対象のHLA対立遺伝子プロファイルを評価し、幹ネオ抗原ペプチドが対象のMHC分子に結合するかどうかを判定するステップを含むことができる。適切な方法は当技術分野で、例えば、OptiType, Szolekら、2014年で知られている。
【0016】
第3の態様では、本発明は、対象由来の腫瘍において幹ネオ抗原を標的にするT細胞集団を提供するための方法であって、
i)幹ネオ抗原ペプチドを特異的に認識できる、対象から単離された試料由来のT細胞を同定するステップ、及び
ii)T細胞を増殖させて、幹ネオ抗原を標的にするT細胞集団を提供するステップ
を含む方法を提供する。
【0017】
当業者であれば、幹ネオ抗原又は幹ネオ抗原ペプチドを「認識する」T細胞への本明細書での言及は、幹ネオ抗原ペプチド:MHC複合体の形態での認識を含むことを理解する。
【0018】
本発明は、幹ネオ抗原特異的T細胞を同定するための方法であって、以下のステップ:i)腫瘍から単離された試料に存在する突然変異を決定するステップ、及び
ii)実質的にすべての腫瘍細胞に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、及び
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ、
又は
i)腫瘍から単離された複数の試料に存在する突然変異を決定するステップ、
ii)すべての試料に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ、並びに
iv)幹ネオ抗原特異的T細胞として幹ネオ抗原を特異的に認識することができるT細胞を前記対象由来の試料から同定するステップ
を含む方法も提供する。
【0019】
T細胞が同定される試料は、血液試料、腫瘍試料、腫瘍関連リンパ節試料又は転移部位由来の試料でもよい。
【0020】
本発明は、腫瘍において幹ネオ抗原を標的にするT細胞集団を提供するための方法であって、
(a)i)腫瘍から単離された試料に存在する突然変異を決定するステップ、及び
ii)実質的にすべての腫瘍細胞に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、及び
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ、
又は
i)腫瘍から単離された複数の試料に存在する突然変異を決定するステップ、
ii)すべての試料に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ
を含む対象由来の腫瘍において幹ネオ抗原を同定するステップ、並びに
b)前記幹ネオ抗原を特異的に認識することができる、対象から単離された試料由来のT細胞を同定するステップ、並びに
c)T細胞を増殖させて、幹ネオ抗原を標的にするT細胞集団を提供するステップ
を含む方法も提供する。
【0021】
本発明は、
(a)i)腫瘍から単離された試料に存在する突然変異を決定するステップ、及び
ii)実質的にすべての腫瘍細胞に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、及び
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ、
又は
i)腫瘍から単離された複数の試料に存在する突然変異を決定するステップ、
ii)すべての試料に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ
を含む対象由来の腫瘍において幹ネオ抗原を同定するステップ、並びに
b)前記幹ネオ抗原を特異的に認識することができる、対象から単離された試料由来のT細胞を同定するステップ、並びに
c)T細胞を増殖させて、幹ネオ抗原を標的にするT細胞集団を提供するステップ
を含む方法により入手されるか又は入手可能であるT細胞集団も提供する。
【0022】
したがって、こうして得られるT細胞集団は、幹ネオ抗原を標的にするT細胞の数の増加(例えば、対象から単離された試料と比べて)により濃縮されている。
【0023】
試料は、対象由来の腫瘍、血液、組織又は末梢血単核球でもよい。
【0024】
幹ネオ抗原は、本発明の第1又は第2の態様に従った方法に従って同定された幹突然変異により製造することができる。
【0025】
T細胞の集団は、CD8+T細胞、CD4+T細胞又はCD8+及びCD4+ T細胞を含むことができる。
【0026】
本方法は、少なくとも第1及び第2のT細胞を提供することを含むことができ、ここで第1のT細胞が第1の幹突然変異により生成した第1の幹ネオ抗原を標的にし、第2のT細胞が第2の幹突然変異により生成した第2の幹ネオ抗原を標的にする。
【0027】
第4の態様では、本発明は本明細書に記載される幹ネオ抗原特異的T細胞又はT細胞の集団を含むT細胞組成物を提供する。
【0028】
幹ネオ抗原は、本発明の第1又は第2の態様に従った方法により同定することができる。
【0029】
幹ネオ抗原特異的T細胞は、本発明の第3の態様によって定義されるT細胞であってよい。
【0030】
幹ネオ抗原特異的T細胞は、以下でさらに考察されるように、幹ネオ抗原若しくは幹ネオ抗原ペプチド(すなわち、幹ネオ抗原に由来するペプチド)に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)若しくはT細胞受容体(TCR)又は親和性増強T細胞受容体(TCR)を発現し得る。
【0031】
TCR及び親和性増強TCRを作製するための方法は当技術分野では公知である。親和性増強TCRとはペプチド-MHC複合体に対する親和性が増強されたTCRのことである。方法には、例えば、患者試料(例えば、患者末梢血又はTIL)からTCRをコードするTCR遺伝子を単離すること、及びTCR配列の改変を通じて(例えば、in vitro突然変異誘発及び増強された親和性(又は親和性成熟)TCRの選択により)ペプチド-MHC複合体に対するTCR親和性を改善することが含まれる。そのようなTCR遺伝子をT細胞内に導入する方法は当技術分野では公知である。多様なヒトTCRレパートリーを有する抗原陰性ヒト化トランスジェニックマウス(例えば、ABabDIIマウスなどのTCR/MHCヒト化マウス)を、抗原を用いて免疫し、そのような免疫化トランスジェニックマウスから抗原特異的TCRを単離することを含む最適親和性TCRを同定する方法も当技術分野では公知である(例えば、Obenaus Mら、Nat Biotechnol. 33巻(4号):402~7頁、2015年を参照)。
【0032】
第5の態様では、本発明は、幹ネオ抗原が本発明の第1又は第2の態様に従った方法により同定される、幹ネオ抗原ペプチドを含むMHC多量体を提供する。MHC多量体及びそれを使用してT細胞を単離する方法は当技術分野では公知であり、例えば、Hadrup, Nature Methods 6巻:520~526頁、2009年、及びAndersen、Nature Protocol 7巻:891~902頁、2012年に記載されている。
【0033】
本明細書に記載されるMHC多量体は本発明の方法において、例えば、NES T細胞を同定する方法において使用することができる。MHC多量体を使用すれば、本明細書に記載される方法、例えば、本明細書に記載されるT細胞又はT細胞集団若しくは組成物を製造するための方法においてNES T細胞を同定する、増殖させる又は濃縮することができる。
【0034】
第6の態様では、本発明は、本発明の第1又は第2の態様に従った方法により同定される幹ネオ抗原由来の幹ネオ抗原ペプチドを含むワクチンを提供する。本明細書で考察されるように、本発明に従った幹ネオ抗原ワクチンは、幹ネオ抗原でパルス若しくは負荷されているか、又は1つ、2つ若しくはそれよりも多い幹ネオ抗原を発現するように(DNA又はRNA移入を介して)遺伝的に改変された樹状細胞ワクチンとして送達することができる。
【0035】
第7の態様では、本発明はがんの治療における使用のための本発明の第4の態様に従ったT細胞組成物を提供する。
【0036】
第8の態様では、本発明は、がんの治療のための医薬の製造において使用するための本発明の第3又は第4の態様において定義されるT細胞を提供する。
【0037】
第9の態様では、本発明は、対象においてがんを治療するための方法であって、本発明の第4の態様に従ったT細胞組成物を対象に投与することを含む方法に関する。
【0038】
本方法は以下のステップ:
(i)対象からのT細胞含有試料の単離、
(ii)幹ネオ抗原を標的にするT細胞集団の同定及び増殖、及び
(iii)対象への(ii)由来の細胞の投与
を含むことができる。
【0039】
本方法は以下のステップ:
(i)T細胞含有試料を単離するステップ、
(ii)本明細書に記載される前記幹ネオ抗原を認識するCAR又はTCRを発現するようにT細胞を操作して、幹ネオ抗原を標的にするT細胞集団を提供するステップ、及び
(iii)対象に(ii)由来の細胞を投与するステップ
を含むことができる。
【0040】
一態様では、本方法は本明細書に記載される幹ネオ抗原を同定するステップも含み、すなわち、本発明は対象においてがんを治療するための方法であって、
(a)i)腫瘍から単離された試料に存在する突然変異を決定するステップ、及び
ii)実質的にすべての腫瘍細胞に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、及び
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ、
又は
i)腫瘍から単離された複数の試料に存在する突然変異を決定するステップ、
ii)すべての試料に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ
を含む対象由来の腫瘍において幹ネオ抗原を同定するステップ、並びに
b)前記幹ネオ抗原を特異的に認識することができる、対象から単離された試料由来のT細胞を同定するステップ、
c)T細胞を増殖させて、幹ネオ抗原を標的にするT細胞集団を提供するステップ、並びに
d)前記T細胞集団を前記対象に投与するステップ
を含む方法を提供する。
【0041】
本方法は
(a)i)腫瘍から単離された試料に存在する突然変異を決定するステップ、及び
ii)実質的にすべての腫瘍細胞に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、及び
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ、
又は
i)腫瘍から単離された複数の試料に存在する突然変異を決定するステップ、
ii)すべての試料に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ
を含む対象由来の腫瘍において幹ネオ抗原を同定するステップ、並びに
(b)T細胞含有試料を提供するステップ、
(c)前記幹ネオ抗原を認識するCAR又はTCRを発現するようにT細胞を操作して、幹ネオ抗原を標的にするT細胞集団を提供するステップ、並びに
(d)対象に前記T細胞集団を投与するステップ
を含むことができる。
【0042】
一態様では、T細胞は本明細書に記載されるようにCAR又は親和性増強TCRを発現するように操作される。
【0043】
本発明はがんを罹っている患者を治療する方法であって、
(i)がんを罹っている患者を同定するステップ、及び
(ii)前記患者に本明細書で定義されるT細胞又はT細胞集団を投与するステップ
を含む方法も提供する。
【0044】
幹ネオ抗原、T細胞又はT細胞集団は本明細書に記載される本発明の態様に従って同定又は製造されていてもよい。
【0045】
試料は、対象由来の腫瘍試料、血液試料又は組織試料又は末梢血単核球試料でもよい。
【0046】
第10の態様では、本発明は対象におけるがんを治療するための方法であって、本発明の第6の態様に従ったワクチンを対象に投与することを含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】NSCLC試料中のネオ抗原反応性T細胞の予測及び同定のためのパイプラインを示す図である。エクソーム配列決定及びRNA配列決定を使用して幹及び枝分かれ突然変異からネオエピトープを定義する。突然変異体又は野生型ペプチドの患者HLAへの結合が予測され、HLAに対して予測高親和性を有するペプチド(緑色)(低IC50)及び突然変異体として高親和性を有し野生型として低親和性を有するペプチド(青色)が選択されて、腫瘍試料中のNES T細胞の同定に使用される蛍光MHC多量体を生成する。
図2】肺がん、脳腫瘍並びに正常な肺及び脳組織から単離された試料中の幹突然変異と枝分かれ突然変異の違いを示す図である。
図3】腫瘍中の幹突然変異の同定からネオ抗原特異的T細胞の同定までのパイプラインを示す図である。
図4】(A)初期肺がんにおけるネオ抗原特異的T細胞の同定。エクソン配列決定データから得られる変異体(Y軸)対 野生型(X軸)の予測される親和性が示されている。赤い点は、野生型(WT)形態の患者HLAに対する高スコア(低親和性)及び突然変異体形態での低スコア(高親和性)を有する予測ペプチドを示している。(B)in vitro増殖TILが予測突然変異ペプチド又は対照サイトメガロウイルス(CMV)ペプチドを負荷した蛍光四量体を用いて染色され、フローサイトメトリーにより分析された。CMV反応性T細胞は腫瘍及び正常肺において同等頻度(0.2~0.3%)で見出される。
図5】(A)クローン(tyrp1)及びサブクローン(OVA)ネオ抗原を含有し非処置のままの不均一腫瘍混合物(B16/B16-OVA)でチャレンジされたマウスは、腫瘍が増殖し、腫瘍チャレンジの20日目から30日目の間で屠殺せざるをえなかった。(B)B16/B16-OVA腫瘍混合物でチャレンジされたがクローンネオ抗原を標的にするTRP1 TCR Tg細胞で処置されたマウスは、腫瘍を拒絶することができた。(C)マウスがサブクローンネオ抗原を標的にするOTII TCR Tg T細胞で処置されたが、そのマウス達は1匹も腫瘍を拒絶することができなかった。(D)は腫瘍中のすべての細胞がOVAネオ抗原を発現するときのOTII TCRTg T細胞が定着腫瘍を拒絶する能力を示す。それぞれのグラフのそれぞれの線は独立したマウスを表している。これらの実験では群あたり6マウスが使用された。(E)はすべての実験群及びそれぞれの群における平均腫瘍サイズを示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
幹ネオ抗原
本発明は腫瘍中の幹(クローン)及び枝分かれ(サブクローン)ネオ抗原を予測し同定するための方法に関する。
【0049】
「ネオ抗原」とはがん細胞内で突然変異の結果として生じる腫瘍特異的抗原である。したがって、ネオ抗原は対象の健康な細胞では発現されない。したがって、幹ネオ抗原を治療的に標的にする1つの利点は、健康な細胞が標的にされないので予測される毒性のレベルがより低いことである。
【0050】
がん細胞が発現する多くの抗原は、がん細胞上で選択的に発現される又は過剰発現される自己抗原である。これらの自己抗原は、中枢性トレランス(それによって自己反応性T細胞は発生中に胸腺で消去される)と末梢性トレランス(それによって成熟T細胞は調節機構により抑制される)の両方を克服する必要があるため、細胞免疫療法で標的にするのは困難である。
【0051】
これらのトレランス機構はネオ抗原を標的にすることにより無効にされ得る。特に、がん細胞で起こる非サイレント突然変異は、健康な細胞では発現されないタンパク質のがん細胞による発現をもたらすことができる。これらの変更されたタンパク質は免疫系により「自己抗原」として認識されない。
【0052】
ネオ抗原は「自己抗原」として認識されないので、ネオ抗原を標的にすることができるT細胞は自己抗原を認識するT細胞と同じ程度に中枢性及び末梢性トレランス機構を受けない。
【0053】
本明細書に記載されるネオ抗原は、野生型の健康な細胞により発現される非突然変異タンパク質と比べてがん細胞により発現されるタンパク質を変更する任意の非サイレント突然変異によって引き起こされ得る。
【0054】
「突然変異」とは、同じ個体由来の健康な細胞と比べた腫瘍細胞におけるヌクレオチド配列(例えば、DNA又はRNA)の違いを指す。ヌクレオチド配列中の違いは、同じ個体由来の健康な細胞により発現されないタンパク質の発現をもたらすことができる。
【0055】
例えば、突然変異は、アミノ酸配列の変化(コード化突然変異)をもたらす一塩基変異(SNV)、多塩基変異、欠失突然変異、挿入突然変異、転座、ミスセンス突然変異又はスプライス部位突然変異であってよい。ゲノム倍加ががん細胞で起こり得ることは公知である。ゲノム倍加事象の前に起こる突然変異は、したがって、倍加事象の後で起きた突然変異の相対的コピー数の2倍、がん細胞に存在することになる。ゲノム倍加事象があらゆる細胞に存在する幹事象である場合、ゲノム倍加前に存在するネオ抗原は述べられた理由で優先的なネオ抗原標的を表すと考えられる。好ましい実施形態では、本発明に係る幹ネオ抗原は、コピー数損失をほとんど受けないゲノムの領域に存在するものである。
【0056】
特定の実施形態では、ネオ抗原を生成する突然変異はSNVである。
【0057】
腫瘍の異なる領域は形態学的にはっきりと異なり得る。さらに、腫瘍内突然変異不均一性が生じることがあり、これは腫瘍予後及びすべての又は大半の腫瘍細胞には存在しない突然変異を標的にする免疫療法を逃れる腫瘍細胞の潜在能力の違いと関連し得る。
【0058】
本発明者らは、腫瘍内不均一性が、腫瘍の異なる領域で発現されるネオ抗原間の及び腫瘍中の異なる細胞間の変異を引き起こすことが可能であることを明らかにした。特に、本発明者らは、腫瘍内では、ある種のネオ抗原が腫瘍のすべての領域及び実質的にすべての細胞で発現され、他のネオ抗原は腫瘍領域及び細胞のサブセットのみで発現されることを明らかにした。
【0059】
したがって、「幹」又は「クローン」ネオ抗原は、腫瘍全体を通じて効果的に発現され実質的にあらゆる腫瘍細胞内にコードされているネオ抗原である。「枝分かれ」又は「サブクローン」ネオ抗原は、腫瘍中の細胞又は領域のサブセット又は一部で発現されているネオ抗原である。
【0060】
「腫瘍全体を通じて存在する」、「腫瘍全体を通じて効果的に発現されている」及び「実質的にあらゆる腫瘍細胞内にコードされている」とは、幹ネオ抗原が、分析対象となる試料が由来する腫瘍のすべての領域で発現されることを意味することができる。
【0061】
突然変異が「実質的にあらゆる腫瘍細胞内にコードされている」とする決定は、統計的計算を指し、したがって、統計的分析及び閾値の対象となることは認識される。
【0062】
同様に、幹ネオ抗原が「腫瘍全体を通じて効果的に発現されている」という決定とは、統計的計算のことであり、したがって、統計的分析及び閾値の対象となる。
【0063】
実質的にあらゆる腫瘍細胞又は実質的にすべての腫瘍細胞で効果的に発現されるとは、適切な統計的方法を使用して決定した場合に、突然変異が試料中の分析されるすべての腫瘍細胞に存在することを意味する。
【0064】
例としては、突然変異を有するがん細胞の割合を記述するがん細胞率(CCF)を使用して突然変異が幹なのか枝分かれなのかを判定することができる。例えば、がん細胞率は、Landauら、(Cell. 2013年2月14日、152巻(4号):714~26頁)により記載されるように変異対立遺伝子頻度をコピー数及び純度推定値と統合することにより決定することが可能である。CCFの決定は本明細書に記載される実施例において示される。
【0065】
手短に言えば、CCF値は分析されたありとあらゆる腫瘍領域内で同定されたすべての突然変異について計算される。1領域のみ(すなわち、1つの試料のみ)が使用される場合、1セットのCCF値のみが得られることになる。これは、その腫瘍領域内のすべての腫瘍細胞にどの突然変異が存在するかに関する情報を提供し、それによって、突然変異が幹なのか枝分かれなのかの指標を提供することになる。腫瘍領域におけるすべてのサブクローン突然変異(すなわち、CCF<1)は枝分かれとして判定され、CCF=1のクローン突然変異は幹であると判定される。
【0066】
記述されたように、幹突然変異の判定は統計的分析及び閾値の対象となる。したがって、突然変異は、CCF 95%信頼区間≧0.75、例えば、0.80、0.85、0.90、0.95、1.00又は>1.00を有すると判定された場合、幹であると同定することができる。逆に、突然変異は、分析された任意の試料においてCCF 95%信頼区間≦0.75、例えば、0.70、0.65、0.60、0.55、0.50、0.45、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20、0.15、0.10、0.05、0.01を有すると判定された場合、枝分かれであると同定することができる。
【0067】
幹突然変異を同定するための方法の正確さは、腫瘍から単離された1つより多い試料についてクローン突然変異を同定することにより高められると理解される。
【0068】
一実施形態では、本方法は、複数、すなわち、2以上のクローンネオ抗原を同定することを含むことができる。
【0069】
一実施形態では、クローンネオ抗原の数は2~1000である。例えば、クローンネオ抗原の数は2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950又は1000でもよく、例えば、クローンネオ抗原の数は2から100まででもよい。
【0070】
好ましい実施形態では、本方法は複数又は集団の、すなわち、2個以上のT細胞を提供することができ、その複数のT細胞はクローンネオ抗原を認識するT細胞及び異なるクローンネオ抗原を認識するT細胞を含む。したがって、本方法は異なるクローンネオ抗原を認識する複数のT細胞を提供する。
【0071】
好ましい実施形態では、複数のT細胞により認識されるクローンネオ抗原の数は2~1000である。例えば、認識されるクローンネオ抗原の数は2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950又は1000でもよく、例えば、認識されるクローンネオ抗原の数は2から100まででもよい。
【0072】
一態様では、複数のT細胞が同じ幹ネオ抗原を認識する。
【0073】
腫瘍試料
本発明の第1の態様の方法は、腫瘍から単離した実質的にすべてのがん細胞に存在する突然変異を決定するステップを含む。「実質的にすべての」への本明細書での言及は、対象中の大多数の腫瘍細胞を含むことが意図されている。例えば、これは細胞の60~100%、例えば、対象における腫瘍細胞の60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100%を含むことができる。
【0074】
腫瘍からの生検及び試料の単離は当技術分野では一般的な実務であり、いかなる適切な方法に従って実施してよく、そのような方法は当業者には公知である。
【0075】
腫瘍は固形腫瘍でも非固形腫瘍でもよい。
【0076】
本発明の方法は、例えば、腫瘍から単離された1つ以上の腫瘍領域由来のがん細胞に存在する突然変異を決定することを含むことができる。
【0077】
例えば、本方法は腫瘍から単離された少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ又は少なくとも10又はそれ以上の生検に存在する突然変異を決定することを含むことができる。この方法を使用すれば1つの生検中の幹(trunk、truncal)突然変異を決定することも可能である。
【0078】
個々の腫瘍試料は、原発部位内若しくは原発と転移の間の腫瘍全体を通じて位置している異なる領域、又は転移内若しくは転移と転移の間の腫瘍全体を通じて位置している異なる領域から単離することができる。例えば、異なる領域に形態学的に全く異なる組織像を呈することが知られている腫瘍に存在する突然変異を決定することは、形態学的に全く異なる領域から単離されたいくつかの個々の試料に存在する突然変異を決定することを含んでいてもよい。
【0079】
試料は血液試料であってもよい。例えば、血液試料は循環中の腫瘍DNA、循環中の腫瘍細胞又は腫瘍DNAを含むエキソソームを含んでいてよい。
【0080】
腫瘍試料に存在する突然変異を決定することは、例えば、エクソーム配列決定、全ゲノム配列決定、標的化遺伝子パネル配列決定及び/又はRNA配列決定によって、腫瘍試料から単離されたDNA及び/又はRNA配列を同じ対象由来の相対的に健康な試料と比較することにより実施することができる。エクソーム配列決定及びRNA配列決定の説明は、それぞれBoaら、(Cancer Informatics. 2014年、13巻(補遺2):67~82頁)及びAresら、(Cold Spring Harb Protoc. 2014年11月3日、2014(11):1139~48頁)により提供されている。
【0081】
非腫瘍試料由来のDNA及び/又はRNAと比較した腫瘍試料由来のDNA及び/又はRNAにおけるヌクレオチド相違(例えば、SNV)を同定するための配列アライメントは、当技術分野で公知である方法を使用して実施することができる。例えば、基準試料と比較したヌクレオチド相違は、Koboldtら、(Genome Res.、2012年、22巻:568~576頁)により記載される方法を使用して実施することができる。基準試料は生殖細胞系列DNA及び/又はRNA配列であってもよい。
【0082】
HLA対立遺伝子
ネオ抗原を特異的に認識するT細胞は本明細書ではネオ抗原特異的(NES)T細胞と呼ばれる。
【0083】
主要組織適合性分子(MHC)が結合する抗原由来ペプチドに関して抗原はT細胞に提示される。
【0084】
このように、幹ネオ抗原はMHC分子により提示される幹ネオ抗原由来ペプチド(本明細書では「幹ネオ抗原ペプチド」と呼ばれる)としてNES T細胞により認識され得る。
【0085】
幹ネオ抗原ペプチドは、がん細胞特異的突然変異を含むポリペプチドの領域に由来するペプチドである。したがって、幹ネオ抗原ペプチドは健康な細胞のゲノムによりコードされるポリペプチドには由来しないはずである。
【0086】
MHCクラスIタンパク質は身体の大半の有核細胞上で機能的受容体を形成する。HLAには3種の主要なMHCクラスI遺伝子であるHLA-A、HLA-B、HLA-C、並びに3種のマイナーな遺伝子であるHLA-E、HLA-F及びHLA-Gが存在する。β2-ミクログロブリンは主要な及びマイナーな遺伝子サブユニットに結合してヘテロ二量体を生成する。
【0087】
MHCクラスI分子に結合するペプチドは典型的には7~13、さらに通常では8~11アミノ酸長である。ペプチドの結合は、ペプチドの主鎖の原子とすべてのMHCクラスI分子のペプチド結合溝のインバリアント部位の間の接触によりその2つの末端で安定化される。ペプチドのアミノ及びカルボキシ末端に結合する溝の両端にインバリアント部位はある。ペプチド長の変動は、多くの場合必要な柔軟性を与えるプロリン又はグリシン残基での、ペプチド骨格のねじれにより調節される。
【0088】
HLAによりコードされる3種の主要な及び2種のマイナーなMHCクラスIIタンパク質が存在する。クラスIIの遺伝子は一緒になって、典型的には抗原提示細胞の表面で発現されるヘテロ二量体(αβ)タンパク質受容体を形成する。
【0089】
MHCクラスII分子に結合するペプチドは典型的には8~20アミノ酸長、さらに通常では10~17アミノ酸長であり、さらに長くなり得る(例えば、最大40アミノ酸)。これらのペプチドは、(MHCクラスIペプチド結合溝とは違って)両端で開いているMHC IIペプチド結合溝に沿って伸長した立体構造で位置している。ペプチドは主にペプチド結合溝を一列に並べる保存残基との主鎖原子の接触により適切な位置に保持される。
【0090】
本発明の方法は、対象のHLA対立遺伝子を評価し、対象により発現されるMHC分子に幹ネオ抗原ペプチドが結合するかどうかを判定するステップを含むことができる。
【0091】
個体のHLA対立遺伝子プロファイルは当技術分野では公知である方法により決定することができる。例えば、個体のHLAプロファイルはHLA血清型判定及び/又はHLA遺伝子配列決定により決定することができる。単一特異的プライマー-PCR(SSR-PCR)を用いたHLA表現型決定は個体のHLAプロファイルを決定するための代替戦略である。
【0092】
本発明の例では、個体のHLAプロファイルは、HLA遺伝子座の配列決定及び個体ごとにHLA型を決定するためのOptitype予測アルゴリズムを使用するプロセシングにより決定される(Szolekら、Bioinformatics、2014年、30巻(23号):3310~3316頁)。
【0093】
特定のMHC分子へのペプチドの結合は当技術分野では公知である方法を使用して予測することができる。MHC結合を予測するための方法の例は、Lundegaardら、(Nucleic Acids Res. 2008年:W509-12.2008 & Bioinformatics. 2008年6月1日、24巻(11号):1397~8頁)及びShenら、(Proteome Sci. 2013年11月7日、11巻(補遺1):S15)により記載される方法を含む。
【0094】
本発明の方法は、対象により発現されるMHC分子に結合すると予測される幹ネオ抗原ペプチドを決定することを含むことができる。特に、本方法は、対象により発現されるMHC分子に強力に結合すると予測される幹ネオ抗原ペプチドを決定して選択するステップを含むことができる。「強力に結合する」の正確な定義は、MHC結合相互作用を予測するのに使用される方法に依拠する(例えば、Lundegaardら、(同上)参照)。しかし、すべての場合に、選択される幹ネオ抗原ペプチドは、対象により発現されるMHC分子に結合し、その状況で提示されることができると予測される。
【0095】
幹ネオ抗原ペプチドへの結合親和性は500nM未満であってよい。「高親和性」とは0~50nM結合親和性を意味することができる。他の実施形態では、幹ネオ抗原ペプチドは、50~150nM結合親和性の中程度の親和性で、又は150~500nM結合親和性の低親和性でMHC分子に結合することができる。
【0096】
ある実施形態では、幹ネオ抗原ペプチドは高親和性でMHC分子に結合すると予測され得るが、対応する野生型ペプチド(例えば、対応する野生型ポリペプチドの同じ領域に由来する等価なペプチド)は低親和性で同じMHC分子に結合すると予測される。
【0097】
T細胞集団
本発明は、腫瘍由来の幹ネオ抗原を標的にするT細胞集団を提供するための方法にも関する。
【0098】
T細胞集団はCD8+T細胞、CD4+T細胞又はCD8+及びCD4+ T細胞を含み得る。
【0099】
ヘルパーTヘルパー細胞(TH細胞)は、B細胞のプラズマ細胞及び記憶B細胞への成熟、並びに細胞障害性T細胞及びマクロファージの活性化を含む、免疫学的プロセスにおいて他の白血球細胞を支援する。TH細胞はその表面でCD4を発現する。TH細胞は、抗原提示細胞(APC)の表面でMHCクラスII分子によりペプチド抗原と一緒に提示されると活性化される。これらの細胞はTH1、TH2、TH3、TH17、Th9又はTFHを含むいくつかのサブタイプのうちの1つに分化することが可能であり、これらのサブタイプは異なるサイトカインを分泌して異なるタイプの免疫応答を促進する。
【0100】
細胞障害性T細胞(TC細胞又はCTL)はウイルス感染した細胞及び腫瘍細胞を破壊し、移植片拒絶にも関与している。CTLはその表面でCD8を発現する。これらの細胞は、すべての有核細胞の表面に存在しているMHCクラスIに会合している抗原に結合することによりその標的を認識する。IL-10、アデノシン及び調節T細胞により分泌される他の分子を通じて、CD8+細胞を不活化することが可能であり、それによって自己免疫疾患は予防される。
【0101】
本発明に従って製造されるT細胞集団は、標的、すなわち、幹ネオ抗原に特異的であるT細胞について濃縮してもよい。すなわち、本発明に従って製造されるT細胞集団は、1つ以上の幹ネオ抗原を標的にするT細胞の数が増加している。例えば、本発明のT細胞集団は、対象から単離された試料中のT細胞と比べて幹ネオ抗原を標的にするT細胞の数が増加している。すなわち、T細胞集団の組成は、幹ネオ抗原を標的にするT細胞の百分率又は割合が増加する点で、「天然の」T細胞集団(すなわち、本明細書で述べられている同定及び増殖ステップを受けたことがない集団)の組成とは異なることになる。
【0102】
本発明に従って製造されるT細胞集団は、標的、すなわち、幹ネオ抗原(すなわち、クローンネオ抗原。本明細書で使用されるように、用語「幹」ネオ抗原と「クローン」ネオ抗原は同じであり、用語「枝分かれ」ネオ抗原と「サブクローン」ネオ抗原も同じである)に特異的であるT細胞について濃縮してもよく、幹ネオ抗原を標的にするT細胞の、枝分かれネオ抗原を標的にするT細胞に対する比率が、対象から単離された試料中のT細胞と比べた場合、幹ネオ抗原を標的にするT細胞に有利に高くなる。
【0103】
すなわち、本発明に従って製造されるT細胞集団では、1つ以上の幹ネオ抗原を標的にするT細胞の数が増加することになる。例えば、本発明のT細胞集団は、対象から単離された試料中のT細胞と比べて幹ネオ抗原を標的にするT細胞の数が増加している。すなわち、T細胞集団の組成は、幹ネオ抗原を標的にするT細胞の百分率又は割合が増加されることになり、幹ネオ抗原を標的にする集団中のT細胞の、枝分かれネオ抗原を標的にするT細胞に対する比率が幹ネオ抗原を標的にするT細胞に有利に高くなる点で、「天然の」T細胞集団(すなわち、本明細書で考察されている同定及び増殖ステップを受けたことがない集団)の組成とは異なることになる。
【0104】
本発明に従ったT細胞集団は、幹ネオ抗原を標的にするT細胞を少なくとも約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100%有してもよい。例えば、T細胞集団は、幹ネオ抗原を標的にするT細胞を約0.2%~5%、5%~10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~70%又は70~100%有してもよい。一態様では、T細胞集団は、幹ネオ抗原を標的にする、少なくとも約1、2、3、4、又は5%のT細胞、例えば、幹ネオ抗原を標的にする、少なくとも約2%又は少なくとも2%のT細胞を有する。
【0105】
別の言い方をすれば、T細胞集団は、幹ネオ抗原を標的にしないT細胞を約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8%以下で有し得る。例えば、T細胞集団は、幹ネオ抗原を標的にしないT細胞を約95%~99.8%、90%~95%、80~90%、70~80%、60~70%、50~60%、30~50%又は0~30%以下で有し得る。一態様では、T細胞集団は、幹ネオ抗原を標的にしない、約99、98、97、96又は95%以下のT細胞、例えば、幹ネオ抗原を標的にしない、約98%又は95%以下のT細胞を有する。
【0106】
幹ネオ抗原反応性T細胞の増殖された集団は、例えば幹ネオ抗原ペプチドを使用して増殖されていないT細胞の集団よりも高い活性を有することができる。「活性」への言及は、幹ネオ抗原ペプチド、例えば、増殖のために使用されるペプチドに対応するペプチド、又は幹ネオ抗原ペプチドの混合物を用いた再刺激に対するT細胞集団の応答を表すことができる。その応答をアッセイするための適切な方法は当技術分野では公知である。例えば、サイトカイン産生は測定することができる(例えば、IL2又はIFNγ産生は測定することができる)。「より高い活性」への言及は、例えば、活性の1~5、5~10、10~20、20~50、50~100、100~500、500~1000倍の増加を含む。一態様では、活性は1000倍を超えてもよい。
【0107】
好ましい実施形態では、本発明は複数又は集団、すなわち、2個以上のT細胞を提供し、その複数のT細胞はクローンネオ抗原を認識するT細胞及び異なるクローンネオ抗原を認識するT細胞を含む。したがって、本発明は、異なるクローンネオ抗原を認識する複数のT細胞を提供する。複数又は集団中の異なるT細胞は代わりに、同じ幹ネオ抗原を認識する異なるTCRを有することができる。
【0108】
好ましい実施形態では、複数のT細胞により認識されるクローンネオ抗原の数は2~1000である。例えば、認識されるクローンネオ抗原の数は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950又は1000、好ましくは2~100であってもよい。TCRは異なるが同じクローンネオ抗原を認識する複数のT細胞が存在しうる。
【0109】
T細胞集団は、すべて若しくは主にCD8+ T細胞で構成されていてもよいし、又はすべて若しくは主にCD8+ T細胞とCD4+ T細胞の混合物で構成されていてもよいし、又はすべて若しくは主にCD4+ T細胞で構成されていてもよい。
【0110】
特定の実施形態では、T細胞集団は、腫瘍を有する対象から単離されたT細胞から生成される。
【0111】
例えば、T細胞集団は、腫瘍を有する対象から単離された試料中のT細胞から生成することができる。試料は対象の腫瘍試料でも、末梢血試料でも、他の組織由来の試料でもよい。
【0112】
特定の実施形態では、T細胞集団は、幹ネオ抗原が同定されている腫瘍由来の試料から生成される。言い換えると、T細胞集団は、治療される患者の腫瘍に由来する試料から単離される。そのようなT細胞は本明細書では「腫瘍浸潤リンパ球」(TIL)と呼ばれる。
【0113】
T細胞は当技術分野では周知である方法を使用して単離することができる。例えば、T細胞はCD3、CD4又はCD8の発現に基づいて試料から作製される単細胞懸濁液から精製することができる。T細胞はフィコールpaque勾配を通過させることにより試料から濃縮することができる。
【0114】
NES T細胞の増殖は当技術分野では公知である方法を使用して実施することができる。例えば、NES T細胞はT細胞に分裂促進性刺激を与えることが知られている条件でのex vivo培養により増殖させることができる。例としては、NES T細胞は、サイトカイン、例えば、IL-2と一緒に又は分裂促進性抗体、例えば、抗CD3及び/若しくはCD28と一緒に培養してもよい。NES T細胞は、照射抗原提示細胞(APC)、例えば、単一刺激物質として又は刺激を与える幹ネオ抗原若しくはペプチドのプールとしての、同定された幹突然変異を含有するペプチドでパルスされた樹状細胞と共培養することもできる。
【0115】
NES T細胞の増殖は、例えば追加の共刺激シグナルをもたらす、人工的抗原提示細胞(aAPC)、及び適切なペプチドを提示する自己PBMCの使用等を含む、当技術分野で公知である方法を使用して実施することができる。例として、自己PBMCは、単一刺激物質として又は、代わりに刺激を与える幹ネオ抗原ペプチドのプールとして、本明細書で述べられている幹突然変異を含有するペプチドでパルスすることができる。
【0116】
本発明は、抗原提示細胞及び幹ネオ抗原又は幹ネオ抗原ペプチドを含む組成物を製造するための方法を提供する。幹ネオ抗原は本発明の方法に従って同定することができる。一実施形態では、前記方法は以下のステップ:
(a)i)腫瘍から単離された試料に存在する突然変異を決定するステップ、及び
ii)実質的にすべての腫瘍細胞に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、及び
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ、
又は
i)腫瘍から単離された複数の試料に存在する突然変異を決定するステップ、
ii)すべての試料に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ
を含む対象由来の腫瘍において幹ネオ抗原を同定するステップ、並びに
b)前記幹ネオ抗原又は幹ネオ抗原ペプチド及び抗原提示細胞を含む組成物を製造するステップ
を含む。
【0117】
本発明は抗原提示細胞、例えば、樹状細胞、及び幹ネオ抗原又は幹ネオ抗原ペプチドを含む組成物も提供する。幹ネオ抗原は本明細書で考察される本発明の方法に従って同定することができる。
【0118】
本組成物は本明細書に記載される方法に従って製造することができる。本組成物は本明細書に記載される本発明の方法において、例えば、本明細書で述べられたT細胞又はT細胞集団若しくは組成物を製造する方法において使用することもできる。
【0119】
本明細書に記載される組成物は、さらに薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物でもよい。医薬組成物は任意選択で、1つ以上のさらなる薬学的に活性なポリペプチド及び/又は化合物を含んでもよい。そのような製剤は、例えば、静脈内注入に適した形態でもよい。
【0120】
本発明は、腫瘍中の幹ネオ抗原を標的にするT細胞集団を製造するための方法であって、
i)前記幹ネオ抗原を特異的に認識することができる、対象から単離された試料由来のT細胞を同定するステップ、及び
ii)T細胞を増殖させて、幹ネオ抗原を標的にするT細胞集団を提供し、前記T細胞が前記幹ネオ抗原に由来する幹ネオ抗原ペプチドを提示する抗原提示細胞と共培養することにより増殖されるステップ
を含む方法も提供する。
【0121】
こうして得られるT細胞集団は幹ネオ抗原を標的にするT細胞について濃縮されている。
【0122】
一態様では、抗原提示細胞は、前記ペプチドでパルス又は負荷されている。
【0123】
本発明は幹ネオ抗原特異的T細胞の集団を含むT細胞組成物も提供し、幹ネオ抗原特異的T細胞の前記集団はT細胞を、ネオ抗原ペプチドを提示する抗原提示細胞と共培養することにより製造される。
【0124】
一態様では、抗原提示細胞は樹状細胞である。一態様では、抗原提示細胞は照射される。
【0125】
一態様では、抗原提示細胞は、例えば、正しいHLA状況において関連のあるペプチドを提示することができる細胞である。そのような細胞は、自己HLA分子を発現している自己活性化PBMC、又は適合HLAのアレイを発現している非自己細胞でもよい。一態様では、人工的抗原提示細胞は照射される。
【0126】
NES T細胞は、外来性APCの存在下又は非存在下で幹ネオ抗原を用いてTILを最初に刺激し、続いてポリクロナール刺激並びにサイトカイン、例えば、IL-2を用いて又は分裂促進性抗体、例えば、抗CD3及び/若しくはCD28を用いた増殖を行うことにより濃縮することもできる。そのような方法は当技術分野では公知である。例えば、Forgetら、J Immunother. 2014年11月~12月、37巻(9号):448~60頁、Doniaら、Cytotherapy. 2014年8月、16巻(8号):1117~20頁、Doniaら、Scand J Immunol. 2012年2月、75巻(2号):157~67頁及びYeら、J Transl Med. 2011年8月9日、9巻:131頁を参照されたい。
【0127】
T細胞の混合開始集団中のNES T細胞の同定は当技術分野では公知である方法を使用して実施することができる。例えば、NES T細胞は、本発明の方法により同定される幹ネオ抗原ペプチドを含むMHC多量体を使用して同定することができる。
【0128】
MHC多量体は、無関係なT細胞の大きな群の間で特定の抗原に対して高親和性を有するT細胞を同定し単離するように設計されているオリゴマー形態のMHC分子である。多量体を使用してクラス1 MHC、クラス2 MHC、又は非古典的分子(例えば、CD1d)を提示することができる。
【0129】
最も一般的に使用されているMHC多量体は四量体である。これらは典型的には、真核又は細菌細胞において通常は組換え的に製造される可溶性MHC単量体をビオチン化することにより製造される。次に、これらの単量体は骨格、例えば、ストレプトアビジン又はアビジンに結合して四価構造体を作り出す。これらの骨格を蛍光色素とコンジュゲートし、引き続いて、例えば、フローサイトメトリーにより結合T細胞を単離する。
【0130】
本発明は幹ネオ抗原ペプチドを含むMHC多量体を提供する。幹ネオ抗原は、本明細書に記載される本発明に従った方法により同定することができる。
【0131】
一態様では、本発明は、本明細書に記載される本発明に従って使用することができるMHC多量体を製造するための方法を提供する。前記方法は、
(a)(i)腫瘍から単離された試料に存在する突然変異を決定するステップ、及び
ii)実質的にすべての腫瘍細胞に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、及び
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ、
又は
i)腫瘍から単離された複数の試料に存在する突然変異を決定するステップ、
ii)すべての試料に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ
を含む対象由来の腫瘍において幹ネオ抗原を同定するステップ、並びに
(b)前記幹ネオ抗原から幹ネオ抗原ペプチドを作製するステップ、並びに
(c)前記幹ネオ抗原ペプチドを含むMHC多量体を製造するステップ
を含む。
【0132】
本発明に従ったMHC多量体は、本発明に係るT細胞、T細胞集団又は組成物を同定する、単離する、増殖させる又は他の方法で製造するための方法において使用することができる。幹ネオ抗原ペプチドは当技術分野では公知である方法を使用して合成することができる。
【0133】
用語「ペプチド」は通常の意味で使用されて、典型的には隣接するアミノ酸のαアミノ基とカルボキシル基の間のペプチド結合により一方からもう一方へ連結された、典型的にはL-アミノ酸である一連の残基を意味する。この用語は改変ペプチド及び合成ペプチド類似体を含む。
【0134】
ペプチドは化学的方法を使用して作ることができる(Peptide Chemistry、A practical Textbook. Mikos Bodansky、Springer-Verlag、Berlin.)。例えば、ペプチドは固相法により合成し(Roberge JYら、(1995年) Science 269巻: 202~204頁)、樹脂から切断し、分取高速液体クロマトグラフィーにより精製する(例えば、Creighton(1983年)Proteins Structures And Molecular Principles、WH Freeman and Co、New York NY)ことが可能である。自動合成は、例えば、ABI 43 1Aペプチド合成機(Perkin Elmer)を製造業者の提供する説明書に従って使用して達成できる。
【0135】
ペプチドは代わりに、組換え手段により、又はネオ抗原である若しくはネオ抗原を含むポリペプチドからの切断により作ることができる。ペプチドの組成は、アミノ酸分析又は配列決定により確かめることができる(例えば、エドマン分解法)。
【0136】
幹ネオ抗原ペプチドは、そのペプチド内の任意の残基位置にがん細胞特異的突然変異/幹突然変異(例えば、SNVによりコードされる非サイレントアミノ酸置換)を含み得る。例としては、MHCクラスI分子に結合することができるペプチドは典型的には7~13アミノ酸長である。したがって、アミノ酸置換は13アミノ酸を含むペプチドでは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13位に存在することができる。
【0137】
さらなる態様では、より長いペプチド、例えば27~31mer、を使用することができ、突然変異は任意の位置に、例えば、ペプチドの中心に、例えば、13、14、15又は16に存在してもよく、これを使用してクローンネオ抗原を認識するようにCD4+とCD8+細胞の両方を刺激することも可能である。
【0138】
本発明は、本明細書で定義される幹ネオ抗原ペプチドを含むMHC多量体をさらに提供する。
【0139】
T細胞組成物
本発明は幹ネオ抗原特異的T細胞を含むT細胞組成物をさらに提供する。
【0140】
T細胞組成物は、本明細書で定義される複数のネオ抗原特異的T細胞を含む医薬組成物であってよい。本医薬組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤をさらに含むことができる。本医薬組成物は任意選択で、1つ以上のさらなる薬学的に活性なポリペプチド及び/又は化合物を含んでいてもよい。そのような製剤は、例えば、静脈内注入に適した形態であってもよい。
【0141】
本発明の好ましい実施形態では、本明細書に記載される対象は哺乳動物、好ましくは、ヒト、ネコ、イヌ、ウマ、ロバ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、マウス、ラット、ウサギ又はモルモットであるが、最も好ましくは、対象はヒトである。
【0142】
上記の本発明の方法は、in vitro、ex vivo、又はin vivoで使用してもよく、例えば、in situ処置のために又はex vivo処置のために使用され、続いて処置された細胞を身体に投与するのに使用してもよい。
【0143】
本明細書に記載される本発明に従ったある態様では、T細胞又はT細胞集団若しくは組成物は、例えば、本明細書に記載されるT細胞単離及び増殖に続いて対象に再注入される。これを達成するための適切な方法は当業者には公知である。例えば、T細胞を製造し、選択し増殖させるための方法は当技術分野では公知であり、例えば、Dudley J Immunother. 2003年、26巻(4号): 332~342頁、及びRosenbergら、2011年、Clin Cancer Res:17巻(13号):4550~7頁を参照されたい。T細胞を再注入するための方法は、例えば、Dudleyら、Clin Cancer Res. 2010年12月15日、16巻(24号): 6122~6131頁. 2011年及びRooneyら、Blood. 1998年9月1日、92巻(5号):1549~55頁に記載されている。
【0144】
幹ネオ抗原特異的T細胞は幹ネオ抗原を認識することができる任意のT細胞(すなわち、NES T細胞)であり得る。
【0145】
例えば、NES T細胞は本発明の方法により提供されるT細胞であってよい。
【0146】
NES T細胞は操作されたT細胞であってよい。例えば、NES T細胞は、幹ネオ抗原又は幹ネオ抗原ペプチドに特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)又はT細胞受容体(TCR)(例えば、幹ネオ抗原又は幹ネオ抗原ペプチドに特異的に結合する親和性増強T細胞受容体(TCR))を発現し得る。
【0147】
CARは、その通常のフォーマットで、モノクローナル抗体(mAb)の特異性をT細胞のエフェクター機能に移植するタンパク質である。その通常の形態はI型膜貫通ドメインタンパク質の形態であり、抗原認識アミノ末端、スペーサー、膜貫通ドメインを有し、そのすべてがT細胞生存及び活性化シグナルを伝達する化合物エンドドメインに連結されている。
【0148】
最も一般的な形態のこれらの分子は、モノクローナル抗体に由来する一本鎖可変断片(scFv)を使用して標的抗原を認識する。scFvはスペーサー及び膜貫通ドメインを介してシグナル伝達エンドドメインに融合している。そのような分子は、scFvによるその標的の認識に応答してT細胞の活性化をもたらす。T細胞は、そのようなCARを発現すると、標的抗原を発現する標的細胞を認識して死滅させる。腫瘍関連抗原に対していくつかのCARが開発されており、そのようなCAR発現T細胞を使用する養子移入アプローチが、種々のがんの治療のために現在臨床試験されている。
【0149】
親和性増強TCRは、所望の標的特異性を備えたTCRα及びβ鎖をクローン化する元のT細胞クローンを同定することにより作製される。次に、候補TCRはα及びβ鎖の相補性決定領域でPCR特異的変異導入を受ける。それぞれのCDR領域における突然変異をスクリーニングし、天然のTCRよりも増強された親和性を備えた突然変異体を選択する。完了すると、リード候補は、親和性増強TCRを発現しているT細胞において機能試験を可能にするためにベクターにクローニングされる。
【0150】
NES T細胞は高親和性TCRを有し得るので、親和性増強が必要ではないことがある。高親和性TCRは対象由来のNES T細胞から単離することができ、親和性増強を必要としないことがある。
【0151】
幹ネオ抗原ペプチドに結合することができる候補T細胞クローンは、例えば、本明細書に記載される幹ネオ抗原ペプチドを含むMHC多量体を使用して同定することができる。
【0152】
幹ネオ抗原ペプチド又は幹ネオ抗原を特異的に標的にする同定されたTCR及び/又はCARは、当技術分野では公知である方法を使用して、例えば、ウイルスベクターを用いる形質導入、DNA又はRNAを用いるトランスフェクションを含む多くの手段のうちの1つによりTCR又はCARをコードするDNA又はRNAを導入することによって、対象由来の自己T細胞において発現させることができる。
【0153】
自己T細胞は本明細書に記載される対象から単離された試料由来であってもよい。
【0154】
本発明は本明細書に記載されるT細胞、例えば、操作されたT細胞を包含する。
【0155】
ワクチン
本発明は、本明細書で定義される幹ネオ抗原又は幹ネオ抗原ペプチドを含むワクチンを提供する。例えば、幹ネオ抗原又は幹ネオ抗原ペプチドは本発明の方法により同定することができる。
【0156】
本発明の一態様では、ワクチンは1つよりも多い異なる幹ネオ抗原又は幹ネオ抗原ペプチド、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の異なるペプチドを含むことができる。幹ネオ抗原はタンパク質の形態でもよい。
【0157】
一実施形態では、ワクチンは本明細書で定義される幹ネオ抗原を含むポリペプチドを含むことができる。本発明の一実施形態では、ワクチンは、それぞれが幹ネオ抗原を含む1つよりも多い異なるポリペプチド、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の異なるポリペプチドを含むことができる。
【0158】
ワクチンは、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤をさらに含む医薬組成物でもよい。医薬組成物は任意選択で1つ以上のさらなる薬学的に活性なポリペプチド及び/又は化合物を含んでいてもよい。そのような製剤は、例えば、静脈内注入に適した形態であってもよい。がんワクチンの考察については、例えば、Butterfield、BMJ. 2015年、22巻350頁を参照されたい。
【0159】
特に、ワクチンはアジュバントをさらに含むことができる。アジュバントの例はアルミニウム塩、油乳剤及び菌体成分(例えば、LPS及びリポソーム)を含むが、これらに限定されない。
【0160】
ワクチン中のペプチドの適切な用量は当業者が決めることができる。用量は使用されることになるペプチドに依存し得る。ペプチドのin vivo使用では、0.1~4000μg、例えば、0.1~2000μg、0.1~1000μg又は0.1~500μg、例えば、0.1~100μgのin vivo用量を用いることができる。
【0161】
本明細書で考察される本発明に従ったワクチンは対象において免疫応答を惹起することができる。惹起することができる「免疫応答」は液性及び/又は細胞性免疫でもよく、例えば、抗体産生を刺激する又はワクチン中の抗原に一致する抗原をその表面で発現している細胞を認識し破壊する(又は他の方法で除去する)ことができる細胞障害性細胞若しくはキラー細胞を刺激するものであってもよい。したがって、用語「免疫応答を刺激する」はすべての種類の免疫応答及びそれらを刺激するための機構を含み、本発明の好ましい態様を形成するCTLを刺激することを包含する。好ましくは、刺激される免疫応答は細胞障害性CD8+ T細胞及びヘルパーCD4+ T細胞である。免疫応答の程度は免疫応答のマーカー、例えば、分泌された分子、例えば、IL-2若しくはIFNγ又は抗原特異的T細胞の生成により評価することができる。
【0162】
さらに、幹ネオ抗原ワクチンは、細胞、例えば、抗原提示細胞の形態で、例えば、樹状細胞ワクチンとして送達することができる。抗原提示細胞、例えば、樹状細胞は、幹ネオ抗原若しくは幹ネオ抗原ペプチドでパルス若しくは負荷されていてもよいし、又は1つ、2つ若しくはそれよりも多い幹ネオ抗原若しくは幹ネオ抗原ペプチド(例えば、Butterfield 2015年、上記、Palucka 2013年、上記参照)、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10の幹ネオ抗原若しくは幹ネオ抗原ペプチドを発現するように遺伝子的に改変(DNA又はRNA移入を介して)されていてもよい。樹状細胞ワクチンを調製する方法は当技術分野では公知である。
【0163】
適切なワクチンは、本明細書に記載される幹ネオ抗原又は幹ネオ抗原ペプチドに関連しているDNA又はRNAワクチンの形態でもよい。例えば、1つ以上の幹ネオ抗原又はこれに由来するペプチド若しくはタンパク質をコードするDNA又はRNAは、例えば、対象に直接注射することにより、ワクチンとして使用することができる。例えば、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の幹ネオ抗原、又はこれに由来するペプチド若しくはタンパク質をコードするDNA又はRNA。1つ以上の幹ネオ抗原又は幹ネオ抗原ペプチドは、1つ以上の幹ネオ抗原又は幹ネオ抗原ペプチドをコードするDNA又はRNA配列を含有する細菌又はウイルスベクターを介して送達することができる。
【0164】
本明細書に記載されるワクチンは、適切ないかなる方法でも投与することができる。例えば、当技術分野で公知である適切ないかなる送達機構でも使用することができる。ワクチンはベクター送達系の使用を含むことができ、又はベクター送達系は必要ではないこともある。ベクターはウイルス性でも細菌性でもよい。リポソームは送達系として使用することができる。リステリアワクチン又は電気穿孔法を使用することもできる。したがって、本発明は、その表面で(又は細胞内で)幹ネオ抗原若しくは幹ネオ抗原ペプチドを発現している細胞、又はそのような細胞の集団をさらに提供し、この細胞又は細胞集団は本明細書で定義される方法により入手可能である(又は入手される)。好ましい実施形態では、細胞は抗原提示細胞、例えば、樹状細胞である。
【0165】
本明細書に記載される細胞のin vivo投与では、当技術分野で一般的である又は標準である細胞集団のいかなる投与様式でも、例えば、適切な経路による注射又は注入を使用することができる。一態様では、対象のkg当たり1×104~1×108細胞(例えば、ヒトでkg当たり1.4×104~2.8×106)が投与される。一態様では、対象のkg当たり約107細胞又はこれ以下が投与される。したがって、例えば、ヒトでは、用量で、すなわち、用量当たり、例えば、T細胞の用量又はワクチン接種用量として対象のkg当たり0.1~20×107細胞の用量を投与することができる。一態様では、対象のkg当たり1×104~1×105細胞まで、1×105~1×106細胞まで、1×106~1×107細胞まで、又は1×107~1×108細胞までが投与される。ワクチン接種用途では、用量当たり1~20×106細胞を使用することができる。この用量は必要であれば後に繰り返すことが可能である。
【0166】
本発明に従ったワクチンはがんの治療において使用することができる。
【0167】
本発明は、対象においてがんを治療するための方法であって、本明細書に記載されるワクチンを前記対象に投与することを含む方法も提供する。方法は、がんを罹っている対象を同定するステップをさらに含んでもよい。
【0168】
さらなる態様では、本発明は幹ネオ抗原ペプチド又は幹ネオ抗原を含むワクチンを製造するための方法であって、
(a)(i)腫瘍から単離された試料に存在する突然変異を決定するステップ、及び
ii)実質的にすべての腫瘍細胞に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、及び
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ、
又は
i)腫瘍から単離された複数の試料に存在する突然変異を決定するステップ、
ii)すべての試料に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ
を含む対象由来の腫瘍において幹ネオ抗原を同定するステップ、並びに
(b)前記ネオ抗原から幹ネオ抗原ペプチド又は幹ネオ抗原を生成するステップ、並びに
(c)前記幹ネオ抗原ペプチド又は幹ネオ抗原タンパク質を用いてワクチンを製造するステップ
を含む方法を提供する。
【0169】
本発明の好ましい態様では、ワクチンの製造は、樹状細胞ワクチンを調製することを含み、前記樹状細胞は幹ネオ抗原又は幹ネオ抗原ペプチドを提示する。
【0170】
幹ネオ抗原タンパク質は、本発明に従ったワクチン接種に関連するワクチン及び方法において使用することもできる。
【0171】
さらなる態様では、本発明は幹ネオ抗原ペプチド又は幹ネオ抗原をコードするDNA又はRNA分子を含むワクチンを製造するための方法であって、
(a)(i)腫瘍から単離された試料に存在する突然変異を決定するステップ、及び
ii)実質的にすべての腫瘍細胞に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、及び
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ、
又は
i)腫瘍から単離された複数の試料に存在する突然変異を決定するステップ、
ii)すべての試料に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ
を含む対象由来の腫瘍において幹ネオ抗原を同定するステップ、並びに
(b)幹ネオ抗原ペプチド又は幹ネオ抗原をコードするDNA又はRNA分子を製造するステップ、並びに
(c)前記DNA又はRNA分子を用いてワクチンを製造するステップ
を含む方法を提供する。
【0172】
ワクチンは上文に記載される適切な方法により送達することができる。
【0173】
一態様では、ワクチン接種は治療的ワクチン接種である。この態様では、ワクチンはがんを治療するためにがんを罹っている対象に投与される。
【0174】
さらなる態様では、ワクチン接種は予防ワクチン接種である。この態様では、ワクチンはがんを発症するリスクがあり得る対象に投与される。
【0175】
一態様では、ワクチンは以前がんに罹ったことがあり、がんの再発のリスクがある対象に投与される。
【0176】
ワクチンは、1つ又はいくつかの幹ネオ抗原ペプチド又はタンパク質をコードしているDNA又はRNAの形態であってもよく、ウイルスベクター、抗原提示細胞及び電気穿孔法を含むがこれらに限定されない追加の方法により送達されてもよい。
【0177】
がん
幹ネオ抗原を特異的に標的にするT細胞はがんを治療するための方法において使用することができる。
【0178】
「治療する」は、本発明に従ったT細胞集団の治療的使用に関連する。本明細書ではT細胞組成物は、疾患に伴う少なくとも1つの症状を和らげる、減少させる若しくは改善する及び/又は疾患の進行を遅らせる、減少させる若しくは遮断するために、既存の疾患又は状態を有する対象に投与することができる。
【0179】
がんは、例えば、膀胱がん、胃、食道、乳がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、卵巣がん、子宮内膜がん、腎がん(腎細胞)、肺がん(小細胞、非小細胞及び中皮腫)、脳腫瘍(例えば、神経膠腫、星状細胞腫、神経膠芽腫)、メラノーマ、リンパ腫、小腸がん(十二指腸及び空腸)、白血病、膵臓がん、肝胆道腫瘍、胚細胞がん、前立腺がん、頭頸部がん、甲状腺がん及び肉腫であり得る。本発明の好ましい態様では、がんは肺がん、好ましくは非小細胞肺がんである。本発明の別の態様では、がんはメラノーマである。
【0180】
本発明の組成物及び方法を使用する治療は、腫瘍に由来する循環する腫瘍細胞及び/又は転移を標的にすることも包含することができる。
【0181】
1つ以上の幹ネオ抗原を標的にする本発明のT細胞組成物を用いる治療は、標準的なアプローチを用いると生じることが多い治療抵抗性腫瘍細胞の進化を妨げる一助となることができる。
【0182】
本発明に従ったがんを治療するための方法及び使用は、追加のがん療法と組み合わせて実施することができる。特に、本発明に従ったT細胞組成物は、チェックポイント遮断療法、同時刺激抗体、化学療法及び/若しくは放射線療法、標的療法又はモノクローナル抗体療法と組み合わせて投与することができる。
【0183】
チェックポイント阻害剤は、例えば、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、Lag-3阻害剤、Tim-3阻害剤、TIGIT阻害剤、BTLA阻害剤及びCTLA-4阻害剤を含むが、これらに限定されない。同時刺激抗体は、ICOS、CD137、CD27 OX-40及びGITRを含むがこれらに限定されない免疫調節受容体を通じてポジティブシグナルを送る。好ましい実施形態では、チェックポイント阻害剤はCTLA-4阻害剤である。
【0184】
本明細書で使用される化学療法実体とは、細胞に破壊的である実体のことであり、すなわち、この実体は細胞の生存能を減少させる。化学療法実体は細胞障害性薬物でもよい。想定される化学療法剤は、限定せずに、アルキル化剤、アントラサイクリン、エポチロン、ニトロソウレア、エチレンイミン/メチルメラミン、スルホン酸アルキル、アルキル化剤、代謝拮抗剤、ピリミジン類似体、エピポドフィロトキシン、酵素、例えば、Lアスパラギナーゼ;生体応答修飾物質、例えば、IFNα、IL-2、G-CSF及びGM-CSF;プラチナ配位化合物、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチン、アントラセンジオン、置換尿素、例えば、ヒドロキシ尿素、N-メチルヒドラジン(MIH)及びプロカルバジンを含むメチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、例えば、ミトタン(o,p'-DDD)及びアミノグルテチミド;ホルモン及び副腎皮質ステロイドアンタゴニストを含むアンタゴニスト、例えば、プレドニゾン及び等価物、デキサメタゾン並びにアミノグルテチミド;プロゲスチン、例えば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン及び酢酸メゲストロール;エストロゲン、例えば、ジエチルスチルベストロール及びエチニルエストラジオール等価物;抗エストロゲン剤、例えば、タモキシフェン;プロピオン酸テストステロン及びフルオキシメステロン/等価物を含むアンドロゲン;抗アンドロゲン剤、例えば、フルタミド、ゴナドトロピン放出ホルモン類似体及びリュープロリド;並びに非ステロイド性抗アンドロゲン剤、例えば、フルタミドを含む。
【0185】
「組み合わせて」とは、本発明に従ったT細胞組成物の投与前に、これと同時に又はこの後で追加の療法を投与することであってよい。
【0186】
チェックポイント遮断との組合せに加えて又は代替案として、本発明のT細胞組成物は、TALEN及びCrispr/Casを含むがこれらに限定されない遺伝子編集技術を使用して、T細胞を免疫チェックポイントに対して抵抗性にするように遺伝子的に改変することもできる。そのような方法は当技術分野では公知であり、例えば、米国特許出願公開第2014/0120622号を参照されたい。遺伝子編集技術を使用すれば、PD-1、Lag-3、Tim-3、TIGIT、BTLA CTLA-4及びこれらの組合せを含むがこれらに限定されないT細胞により発現される免疫チェックポイントの発現を妨げることができる。本明細書で考察されているT細胞はこれらの方法のうちのいずれによっても改変することができる。
【0187】
本発明に従ったT細胞は、サイトカイン、可溶性免疫調節受容体及び/又はリガンドを含むがこれらに限定されない、腫瘍内へのホーミングを増加する分子を発現する及び/又は腫瘍微小環境内へ炎症性メディエーターを送達するように遺伝子的に改変することもできる。
【0188】
本発明はこの時点で、実施例によりさらに説明されることになり、実施例は本発明を実行する上で当業者を支援するのに役立つことを意図されており、決して本発明の範囲を限定することを意図されていない。
【実施例0189】
[実施例1]
非小細胞肺がん腫瘍における幹ネオ抗原の同定
非小細胞肺がん(NSCLC)腫瘍由来の腫瘍試料は、それぞれの腫瘍領域における腫瘍内不均一性(ITH)の程度、突然変異荷重を決定し、すべての腫瘍細胞に存在する突然変異をサブセットのみに存在する突然変異と区別するためにディープエクソン配列分析(deep exon sequence analysis)に供した。これに並行して、同じ腫瘍領域から作製された単細胞懸濁液を、後のin vitro分析及び増殖のために処理し、等分し保存した。
【0190】
エクソーム配列決定データからの一塩基変異の同定
エクソーム配列決定はNSCLC腫瘍から単離された複数領域の試料で実施された。イルミナパイプラインにより作成されたFastQフォーマットでの生のペアエンドリード(paired end reads)(100bp)を、bwa mem(bwa-0.7.7)を使用してGATKバンドル2.8から得られた完全hg19ゲノムアセンブリー(未知のコンティグを含む)に整列させた(Li and Durbin、2009年、Bioinformatics、25巻(14号):1754~60頁)。次に、Picardツールv1.107を適用して、同じ患者領域由来のファイルをクリーンにし、分類し、マージし、二重のリードを取り除いた(http://broadinstitute.github.io/picard)。クオリティコントロールメトリクスはpicardツール(1.107)、GATK(2.8.1)及びFastQC(0.10.1)の組合せを使用して得られた(http://www.bioinformatics. babraham.ac.uk/projects/fastqc/)。
【0191】
SAMtools mpileup(0.1.16)(Liら、Bioinformatics、2009年、25巻(16号);2078~2079頁)を使用して非基準位置を腫瘍及び生殖細胞系列試料に位置付けた。<20のphredスコアを有する塩基又はマッピングクオリティ<20を有するリードは読み飛ばされた。BAQ計算は無効にされ格下げマッピングクオリティの係数は50に設定される。
【0192】
腫瘍に一致する生殖細胞系列間の体細胞一塩基変異(SNV)はSAMtools mpileupからの出力を利用するVarScan2体細胞(v2.3.6)(Koboldtら、Genome Res. 2012年、22巻: 568~576頁)を使用して決定された。生殖細胞系列試料についての最小カバレッジが10に設定され、最小変異体頻度が0.01であり、腫瘍純度が0.5であることを除いてデフォルトパラメータが使用された。次に、VarScan2 processSomaticを使用して体細胞変異体を抽出した。
【0193】
こうして得られたSNVコールは、データを先ずbam-readcount(0.5.1)により実行し、Varscan2関連fpfilter.pl scriptを使用して偽陽性についてフィルターをかけた。さらに、さらなるフィルタリングが適用され、それにより生殖細胞系列VAF≦1%を有する少なくとも1つの腫瘍領域に、≧5リード及び≧5%変異対立遺伝子頻度(VAF)で存在する場合にのみ変異体が認められた。変異体が単一領域でこれらの基準を満たすことが見出された場合、他の腫瘍領域において低頻度変異体を検出するためにVAF閾値は≧1%まで減らされた。
【0194】
コピー数分析
処理された試料エクソームSNP及びペアード腫瘍-正常からのコピー数データはVarScan2(v2.3.6)を使用して作成された。VarScan2コピー数は、最小カバレッジ(8)及びデータ比率を除いてデフォルトパラメータを使用して実行された。データ比率は、Koboldtら、(Genome Res.、2012年、22巻: 568~576頁)に記載される試料ごとに基づいて計算された。次に、VarScanからの出力はSequenza Rパッケージ2.1.1を使用して処理されて、エクソーム配列データに基づいてすべての試料についてセグメント化されたコピー数のデータ並びに細胞充実性及び倍数性推定値を提供した。以下の設定値を使用した:breaks.method='full'、ガンマ=40、kmin=5、ガンマ.pcf=200、kmin.pcf=200。
【0195】
RNA配列分析
生のペアエンドリードはトリミングされ、Tophat(1.3.3版)を使用してヒト基準ゲノム及びトランスクリプトームに整列させる(Trapnellら、2009年、Bioinformatics、25巻(9号):1105~11頁)。次に、発現値は、上位四分位標準化、断片バイアス補正及びマルチリード補正を有効にし、Cufflinks (Trapnellら、2010年、Nat Biotech、28巻(5号)、511~5頁)を使用して位置付けられた100万断片当たりキロ塩基のエクソン当たりの断片(FPKM)として計算された。
【0196】
幹SNVの同定
同定されたSNVのセットは、配列決定されたすべての腫瘍領域におけるそのがん細胞率(CCF)の推定値に基づいて幹又は枝分かれに分類された。手短に言えば、突然変異を有するがん細胞の割合を記述するCCFは、コピー数及び純度推定値を変異対立遺伝子頻度と統合することにより計算される。
【0197】
変異体ごとに、予想変異対立遺伝子頻度(VAF)は、CCFが与えられると、以下の通りに計算される。
VAF(CCF)=p*CCF/CPNnorm(1-p)+p*CPNmut
式中、CPNmutは腫瘍の局所的コピー数に対応し、pは腫瘍純度、CPNnormは対応正常試料の局所的コピー数である。
【0198】
「a」オルタナティブリード及び「N」の深さを有する所与の突然変異では、所与のCCFの確率は二項分布:
P(CCF)=binom(a|N,VAF(CCF))
を使用して見積もられた。
【0199】
次にCCF値は均一グリッドの100CCF値(0.01, 1)にわたり計算され、それに続いて標準化されて事後分布を得た。
【0200】
配列決定されたすべての腫瘍領域にクローン的に存在するいかなるSNVも(CCF 95%信頼区間≧0.75)幹と考えられた。逆に、腫瘍領域のサブセットにのみ存在する又はいかなる領域でもCCF 95%信頼区間≦0.75を有するいかなるSNVも枝分かれと考えられた(要約については図2参照)。
【0201】
[実施例2]
HLAタイプ予測
対象ごとに、生殖細胞系列全エクソーム配列決定FASTQファイルは、既知のHLA対立遺伝子についての配列を含有する基準FASTAファイルに位置付けされた。位置付けは、パーセント同一性閾値90、最大値1ヒット及び距離範囲0で、Razers3(Weeseら、Bioinformatics、2012年、28巻(20号): 2592~2599頁)を使用して実施された。位置付け後、作成されたSAMファイルはFASTQに変換され、デフォルトパラメータと一緒にOptitype予測アルゴリズムへの入力として使用された(Szolekら、Bioinformatics、2014年、30巻(23号):3310~3316頁)。Optitypeは患者ごとに予測4桁分解能(predicted 4-digit resolution)HLAタイプを作成し、これはHLA結合予測において使用するために保存された。
【0202】
HLA結合予測
腫瘍複数領域全エクソーム配列決定データから予測されたコード化突然変異を使用し、n-merのそれぞれの位置で突然変異アミノ酸を捕捉して、ネオ抗原から考えられるすべての9~11mer突然変異ペプチドを作成した。
【0203】
したがって、所与のSNV突然変異では、合計で446ペプチドが生成された。さらに、対応する野生型ペプチドも作成された。
【0204】
次に、すべての突然変異及び野生型ペプチド配列を含有するFASTAファイル並びに予想4桁HLAタイプはNetMHCへの入力として使用され(Lundegaardら、2008年、Nucleic Acids Res、36巻:W509-12)、これは患者の特異的HLA対立遺伝子に対するそれぞれのペプチドの結合親和性を予測する。<500nMで結合すると予測されるペプチドは推定弱ネオ抗原として分類され、<50nMで結合するペプチドは推定強ネオ抗原として分類された。さらに、ペプチドごとに、デルタスコアは、突然変異ペプチドと野生型ペプチド間の結合の違いを反映して計算された(図3参照)。
【0205】
[実施例3]
推定幹ネオ抗原の同定
すべての推定ネオ抗原は、配列決定された腫瘍領域におけるそのがん細胞率に基づいて幹又は枝分かれとして分類された(実施例1に記載されている)。配列決定された腫瘍のあらゆる領域に見出された突然変異由来の結合ペプチドは潜在的幹ネオ抗原として同定された(実施例2に記載されている)。
【0206】
RNA配列データを使用した推定幹ネオ抗原のフィルタリング
すべての推定幹ネオ抗原はRNA配列データを使用してさらにフィルターに供した。具体的には、平均転写物長を使用して、計算されたFPKMからTPM(100万当たりの転写物)に変換し、推定幹ネオ抗原を10 TPMよりも大きな中央値で発現されているネオ抗原として同定した。
【0207】
[実施例4]
NSCLC試料由来の腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)のプロセシング及び増殖
腫瘍は無菌条件下で刻まれ、続いて37℃で30分間酵素消化をし(リベラーゼTLリサーチグレードのRPMI-1640(Roche)及びデオキシリボヌクレアーゼI(Roche))、その後gentleMACS(Miltenyi Biotech)を使用して機械的組織分離を行った。こうして得られた単細胞懸濁液はフィコールpaque勾配を通過させることにより白血球について濃縮させた。生細胞を計測し-80℃で凍結させてその後液体窒素に移した。TILは、10%ヒト血清、可溶性抗CD3(OKT3)、6000IU/mL組換えヒト(rhIL-2)及び3人の同種健康なドナーからプールした2×107照射PBMCを補充されたEX-VIVO培養液を含有するT25フラスコにおいて急速増殖プロトコル(REP)を使用して増殖させた。増殖が明らかになった後、rhIL-2を3000IU/mLで含有する新鮮な培養液を3日ごとに追加した。2週間の増殖に続いて、TILは計測され、表現型を決定され、-80℃で凍結されて、その後関連するアッセイで使用された又は液体窒素に長期貯蔵された。
【0208】
可溶性ペプチド/HLA多量体を使用するネオ抗原特異的(NES)T細胞の同定
最上位のネオ抗原ペプチド配列が合成され(n=240)使用されて、増殖された腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)内のNES T細胞を同定するために蛍光標識された特注MHC多量体を製造した。in vitro増殖TILは予測突然変異ペプチド又は対照サイトメガロウイルス(CMV)ペプチドを負荷した蛍光性の特注MHC多量体を用いて染色され、マルチカラーフローサイトメトリーにより分析された(図4参照)。
【0209】
[実施例5]
NES T細胞のex vivo及びin vivo殺滅活性
同種腫瘍細胞株及び増殖NES T細胞を使用して、in vitro及びin vivoで腫瘍標的を殺滅するこれらT細胞の能力を実証する。
【0210】
幹突然変異を有する腫瘍細胞株及び同種増殖NES T細胞が同定される。一定数の腫瘍細胞が様々な数のNES T細胞と一緒に96ウェルプレート上に蒔かれる。NES T細胞のin vitro殺滅活性は異なる時点で評価される(標準フローサイトメトリーアッセイの4~16時間後)。in vivoアッセイでは、免疫欠損マウス(NSG)は腫瘍細胞株で皮下チャレンジされ、生着後未処置のままにされるか又は1~5×106のin vitro増殖同種NES T細胞の静脈内注入を受ける。
【0211】
処置及び非処置群の腫瘍成長は経時的に測定される(3日ごとに)。
【0212】
[実施例6]
クローンネオ抗原を標的にするT細胞は定着不均一腫瘍の拒絶反応を促進し、サブクローンネオ抗原を標的にするT細胞はこれを促進できない
サブクローンネオ抗原を標的にするT細胞とクローンネオ抗原を標的にするT細胞とのin vivo抗腫瘍活性を比較するため、メラノーマ(B16株)及びクローンネオ抗原(trp1)又はサブクローンネオ抗原(OTII)を認識するT細胞受容体トランスジェニックT細胞(TCR Tg)のマウスモデルを使用した。
【0213】
ネオ抗原:CD4+ Trp1 TCR Tg細胞に特異的であるT細胞はすべてのB16メラノーマ細胞に存在する抗原である、Tyrp1に由来するペプチドを認識する。Trp1 TCR Tg細胞はTyrp1を欠くマウスにおいて生成され、したがって、この細胞はTyrp1をネオ抗原として認識する。
【0214】
CD4+OTII TCR Tg細胞は、遺伝子操作によりB16腫瘍細胞株内に人工的に導入することが可能なモデルネオ抗原である、オボアルブミン(OVA)に由来するペプチドを認識する。
【0215】
クローン及びサブクローンネオ抗原をモデル化するため、マウスB16メラノーマ細胞(Tyrp1を発現している)及びTyrp1も発現しているがさらにOVAを発現するように形質導入されているB16-OVA細胞を使用した。これら2つの細胞株を混合することにより、Tyrp1がクローンネオ抗原(あらゆる腫瘍細胞により発現される)を表しOVAがサブクローンネオ抗原(一部の腫瘍細胞のみにより発現される)を表すモデルを作製する。
【0216】
手短に言えば、B6マウスは0日目に12.5×104のB16及び12.5×104のB16-OVA細胞の混合物を注射された。腫瘍接種後8日目、腫瘍が触知可能になると、マウスは亜致死的に照射され(5Gy)、30×104のCD4 OT-II細胞(サブクローンネオ抗原に反応する)又は6×104のCD4 Trp-1細胞(クローンネオ抗原に反応する)のいずれかの静脈内(iv)注入及び0.2mgの抗CTLA-4抗体腹腔内(i.p.)注入を受けた。マウスは11日目及び14日目に2つの追加の用量の抗CTLA-4抗体(0.1mg)を受けた。対照として、腫瘍でチャレンジされたが未処置のままにされたマウスの群を使用した。
【0217】
定着B16-OVA腫瘍を拒絶するOTII細胞の能力は25×104のB16-OVA細胞のみを接種された追加のマウス群において実証された(この場合、OVAは腫瘍塊中のB16-OVA細胞により発現され、したがってクローンネオ抗原を表している)。8日目、マウスは亜致死的に照射され(5Gy)、30×104のCD4 OT-II細胞i.v.及び0.2mgの抗CTLA-4抗体i.p.で処置された。マウスは11日目及び14日目に2つの追加の用量の抗CTLA-4抗体(0.1mg)を受けた。
【0218】
結果
対照群では、クローン(tyrp1)及びサブクローン(OVA)ネオ抗原を含有する不均一腫瘍混合物(B16/B16-OVA)でチャレンジされ未処置のままにされたマウスは腫瘍を発生し、腫瘍チャレンジ後20日目から30日目の間で屠殺しなければならなかった(図5A)。驚くべきことに、B16/B16-OVA腫瘍混合物でチャレンジされたがクローンネオ抗原を標的にするTRP1 TCR Tg細胞で処置されたマウスはすべてその腫瘍を拒絶することができた(図5B)。
【0219】
逆に、マウスがサブクローンネオ抗原を標的にするOTII TCR Tg T細胞で処置された場合、マウスは1匹もその腫瘍を拒絶することができなかった(図1C)。この群では腫瘍進行のわずかな遅延が観察され、サブクローンネオ抗原を発現しているB16-OVA細胞の潜在的制御を示唆しているが、OVA(サブクローンネオ抗原)を発現しない腫瘍細胞を拒絶できないせいで最終的に進行した(図5C)。最後に(図5D)は、腫瘍中のすべての細胞がOVAネオ抗原を発現している場合の定着腫瘍を拒絶するOTII TCRTg T細胞の能力を実証している。それぞれのグラフ中のそれぞれの線は独立したマウスを表している。これらの実験では群当たり6マウスが使用された。(図5E)はすべての実験群及びそれぞれの群の平均腫瘍サイズを示している。
【0220】
データは、腸性(aneterogenous)腫瘍塊内のすべての腫瘍細胞により発現されるわけではないサブクローンネオ抗原のみを標的にするT細胞と比べて、クローンネオ抗原を標的にするT細胞の定着腫瘍を拒絶する優れた能力を実証している。
【0221】
本明細書で言及されるすべての文書はこれによって参照によりその全体を組み込まれ、その文書で言及される主題には特別な関心が払われている。本発明の記載されている方法及びシステムの種々の改変及び変化は本発明の範囲と趣旨を逸脱することなく当業者には明らかである。本発明は特定の好ましい実施形態に関連して記載されてきたが、主張される本発明はそのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことは理解されるべきである。実際、分子生物学、細胞免疫学又は関連する分野の当業者には明白である本発明を実行するために記載されている様式の種々の改変は以下の特許請求の範囲内であることが意図されている。
本発明は以下の態様も提供する。
[1] 対象由来の腫瘍において幹ネオ抗原を同定するための方法であって、
i)腫瘍から単離された試料に存在する突然変異を決定するステップ、及び
ii)実質的にすべての腫瘍細胞に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、及び
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ
を含む方法。
[2] 対象由来の腫瘍において幹ネオ抗原を同定するための方法であって、
i)腫瘍から単離された複数の試料に存在する突然変異を決定するステップ、及び
ii)すべての試料に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、及び
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ
を含む方法。
[3] 幹突然変異が一塩基変異である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 突然変異が、エクソーム配列決定、RNA配列決定、全ゲノム配列決定及び/又は標的遺伝子パネル配列決定により同定される、[1]~[3]のいずれか一に記載の方法。
[5] 対象のHLA対立遺伝子プロファイルを評価し、幹ネオ抗原ペプチドが対象のMHC分子に結合するかどうかを判定するステップを含む、[1]~[4]のいずれか一に記載の方法。
[6] 幹ネオ抗原特異的T細胞を同定するための方法であって、[1]~[5]のいずれか一に記載の方法のステップ、及び以下の
iv)幹ネオ抗原特異的T細胞として幹ネオ抗原を特異的に認識することができる、対象から単離された試料由来のT細胞を同定するステップ
を含む方法。
[7] 腫瘍において幹ネオ抗原を標的にするT細胞集団を提供するための方法であって、
i)幹ネオ抗原ペプチドを特異的に認識できる、対象から単離された試料由来のT細胞を同定するステップ、及び
ii)T細胞を増殖させて、幹ネオ抗原を標的にするT細胞集団を提供するステップ
を含む方法。
[8] ステップii)において、前記T細胞が、幹ネオ抗原又は幹ネオ抗原ペプチドを使用して選択的に増殖される、[7]に記載の方法。
[9] 前記T細胞が、複数の幹ネオ抗原又は幹ネオ抗原ペプチドを使用して選択的に増殖され、前記ペプチドのそれぞれが異なる幹突然変異を含む、[8]に記載の方法。
[10] 前記複数のペプチドが2~100のペプチドを含む、[9]に記載の方法。
[11] 腫瘍において幹ネオ抗原を標的にするT細胞集団を提供するための方法であって、
(a)i)腫瘍から単離された試料に存在する突然変異を決定するステップ、及び
ii)実質的にすべての腫瘍細胞に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、及び
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ、
又は
i)腫瘍から単離された複数の試料に存在する突然変異を決定するステップ、
ii)すべての試料に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ
を含む方法により対象由来の腫瘍において幹ネオ抗原を同定するステップ、並びに
b)前記幹ネオ抗原を特異的に認識することができる、対象から単離された試料由来のT細胞を同定するステップ、並びに
c)T細胞を増殖させて、幹ネオ抗原を標的にするT細胞集団を提供するステップ
を含む方法。
[12] 腫瘍において幹ネオ抗原を標的にするT細胞集団を提供するための方法であって、
i)前記幹ネオ抗原を特異的に認識することができる、対象から単離された試料由来のT細胞を同定するステップ、及び
ii)T細胞を増殖させて、幹ネオ抗原を標的にするT細胞集団を提供し、前記T細胞が前記幹ネオ抗原由来である幹ネオ抗原ペプチドを提示する抗原提示細胞との共培養により増殖されるステップ
を含む方法。
[13] 前記抗原提示細胞が、前記幹ネオ抗原に由来するペプチドを負荷又はパルスされている、[12]に記載の方法。
[14] 幹ネオ抗原ペプチドを特異的に認識することができる前記T細胞が、[6]に記載の方法により同定される、[12]又は[13]に記載の方法。
[15] 試料が、対象由来の腫瘍、血液又は組織試料である、[6]~[14]のいずれか一に記載の方法。
[16] 幹ネオ抗原が、[1]~[5]のいずれか一に記載の方法により同定される、[7]に記載の方法。
[17] T細胞の集団がCD8+T細胞、CD4+T細胞又はCD8+及びCD4+ T細胞を含む、[7]~[14]のいずれか一に記載の方法。
[18] 少なくとも第1及び第2のT細胞が提供され、ここで第1のT細胞が第1の幹突然変異により生成した第1の幹ネオ抗原を標的にし、第2のT細胞が第2の幹突然変異により生成した第2の幹ネオ抗原を標的にする、[7]~[14]のいずれか一に記載の方法。
[19] 前記T細胞集団が、対象から単離された試料と比べた幹ネオ抗原を標的にするT細胞の数の増加により濃縮されている、[7]~[18]のいずれか一に記載の方法。
[20] 幹ネオ抗原特異的T細胞を含むT細胞組成物。
[21] 1つ以上の幹ネオ抗原を標的にするように選択的に増殖されたT細胞を含む、[20]に記載のT細胞組成物。
[22] 幹ネオ抗原を標的にする少なくとも約0.2%~5%、5%~10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~70%又は70~100%のT細胞を含む、[20]又は[21]に記載のT細胞組成物。
[23] 対象のがんに特徴的な幹ネオ抗原を標的にするように選択的に増殖されたT細胞を含む、対象におけるがんの治療に有用であるT細胞組成物。
[24] 幹ネオ抗原が、[1]~[5]のいずれか一に記載の方法により同定される、[20]~[23]のいずれか一に記載のT細胞組成物。
[25] 幹ネオ抗原特異的T細胞が、[6]に記載の方法により入手されるか又は入手可能である、[20]~[23]のいずれか一に記載のT細胞組成物。
[26] 幹ネオ抗原特異的T細胞が、[6]~[19]のいずれか一で定義されたT細胞である、[20]~[25]のいずれか一に記載のT細胞組成物。
[27] [7]~[19]のいずれか一に記載の方法により入手されるか又は入手可能であるT細胞集団を含むT細胞組成物。
[28] 幹ネオ抗原特異的T細胞が、幹ネオ抗原若しくは幹ネオ抗原ペプチドに特異的に結合するキメラ抗原受容体若しくはTCR、又は幹ネオ抗原若しくは幹ネオ抗原ペプチドに特異的に結合する親和性増強TCRを発現する、[20]~[27]のいずれか一に記載のT細胞組成物。
[29] がんの治療における使用のための、[21]~[28]のいずれか一に記載のT細胞組成物。
[30] T細胞組成物が、チェックポイント阻害剤と組み合わせて使用される、[29]に記載の使用のためのT細胞組成物。
[31] T細胞組成物であって、がんの治療における使用のための以下の方法:
(a)i)腫瘍から単離された試料に存在する突然変異を決定するステップ、及び
ii)実質的にすべての腫瘍細胞に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、及び
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ、
又は
i)腫瘍から単離された複数の試料に存在する突然変異を決定するステップ、
ii)すべての試料に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ
を含む対象由来の腫瘍において幹ネオ抗原を同定するステップ、並びに
b)前記幹ネオ抗原を特異的に認識することができる、対象から単離された試料由来のT細胞を同定するステップ、並びに
c)T細胞を増殖させて、幹ネオ抗原を標的にするT細胞集団を提供するステップ
を含む前記方法により以前に同定された、腫瘍において幹ネオ抗原を標的にすることができるT細胞集団を含む、T細胞組成物。
[32] がんの治療のための医薬の製造における使用のための、[21]~[31]のいずれか一に記載のT細胞組成物。
[33] [21]~[31]のいずれか一に記載のT細胞組成物を対象に投与することを含む、対象においてがんを治療するための方法。
[34] 以下のステップ:
(i)対象からのT細胞含有試料の単離、
(ii)幹ネオ抗原を標的にするT細胞集団の同定及び増殖、及び
(iii)対象への(ii)由来の細胞の投与
を含む、[33]に記載の方法。
[35] 対象においてがんを治療するための方法であって、
(a)i)腫瘍から単離された試料に存在する突然変異を決定するステップ、及び
ii)実質的にすべての腫瘍細胞に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、及び
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ、又は
i)腫瘍から単離された複数の試料に存在する突然変異を決定するステップ、
ii)すべての試料に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ
を含む対象由来の腫瘍において幹ネオ抗原を同定するステップ、並びに
b)前記幹ネオ抗原を特異的に認識することができる、対象から単離された試料由来のT細胞を同定するステップ、
c)T細胞を増殖させて、幹ネオ抗原を標的にするT細胞集団を提供するステップ、並びに
d)前記T細胞集団を前記対象に投与するステップ
を含む方法。
[36] 試料が、対象由来の腫瘍、血液又は組織試料である、[34]又は[35]に記載の方法。
[37] T細胞集団が、チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与される、[33]~[36]のいずれか一に記載の方法。
[38] 抗原提示細胞及び幹ネオ抗原又は幹ネオ抗原ペプチドを含む組成物を製造する方法であって、
(a)i)腫瘍から単離された試料に存在する突然変異を決定するステップ、及び
ii)実質的にすべての腫瘍細胞に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、及び
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ、又は
i)腫瘍から単離された複数の試料に存在する突然変異を決定するステップ、
ii)すべての試料に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ
を含む対象由来の腫瘍において幹ネオ抗原を同定するステップ、並びに
b)前記幹ネオ抗原又は幹ネオ抗原ペプチド及び抗原提示細胞を含む組成物を製造するステップ
を含む方法。
[39] 幹ネオ抗原を標的にするT細胞集団を増殖させるための方法であって、
i)前記幹ネオ抗原を特異的に認識することができるT細胞を含む試料を提供するステップ、及び
ii)T細胞集団を[38]において定義される幹ネオ抗原又は幹ネオ抗原ペプチド及び抗原提示細胞を含む組成物と共培養するステップ
を含む方法。
[40] [39]の方法により入手されるか又は入手可能なT細胞集団。
[41] 抗原提示細胞及び幹ネオ抗原又は幹ネオ抗原ペプチドを含む組成物。
[42] 前記抗原提示細胞が樹状細胞である、[38]若しくは[39]に記載の方法又は[41]に記載の組成物。
[43] [38]、[39]及び[42]に記載の方法により入手されるか又は入手可能な、抗原提示細胞及び幹ネオ抗原又は幹ネオ抗原ペプチドを含む組成物。
[44] 幹ネオ抗原が[1]~[5]のいずれか一に記載の方法により同定される、幹ネオ抗原ペプチドを含むMHC多量体。
[45] MHC多量体を製造するための方法であって、
(a)(i)腫瘍から単離された試料に存在する突然変異を決定するステップ、及び
ii)実質的にすべての腫瘍細胞に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、及び
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ、又は
i)腫瘍から単離された複数の試料に存在する突然変異を決定するステップ、
ii)すべての試料に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ
を含む対象由来の腫瘍において幹ネオ抗原を同定するステップ、並びに
(b)前記幹ネオ抗原から幹ネオ抗原ペプチドを製造するステップ、並びに
(c)前記幹ネオ抗原ペプチドを含むMHC多量体を製造するステップ
を含む方法。
[46] [45]に記載の方法により入手されるか又は入手可能なMHC多量体を含む組成物。
[47] 幹ネオ抗原ペプチド若しくはタンパク質、又は幹ネオ抗原ペプチド若しくはタンパク質をコードするRNA若しくはDNA分子を含むワクチン。
[48] 前記幹ネオ抗原ペプチドが[1]~[5]のいずれか一に記載の方法により同定された、[47]に記載のワクチン。
[49] 樹状細胞が、前記幹ネオ抗原ペプチドでパルス若しくは負荷されているか、又は幹ネオ抗原ペプチド若しくは幹ネオ抗原タンパク質を発現するように遺伝子的に改変されており、樹状細胞ワクチンの形態である、[47]又は[48]に記載のワクチン。
[50] 医薬組成物の形態であり、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤又はアジュバントを含む、[47]~[49]のいずれか一に記載のワクチン。
[51] がんの治療における使用のための、[47]~[50]のいずれか一に記載のワクチン。
[52] 対象においてがんを治療するための方法であって、[47]~[50]のいずれか一に記載のワクチンを前記対象に投与することを含む方法。
[53] がんを罹っている対象を同定するステップをさらに含む、[52]に記載の方法。
[54] 幹ネオ抗原ペプチド又は幹ネオ抗原タンパク質を含むワクチンを製造するための方法であって、
(a)(i)腫瘍から単離された試料に存在する突然変異を決定するステップ、及び
ii)実質的にすべての腫瘍細胞に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、及び
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ、又は
i)腫瘍から単離された複数の試料に存在する突然変異を決定するステップ、
ii)すべての試料に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ
を含む対象由来の腫瘍において幹ネオ抗原を同定するステップ、並びに
(b)前記ネオ抗原から幹ネオ抗原ペプチド又は幹ネオ抗原タンパク質を製造するステップ、並びに
(c)前記幹ネオ抗原ペプチド又は幹ネオ抗原タンパク質を含むワクチンを製造するステップ
を含む方法。
[55] 幹ネオ抗原ペプチド又は幹ネオ抗原タンパク質をコードするDNA又はRNA分子を含むワクチンを製造するための方法であって、
(a)(i)腫瘍から単離された試料に存在する突然変異を決定するステップ、及び
ii)実質的にすべての腫瘍細胞に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、及び
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ、又は
i)腫瘍から単離された複数の試料に存在する突然変異を決定するステップ、
ii)すべての試料に存在する突然変異である幹突然変異を同定するステップ、
iii)幹突然変異を含む配列によりコードされている抗原である幹ネオ抗原を同定するステップ
を含む対象由来の腫瘍において幹ネオ抗原を同定するステップ、並びに
(b)前記幹ネオ抗原ペプチド又は幹ネオ抗原タンパク質をコードするDNA又はRNA分子を含むワクチンを製造するステップ
を含む方法。
図1
図2
図3
図4
図5