(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106908
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】試験装置及び試験装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H04L 43/0852 20220101AFI20240801BHJP
【FI】
H04L43/0852
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011399
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】230128026
【弁護士】
【氏名又は名称】駒木 寛隆
(72)【発明者】
【氏名】細川 真
(57)【要約】
【課題】より実環境に近い状態でループバック試験を行うことを可能にする。
【解決手段】ネットワークのループバック試験を行う試験装置は、ネットワークを介して他の試験装置から、フレームの種類を識別する識別情報を含む、予め定められたフィールド構成を有する試験フレームを受信し、他の試験装置から受信した試験フレームが、他の試験装置により新たに送信された第1試験フレームと、第1試験フレームに対する返信として他の試験装置により送信された第2試験フレームとのいずれに当たるかを識別情報を参照して判定し、第2試験フレームに当たると判定された場合、試験フレームの受信時刻と、当該第2試験フレームに対応する第1試験フレームの送信時刻とに基づき、遅延時間を取得する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して他の試験装置へフレームを送信し、当該フレームに対する返信として前記他の試験装置から送信されたフレームを受信して、前記ネットワークのループバック試験を行う試験装置であって、
前記ネットワークを介して前記他の試験装置から、フレームの種類を識別する識別情報を含む、予め定められたフィールド構成を有する試験フレームを受信するフレーム受信部と、
前記他の試験装置から受信した前記試験フレームが、前記他の試験装置により新たに送信された前記試験フレームである第1試験フレームと、当該試験装置が前記他の試験装置へ送信した前記第1試験フレームに対する返信として前記他の試験装置により送信された前記試験フレームである第2試験フレームとのいずれに該当するかを、前記識別情報を参照して判定するフレームフィルタと、
前記他の試験装置から受信した前記試験フレームが前記第2試験フレームに該当すると判定された場合、当該第2試験フレームに該当すると判定された前記試験フレームの受信時刻と、当該第2試験フレームに対応する前記第1試験フレームの送信時刻とに基づき、遅延時間を取得する受信統計部と、
を備える試験装置。
【請求項2】
前記フレーム受信部は、前記試験フレームとして、前記第1試験フレームの送信時刻、又は、前記第2試験フレームに対応する前記第1試験フレームの送信時刻を含むフレームを受信し、
前記受信統計部は、前記他の試験装置から受信した前記試験フレームが前記第2試験フレームに該当すると判定された場合、当該第2試験フレームに該当すると判定された前記試験フレームの受信時刻と、当該第2試験フレームに含まれる当該第2試験フレームに対応する前記第1試験フレームの前記送信時刻とに基づいて、前記遅延時間を取得する、
請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記フレームフィルタにおいて、前記他の試験装置から受信した前記試験フレームが前記第1試験フレームに該当すると判定された場合、前記他の試験装置から受信した前記試験フレームの宛先アドレス及び送信元アドレスを前記他の試験装置のアドレス及び当該試験装置のアドレスに書き換えるとともに、当該試験フレームの前記識別情報を前記第2試験フレームに該当することを示す情報に書き換えて、前記第2試験フレームに該当する前記試験フレームを生成するループバックフレーム生成部と、
前記生成した前記試験フレームを、前記ネットワークを介して前記他の試験装置へ送信するフレーム送信部と、
を更に備える、請求項1に記載の試験装置。
【請求項4】
前記受信統計部は、前記第2試験フレームに該当する前記試験フレームの受信量及び前記取得した遅延時間に基づき、前記ネットワークのスループットに関する統計情報を取得する、請求項1に記載の試験装置。
【請求項5】
ネットワークを介して他の試験装置へフレームを送信し、当該フレームに対する返信として前記他の試験装置から送信されたフレームを受信して、前記ネットワークのループバック試験を行う、フレーム受信部、フレームフィルタ、及び、受信統計部を備える試験装置の制御方法であって、
前記フレーム受信部が、前記ネットワークを介して前記他の試験装置から、フレームの種類を識別する識別情報を含む、予め定められたフィールド構成を有する試験フレームを受信する工程と、
前記フレームフィルタが、前記他の試験装置から受信した前記試験フレームが、前記他の試験装置により新たに送信された前記試験フレームである第1試験フレームと、当該試験装置が前記他の試験装置へ送信した前記第1試験フレームに対する返信として前記他の試験装置により送信された前記試験フレームである第2試験フレームとのいずれに該当するかを、前記識別情報を参照して判定する工程と、
前記受信統計部が、前記他の試験装置から受信した前記試験フレームが前記第2試験フレームに該当すると判定された場合、当該第2試験フレームに該当すると判定された前記試験フレームの受信時刻と、当該第2試験フレームに対応する前記第1試験フレームの送信時刻とに基づき、遅延時間を取得する工程と、
を含む試験装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験装置及び試験装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イーサネット回線等のネットワークサービスの開通に際して、拠点間におけるループバック試験によりネットワークの開通試験を行うことが知られている。特許文献1には、ネットワークのループバック試験に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ループバック試験に関する従来の構成においては、実環境に近い状態で試験を行うという点で改善の余地があった。
【0005】
そこで、本開示は、より実環境に近い状態でループバック試験を行うことを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る試験装置は、
(1)ネットワークを介して他の試験装置へフレームを送信し、当該フレームに対する返信として前記他の試験装置から送信されたフレームを受信して、前記ネットワークのループバック試験を行う試験装置であって、
前記ネットワークを介して前記他の試験装置から、フレームの種類を識別する識別情報を含む、予め定められたフィールド構成を有する試験フレームを受信するフレーム受信部と、
前記他の試験装置から受信した前記試験フレームが、前記他の試験装置により新たに送信された前記試験フレームである第1試験フレームと、当該試験装置が前記他の試験装置へ送信した前記第1試験フレームに対する返信として前記他の試験装置により送信された前記試験フレームである第2試験フレームとのいずれに該当するかを、前記識別情報を参照して判定するフレームフィルタと、
前記他の試験装置から受信した前記試験フレームが前記第2試験フレームに該当すると判定された場合、当該第2試験フレームに該当すると判定された前記試験フレームの受信時刻と、当該第2試験フレームに対応する前記第1試験フレームの送信時刻とに基づき、遅延時間を取得する受信統計部と、
を備える。
【0007】
このように、試験装置は、第1試験フレームと第2試験フレームとのいずれに該当するかを示す識別情報を含むフレームを試験フレームとして用いる。そのため、他の試験装置から試験フレームを受信した試験装置は、受信した試験フレームが第1試験フレームと第2試験フレームのいずれに該当するかを区別することができる。したがって、試験装置は、第1試験フレーム及び第2試験フレームの両方が混在する多数の試験フレームを受信した場合であっても、両者を区別して、第2試験フレームに対して統計処理を行い、ネットワークの通信品質を試験することが可能である。よって、試験装置と他の試験装置は、双方向のループバック試験を並列的に行うことができ、より実環境に近い状態でループバック試験を行うことが可能である。
【0008】
一実施形態において、
(2)(1)の試験装置において、
前記フレーム受信部は、前記試験フレームとして、前記第1試験フレームの送信時刻、又は、前記第2試験フレームに対応する前記第1試験フレームの送信時刻を含むフレームを受信し、
前記受信統計部は、前記他の試験装置から受信した前記試験フレームが前記第2試験フレームに該当すると判定された場合、当該第2試験フレームに該当すると判定された前記試験フレームの受信時刻と、当該第2試験フレームに含まれる当該第2試験フレームに対応する前記第1試験フレームの前記送信時刻とに基づいて、前記遅延時間を取得してもよい。
【0009】
このように、試験フレームには、第1試験フレームの送信時刻、又は、第2試験フレームに対応する第1試験フレームの送信時刻を含む。したがって、第2試験フレームに当たるこのような試験フレームを受信した試験装置は、対応する第1試験フレームの送信時刻に基づきフレームの遅延時間を取得することが可能である。
【0010】
一実施形態において、
(3)(1)又は(2)の試験装置において、
前記フレームフィルタにおいて、前記他の試験装置から受信した前記試験フレームが前記第1試験フレームに該当すると判定された場合、前記他の試験装置から受信した前記試験フレームの宛先アドレス及び送信元アドレスを前記他の試験装置のアドレス及び当該試験装置のアドレスに書き換えるとともに、当該試験フレームの前記識別情報を前記第2試験フレームに該当することを示す情報に書き換えて、前記第2試験フレームに該当する前記試験フレームを生成するループバックフレーム生成部と、
前記生成した前記試験フレームを、前記ネットワークを介して前記他の試験装置へ送信するフレーム送信部と、
を更に備えてもよい。
【0011】
このように、試験装置は、第1試験フレームに該当する試験フレームを受信した場合、受信した試験フレームの宛先アドレス、送信元アドレス、及び、識別情報を書き換えて返信用の試験フレームを生成して返信する。したがって、試験装置は、簡易な処理によりループバックフレーム(第2試験フレーム)を生成することが可能である。
【0012】
一実施形態において、
(4)(1)から(3)のいずれかの試験装置において、
前記受信統計部は、前記第2試験フレームに該当する前記試験フレームの受信量及び前記取得した遅延時間に基づき、前記ネットワークのスループットに関する統計情報を取得してもよい。
【0013】
このように、試験装置は、取得した遅延時間に基づきネットワークの通信品質に関する統計情報を取得するため、ネットワークの品質を評価するうえで有用性の高い情報を取得することが可能である。
【0014】
幾つかの実施形態に係る試験装置の制御方法は、
(5)ネットワークを介して他の試験装置へフレームを送信し、当該フレームに対する返信として前記他の試験装置から送信されたフレームを受信して、前記ネットワークのループバック試験を行う、フレーム受信部、フレームフィルタ、及び、受信統計部を備える試験装置の制御方法であって、
前記フレーム受信部が、前記ネットワークを介して前記他の試験装置から、フレームの種類を識別する識別情報を含む、予め定められたフィールド構成を有する試験フレームを受信する工程と、
前記フレームフィルタが、前記他の試験装置から受信した前記試験フレームが、前記他の試験装置により新たに送信された前記試験フレームである第1試験フレームと、当該試験装置が前記他の試験装置へ送信した前記第1試験フレームに対する返信として前記他の試験装置により送信された前記試験フレームである第2試験フレームとのいずれに該当するかを、前記識別情報を参照して判定する工程と、
前記受信統計部が、前記他の試験装置から受信した前記試験フレームが前記第2試験フレームに該当すると判定された場合、当該第2試験フレームに該当すると判定された前記試験フレームの受信時刻と、当該第2試験フレームに対応する前記第1試験フレームの送信時刻とに基づき、遅延時間を取得する工程と、
を含む。
【0015】
このように、試験装置は、第1試験フレームと第2試験フレームとのいずれに該当するかを示す識別情報を含むフレームを試験フレームとして用いる。そのため、他の試験装置から試験フレームを受信した試験装置は、受信した試験フレームが第1試験フレームと第2試験フレームのいずれに該当するかを区別することができる。したがって、試験装置は、第1試験フレーム及び第2試験フレームの両方が混在する多数の試験フレームを受信した場合であっても、両者を区別して、第2試験フレームに対して統計処理を行い、ネットワークの通信品質を試験することが可能である。よって、試験装置と他の試験装置は、双方向のループバック試験を並列的に行うことができ、より実環境に近い状態でループバック試験を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本開示の一実施形態によれば、より実環境に近い状態でループバック試験を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態に係る試験システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図1の試験装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図2の測定部の構成例を示すブロック図である。
【
図4】2つの試験装置間における通信を模式的に示す図である。
【
図6】
図1の試験装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図7】
図1の試験装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<比較例>
比較例に係るループバック試験では、一方の拠点に設けられた送受信側の試験装置から他方の拠点に設けられたループバック側の試験装置に対し、試験フレームを送信する。ループバック側の試験装置は、送受信側の試験装置から試験フレームを受信すると、受信した試験フレームの宛先アドレス及び送信元アドレスを書き換え、ペイロード部等の他のデータは書き換えないで、返信用の試験フレームを生成する。ループバック側の試験装置は、生成した返信用の試験フレームを送受信側の試験装置へ返信する(特許文献1の
図3)。送受信側の試験装置は、ループバック側の試験装置からの返信用の試験フレームの受信の有無、及び、試験フレームを送信してから対応する試験フレームの受信までの時間等に基づき統計処理を行い、ネットワークの通信品質を試験する。
【0019】
このような比較例では、送受信側の試験装置がループバック側の試験装置へ送信する試験フレームと、ループバック側の試験装置が送受信側の試験装置へ返信する返信用の試験フレームとは、宛先アドレス及び送信元アドレス以外のデータの構成が同一である。そのため、比較例では、ある試験装置が他の装置から試験フレームを受信した場合、試験装置は、受信した試験フレームが、自ら送信した試験フレームに対する返信なのか、あるいは、他の装置が送受信側として送信した試験フレームなのかを、フレームの構成から区別することができない。その結果、比較例においては、各試験装置は、送受信側及びループバック側のいずれか一方としてのみ動作可能である。
【0020】
しかし、実環境のネットワークにおいては、ネットワークを構成する各装置は互いに同時にデータを送受信することが通常である。さらに、実環境では、3つ以上の装置がネットワークに接続し、各装置が他の全ての装置と通信するフルメッシュの接続形態に近い状態でデータを送受信することも一般的である。そのため、ネットワークの一方の拠点に設けられた試験装置が送受信側の試験装置として動作し、他方の拠点に設けられた試験装置がループバック側の試験装置として動作する比較例に係るループバック試験によっては、実環境に近い状態での試験が困難であった。また、比較例に係るループバック試験においては、各試験装置において試験フレームの送受信側とループバック側とのどちら側として動作するかを手動で設定する必要があり、操作が煩わしかった。特に、3つ以上の拠点につきフルメッシュの接続形態でループバック試験を行う場合、それぞれの経路について片方向ずつ順番に試験を行う必要があり、全経路を試験するのに時間を要していた。また、各試験装置に対して個別の設定が必要となり、ループバック試験の実行に長時間を要していた。
【0021】
このように、ループバック試験に関する比較例に係る構成においては、実環境に近い状態で試験を行うという点で改善の余地があった。
【0022】
<実施形態>
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。各図面中、同一の構成又は機能を有する部分には、同一の符号を付している。本実施形態の説明において、同一の部分については、重複する説明を適宜省略又は簡略化する場合がある。
【0023】
(試験システム)
図1は、一実施形態に係る試験システム1の構成例を示す図である。試験システム1は、ネットワークNの通信品質を試験する。ネットワークNは、例えば、イーサネット回線等の通信回線であるが、その種類は任意である。例えば、ネットワークNは、専用回線、イントラネット、インターネット、移動体通信網、電話回線、及び、これらの組合せでもよい。試験システム1は、複数の拠点に設けられた試験装置10a,10b,10c,10dを備える。試験装置10a,10b,10c,10dは、試験対象のネットワークNの複数の拠点に設けられ、ネットワークNに接続されている。
【0024】
試験装置10a,10b,10c,10dは、他の試験装置とループバック試験を行い、ネットワークNの通信品質を試験する。以下、試験装置10a,10b,10c,10dを総称して「試験装置10」と称する場合がある。また、以下、送受信側の装置により新たに送信された試験フレームを「第1試験フレーム」と称し、ループバック側の装置により返信として送信される試験フレームを「第2試験フレーム」(ループバックフレーム)と称する場合がある。
【0025】
このような構成においてループバック試験を実行する場合、ある拠点に設けられた試験装置10(例えば、試験装置10a)は、別の拠点に設けられた試験装置(例えば、試験装置10b)に対し、試験フレームを送信する。ここで、試験装置10が送受信する試験フレームは、第1試験フレームなのか、あるいは、第2試験フレームなのかを識別するための識別情報を含む。そのため、各試験装置10は、他の装置から試験フレームを受信した場合、その試験フレームが、第1試験フレームと第2試験フレームのいずれに当たるのかを、フレームの構成から区別することができる。したがって、各試験装置10は、第1試験フレーム及び第2試験フレームの両方が混在する多数の試験フレームを受信した場合であっても、両者を区別して、第2試験フレームに対して統計処理を行い、ネットワークNの通信品質を試験することが可能である。よって、本実施形態によれば、複数の試験装置10間において双方向でループバック試験を行うことが可能である。また、本実施形態に係る構成によれば、各試験装置10において試験フレームの送受信側とループバック側とのどちら側として動作するかを手動で設定する必要がなく、簡易にループバック試験を行うことが可能である。
【0026】
(試験装置)
図2は、
図1の試験装置10の構成例を示すブロック図である。試験装置10は、1つ又は互いに通信可能な複数のコンピュータ装置である。試験装置10は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)により構成されるが、これに限定されず、例えば、PC(Personal Computer)等の任意の汎用の電子機器であってもよいし、専用の他の電子機器であってもよい。
図2に示すように、試験装置10は、制御部11、測定部20、記憶部12、通信部13、入力部14、及び出力部15を備える。
【0027】
制御部11は、1つ以上のプロセッサを含む。一実施形態において「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。制御部11は、試験装置10を構成する各構成部と通信可能に接続され、試験装置10全体の動作を制御する。ただし、後述するように、ループバック試験中、測定部20は、制御部11とは独立に動作してもよい。すなわち、制御部11は、全体の統括的な動作を制御するにとどまり、ループバック試験の制御は、後述する測定部20の各構成要素が独立及び並列に動作することにより実現されるようにしてもよい。
【0028】
測定部20は、第1試験フレーム及び第2試験フレームの送受信によりネットワークNの通信品質を試験する構成要素である。測定部20の詳細については、
図3を参照して後述する。
【0029】
記憶部12は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、ROM(Read-Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等の任意の記憶モジュールを含む。記憶部12は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部12は、試験装置10の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部12は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、及び通信部13によって受信された各種情報等を記憶してもよい。記憶部12は、試験装置10に内蔵されているものに限定されず、外付けのデータベース又は外付け型の記憶モジュールであってもよい。
【0030】
通信部13は、任意の通信技術によって他の装置と通信接続可能な、任意の通信モジュールを含む。通信部13は、さらに、他の装置との通信を制御するための通信制御モジュール、及び他の装置との通信に必要となる識別情報等の通信用データを記憶する記憶モジュールを含んでもよい。
【0031】
入力部14は、ユーザの入力操作を受け付けて、ユーザの操作に基づく入力情報を取得する1つ以上の入力インターフェースを含む。例えば、入力部14は、物理キー、静電容量キー、ポインティングディバイス、又は、出力部15のディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン等であるが、これらに限定されない。
【0032】
出力部15は、ユーザに対して情報を出力し、ユーザに通知する1つ以上の出力インターフェースを含む。例えば、出力部15は、情報を画像として出力するディスプレイ、又は情報を音声で出力するスピーカ等であるが、これらに限定されない。このようなディスプレイは、例えば、液晶パネルディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等としてもよい。なお、上述の入力部14及び出力部15の少なくとも一方は、試験装置10と一体に構成されてもよいし、別体として設けられてもよい。
【0033】
試験装置10の一部又は全ての構成要素が、制御部11に含まれる専用回路により実現されてもよい。すなわち、試験装置10の一部又は全ての構成要素が、ハードウェアにより実現されてもよい。また、試験装置10は単一のコンピュータにより実現されてもよいし、複数のコンピュータの協働により実現されてもよい。
【0034】
図3は、
図2の測定部20の構成例を示すブロック図である。試験装置10は、構成要素として、フレーム受信部101、フレームフィルタ102、受信統計部103、基準時計104、ループバックフレーム生成部105、試験フレーム生成部106、送信バッファ107、及び、フレーム送信部108を備える。
【0035】
フレーム受信部101は、他の試験装置10から試験フレーム受信する。フレームフィルタ102は、フレーム受信部101が受信した試験フレームが第1試験フレーム及び第2試験フレームのいずれに当たるかを判定する。フレームフィルタ102は、受信した試験フレームが第1試験フレームに当たる場合、受信した試験フレームをループバックフレーム生成部105へ出力する。フレームフィルタ102は、受信した試験フレームが第2試験フレームに当たる場合、受信した試験フレームを受信統計部103へ出力する。
【0036】
受信統計部103は、受信した第2試験フレームに基づき、ネットワークNの通信品質に関する統計情報を取得する。例えば、受信統計部103は、送信元アドレス別の第2試験フレームの受信数、第1試験フレームの送信から第2試験フレームの受信までに要した遅延時間(ラウンド・トリップ・タイム)、及び、遅延時間の揺らぎ等の情報を取得してもよい。具体的には、受信統計部103は、例えば、遅延時間の平均、分散、標準偏差、最大値、及び、最小値を遅延時間の揺らぎを示す情報として取得してもよい。基準時計104は、基準となる時刻を計測し、受信統計部103及び試験フレーム生成部106へ時刻情報を提供する。
【0037】
ループバックフレーム生成部105は、受信した第1試験フレームに対して返信する第2試験フレーム(ループバックフレーム)を生成する。例えば、ループバックフレーム生成部105は、受信した第1試験フレームの宛先アドレス及び送信元アドレスを書き換えるとともに、第1試験フレームか第2試験フレームかを示す識別情報を書き換えて、第2試験フレームを生成してもよい。すなわち、ループバックフレーム生成部105は、受信した第1試験フレームの宛先アドレスを送信元アドレス(第1試験フレームの送信元のアドレス)に書き換えてもよい。ループバックフレーム生成部105は、受信した第1試験フレームの送信元アドレスを宛先アドレス(自装置のアドレス)に書き換えてもよい。ループバックフレーム生成部105は、受信した第1試験フレームの第1試験フレームであることを示す識別情報を第2試験フレームであることを示す識別情報に書き換えてもよい。ループバックフレーム生成部105は、受信した第1試験フレームの宛先アドレス、送信元アドレス、及び、識別情報以外の、ペイロード等のデータは変更しないで、第2試験フレームを生成してもよい。
【0038】
試験フレーム生成部106は、第1試験フレームを生成する。試験フレーム生成部106は、フレームの生成時の時刻を基準時計104から取得し、その時刻の情報を含むフレームを第1試験フレームとして生成してもよい。受信統計部103は、第1試験フレームに対応する第2試験フレームの受信時刻と、第1試験フレームの生成時刻とを比較して、第1試験フレームの送信から対応する第2試験フレームの受信までに要した遅延時間を取得してもよい。
【0039】
送信バッファ107は、ループバックフレーム生成部105が生成した第2試験フレーム、及び、試験フレーム生成部106が生成した第1試験フレームを一時的に保持する。フレーム送信部108は、所定の通信タイミングにおいて、送信バッファ107に保持された第1試験フレーム又は第2試験フレームを読み出し、宛先の試験装置10に対して送信する。
【0040】
なお、フレームフィルタ102は、受信した試験フレームが第1試験フレームに当たる場合であっても、受信した試験フレームの宛先MAC(Media Access Control)アドレスがその試験装置10のMACアドレスに一致しない場合、受信した試験フレームを受信統計部103へ出力してもよい。これにより、受信統計部103は、自装置を宛先としない第1試験フレームの受信状況について、統計的な情報を取得することが可能である。例えば、受信統計部103は、自装置を宛先としない第1試験フレームの受信数の時間的推移を取得してもよい。
【0041】
本実施形態では、測定部20を構成する、フレーム受信部101、フレームフィルタ102、受信統計部103、基準時計104、ループバックフレーム生成部105、試験フレーム生成部106、送信バッファ107、及び、フレーム送信部108の各構成要素は、それぞれ独立した別個のハードウェアにより構成される。例えば、測定部20の各構成要素は、FPGAの中の別個のブロックとして実現されてもよい。このような構成とすることにより、測定部20の各構成要素は高速かつ並列に動作することができる。したがって、ネットワークNにおいて大量のフレームが送受信される場合であっても、試験装置10は、それらのフレームに追随することができ、ネットワークNの通信品質を高い精度で測定することが可能である。なお、前述のように、試験装置10の構成要素の一部又は全部はソフトウェアにより実現してもよく、測定部20の構成要素の一部又は全部をソフトウェアにより実現してもよい。
【0042】
(動作例)
図4は、2つの試験装置10a,10b間における通信を模式的に示す図である。
図4は、任意の2つの試験装置10間の通信として、試験装置10a,10b間における通信の例を示しているが、他の試験装置10間の通信も同様である。
【0043】
図4の例において、試験装置10aは、試験装置10bに対し、複数の第1試験フレームからなるフレームストリーム31を送信している。フレームストリームは、連続的に送受信される複数の試験フレームの集合である。試験装置10bは、試験装置10aからのフレームストリーム31を受信したことに応じて、試験装置10aに対し、フレームストリーム31に含まれる各第1試験フレームに対応する第2試験フレームからなるフレームストリーム32を送信している。このような処理と並行して、試験装置10bは、試験装置10aに対し、複数の第1試験フレームからなるフレームストリーム33を送信している。試験装置10aは、試験装置10bからのフレームストリーム33を受信したことに応じて、試験装置10bに対し、フレームストリーム33に含まれる各第1試験フレームに対応する第2試験フレームからなるフレームストリーム34を送信している。本実施形態において、試験フレームは第1試験フレーム及び第2試験フレームのいずれであるかを示す識別情報を含むため、試験装置10a,10bは、識別情報により試験フレームの種類を識別して、
図4のような双方向のループバック試験を行うことができる。
【0044】
また、試験装置10a,10bは、双方向からループバック試験を行うことができるため、ネットワークNが転送可能な通信速度の最大値付近までデータ転送量を増大させて、試験フレームをネットワークNに流して特性を測定することができる。同様に、
図1に示すように、複数の拠点に設けられた3つ以上の試験装置10の間で互いに双方向のループバック試験を行ってフルメッシュ試験を実行することが可能である。
【0045】
図5は、試験フレーム50の構成例を示す図である。
図5に例示するように、試験フレーム50は、予め定められたフィールド構成を有する。試験フレーム50は、宛先MACアドレスフィールド51、送信元MACアドレスフィールド52、タイプフィールド53、データフィールド54、試験情報フィールド55、及び、FCS(Frame Check Sequence)フィールド56を含む。宛先MACアドレスフィールド51は、試験フレーム50の宛先(Destination)MACアドレスが記載されるフィールドである。送信元MACアドレスフィールド52は、試験フレーム50の送信元(Source)MACアドレスが記載されるフィールドである。タイプフィールド53は、データフィールド54に格納される上位層プロトコルを識別するためのIDが記載されるフィールドである。データフィールド54は、送信対象のデータが記載されるフィールドである。
【0046】
試験情報フィールド55は、試験フレーム50が第1試験フレーム及び第2試験フレームのいずれであるかを識別する識別情報、及び、第1試験フレームの送信時刻(又はフレームの生成時刻)等が記載されるフィールドである。例えば、試験フレーム50は、このような識別情報として、試験フレーム50が第1試験フレームの場合はON(値「1」)であり、第2試験フレームの場合はOFF(値「0」)であるフラグ情報を有してもよい。以下、このようなフラグ情報を「ループバックフラグ」と称する場合がある。FCSフィールド56は、フレームの誤りを検出するための符号が記載されるフィールドである。試験装置10は、識別情報及び送信時刻の他にシーケンス番号等の他の情報を試験情報フィールド55に含む試験フレームを使用してもよい。
【0047】
なお、
図5に示す試験フレーム50の構成は一例であり、第1試験フレームと第2試験フレームのいずれであるかを識別する識別情報は
図5に例示した場所以外の場所に記載されてもよい。また、
図5は、レイヤ2(データリンク層)のデータの送受信に関する試験を行う場合の試験フレーム50の構成例を示しているが、試験装置10は、他のレイヤのデータの送受信に関する試験を行ってもよい。例えば、レイヤ3(ネットワーク層、例えば、IPv4又はIPv6)の試験を行う場合、試験装置10は、
図5のフレームの構成例にIP(Internet Protocol)ヘッダを付加したフレームを試験フレームとして使用してもよい。あるいは、レイヤ4(トランスポート層、例えば、TCP(Transmission Control Protocol)又はUDP(User Datagram Protocol))の試験を行う場合、試験装置10は、IPヘッダに加えてTCPヘッダ又はUDPヘッダを付加したフレームを試験フレームとして使用してもよい。
【0048】
また、試験装置10の各構成要素は、本実施形態に係るコンピュータプログラム(プログラム)を、制御部11に含まれるプロセッサで実行することにより実現されてもよい。すなわち、試験装置10の各構成要素は、ソフトウェアにより実現されうる。コンピュータプログラムは、試験装置10の動作に含まれるステップの処理をコンピュータに実行させることで、各ステップの処理に対応する機能をコンピュータに実現させる。すなわち、コンピュータプログラムは、コンピュータを本実施形態に係る試験装置10として機能させるためのプログラムである。コンピュータプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録してもよい。プログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるものが含まれる。例えば、コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータは、「プログラムに準ずるもの」に該当する。
【0049】
図6及び
図7は、
図1の試験装置10の動作例を示すフローチャートである。以下、試験装置10aが試験装置10bへ第1試験フレームを送信し、第1試験フレームの受信に応じて試験装置10bが第2試験フレームを試験装置10aへ返信する場合の動作例を説明する。
図6は、第1試験フレームを試験装置10bへ送信し、それに応じて試験装置10bから返信された第2試験フレームに基づきループバック試験を行う試験装置10aの動作例を示している。
図7は、第1試験フレームを試験装置10aから受信し、それに応じて第2試験フレームを返信する試験装置10bの動作例を示している。
図6及び
図7を参照して説明する試験装置10の動作は試験装置10の制御方法の一つに相当してもよい。本実施形態において、
図6及び
図7の各ステップの動作は、
図3を参照して説明した測定部20の各構成要素により実行されるが、制御部11による制御に基づき実行されてもよい。
【0050】
なお、説明の簡略化のため、以下では、試験装置10aが第1試験フレームを送信し、試験装置10bがその第1試験フレームに対応する第2試験フレームを送信する処理例を説明するが、試験装置10a,10bは、それぞれ
図6及び
図7の処理を並列的に実行して双方からループバック試験を行ってもよい。また、試験装置10は、3つ以上の他の試験装置10との間でループバック試験を並列的に実行する場合も同様の手順で処理を進めることができる。以下、レイヤ2のデータの送受信に関してループバック試験を行う場合の動作例を説明する。
【0051】
まず、第1試験フレームを送信する試験装置10aの動作について、
図6を参照して説明する。ステップS1において、試験装置10aの試験フレーム生成部106は、第1試験フレームを生成する。具体的には、試験フレーム生成部106は、
図5のように、試験装置10bのMACアドレスを宛先MACアドレスフィールド51、試験装置10aのMACアドレスを送信元MACアドレスフィールド52に記載し、「ON」のループバックフラグ及び送信時刻等を含む試験情報フィールド55を有する第1試験フレームを生成する。試験フレーム生成部106は、基準時計104から取得した時刻を送信時刻として試験情報フィールド55に格納してもよい。試験フレーム生成部106は、生成した第1試験フレームを送信バッファ107へ転送して保持させる。
【0052】
ステップS2において、試験装置10aのフレーム送信部108は、ステップS1で生成した第1試験フレームを試験装置10bへ送信する。具体的には、フレーム送信部108は、送信バッファ107に第1試験フレームが転送されると、その第1試験フレームを読み出し、試験装置10bへ送信する。第1試験フレームを送信後、試験装置10aは、試験装置10bから試験フレームを受信するまで待機する。
【0053】
ステップS3において、試験装置10aのフレーム受信部101は、試験装置10bから試験フレームを受信したか否かを判定する。フレーム受信部101は、例えば、試験装置10bのMACアドレスが送信元MACアドレスフィールド52に記載されている試験フレームを受信した場合、試験装置10bから試験フレームを受信したと判定してもよい。フレーム受信部101は、試験装置10bから試験フレームを受信した場合(ステップS3でYES)はその試験フレームをフレームフィルタ102に転送してステップS4へ進む。そうでない場合(ステップS3でNO)、フレーム受信部101は、試験フレームを受信するまで待機する。
【0054】
ステップS4において、試験装置10aのフレームフィルタ102は、ステップS3で受信した試験フレームの宛先MACアドレスフィールド51が自装置(試験装置10a)のMACアドレスと一致するか否かを判定する。なお、フレームフィルタ102は、レイヤ3以上のデータの送受信に関してループバック試験を行う場合は、IPアドレス等も一致しているか否かを判定する。フレームフィルタ102は、ステップS3で受信した試験フレームの宛先MACアドレスフィールド51が自装置のMACアドレスと一致する場合(ステップS4でYES)、ステップS5へ進む。そうでない場合(ステップS4でNO)、フレームフィルタ102は、ステップS3へ戻って更に試験フレームを受信するまで待機する。
【0055】
ステップS5において、試験装置10aのフレームフィルタ102は、ステップS3で受信した試験フレームのループバックフラグがONであるか否かを判定する。具体的には、フレームフィルタ102は、受信した試験フレームの試験情報フィールド55を参照して、ループバックフラグの値を確認してもよい。フレームフィルタ102は、試験フレームのループバックフラグがONの場合(ステップS5でYES)はステップS3へ戻り、そうでない場合(ステップS5でNO)はステップS6へ進む。換言すると、フレームフィルタ102は、ステップS3で受信した試験フレームが第1試験フレームの場合はステップS3へ戻って更に試験フレームを受信するまで待機し、第2試験フレームの場合はステップS6へ進む。
【0056】
ステップS6において、試験装置10aの受信統計部103は、ステップS3で受信した試験フレームに基づき遅延時間を取得する。ステップS3で受信した試験フレームの試験情報フィールド55には、その試験フレームに対応する試験装置10aが送信した第1試験フレームの送信時刻が記載されている(ステップS1の説明参照。)。そこで、例えば、受信統計部103は、試験情報フィールド55に記載された第1試験フレームの送信時刻と、基準時計104から取得した現在の時刻との差分を計算して、ステップS2で第1試験フレームを送信してからステップS3で対応する第2試験フレームを受信するまでにかかった時間を遅延時間として取得してもよい。
【0057】
ステップS7において、試験装置10aの受信統計部103は、ステップS6で取得した遅延時間に基づき、ネットワークNの通信品質に関する統計情報を取得する。具体的には、受信統計部103は、送信元アドレス別の第2試験フレームの受信数、及び、遅延時間の揺らぎに関する情報を取得してもよい。具体的には、受信統計部103は、例えば、遅延時間の平均、分散、標準偏差、最大値、及び、最小値を遅延時間の揺らぎに関する情報として取得してもよい。
【0058】
受信統計部103は、第1試験フレームの試験情報フィールド55等に、第1試験フレームの通し番号であるシーケンス番号を記載し、受信した第2試験フレームの試験情報フィールド55に記載されたシーケンス番号を参照して第1試験フレーム又は対応する第2試験フレームの紛失を判定してもよい。例えば、受信統計部103は、受信した第2試験フレームのシーケンス番号が連続していなかった場合、試験フレームの紛失があったと判定してもよい。受信統計部103は、このような試験フレームの紛失に関する統計情報を取得してもよい。例えば、受信統計部103は、紛失した試験フレームの個数、及び、送信済みの第1試験フレームの個数に対する紛失が確認された試験フレームの個数の割合等を統計情報として取得してもよい。ステップS7の処理を終えると、試験装置10aは、
図6のフローチャートの処理を終了する。
【0059】
次に、第1試験フレームの受信に応じて第2試験フレームを送信する試験装置10bの動作について、
図7を参照して説明する。試験装置10bは、試験装置10aから試験フレームを受信するまで待機する。
【0060】
ステップS11において、試験装置10bのフレーム受信部101は、試験装置10aから試験フレームを受信したか否かを判定する。フレーム受信部101は、例えば、試験装置10aのMACアドレスが送信元MACアドレスフィールド52に記載されている試験フレームを受信した場合、試験装置10aから試験フレームを受信したと判定してもよい。フレーム受信部101は、試験装置10aから試験フレームを受信した場合(ステップS11でYES)はステップS12へ進み、そうでない場合(ステップS11でNO)は試験フレームを受信するまで待機する。
【0061】
ステップS12において、試験装置10bのフレームフィルタ102は、ステップS11で受信した試験フレームの宛先MACアドレスフィールド51が自装置(試験装置10b)のMACアドレスと一致するか否かを判定する。なお、フレームフィルタ102は、レイヤ3以上のデータの送受信に関してループバック試験を行う場合は、IPアドレス等も一致しているか否かを判定する。フレームフィルタ102は、ステップS11で受信した試験フレームの宛先MACアドレスフィールド51が自装置のMACアドレスと一致する場合(ステップS12でYES)、ステップS13へ進む。そうでない場合(ステップS12でNO)、フレームフィルタ102は、ステップS11へ戻って更に試験フレームを受信するまで待機する。
【0062】
ステップS13において、試験装置10bのフレームフィルタ102は、ステップS11で受信した試験フレームのループバックフラグがONであるか否かを判定する。具体的には、フレームフィルタ102は、受信した試験フレームの試験情報フィールド55を参照して、ループバックフラグの値を確認してもよい。フレームフィルタ102は、試験フレームのループバックフラグがONの場合(ステップS13でYES)はステップS14へ進み、そうでない場合(ステップS13でNO)はステップS11へ戻る。換言すると、フレームフィルタ102は、ステップS11で受信した試験フレームが第1試験フレームの場合はステップS14へ進み、第2試験フレームの場合は更に試験フレームを受信するまで待機する。
【0063】
ステップS14において、試験装置10bのループバックフレーム生成部105は、ステップS11で受信した試験フレーム(第1試験フレーム)に対する返信としての第2試験フレームを生成する。具体的には、ループバックフレーム生成部105は、ステップS11で受信した試験フレームの宛先MACアドレスフィールド51、送信元MACアドレスフィールド52を、試験装置10a、10bのMACアドレスで書き換えるとともに、試験情報フィールド55のループバックフラグの値をOFFで書き換えて第2試験フレームを生成してもよい。ループバックフレーム生成部105は、生成した第2試験フレームを送信バッファ107へ出力して保持させる。
【0064】
ステップS15において、試験装置10bのフレーム送信部108は、ステップS14で生成した第2試験フレームを試験装置10aへ送信する。具体的には、フレーム送信部108は、送信バッファ107から第2試験フレームを読み出し、読み出した第2試験フレームを、試験装置10aへ送信する。ステップS15の処理を終えると、試験装置10bは、
図7のフローチャートの処理を終了する。
【0065】
以上のように、試験装置10は、第1試験フレームと第2試験フレームとのいずれに該当するかを示す識別情報を含むフレームを試験フレームとして用いる。そのため、他の試験装置から試験フレームを受信した試験装置10は、受信した試験フレームが第1試験フレームと第2試験フレームのいずれに該当するかを区別することができる。したがって、試験装置10は、第1試験フレーム及び第2試験フレームの両方が混在する多数の試験フレームを受信した場合であっても、両者を区別して、第2試験フレームに対して統計処理を行い、ネットワークNの通信品質を試験することが可能である。よって、試験装置10と他の試験装置は、双方向のループバック試験を並列的に行うことができ、より実環境に近い状態でループバック試験を行うことが可能である。
【0066】
また、試験装置10は、
図6及び
図7の処理を多数、並列的に実行することで、ネットワークNにおいて転送可能なフレームのスループットを計測してもよい。スループットとは、単位時時間当たりに転送された試験フレームのデータ量である。このようなスループットの値の算出は、受信統計部103が行ってもよい。例えば、試験装置10は、ネットワークNにおいて試験フレームの紛失が確認されるまで並列に実行する
図6及び
図7の処理の個数を増やしていき、第2試験フレームの受信量及び第1試験フレームを送信してから対応する第2試験フレームを受信するまでの遅延時間に基づき、ネットワークNのスループットを計測してもよい。このようなスループットの計測は、様々な通信状況下において行うことができる。例えば、スループット計測は、試験装置10a,10bの間で、試験装置10aのみが第1試験フレームを送信し、試験装置10bは第2試験フレームを返信するのみの状況で行ってもよいし、試験装置10a,10bの双方が第1試験フレーム及び第2試験フレームを送受信する状況で行ってもよい。あるいは、例えば、3つ以上の試験装置10(例えば、試験装置10a,10b,10c)が第1試験フレーム及び第2試験フレームを送受信する状況において、各通信経路におけるスループットを算出してもよい。
【0067】
また、試験装置10は、シーケンス番号を含む試験フレームを用いてループバック試験を行うことで、試験フレームの紛失を判定することが可能である。なお、試験装置10は、受信した第2試験フレームのシーケンス番号が連続していなかった場合に、第1試験フレーム又はその第1試験フレームに対して返信された第2試験フレームが紛失したと判定してもよい。
【0068】
また、本実施形態では、レイヤ2のデータの送受信に関してループバック試験を行う場合の動作例を説明したが、レイヤ3以上の通信レイヤにおけるデータの送受信に関してループバック試験も同様に実行することができる。
【0069】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の複数のブロックは統合されてもよいし、又は1つのブロックは分割されてもよい。フローチャートに記載の複数のステップは、記述に従って時系列に実行する代わりに、各ステップを実行する装置の処理能力に応じて、又は必要に応じて、並列的に又は異なる順序で実行されてもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 試験システム
10 試験装置
11 制御部
12 記憶部
13 通信部
14 入力部
15 出力部
20 測定部
50 試験フレーム
51 宛先MACアドレスフィールド
52 送信元MACアドレスフィールド
53 タイプフィールド
54 データフィールド
55 試験情報フィールド
56 FCSフィールド
101 フレーム受信部
102 フレームフィルタ
103 受信統計部
104 基準時計
105 ループバックフレーム生成部
106 試験フレーム生成部
107 送信バッファ
108 フレーム送信部
N ネットワーク